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【発明の名称】 木材成形用金型
【発明者】 【氏名】鈴木 達哉

【氏名】北吉 信雄

【要約】 【課題】軟化した木材を支障なく圧縮成形することができる木材成形用金型を提供する。

【構成】木材1に当接する当接面から本体部分を通過して外部へ貫通された排出孔54および64を備える。この排出孔54および64の前記当接面における開口端は、圧縮力を加える際、圧縮成形後の木材1において活用されない箇所が当接する位置に形成すればより好ましい。また、圧縮される木材1は、肉厚方向に貫通され、圧縮力を受ける際に排出孔54および64と同軸的に連通可能である孔部11を有してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材に圧縮力を加えることによって前記木材を成形する木材成形用金型であって、
前記木材を成形する際、前記木材との間に介在する空気を外部へ排出する排出路を備えたことを特徴とする木材成形用金型。
【請求項2】
前記排出路は、前記木材に圧縮力を加えるときに前記木材に当接する当接面から外部へ貫通された排出孔を含むことを特徴とする請求項1記載の木材成形用金型。
【請求項3】
前記排出孔の前記当接面における開口端は、圧縮後の前記木材から取り除かれる表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されたことを特徴とする請求項2記載の木材成形用金型。
【請求項4】
前記排出孔の前記当接面における開口端は、圧縮後の前記木材に対して前記木材とは異なる部材によって被覆される表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されたことを特徴とする請求項2記載の木材成形用金型。
【請求項5】
全体として前記木材を挟持可能な複数の金型を有し、
前記排出孔は、前記複数の金型の少なくともいずれか一つに形成されたことを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の木材成形用金型。
【請求項6】
前記木材は、肉厚方向に貫通され、圧縮力を受けるときに前記排出孔と連通可能な孔部を有することを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項記載の木材成形用金型。
【請求項7】
全体として前記木材を挟持可能な複数の金型を有し、
前記排出路は、前記複数の金型のうちの少なくともいずれか一つの金型の表面であって前記木材に圧縮力を加えるときに前記木材または他の金型と接触する表面に形成された排出溝を含むことを特徴とする請求項1記載の木材成形用金型。
【請求項8】
前記排出溝の少なくとも一部は、前記複数の金型のうち前記木材に圧縮力を加えるときに接触しあう金型の互いに対向する表面にそれぞれ形成されたことを特徴とする請求項7記載の木材成形用金型。
【請求項9】
前記排出溝の少なくとも一部は、圧縮後の前記木材から取り除かれる表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されたことを特徴とする請求項7または8記載の木材成形用金型。
【請求項10】
前記排出溝の少なくとも一部は、圧縮後の前記木材に対して前記木材とは異なる部材によって被覆される表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されたことを特徴とする請求項7または8記載の木材成形用金型。
【請求項11】
前記木材は、圧縮力を受けるときに前記排出溝の一部と対向する端面に形成された溝部を有することを特徴とする請求項7〜10のいずれか一項記載の木材成形用金型。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、木材に圧縮力を加えることによってその木材を成形する木材成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然素材である木材が注目されている。木材はさまざまな木目を有するため、原木から形取る箇所に応じて個体差が生じ、その個体差が製品ごとの個性となる。また、長期の使用によって生じる傷や色合いの変化自体も、独特の風合いとなって使用者に親しみを生じさせることがある。これらの理由により、合成樹脂や軽金属を用いた製品にはない、個性的で味わい深い製品を生み出すことのできる素材として木材が注目されており、その加工技術も飛躍的に進歩しつつある。
【0003】
従来、かかる木材の加工技術として、吸水軟化した1枚の木材を圧縮し、その木材を圧縮方向と略平行にスライスして板状の一次固定品を得た後、この一次固定品を加熱吸水させながら所定の3次元形状に成形する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。また、軟化処理した状態で圧縮した1枚の木材を仮固定し、この木材を型に入れて回復させることによって型成形する技術も知られている(例えば、特許文献2を参照)。これらの技術では、木材の個体差や種類、加工後の木材の強度やその用途などを含むさまざまな点を考慮して、木材の肉厚や圧縮率が決められる。また、木材を圧縮成形する際には、木材を十分に軟化させた状態で行うのが一般的である。
【0004】
【特許文献1】特許第3078452号公報
【特許文献2】特開平11−77619号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術では、圧縮成形の最中、軟化した木材が木材成形用の金型の境界に密着してパッキンの役割を果たし、木材と金型との間に介在している空気を金型の外部へ排出できなくなってしまうことがあった。この場合には、木材と金型との間に介在する空気が空気ばねとして機能し、木材を所定の形状に成形する際の妨げとなっていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、軟化した木材を支障なく圧縮成形することができる木材成形用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様は、木材に圧縮力を加えることによって前記木材を成形する木材成形用金型であって、前記木材を成形する際、前記木材との間に介在する空気を外部へ排出する排出路を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、上記発明において、前記排出路は、前記木材に圧縮力を加えるときに前記木材に当接する当接面から外部へ貫通された排出孔を含むとしてもよい。
【0009】
また、上記発明において、前記排出孔の前記当接面における開口端は、圧縮後の前記木材から取り除かれる表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されたとしてもよい。
【0010】
また、上記発明において、前記排出孔の前記当接面における開口端は、圧縮後の前記木材に対して前記木材とは異なる部材によって被覆される表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されたとしてもよい。
【0011】
また、上記発明において、全体として前記木材を挟持可能な複数の金型を有し、前記排出孔は、前記複数の金型の少なくともいずれか一つに形成されたとしてもよい。
【0012】
また、上記発明において、前記木材は、肉厚方向に貫通され、圧縮力を受けるときに前記排出孔と連通可能な孔部を有するとしてもよい。
【0013】
また、上記発明において、全体として前記木材を挟持可能な複数の金型を有し、前記排出路は、前記複数の金型のうちの少なくともいずれか一つの金型の表面であって前記木材に圧縮力を加えるときに前記木材または他の金型と接触する表面に形成された排出溝を含むとしてもよい。
【0014】
また、上記発明において、前記排出溝の少なくとも一部は、前記複数の金型のうち前記木材に圧縮力を加えるときに接触しあう金型の互いに対向する表面にそれぞれ形成されたとしてもよい。
【0015】
また、上記発明において、前記排出溝の少なくとも一部は、圧縮後の前記木材から取り除かれる表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されたとしてもよい。
【0016】
また、上記発明において、前記排出溝の少なくとも一部は、圧縮後の前記木材に対して前記木材とは異なる部材によって被覆される表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されたとしてもよい。
【0017】
また、上記発明において、前記木材は、圧縮力を受けるときに前記排出溝の一部と対向する端面に形成された溝部を有するとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る木材成形用金型によれば、木材を成形する際、前記木材との間に介在する空気を外部へ排出する排出路を備えたことにより、軟化した木材を支障なく圧縮成形することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の形態(以後、「実施の形態」と称する)を説明する。なお、以下の説明で参照する図面はあくまでも模式的なものであって、同じ物体を異なる図面で示す場合には、寸法や縮尺等が異なる場合もある。
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて木材を圧縮成形する際には、まず、所定の形状をなす木材を原木から形取る(形取工程)。図1は、この形取工程の概要を模式的に示す図である。形取工程では、原木である無圧縮状態の無垢材10(木目Gを有する)から皿状をなす木材1を切削等によって形取る。木材1は、略長方形状の表面をなしわずかに湾曲した主板部1aと、主板部1a表面の長手方向に略平行な2辺の各々から主板部1aに対して立ち上がるように延出する二つの側板部1bと、主板部1a表面の短手方向に略平行な2辺の各々から主板部1aに対して立ち上がるように延出する二つの側板部1cとを備える。側板部1bおよび1cの各端面は互いに連なっており、これらの端面が全体として周回して閉じた形状をなしている。木材1は、後述する圧縮工程によって減少する分の容積を予め加えた容積を有する。なお、ここでいう「皿状」とは、椀状、シェル状、箱状、船形状等の曲面を含む3次元的な形状一般を意味するものであり、図1に示すのはあくまでも一例に過ぎない。
【0021】
原木である無垢材10は、ヒノキ、ヒバ、桐、杉、松、桜、欅、黒檀、紫檀、竹、チーク、マホガニー、ローズウッドなどの中から、加工した木材の用途等に応じて最適なものを選択すればよい。
【0022】
ところで、図1では、無垢材10から形取る木材1の長手方向とその木材1の繊維方向Lとが略平行であって主板部1aの表面が柾目面をなすように形取りを行った場合を示しているが、木材1の長手方向がその木材1の繊維方向Lと略平行であって主板部1aの表面が板目面または追柾面をなすように形取ることもできる。さらに、木材1の長手方向がその木材1の繊維方向Lと略直交し、主板部1aの表面が木口面をなすように形取ることもできる。このように、形取工程において木材を原木からどのように形取るかは、その木材に対して要求する強度や美観等の条件に応じて定められる。そこで、以後の説明で参照する図面においては、木目Gを省略して記載する。
【0023】
本実施の形態1では、形取工程の後、木材1の主板部1aの略中央部を板厚方向に貫通する孔部を形成する(孔部形成工程)。この孔部形成工程における孔部の形成位置および孔部の機能の詳細については後述する。
【0024】
続いて、木材1を大気よりも高温高圧の水蒸気雰囲気中で所定時間放置し、水分を過剰に吸収させることによって十分に軟化させる(軟化工程)。ここでいう高温高圧とは、温度が100〜230℃、より好ましくは180〜230℃、さらに好ましくは180〜200℃程度であり、圧力が0.1〜3.0MPa(メガパスカル)、より好ましくは0.45〜2.5MPa、さらに好ましくは1.0〜1.6MPa程度の状態を指す。
【0025】
その後、軟化工程で十分に軟化した木材1を圧縮する(圧縮工程)。図2は、圧縮工程の概要を示すとともに、本実施の形態1に係る木材成形用金型の構成を示す図である。また、図3は、本実施の形態1に係る木材成形用金型によって木材1に圧縮力が加わり始めた状態を、図2のA−A線断面で見た図である。図2および図3に示すように、本実施の形態1に係る木材成形用金型は、一対の金型51および61から成る。以下、金型51および61の構成を説明する。
【0026】
圧縮工程の際に木材1の上方から圧縮力を加える金型51は、直方体状をなす本体部52と、本体部52から突出し、木材1の窪み部分に相当する曲面(内側面)に当接可能な凸部53とを備えたコア金型である。金型51には、凸部53の底面(当接面)の略中央部から図3で上方へ延出して本体部52を貫通し、圧縮時に木材1と金型51との間に介在する水蒸気(空気)を外部へ排出する排出路である排出孔54が設けられている。なお、図3に示すように、この窪み部分の表面の曲率半径は、凸部53の底面から本体部52の底面へ立ち上がって湾曲する部分の曲率半径よりも全域にわたって大きい。
【0027】
これに対して、圧縮工程の際に木材1の下方から圧縮力を加える金型61は、直方体状をなす本体部62と、本体部62の一つの表面に穿設され、木材1の突出部分に相当する曲面(外側面)に当接可能な凹部63とを備えたキャビティ金型である。金型61には、凹部63の底面(当接面)の略中央部から図3で下方へ延出して本体部62を貫通し、圧縮時に木材1と金型61との間に介在する水蒸気(空気)を外部へ排出する排出路である排出孔64が設けられている。排出孔64の中心軸は、上方に位置する金型51の排出孔54の中心軸と同軸をなすように形成されている。また、図3に示すように、突出部分の表面の曲率半径は、凹部63の表面から本体部62の上面へ立ち上がって湾曲する部分の曲率半径よりも全域にわたって大きい。
【0028】
なお、排出孔54および排出孔64は、それぞれ本体部52および62を介して外部に貫通していればよく、孔自体の形状は直線状をなしている必要はないが、少なくとも排出孔54の凸部53における開口端面付近の中心軸と排出孔64の凹部63における開口端面付近の中心軸とは同軸をなしていることが好ましい。
【0029】
圧縮工程では、軟化工程と同じ水蒸気雰囲気中で金型51および61の少なくとも一方を他方に対して移動することによって木材1を挟持し、圧縮力を加えることにより、木材1を所定の3次元形状に成形する。本実施の形態1では、金型51を下降させて金型61へ近づけていく場合を説明する。
【0030】
図4は、図3に示す状態から金型51をさらに下降させた状態を示す図である。図3に示す状態から図4に示す状態へ遷移する過程で、木材1の下面側では、まず主板部1aの中央部が凹部63の中央部に当接し、凹部63との接触面積を徐々に増やしながら変形していく。他方、木材1の上面側では、凸部53に当接していない周縁部分が徐々に凸部53の方に近づくように立ち上がって変形していき、凸部53の周縁部から凸部53の中心部へと接触面積を徐々に増やしながら変形していく。
【0031】
金型51を下降させていくにつれて、木材1と凸部53との隙間、および木材1と凹部63との隙間は徐々に減少していく。この際、減少した体積分の水蒸気は、排出孔54および64を介して外部へ排出することができる。したがって、軟化した木材1が金型51および61に密着しても、水蒸気の排出路を確保することができ、圧縮成形の際に支障をきたすことがない。
【0032】
本実施の形態1においては、上述した孔部形成工程において、木材1にも孔部11が形成されている(図2を参照)。この孔部11は、図4に示す状態、すなわち木材1の主板部1aの中央部が金型61の凹部63に当接するまで変形したとき、排出孔64と同軸的に連通するような位置に形成される(図4を参照)。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態1では、排出孔64の上方に孔部11および金型51の排出孔54が同軸的に連通するような位置関係となるように金型51および61、ならびに木材1を構成しているため、木材1と金型61との隙間に介在する水蒸気(樹脂成分を含む)は、排出孔64に加えて排出孔54からも排出可能である。この結果、以下に述べるような効果を得ることができる。図3に示す状態から図4に示す状態へ遷移する間、木材1の樹脂成分の一部は水蒸気に混じって蒸発する。図4に示す場合、排出孔64は凹部63の略中央部の表面に開口端を有しているため、凹部63の表面に付着した樹脂成分も集まりやすく、樹脂成分の粘度や排出孔64の径によっては、排出孔64が詰まってしまう可能性がある。この点につき、本実施の形態1の場合、木材1と金型61との隙間に介在する水蒸気を、孔部11および排出孔54を介して外部へ排出することも可能であるため、排出孔64に水蒸気が集中することがなく、排出孔64の詰まりを生じにくくすることができる。また、万が一排出孔64に詰まりが生じた場合であっても、排出孔54の方から樹脂成分を含む空気を排出することができる。
【0034】
なお、木材1の形状および/または木材1の圧縮後の形状によっては、孔部11を形成しなくてもよいし、一方の金型のみに排出孔を形成してもよい。また、孔部11や排出孔54および64の孔径や孔の断面形状も、木材1の形状および/または木材1の圧縮後の形状に応じて適宜定めればよい。
【0035】
引き続き、圧縮工程について説明する。図4に示す状態から金型51を金型61へさらに下降させると、木材1の上面は金型51の凸部53の表面と密着した状態になる一方、木材1の下面は金型61の凹部63の表面と密着した状態になる。図5は、この密着した状態を示す図であって、圧縮工程における木材1の変形がほぼ完了した状態を示す図である。図5に示すように、木材1は、圧縮工程において最終的には金型51と金型61との隙間に相当する3次元形状に変形する。
【0036】
図5に示す状態で木材1に所定時間(1〜数十分、より好ましくは5〜10分程度)圧縮力を加えた後、上記水蒸気雰囲気を解いて木材1を乾燥させ、金型51と金型61を離間させて圧縮を解除する。これにより、木材1は形状が固定される。以後、圧縮工程によって形状が固定された木材を「木材2」と称する。
【0037】
図6は、木材2の構成を示す斜視図である。同図に示す木材2は、木材1の主板部1a、ならびに側板部1bおよび1cにそれぞれ対応する主板部2a、ならびに側板部2bおよび2cを備える。主板部2aの略中央部には、孔部11に対応する孔部21が存在している。この孔部21は、木材1の孔部11に対応しているが、圧縮によって孔部11とは異なる孔径を有していることもある。また、孔部21の周辺部が他の部分と異なる肉厚を有していたり、その周辺部の表面が圧縮によって劣化したりしている場合もある。
【0038】
圧縮後の木材2の肉厚は、圧縮前の木材1の肉厚の30〜50%程度であれば好ましい。換言すると、この圧縮工程における木材1の圧縮率(圧縮による木材の肉厚の減少分ΔRとその木材の圧縮前の肉厚Rの比の値ΔR/R)は、0.50〜0.70程度であれば好ましい。
【0039】
なお、圧縮工程において金型51および61の少なくとも一方を他方に対して移動する際には、適当な駆動手段を用いて金型51および/または61を電気的に移動させることにより、木材1に加わる圧縮力を調整するようにすればよい。また、金型51と金型61とをねじで連結し、このねじを手動または自動で締めることによって金型51を金型61に対して上下動させるようにしてもよい。
【0040】
以上説明した圧縮工程の後、木材1に対して切削または穿孔等の処理を施すことにより、木材1を所定の3次元形状に整形する(整形工程)。図7および図8は、木材2を整形することによって形成した圧縮木製品の構成を示す斜視図である。これらの図に示す圧縮木製品は、デジタルカメラの外装体の一部をなすカバー部材である。図7に示すカバー部材3は、木材2の主板部2a、ならびに側板部2bおよび2cにそれぞれ対応する主板部3a、ならびに側板部3bおよび3cを備える。主板部3aには、デジタルカメラの撮像レンズを含む撮像部を表出するための円筒形状の開口部31、およびデジタルカメラのフラッシュを表出するための直方体形状の開口部32が形成されている。また、側板部3bには半円筒形状の切り欠き33が形成されている。
【0041】
他方、図8に示すカバー部材4は、木材2の主板部2a、ならびに側板部2bおよび2cにそれぞれ対応する主板部4a、ならびに側板部4bおよび4cを備える。主板部4aには、液晶、プラズマ、または有機EL等を用いて実現されるデジタルカメラの表示部を表出するための直方体形状の開口部41が形成されている。また、側板部4bには半円筒形状の切り欠き42が形成されている。この切り欠き42は、カバー部材3の切り欠き33と組み合わさってデジタルカメラのシャッターボタンを表出する開口部をなす。
【0042】
カバー部材3および4の原材料である木材2が有する孔部21は、この整形工程で開口部31や開口部41を形成する際に取り除かれる位置に形成されている。したがって、孔部21の周辺が圧縮によって劣化してしまったとしても、その劣化部分は活用されずに取り除かれることとなり、美観上の問題が生じることもない。このように、木材1に対して孔部11を形成する場合には、圧縮成形後の木材2の孔部21が、圧縮木製品としての最終形状の段階で取り除かれる箇所や、他の部材によって被覆されて外見上は見えなくなるような箇所に形成されることが好ましい。
【0043】
図9は、カバー部材3および4によって外装されたデジタルカメラの外観構成を示す斜視図である。同図に示すデジタルカメラ100は、撮像レンズを含む撮像部101(開口部31から表出)と、フラッシュ102(開口部32から表出)と、シャッターボタン103(切り欠き33および42によって形成される開口部から表出)とを備える。また、図示はしないが、カバー部材4の開口部41からは表示部が表出している。デジタルカメラ100の内部には、撮像処理等に関する駆動制御を行う制御回路、CCDやCMOS等の固体撮像素子、音声の入出力を行うマイクロフォンやスピーカ、および制御回路の制御のもと各機能部材を駆動する駆動回路を含み、デジタルカメラ100の機能を実現する各種電子的部材および光学的部材が収納されている(図示せず)。
【0044】
なお、木材2を整形することによって得られる外装体を適用可能な電子機器としては、デジタルカメラ100の他にも、携帯電話、PHSまたはPDA等の携帯型通信端末、携帯型オーディオ装置、ICレコーダ、携帯型テレビ、携帯型ラジオ、各種家電製品のリモコン、デジタルビデオなどがある。これらの携帯用小型電子機器に適用する場合の外装体の肉厚は、1.6〜2.0mm程度が好適である。
【0045】
以上説明した本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型によれば、成形対象の木材に当接する当接面から本体部分を通過して外部へ貫通された排出孔(排出路)を備えたことにより、軟化した木材を支障なく圧縮成形することが可能となる。
【0046】
また、本実施の形態1によれば、一対の金型の各々に対して互いに同軸をなす中心軸を有する排出孔を形成するとともに、成形対象である木材に対しても、圧縮力を加える際に前述した排出孔と連通可能な孔部を形成することにより、木材と金型との隙間にある水蒸気を排出するための排出路を複数確保することができ、金型と木材との間に介在する水蒸気を圧縮の際により確実に外部へ排出することができる。
【0047】
さらに、本実施の形態1によれば、木材に形成した孔部は、圧縮工程の後に行う整形工程によって取り除かれたりして活用されることがない位置に形成されるため、孔部の周辺が圧縮によって劣化したとしても、整形後の最終形状の段階では孔部の痕跡を残さないで済む。したがって、本実施の形態1によれば、最終的な製品レベルで木材の美観が損なわれないようにすることができる。
【0048】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型の構成と、その木材成形用金型を用いた木材の圧縮工程の概要を示す図である。本実施の形態2に係る木材成形用金型である金型151および161は、無垢材から形取られた平板状の木材5を挟持して皿状の部材を圧縮成形する際に適用される。なお、圧縮工程を行う前に木材5を軟化させるときの条件や,圧縮工程において圧縮力を加える際の条件は、上記実施の形態1と同様である。
【0049】
圧縮時に木材5の上方から圧縮力を加える金型151は、直方体状をなす本体部152と、本体部152から下方に突出する凸部153とを備えたコア金型である。
【0050】
これに対して、圧縮時に木材5の下方から圧縮力を加える金型161は、略直方体状をなす本体部162と、本体部162の一つの表面に穿設され、下方に窪んだ凹部163とを備えたキャビティ金型である。金型161には、凹部163の底面(当接面)から図10で下方へ延出して本体部162を貫通し、圧縮時に木材5と金型161の凹部163との間に介在する水蒸気(空気)を外部へ排出する排出路である4つの排出孔164が設けられている。
【0051】
本実施の形態2では、圧縮前の木材5が平板状をなしているため、金型151の凸部153の底面は、木材5の上側の平面と最初に当接する。したがって、凸部153に挿通孔を設ける必要はない。これに対して、木材5が圧縮工程で最後まで当接しないのは、凹部163の底面のなす略長方形の頂点付近の領域である。この領域に排出孔164が設けられていなければ、木材5と金型161との間に閉じ込められた水蒸気(空気)の圧力は、圧縮が進むにつれて徐々に高くなり、金型161の形状に倣った木材5の成形が阻害されてしまう。この点に鑑みて、排出孔164は、凹部163の底面のなす略長方形の頂点付近に設けられている。
【0052】
図11は、上述した構成を有する金型151および161を用いて圧縮成形した後の木材の構成を示す図である。同図に示す木材6は、図10と上下を逆転させた状態で見た斜視図である。木材6は、圧縮工程によって皿状をなすが、この皿状の底面として略長方形をなす主板部6aの4つの頂点付近は、金型161に当接する際に排出孔164と対向していたために劣化している。具体的には、主板部6aの他の部分に対して突出していたり、色が異なっていたりする。そこで、図11に示す4つの劣化領域Sには、その面積よりも大きく劣化領域Sを完全に被覆できる部材として、滑り止めパッド201をそれぞれ貼付する。これにより、劣化領域Sの美観上の問題を解消するとともに、皿状をなす木材6の底面側に滑り止め機能を付与することができる。
【0053】
以上説明した本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型によれば、成形対象の木材に当接する当接面から本体部分を通過して外部へ貫通された排出孔(排出路)を備えたことにより、軟化した木材を支障なく圧縮成形することが可能となる。
【0054】
また、本実施の形態2に係る木材成形用金型によれば、排出孔の木材との当接面における開口端は、圧縮後の木材に対してその木材とは異なる部材によって被覆される表面の少なくとも一部が当接可能な位置に形成されるため、その木材において排出孔と対向する部分が圧縮によって劣化したとしても、最終的に得られる圧縮木製品には、劣化部分の痕跡は見られない。このように、木材成形用金型のうち、最終的な製品レベルで活用されることがない木材の部分と当接可能な位置に排出孔を形成することにより、木材の圧縮成形を支障なく行うことに加え、最終的な製品レベルで木材の美観が損なわれないようにすることができる。
【0055】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3に係る木材成形用金型の構成と、その木材成形用金型を用いた木材の圧縮工程の概要を示す図である。本実施の形態3に係る木材成形用金型である金型81および91は、無垢材10から形取られ、木材1と同様の皿状をなす木材7(主板部7a、ならびに側板部7bおよび7cを備える)を挟持して圧縮成形する際に適用される。
【0056】
圧縮工程の際に木材7の上方から圧縮力を加える金型81は、直方体状をなす本体部82と、本体部82から突出し、木材7の窪み部分に相当する曲面(内側面)に当接可能な凸部83とを備えたコア金型である。金型81は、本体部82と凸部83との境界から本体部82の側面に延出するように穿設され、圧縮時に木材7と金型81との間に介在する水蒸気(空気)を外部へ排出する排出路である排出溝84を有する。
【0057】
これに対して、圧縮工程の際に木材7の下方から圧縮力を加える金型91は、直方体状をなす本体部92と、本体部92の一つの表面に穿設され、木材7の突出部分に相当する曲面(外側面)に当接可能な凹部93とを備えたキャビティ金型である。金型91は、凹部93の上端から本体部92の側面に延出するように穿設され、圧縮時に木材7と金型91との間に介在する水蒸気(空気)を外部へ排出する排出路である排出溝94を有する。この排出溝94は、金型81の排出溝84と上下で対向する位置に形成されている。
【0058】
以上の構成を有する金型81および91によって圧縮成形される木材7の一方の側板部7cの端面には、圧縮時に金型81に形成された排出溝84と対向する位置に溝部71が穿設されている。この意味で、本実施の形態3においては、無垢材10から形取った木材7に対して溝部71を形成する溝部形成工程を行う。その後、上記実施の形態1と同様の軟化工程を経て木材7の圧縮工程を行う際には、溝部71が、金型81の排出溝84の下方に位置するように木材7を配置する(図12を参照)。
【0059】
金型81および91を用いた木材7の圧縮工程は、金型81を下降させていき、上述した軟化工程と同様の水蒸気雰囲気中で行う。この際、木材7と金型81との隙間にある水蒸気は、金型81の排出溝84と木材7の溝部71とによって形成される隙間から排出される。また、木材7と金型91との隙間にある水蒸気は、排出溝94を介して外部へ排出される。
【0060】
金型81が下降し木材7が変形していくにつれて、溝部71は徐々に小さく絞られていくため、圧縮工程の後では溝部71付近にしわがよったり、溝部71付近の肉厚が他の部分と比較して不均一になったりして劣化してしまうこともある。このため、溝部71は、圧縮後の整形工程で切削等の端面処理を施すことによって取り除くことができるような位置に形成すればよい。あるいは、溝部71の痕跡が残るような箇所には、他の部材を被覆するような構成としてもよい。このように、溝部71は、上記実施の形態1と同様の意味で、圧縮後の木材7において最終的に活用されない箇所に形成されることが好ましい。
【0061】
以上説明した本発明の実施の形態3に係る木材成形用金型によれば、一対の金型から成り、少なくとも互いの一部が対向するようにそれぞれ形成された排出溝(排出路)を有する構成とすることにより、軟化した木材を支障なく圧縮成形することが可能となる。
【0062】
また、排出溝の少なくとも一部を、一対の金型のうち木材に圧縮力を加える際に接触しあう金型の互いに対向する表面に形成するとともに、成形対象である木材に対しても、圧縮力を受ける際に前記排出溝の一部と対向する端面に溝部を形成することにより、木材と金型との隙間にある水蒸気を排出するための排出路を複数確保することができ、金型と木材との間に介在する水蒸気を圧縮の際により確実に外部へ排出することができる。
【0063】
さらに、本実施の形態3によれば、木材に形成した溝部は、圧縮工程の後に行う整形工程によって取り除かれたりして活用されることがない位置に形成されるため、溝部の周辺が圧縮によって劣化したとしても、整形後の最終形状の段階では溝部の痕跡を残さないで済む。したがって、本実施の形態3によれば、最終的な製品レベルで木材の美観が損なわれないようにすることができる。
【0064】
なお、圧縮工程によって劣化した溝部71を切削によって取り除く代わりに、溝部71付近を含む領域を別の部材で被覆することによって溝部71の劣化を外部から見えないようにすることも可能である。図13は、溝部71を被覆した例を示す図であり、図14は、図13のB−B線断面図である。これらの図に示す圧縮木製品301は、溝部71を含む圧縮後の木材8の端面付近に、金属製(アルミニウム、ステンレス、チタン、鉄等)または硬質の合成樹脂製(例えばポリイミド等)の補強部材9を嵌め合わせたものである。補強部材9は、周回して閉じており、その縦断面は木材8の肉厚よりも若干小さい幅を有するコの字型をなしている(図14を参照)。
【0065】
上述した構成を有する補強部材9は、木材8の端面付近を補強する機能を有するとともに、圧縮によって劣化した溝部71近傍の劣化領域Qを被覆する機能を有する。したがって、溝部の周辺が圧縮によって劣化したとしても、最終的に得られる圧縮木製品には、劣化部分の痕跡は見られない。したがって、この場合にも、最終的な製品レベルで木材の美観が損なわれないようにすることができる。
【0066】
(その他の実施の形態)
ここまで、本発明を実施するための最良の形態を詳述してきたが、本発明は上述した2つの実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。例えば、原木から形取った木材の種類、圧縮前後の木材の形状等の条件によっては、排出路として、実施の形態1における排出孔と実施の形態3における排出溝との両方を適当な位置に形成してもよいし、一対の金型のうちの一方の金型のみに排出路(排出孔および/または排出溝を含む)を形成すれば十分な場合もある。
【0067】
また、本発明に係る木材成形用金型は、木材を圧縮成形可能であればその個数は2個に限定されるものではなく、木材の形状等に応じて適宜定めればよい。
【0068】
このように、本発明は、ここでは記載していないさまざまな実施の形態等を含みうるものであり、特許請求の範囲によって特定される技術的思想を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて成形する木材の概要を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る木材成形用金型を用いて成形する木材の圧縮工程の概要を示す図である。
【図3】圧縮工程において圧縮を開始した時点の状態を示す図である。
【図4】圧縮工程において木材が変形している途中の状態を示す図である。
【図5】圧縮工程において木材の変形がほぼ完了した状態を示す図である。
【図6】圧縮工程によって得られた木材の構成を示す斜視図である。
【図7】整形工程後の木材であるカバー部材の構成(第1例)を示す斜視図である。
【図8】整形工程後の木材であるカバー部材の構成(第2例)を示す斜視図である。
【図9】図7および図8に示すカバー部材によって外装されたデジタルカメラの外観構成を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型を用いて成形する木材の圧縮工程の概要を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る木材成形用金型を用いて圧縮成形した後の木材の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る木材成形用金型を用いて成形する木材の圧縮工程の概要を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る木材成形用金型を用いて圧縮成形した後、補強部材を装着した圧縮木製品の構成を示す斜視図である。
【図14】図13のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1、2、5、6、7、8 木材
1a、2a、3a、4a、6a、7a 主板部
1b、1c、2b、2c、3b、3c、4b、4c、7b、7c 側板部
3、4 カバー部材
9 補強部材
10 無垢材
11、21 孔部
31、32、41 開口部
33、42 切り欠き
51、61、81、91、151、161 金型
52、62、82、92、152、162 本体部
53、83、153 凸部
54、64、164 排出孔(排出路の例)
63、93、163 凹部
71 溝部
84、94 排出溝(排出路の例)
100 デジタルカメラ
101 撮像部
102 フラッシュ
103 シャッターボタン
201 滑り止めパッド
301 圧縮木製品
G 木目
L 繊維方向
Q、S 劣化領域
【出願人】 【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
【出願日】 平成18年7月20日(2006.7.20)
【代理人】 【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明


【公開番号】 特開2008−23832(P2008−23832A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−198578(P2006−198578)