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【発明の名称】 変色木材の漂白方法
【発明者】 【氏名】嘉手苅 幸男

【要約】 【課題】木材素地の損傷を防ぎつつ、木材の内部組織に深く侵入した青カビ等のカビによるブルーステインの除去を効果的に行うことのできる、経済的な木材漂白技術を提供すること。

【解決手段】カビにより変色した木材の表面を、アルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩の溶液、アルカリ性の過酸化水素溶液およびアルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩の溶液で順次処理することを特徴とする変色木材の漂白方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カビにより変色した木材の表面を、アルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩の溶液、アルカリ性の過酸化水素溶液およびアルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩の溶液で順次処理することを特徴とする変色木材の漂白方法。
【請求項2】
アルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩溶液に、界面活性剤を添加する請求項第1項記載の変色木材の漂白方法。
【請求項3】
界面活性剤が、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートである請求項第2項記載の変色木材の漂白方法。
【請求項4】
更に前処理として、カビにより変色した木材をエタノール水溶液で処理する請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載の変色木材の漂白方法。
【請求項5】
カビにより変色した木材が、青変菌により変色した木材である請求項第1項ないし第4項の何れかの項記載の変色木材の漂白方法。
【請求項6】
請求項第1項ないし第5項の何れかに記載の変色木材の漂白方法を行うことにより得られる木材。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、変色木材の漂白方法に関し、更に詳細には、青変菌などのカビにより汚染・変色された木材の漂白方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原木などから製材した木材は、カビ等に汚染される結果変色し、木材としての商品価値が低下することがよくある。従来、このような木材の変色は、亜塩素酸ナトリウムを使用して除去されているが、この方法により除去できる変色は、木材表面でのみ生育するカビによるものに限られていた。
【0003】
ところで、特に青カビ、黒カビ等の青変菌は木材の中に侵入して内部の木材組織中を深く汚染することが知られており、このような青変菌による汚染は、青いメラミン色素が沈着、変色することからブルーステインと称されている。
【0004】
この青変菌等による汚染を除去するためには、亜塩素酸ナトリウムを使用するだけでは不十分で、亜塩素酸ナトリウムとエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)又は金属塩とを併用し、木材を処理することが報告されている(特許文献1)。また、二塩素化イソシアヌール酸ナトリウム10%水溶液で木材を処理すると木材素地を傷めることがなく汚染を漂白除去できることも報告されている(非特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開昭59−207204号公報
【非特許文献1】「木材利用の化学」、共立出版株式会社、1983年3月1日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような漂白処理では汚染木材表面のみの汚染の除去にとどまるため、木材の組織内部に深く侵入した青変菌によるブルーステインの除去は困難である。また、処理に使用する塩素系漂白剤がpHによっては分解することがあり、急激なガスの発生や木材素地の損傷が発生したり、使用する薬剤が高価である等の問題がある。
【0007】
従って、本発明は木材素地の損傷を防ぎつつ、木材の内部組織に深く侵入した青カビ等のカビによるブルーステインの除去を効果的に行うことのできる、経済的な木材漂白技術の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、特定の薬剤溶液を組み合わせ、これらで順次処理することにより、青変菌等のカビで変色した木材からブルーステインを効果的に除去できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明はカビにより変色した木材の表面を、アルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩の溶液、アルカリ性の過酸化水素溶液およびアルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩の溶液で順次処理することを特徴とする変色木材の漂白方法である。
【0010】
また、本発明は上記の変色木材の漂白方法を行うことにより得られる木材である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の変色木材の漂白方法は、安価であり、青変菌等のカビにより汚染された木材から変色の除去を効果的に行うことができ、しかも、素地を損傷させない優れた方法である。
【0012】
従って、本発明の変色木材の漂白方法は、これまでは矢板としての利用や廃棄されていた青変菌等のカビによる汚染木材を、家具、建築内装材、工芸品等として利用可能とするための方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の青変菌汚染木材の漂白方法(以下、単に「本発明漂白方法」という)は、青変菌等のカビにより汚染され、変色された木材を、アルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩の溶液(以下、「薬剤溶液(a)」という)、アルカリ性の過酸化水素溶液(以下、「薬剤溶液(b)」という)およびアルカリ性の次亜塩素酸もしくはその塩の溶液(以下、「薬剤溶液(c)」という)で順次処理するものである。
【0014】
本発明漂白方法に用いられる薬剤溶液(a)のアルカリ性の次亜塩素酸溶液は、溶液中に次亜塩素酸が含まれ、そのpHがアルカリ性であれば特に限定されず使用される。このようなアルカリ性の次亜塩素酸溶液としては、例えば、次亜塩素酸を2.3〜4.9質量%(以下、単に「%」という)程度、好ましくは4.9%程度の濃度で含み、そのpHが13.1〜13.6程度、好ましくは13.4〜13.6程度であるものが挙げられる。この溶液の、次亜塩素酸の供給源としては、次亜塩素酸や、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等のその塩が挙げられる。また、この溶液のpHをアルカリ性に調整するには水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質が使用される。
【0015】
また、本発明漂白方法に用いられる薬剤溶液(b)のアルカリ性の過酸化水素溶液は、溶液中に過酸化水素が含まれ、そのpHがアルカリ性であれば特に限定されない。このようなアルカリ性の過酸化水素溶液としては、例えば、過酸化水素を19.8〜35.3%程度、好ましくは29.7〜29.8%程度の濃度で含み、そのpHが7.5〜8.4程度、好ましくは7.5〜7.8程度であるものが挙げられる。この溶液のpHをアルカリ性に調整するには水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質が使用される。
【0016】
更に、本発明漂白方法に用いられる薬剤溶液(c)のアルカリ性の次亜塩素酸溶液は、溶液中に次亜塩素酸が含まれ、そのpHがアルカリ性であれば特に限定されない。このようなアルカリ性の次亜塩素酸溶液としては、例えば、次亜塩素酸を2.3〜4.9質量%(以下、単に「%」という)程度、好ましくは4.9%程度の濃度で含み、そのpHが13.1〜13.6程度、好ましくは13.4〜13.6程度であるものが挙げられる。この溶液の、次亜塩素酸の供給源としては、次亜塩素酸や、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム等のその塩が挙げられる。また、この溶液のpHをアルカリ性に調整するには水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ性物質が使用される。なお、この薬剤溶液(c)は上記薬剤溶液(a)と同じものであっても、また異なるものであっても構わない。
【0017】
更に、本発明方法で使用する各薬剤溶液、特に、薬剤溶液(a)および薬剤溶液(c)のアルカリ性の次亜塩素酸溶液には、漂白効果を増強するために、界面活性剤を添加してもよい。このような界面活性剤としては、非イオン系界面活性剤または両性イオン系界面活性剤が挙げられ、これらの中でも非イオン系界面活性剤が好ましい。非イオン系の界面活性剤の中でも特にポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートが好ましい。このポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートは、例えば、Tween20(関東化学製)等として市販されているので、これを利用しても良い。また、これら界面活性剤の各薬剤溶液への添加量は、特に限定されないが、例えば0.01〜0.05%程度、好ましくは0.015〜0.040%程度である。
【0018】
本発明による青変菌等のカビで汚染された変色木材(以下、「変色木材」という)の処理は、次のようにして行われる。すなわち、まず、薬剤溶液(a)で製材された変色木材を処理し、当該薬剤溶液を浸透させた後、乾燥させる。次に、薬剤溶液(b)でこの変色木材を処理し、当該薬剤溶液を浸透させた後、乾燥させる。最後に、薬剤溶液(c)で上記変色木材を処理し、これを浸透させた後、乾燥させればよい。
【0019】
上記において、薬剤溶液(a)による処理は、変色木材表面に薬剤溶液(a)を浸透させることができればよく、その条件は特に限定されないが、例えば、変色木材面積に対し1回あたり125〜175ml/m程度、好ましくは130〜170ml/m程度の量を使用して行うことが好ましい。また、薬剤溶液(a)を変色木材に浸透させるには、例えば、上記量の各薬剤溶液を着変色木材に刷毛等で塗布あるいは、スプレー等で噴霧するか、変色木材自体を薬剤溶液の入った容器に浸漬する等すればよい。これらの中でも薬剤溶液を変色木材に刷毛で塗布することが好ましい。また、薬剤溶液(a)で処理した後の変色木材は、風乾等で乾燥させればよい。なお、薬剤溶液(a)による浸透処理は複数回、好ましくは4回程度繰り返すことが好ましい。
【0020】
また、薬剤溶液(b)による処理は、変色木材表面に薬剤溶液(b)を浸透させることができればよく、その条件は特に限定されないが、例えば、変色木材面積に対し1回あたり150〜200ml/m程度、好ましくは155〜195ml/m程度の量を使用し、行うことが好ましい。また、薬剤溶液(b)を用いる変色木材の処理は、例えば、上記量の各薬剤溶液を変色木材に刷毛等で塗布あるいは、スプレー等で噴霧するか、変色木材自体を薬剤溶液の入った容器に浸漬する等すればよい。これらの中でも薬剤溶液を変色木材に刷毛で塗布することが好ましい。また、薬剤溶液(b)で処理した後の変色木材は、風乾等で乾燥させればよい。なお、薬剤溶液(b)による浸透処理は複数回、好ましくは4回程度繰り返すことが好ましい。
【0021】
更に、薬剤溶液(c)による変色木材の処理は、変色木材表面(c)に薬剤溶液を浸透させることができればよく、その条件は特に限定されないが、例えば、木材面積に対し1回あたり125〜175ml/m程度、好ましくは130〜170ml/m程度の量を使用して行うことが好ましい。この薬剤溶液(c)を変色木材に浸透させるには、前記薬剤溶液(a)で処理するのと同様とすればよい。
【0022】
以上説明した工程により、変色木材の変色が漂白され、きれいな木材表面を得ることができるが、より高い効果を得るためには、薬剤溶液(a)で処理する前に、前処理として変色木材をエタノール水溶液で処理することが好ましい。この前処理で使用するエタノール水溶液としては、エタノールが94.8〜99.5v/v%程度、好ましくは99.0〜99.5v/v%程度含まれているエタノール水溶液を挙げることができる。このエタノール水溶液による前処理は、変色木材表面にエタノール水溶液を浸透させることができればよく、その条件は特に限定されないが、例えば、変色木材面積に対し500〜800ml/m程度、好ましくは500〜700ml/m程度の量で行えばよい。エタノール水溶液による処理方法は上記した各薬剤溶液による処理と同様でよい。
【0023】
本発明漂白方法で漂白することのできる変色木材の原木としては、カビで汚染され、変色が発生するものであるが、特に青変菌による変色が著しい原木、例えば、リュウキュウマツ等のマツ科マツ属、ゴムの木等のクワ科フィカス属、南洋杉等のナンヨウスギ科ナンヨウスギ属等に適用し、優れた効果を得ることができる。
【0024】
叙上の本発明漂白方法によれば、漂白された木材を得ることができる。この漂白された木材については、更に、染色、塗装等を行っても良く、このような処理をした木材は、家具、建築内装材、工芸品等の原料として利用することができる。
【実施例】
【0025】
実 施 例 1
青変菌汚染木材の漂白処理の検討:
漂白処理に用いる薬剤溶液を以下の表1に示した。この薬剤溶液を用いて、各面を鉋がけした青変菌汚染木材(リュウキュウマツ:12cm×8cm×2cm)を以下の漂白処理方法で処理した。各薬剤溶液は青変菌汚染木材の片面にのみ刷毛で塗布し、その後、材面にぬれが無くなるまで乾燥させた。この薬剤溶液の塗布、乾燥サイクルを「1回処理」とし、所定回数繰り返した。なお、前記1回処理においては次亜塩素酸ナトリウムを含む薬剤溶液は青変菌汚染木材の片面に対して1.5mlとなる量で塗布し、また、過酸化水素を含む薬剤溶液は1.8mlとなる量で塗布した。また、漂白処理後の木材を風乾し、以下の評価基準により評価した。その結果を表2に示した。
【0026】
【表1】


【0027】
<漂白処理方法>
漂白処理1:薬剤溶液1で3回処理
漂白処理2:薬剤溶液2で4回処理後、薬剤溶液3で4回処理
漂白処理3:薬剤溶液4で4回処理後、薬剤溶液5で4回処理
漂白処理4:薬剤溶液6で4回処理後、薬剤溶液7で4回処理後、薬剤溶液6で4回
処理
漂白処理5:薬剤溶液8で4回処理後、薬剤溶液9で4回処理後、薬剤溶液8で4回
処理
漂白処理6:薬剤溶液10で4回処理後、薬剤溶液11で4回処理後、薬剤溶液10
で4回処理
【0028】
<漂白作用評価基準>
(評点):(内容)
3 : 青変菌汚染木材の着変色が全く認められない(漂白作用が高い)
2 : 青変菌汚染木材の着変色の一部が薄く残っている(漂白作用がややある)
1 : 青変菌汚染木材の着変色が残っている(漂白作用が低い)
0 : 青変菌汚染木材の着変色に変化がない(漂白作用が無い)
【0029】
【表2】


【0030】
以上の結果より、アルカリ性の次亜塩素酸溶液単独で処理またはアルカリ性の次亜塩素酸溶液とアルカリ性の過酸化水素溶液で処理しただけでは漂白作用が低いことがわかった。また、次亜塩素酸溶液、酸性の過酸化水素溶液および次亜塩素酸溶液で処理しただけでは青変菌汚染木材に対する漂白作用は全くなかったことがわかった。一方、アルカリ性の次亜塩素酸溶液、アルカリ性の過酸化水素溶液およびアルカリ性の次亜塩素酸溶液で処理した場合には青変菌汚染木材に対する漂白作用が高く、更に前記アルカリ性の次亜塩素酸溶液に界面活性剤を添加した場合には、漂白作用がより増強されることがわかった。また、木材素地の損傷はなかった。
【0031】
実 施 例 2
青変菌汚染木材の漂白処理における前処理の検討:
実施例1で示された青変菌汚染木材に対する漂白処理の効果を高めるための前処理について検討した。実施例1の漂白処理5を行う前に、以下の前処理方法で前処理を行った。また、前処理および漂白処理後の木材を実施例1と同様にして評価した。その結果を表3に示した。
【0032】
<前処理方法>
前処理1:メタノール溶液(99.5%濃度)を刷毛で青変菌汚染木材の片面に対して
5mlとなる量で塗布し、乾燥させた
前処理2:エタノール溶液(99.5%濃度)を刷毛で青変菌汚染木材の片面に対して
5mlとなる量で塗布し、乾燥させた
【0033】
【表3】


【0034】
以上の結果より、前処理としてエタノール溶液を塗布することにより、その後の漂白処理による漂白作用が増強されることがわかった。
【0035】
実 施 例 3
青変菌汚染木材の漂白処理前後の状態の検討:
実施例2と同様に前処理2と漂白処理5を行った青変菌汚染木材の漂白処理前後におけるL値および色差を分光測色計により測定した。更に、前処理2と漂白処理5を行った青変菌汚染木材の漂白処理前後の木材1および木材2の状態を図1に示した。
【0036】
【表4】


【0037】
漂白処理後の青変菌汚染木材の明度Lは木材1〜6のいずれにおいても上昇し、白色度が大きくなった。色彩aは赤方向が減少した。これに対し色彩bは黄色方向へ増加し、各色差ΔEも大きくなった。これより青変菌汚染木材の変色部分が除去され、漂白処理効果が高いことがわかった。
【0038】
実 施 例 4
青変菌汚染木材の漂白処理:
青変菌汚染木材に実施例3と同様に前処理2を行い、更に、表5に記載の薬剤溶液を用いて以下の漂白処理を行った。なお、漂白処理の条件は実施例1と同様とした。また、漂白処理後の木材を実施例1と同様にして評価した。その結果を表6に示した。
【0039】
<漂白処理方法>
漂白処理7:薬剤溶液12で4回処理後、薬剤溶液13で4回処理後、薬剤溶液12
で4回処理
【0040】
【表5】


【0041】
【表6】


【0042】
以上の結果より、青変菌汚染木材の変色部分が除去され、漂白処理効果が高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の変色木材の漂白方法は、これまでは矢板としての利用や廃棄されていた変色木材の変色を漂白できるものである。
【0044】
そして、漂白された変色木材は、家具、建築内装材、工芸品等として利用可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】青変菌汚染木材の漂白処理前後における木材1および木材2の状態を示す図面である。
【出願人】 【識別番号】595102178
【氏名又は名称】沖縄県
【出願日】 平成19年1月12日(2007.1.12)
【代理人】 【識別番号】100086324
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 信夫


【公開番号】 特開2008−168514(P2008−168514A)
【公開日】 平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願番号】 特願2007−4002(P2007−4002)