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【発明の名称】 調湿性植物繊維ボード
【発明者】 【氏名】菅原 亮

【氏名】斉藤 英一郎

【氏名】大村 浩之

【要約】 【課題】高い調湿性を有すると共に加工性の良い調湿性植物繊維ボードを提供する。

【解決手段】調湿性植物繊維ボードAに関する。植物から得られるリグノセルロース繊維1同士がバインダー2で接着されて形成されている。内部に調湿材3が保持されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物から得られるリグノセルロース繊維同士がバインダーで接着されて形成されていると共に、内部に調湿材が保持されていることを特徴とする調湿性植物繊維ボード。
【請求項2】
植物から得られるリグノセルロース繊維同士をバインダーで接着して植物繊維マットが形成され、複数の植物繊維マットの間に調湿材からなる調湿材層を介在させた状態でプレス成形されたことを特徴とする請求項1に記載の調湿性植物繊維ボード。
【請求項3】
植物繊維マットの内部にも調湿材が保持されていることを特徴とする請求項2に記載の調湿性植物繊維ボード。
【請求項4】
調湿材層を介して一方の側に積層される植物繊維マットの厚さと他方の側に積層される植物繊維マットの厚さとが異なることを特徴とする請求項2又は3に記載の調湿性植物繊維ボード。
【請求項5】
調湿材が珪藻土であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の調湿性植物繊維ボード。
【請求項6】
密度が400kg/m以上2000kg/m以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の調湿性植物繊維ボード。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅内装材などとして用いられる調湿性植物繊維ボードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高気密住宅の普及に伴い、室内環境、特に湿気に対する関心が高まっている。空気中に含まれる水蒸気の量には限度があり、その量は、温度が高いほど多く、温度が低くなれば少なくなる。温度の高い場所で、多くの水蒸気を含んだ空気が冷たいものに冷やされたり、室温が大きく下がったりすれば、空気中の水蒸気は水に戻り結露となる。
【0003】
水を使う部屋や空気の流れの悪い場所など、湿気の多い場所が結露の起こりやすい場所となる。結露を防ぐためには、換気が重要であり、また、窓や壁などを断熱性の高い材料とすることが有効である。
【0004】
現在、住宅内装材として多く用いられているクロス、木質系ボード、無機系ボードの調湿性(吸放湿性)は高くなく、過剰な湿気は結露し、カビ等の微生物の繁殖を招き、室内環境を悪化させることとなる。
【0005】
そこで珪藻土、炭、ゼオライトなどの調湿性の高い材料の関心が高まっている。これら湿気を吸収する材料で内装を仕上げれば、湿気の多いときは湿気を吸収し、少ないときは湿気を放出する調湿機能を発揮し、壁などの表面に発生する結露を抑えることができる。
【0006】
そしてこのような調湿性の高い材料はそれだけでは接着性がないため、無機系もしくは樹脂系のバインダーを混入して湿式で施工することが一般的である。しかし、湿式では下地処理、下塗り、上塗りと作業が煩雑であるため、貼るだけで調湿性があるボードが求められている。そのため、特許第2652593号公報(特許文献1)などに記載されているように、調湿性の高い材料とバインダーを混合した調湿材をボードやタイルとしたものが存在する。しかし、このようなボードや湿式のように表面に調湿性の高い材料が露出する場合、強度が弱い、調湿性の高い材料が剥がれる、という問題があり、それを防ぐためにバインダー量を多くすると、調湿性が低下する、という問題があった。
【0007】
他方、ボードの表面ではなく、内部に調湿性の高い材料を含有させた場合、剥がれる等の問題はなくなるものの、湿気がボード内部の調湿性の高い材料まで到達することが難しくなり、低い調湿効果にとどまっていた。
【0008】
また、住宅内などにおいて結露の発生しやすい部位として押入れなどが挙げられるが、通常押入れなどには切削加工や釘打ちができる合板等の木質系の材料が用いられている。このような木質系の材料にも調湿性はあるものの、空気調和・衛生工学会平成17年度大会学術講演論文集のB−23(非特許文献1)によると、湿式で調湿性の高い材料をボードに塗布した場合と木材を比較した場合、木材の調湿性は1/2以下と低い。このため、押入れ用の調湿材などが市販されている。しかし、調湿性の高い材料とバインダーを混合してボードとしたものは切削加工や釘打ちができず、施工時に接着剤を用いる必要があり、その接着剤から放散される物質に起因する室内環境悪化のおそれもあった。
【0009】
そこで、湿式でなく、貼るだけで高い調湿性を有し、切削加工や釘打ちも可能な加工性の良いボードが求められている。
【特許文献1】特許第2652593号公報
【非特許文献1】中川浩、外4名、「稚内珪藻土利用による室内環境保全に関する研究(その1)アトピー性皮膚炎患者の症状に及ぼす影響」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、高い調湿性を有すると共に加工性の良い調湿性植物繊維ボードを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の請求項1に係る調湿性植物繊維ボードは、植物から得られるリグノセルロース繊維1同士がバインダー2で接着されて形成されていると共に、内部に調湿材3が保持されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1において、植物から得られるリグノセルロース繊維1同士をバインダー2で接着して植物繊維マット4が形成され、複数の植物繊維マット4の間に調湿材3からなる調湿材層5を介在させた状態でプレス成形されたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2において、植物繊維マット4の内部にも調湿材3が保持されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3において、調湿材層5を介して一方の側に積層される植物繊維マット4の厚さと他方の側に積層される植物繊維マット4の厚さとが異なることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、調湿材3が珪藻土であることを特徴とするものである。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、密度が400kg/m以上2000kg/m以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係る調湿性植物繊維ボードによれば、リグノセルロース繊維が相互に絡み合ってボードの内部に外部と連通する空隙部が無数に形成され、この空隙部に調湿材が均一に分散して保持されていることによって、湿気がボードの内部と外部を自由に行き来することができ、調湿性を高めることができると共に、切削加工や釘打ち等の加工性も高めることができるものである。しかも調湿材がボードの内部に保持されていることによって、ボードから剥離するようなことがないものである。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、調湿材が複数の植物繊維マットの間に挟み込まれて保持されていることによって、調湿材の表面にはバインダーの膜が形成されることがなくなり、調湿材の吸放出能力を最大限に生かすことができ、調湿性をさらに高めることができるものである。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、調湿材層のみならず植物繊維マットの内部にも調湿材が含まれていることによって、ボードの内部全体に含まれる調湿材の量を増加させることができ、調湿性をさらに高めることができるものである。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、調湿材層を介していずれかの側に積層される植物繊維マットの厚さが厚いことによって、ボードの強度を高めることができると共に撓みを低減することができるものである。また、撓み低減などのためにボード全体を厚くせざるを得ないような場合であっても、外部に露出している側の植物繊維マットの厚さを薄くしておけば、外気と調湿材層との距離が短くなり、外部の湿気が調湿材層に到達しやすくなるので、調湿性を十分に確保することができるものである。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、珪藻土は他の調湿材に比べて吸放湿性が高いことによって、調湿性をさらに高めることができるものである。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、ボードの密度が400kg/m以上であることによって、強度の低下を防止することができるものであり、また、ボードの密度が2000kg/m以下であることによって、調湿性の低下を防止することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、この調湿性植物繊維ボードA(以下単にボードAともいう)は、植物から得られるリグノセルロース繊維1を基材として用い、この基材同士がバインダー2で接着されて形成されていると共に、内部に調湿材3が保持されている。
【0025】
基材であるリグノセルロース繊維1は相互に絡み合ってボードAを構成するため、必然的にボードAの内部や表面に空隙部6が生じる。
【0026】
図2はボードAを厚さ方向に薄くスライスしたときの空隙部6の状態を説明する模式図である。リグノセルロース繊維1が相互に絡み合い、それらの間に空隙部6が生じる。調湿材3はこの空隙部6に均一に分散して保持されている。このように、ボードA中に調湿材3が均一に分散されていると、湿潤時には湿気がボードAの空隙部6に入り込み、ボードA内部の調湿材3に吸収される。また、乾燥時には調湿材3から放出された水分がボードAの空隙部6を通って外部に放出されるものである。このように、透湿性に優れたリグノセルロース繊維1のボードA中に調湿材3を含有させることで、調湿性の高いボードAを実現することができる。
【0027】
また、調湿材3はボードAの内部に保持されているため、剥離などを起こすことはなく、また切削や釘打ちも可能となる。
【0028】
本発明で用いるリグノセルロース繊維1としては、その主成分がセルロースとリグニンからなるものが使用可能である。具体的には、ケナフ、亜麻、ラミー、大麻、ジュート等の麻類植物の靭皮から採取される繊維、マニラ麻やサイザル麻等の麻類植物の茎又は葉の筋から採取される繊維や、木材繊維が挙げられる。これらの繊維は、セルロースとリグニンのほか、ヘミセルロースやペクチン等の成分で構成されている。
【0029】
ここで挙げた繊維のうち、麻類植物の繊維は、結晶性で強度の高いセルロースの比率が60%以上と木材繊維の30〜50%より高く、繊維としての強度が高い。またこれらの植物からは、レッティングと呼ばれる浸水処理及び物理的な解繊処理により、長さが20mm以上、直径が30〜200μmの繊維が容易に得られる。
【0030】
本発明で用いるリグノセルロース繊維1は、上記のいずれかの処理で得られる繊維が用いられるほか、繊維状又は紡糸処理により糸状にされたものであればよく、これらに限定されるものではない。またリグノセルロース繊維1をシート状、不織布、織布に加工したものを用いても良い。
【0031】
また、本発明で用いるバインダー2については、特に限定されない。具体的には、ユリア、メラミン、フェノール・エポキシ樹脂やウレタン系樹脂などの熱硬化性樹脂接着剤や酢酸ビニル系接着剤、合成ゴム系接着剤、ポリ乳酸やデンプン系樹脂のエマルジョン接着剤などが挙げられる。
【0032】
ここで、基材であるリグノセルロース繊維1にバインダー2を含有させる方法については、特に限定されない。具体的には、バインダー2をリグノセルロース繊維1にスプレーする方法やバインダー2中にリグノセルロース繊維1を含浸する方法が挙げられる。
【0033】
また、本発明で用いる調湿材3については、吸放湿性を有する材料であれば特に限定されない。具体的には、木炭、竹炭などの炭類、タルク、ゼオライト、珪藻土、シリカゲル、モンモリロナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、アルミナ、シリカなどの無機物などが挙げられる。これらの材料は、多孔質の材料でありこれらの穴に水分が出入りすることで吸放湿性を有し、それだけでなく、気中の化学物質の吸着性も有することが多いので、このような機能をボードAに付与することができる。
【0034】
ここで、ボードA中に調湿材3を均一に分散させて保持させる方法についても、特に限定されない。具体的には、調湿材3を分散させた液体状のバインダー2をリグノセルロース繊維1にスプレーしたり含浸させたりする方法や、調湿材3をリグノセルロース繊維1に分散させた後、バインダー2を含有させる方法、リグノセルロース繊維1、バインダー2、調湿材3を同時に混合する方法などが挙げられる。
【0035】
そして、上記のようにしてリグノセルロース繊維1にバインダー2を含有させ、かつ、調湿材3を均一に分散させた後に、これをプレス成形することによって、図1に示すような調湿性植物繊維ボードAを得ることができる。このようにして形成されたボードAにあっては、リグノセルロース繊維1が相互に絡み合ってボードAの内部に外部と連通する空隙部6が無数に形成され、この空隙部6に調湿材3が均一に分散して保持されていることによって、湿気がボードAの内部と外部を自由に行き来することができ、調湿性を高めることができると共に、切削加工や釘打ち等の加工性も高めることができるものである。しかも調湿材3がボードAの内部に保持されていることによって、ボードAから剥離するようなことがないものである。
【0036】
図3は本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、この調湿性植物繊維ボードAは、次のようにして作製される。まず、植物から得られるリグノセルロース繊維1を基材として用い、この基材同士をバインダー2で接着することによって、植物繊維マット4を作製する。次に、このようにして形成される植物繊維マット4を複数用意し、図4のように複数の植物繊維マット4の間に調湿材3からなる調湿材層5を介在させる。そしてこの状態でプレス成形することによって、図3に示すようなサンドイッチ構造の調湿性植物繊維ボードAを得ることができる。このようにして形成されたボードAにあっては、調湿材3が複数の植物繊維マット4の間に挟み込まれて保持されていることによって、調湿材3の表面にはバインダー2の膜が形成されることがなくなり、調湿材3の表面が十分に露出されることとなり、調湿材3の吸放出能力を最大限に生かすことができ、調湿性をさらに高めることができるものである。
【0037】
図3は2枚の植物繊維マット4の間に調湿材層5を形成したものであるが、用いる植物繊維マット4の枚数及び形成される調湿材層5の層数はこれに限定されないのはいうまでもない。図5は4枚の植物繊維マット4を用い、各植物繊維マット4の間に調湿材層5を形成し、計3層の調湿材層5を形成したものである。
【0038】
図6は本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、この調湿性植物繊維ボードAは、植物繊維マット4の内部にも調湿材3が保持されて形成されており、次のようにして作製される。まず、植物から得られるリグノセルロース繊維1を基材として用い、この基材同士をバインダー2で接着する際に調湿材3を均一に分散させて配合することによって、調湿材3入りの植物繊維マット4を作製する。このとき、調湿材3を分散させた液体状のバインダー2をリグノセルロース繊維1にスプレーしたり含浸させたりする方法や、調湿材3をリグノセルロース繊維1に分散させた後、バインダー2を含有させる方法、リグノセルロース繊維1、バインダー2、調湿材3を同時に混合する方法などを使用することができる。次に、このようにして形成される調湿材3入りの植物繊維マット4を複数用意し、図4の場合と同様にして、複数の調湿材3入りの植物繊維マット4の間に調湿材3からなる調湿材層5を介在させる。そしてこの状態でプレス成形することによって、図6に示すようなサンドイッチ構造の調湿性植物繊維ボードAを得ることができる。このようにして形成されたボードAにあっては、調湿材層5のみならず植物繊維マット4の内部にも調湿材3が含まれていることによって、ボードAの内部全体に含まれる調湿材3の量を増加させることができ、調湿性をさらに高めることができるものである。
【0039】
図7は本発明の実施の形態の他の一例を示すものであり、この調湿性植物繊維ボードAは、厚さの異なる植物繊維マット4を複数用いて、次のようにして作製される。まず、植物から得られるリグノセルロース繊維1を基材として用い、この基材同士をバインダー2で接着することによって、植物繊維マット4を作製する。次に、このようにして形成される厚さの異なる植物繊維マット4を複数用意し、図4の場合と同様にして、複数の植物繊維マット4の間に調湿材3からなる調湿材層5を介在させる。そしてこの状態でプレス成形することによって、図7に示すようなサンドイッチ構造の調湿性植物繊維ボードAを得ることができる。このようにして形成されたボードAにあっては、調湿材層5を介して一方の側に積層される植物繊維マット4の厚さと他方の側に積層される植物繊維マット4の厚さとが異なるので、いずれかの側に積層される植物繊維マット4の厚さが厚いことによって、ボードAの強度を高めることができると共に撓みを低減することができるものである。また、撓み低減などのためにボードA全体を厚くせざるを得ないような場合であっても、外部に露出している側の植物繊維マット4の厚さを薄くしておけば、外気と調湿材層5との距離が短くなり、外部の湿気が調湿材層5に到達しやすくなるので、調湿性を十分に確保することができるものである。
【0040】
図7は厚さの異なる2種類の植物繊維マット4を用いて作製したボードAであるが、1種類のみの植物繊維マット4を用いても、これと同様のボードAを作製することができる。すなわち、図8に示すように、調湿材層5の両側に隣接する植物繊維マット4の積層枚数を異ならせることによって、図7の場合と同様のボードAを作製することができる。このように、1種類のみの植物繊維マット4を用いるようにすれば、厚さの異なる多種類の植物繊維マット4を作製する必要がなくなる分、ボードAの生産性を向上させることができるものである。なお、調湿材層5を介して一方(又は他方)の側に積層される植物繊維マット4の厚さとは、調湿材層5に隣接している植物繊維マット4のみの厚さではなく、積層されている全ての植物繊維マット4の厚さを合計した厚さを意味する。例えば、図8に示すボードAにあっては、調湿材層5を介して一方の側に積層される植物繊維マット4の厚さは1枚の厚さであり、他方の側に積層される植物繊維マット4の厚さは3枚重ねた厚さである。
【0041】
上述した各実施の形態において、調湿材3は珪藻土であることが好ましい。珪藻土は、珪藻と呼ばれる藻類等の植物性プランクトンの死骸が海底や湖底に堆積し、細胞壁に非晶質の二酸化ケイ素が沈着した後、死骸の中の有機物の部分が徐々に分解されていき、最終的に主に二酸化ケイ素からなるその殻の部分だけが残った堆積物で粘土状の泥土である。珪藻が水や養分を外部から取り入れるための細孔が多数あいており、これらの細孔に水分が出入りする。珪藻土の細孔径は吸放湿に適した数nm付近に分布し、吸放湿性が高いことが知られている。そのため、調湿材3として吸放湿性が高い珪藻土を用いることで、調湿性をさらに向上させることができるものである。
【0042】
また、上述した各実施の形態において、調湿性植物繊維ボードAの密度は400kg/m以上2000kg/m以下であることが好ましい。このように、ボードAの密度が400kg/m以上であることによって、強度の低下を防止することができるものである。しかし、ボードAの密度が400kg/m未満であると、リグノセルロース繊維1とバインダー2との結合が弱くなり、強度など良好な特性を得ることが困難となったり、ボードAの内部から調湿材3がこぼれて脱離してしまったりするおそれがある。また、ボードAの密度が2000kg/m以下であることによって、調湿性の低下を防止することができるものである。しかし、ボードAの密度が2000kg/mを超えると、ボードA内部における空隙部6の割合が小さくなり、透湿性が低くなり、結果として調湿性が低下するおそれがある。従って、プレス成形時の圧力やボードAの厚さを調整するなどして、ボードAの密度を400kg/m以上2000kg/m以下に設定するのが好ましく、これにより強度などの特性と調湿性とを十分に確保することができるものである。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0044】
(実施例1)
バインダー:ポリ乳酸エマルジョン(品番:PL−1000、メーカー:ミヨシ油脂株式会社)に調湿材:タルク(品番:TT、メーカー:竹原化学工業株式会社)を混合して調製した液に、ケナフ茎部の外皮部分となる靭皮から得られたケナフ繊維束(平均径82μm)を用いて作製した植物繊維マット(単位面積あたりの重量600g/m)を含浸し、乾燥したときの重量比率が植物繊維マット:600、ポリ乳酸の不揮発分:150、タルク:250となるよう、絞りにより調整した。この含浸した植物繊維マットを乾燥器にて100℃、10分乾燥した後、2枚重ねて金型温度170℃、圧力3.5MPaで120秒間プレス成形した。その際、ボードの厚さが0.95mm、密度が2100kg/mとなるように、厚さを調整したステンレス製の鉄棒(ディスタンスバー)をプレス装置の上型及び下型の間に挟んでプレス成形を行うことによって、図1に示すようなボードを作製した。
【0045】
(実施例2)
ボードの厚さを2mm、密度が1000kg/mとなるようにした以外は、実施例1と同様にして、図1に示すようなボードを作製した。
【0046】
(実施例3)
調湿材として、タルクの代わりに珪藻土(稚内産珪藻土、粒径0.7mmアンダー品)を用いて、乾燥したときの重量比率が植物繊維マット:600、ポリ乳酸の不揮発分:150、珪藻土:250となるようにした以外は、実施例2と同様にして、図1に示すようなボードを作製した。
【0047】
(実施例4)
バインダー:ポリ乳酸エマルジョン(品番:PL−1000、メーカー:ミヨシ油脂株式会社)に、ケナフ茎部の外皮部分となる靭皮から得られたケナフ繊維束(平均径82μm)を用いて作製した植物繊維マット(単位面積あたりの重量600g/m)を含浸し、乾燥したときの重量比率が植物繊維マット:600、ポリ乳酸の不揮発分:150となるよう、絞りにより調整した。この含浸した植物繊維マットを乾燥器にて100℃、10分乾燥した後、1枚の上に、乾燥したときの重量比率が植物繊維マット:750、珪藻土:500となるよう、調湿材:珪藻土を均一に振りまいて調湿材層を形成した。そして、図4に示すように、珪藻土が均一に振りまかれて形成された調湿材層の上からもう1枚植物繊維マットを重ねて金型温度170℃、圧力3.5MPaで120秒間プレス成形した。その際、ボードの厚さが2mm、密度が1000kg/mとなるように、厚さを調整したステンレス製の鉄棒をプレス装置の上型及び下型の間に挟んでプレス成形を行うことによって、図3に示すようなボードを作製した。
【0048】
(実施例5)
バインダー:ポリ乳酸エマルジョン(品番:PL−1000、メーカー:ミヨシ油脂株式会社)に調湿材:珪藻土(稚内産珪藻土、粒径0.7mmアンダー品)を混合して調製した液に、ケナフ茎部の外皮部分となる靭皮から得られたケナフ繊維束(平均径82μm)を用いて作製した植物繊維マット(単位面積あたりの重量600g/m)を含浸し、乾燥したときの重量比率が植物繊維マット:600、ポリ乳酸の不揮発分:150、珪藻土:250となるよう、絞りにより調整した。この含浸した調湿材入りの植物繊維マットを乾燥器にて100℃、10分乾燥した後、1枚の上に、乾燥したときの重量比率が調湿材入りの植物繊維マット:1000、珪藻土:500となるよう、調湿材:珪藻土を均一に振りまいて調湿材層を形成した。そして、図4に示すように、珪藻土が均一に振りまかれて形成された調湿材層の上からもう1枚調湿材入りの植物繊維マットを重ねて金型温度170℃、圧力3.5MPaで120秒間プレス成形した。その際、ボードの厚さが2mm、密度が1250kg/mとなるように、厚さを調整したステンレス製の鉄棒をプレス装置の上型及び下型の間に挟んでプレス成形を行うことによって、図6に示すようなボードを作製した。
【0049】
(実施例6)
バインダー:フェノール樹脂接着剤(品番:PL−3725、メーカー:群栄化学工業株式会社)に、ケナフ茎部の外皮部分となる靭皮から得られたケナフ繊維束(平均径82μm)を用いて作製した植物繊維マット(単位面積あたりの重量600g/m)を含浸し、乾燥したときの重量比率が植物繊維マット:600、フェノール樹脂の不揮発分:150となるよう、絞りにより調整した。この含浸した植物繊維マットを乾燥器にて100℃、10分乾燥した後、3枚の植物繊維マットを重ねた上に、乾燥したときの重量比率が含浸した1枚の植物繊維マット:750、珪藻土:500となるよう、調湿材:珪藻土を均一に振りまいて調湿材層を形成した。そして、図4に示すように、珪藻土が均一に振りまかれて形成された調湿材層の上からもう1枚植物繊維マットを重ねて金型温度170℃、圧力3.5MPaで240秒間プレス成形した。その際、ボードの厚さが7mm、密度が1000kg/mとなるように、厚さを調整したステンレス製の鉄棒をプレス装置の上型及び下型の間に挟んでプレス成形を行うことによって、図8に示すようなボードを作製した。
【0050】
(比較例1)
木質ボードとして厚さ0.7mmのシナ(広葉樹)単板3枚を用いて、3ply合板を作製した。バインダーとしては、フェノール樹脂接着剤(品番:PL−3725、メーカー:群栄化学工業株式会社)を用いて、接着面の塗布量はフェノール樹脂の不揮発分が単位面積あたり150g/mとなるようにした。そして、金型温度170℃、圧力3.5MPaで240秒間プレス成形した。その際、ボードの厚さが2.3mm、密度が550kg/mとなるように、厚さを調整したステンレス製の鉄棒をプレス装置の上型及び下型の間に挟んでプレス成形を行うことによって、ボードを作製した。
【0051】
(比較例2)
バインダー:ポリ乳酸エマルジョン(品番:PL−1000、メーカー:ミヨシ油脂株式会社)に、ケナフ茎部の外皮部分となる靭皮から得られたケナフ繊維束(平均径82μm)を用いて作製した植物繊維マット(単位面積あたりの重量600g/m)を含浸し、乾燥したときの重量比率が植物繊維マット:600、ポリ乳酸の不揮発分:150となるよう、絞りにより調整した。この含浸した植物繊維マットを乾燥器にて100℃、10分乾燥した後、2枚重ねて金型温度170℃、圧力3.5MPaで120秒間プレス成形した。その際、ボードの厚さが2mm、密度が750kg/mとなるように、厚さを調整したステンレス製の鉄棒をプレス装置の上型及び下型の間に挟んでプレス成形を行うことによって、ボードを作製した。
【0052】
(比較例3)
バインダー:ポリ乳酸エマルジョン(品番:PL−1000、メーカー:ミヨシ油脂株式会社)に調湿材:タルク(品番:TT、メーカー:竹原化学工業株式会社)を混合し、重量比率がポリ乳酸の不揮発分:250、タルク:250である液を調製した。そしてこの液を比較例1で作製したボードに調湿材:タルクの単位面積あたりの重量が500g/mとなるように塗布し、乾燥器にて100℃、10分乾燥した後、さらに170℃、120秒間乾燥することによって、ボードを作製した。
【0053】
(特性評価及び結果)
上記のようにして得られた各ボードを30cm角にカットし、25℃50%RHの恒温恒湿槽に24時間入れてボードを調湿し重量を計測した後、25℃90%RHの恒温恒湿槽に24時間入れた後の重量増加量を計測し、これを吸湿量とした。その後、25℃50%RHの恒温恒湿槽に24時間入れた後の重量減少量を計測し、これを放湿量とした。
【0054】
また、1mの高さから重さ5gの鉄球を20回垂直にボードに落下させ、ボード表面の変化を目視で観察した。
【0055】
以上の実施例及び比較例の配合及び計測結果についてまとめたものを下記[表1]に示す。
【0056】
【表1】


【0057】
実施例1〜6の吸放湿量と、比較例1〜3の吸放湿量とを比較すると、どの実施例でも吸放湿量が増加しており、調湿性が向上していることが確認される。しかも実施例全てにおいて、調湿材はボードの内部に保持されているため、剥離などが起きることはなく、また切削や釘打ちも可能であった。
【0058】
比較例3ではバインダーと混合した調湿材がボード表面に塗布されているが、剥離防止のため、バインダー量が多くなり、このため、吸放湿量の増加は実施例より低くなった。しかも落球試験においても欠けが発生するという問題が生じた。
【0059】
一方、実施例1に比べて実施例2ではボード密度を変えることで吸放湿量が増加した。実施例2はボードの密度を1000kg/mと適当な密度に調整しているため、ボード内に湿気が透過できる空隙部が比較的多く存在し、調湿性が向上したものと考えられる。
【0060】
また、実施例2に比べて実施例3では調湿材として珪藻土を用いることで吸放湿量が増加した。実施例3では調湿材として吸放湿量が高い珪藻土を用いているため、調湿性が向上したものと考えられる。
【0061】
また、実施例3と実施例4を比較すると、調湿材の種類と量、ボードの密度・厚さが変わらないのに、実施例4では吸放湿量が増加した。実施例4では植物繊維マットの間に調湿材層が挟み込まれているだけで、調湿材とバインダーとは混ざり合っておらず、調湿材の表面にはバインダーの膜が形成されていないので、調湿材の吸放出能力を最大限に生かすことができ、調湿性が向上したものと考えられる。
【0062】
実施例4と実施例5を比較すると、実施例5では吸放湿量が増加した。実施例5ではボードに含まれる調湿材の量を増加させたので、調湿性が向上したものと考えられる。
【0063】
実施例4と実施例6を比較すると、ボードの厚さが実施例6の方が厚いにもかかわらず、吸放湿量は変わらなかった。図8のように調湿材層を介して非対称なボード構造として、調湿材層のボード表面からの距離を実施例4と同じにすることで、厚さの厚いボードでも調湿性が確保できたものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る調湿性植物繊維ボードの一例を示す断面図である。
【図2】同上の調湿性植物繊維ボードをスライスしたものを示す斜視図である。
【図3】本発明に係る調湿性植物繊維ボードの他の一例を示す断面図である。
【図4】同上の調湿性植物繊維ボードを作製する途中の工程を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る調湿性植物繊維ボードの他の一例を示す断面図である。
【図6】本発明に係る調湿性植物繊維ボードの他の一例を示す断面図である。
【図7】本発明に係る調湿性植物繊維ボードの他の一例を示す断面図である。
【図8】本発明に係る調湿性植物繊維ボードの他の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
A 調湿性植物繊維ボード
1 リグノセルロース繊維
2 バインダー
3 調湿材
4 植物繊維マット
5 調湿材層
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成19年1月17日(2007.1.17)
【代理人】 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清

【識別番号】100085604
【弁理士】
【氏名又は名称】森 厚夫


【公開番号】 特開2008−173834(P2008−173834A)
【公開日】 平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願番号】 特願2007−8509(P2007−8509)