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【発明の名称】 植物細片含有成形品の製造方法
【発明者】 【氏名】菅原 亮

【要約】 【課題】ヘミセルロースを含有する植物細片を原料として使用し、植物細片に含まれる成分あるいはその変性物質を接着成分として接着剤を用いないで植物細片含有の成形品を得るにあたり、樹脂を使用することなしに植物由来の押出成形品の製造を可能とする新しい技術手段を提供する。

【解決手段】ヘミセルロースを含有する植物細片を、その含水率が20%以上200%以下となるよう調整し、押出成形機で押出成形して植物細片含有成形品を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘミセルロースを含有する植物細片を、その含水率が20%以上200%以下となるよう調整し、押出成形機で押出成形することを特徴とする植物細片含有成形品の製造方法。
【請求項2】
ヘミセルロースを含有する植物細片がケナフ茎部を粉砕処理して得られるものであることを特徴とする請求項1に記載の植物細片含有成形品の製造方法。
【請求項3】
押出成形機での混練と成形の温度が150℃以上240℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の植物細片含有成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘミセルロースを含有する植物細片を原料として使用し、植物細片に含まれる成分あるいはその変性物質を接着成分として、接着剤を用いないで得られる植物細片含有成形品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プラスチック分野において、塩化ビニルやポリプロピレンなどの樹脂と木粉を複合させて押出成形することが広く行われてきている。木粉単体では可塑性がなく、接着性もないため、木材をエステル化やエーテル化して熱可塑化する取組が行われているが、充分な流動性が確保できないため、樹脂を木粉に添加し、その樹脂が溶融して可塑化し、樹脂が固化して成形品となる。
【0003】
樹脂と木粉を複合させた成形品は木質部材に近似した風合いを持つと共に、コストの安い木粉は増量剤として用いられる。
【0004】
ただ、樹脂の比率が高いと、コスト高や木質部材に近い風合いが薄れる他に、石油由来の材料の比率が多くなると言う問題がある。近年地球温暖化など、環境問題に対する関心が高まるにつれ、石油由来の材料から、低エミッションかつカーボンニュートラルな植物由来の材料に注目が集まってきていることから石油由来の材料の比率を抑えて、成形品としての所要の固着度等の性能を実現することが望まれている。
【0005】
また、樹脂として塩化ビニルなどを用いた場合は、その樹脂に含まれる可塑剤などは環境ホルモンであるとの懸念がある。樹脂としてホルムアルデヒドを含む樹脂を用いた場合は、ホルムアルデヒドなどの有害成分が揮発し、居住者の健康に悪影響を与えるおそれがある。さらに、焼却する場合において、樹脂の燃焼による有害ガスが発生するという問題もある。
【0006】
これらの観点から、樹脂を使用しない成形できる植物由来の押出成形品の開発が強く望まれている。
【0007】
そこで、従来より、樹脂を使用しないで、パーティクルや微細繊維のような植物細片をプレスで加熱加圧成形し、植物の細片に含まれる接着成分で植物細片を相互に接着して成形品とすることが提案されている。例えば、バガス、トウモロコシの茎、ひまわりの茎、亜麻の茎などの植物材料を原料として加熱加圧成形し、バインダレスボードを製造する方法(特許文献1)やリグノセルロース材料としてアオイ科靱皮繊維植物を原料として用い、加熱加圧成形してバインダレスボードを製造する方法(特許文献2)等の各種の提案がなされている。
【0008】
しかしながら、従来提案された方法は、いずれも植物細片の加熱加圧成形によるものに限られており、連続的に成形することができ、生産性の向上や製品の多様化の価値の向上をも図ることの期待される押出成形については、樹脂を使用することなく成形品とすることは困難とされてきた。
【特許文献1】特開昭60−30309号公報
【特許文献2】特許第3034956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のとおりの背景から、樹脂を使用することなしに植物由来の押出成形品の製造を可能とする新しい技術手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の特徴を有する製造方法を提供する。
【0011】
第1:ヘミセルロースを含有する植物細片を、その含水率が20%以上200%以下となるよう調整し、押出成形機で押出成形して植物細片含有成形品を製造する。
【0012】
第2:上記方法において、ヘミセルロースを含有する植物細片がケナフ茎部を粉砕処理して得られるものとする。
【0013】
第3:押出成形機での混練と成形の温度が150℃以上240℃以下であることとする。
【発明の効果】
【0014】
上記のとおりの第1の発明方法によれば、植物細片に水を加える等によってヘミセルロースを含有する植物細片の含水率を20%以上200%以下になるよう調整することで、植物細片を可塑化して押出成形機内での混練を可能とし、かつ、押出成形機内で植物細片の水分が水蒸気となって植物細片中のヘキセルロースを加水分解し、再縮合して接着成分に変性させ、セルロースやリグニン、あるいはそれらの熱分解物等の他の成分との結合によって植物細片を相互に接着させ、押出成形品の成形を可能とする。
【0015】
これによって、樹脂を使用することなしに、植物由来の材料のみで、生産性が高く、製品多様化として価値のある植物細片含有成形品の押出成形が実現される。
【0016】
また、植物細片としてケナフ茎部の粉砕処理されたものを用いる第2の発明方法によれば、ケナフ茎部はヘミセルロース成分の含有率が高いことから、より確実に、固着力等の性能に優れた植物細片含有成形品を製造することが可能となる。
【0017】
さらに、押出成形機での混練と成形の温度を150℃以上240℃以下とする第3の発明方法によれば、セルロースやリグニン等の熱分解を促すことで、成形品の物性を向上させ、変性、変色をより効果的に抑えることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明において植物細片の原料となる植物材料としては、その種類が特に制限されるものではないが、一年生または二年生草木類の植物や、あるいは穀物、植物油、植物糖、植物繊維などを採取した後の農産廃棄物なども利用することができる。具体的には、例えば、ケナフ、ジュート、亜麻などの麻類植物や、イネ、ハガス、ムギ、トウモロコシ、ひまわりなどの茎部を用いることができる。これらを用いることによって資源の有効利用を図ることができるものである。特に、ケナフ、ジュート、亜麻などの麻類植物、特にケナフの、茎部の表皮にあたる靱皮部を除いた芯部は針葉樹や広葉樹などの木材と同じくセルロース、ヘミセルロース、リグニンが主要な構成成分であるが、木材に比べてヘミセルロース成分の含有率が高く、接着成分に富んでいるという特徴があり、本発明の材料として適しているものである。
【0019】
本発明は、例えばこれらの植物材料の茎部を切断や粉砕処理した細片に水を加えること等によって含水率を調整し、可塑化して押出機内で混練が可能とする。また、押出機中で植物片中の水分が100℃以上で水蒸気となり、植物片中のヘミセルロースが水蒸気雰囲気下で加水分解後、再縮合して接着成分に変性し、押出機内で接着成分が接着成分同士または、セルロースやリグニンなどの他の成分と結合することによって植物片同士が接着し押出成形品が押出成形できるようにしている。
【0020】
植物細片の含水率は本発明において20%以上200%以下であることが好ましい。ここで、含水率は、以下の式により算定されるものとして定義される。
【0021】
(乾燥前の重量−乾燥後の重量)/乾燥後の重量
このように定義される含水率は、20%未満では押出機内での流動性が低いため押出を行うことが難しいとともに、接着成分の結合促進効果が小さい。200%を超えると、成形時に水分が過剰で押出機の温度が上昇しないとともに、押出後も成形品内に水分が残留し、内部に空洞ができたり、成形品が破裂したりする。これを防ぐためには押出速度を遅くして水を蒸発させることが必要となり、押出時間が長くかかり成形の効率が低下するとともに、押出機内での滞留時間が長くなるため、成形品の物性低下、変性、変色などが引き起こされることとなる。
【0022】
さらに、植物片の含水率が30%以上100%以下であると、押出機内の流動性が高いとともに、押出機内で植物片中のヘミセルロースが水蒸気雰囲気下で加水分解後、再縮合して接着成分に変性し結合促進効果が大きく、また押出後の成形品内に水分が残留し、内部に空洞ができたり、成形品が破裂したり、変色などの問題が発生しないのでより好ましい。
【0023】
20%以上200%以下の含水率の調整は、植物細片に水を加えること、たとえばスプレー、浸漬等により加水し、あるいは必要に応じて自然、もしくは加熱乾燥、もしくはこれらを組合わせること等により行うことができる。
【0024】
細片の形状は特に制限されるものではなく、含水率が20%以上200%以下となるように調整して可塑性を有する形状であればよい。これらの植物材料例えば粉砕処理することによって、径が数百μm〜数cmの粒状の細片に加工することができる。特に限定されることはないが、本発明の押出成形においては、植物細片の平均粒径は、0.4〜8mm程度の範囲とすることが好ましい。
【0025】
なお、本発明の押出成形品は、植物細片に含まれる接着成分で植物細片を接着したものであるが、多少の合成樹脂等を併用して接着を行なうようにしてもよい。
【0026】
また、本発明において、植物細片押出成形機での混練・成形の温度は150℃以上240℃以下であることが好ましい。植物細片中のヘミセルロースが水蒸気雰囲気下で加水分解後、再縮合して強固な接着成分に変性するための温度として150℃以上が望ましい。240℃を超えると、セルロースやリグニンなど植物中の成分の熱分解が激しくなり、成形品の物性低下、変性、変色などが引き起こされることとなる。成形の効率の面からは、植物細片中のヘミセルロースが水蒸気雰囲気下で加水分解後、再縮合して接着成分に変性する速度が高い160℃以上210℃以下の範囲がさらに好ましい。
【0027】
この成形に用いる押出成形機としては、従来から一般的に使用されている一軸や二軸押出機、混練をパッチ式で行うニーダールーダーなどが挙げられるが、特に制限されるものではない。
【0028】
本発明において製造される植物細片含有成形品は、様々な寸法(厚み、幅、長さ)や形状(例えば、ボード、シート、柱状、線状等)を有していることであってよく、その用途も建築・建設用や、産業用、農業用、医療用、等々の様々であってよい。
【0029】
そこで次に実施例によってさらに具体的に説明する。もちろん以下の例によって本発明が限定されることはない。
【0030】
(実施例1)
ケナフ茎芯部の外皮部分となる靱皮繊維を取り除いた後の、ケナフ茎芯部を植物材料として用い、これを粉砕機で粉砕し、1mmメッシュのふるいをかけることによって、ケナフ茎芯破砕粉を得た。この破砕粉の平均粒径は、0.7mmであった。この粉砕粉にスプレーで水を加え含水率が30%となるように調整した。
【0031】
次に、押出混練機(笠松加工製ニーダールーダーKR−35)の混練部、押出部およびダイス部を150℃に加熱し、この破砕粉を500g混練部に投入し2分混練後、押出部のスクリューを回転させてダイス部(開口部高さ0.5cm、幅4cm)から混練物を0.4cm/分の速度で押し出して、コンベアで引き取り後、長さ方向を切断して、長さ10cm、幅4cm、高さ0.5cmの成形品を成形した。
【0032】
(実施例2)
押出部およびダイス部を200℃に加熱した他は、実施例1と同様にして成形品を成形した。
【0033】
(実施例3)
ケナフ茎芯破砕粉の含水率が100%となるように調整した他は、実施例2と同様にして成形品を成形した。
【0034】
(比較例1)
実施例1と同様のケナフ茎芯破砕粉の含水率が10%となるように調整した。
【0035】
次に、押出混練機(笠松加工製ニーダールーダーKR−35)の混練部、押出部およびダイス部を150℃に加熱し、この破砕粉を500g混練部に投入し2分混練後、押出部のスクリューを回転させてダイス部(開口部高さ0.5cm、幅4cm)から混練物を0.2cm/分の速度で押し出そうとしたが、破砕粉がスクリュー部に噛み込まず、押し出しを行うことが出来なかった。
【0036】
押出部およびダイス部を200℃に加熱して、押し出しを行なおうとしたが、同様に破砕粉がスクリュー部に噛み込まず、押し出しを行うことが出来なかった。
【0037】
(比較例2)
比較例1の通り、植物細片の含水率が低い場合は、流動性が低く押出成形を行うことが出来なかった。そこで、ポリエチレンと木粉を複合させて押出成形した成形品を比較例2として作成した。
【0038】
平均粒径0.7mmのベイツガ木粉を植物材料として用い、この木粉を含水率が5%となるように調整した。
【0039】
次に、押出混練機(笠松加工製ニーダールーダーKR−35)の混練部、押出部およびダイス部を150℃に加熱し、この木粉425gとポリエチレンのペレット(商品名:ノパテックHJ−490、メーカー:日本ポリエチレン(株))75gを混練部に投入し4分混練後、押出部のスクリューを回転させてダイス部(開口部高さ0.5cm、幅4cm)から混練部を0.4cm/分の速度で押し出して、コンベアで引き取り後、長さ方向を切断して、長さ10cm、幅4cm、高さ0.5cmの成形品を成形した。
【0040】
上記の実施例1〜3と比較例2で得た成形品について、比重と、JIS A 5908に基づいての曲げ強さを測定し、結果を表1に示した。
【0041】
【表1】


実施例1〜3の通り、ケナフ茎芯破砕粉の含水率を20%以上200%以下に調整し、混練押出温度を150℃以上240℃以下とすることで、樹脂を添加することなしに、押出成形品が成形できた。比較例1の通り、植物細片の含水率が低い場合は、流動性が低く押出成形を行うことが出来なかった。
【0042】
またその物性も木粉にポリエチレンを添加して作成した比較例2に比べて、強度が上回っていた。植物細片中のヘミセルロースが水蒸気雰囲気下で加水分解後、再縮合して接着成分に変性しているため、充分な強度が発現したと考えられる。
【0043】
実施例1〜3を比較すると、効率的に植物細片中のヘミセルロースが水蒸気雰囲気下で加水分解後、再縮合して接着成分に変性する含水率および混練押出温度が存在し、含水率が50%で混練押出温度が200℃であった実施例3の物性が最も高くなった。
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年12月25日(2006.12.25)
【代理人】 【識別番号】100093230
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 利夫


【公開番号】 特開2008−155531(P2008−155531A)
【公開日】 平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願番号】 特願2006−348248(P2006−348248)