トップ :: B 処理操作 運輸 :: B27 木材または類似の材料の加工または保存;釘打ち機またはステ−プル打ち機一般

【発明の名称】 湾曲集成材の製造方法およびその製造装置
【発明者】 【氏名】八鍬 明弘

【氏名】松本 和茂

【要約】 【課題】優れた接着性能を持つ安価な湾曲集成材の製造を課題とする。

【解決手段】曲がりを持った型の上に接着剤を塗布した木材などの板を積層し、その上に曲がりを持った押さえを被せて固定し、積層された板を一度に所定の曲率に曲げる。その後、型に取り付けた耐圧ホースに空気などを押し込むことで、接着に必要な圧締圧力が発生し、積層され曲げられた板同士が密着する。この方法によって、作業工数は削減され装置の値段も抑えられ、優れた接着性能を持つ安価な湾曲集成材の製造が可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部または全部に曲率を持つ溝形鋼等でできた型、型に取り付けた耐圧ホース、その上側に被さる形状で支点となる軸を中心に稼動する溝形鋼等でできた押さえ、押さえの開きを抑止するための固定部で構成される湾曲集成材の製造装置において、接着剤を塗布した板を型に積み重ねて押さえを被せることで、積み重ねられた板を一度に曲げると共に、型に取り付けた耐圧ホースの中に空気や水などの流体を充填することで、接着に必要な圧締圧力を板に作用させることを特徴とする湾曲集成材の製造方法およびその製造装置。
【請求項2】
請求項1において、耐圧ホースに充填する空気や水などの流体の温度を制御することで、接着性能を安定化することを特徴とする湾曲集成材の製造方法およびその製造装置。
【請求項3】
請求項1、及び請求項2において、曲率を複数組み合わせた型と押さえによって、単一曲率の扇型のみではなく波型や通直部分を持つ湾曲集成材を製造する製造方法およびその製造装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、曲がり部分を持つ集成材の製造方法とその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の湾曲集成材の製造方法は、積層する板の曲げと接着の圧締に、複数のネジ式クランプを用いていた(例えば特許文献1)。また、作業の自動化のためにネジ式クランプの代わりにオイルもしくはエアシリンダを用いたものもある(例えば非特許文献1)。
【0003】
図1により、従来の湾曲集成材の製造方法を説明する。図において13は型(肩材)であり、接着剤を塗布した5の板を積層し、集成材の湾曲部の外周部に型を挟めて複数の12のネジ式クランプで同時に締めこむことで湾曲部を形成するものである。
【特許文献1】 特許公開平5−148950
【非特許文献1】 澤田新平著:わん曲集成材の製造実験、平成14年度青森県工業系試験研究機関事業報告書、P275−278
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の湾曲集成材の製造方法では、生産性の悪さからコスト高を招き、また、装置の構成上、均質な接着性能が得られなかった。
【0005】
コスト高の要因は、多くの作業人員を要する、多くの作業時間を要する、製造装置が高価である、長い圧締時間を必要とする、などが挙げられる。湾曲集成材の工程には、一般の通直な集成材の製造方法と異なり、接着剤を塗布した板を一枚ずつ曲げながら装置に設置する作業、ネジ式クランプの場合のネジの締め緩めの作業に多くの時間と人員を要する。自動化のために複数のエアやオイルのシリンダーを使用した場合は、装置が大変高価になる。
【0006】
また、一般の通直の集成材の製造における接着に必要な圧締時間が、90分程度であるのに対し、湾曲集成材の場合は板の跳ね戻ろうとする力の影響と時期によって異なる温度環境を考慮して作業者が感覚的に長時間の圧締を行ってきた。この間、装置は圧力をかけたまま放置している状態で生産に寄与できないのが、著しく生産性を落としてきた要因である。
【0007】
従来のクランプによる湾曲集成材の製造方法では、板に対して均質な圧力を伝えられず、接着に必要な十分な圧締ができない。一般の通直の集成材の圧締においては、クランプが断続して配置されていて、クランプの軸上にある作用点が点在しても加圧方向は変わらないため、押し付ける平鋼同士の間隔を狭くすることで、ほぼ全体に接着に必要な圧締圧力が均等に作用する。しかし、このような湾曲集成材の製造方法では、クランプの軸上にある作用点以外では、加圧方向が湾曲した板面に対して直角に向いていないので、それぞれのクランプの部位で均等な圧締圧力が作用しない。このため、押し付ける平鋼の作用点から遠い部分には必要な圧締圧力が作用しておらず、部分的に接着剥離が生じる要因となる。仮にその部分にも接着剤の使用要件を満たす圧力を作用させるとなると、作用点付近には過剰な力が加わり、板を破壊する危険性もある。このような状態で、クランプが断続して配置されているので、部分部分によって接着性能が異なっている。このような傾向は、製造する湾曲集成材の曲率半径が小さく作用点間の距離が長いほど大きくなっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、製造する湾曲集成材の内側の曲率半径に対応した曲率を持つ溝型鋼等でできた型に、接着剤を塗布した板を必要な枚数重ねて置き、その上側に蓋をするように、湾曲集成材の外側の曲率半径に対応した曲率を持つ溝形鋼等でできた押さえを被せることで、一枚一枚の板を曲げずとも、全ての板を一度に全体を曲げることができ、従来の方法と比較すると、この板を曲げて装置に設置する工程にかかる作業時間、作業人員を減らすことができる。
【0009】
接着に必要な圧締圧力を作用させるために耐圧ホースを用いて、その中に水や空気なとの流体を充填する手段をとることによって、これまで、多くの時間と人員を要していたネジの締め緩めの作業が必要なくなる。また、装置の高価格化の原因であった多数のシリンダを必要としない装置構成となる。
【0010】
さらに、凹凸が生じ易くなる積層して曲げた板のすべての面に均等に力を作用させることができ、従来の製造方法と比較して安定した接着が可能となる。
【0011】
本発明による耐圧ホースに充填する空気や水の温度を制御することで、一定の温度環境をつくることができるため、圧締時間は作業者の感覚に頼らずに済み、使用する接着剤に対応した的確な時間で圧締を終了することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、板を曲げて装置に設置する工程の合理化、接着のために圧締する工程の合理化によって作業人員と作業時間を削減するとともに、簡素な装置構成によって装置の低価格化が図られ、湾曲集成材のコストダウンが可能となる。
【0013】
耐圧ホースに空気や水を充填して圧締する方法によって、板のすべての面に均等に力を作用させることができ、従来の製造方法と比較して安定した接着が可能となるとともに、空気や水の温度を制御することで、一定の温度環境をつくり温度に左右されやすい接着性能を安定化できる。特に冬季には現状と比較すると飛躍的に圧締時間を短縮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図2は、本発明の基本的な動作と作用の説明図で、1の一部に曲率を持つ溝型鋼でできた型を、2の溝型鋼でできたベースに固定している。3は溝型鋼でできた曲率を持つ押さえであり、支点4を中心として稼動する。5は接着剤を塗布した板であり、必要な枚数を2の型の上に積み重ねた後、3の押さえをその上側に被せることで、積み重ねられた板は一度に曲げられる。その後、6の固定部を7のピンで留めて、曲げられた板が戻ろうとする力によって3の押さえが開くことを抑止する。図中の断面AA部に示すように、1の型に取り付けた8の耐圧ホースに9の空気や水を充填すると、積み重ねられた板が持ち上がり、3の押さえの内部で拘束され、接着に必要な圧締圧力が均等に作用する。
【0015】
図3は本発明の流体温度の制御に関わる説明図であって、外気に左右されず、温度を一定に保つことを可能とするための方法を説明した図である。あらかじめ温めておいた圧縮空気や水などの流体9を8の耐圧ホースに10の注入口から充填し、11の排出口から少しずつ抜いていく。このとき、排出口で流体の圧力と温度を測定し、注入の流量や排出の流量を制御することで温度を制御する。
【0016】
図4は本発明の応用例の説明図であって、様々な形の湾曲集成材を製造するための装置の一例で、単一曲率半径の扇型のみではなく複数の曲率や通直部分と組み合わせた1の型と3の押さえによって装置を構成する。
【実施例】
【0017】
図5は単一な曲率を持つ湾曲集成材の製造装置の実施例である。この装置は、厚さ10mm、幅100mm、長さ3,650mmのたて継したカラマツおよびトドマツの板を10枚重ねて、出来上がりの曲率半径が外周で2,000mmになるように製造したものである。
【0018】
これを片側固定端で他方を自由端の計算モデルとして、板を曲げるために必要な力を算出すると1枚当り約40N必要で、10枚重ねると400N必要になる。この力を発生させるためには、いろいろな方法が考えられるが、実施例においては、押さえの稼動にワイヤーを介して電動ウィンチを用いた。油圧システムなどで自動開閉機構を組み込んでおくことによって自動化も可能である。
【0019】
耐圧ホースは安価で汎用の農業・土木用散水ホースを用いた。接着には一般的な木材接着剤を用いて、1MPaの圧締圧力を付加した。この圧力に適応できるのであれば、圧締圧力を必要としない接着剤も含めてほとんどの接着剤に対応可能である。
【0020】
従来クランプなどを用いていた圧締作業にかかる時間は、本発明の方法で耐圧ホースに圧縮空気を送り込むことで約1分で済み、従来の通直の集成材の圧締作業にかかる時間と比較しても大幅に短縮することができた。約1日放置した後、出来上がった湾曲集成材を装置から取り出して確認したところ、満遍なく接着されており剥離している部分がないことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 従来例を示す説明図
【図2】 本発明の基本的な動作と作用の説明図
【図3】 本発明の流体温度の制御に関わる説明図
【図4】 本発明の応用例の説明図
【図5】 本発明の実施例の説明図
【符号の説明】
【0022】
1 型
2 ベース
3 押さえ
4 支点
5 板
6 固定部
7 ピン
8 耐圧ホース
9 空気や水などの流体
10 流体の注入口
11 流体の排出口
12 ネジ式クランプ
13 型(肩材)
【出願人】 【識別番号】591190955
【氏名又は名称】北海道
【出願日】 平成18年10月4日(2006.10.4)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−87452(P2008−87452A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−299607(P2006−299607)