【発明の名称】 |
木材用漂白剤および木材の漂白方法 |
【発明者】 |
【氏名】松岡 統
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【要約】 |
【課題】取扱いや保管が容易で、臭気がなく、木材等を劣化させることのない木材用漂白剤を提供するとともに、その木材用漂白剤を用いた木材の漂白方法を提供する。
【解決手段】建築物の漂白・脱色に用いられる木材用漂白剤1であって、オレンジオイル10と界面活性剤11と水12とを混合させて構成され、オレンジオイル10の混合比率が1〜4%であることを特徴とする木材用漂白剤1であり、この木材用漂白剤1を木材2に塗布するか、あるいは木材用漂白剤1に木材2を浸漬した後に、乾燥させることを特徴とする木材の漂白方法である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 建築物の漂白・脱色に用いられる木材用漂白剤であって、 オレンジオイルと界面活性剤と水とを混合させて構成され、 前記オレンジオイルの混合比率が1〜4%である ことを特徴とする木材用漂白剤。 【請求項2】 請求項1に記載の木材用漂白剤を木材に塗布するか、あるいは前記木材用漂白剤に木材を浸漬した後に、乾燥させる ことを特徴とする木材の漂白方法。 【請求項3】 前記木材用漂白剤の木材への塗布または木材の前記木材用漂白剤への浸漬を行う前に、前記木材の表面にインサイジング加工等の木材内部への前記木材用漂白剤の浸透を促進する加工を施す ことを特徴とする請求項2に記載の木材の漂白方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、建築物の漂白・脱色に用いられる木材用漂白剤および木材の漂白方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、建築用の木材の輸入量の増加に伴なって、輸入木材の中に、変色菌が発生したブルーステイン材が混入するケースが見受けられるようになってきた。特に、北米各地においてマウンテン・パイン・ビートルによるパイン材への被害は広がりつつあり、今後、ブルーステイン材の入荷が増加することは必至と予想され、調達、価格等の観点から、将来は受け入れざるを得ない状況にあると言える。また、ブルーステインは、北米のパイン材以外に、カラマツやトドマツ、スプルースでも発生が見られ、ヨーロッパでも問題になりつつある。 【0003】 このブルーステイン材は、木材としての性能、強度、耐久性上、通常の木材と同等の性能を有しているが、美観が悪く、また建築主から誤解を受けやすく現場でクレームになるおそれがある。そのため、工場等でブルーステイン材の漂白・脱色処理が行われることがある。 【0004】 木材の漂白・脱色処理を行うための木材用漂白剤としては、従来、過酸化水素水またはその誘導体などの酸系の薬剤(例えば、特許文献1参照)、次亜塩素酸ソーダや二塩素化イソシアヌール酸ソーダなどの塩素系の薬剤を用いることが一般的であった。 【特許文献1】特開平8−11106号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、従来の酸系や塩素系の漂白剤は有害性が高く、取扱いや保管が難しいといった問題があった。また、塩素系の漂白剤は特有の臭気を有しており、処理木材に特有の臭気が付いてしまうといった問題があった。さらに、酸系や塩素系の漂白剤は、反応性が高く、漂白処理時に木材自体を劣化させるおそれがあるとともに、処理木材に残留した薬剤が釘等の金物や接着剤などの劣化を促進させるおそれがあった。 【0006】 そこで、本発明は、前記の問題を解決するために案出されたものであり、取扱いや保管が容易で、木材等を劣化させることのない木材用漂白剤および木材の漂白方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 前記課題を解決するための請求項1に係る発明は、建築物の漂白・脱色に用いられる木材用漂白剤であって、オレンジオイルと界面活性剤と水とを混合させて構成され、前記オレンジオイルの混合比率が1〜4%であることを特徴とする木材用漂白剤である。 【0008】 このような構成によれば、オレンジオイルは柑橘類に含有されている天然由来の化学物質であるので、有害性が低く、取扱いや保管が従来の酸系や塩素系の漂白剤と比較して非常に容易である。また、かかる木材用漂白剤は、柑橘類特有の香気を有しており、従来のような不快な臭気が処理木材につくことはない。さらに、オレンジオイルは、酸系や塩素系の漂白剤と比較して反応性が低いため、漂白処理時に木材を劣化させることはなく、釘等の金物や接着剤などの劣化を促進させる可能性も低い。また、かかる木材用漂白剤は、主に柑橘系の果実からジュースを搾った後の皮などの廃棄物から抽出・採取されているので、産業廃棄物の再利用による有効利用を図ることもできる。 【0009】 請求項2に係る発明は、請求項1に記載の木材用漂白剤を木材に塗布するか、あるいは前記木材用漂白剤に木材を浸漬した後に、乾燥させることを特徴とする木材の漂白方法である。 【0010】 このような方法によれば、木材用漂白剤を木材に効率的に付着させて作用させることができ、前記した請求項1と同様の作用効果を得ることができる。 【0011】 請求項3に係る発明は、前記木材用漂白剤の木材への塗布または木材の前記木材用漂白剤への浸漬を行う前に、前記木材の表面にインサイジング加工等の木材内部への前記木材用漂白剤の浸透を促進する加工を施すことを特徴とする請求項2に記載の木材の漂白方法である。 【0012】 木材内部への木材用漂白剤の浸透を促進する加工としては、インサイジング加工の他に粗サンドペーパーで表面を擦って粗くする加工等がある。このような方法によれば、木材用漂白剤が木材の内部(深部)に浸透して、漂白・脱色効果が一層高くなる。 【発明の効果】 【0013】 本発明によれば、木材用漂白剤の取扱いや保管が容易となり、木材用漂白剤には臭気がなく、これを用いて漂白・脱色処理を施しても木材等を劣化させることはないといった優れた効果を発揮する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0014】 本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。 【0015】 図1は、本発明に係る木材の漂白方法を実施するための最良の形態を示した概略図、図2は、本発明に係る木材用漂白剤の漂白性能試験で用いた各薬剤の成分と使用方法を示した一覧表、図3は、本発明に係る木材用漂白剤の漂白性能試験での混合比率を示した一覧表、図4は、本発明に係る木材用漂白剤の漂白性能試験の各薬剤の漂白性能を示した一覧表である。 【0016】 図1に示すように、本発明に係る木材用漂白剤1は、オレンジオイル10と界面活性剤11と水12とを混合させて構成されている。漂白剤とは、着色物質を酸化もしくは還元により他の物質に化学変化させて分解し、脱色させる物質である。 【0017】 オレンジオイル10は、オレンジやレモンなどの柑橘類の皮などから抽出される天然精油であって、主成分がD−リモネンである。一方、界面活性剤11は、分子内に水に馴染み易い部分(親水基)と、油に馴染み易い部分(親油基・疎水基)を有する物質であって、オレンジオイル10と水12とを均一に混合させる働きを有するとともに、洗浄効果も発揮する。一般に、界面活性剤は、陰イオン系(アニオン系)界面活性剤、非イオン系(ノニオン系)界面活性剤、両性イオン界面活性剤、陽イオン系界面活性剤に大きく分類される。本実施の形態の界面活性剤11は、陰イオン系(アニオン系)界面活性剤や非イオン系(ノニオン系)界面活性剤が用いられている。なお、前記の界面活性剤11は、一例であって前記の成分に限られるものではない。 【0018】 木材用漂白剤1を構成する各成分(オレンジオイル10、界面活性剤11、水12)の混合比率は、オレンジオイル10が、全体の1〜4%(重量%)の範囲であるのが好ましい。この場合、界面活性剤11は、オレンジオイル10よりも若干多い比率、例えば、1.5〜5%の範囲となり、残りの97.5〜91%が水となる。すなわち、オレンジオイル10の混合比率が大きくなると、界面活性剤11の混合比率も大きくなり、そして、残りの水の混合比率が小さくなる。このように、界面活性剤11をオレンジオイル10よりも若干多く混合させることで、オレンジオイル10が効率的に水12に均一に混合する。 【0019】 前記のような木材用漂白剤1を使用して木材2の漂白・脱色を行うに際しては、図1に示すように、木材用漂白剤1を、刷毛3等を用いて木材2に塗布して自然乾燥させればよい。木材2に発生した青変部分(変色菌の発生部分であって、図1中ハッチングにて示した部分)4には、木材用漂白剤1を複数回(例えば、2,3回)塗布するようにするのが好ましい。木材2の自然乾燥は、所定の時間より長く行い、木材2を十分に乾燥させるようにする。このように、木材2を十分に乾燥させることで、青変の再発や、木材2の歪みの発生を防止することができる。なお、木材2の乾燥は、自然乾燥に限られることなく、強制的に乾燥させてもよい。但し、自然乾燥をする方が、木材用漂白剤1が木材2に接している時間が長いので、漂白・脱色効果が高く好ましい。 【0020】 さらに、青変部分4には、木材用漂白剤1を塗布する前(漂白・脱色処理前)に、予めインサイジング加工等の木材2の内部への木材用漂白剤1の浸透を促進する加工を施すのが好ましい。インサイジング加工とは、薬液が木材2の内部に浸透し易くするための加工であって、針やレーザビーム等で、木材2の表面を刺傷する加工である。インサイジング加工を行う装置としては、例えば、外周表面に所定ピッチで針が配列されたローラ(図示せず)間に木材2を挟みこんで、そのローラを回転させることで木材2の表面に浸透穴5を形成するといった加工装置がある。このような加工装置によれば、図1に示すように、木材2の表面に複数の浸透穴5を所定ピッチで形成することができる。なお、木材2の内部への木材用漂白剤1の浸透を促進する加工は、インサイジング加工に限られるものではない。例えば、粗サンドペーパーで木材2の表面を擦って粗くするようにしてもよい。 【0021】 なお、木材用漂白剤1を木材2に供給する方法は、塗布に限られるものではなく、木材用漂白剤1を貯めた槽(図示せず)に木材2を挿入し、木材用漂白剤1に浸漬させるようにしてもよい。この場合、木材2の全体を木材用漂白剤1内に浸漬させてもよいし、青変部分4のみを、木材用漂白剤1に浸漬させてもよい。また、木材2の木材用漂白剤11への浸漬時間は、通常、1〜5分程度でよいが、青変の度合いに応じて、例えば青変状態が大きい(色が濃い)場合には、浸漬時間を長くしてもよい。 【0022】 次に、前記のような構成の木材用漂白剤1と従来の薬液とを用いて行った漂白性能試験について説明する。 【0023】 漂白性能試験に用いた木材は、SPF材より構成されている。SPF材とは、亜寒帯針葉樹林に生育するスプルース(Spruce)、パイン(Pine)、ファー(Fir)の総称で、その頭文字を並べたものであって、いずれも成長が早くて安価に入手できる木材である。 【0024】 漂白性能試験に用いた薬液は、図2に示すように、下記の15種類のものが用いられている。薬液1は、塩素系で、成分が亜塩素酸ナトリウムであって、塗布後自然乾燥させた。薬液2は、酸素系で、成分が過酸化水素水であって、塗布後自然乾燥させた。薬液3は、酸系で、成分はクエン酸であって、水溶液にして使用し、塗布後自然乾燥させた。薬液4は、酸系で、成分は酢酸であって、薬液を塗布後自然乾燥させた。薬液5は、酸系で、成分は酢酸+界面活性剤+キレート剤であって、薬剤を塗布後自然乾燥させた。薬液6は、アルカリ系で、成分は重曹であって、水溶液にした薬剤を塗布後自然乾燥させた。薬液7は、アルカリ系で、成分は液体石鹸(脂肪酸カリウム)であって、原液のまま塗布後自然乾燥させた。薬液8は、成分はアルカリ系で、重曹+アルカリイオン水+エチルアルコールであって、薬剤を塗布後自然乾燥させた。 【0025】 薬液9〜15は、油性系で、オレンジオイル(D−リモネン)と界面活性剤と水とを混合させた薬液であって、その混合比率を図3のように変えて構成されている。薬液9は、オレンジオイルと界面活性剤と水の混合比率が、40:50:10で、薬液を塗布後自然乾燥させた。薬液10は、オレンジオイルと界面活性剤と水の混合比率が、13:17:70で、薬液を塗布後自然乾燥させた。薬液11は、オレンジオイルと界面活性剤と水の混合比率が、8:10:82で、薬液を塗布後自然乾燥させた。薬液12は、オレンジオイルと界面活性剤と水の混合比率が、6:7.5:86.5で、薬液を塗布後自然乾燥させた。薬液13は、オレンジオイルと界面活性剤と水の混合比率が、4:5:91で、薬液を塗布後自然乾燥させた。薬液14は、オレンジオイルと界面活性剤と水の混合比率が、2:3:95(数値をご確認ください)で、薬液を塗布後自然乾燥させた。薬液15は、オレンジオイルと界面活性剤と水の混合比率が、1:1.5:97.5で、薬液を塗布後自然乾燥させた。なお、界面活性剤は、陰イオン系(アニオン系)界面活性剤や非イオン系(ノニオン系)界面活性剤が用いられている。 【0026】 以上の薬液1〜15を用いて処理した木材について、処理前、処理直後、所定時間(例えば、1時間後、2時間後、6時間後、48時間後等)経過後にそれぞれ目視により評価を行った。 【0027】 各薬液1〜15の評価は、図4に示すようになった。塩素系である薬液1(亜塩素酸ナトリウム)は、青変のない一般部では明確に黄色に変化し、青変部では全体的に薄い褐色に変化し色むらは少なかった。処理部分には、僅かに塩素特有の臭いが付着した。以上より「効果あり」の評価を得た。 【0028】 すなわち、塩素系の薬液1では、青変部の漂白・脱色に一定の効果は得られるものの、一般部が黄変し、塩素特有の臭いが付着してしまっていた。 【0029】 酸素系である薬液2(過酸化水素水)は、青変のない一般部では僅かに白化し、青変部では全体的に淡い褐色から灰褐色に変化し色むらは少なかった。処理部分に、においの変化はなかった。以上より「効果あり」の評価を得た。 【0030】 すなわち、酸素系の薬剤2では、木材に臭気の付着は起こらないが、一般部も脱色される傾向が見られた。 【0031】 酸系である薬液3(クエン酸)は、青変のない一般部では僅かに黄色に変化し、青変部では僅かに黒色に変化した。処理部分に、においの変化はなかった。以上より「効果なし」の評価であった。薬液4(酢酸)は、青変のない一般部では明確に黄色に変化し、青変部では黄色から灰黒色に変化し、全体的に色が濃く目立つようになっていた。処理部分には、僅かに酸特有の臭いが付着した。以上より「効果なし」の評価であった。薬液5(酢酸+界面活性剤+キレート酸)は、青変のない一般部では変化がなく、青変部では部分的には漂白できているが、全体的には黒味が増しており、色むらがあった。処理部分には、僅かに酸特有の臭いが付着した。以上より「効果なし」の評価であった。 【0032】 すなわち、酸系の薬液3〜5では、漂白・脱色効果はあまり得られず、酸特有の臭いが付着してしまっていた。 【0033】 アルカリ系である薬液6(重曹)では、青変のない一般部では明確に黄色に変化し、青変部では黄色から青みがかった色に変化し、全体的には僅かに色が薄くなっている。処理部分に、においの変化はなかった。以上より「効果なし」の評価であった。薬液7(液体石鹸)では、青変のない一般部では明確に黄色に変化し、青変部では黄色から灰黒色に変化し、全体的に色が濃く目立つようになっている。処理部分に、においの変化はなかった。以上より「効果なし」の評価であった。薬液8(重曹+アルカリイオン水+エチルアルコール)では、青変のない一般部では明確に黄色に変化し、青変部では黄色から青みがかった色に変化し、全体的には僅かに色が薄くなっている。処理部分に、においの変化はなかった。以上より「効果なし」の評価であった。 【0034】 すなわち、アルカリ系の薬液6〜8では、漂白・脱色効果はあまり得られなかった。 【0035】 油性系でオレンジオイルを40%混合させた薬液9は、青変のない一般部では変化なく、青変部でも変化がなかった。処理部分には、オレンジの香りが付着していた。以上より「効果なし」の評価であった。オレンジオイルを13%混合させた薬液10は、青変のない一般部では変化なく、青変部では、僅かに色が薄くなっていた。処理部分には、オレンジの香りが付着していた。以上より「僅かに効果あり」の評価を得た。オレンジオイルを8%混合させた薬液11は、青変のない一般部では変化なく、青変部では、僅かに色が薄くなっていた。処理部分には、オレンジの香りが付着していた。以上より「僅かに効果あり」の評価を得た。オレンジオイルを6%混合させた薬液12は、青変のない一般部では変化なく、青変部では、僅かに色が薄くなっていた。処理部分のにおいの変化はなかった。以上より「僅かに効果あり」の評価を得た。オレンジオイルを4%混合させた薬液13では、青変のない一般部では変化なく、青変部は全体が淡い褐色に変化して、一般部と同じような色になり、色むらも非常に少なかった。処理部分のにおいの変化はなかった。以上より「非常に効果あり」の評価を得た。オレンジオイルを2%混合させた薬液14では、青変のない一般部では変化なく、青変部は全体に色が薄くなり青変部が目立ち難くなっており、色むらは目立たなくなっていた。処理部分のにおいの変化はなかった。以上より「効果あり」の評価を得た。オレンジオイルを1%混合させた薬液15では、青変のない一般部では変化なく、青変部は全体に色が薄くなり青変部が目立ち難くなっており、色むらは目立たなくなっていた。処理部分のにおいの変化はなかった。以上より「効果あり」の評価を得た。 【0036】 以上の結果より、本発明に係る木材用漂白剤1は、オレンジオイルの混合比率が高いほど、オレンジの香りを発するが、混合比率が高すぎると木材の漂白・脱色効果は低く、オレンジオイルの混合比率が1〜4%であると、木材の漂白・脱色効果が高いことが判明した。なお、オレンジオイルの混合比率が6〜13%周辺であっても、青変部の色が薄い場合には、漂白・脱色処理を効率的に行うことができる。 【0037】 前記の漂白性能試験より、オレンジオイルと界面活性剤と水とを混合させた木材用漂白剤が、漂白・脱色効果が最も高く、不快な臭気を付着させることもないことが判明した。 【0038】 次に、本発明に係る木材用漂白剤1および木材の漂白方法の作用効果を説明する。かかる木材用漂白剤1によれば、オレンジオイル10は柑橘類に含有されている天然由来の化学物質であるので、有害性が低く、処理時の取扱いや保管が従来の酸系や塩素系の漂白剤と比較して非常に容易である。また、かかる木材用漂白剤1は、柑橘類特有の香気を有しており、従来のような臭気が処理木材2につくことはない。特に、オレンジオイル10の混合比率を1〜4%にすれば、無臭である。 【0039】 さらに、オレンジオイル10は、酸系や塩素系の漂白剤と比較して反応性が低いため、漂白処理時に木材を劣化させることはなく、釘等の金物や接着剤などの劣化を促進させる可能性も低い。また、かかる木材用漂白剤1は、主に柑橘系の果実からジュースを搾った後の皮などの廃棄物から抽出・採取されているので、産業廃棄物の再利用による有効利用を図ることもできる。 【0040】 また、木材2を漂白するに際して、かかる木材用漂白剤1を木材2に塗布するか、あるいは木材用漂白剤1に木材2を浸漬した後に、乾燥させるようにすれば、木材用漂白剤1を木材に効率的に付着させて、適度な時間で作用させることができるので、高い漂白・脱色効果を得ることができる。 【0041】 さらに、本実施の形態のように、木材用漂白剤1の木材2への塗布または木材2の木材用漂白剤1への浸漬を行う前に、木材2の表面にインサイジング加工等の木材2の内部への木材用漂白剤1の浸透を促進する加工を施すようにすれば、木材用漂白剤1が木材2の内部に浸透して浸透性が高くなるとともに、木材用漂白剤1の木材2表面への付着性も高くなるので、漂白・脱色効果が一層高くなる。 【0042】 以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施の形態では、木材2の表面にインサイジング加工を行っているが、これに限られるものではなく、インサイジング加工等を行わなくても、木材用漂白剤1の木材2への塗布量を多くしたり、木材2の木材用漂白剤1への浸漬時間を長くすれば、同等の漂白・脱色効果を得ることができる。但し、少ない塗布量あるいは短い浸漬時間で、木材2の漂白・脱色を行える点で、インサイジング加工等の木材2の内部への木材用漂白剤1の浸透を促進する加工を行う方が好ましい。 【0043】 また、インサイジング加工等は、木材2の表面に一様に施すのではなく、青変部分4のみに施すようにしてもよい。これによれば、インサイジング加工等の加工時間を短縮することができる。 【図面の簡単な説明】 【0044】 【図1】本発明に係る木材の漂白方法を実施するための最良の形態を示した概略図である。 【図2】本発明に係る木材用漂白剤の漂白性能試験で用いた各薬剤の成分と使用方法を示した一覧表である。 【図3】本発明に係る木材用漂白剤の漂白性能試験での混合比率を示した一覧表である。 【図4】本発明に係る木材用漂白剤の漂白性能試験の各薬剤の漂白性能を示した一覧表である。 【符号の説明】 【0045】 1 木材用漂白剤 2 木材 10 オレンジオイル 11 界面活性剤 12 水
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【出願人】 |
【識別番号】000174884 【氏名又は名称】三井ホーム株式会社
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【出願日】 |
平成19年1月17日(2007.1.17) |
【代理人】 |
【識別番号】100064414 【弁理士】 【氏名又は名称】磯野 道造
【識別番号】100111545 【弁理士】 【氏名又は名称】多田 悦夫
【識別番号】100129849 【弁理士】 【氏名又は名称】内田 雅一
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【公開番号】 |
特開2008−173821(P2008−173821A) |
【公開日】 |
平成20年7月31日(2008.7.31) |
【出願番号】 |
特願2007−8146(P2007−8146) |
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