トップ :: B 処理操作 運輸 :: B27 木材または類似の材料の加工または保存;釘打ち機またはステ−プル打ち機一般

【発明の名称】 木材の干割れ防止剤
【発明者】 【氏名】関根 康雄

【氏名】野橋 健三

【氏名】新田 美和

【要約】 【課題】環境に悪影響を与えることなく、木質材料の干割れを防止して寸法安定性を付与する安全性の高い木材の干割れ防止剤を提供することを課題とする。

【解決手段】ポリカルボン酸と水性樹脂架橋剤とを含有する木材の干割れ防止剤により、上記の課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸及び水性樹脂架橋剤を含有する木材の干割れ防止剤。
【請求項2】
ポリカルボン酸が、クエン酸、テトラカルボン酸である請求項1記載の木材の干割れ防止剤。
【請求項3】
水性樹脂架橋剤が、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物の群から選ばれる1種以上である請求項1又は2に記載の木材の干割れ防止剤。
【請求項4】
ポリカルボン酸中のカルボキシル基とカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基とのモル比が、1:10〜10:1である請求項1〜3のいずれかに記載の木材の干割れ防止剤。
【請求項5】
ポリカルボン酸中のカルボキシル基とオキサゾリン化合物中のオキサゾリン基とのモル比が、1:10〜10:1である請求項1〜3のいずれかに記載の木材の干割れ防止剤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の干割れ防止剤に関する。さらに詳しくは、木質材料の干割れを防止して寸法安定性を付与する木材の干割れ防止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
原木から製材した木材は非常に水分を多く含んでいるため、乾燥過程で割れを生じる場合がある。また、建造物の施工途上に降雨による水濡れや日射、風による乾燥の繰り返しで乾燥材でも割れの発生する危険性が高い。このため、湿度を管理した乾燥室に木材を保管し乾燥を徐々に行う方法や、木材表面に樹脂エマルジョンを塗布することによって割れを防止する方法が提案されている。例えば、防腐成分および防蟻成分をラテックス樹脂エマルジョンに添加することによって得られ、界面活性剤の濃度が10%以下であり、樹脂固形分が30%以上で粘度100mPa秒以上である木材の防腐防蟻および干割れ防止組成物が特許文献1で提案されている。また、ホルムアルデヒド、尿素、及びグリオキザールの初期縮合物に触媒を添加した後、木材中に含浸し、加熱硬化させる樹脂含浸による木材の表面硬化と寸法安定処理方法が特許文献2に記載されているが、ホルムアルデヒドを使用しているため安全性に問題がある。
【0003】
一方、(A)アルキルアンモニウム化合物の一種又は二種以上、(B)その水溶液が縮合ホモポリ酸塩、縮合へテロポリ酸塩、ポリカルボン酸塩、ポリホスホン酸塩からなる群より選ばれるポリ酸塩の一種又は二種以上を含有する木材用防腐組成物が特許文献3で提案されている。しかしながら、木材の干割れ防止や寸法安定性の付与に関する記載はない。
【0004】
【特許文献1】特開2005−297208号公報
【特許文献2】特公平6−67564号公報
【特許文献3】特開昭58−188607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、環境に悪影響を与えることなく、木質材料の干割れを防止して寸法安定性を付与する安全性の高い木材の干割れ防止剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、ポリカルボン酸と水性樹脂架橋剤を含有することにより、木質材料の干割れを防止して寸法安定性を付与できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
かくして本発明によれば、ポリカルボン酸と水性樹脂架橋剤とを含有する木材の干割れ防止剤が提供される。
【発明の効果】
【0008】
この発明の木材の干割れ防止剤は、環境に悪影響を与えることなく、伐採後の原木、丸太、更に加工された角柱、円柱、板状製材等あらゆる形態の木材の干割れを防止して、寸法安定性を付与できることから産業上極めて有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の木材の干割れ防止剤として含有するポリカルボン酸としては、クエン酸、テトラカルボン酸、フタル酸などが挙げられる。このうち、クエン酸、テトラカルボン酸が容易に製剤化できる点で好ましい。
【0010】
本発明の木材の干割れ防止剤として含有されている水性樹脂架橋剤としては、カルボジイミド化合物やオキサゾリン化合物などが挙げられる。
【0011】
本発明の木材の干割れ防止剤として含有されているカルボジイミド化合物としては、下記一般式の基本構造を有するものが挙げられる。
【0012】
―(N=C=N−R−)n―

式中、nは1以上の整数を示し、Rは有機系結合単位を示す。例えば、Rは脂肪族、脂環族、芳香族のいずれかであることができる。また、nは、通常、1〜50の間で適当な整数が選択される。
【0013】
具体的には、ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(p−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m−フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチル−ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)等、および、これらの単量体が、カルボジイミド化合物として挙げられる。これらのカルボジイミド化合物は、単独で使用しても、あるいは、2種以上組み合わせて使用してもよい。カルボジイミド化合物として市販されているものとしては、「カルボジライトシリーズ」(日清紡績株式会社製)等を好適に用いることができる。
【0014】
本発明に用いられるオキサゾリン化合物としては、1,2−エチレンビスオキサゾリン、2−シクロヘキシル−2−オキサゾリン、2−(2’−シクロヘキセニル)−2−オキサゾリン、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−エチル−2−オキサゾリン、2−イソプロピル−2−オキサゾリン及び2−n−プロピル−2−オキサゾリン等又はこれらの混合物及びこれらの重合体等が挙げられる。オキサゾリン化合物として市販されているものとしては、「エポクロス WSシリーズ」(株式会社日本触媒製)等を好適に用いることができる。
【0015】
本発明の木材の干割れ防止剤として含有されているポリカルボン酸中のカルボキシル基とカルボジイミド化合物中のカルボジイミド基とのモル比は、1:10〜10:1で、好ましくは4:5〜5:4である。
【0016】
本発明の木材の干割れ防止剤として含有されているポリカルボン酸中のカルボキシル基とオキサゾリン化合物中のオキサゾリン基とのモル比は、1:10〜10:1で、好ましくは4:5〜5:4である。
【0017】
木質材料の干割れを防止して、寸法安定性に影響を及ぼさない程度であれば、上記の成分に、さらに水や親水性有機溶媒を併用してもよい。具体的には、ジメチルホルムアミドなどのアミド類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどのグリコール類;メチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;炭素数8までのアルコール類;メチルアセテートもしくはエチルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、2−エトキシメチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、プロピレンカーボネートなどのエステル類などが挙げられる。
【0018】
また木質材料の干割れを防止して、寸法安定性に影響を及ぼさない程度であれば、公知の木材防腐剤、防蟻剤、防カビ剤および紫外線吸収剤等をさらに併用してもよい。木材の干割れを防止することで木材の吸水性が低下するので、木材防腐剤、防蟻剤、防カビ剤等を併用した場合にそれぞれの薬剤が有する効果を最大限に発揮することができ、木材保存処理として好ましい実施態様である。
【0019】
本発明の木材の干割れ防止剤を木材に使用する際には、塗布、吹付け、浸漬(含浸)等の表面処理法、拡散法や加圧注入法などの公知の方法であれば特に限定されない。また、本発明の木材の干割れ防止剤の使用量は、処理される木材の種類や用途、形状によっても左右されるが、通常、木材1m当たり5〜30kgである。
【実施例】
【0020】
この発明を製剤例及び実施例により以下に説明するが、この発明はこの製剤例及び実施例により限定されるものではない。なお、製剤例の化合物の数値は全て重量%である。
【0021】
製剤例1
クエン酸 10
カルボジイミド化合物 4
(カルボジライトシリーズ「カルボジライトV02-L2」,日清紡績株式会社製)
水 86
製剤例2
クエン酸 10
カルボジイミド化合物 4
(カルボジライトシリーズ「カルボジライトV02」,日清紡績株式会社製)
水 86
製剤例3
クエン酸 10
カルボジイミド化合物 4
(カルボジライトシリーズ「カルボジライトV04」,日清紡績株式会社製)
水 86
製剤例4
クエン酸 10
オキサゾリン化合物 4
(エポクロス WSシリーズ「エポクロス WS500」,株式会社日本触媒製)
水 86
製剤例5
クエン酸 10
オキサゾリン化合物 4
(エポクロス WSシリーズ「エポクロス WS700」,株式会社日本触媒製)
水 86
【0022】
調製例1 木材試験片の調製
105℃で48時間絶乾した木材試験片(スギ;20mm×20mm×10mm)の重量(V)を予め測定しておき、その木材試験片に製剤例1〜5の薬剤を用いて減圧注入した後、試験片を取り出し付着した水分をキムワイプで拭って重量を測定した。その後60℃で24時間乾燥し、さらに120℃で6時間硬化させてから、再び試験片の重量(V)を測定した。
【0023】
試験例1 木材干割れ防止効果確認試験
調製例1の試験片に、脱イオン水を用いて減圧注入した後、攪拌水を用いて室温で7時間の溶脱操作を行なった。試験片の重量を測定し、60℃で16時間の揮散操作をし、ここまでの(耐候)操作を2回繰り返し行なった後、105℃で48時間絶乾した試験片の重量(V)及び体積(D)の測定を行なった。その後再び減圧注入し、攪拌水を用いて室温で7時間の溶脱操作を行ない、試験片の重量及び体積(D)を測定した。耐候操作2回後の膨潤率(%)、ASE(抗膨潤能)及び固着率(%)を以下の式を用いて算出した。算定結果を表1に示す。
【0024】

膨潤率(%)=〔(D−D)/D〕×100

ASE=(無処理材の体積膨潤率−処理材の体積膨潤率)/無処理材の体積膨潤率〕×100

固着率(%)=〔(V−V)/(V−V)〕×100

【0025】
【表1】



【0026】
表1の結果から、薬剤で処理した木材試験片の膨潤率は3.9〜7.4%(ASE:17.3〜57.2%)で、低く抑えられており、寸法安定効果が高いことがわかる。さらに固着率は68.4〜76.3%で、木材への固着率も高いことがわかる。
【出願人】 【識別番号】000154727
【氏名又は名称】株式会社片山化学工業研究所
【出願日】 平成19年4月23日(2007.4.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−265201(P2008−265201A)
【公開日】 平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願番号】 特願2007−113206(P2007−113206)