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【発明の名称】 天然系素材の加圧緻密化処理装置
【発明者】 【氏名】藤川 隆男

【要約】 【課題】軸方向に配向した繊維組織とその他の組織からなる天然系素材を、前記繊維組織に損傷を与えることなく加圧圧縮すると共に、加熱処理を施して固定化し効率的に緻密化処理出来る加圧緻密化処理装置を提供する。

【解決手段】木材、竹材など組織内に軸方向の繊維組織を含む天然系素材16を、耐圧性を有する円筒部11とこの円筒部11の上下を密封するための上蓋部12と下蓋部13とからなる高圧容器10内に収納し、前記軸方向に垂直な方向から加圧流体によって二次元的もしくは軸対称的に加圧圧縮して緻密化しつつ/または緻密化した後、加熱処理を施して固定化するための加圧緻密化処理装置であって、前記上蓋部12に高圧容器10内に加熱気体を導入するための加熱気体導入孔21が設けられ、前記下蓋部13に排気孔22が設けられてなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材、竹材など組織内に軸方向の繊維組織を含む天然系素材を、耐圧性を有する円筒部とこの円筒部の上下を密封するための上蓋部と下蓋部とからなる高圧容器内に収納し、前記軸方向に垂直な方向から加圧流体によって二次元的もしくは軸対称的に加圧圧縮して緻密化しつつ/または緻密化した後、加熱処理を施して固定化するための加圧緻密化処理装置であって、前記上蓋部に高圧容器内に加熱気体を導入するための加熱気体導入孔が設けられ、前記下蓋部に排気孔が設けられてなることを特徴とする天然系素材の加圧緻密化処理装置。
【請求項2】
前記高圧容器内に、軸方向に有孔部を設けられた円柱状有孔弾性体が収納され、この円柱状有孔弾性体の有孔部に装填された天然系素材が緻密化されることを特徴とする請求項1に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置。
【請求項3】
前記円柱状有孔弾性体とこの有孔部に装填された天然系素材との間に、多孔性断熱材が介設されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置。
【請求項4】
前記加熱気体導入孔に接続された加熱気体用配管に保温材が装着されてなることを特徴とする請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置。
【請求項5】
前記天然系素材の外周に電気絶縁性を有する緩衝材が配設され、更に、この緩衝材の外周にジュール発熱させるための導電性粉末からなる発熱体が配設されると共に、この発熱体の外周に電気絶縁性を有する断熱材が配設されてなることを特徴とする請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置。
【請求項6】
前記天然系素材の外周に温度検出手段が配設され、前記天然系素材の温度を検出しながらその温度が所定温度となるように、前記発熱体への投入電力が制御されてなることを特徴とする請求項1乃至5のうちの何れか一つの項に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、木材、竹材など組織内に軸方向の繊維組織を含む天然系素材を、流体圧力を作用させて、前記軸方向に垂直な方向から二次元的もしくは軸対称的に加圧圧縮して緻密化しつつ/または緻密化した後、加熱処理して固定化する加圧緻密化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から天然資源の有効利用が重要視されて、自動車や家電製品等の部材としての利用が進みつつある。これらの分野では、天然のケナフの繊維にポリ乳酸をマトリックスとなるように加えて複合化し、天然系複合材としての利用が検討されているが、木材や竹材を、これらの欠点である低密度に起因する強度不足を補正することによって、そのままに近い形態での利用も検討されている。
【0003】
後者の場合、基本的に高密度化の処理が必要であり、このための研究開発が行われて、種々のプロセスが提案されている。最も単純な処理方法としては、高圧の水蒸気雰囲気内で木材を軟化させた後、高圧条件下で圧縮成形・固定化処理する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この方法によれば木材全体が緻密化される。
【0004】
また、テーブルの天板や階段のステップ板、床材などでは、傷の発生防止のために軽量かつ表面のみ硬い材料を製造する方が好ましく、近年では表面層のみを緻密化(硬化)させる方法が実用化もしくは提案されている。基本的には、表面部のみを加熱して軟化させて加圧する方法が採用されており、熱板プレスや熱圧ロールプレスが用いられている(特許文献2参照)。
【0005】
これらの多くの従来技術では、加圧圧縮は一方向にプレスもしくはロールで加圧することにより行われるが、ガスや水等の流体を加圧して、流体圧力をゴム等の弾性体を介して等方的に圧縮する方法も提案されており、古くは1910年代の英国特許(特許文献3参照)において、90〜150℃に加熱した木材を少なくとも200kg/cm2(≒20MPa)の圧力で流体(アスファルト)を用いて圧縮する方法が提案されている。
【0006】
次に、他の従来技術に係る木材の圧力処理用装置について図6を用いて説明する。図6は、従来技術に係る木材の圧力処理用装置の概略断面図である。この従来技術によれば、主として板材を含めて矩形断面の細長い木材要素35a,35b,35cを高圧容器31内で木材要素35a,35b,35cを、隔膜34を介して、更には気密なケーシング材33に収納して、圧力媒体によって加えられた圧力で緻密化する方法が提案されており、案内面36a,36bを持つ部材を使用して特定の面を案内面に沿った形状で成形することも提案されている(特許文献4参照)。
【0007】
これらの従来技術では、供試材を加熱した状態で加圧することを特徴としており、加圧緻密化処理の直前に加熱処理を行うか、加圧処理自体を120〜200℃の高温下で行うことを特徴としている。多くの場合、対象とする天然系素材は板材であって、熱圧ロールや平板上のプレスでの緻密化処理が主体であるが、これらの装置では、床材等の板材にしか適用出来ないという欠点を有している。
【0008】
更に、等方圧による加圧緻密化処理では、流体の圧力は天然系素材の繊維方向と垂直な方向は勿論、繊維方向である軸方向にも圧縮を受けるが、繊維方向の圧縮は繊維の弾性率が150〜300GPaと大きいため、通常の加圧圧力100〜1000MPaでは弾性変形するのみであり、減圧後には復元してしまい、実際は軸方向に垂直な方向の圧力しか緻密化には寄与しておらず、非効率的であるという欠点を有する。
【特許文献1】特開平3−231802号公報
【特許文献2】特公平4−3722号公報
【特許文献3】英国特許GB100.792号公報
【特許文献4】特表平11−503377号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、木材、竹材などの様に、軸方向に配向した繊維組織とその他の組織からなる天然系素材を、前記繊維組織に損傷を与えることなく加圧圧縮すると共に、加熱処理を施して固定化し効率的に緻密化処理出来る加圧緻密化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置が採用した手段は、木材、竹材など組織内に軸方向の繊維組織を含む天然系素材を、耐圧性を有する円筒部とこの円筒部の上下を密封するための上蓋部と下蓋部とからなる高圧容器内に収納し、前記軸方向に垂直な方向から加圧流体によって二次元的もしくは軸対称的に加圧圧縮して緻密化しつつ/または緻密化した後、加熱処理を施して固定化するための加圧緻密化処理装置であることを特徴とするものである。
【0011】
同時に、この加圧緻密化処理装置は、前記上蓋部に高圧容器内に加熱気体を導入するための加熱気体導入孔が設けられ、前記下蓋部に排気孔が設けられてなることを特徴とするものである。尚、ここにおける「垂直」または「軸対称」の意味は、夫々ほぼ垂直またはほぼ軸対称であれば良く、完全に垂直または軸対称であることを要しない。
【0012】
本発明の請求項2に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置が採用した手段は、請求項1に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置において、前記高圧容器内に、軸方向に有孔部を設けられた円柱状有孔弾性体が収納され、この円柱状有孔弾性体の有孔部に装填された天然系素材が緻密化されることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の請求項3に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置が採用した手段は、請求項1または2に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置において、前記円柱状有孔弾性体とこの有孔部に装填された天然系素材との間に、多孔性断熱材が介設されてなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の請求項4に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置が採用した手段は、請求項1乃至3のうちの何れか一つの項に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置において、前記加熱気体導入孔に接続された加熱気体用配管に保温材が装着されてなることを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項5に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置が採用した手段は、請求項1乃至4のうちの何れか一つの項に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置において、前記天然系素材の外周に電気絶縁性を有する緩衝材が配設され、更に、この緩衝材の外周にジュール発熱させるための導電性粉末からなる発熱体が配設されると共に、この発熱体の外周に電気絶縁性を有する断熱材が配設されてなることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項6に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置が採用した手段は、請求項1乃至5のうちの何れか一つの項に記載の天然系素材の加圧緻密化処理装置において、前記天然系素材の外周に温度検出手段が配設され、前記天然系素材の温度を検出しながらその温度が所定温度となるように、前記発熱体への投入電力が制御されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置によれば、木材、竹材など組織内に軸方向の繊維組織を含む天然系素材を、耐圧性を有する円筒部とこの円筒部の上下を密封するための上蓋部と下蓋部とからなる高圧容器内に収納し、前記軸方向に垂直な方向から加圧流体によって二次元的もしくは軸対称的に加圧圧縮して緻密化しつつ/または緻密化した後、加熱処理を施して固定化するための加圧緻密化処理装置であって、前記上蓋部に高圧容器内に加熱気体を導入するための加熱気体導入孔が設けられ、前記下蓋部に排気孔が設けられてなるので、収縮変形を防止して繊維組織を破壊することなく、加圧緻密化処理と固定化処理とを同時に/または連続して処理可能な天然系素材の加圧緻密化処理装置を提供し得る。
【0018】
また、本発明の請求項2に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置によれば、前記高圧容器内に、軸方向に有孔部を設けられた円柱状有孔弾性体が収納され、この円柱状有孔弾性体の有孔部に装填された天然系素材が緻密化されるので、前記天然系素材への軸方向に垂直な方向から二次元的もしくは軸対称的に加圧圧縮することが確実に実現可能となる。
【0019】
更に、本発明の請求項3に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置によれば、前記円柱状有孔弾性体とこの有孔部に装填された天然系素材との間に、多孔性断熱材が介設されてなるので、高圧容器内の加熱気体の流れを阻害することなく一様な流れを形成させて、前記天然系素材の均一な加熱が可能となる。
【0020】
また更に、本発明の請求項4に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置によれば、前記加熱気体導入孔に接続された加熱気体用配管に保温材が装着されてなるので、周囲の環境温度の変動に影響されない一定温度の加熱気体を供給できる。
【0021】
本発明の請求項5に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置によれば、前記天然系素材の外周に電気絶縁性を有する緩衝材が配設され、更に、この緩衝材の外周にジュール発熱させるための導電性粉末からなる発熱体が配設されると共に、この発熱体の外周に電気絶縁性を有する断熱材が配設されてなる。
【0022】
従って、前記発熱体は、異なる形状や寸法を有する天然系素材の加圧緻密化処理にも何回でも使用できる上、加圧処理時の変形に対する追従性が高い。また、加熱・加圧処理後には、前記天然系素材から沁み出した樹脂成分によって固化しても、容易に粉末状態に再生して再使用することが可能であり、経済性の観点でも好ましい。また、前記発熱体の外周に、電気絶縁性の緩衝材が配設されたので漏電や感電の恐れが無い。
【0023】
また、本発明の請求項6に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置によれば、前記天然系素材の外周に温度検出手段が配設され、前記天然系素材の温度を検出しながらその温度が所定温度となるように、前記発熱体への投入電力が制御されてなるので、前記天然系素材の加熱温度を精度良く所定温度に保持可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の実施の形態1に係る天然系素材の緻密化処理装置について、以下図1乃至4を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置の要部を示す模式的縦断面図、図2は図1の天然系素材が円柱状木材である場合の矢視X−Xを示す模式的断面図、図3は図1の天然系素材が複数の小径円柱状木材である場合の矢視X−Xを示す模式的断面図、図4は図1の天然系素材が四角柱状木材である場合の矢視X−Xを示す模式的断面図である。
【0025】
図1において、本発明の実施の形態1に係る組織内に軸方向の繊維組織を含む天然系素材の加圧緻密化処理装置は、耐圧性を有する円筒部11と、この円筒部11の上端を密封するための上蓋部12と、前記円筒部11の下端を密封するための下蓋部13とからなる高圧容器10を備えている。ここで、前記上蓋部12はリング状上蓋12aと上プラグ12bとにより、前記下蓋部13はリング状下蓋13aと下プラグ13bとにより構成されている。符号20は、前記上蓋部12を上部より押圧支持するプレスフレームである。
【0026】
そして、本発明の実施の形態1に係る加圧緻密化処理装置は、この高圧容器10の円筒部11内面に加圧空間14が形成されるように、両端に耳部15aを有する弾性体からなる円筒状メンブラン15が装着されると共に、この円筒状メンブラン15の内側には、加圧流体による加圧圧縮力を天然系素材である円柱状木材16に伝達するため、円形断面を有する有孔部17aを軸方向に設けられた円柱状有孔弾性体17が収納されている。
【0027】
同時に、この円柱状有孔弾性体17の有孔部17aに、多孔性断熱材18を介して前記天然素材16が装填出来るように構成されている。そして、前記加圧空間14に加圧流体が導入され、前記円筒状メンブラン15が加圧された時に、前記円柱状木材16が、その軸方向に垂直な方向から二次元的もしくは軸対称的に加圧圧縮されるよう構成されている。
【0028】
また、上蓋部12を構成するリング状上蓋12aには、高圧容器10の内部に加熱気体を供給するための加熱気体導入孔21が、下蓋部13を構成するリング状下蓋13aには、前記加熱気体導入孔21から供給された加熱気体や天然系素材16から発生したガス成分を、高圧容器内部から排出するための排気孔22が設けられている。
【0029】
即ち、前記加圧緻密化処理装置において、円筒状メンブラン15外面及びその両端の耳部15aと円筒部11内面とで形成された加圧空間14に、加圧ポンプ(図示せず)により加圧された加圧流体が、加圧流体導入孔14aを介して導入され、前記円柱状木材16は、円筒状メンブラン15の内側に配置された円柱状有孔弾性体17を介して、二次元的もしくは軸対称的に求心方向の加圧圧縮力を受けるのである。この加圧圧縮力により、前記円柱状木材16は求心方向に収縮し、この変形は圧力を除去しても弾性的な回復分を除いて変形状態が維持される。
【0030】
同時に、前記加熱気体導入孔21から供給された加熱気体によって、円柱状木材16を加熱したり、前記排気孔22から前記加熱気体や円柱状木材16から発生したガス成分を排出することが出来るのである。
【0031】
この様な構成からなる本発明の実施の形態1に係る加圧緻密化処理装置の機能につき、以下天然系素材16の加圧緻密化処理工程に沿って説明する。木材や竹材等の天然系素材は、前記加圧緻密化装置の高圧容器10に収納可能な長さに切断された後、大気中で乾燥炉を用いて乾燥処理を行ったものが一般的に使用される。前記乾燥温度は85〜120℃の範囲で行い、この温度での保持時間は、前記天然系素材の寸法、特に厚さに依存し、竹材のように厚さ10mm以下の薄いものでは6時間以上、木材で厚さ50mm以上のものでは12〜48時間の乾燥処理を行うことが好ましい。
【0032】
尚、前記乾燥温度が120℃を越えると、天然系素材の一部変質が生じるので好ましくない。前記乾燥処理は、緻密化を阻害する余分な水分の除去が目的であり、水の蒸気圧が十分で、かつ、水の蒸散を制御している弁構造組織が軟化する温度が120℃である。
【0033】
この様な乾燥処理により、木材・竹材の組織内部に包含された水のうち、いわゆる自由水と呼ばれる導管内の水の中でも閉塞状態にある導管内の水も除去される。この乾燥処理を行って閉空間内の水の除去がされていないと、加圧圧縮を行ってもこの水を包含した部分は圧縮されないために十分な緻密化が出来ない。
【0034】
このような状態となった木材・竹材は、室温下での加圧でも高密度に緻密化が進み、100MPa以上の圧力で加圧することによって、容易に木材の真密度といわれる1.5×10kg/mに近い密度にまで緻密化されるが、この加圧圧縮により緻密化された木材・竹材は、煮沸水に暴露されると復元してしまうので、加熱しながら加圧緻密化もしくは加圧処理後に加熱することによって固定化処理が行なわれる。
【0035】
本発明に係る加圧緻密化処理装置は、加熱下で、天然系素材を軸方向に垂直な方向に二次元的もしくは軸対称的に加圧圧縮するための装置であって、例えば、温度150℃で予備加熱した天然系素材を本装置内で加圧して緻密化処理を行ない、次いで本装置内に温度170℃の加熱水蒸気を導入して連続的に固定化処理を行なったり、温度170℃の加熱下で加圧圧縮による緻密化処理と変形防止のための固定化処理とを、同時に行うことを可能とするものである。
【0036】
前記後者による加圧緻密化処理の場合は、温度150〜180℃の加熱下で加圧圧縮するのが好ましい。従って、処理対象の天然系素材を前記装置内に装填する前に、ある程度の温度に予備加熱しておくことが、加圧緻密化処理時間を短縮する上で好ましく、例えば温度100〜150℃の範囲に予備加熱しておくことが推奨される。
【0037】
この理由は、上記自由水の一部が閉空間に閉じ込められたままであるために、加圧された高圧時には圧縮状態にあっても、大気圧下に減圧後には元へ戻ってしまうためと考えられる。元の木材や竹材に含まれている水分の量は、自然乾燥の有無や保存状態にもよって異なり10〜130%の範囲であるが、前記乾燥処理後には5〜10%程度となる。この残留水分は、リグニンやセルロースなどの成分と結合した結合水であって、加圧処理時の変形の容易化にも寄与するものである。乾燥処理の温度を150℃以上に高くすると、この結合水までもが除去されてしまうため好ましくない。
【0038】
この様にして予備加熱された天然系素材16は、図1に示す如く、本発明の実施の形態1に係る加圧緻密化処理装置の高圧容器10の内部に軸方向の繊維組織を揃えた状態で装填されて、加熱気体導入孔21より加熱気体を供給しつつ、円筒状メンブラン15と円筒容器11の内面とによって形成された加圧空間14に加圧流体が供給されて、その内側に配設された円柱状有孔弾性体17とセラミック粉末等からなる多孔性断熱材18を介して、軸対称的に求心方向の圧縮力を受ける。尚、ここにおける「揃える」の意味は、概ね揃っていれば良く、完全に揃えることまでは要しない。
【0039】
このような加圧圧縮力により、前記円柱状木材16は求心方向に収縮し、加熱気体による加熱によりこの収縮変形は固定化されるので、加圧流体による加圧力を解除し、加熱気体を排気孔22から排出して温度を室温に戻しても、弾性的な回復分を除いて圧縮変形された状態が維持されるのである。
【0040】
尚、木材の組織は、スギ材やヒノキ材のような多くの針葉樹では年輪に代表される密な濃色の組織部分と疎な淡色の組織部分から構成され、かつ一様ではない。このため、円形断面の木材を加圧処理すると、疎な淡色部分がより多く圧縮され、断面形状は非円形状のいびつな形状となる。
【0041】
また、木材に枝が出ていた部分を採取して円柱状木材16として形成した場合には、枝を除去した痕部にはこの枝の軸方向組織が半径方向に向いているために圧縮されても収縮量は少なくなり、加圧処理後には周囲から突出していびつな形状となる。そのため前記円柱状有孔弾性体17に損傷を与え易く、これを防止するために円柱状木材16の外周に多孔性断熱材18を配設するのが好ましい。
【0042】
円筒状メンブラン15と円柱状木材16との間に配置された前記円柱状有孔弾性体17は、このいびつな変形により円筒状メンブラン15が損傷を受けるのを防ぐ機能を有している。勿論、円柱状木材16の直径は素材ごとに異なるため、この円柱状有孔弾性体17はこの寸法や形状が若干異なっても、その形状に合わせて対応が可能という機能をも有している。円筒状メンブラン15の内側に配置される前記円柱状有孔弾性体17の役割は非常に重要であり、天然系素材16の形状に応じて種々のものが使用される。
【0043】
最も代表的な例は、前述したような円柱状木材の処理に使用するもので、図2に示す如く、有孔部17aの断面形状が円形状であり、その直径を円柱状木材16の直径より少し大き目として、その隙間に前述したセラミックス粉末等からなる多孔性断熱材18が配設される。
【0044】
前記天然系素材が、例えば小径の円柱状木材16aの場合は、図3に示す様に、前記円柱状有孔弾性体17に前記断面より大き目の複数個の有孔部17aを設け、前記と同様、それらの隙間に前述したセラミックス粉末等からなる多孔性断熱材18が配設される。この多孔性断熱材18は、前記円柱状有孔弾性体17の損傷を防止するための緩衝材としての役割も果たす。
【0045】
前記天然系素材が四角柱状木材16aの場合は、図4に示す様に、前記円柱状有孔弾性体17に前記四角柱断面より大き目の矩形断面の有孔部17aを設け、前記と同様、それらの隙間に前述したセラミックス粉末等からなる多孔性断熱材18が配設される。前記有効部17aの隅部は、スムーズな加圧圧縮がされるよう通常R加工(面取り加工)するのが好ましい。
【0046】
そして、前記加熱気体導入孔21から導入された加熱気体や加熱水蒸気は、このように配設された多孔性断熱材18の多孔部空間を流れる際に前記天然系素材16,16a,16bを加熱し、排気孔22から系外に放出される。既に予備加熱されていれば、本装置内での加熱時間は数分で十分である。
【0047】
加圧緻密化の圧力は、処理後の密度をどの程度とするかに依存するが、天然系素材の真密度の70%以上の高密度化とするには、30〜400MPaの圧力で十分である。前記圧力が30MPa未満では十分な緻密化が図れず、400MPaを越えて大きくしても効果は余り変わらない。前記圧力は、100〜200MPa程度の圧力が更に良い数値範囲である。また、保持時間は、木材が粘弾性特性を示すことから、数秒程度余りの短時間では不十分であるが、1分以上であれば緻密化には問題がない。
【0048】
更に、本発明における加圧緻密化処理装置は、天然系素材の加圧緻密化処理と、同時もしくは連続的に、加熱処理を施す加熱固定化処理を行なえることが特徴であり、そのために、加圧容器内に系外から加熱気体、更に好ましくは加熱水蒸気を供給して、前記天然系素材を加熱可能な構成としている。この場合、加熱水蒸気を用いると、固定化処理が効率的に、即ち、同一温度の加熱気体に比べ短時間で処理可能なことが知られており、例えば170℃であれば、5分程度で十分な固定化処理が実現される。
【0049】
特に、長時間加熱すると、前記天然系素材内のリグニンの一部の熱分解による炭素の発生や酸化現象により、黒色化が生じることから、短時間での処理が好ましく、本発明に係る加圧緻密化処理装置はこの目的を実現するのに好適である。尚、加熱水蒸気は、加熱気体導入孔21から供給されて、セラミックス粉末等からなる多孔性断熱材18の多孔部を通過して天然系素材16を加熱するが、この際に前記天然系素材16から発生する水分やガス成分は、天然系素材16の下方(及び上方)に配設された多孔性充填材23を通過して、下蓋部に設けられた排気孔22から系外に放出される。
【0050】
尚、加熱熱源となる加熱気体の温度は非常に重要であり、周囲の環境温度による温度変動の影響を排除するために、加熱気体導入孔21の配管には保温材21aを装着しておくことが推奨される。また、加熱熱源として電力による加熱も有効であるが、高圧容器10全体を加熱するのでは、エネルギー効率の観点や、装置全体が所定温度に昇温するまでの長時間を要すこと、容器全体が高温になることに起因する安全上の問題から現実的ではない。本発明は、以下の実施の形態2に示す如く、このような電力利用による弊害を回避して、加圧緻密化と同時に、電力による加熱を併用した加圧緻密化処理装置を提案するものである。
【0051】
次に、本発明の実施の形態2に係る天然系素材の緻密化処理装置について、図5を参照しながら説明する。図5は本発明の実施の形態2に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置の要部を示す模式的縦断面図である。但し、本発明の実施の形態2が上記実施の形態1と相違するところは、天然系素材の加熱方式に相違があり、これ以外は上記実施の形態1と全く同構成であるから、上記実施の形態1と同一のものに同一符号を付して、その相違する点について説明する。
【0052】
即ち、上記実施の形態1に係る天然系素材の加熱方式が加熱気体による加熱方式であるのに対し、本実施の形態2に係る加熱方式は前記天然系素材の周囲に導電性粉末からなる発熱体を配設して、この発熱体をジュール発熱させる方式である。
【0053】
この発熱方式の構成を更に詳しく述べるならば、前記天然系素材16の外周に電気絶縁材25を配設すると共に、こ電気絶縁材25と多孔性断熱材18との間の空間に、金属粉末や炭素粉末等の導電性粉末からなる発熱体24を配設する一方、この発熱体24の上端部には円板状の電極部材24aが配設されて、上蓋部12から電気絶縁を施して導入された給電リード線26を経由して加熱電源(図示せず)に接続されている。
【0054】
そして、導電性粉末からなる前記発熱体24の下端は、下プラグ13bに直接結合されて、前記下プラグ13bが、通電のための他方の電極部材の役割を果たす構造となっている。このような構成からなる発熱体24は、前記天然系素材16の外周に配設された温度検出手段によって検出された温度が所定の温度となるように、投入される加熱電力を制御される。
【0055】
前記温度検出手段としては熱電対や測温抵抗体等を用いることが出来るが、以下熱電対27を用いた場合のセット方法と温度制御方法について、更に詳細に説明する。先ず、高圧容器10を構成する下蓋部13とこの上に搭載された円柱状有孔弾性体17等一式を、円筒部11の下端から下蓋部13を外して下方に降下させた上、天然系素材16を所定位置に収納する。その際、下蓋部13を降下させた状態で、前記下蓋部13の上にブロック状の多孔性充填材23を置き、この多孔性充填材23の上に前記天然系素材16を収納した後、内周側に熱電対27を取り付けたシート状の電気絶縁材25を、前記天然系素材16の外周に巻き付けて固定する。
【0056】
そして、円筒形状を有する多孔性断熱材18と円柱状有孔弾性体17とを、前記天然系素材16の外周側に上から落とし込む。その後、導電性粉末からなる発熱体24を、前記電気絶縁材料25と多孔性断熱材18との間に形成された円環状の隙間に充填する。次いで、下蓋部13とこの上に搭載された上記一式とを上昇させて、円筒部11の下端に装着する。その後、上プラグ12bを開けて、上部開口部から多孔性充填材23を挿入し、この上に電極部材24aを載せ、更に上部の空間にも多孔性充填材23を入れる。尚、加圧緻密化処理完了後は、上述したセット方法と同様に下蓋部13を下方に降下させて、処理の終わった前記天然系素材16を回収する。
【0057】
この様にしてセットされた熱電対27で生じる熱起電力信号を、補償導線27aによって系外に取り出し、適宜増幅してPID制御回路を介して加熱電力供給用のサイリスタのゲート回路に印加させることにより、所定の時間−温度プログラムに追随する様に前記発熱体24に投入される加熱電力を制御するのである。
【0058】
本発明の実施の形態2においても、加熱気体導入孔21から加熱気体や加熱蒸気を並行して供給することも可能である。加熱気体と電気加熱とを併用することによって、前記発熱体24への投入電力の調整により、より精度の高い温度制御が可能となる。また、この様に加熱気体による加熱を併用する場合にも、温度制御用に前記天然素材16外周に前記温度検出手段を配設して、検出された温度に基づき加熱電力を制御するのが好ましい。
【0059】
本発明の実施の形態2に係る加圧緻密化処理装置においては、前記発熱体24として、導電性を有する粉末、即ち金属粉末や炭素粉末等を用いるが、粉末であるために天然系素材16の寸法や形状への自由度を有し、異なる形状や寸法を有する天然系素材の加圧緻密化処理にも何回でも使用できる上、加圧処理時の変形に対する追従性が高い。また、加熱・加圧処理後には、これらの粉末材料は、前記天然系素材16から沁み出した樹脂成分によって固化しても、容易に粉末状態に再生して再使用することが可能であり、経済性の観点でも非常に好ましい。
【0060】
以上説明した様に、本発明に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置によれば、近年、二酸化炭素の放出による地球温暖化の影響が少ないカーボンニュートラルな材料として、また、有効利用が期待されているスギ、ヒノキ等の低密度の針葉樹林材や竹材等の天然系素材を、高密度かつ高強度を有する材料に改質することが可能となる。特に、通常の加圧緻密化処理で必要とされる緻密化後の固定化処理を、加圧緻密化と同時もしくは連続して行なうことが可能となり、加圧緻密化処理工程全体の処理時間が短縮されて生産性が改善されるという効果を有するものである。
【0061】
更に、比強度の観点からは、一部の鉄鋼やアルミニウム材を凌ぐ構造材料として使用が可能となり、工業製品としての展開が期待される。特に、天然系素材からなる棒材を製造するには最適であり、家電製品用の部品や家具、一部の建材としての利用を可能にする等、今後環境保全にも資する材料技術を提供するものとして寄与するところ多大である。
【0062】
尚、上記の実施の形態では、木材の例を説明したが、天然系素材としては木材や竹材に限定されず、葦材等の草類やこれらを組み合わせた素材であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施の形態1に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置の要部を示す模式的縦断面図である。
【図2】図1の天然系素材が円柱状木材である場合の矢視X−Xを示す模式的断面図である。
【図3】図1の天然系素材が複数の小径円柱状木材である場合の矢視X−Xを示す模式的断面図である。
【図4】図1の天然系素材が四角柱状木材である場合の矢視X−Xを示す模式的断面図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る天然系素材の加圧緻密化処理装置の要部を示す模式的縦断面図である。
【図6】従来技術に係る木材の圧力処理用装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10:高圧容器, 11:円筒部
12:上蓋部, 12a:リング状上蓋, 12b:上プラグ
13:下蓋部, 13a:リング状下蓋, 13b:下プラグ
14:加圧空間, 14a:加圧流体導入孔
15:円筒状メンブレン, 15a:耳部
16,16a:円柱状木材(天然系素材)
16b:四角柱状木材(天然系素材)
17:円柱状有孔弾性体, 17a:有孔部
18:多孔性断熱材, 20:プレスフレーム
21:加熱気体導入孔, 21a:保温材
22:排気孔, 23:多孔性充填材
24:発熱体, 24a:電極部材
25:電気絶縁材(緩衝材), 26:給電リード線
27:熱電対(温度検出手段), 27a:補償導線
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成19年2月13日(2007.2.13)
【代理人】 【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之

【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠

【識別番号】100131750
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 芳通


【公開番号】 特開2008−194948(P2008−194948A)
【公開日】 平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願番号】 特願2007−32344(P2007−32344)