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【発明の名称】 木質材料の表面強化方法
【発明者】 【氏名】橋本 春夫

【要約】 【課題】大掛かりな設備のポットプレスによる圧密化処理を必要とせずに簡単な塗装工程だけで、自然の木質感を活かした透明な塗膜で、表面硬度が高く、しかも耐水、耐温水性を改善した樹脂組成による塗膜を形成できる木質材料の表面強化方法を提供するものである。

【解決手段】ポリエステル系水溶性樹脂に架橋剤と硬化剤を配合した水溶性合成樹脂塗料を木質材料の表面に塗布し乾燥させたのち、この表面にポリエステル系不織布またはポリエステル系繊維とパルプからなる合成紙のシートを重ね合わせて、この前記シートの上から15〜50℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させて、木質材料と前記シートとが密着した下塗層を形成させ、この下塗層にセラック(シェラック)を主成分とする天然樹脂塗料または溶剤系ポリウレタン樹脂塗料を塗布し乾燥させるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性飽和ポリエステル樹脂に架橋剤と硬化剤を配合した水溶性合成樹脂塗料を木質材料の表面に塗布し乾燥させた後、この表面にポリエステル系不織布またはポリエステル系繊維とパルプから成る合成紙のシートを重ね合わせて、この前記シートの上から15〜50℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させて、木質材料と前記シートとが密着した下塗層を形成させ、この下塗層にセラック(シェラック)を主成分とする天然樹脂塗料または溶剤系ポリウレタン樹脂塗料を塗布し乾燥させることを特徴とする木質材料の表面強化方法。
【請求項2】
水溶性合成樹脂塗料が、分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つ水溶性飽和ポリエステル樹脂が24〜28重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が2〜5重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が1〜6重量%と、残部が水からなることを特徴とする請求項1記載の木質材料の表面強化方法。
【請求項3】
天然樹脂塗料が、セラック(シェラック)樹脂が11〜22重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が1〜4重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が2〜4重量%と、残部がアルコールからなることを特徴とする請求項1記載の木質材料の表面強化方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、スギ、ヒノキ、赤松、桐などの軟質木質材料の表面に不織布または合成紙のシートを補強材とした透明な塗膜を形成して、木材が持っている自然の木理を鮮明に保持した状態で、木材の表面硬度、耐傷性、耐水、耐温水性などを改善させる木質材料の表面強化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木材の強度や寸法安定性、耐磨耗性、耐候性、表面硬度を改質させる方法として、従来から、木材にアクリル系オリゴマーなどを注入装置により注入し、材内で樹脂を加熱重合させて得る木材プラスチック複合体(WPC)や、高温高圧の熱プレスで圧縮変形を与える圧密化処理などが行なわれている。
【0003】
しかしながら、従来の木材プラスチック複合体や圧密化処理は、集成化した幅広板材や節が混入した無垢板材などの木質系板材では、樹脂注入装置や熱ロールプレスなどの設備からの処理形状の制約や大掛かりな設備投資が必要であり、しかも設備コストが高価となる問題がある。また接着層のはく離や節周辺の破壊などの問題点があり、しかも高温処理による材色変化など木質感を損なう傾向があった。
【0004】
また木材の表面に、ポリエステル系樹脂やウレタン系樹脂などの塗料を集成化した幅広の板材や、節が混入した無垢板材などの木質系板材に塗装して、耐磨耗性や表面硬度を向上させることも行なわれている。しかしながらこの塗装方法では、耐磨耗性などの特徴を具備しているが、スギ材の早材部(春材部)である軟質部分は、圧入強さが弱く、この上をボールペンや爪で押すと凹むという問題があり、単なるポリエステル系樹脂塗装のみでは十分な表面硬度が得られない問題点があった。しかも表面硬度を向上させるため、その樹脂塗料を何回も塗布し塗膜を厚く形成することも行われているが、何回も塗布と乾燥、研摩を繰り返して行なわなければならず工程が煩雑となる問題がある。
【0005】
またシート基材に半硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させた不織布シートを、台板と化粧板の層間に介在させて、これを熱プレスして互いに接着させて、耐傷性優れた木質仕上材(特許文献1)がある。しかしながら、この仕上材は、表面の化粧板が、化粧張り用の木の薄板や予め模様が印刷された紙などを用いるので、基材が持っている自然の木質感を得ることができない欠点がある。
【0006】
また、合板などの多孔質基板の表面に水性合成樹脂液を塗布したのち、不織布等繊維質シートを載置してポットプレスで加熱加圧して、優れた表面硬度と耐傷性を得る多孔質基板の表面強化方法(特許文献2)も提案されている。しかしながら、この表面強化方法では、下塗層の表面強化を狙ったもので、次の工程で自然の木質感を得る必要があり、工程が煩雑となる欠点がある。
【0007】
また本発明者は先に、木質基材の表面に不織布シートを重ね合わせて、この不織布シートに刷毛またはローラーで水分散型熱可塑性樹脂を塗布してから、これを乾燥させて透明性を有する下塗層を形成し、さらに溶剤系高硬度ポリウレタン樹脂塗料を上塗りした後、熱プレスと冷却プレス装置を用いて表面硬度を向上させた木質材料の表面処理方法(特許文献3)を提案した。
【0008】
しかしながらこの方法では、塗膜への気泡の混入や、熱プレスと冷却プレス装置などの大掛かりな設備が必要で、またそのプレス装置の能力に影響され易いなどの問題点があった。
【特許文献1】特開平10−114017
【特許文献2】特開2002−172604
【特許文献3】特開2006−272694
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記問題を改善し、熱プレスと冷却プレスなど大掛かりな設備による圧密化処理を必要とせずに、簡単な塗装工程だけで、集成化した幅広の板材や節が混入した無垢板材などの木質系板材の持つ自然の木質感を活かした透明な塗膜で、表面硬度が高く、しかも耐水、耐温水性を改善した樹脂組成による塗膜を形成できる木質材料の表面強化方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1記載の木質材料の表面強化方法は、スギ、ヒノキ、赤松、桐などの無垢材または集成板材を木質材料とし、水溶性飽和ポリエステル樹脂に架橋剤と硬化剤を配合した水溶性合成樹脂塗料を木質材料の表面に塗布し乾燥させた後、この表面にポリエステル系不織布またはポリエステル系繊維とパルプからなる合成紙のシートを重ね合わせて、この前記シートの上から15〜50℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させて、木質材料と前記シートとが密着した下塗層を形成させ、この下塗層にセラック(シェラック)を主成分とする天然樹脂塗料または溶剤系ポリウレタン樹脂塗料を塗布し乾燥させることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項2記載の木質材料の表面強化方法は、請求項1において、水溶性合成樹脂塗料が、分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つ水溶性飽和ポリエステル樹脂が24〜28重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が2〜5重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が1〜6重量%と、残部が水からなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項3記載の木質材料の表面強化方法は、請求項1において、天然樹脂塗料が、セラック(シェラック)樹脂が11〜22重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が1〜4重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が2〜4重量%と、残部がアルコールからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1記載の木質材料の表面強化方法によれば、軟質木材であるスギ、ヒノキ、赤松、桐などの材種で、材面も節やひび割れ、穴などをポリパテで補修した程度で用材として、木材の持つ木理を鮮明に活かした透明な塗膜を形成させると共に、塗膜の表面硬度が高く、ボールペン引っかき傷、擦り傷に対して強い抵抗性を示すものである。しかも従来の木材プラスチック複合体(WPC)や圧密化処理の方法に比べて、材料効率が良く、設備も安価で、作業効率が良く、作業も安全で、製造コストも安価である。また加温によりシートの間に残留している空気を除去して透明性を向上させて自然の木質感を得ることができる。従って、テーブルや机の天板に本発明の表面強化をした場合は、表面に傷がつき難く、例えば床材、階段板などの住宅用内装材の面材料として使用しても、表面に傷がつき難く、長期間に亘って表面の美観を保つことができる。
【0014】
また請求項2記載の木質材料の表面強化方法によれば、分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つ水溶性飽和ポリエステル樹脂を主成分として、この樹脂に多価カルボジイミド水溶液架橋剤と、イソシアネート系水溶液硬化剤を添加することにより、耐水、耐温水性を付与できると共に、シートの間に残留している空気を除去して透明性を向上させて自然の木質感を得ることができる。また、この樹脂組成や不織布などを補強材とした下塗層においても、表面硬度の向上と自然の木質感を活かした処理材を得ることができる。
【0015】
また請求項3記載の木質材料の表面強化方法によれば、セラック(シェラック)樹脂を主成分として、この樹脂に多価カルボジイミド水溶液架橋剤と、イソシアネート系水溶液硬化剤を添加することにより、セラック樹脂塗料の欠点である耐水性や沸騰水による白化などを改善できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
先ず本発明の表面強化方法の概略を、図1を参照して説明する。図1(A)に示すように木質基材1の表面に、水溶性飽和ポリエステル樹脂に架橋剤と硬化剤を配合した水溶性合成樹脂塗料2を刷毛3やローラで塗布して乾燥させてから、図1(B)に示すように、不織布や合成紙などのシート4を重ね合わせ、このシート4の上から15〜50℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料2を図1(C)に示すように塗布し乾燥させて、木質材料1と前記シート4とが密着した下塗層5を形成する。この後、図1(D)に示すように下塗層5の表面にセラック(シェラック)を主成分とする天然樹脂塗料または溶剤系ポリウレタン樹脂塗料6を塗布し、乾燥させて図1(E)および図2に示すように透明な塗膜を形成し、木質感を活かし、硬度の高い塗膜を形成した表面強化材7を得ることができる。
【0017】
更に本発明方法について、詳細に説明する。本発明に使用する木質基材としては、特に限定されないが、軟質木材であるスギ、ヒノキ、赤松、桐などの材種で、節が混入した集成板材や幅接ぎ板材、節が混入した無垢板材などを用いることもできる。
【0018】
先ず木質基材の表面に水溶性合成樹脂塗料を塗布する。この水溶性合成樹脂塗料は、水溶性飽和ポリエステル樹脂に架橋剤と硬化剤を配合したものである。水溶性飽和ポリエステル樹脂としては、例えば分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つ水溶性飽和ポリエステル樹脂があり、その作用は透明性に優れた皮膜を形成し、表面硬度を向上するためである。また硬化剤としては、例えばイソシアネート系水溶液やエポキシ系水溶液などの硬化剤があり、その作用は水溶性飽和ポリエステル樹脂と反応し硬化させ、優れた皮膜を形成させるもので、イソシアネート系水溶液硬化剤が効果的である。但し、イソシアネート系水溶液硬化剤配合だけでは木質基材との密着性や耐水性が劣る。また架橋剤としては、イソシアネート系水溶液と併用して配合するものとしては、例えば多価カルボジイミド水溶液などがあり、その作用は木質基材と樹脂塗料や不織布などシートの密着性の向上と耐水、耐温水性および硬度を向上させるためである。
【0019】
特に耐水、耐温水性などに効果的な水溶性合成樹脂塗料の配合比率は、分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つ水溶性飽和ポリエステル樹脂が24〜28重量%をベース樹脂とし、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が2〜5重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が1〜6重量%を添加したものが耐水、耐温水性などに効果的である。
【0020】
分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つポリエステル系樹脂としては、例えば水分散のポリウレタン系樹脂やポリエステル系樹脂、水溶性樹脂、エマルジョン樹脂などが挙げられるが、特に水溶性飽和ポリエステル樹脂が好ましく、作用は透明性に優れた皮膜を形成し、表面硬度を向上するためである。
【0021】
なお各成分を上記範囲に規定したのは分子末端に水酸基またはカルボキシル基を持つ水溶性飽和ポリエステル樹脂はベース樹脂である。そのベース樹脂に多価カルボジイミド水溶液架橋剤が2重量%未満では、密着性、耐水性、硬度が劣ることとなり、また5重量%を超えて添加すると乾燥皮膜に粘着性が残留することとなるからである。またイソシアネート系水溶液硬化剤が1重量%未満では、密着性、耐水性、硬度が劣ることとなり、また6重量%を超えて添加すると乾燥皮膜に粘着性が残留することとなるからである。
【0022】
次に、水溶性合成樹脂塗料を塗布した木質基材の表面にポリエステル系不織布またはポリエステル系繊維とパルプからなる合成紙のシートを重ね合わせる。このシートとしては、例えばポリエステル系繊維で湿式タイプの不織布目付12〜24g/m の範囲の湿式不織布シート、またはポリエステル系繊維とパルプ、レーヨンなどからなる合成紙目付12〜24g/m を強化材として使用することが好ましい。この場合、原紙や薄染色のシートを用いると、樹脂を含浸させた時に透明になり、木質基材の木質感をそのまま活かすことができる。また不織布シートは、湿式のものが乾式のものより効果的である
【0023】
次に、不織布や合成紙のシートを重ね合せた木質基材の表面に再度前記水溶性合成樹脂塗料を塗布して含浸させた後、乾燥させて下塗層を形成する。この場合、水溶性合成樹脂塗料は、15〜50℃に加温して粘度を下げて塗布すると、塗布が容易で、木質材料表面とシート間や不織布などのシート内に残留している気泡状空気を除去して透明性を向上させることができる。この場合、シートの上から塗布する水溶性合成樹脂塗料の温度が15℃未満では、粘度が高く気泡が残留することとなり、また50℃を超える温度では樹脂塗料の反応促進やシートの膨張変化となるからである。
【0024】
このように下塗層を形成した後、この下塗層の表面にセラック(シェラック)を主成分とする天然樹脂塗料や溶剤系ポリウレタン樹脂塗料を塗布し上塗層を形成し、これを乾燥させて透明性を有する塗膜を形成する。
【0025】
セラック(シェラック)を主成分とする天然樹脂塗料としては、セラック(シェラック)樹脂11〜22重量%をエタノールで溶解したものをベース樹脂に、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が1〜4重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が2〜4重量%を添加したものが、耐水、耐温水性、耐沸騰水による白化の改善などに効果的である。
【0026】
この場合、セラック(シェラック)樹脂が11重量%未満では、乾燥皮膜に粘着性が残留することとなり、また22重量%を超えて添加すると乾燥皮膜に粘着性が残留することとなるからである。また多価カルボジイミド水溶液架橋剤は1重量%未満では、沸騰水の白化の改善が得られなくなり、また4重量%を超えて添加すると乾燥皮膜に粘着性が残留することとなるからである。またイソシアネート系水溶液硬化剤が2重量%未満では、沸騰水の白化の改善が得られなくなり、また4重量%を超えて添加すると乾燥皮膜に粘着性が残留することとなるからである。
【0027】
また上塗層を形成する溶剤系ポリウレタン樹脂塗料としては、溶剤系塗料のポリウレタン樹脂系やポリエステル樹脂系、または水系塗料のポリウレタン樹脂系やアクリル樹脂系など常温で塗膜形成するものであれば何れでもよい。表面硬度をより高いものを求める場合には、溶剤系の高硬度ポリウレタン樹脂系塗料が最も好ましい。また合成樹脂塗料の塗布量は100g/m 以上に塗布するのが好ましい。
【実施例】
【0028】
(実施例1)本発明における表面強化効果の確認。
人工乾燥したスギ板目材を酢ビ系接着剤で幅接ぎした板材(L450×W225×T18mm)の木質材料を製作した。この表面に本発明による処理と従来技術による処理との比較を行った。
【0029】
水溶性飽和ポリエステル樹脂に架橋剤と硬化剤を配合した水溶性合成樹脂塗料をスギ板材の表面に塗布し乾燥させた後、この表面にポリエステル系不織布のシートを重ね合わせて、このシートの上から30℃に加温した水溶性合成樹脂塗料を塗布した。この水溶性合成樹脂塗料は、水溶性飽和ポリエステル樹脂が26重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が3重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が3重量%と、残部水からなるものを用いた。このシートの上から30℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料を塗布・乾燥した後、溶剤系高硬度ポリウレタン樹脂系塗料(ポリオールとポリイソシアネートから成る溶剤系二液型ウレタン樹脂に、ガラスビーズなどの体質顔料を含有した溶剤系二液型ポリウレタン塗料)を塗布・乾燥して上塗層を形成した表面強化材を作成した。その後、温度25℃、相対湿度60%で7日間放置した(No1)。
【0030】
また前記ポリエステル系不織布のシートを重ね合わせて、このシートの上から30℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料を塗布・乾燥した後、更にポリエステル系不織布のシートを重ね合わせて、このシートの上から30℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料を塗布・乾燥して、この2枚のシートの上に、No1の溶剤系高硬度ポリウレタン樹脂系塗料を塗布・乾燥して上塗層を形成し、2枚のシートを重ねた表面強化材を作成した(No2)。
【0031】
(比較例1)
前記スギ板材の表面に水分散型熱可塑性樹脂(水分散型高分子量共重合ポリエステル樹脂に水性ウレタン樹脂塗料を添加したもの)を塗布してから、これを乾燥させて下塗層を形成した表面強化材を作成した(No3)。またスギ板材の表面にポリエステル系湿式不織布シートを重ね合わせて、この不織布シートにローラーでNo3の水分散型熱可塑性樹脂を塗布してから、これを乾燥させて下塗層を形成したもの(No4)と、スギ板材の表面に2枚のポリエステル系湿式不織布シートを重ね合わせて、この不織布シートに刷毛でNo3の水分散型熱可塑性樹脂を塗布してから乾燥させて下塗層を形成したもの(No5)の3種類の下塗層を形成し、この表面に、No1の溶剤系高硬度ポリウレタン樹脂系塗料を塗布して表面強化材を形成した。
【0032】
次いでこれら3種類の表面強化材を、下塗層を構成する水分散型熱可塑性樹脂の樹脂流動開始温度に加熱保持した平盤熱プレスにセットして、設定温度120℃で、プレス圧力3×105Paで50秒間加圧し、直ちに常温の平盤プレスにセットしてプレス圧力3×105Paで3分間急冷硬化させた。その後プレスから取り出して、温度25℃、相対湿度60%で7日間放置した。
【0033】
またNo1の表面強化材において、ポリエステル系不織布のシートを設けず、他の工程は同一の表面強化材(No6)を作成した。
【0034】
前記の条件で処理したスギ板材の表面強化材を、万能試験機を用いて、その表面に直径3mmの鋼球を3mm/minの平均送り速度で圧入し、0.32mmの深さにおける荷重(N)を測定し、無処理材を基準としての荷重増加割合を演算した。さらに、鉛筆引っ掻き硬度試験機を用い、重り1.0kgを載せ、スギ板材表面に鉄筆をセットし、引っ掻き傷を作り表面形状測定機を用いて、傷の深さを測定した。その結果を表1に示した。また密着性を確認するため、前記で処理したスギ幅接ぎ板材を用いて、温度45℃の恒温水槽の水中に3時間浸漬し、色の変化やはく離状態を観察し、その結果を表1に示した。
【0035】
【表1】



【0036】
表1の結果から、実施例のNo1、2の本発明により処理した表面強化材は、プレス工程がなくても、圧入強さが高く、鉄筆の押し傷の深さも浅く、温水処理での白化や不織布のはく離がなく、耐傷性、耐水、耐温水性の改善が確認できた。また平盤熱プレスや常温平盤プレス等の装置を用いた比較例のNo3、4に比べて同等以上の表面硬度を得ながら、耐傷性、耐水、耐温水性の改善が確認できた。またNo6のポリエステル系不織布のシートを設けていない表面強化材は、鉄筆の押し傷の深さが深く、また不織布のシートも1枚より2枚の方が、圧入強さが高く、鉄筆の押し傷の深さも浅いことが確認された。
【0037】
(実施例2)下塗層の水溶性飽和ポリステル樹脂に架橋剤と硬化剤の配合における効果の確認。
上記実施例1と同種の木質材料を用いて、水溶性飽和ポリステル樹脂が26重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が3重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が3重量%と、残部水からなる水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させたのち、この表面にポリエステル系湿式不織布のシートを重ね合わせて、再び水溶性合成樹脂塗料を塗布、乾燥させて下塗層を形成した後、温度25℃、相対湿度60%で7日間放置した(No7)。
【0038】
(比較例2)
上記実施例1と同種の木質材料を用いて、この表面にポリエステル系湿式不織布シートを重ね合わせて、この不織布シートにローラーで、実施例1で用いた水分散型熱可塑性樹脂を塗布してから、これを乾燥させて下塗層を形成した(No8)。また上記実施例1と同種の木質材料を用いて、水溶性飽和ポリステル樹脂が27重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が7重量%と、残部水からなる、架橋剤を含まない水溶性合成樹脂塗料を木質材料の表面に塗布し乾燥させた後、この表面にポリエステル系湿式不織布のシートを重ね合わせてから、再度前記水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させて下塗層を形成したもの(No9)を作成した。次にこれを乾燥させた後、温度25℃、相対湿度60%で7日間放置した。
【0039】
上記3種類で処理した下塗層を形成したスギ早材部(春材部)を、万能試験機を用いて、その表面に直径3mmの鋼球を3mm/minの平均送り速度で圧入し、0.32mmの深さにおける荷重(N)を測定し、無処理材を基準としての荷重増加割合を演算した。その結果を表2に示した。また、密着性を確認するため、前記で処理したスギ幅接ぎ板材を用いて、温度45℃の恒温水槽の水中に3時間浸漬し、色の変化やはく離状態を観察し、その結果を表2に示した。
【0040】
【表2】






【0041】
表2の結果から、水溶性飽和ポリステル樹脂に架橋剤と硬化剤を配合した実施例の場合(No7)には、スギ早材部の圧入強さは、無処理のスギ板材に比べて2.1倍程度向上し、温度45℃の水中処理でも変化がなかった。これに対して比較例の水分散型熱可塑性樹脂の場合(No8)には、スギ早材部の圧入強さは、無処理のスギ板材に比べて1.9倍程度向上したが、温度45℃の水中処理では、表面が白化し、完全にスギ材と不織布シートがはく離した。また水溶性飽和ポリステル樹脂に硬化剤を配合し、架橋剤を含まない水溶性合成樹脂塗料を塗布したものの場合(No9)は、無処理のスギ板材に比べて1.8倍程度向上したが、温度45℃の水中処理では、表面が白化し、部分的にスギ材と不織布シートがはく離した。このことから、本発明の下塗層の水溶性飽和ポリステル樹脂に架橋剤と硬化剤とを配合したものは、表面硬度の向上と、耐水、耐温水性の改善効果が確認された。
【0042】
(実施例3)上塗り塗料及びシートの種類による効果の確認。
前記と同種のスギ板材の表面に本発明である、水溶性飽和ポリステル樹脂が26重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が3重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が3重量%と、残部水からなる水溶性合成樹脂塗料をスギ板材の表面に塗布し乾燥させたのち、この表面にポリエステル系の湿式不織布のシートを重ね合わせたもの(No10)と、ポリエステル系繊維とパルプからなる合成紙のシートを重ね合わせたもの(No11)を用いて、この2種類のシートの上から30℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させて、木質材料と前記シートとが密着した下塗層を形成した。次に、この下塗層に高硬度溶剤系ポリウレタン樹脂塗料を塗布し乾燥させた。その後、温度25℃、相対湿度60%で7日間放置した。
【0043】
前記と同種のスギ板材の表面に前記No10と同じ水溶性合成樹脂塗料を塗布し、乾燥させたのち、この表面にポリエステル系の湿式不織布のシートを重ね合わせたもの(No12)と、ポリエステル系繊維とパルプからなる合成紙のシートを重ね合わせたもの(No13)を作成した。この2種類のシートの上から30℃に加温した前記水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させて下塗層を形成した。この下塗層にセラック(透明白ラック乾燥品)樹脂が15重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が3重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が3重量%と、残部アルコールからなる天然樹脂塗料を塗布し乾燥させた。その後、温度25℃、相対湿度60%で7日間放置した。
【0044】
前記の条件で処理したスギ早材部(春材部)を、万能試験機を用いて、その表面に直径3mmの鋼球を3mm/minの平均送り速度で圧入し、0.32mmの深さにおける荷重(N)を測定し、無処理材を基準としての荷重増加割合を演算した。さらに、鉛筆引っ掻き硬度試験機を用い、重り1.0kgを載せ、スギ板材表面に鉄筆をセットし、引っ掻き傷を作り、表面形状測定機を用い、傷の深さを測定した。その結果を表3に示した。
【0045】
【表3】



【0046】
表3の結果から、シートの相違による表面の強さでは、溶剤系高硬度ポリウレタン樹脂塗料を上塗りに用いた場合(No10とNo11の比較)で、合成紙では12%程度増加したが、押し傷深さで深くなった。またセラック(透明白ラック乾燥品)樹脂を主成分とする天然樹脂塗料を上塗りに用いた場合(No12とNo13の比較)で、合成紙では7%程度増加し、押し傷深さでも浅くなった。また、上塗り塗料の相違による表面の強さでは、溶剤系高硬度ポリウレタン樹脂塗料を用いたものが、圧入強さで3〜9%程度増加し、押し傷深さも13〜2.6倍程度浅くなり、鉛筆硬度で4H程度の表面硬度であった。
【0047】
これに対して天然樹脂塗料ではHB〜2H程度の表面硬度であるが、実用に耐える状況である。さらに、ポリエステル系湿式不織布は平滑な素材であることから平滑性を重視する用途に適し、ポリエステル系繊維とパルプからなる合成紙は柔らかな素材であることから二次面加工を求める用途など適し、その用途を使い分けると良い。
【0048】
(実施例4)塗膜における透明性の確認。
赤、青、黄、茶、黒の5色上質色紙と上質原紙の6種類を熱溶着系接着剤で合板に貼り付け、この上質原紙の表面に水溶性飽和ポリステル樹脂が26重量%と、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が3重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が3重量%と、残部水からなる水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させ、この表面を色差計でLab値を測定し、基準値とした。
【0049】
また5色の上質色紙と上質原紙の表面に実施例3のNo10と同じ水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させたのち、この表面にポリエステル系の湿式不織布のシートを重ね合わせてから、再度水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させ下塗層を形成する。さらにこの下塗層の表面に溶剤系ポリウレタン樹脂塗料を塗布し乾燥させて上塗層を形成した(No14)。またNo14において、シートをポリエステル系繊維とパルプからなる合成紙のシートを用いた他は同一の処理を行なったものを作成した(No15)。
【0050】
また色紙と上質原紙の表面にNo14と同じ水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させたのち、この表面にポリエステル系の湿式不織布のシートを重ね合わせてから、再度水溶性合成樹脂塗料を塗布し乾燥させ下塗層を形成する。さらにこの下塗層の表面に実施例3で用いたセラック(透明白ラック乾燥品)樹脂を主成分とする天然樹脂塗料を塗布し乾燥させて上塗層を形成した(No16)。またNo16において、シートをポリエステル系繊維とパルプからなる合成紙のシートを用いた他は同一の処理を行なって上塗層を形成した(No17)。これら各試料の表面を色差計でLab値を測定し、基準値との色の差を6色ごとに色差(ΔLab)を求め、その結果を表4に示した。
【0051】
(比較例4)
また5色の上質色紙と上質原紙の表面にポリエステル系湿式不織布シートを重ね合わせて、この不織布シートにローラーで、実施例1で用いた水分散型熱可塑性樹脂を塗布してから、これを乾燥させて下塗層を形成した後、溶剤系ポリウレタン樹脂塗料を塗布し乾燥させて上塗層を形成した(No18)。これら試料の表面を色差計でLab値を測定し、基準値との色の差を6色ごとに色差(ΔLab)を求め、その結果を表4に併記した。
【0052】
【表4】





【0053】
表4の結果から、6種類の上質色紙における色の変化は、溶剤系高硬度ポリウレタン樹脂塗料を上塗りに用いた場合(No14とNo15とNo18)で、合成紙の方が変化は少なかった。またセラック(透明白ラック乾燥品)樹脂を主成分とする天然樹脂塗料を上塗りに用いた場合(No16とNo17)では、溶剤系上塗りより低い色差値を示し、特に合成紙は色差(ΔLab)で2の値を示した。このことは、合成紙を補強材として用いても、透明な塗膜が得られることが確認できた。また、木質材料への処理においても、合成紙を補強材とし、セラック(透明白ラック乾燥品)樹脂を主成分とする天然樹脂塗料を上塗りした処理面を目視で観察しても、木材の持つ木理を鮮明に見せる透明な塗膜で有ることが確認できた。
【0054】
(実施例5)セラックを主成分とする天然樹脂塗料の組成条件の効果の確認。
セラック(透明白ラック乾燥品)樹脂が15重量%、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が3重量%と、イソシアネート系水溶液硬化剤が3重量%と、残部がアルコールとからなる天然樹脂塗料を、黒色ポリエステル化粧合板をサンドペーパで研摩したものに2回塗布し乾燥させた(No19)。その後、温度25℃、相対湿度60%で7日間放置した。
【0055】
前記の条件で処理した塗膜面にPP製カップ(200cc用)を載せ、そのカップに沸騰水(水温87℃)200cc注ぎ、その沸騰水よりスポイトで2cc吸い上げてカップの底に注入した。この状態で10分間放置(水温56℃)した後、カップを除き水分を拭き取り、室内(室温15℃)に5分間放置し、カップを載せた塗膜面を観測し、白化や軟化を調べてその状態を図3に示した。この塗料を用いた塗膜は、少々の変化が観測されたが、実用に耐えうる最も効果的な組み合わせであることが確認できた。
【0056】
(比較例5)
セラック(透明白ラック乾燥品)樹脂が17重量%、残部がアルコールからなる天然樹脂塗料を、黒色ポリエステル化粧合板をサンドペーパで研摩したものに2回塗布し乾燥させた(No20)。セラック(透明白ラック乾燥品)樹脂が16重量%、イソシアネート系水溶液硬化剤が3重量%、残部がアルコールからなる天然樹脂塗料を、黒色ポリエステル化粧合板をサンドペーパで研摩したものに2回塗布し乾燥させた(No21)。セラック(透明白ラック乾燥品)樹脂が15重量%、多価カルボジイミド水溶液架橋剤が3重量%、残部がアルコールからなる天然樹脂塗料を、黒色ポリエステル化粧合板をサンドペーパで研摩したものに2回塗布し乾燥させた(No22)。
【0057】
これら試料について実施例5と同様にカップを載せた塗膜面を観測し、白化や軟化を調べてその状態を図4(No20)、図5(No21)、図6(No22)に示した。この結果、硬化剤と架橋剤の両者を含まない何れの試料も塗膜は、カップの底に注入した沸騰水が接触した部分の塗膜は白化し、中央が軟化していた。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の表面処理工程を示す説明である。
【図2】本発明方法により処理した表面強化材を示す断面図である。
【図3】試料No19の試料にカップを載せた塗膜面の白化状態を示す写真である。
【図4】試料No20の試料にカップを載せた塗膜面の白化状態を示す写真である。
【図5】試料No21の試料にカップを載せた塗膜面の白化状態を示す写真である。
【図6】試料No22の試料にカップを載せた塗膜面の白化状態を示す写真である。
【符号の説明】
【0059】
1 木質基材
2 水溶性合成樹脂塗料
3 刷毛
4 不織布や合成紙などのシート
5 下塗層
6 天然樹脂塗料または溶剤系ポリウレタン樹脂塗料
7 表面強化材


【出願人】 【識別番号】391041062
【氏名又は名称】福島県
【出願日】 平成19年3月15日(2007.3.15)
【代理人】 【識別番号】100077883
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 勝郎


【公開番号】 特開2008−221742(P2008−221742A)
【公開日】 平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願番号】 特願2007−66247(P2007−66247)