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【発明の名称】 植物繊維成形体の製造方法
【発明者】 【氏名】岩崎 広信

【要約】 【課題】植物繊維に含まれているリグニンを用いて成形体を得ることができる植物繊維成形体の製造方法を提供する。

【解決手段】植物繊維を含むマット20を形成するマット化工程と、マットをボイラー15から水蒸気を供給した耐圧釜16内で温度150℃以上の水蒸気に曝す蒸気処理工程と、蒸気処理されたマット20を熱プレス機17を用いて加圧しながら賦形して成形体21を得る成形工程と、を備える。更に、蒸気処理工程後であって且つ成形工程前に、マット20の含水率を30%以下に低下させる水分除去工程を備えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繊維を含むマットを形成するマット化工程と、
上記マットを温度150℃以上の水蒸気に曝す蒸気処理工程と、
上記蒸気処理されたマットを加圧しながら賦形して成形体を得る成形工程と、を備えることを特徴とする植物繊維成形体の製造方法。
【請求項2】
上記蒸気処理工程の蒸気圧は、1.7〜2MPaである請求項1に記載の植物繊維成形体の製造方法。
【請求項3】
上記蒸気処理工程後であって且つ上記成形工程前に、上記マットの含水率を30%以下に低下させる水分除去工程を備える請求項1又は2に記載の植物繊維成形体の製造方法。
【請求項4】
上記成形工程は、上記加圧に加えて加熱を行う工程である請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の植物繊維成形体の製造方法。
【請求項5】
上記成形工程は、型表面に離型剤を付与した熱プレス型、又は型表面がフッ素樹脂からなる熱プレス型、を用いて行う請求項1乃至4のうちのいずれかに記載の植物繊維成形体の製造方法。
【請求項6】
上記マットを構成する繊維は、上記植物繊維のみである請求項1乃至5のうちのいずれかに記載の植物繊維成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は植物繊維成形体の製造方法に関する。更に詳しくは、植物繊維に含まれているリグニンを用いて成形する植物繊維成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の吸収量が多い植物資源は、二酸化炭素排出量削減及び二酸化炭素の固定化等の環境的観点から注目され、特に化石燃料を用いた樹脂成形体等の代替用途で期待されている。しかし、植物体のうち主として利用されている植物繊維は、植物繊維同士の交絡のみで十分な形体維持を行うことが困難であり、また、自在な賦形を行うことも困難である。そのため、通常、植物繊維にはバインダ成分が配合されて、繊維同士の交絡状態を維持できる十分な賦形性が付与された複合材料として利用されている。
しかし、化石燃料を用いた合成樹脂バインダは上記環境的観点からは好ましくない。一方、ポリ乳酸等の生合成可能であり且つ生分解可能なバインダ成分は高価であるという問題がある。その他、植物資源から採取又は採取加工したリグニン系材料をバインダ成分として用いる技術が下記特許文献1に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−7534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に開示された技術は、植物体に含まれているリグニンを種々の方法により抽出し、このリグニンをセルロース系材料に再度添加して成形体を得るものである。また、通常、より加工性及び取扱い性等を向上させるために、このリグニンをリグノフェノール等へ変換する加工作業を要するという煩雑さがある。
本発明は、上記従来の技術に鑑みてなされたものであり、植物繊維に含まれているリグニンを用いて成形体を得ることができる植物繊維成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
(1)植物繊維を含むマットを形成するマット化工程と、
上記マットを温度150℃以上の水蒸気に曝す蒸気処理工程と、
上記蒸気処理されたマットを加圧しながら賦形して成形体を得る成形工程と、を備えることを特徴とする植物繊維成形体の製造方法。
(2)上記蒸気処理工程の蒸気圧は、1.7〜2MPaである上記(1)に記載の植物繊維成形体の製造方法。
(3)上記蒸気処理工程後であって且つ上記成形工程前に、上記マットの含水率を30%以下に低下させる水分除去工程を備える上記(1)又は(2)に記載の植物繊維成形体の製造方法。
(4)上記成形工程は、上記加圧に加えて加熱を行う工程である上記(1)乃至(3)のうちのいずれかに記載の植物繊維成形体の製造方法。
(5)上記成形工程は、型表面に離型剤を付与した熱プレス型、又は型表面がフッ素樹脂からなる熱プレス型、を用いて行う上記(1)乃至(4)のうちのいずれかに記載の植物繊維成形体の製造方法。
(6)上記マットを構成する繊維は、上記植物繊維のみである上記(1)乃至(5)のうちのいずれかに記載の植物繊維成形体の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の植物繊維成形体の製造方法によれば、植物繊維に含まれているリグニンを用いて成形体を得ることができる。特に植物繊維に含まれているリグニンを採取・分離することなく、内在されたまま利用し、植物繊維に対してバインダ成分を後添加しなくとも、植物繊維のみを用いて成形体を得ることができる。この場合には焼却による有害物質の発生がなく高い環境性能が得られる。また、バインダ成分の添加を要しないために安価に成形体を得ることができる。更に、木材を用いた場合には木材自体にしなやかさがないため、前工程で蒸気処理を行った後にフォーミング(積層)工程を要するが、本方法ではこの後工程を要しない。また、蒸気処理したマットが簡潔に得られ、その後の工程{例えば、ボード化(熱プレス成形)等}を行うための搬送時の作業効率及び作業性に優れている。更に、植物繊維は一般にバインダ成分に比べて比重が小さく、両者を均一に分散混合することが難しいが、本発明の製造方法では、バインダ成分を用いることなく成形体が得られるためこの混合の問題を生じない。
【0007】
蒸気処理工程の蒸気圧が1.7〜2MPaである場合は、リグニンの滲出効果に優れ、強度及び賦形性に優れた成形体が得られる。
蒸気処理工程後であって且つ成形工程前にマットの含水率を30%以下に低下させる水分除去工程を備える場合は、成形工程における安全性が向上され、更に、より高い強度及び賦形性を備えた成形体が得られる。
成形工程が加圧に加えて加熱を行う工程である場合は、更に高い強度及び賦形性を備えた成形体が得られる。
成形工程が型表面に離型剤を付与した熱プレス型、又は型表面がフッ素樹脂からなる熱プレス型、を用いて行う場合は、植物繊維の表面にまでリグニンが滲出されていてもスムーズに脱型を行うことができ、より精密な所望する形状を得やすく、特に優れた成形性が得られる。
マットを構成する繊維が植物繊維のみである場合は、焼却による有害物質の発生がなく高い環境性能が得られる。また、利用できるリグニン量を多く確保でき、得られる成形体の強度及び賦形性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の植物繊維成形体の製造方法は、植物繊維を含むマットを形成するマット化工程と、
上記マットを温度150℃以上の水蒸気に曝す蒸気処理工程と、
上記蒸気処理されたマットを加圧しながら賦形して成形体を得る成形工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記「マット化工程」は、植物繊維を含むマットを形成する工程である。
上記「植物繊維」は、植物から得られる繊維である。植物繊維の種類は特に限定されず、例えば、ケナフ、ジュート麻、マニラ麻、サイザル麻、雁皮、三椏、楮、バナナ、パイナップル、ココヤシ、トウモロコシ、サトウキビ、バガス、ヤシ、パピルス、葦、エスパルト、サバイグラス、麦、稲、竹、各種針葉樹(スギ及びヒノキ等)、広葉樹及び綿花などの各種植物体から得られた植物繊維が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0010】
また、植物体における植物繊維の採取部位は特に限定されず、木質部、非木質部、葉部、茎部及び根部等の植物体を構成するいずれの部位から採取された植物繊維を用いてもよい。更に、特定の部位から得られた植物繊維のみを用いてもよく2ヶ所以上の異なる部位から得られた植物繊維を併用してもよい。
尚、本発明におけるケナフとは、木質茎を有する早育性の一年草であり、アオイ科に分類される植物である。学名におけるhibiscus cannabinus及びhibiscus sabdariffa等が含まれ、更に、通称名における紅麻、キュウバケナフ、洋麻、タイケナフ、メスタ、ビムリ、アンバリ麻及びボンベイ麻等が含まれる。
また、本発明におけるジュートとは、ジュート麻から得られる繊維である。このジュート麻には、黄麻(コウマ、Corchorus capsularis L.)、及び、綱麻(ツナソ)、シマツナソ並びにモロヘイヤ、を含む麻及びシナノキ科の植物を含むものとする。
【0011】
植物繊維の形状は特に限定されないが、通常、繊維長は10mm以上である。繊維長が10mm以上であれば、得られた植物繊維成形体においてより高い強度(曲げ強さ及び曲げ弾性率等、以下同様)を得やすい。この繊維長は10〜150mmが好ましく、20〜100mmがより好ましく、30〜80mmが特に好ましい。更に、通常、繊維径は1mm以下である。繊維径が1mm以下であれば得られる植物繊維成形体において特に高い強度が得られる。この繊維径は0.01〜1mmが好ましく、0.05〜0.7mmがより好ましく、0.07〜0.5mmが特に好ましい。更には1〜10dtexであることが好ましい。また、上記範囲を外れる形態の繊維は、植物繊維全体の10質量%以下に抑えることが好ましい。これにより得られる成形体の強度を高く維持できる。
【0012】
上記「マット」は、上記植物繊維を含む繊維により形成された不織布である。このマットの密度は特に限定されないが、0.5g/cm以下(通常0.1g/cm以上、より好ましくは0.13〜0.2g/cm)であることが好ましい。この範囲では、蒸気処理工程において、蒸気が構成繊維間にまで十分に作用し、より満遍なく植物繊維からリグニンを滲出させることが可能となり、得られる成形体の強度を向上させることができる。また、目付量においては、3000g/m以下(通常1200g/m以上)であることが好ましい。この範囲では、蒸気処理工程において、蒸気が構成繊維間にまで十分に作用し、より満遍なく植物繊維からリグニンを滲出させることが可能となり、得られる成形体の強度を向上させることができる。
更に、マットの厚さは特に限定されないが、通常、5mm以上(更には5〜70mm、特に7〜50mm、通常100mm以下)である。
尚、本発明にいう上記目付量(g/m)は、含水率を10%にして、1mあたりの質量を電子秤等で測定した値である。また、上記密度(g/cm)は、上記目付量(g/m)をg/cmに換算し、ノギスで測定したマットの厚さ(cm)で除して算出した値である。
【0013】
上記マット化工程におけるマット化はどのような方法で行ってもよいが、通常、乾式法又は湿式法の混綿法を用いる。このうち乾式法としては、エアーレイ法及びカード法が挙げられる。また、湿式法としては抄紙法が挙げられる。これらのうちでは乾式法を用いることが好ましい。特に前述のような好ましい範囲の長さを有する植物繊維を用いる場合には湿式法に比べて乾式法の方が生産効率が高いためである。
【0014】
また、マット化工程では、上記エアーレイ法及びカード法等を経て得られたマットに後加工を施すこともできる。後加工としては、例えば、マット内の植物繊維同士の交絡を強化したり、マットを複層化したり(特にカード法を用いる場合には裁断前のマットを折り重ねて複層化できる)、更に、マットの厚みをプレス等により薄くしたりすることができる。上記のうちの交絡の強化を行う工程(交絡工程)を行う方法としては、ニードルパンチ法、ステッチボンド法及びウォーターパンチ法等が挙げられる。これらのなかでは高効率であることからニードルパンチ法が好ましい。
【0015】
本発明で用いるマットは、上記植物繊維以外の他の繊維を含有してもよい。他の繊維としては、合成繊維(ポリ乳酸繊維等の生分解性ポリマー繊維、ポリオレフィン系樹脂繊維等の熱可塑性樹脂繊維など)が挙げられる。これらの他の繊維は1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの他の繊維を含有する場合、他の繊維の含有量は、マットの含水率を10%(平衡水分量)に維持した場合に、マット全体100質量%に対して90質量%以下(より好ましくは30〜70質量%)とすることが好ましい。
本発明で用いるマットは他の繊維を含有してもよいが、植物繊維のみからなってもよい。植物繊維にのみからなる場合には、樹脂繊維等との混繊工程を必要とせず、製造工程が簡便となり、製造効率を大幅に高めることができる。
【0016】
更に、本発明で用いるマットには、上記繊維以外に、他の成分を含有させることができる。他の成分としては、加水分解防止剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、着色剤等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの他の成分が含有される場合、他の成分の含有量は、マットの含水率を10%(平衡水分量)に維持した場合に、マット全体100質量%に対して5質量%以下(より好ましくは0.1〜1質量%)とすることが好ましい。この範囲では、得られる成形体の生分解性を特に阻害し難い。
【0017】
上記「蒸気処理工程」は、マットを温度150℃以上の水蒸気に曝す工程である。植物繊維に含まれるリグニン成分はこの蒸気処理工程を経ることで、繊維内部から繊維表面へ向かって滲出されるものと考えられる。しかし、本発明者らは、リグニン成分が滲出された植物繊維は柔軟性が低下して脆くなり、この脆化された植物繊維からマットを形成することは困難であることを知見した。この脆くなった植物繊維は、マット化を行うための機械内で詰まるなどして正常にマットを形成できなくなるからである。このため、本発明では前記マット化工程を行った後に、蒸気処理工程を行う。こうすることにより、マット化された植物繊維から滲出されたリグニンを利用してスムーズに成形を行うことができる。
【0018】
蒸気処理工程において、マットを水蒸気へ曝す際には、通常、閉鎖系で行う。従って、水蒸気への曝露は耐圧容器内で行うことが好ましい。また、蒸気処理工程における水蒸気の温度は150℃以上であればよい。この水蒸気温度を150℃以上とすることで、それ以下の温度の水蒸気を用いる場合に比べて成形体の曲げ弾性率を大幅に向上させられるからである。また、この水蒸気温度の上限は特に限定されないが、250℃以下にすることが好ましい。水蒸気温度を250℃以下に抑えることにより、成形体の強度を高く維持できるからである。
【0019】
この蒸気処理工程における蒸気温度は、165℃以上とすることが好ましい。165℃以上とすることで、それ以下の温度の水蒸気を用いる場合に比べて成形体の曲げ強さを大幅に向上させられるからである。更に、この水蒸気温度は220℃以下とすることが好ましい。これにより曲げ強さ及び曲げ弾性率の両方の特性をバランスよく高く維持することができる。また、この水蒸気温度は、170〜205℃がより好ましく、170〜195℃が更に好ましく、170〜190℃が特に好ましい。この範囲ではとりわけ高い曲げ強さ及び曲げ弾性率を両立して得ることができるからである。
【0020】
また、蒸気処理工程における蒸気圧は特に限定されず、上記蒸気温度とすることができればよいが、例えば、1.5〜2.5MPaにすることが好ましく、1.7〜2.0MPaにすることがより好ましい。この範囲では、蒸気処理されるマットへの負担が少なく、また、リグニンの滲出効果も高く維持できる。
更に、蒸気処理時間(上記温度範囲の蒸気に曝す時間)は、特に限定されないが、通常5分以上である。5分以上を行うことで蒸気処理を行う効果をより得やすく、特に7分以上行うことがより好ましい。また、この蒸気処理時間はどれだけ施してもよいが、生産効率の観点から60分以下とすることが好ましく、更には、35分以下とすることがより好ましい。
【0021】
また、この蒸気処理工程を行った後には、蒸気処理を施したマットの含水率を低下させる水分除去工程を備えることができる。
上記「水分除去工程」を備えることで、その後の成形工程において加圧を行う場合にもより安全に加圧を行うことができる。この水分除去工程において除去する水分量は特に限定されないが、マットの含水率を30%以下にまで低下させるものであることが好ましい。この含水率を30%以下にすることで、成形工程をより安全に行うことができることに加えて、得られる成形体の強度をより高く維持できる。更に、より正確な成形を行うことができる。この工程においては、マットの含水率は、通常、10〜30%にできればよく、10%以下にまで低下させてもよいが、通常、その必要はない。
【0022】
上記「成形工程」は、蒸気処理されたマットを加圧しながら賦形して成形体を得る工程である。この工程を備えることで、蒸気処理工程において植物繊維内から滲出されたリグニンを利用して植物繊維同士を強固に接合した状態で維持でき賦形することができる。
この成形工程における加圧圧力は特に限定されないが、1〜10MPaとすることが好ましく、1〜5MPaとすることがより好ましい。
【0023】
また、この成形工程では、成形工程前に行う他の工程による余熱が残存されている場合等には加熱を行わなくとも成形を行うことが可能であるが、加熱を行うことが好ましい。この加熱は加圧と同時に施してもよく、加圧よりも先に予め施してもよいが、同時に施す(即ち、熱プレスを行う)ことが製造効率の観点からより好ましい。
【0024】
この成形工程における加熱温度は特に限定されないが、成形を行うこととなるマット内の温度が180℃以上となるものであることが好ましい。リグニンは熱硬化性の特性を有しているために、180℃以上とすることで植物繊維同士をより確実に結合でき、また、この結合力を維持しやすいものと考えられる。この加熱温度は195〜255℃であることが好ましく、200〜250℃であることがより好ましい。この範囲では、より高い成形性が得られ、また、成形体においてより高い強度を得ることができる。この加熱を行う場合には加圧を行う効果をより確実に得るために30秒以上の加圧を行うことが好ましく、1〜5分間加圧を行うことがより好ましい。
【0025】
また、成形工程においては、どのような金型を用いてもよいが、好ましくは型表面に離型剤が付与された熱プレス型、又は型表面がフッ素樹脂からなる熱プレス型、を用いることが好ましい。これにより所望の形状をより得やすい。即ち、植物繊維から滲出されたリグニンが型表面に付着されて成形体の脱型が阻害されることなく、スムーズに脱型を行うことができる。これにより、より精密な所望する形状を得やすく、特に優れた成形性が得られる。
【0026】
[2]植物繊維成形体
本発明の製造方法により得られる植物繊維成形体の形状、大きさ及び厚さ等は特に限定されない。また、その用途も特に限定されない。この植物繊維成形体としては、例えば、自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等が挙げられる。このうち自動車用品としては、自動車内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等が挙げられる。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、自動車ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材が挙げられる。即ち、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等が挙げられる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び図1〜2を用いて本発明を具体的に説明する。
[1]植物繊維成形体の製造
実施例1
約65mmにカットしたジュート(植物繊維)を植物繊維供給部(図1の11)からカード機(図1の12)に供給して、植物繊維のみからなる積層物を得た。更に、この積層物をニードルパンチ(図1の13)を用いてパンチングして植物繊維同士の3次元の絡み強度を付与した後、裁断機(図1の14)によって所定の大きさにカットしてマット(図1の20)を得た(マット化工程)。得られたマットは厚さ10〜15mm、密度0.13〜0.2g/cm、目付量2kg/mであった。
得られたマット(図2の20)を耐圧釜(図2の16)に搬入し、ボイラー(図2の15)から蒸気温度200℃の蒸気を送り込み、耐圧釜内の蒸気圧を2MPaに維持しつつ10分間、マットを水蒸気に曝した(蒸気処理工程)。
次いで、耐圧釜内への蒸気送り込みを停止し、耐圧釜内をバキューム装置(図示省略)を用いて真空引きし、マットの水分率を10%まで低下させた(水分除去工程)。
その後、耐圧釜から蒸気処理加工及び水分除去加工を施したマットを取り出し、型表面がフッ素樹脂加工{テフロン(登録商標)加工}された金型(図2の171)を有する熱プレス機(図2の17)にセットし、厚さ2.3mmのスペーサと共に230℃に加熱した上記金型間に挟み、圧力1.18MPa(12kgf/cm)で3分間熱プレスを施した(成形工程)。その後、金型から脱型して植物繊維のみからなる植物繊維成形体(図2の21)を得た。得られた植物繊維成形体は、厚さ2.3mm、密度0.8g/cmであった。
【0028】
実施例2
蒸気処理工程における処理条件を、蒸気温度180℃とした以外は、実施例1と同様にして、植物繊維のみからなる植物繊維成形体(厚さ2.3mm、密度0.8g/cmの板状成形物)を得た。
【0029】
実施例3
蒸気処理工程における処理条件を、蒸気温度180℃且つ処理時間30分とした以外は、実施例1と同様にして、植物繊維のみからなる植物繊維成形体(厚さ2.3mm、密度0.8g/cmの板状成形物)を得た。
【0030】
実施例4
蒸気処理工程における処理条件を、蒸気温度160℃且つ処理時間30分とした以外は、実施例1と同様にして、植物繊維のみからなる植物繊維成形体(厚さ2.3mm、密度0.8g/cmの板状成形物)を得た。
【0031】
比較例1
マット化工程を行った後に、蒸気処理工程及び水分除去工程を行わず、成形工程を行って、植物繊維のみからなる植物繊維成形体(厚さ2.3mm、密度0.8g/cmの板状成形物)を得た。マット化工程及び成形工程における各種条件は実施例1と同じである。
【0032】
[2]植物繊維成形体の評価
(1)湿老化前の特性評価
実施例1〜4及び比較例1で得られた植物繊維成形体の各々について、曲げ強さ及び曲げ弾性率を測定した。この測定に際しては、密度0.8g/cm且つ含水率約10%の状態における厚さ2.3mm、幅50mm、長さ150mmの長方形の各植物繊維成形体からなる板状の試験片を用いた。そして、各試験片を支点間距離(L)100mmとした2つの支点(曲率半径3.2mm)で支持しつつ、支点間中心に配置した作用点(曲率半径3.2mm)から速度50mm/分にて荷重の負荷を行い、各試験片の破断直前の最大荷重(P)を測定した。得られた最大荷重(P)及び下記式(1)を用いて各試験片の曲げ強さを算出した(JIS K7171に準拠)。更に、この結果を用いてJIS K7171に従って曲げ弾性率(MPa)を算出した。この結果を表1に示す。
曲げ強さ(MPa)=3PL/2Wt ・・・(1)
但し、式(1)内のPは最大荷重、Lは支点間距離、Wは試験片の幅、tは試験片の厚みを表す。
【0033】
(2)湿老化及び湿老化後の特性評価
実施例1〜4及び比較例1の各試験片を、温度50℃且つ湿度95%RHの環境下に400時間置いたのち取り出し、常温常湿下(23℃、65%RH)に1日放置して含水率が約10%になった各試験片の曲げ強さ及び曲げ弾性率を、上記[2](1)の湿老化前の測定と同様にして測定し、その結果を表1に併記した。
【0034】
【表1】


【0035】
(3)実施例の効果
上記表1の結果から、160℃の水蒸気に30分間曝す蒸気処理を行った実施例4の成形体の湿老化前後の曲げ強さは、水蒸気処理を施していない比較例1の成形体と大きな差はないが、曲げ弾性率は比較例1の湿老化前の曲げ弾性率に対して実施例4は2.2倍と大幅な増加が認められる。これは蒸気処理を行ったことにより植物繊維からリグニンが滲出され、このリグニンの作用により高い弾性率が得られているものと考えられる。
【0036】
また、180℃の水蒸気に30分間曝す蒸気処理を行った実施例3の成形体は、比較例1に対して湿老化前の曲げ強さが2.7倍、湿老化後においては3.6倍と、大幅な向上が認められる。更に、曲げ弾性率においても湿老化前が2.7倍、湿老化後においては4.5倍と、更に大きな向上が認められる。また、この実施例3では、実施例4に比べても湿老化前後における曲げ強さ及び湿老化後の曲げ弾性率のいずれにおいても優れている。
【0037】
更に、180℃の水蒸気に10分間曝す蒸気処理を行った実施例2の成形体は優れた強度を有しているが、実施例4に比べると湿老化後の両特性の低下が大きい。このことから、湿老耐久性を向上させる目的において同じ水蒸気温度においてもより長く処理を行うことが効果的であることが分かる。
また、200℃の水蒸気に10分間曝す蒸気処理を行った実施例1の成形体は優れた強度を有しているが、実施例2及び実施例3に比べると湿老化前の強度特性が小さいものの、湿老化前後での変化は実施例中で最も小さく抑えられている。このことから、湿老化特性を向上させる目的においては水蒸気処理におけるより高い水蒸気温度が効果的であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の植物繊維成形体の製造方法は、自動車関連分野及び建築関連分野などにおいて広く利用される。特に自動車、鉄道車両、船舶及び飛行機等の内装材、外装材及び構造材等に好適であり、なかでも自動車用品としては、自動車内装材、自動車用インストルメントパネル、自動車用外装材等に好適である。具体的には、ドア基材、パッケージトレー、ピラーガーニッシュ、スイッチベース、クオーターパネル、アームレストの芯材、自動車ドアトリム、シート構造材、コンソールボックス、自動車ダッシュボード、各種インストルメントパネル、デッキトリム、バンパー、スポイラー及びカウリング等が挙げられる。更に、例えば、建築物及び家具等の内装材、外装材及び構造材にも好適である。具体的には、ドア表装材、ドア構造材、各種家具(机、椅子、棚、箪笥など)の表装材、構造材等が挙げられる。その他、包装体、収容体(トレイ等)、保護用部材及びパーティション部材等としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】マット化工程を説明する模式的な説明図である。
【図2】水蒸気処理工程及び成形工程を説明する模式的な説明図である。
【符号の説明】
【0040】
11;植物繊維供給部(ホッパ)、12;カード機、13;ニードルパンチ、14;裁断機、15;ボイラー、16;耐圧釜、17;成形機、171;金型、20;マット、21;植物繊維成形体。
【出願人】 【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
【出願日】 平成19年4月13日(2007.4.13)
【代理人】 【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路

【識別番号】100117134
【弁理士】
【氏名又は名称】萩野 義昇

【識別番号】100111752
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 直也


【公開番号】 特開2008−260238(P2008−260238A)
【公開日】 平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願番号】 特願2007−105897(P2007−105897)