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【発明の名称】 木質材料の下地処理方法、木質材料の下地処理剤及び木質材料
【発明者】 【氏名】松村 正浩

【氏名】伊藤 貴文

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液を、木質材料に塗布、浸漬又は含浸することを特徴とする木質材料の下地処理方法。
【請求項2】
アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液を、木質材料に塗布、浸漬又は含浸することを特徴とする木質材料の下地処理方法。
【請求項3】
炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液を、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、浸漬又は含浸することを特徴とする木質材料の下地処理方法。
【請求項4】
アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液を、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、浸漬又は含浸することを特徴とする木質材料の下地処理方法。
【請求項5】
木質材料に塗布、浸漬又は含浸されるものであって、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解されていることを特徴とする木質材料の下地処理剤。
【請求項6】
木質材料に塗布、浸漬又は含浸されるものであって、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解されていることを特徴とする木質材料の下地処理剤。
【請求項7】
リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、浸漬又は含浸されるものであって、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解されていることを特徴とする木質材料の下地処理剤。
【請求項8】
リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、浸漬又は含浸されるものであって、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解されていることを特徴とする木質材料の下地処理剤。
【請求項9】
炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液が、塗布、浸漬又は含浸されたことを特徴とする木質材料。
【請求項10】
アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液が、塗布、浸漬又は含浸されたことを特徴とする木質材料。
【請求項11】
リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行われた木質材料において、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液が、塗布、浸漬又は含浸されたことを特徴とする木質材料。
【請求項12】
リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行われた木質材料において、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液が、塗布、浸漬又は含浸されたことを特徴とする木質材料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、主に建築物に用いられる木質材料に対する下地処理方法と、この下地処理方法に用いられる下地処理剤と、前記下地処理方法が施された木質材料とに関する。
【背景技術】
【0002】
木質材料の燃えやすいという性質は、木質材料を使う側にとって大きな欠点の一つである。そこで、加圧注入等の方法により、ホウ酸系やリン酸系の水溶性薬剤を木質材料の内部にまで含浸させ、木質材料の不燃化、準不燃化又は難燃化を図っている。木質材料の不燃化を図る方法だけであっても、例えば、特開2005−186620、特開2005−194319、特開2003−211412や特開2003−291110等がある。
【0003】
特開2005−186620や特開2005−194319では、ホウ酸系薬剤とリン酸系の併用によって木質材料の不燃化を図り、特開2003−211412や特開2003−291110では、ホウ酸系薬剤により木質材料の不燃化を達成している。
【0004】
また、国土交通省が認定した不燃化された木質材料としては、ホウ酸系とリン酸系薬剤による不燃木質材料の登録がそれぞれ数件ずつある。このように、含浸による木質材料の不燃化を図る水溶性薬剤には、ホウ酸系薬剤かリン酸系薬剤の少なくとも一方が含まれている。
【0005】
ところで、これらのホウ酸系薬剤やリン酸系薬剤は、高い吸湿性を持つことが知られており、そのままの状態で木質材料に含浸させると、大気中の水分を吸収し、不燃、準不燃又は難燃処理をした木質材料から薬剤が自然に滲み出して、性能や美観を著しく低下させてしまうという欠点がある。そこで、これらの不燃化された木質材料は、塗装等を施して、性能、美感の低下の防止を図ることが不可欠となる。
【0006】
しかしながら、上述した特開2005−186620、特開2005−194319、特開2003−211412や特開2003−291110等は、木質材料の不燃、準不燃又は難燃処理のみが考慮されていて、塗装については特に考慮されていない。
【0007】
また、木質材料では、藻や苔がつくことを防止する防藻性、シロアリを防ぐ防蟻性、防腐性も要求される性能である。
【特許文献1】特開2005−186620
【特許文献2】特開2005−194319
【特許文献3】特開2003−211412
【特許文献4】特開2003−291110
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
塗装に用いる塗料は、一般的に浸透型と造膜型とに分けることができる。さらに別の分類では、溶剤型塗料と水性塗料と分類することができる。まず、浸透型塗料は現在溶剤型塗料が主である。この浸透型塗料の不燃、準不燃又は難燃処理木質材料への塗装は可能であるが、大気からの吸湿を防ぐことがほとんどできず、不燃化のための薬剤は塗装面から滲み出してしまうという問題点がある。
【0009】
一方、造膜型塗料でも、溶剤型塗料での塗装は可能であるが、近年環境への配慮から、脱溶剤化が進み、水性塗料に移行しているのが現状である。また、造膜型塗料と、不燃、準不燃又は難燃処理木質材料との間には、付着性に若干の問題があるためか、溶剤型塗料でも使用環境によっては薬剤の吹き出しが生じる。
【0010】
水性塗料では助剤を用いて塗膜成分を水に分散させているが、浸透型、造膜型のいずれの場合も、アルカリ側で安定化している。それを不燃、準不燃又は難燃処理木質材料に塗布すると、リン酸やホウ酸を主とする不燃化のための薬剤が塗料中に滲み出して、塗布直後にゲル化してしまうため、均一な塗膜を形成することができない。その理由としては、塗料のpH変化、電荷の変化、あるいは化学的な変化などが考えられる。仮に塗装を行ったとしても、付着性に問題があり、確実に塗膜の剥離や亀裂が発生して、その部位から薬剤が吹き出し、それが大きな問題となっている。
【0011】
例えば、水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、アンモニアなどのアルカリ性の水溶液に浸漬や、それらの塗布などを行い、ホウ酸系およびリン酸系の水溶性薬剤により不燃、準不燃又は難燃処理をした木質材料の表面を中和、あるいはアルカリ側にシフトさせた後、水性塗料を塗布しても、水性塗料のゲル化を防ぐことはできなかった。このことから不燃、準不燃又は難燃処理をした木質材料表面のpHを上げて、塗布直後に起こる水性塗料のpHの低下を抑えるだけでは、前記水性塗料のゲル化を防ぐことは不十分であることが判明した。
【0012】
本発明は、上記の問題点の解決を意図したものである。すなわち、本発明の主たる目的は、ホウ酸系およびリン酸系の水溶性薬剤を用いて不燃、準不燃あるいは難燃処理をした木質材料に対して、水性塗料の均一な塗布を可能にする方法を提供することである。さらには、処理木質材料と水性塗料との付着性を高め、使用時に剥離や亀裂が発生しにくく薬剤の吹き出しを抑制できる方法を提供することである。
【0013】
また、藻や苔がつくことを防止する防藻性、シロアリを防ぐ防蟻性、防腐性を高めた木質材料、そのための下地処理剤、下地処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る木質材料の下地処理方法は、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液を、木質材料に塗布、浸漬又は含浸する。
【0015】
また、本発明に係る木質材料の下地処理方法は、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液を、木質材料に塗布、浸漬又は含浸する。
【0016】
また、本発明に係る木質材料の下地処理方法は、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液を、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、浸漬又は含浸する。
【0017】
さらに、本発明に係る木質材料の下地処理方法は、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液を、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、浸漬又は含浸する。
【0018】
一方、本発明に係る木質材料の下地処理剤は、木質材料に塗布、浸漬又は含浸するものであって、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解されている。
【0019】
また、本発明に係る木質材料の下地処理剤は、木質材料に塗布、浸漬又は含浸するものであって、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解されている。
【0020】
また、本発明に係る木質材料の下地処理剤は、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、浸漬又は含浸するものであって、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解されている。
【0021】
さらに、本発明に係る木質材料の下地処理剤は、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、浸漬又は含浸するものであって、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解されている。
【0022】
本発明に係る木質材料は、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液が、塗布、浸漬又は含浸される。
【0023】
また、本発明に係る木質材料は、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液が、塗布、浸漬又は含浸されている。
【0024】
また、本発明に係る木質材料は、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行われた木質材料であって、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液が、塗布、浸漬又は含浸されている。
【0025】
さらに、本発明に係る木質材料は、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行われた木質材料であって、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液が、塗布、浸漬又は含浸されている。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る木質材料の下地処理方法を用いると、リン酸系あるいはホウ酸系の水溶性薬剤により不燃、準不燃あるいは難燃性を付与した木質材料からの薬剤の滲み出しを抑制すること、さらには防藻性、防腐性、防蟻性を高めることができる。また、塗料の主流となりつつある水性塗料が適応可能になる。これらのことにより、耐久性に優れた不燃、準不燃あるいは難燃性を付与した木質材料を提供することができる。その結果として、耐候性が付与され、屋外での使用も可能になる。また、着色等により意匠性を付与することが可能になるという効果がある。
【0027】
かかるリン酸系あるいはホウ酸系薬剤の滲み出し抑制効果は、アルカリ土金属、ジルコニウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液を、塗布、浸漬又は含浸することで、ホウ酸系およびリン酸系の水溶性薬剤を不溶化、あるいは難溶化し、水性塗料への滲み出しを防ぐことや、水性塗料のpH変化を抑制することに起因している。
【0028】
さらには、本発明に係る木質材料の下地処理方法が施された木質材料は、藻や苔がつくことを防止する防藻性、シロアリを防ぐ防蟻性、防腐性が高まることも実験で確認されているが、かかる防藻性、防腐性、防蟻性を付与する効果は、リン酸系あるいはホウ酸系薬剤により不燃、準不燃あるいは難燃化した木質材料に対して、不溶化、あるいは難溶化されたホウ酸化合物やリン酸化合物が、藻、腐朽菌、シロアリ等の木質材料を劣化させる主たる生物に対して、高い抵抗性をもっていることに起因するものである。
【0029】
また、炭酸ジルコニウムアンモニウムにあっては、リン酸系あるいはホウ酸系の不燃薬剤の存在なしでも、処理後の乾燥過程で形成する水に不溶の酸化ジルコニウムが、藻、腐朽菌、シロアリ等の木質材料を劣化させる主たる生物に対して、高い抵抗性をもっていることに起因するものである。従って、炭酸ジルコニウムアンモニウムが溶解された溶液の塗布、浸漬又は含浸による処理で、藻、腐朽菌、シロアリ等の木質材料を劣化させる生物に対する抵抗性を付与するためには、リン酸系あるいはホウ酸系の不燃薬剤の存在は問われない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
なお、本明細書中において、木質材料とは、木材のみならず、合板、集成材、繊維板、LVL、木粉と熱可塑性プラスチックとの複合材料、化学的、物理的改質処理をした木材のほか、ケナフやバガスなどの木材代替となるセルロース系の天然由来の資源を含め、それらの含有率が50%を超えるものすべてを指し示すものとする。
【0031】
木質材料に塗布等をしたリン酸イオン又はホウ酸イオンの滲み出しを防ぐには、その不溶化又は難溶化が不可欠であった。リン酸イオン又はホウ酸イオンの不溶化又は難溶化には、アルカリ土金属、ジルコニウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液の塗布、含浸ならびにそれへの浸漬等が有効である。
【0032】
たとえば、水酸化カルシウムの飽和水溶液への浸漬、その塗布、含浸等により、リン酸イオンはリン酸カルシウム又はリン酸水素カルシウムを形成して不溶化又は難溶化して、固定する。また、水酸化マグネシウムの飽和水溶液に浸漬、その塗布、含浸等により、ホウ酸イオンは、ホウ酸マグネシウムを形成して不溶化する。
【実施例1】
【0033】
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを木質材料である15mm厚のヒノキ板目板に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、水酸化カルシウムの飽和水溶液中に4時間ならびに12時間浸漬させた。再び60℃で十分に乾燥させた後、23℃で相対湿度が50%の恒温恒湿機中で調湿した。
【0034】
このようにして不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料である前記ヒノキ板目板の表面を軽くサンディングした後、耐候性の高い水性のウレタン塗料(水性塗料)であるウッドスキンコート(WSC、太洋塗料株式会社製)の下地塗料WSC STの塗布を試みたところ、浸漬時間に関係なく、この下地塗料WSC STはゲル化せずに均一な塗膜を形成することが確認された。
【実施例2】
【0035】
ホウ砂、ホウ酸を主成分として、助剤に硫酸アンモニウムを用いて水500gに同薬剤を250g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを木質材料である15mm厚のヒノキ板目板に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、塩化アンモニウムを助剤として調製した3%の水酸化マグネシウム水溶液中に12時間浸漬させた。再び60℃で十分に乾燥させた後、23℃で相対湿度が50%の恒温恒湿機中で調湿した。
【0036】
このようにして不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料である前記ヒノキ板目板の表面を軽くサンディングした後、下地塗料WSC STの塗布を試みたところ、この下地塗料WSC STはゲル化せずに均一な塗膜を形成することが確認された。
【実施例3】
【0037】
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを木質材料である15mm厚のヒノキ板目板に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、10、20、40%に調製した炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液に12時間浸漬させた。再び60℃で十分に乾燥させた後、23℃で相対湿度が50%の恒温恒湿機中で調湿した。
【0038】
このようにして不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料である前記ヒノキ板目板の表面を軽くサンディングした後、下地塗料WSC STの塗布を試みたところ、炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液の濃度に関係なく、この下地塗料WSC STはゲル化せずに均一な塗膜を形成することが確認された。
【0039】
その上に上塗り塗料であるWSCグロスを2回塗布した結果、光沢度が90%を超える光沢のある均一な塗装ができた。塗膜の付着性について、JIS K 5400に準拠した碁盤の目テープ試験を実施したところ、10点という評価で、付着性は極めて良好であった。
【0040】
さらに、上記の上塗り塗料であるWSCグロスを2回塗りした木質材料を試験材として、スーパーキセノンウェザメータによるJIS K 5400に準拠した促進劣化試験を実施し、目視による評価および色の変化を分光式測色色差計で測定した。その結果、1000時間照射後にも塗膜の剥離や亀裂は観察されず、色差も5かそれ以下であった。また、促進劣化試験後にも碁盤の目テープ試験を実施したが、評価点は10点満点であり、良好な付着性が示された。
【実施例4】
【0041】
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを木質材料である15mm厚のヒノキ板目板に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、20%に調製した炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を不燃木質材料の表面に塗布した。再び60℃で十分に乾燥させた後、23℃で相対湿度が50%の恒温恒湿機中で調湿した。
【0042】
このようにして不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料である前記ヒノキ板目板の表面を軽くサンディングした後、下地塗料WSC STの塗布を試みたところ、塗料はゲル化せずに均一な塗膜を形成することが確認された。
【0043】
その上に上塗り塗料であるWSCグロスを2回塗布した結果、光沢度が85%を超える光沢のある均一な塗装ができた。塗膜の付着性について、JIS K 5400に準拠した碁盤の目テープ試験を実施したところ、10点という評価で、付着性は極めて良好であった。
【実施例5】
【0044】
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを木質材料である15mm厚のスギ板目板に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた。その後、一部の試験片はそのまま23℃で相対湿度が50%の恒温恒湿機中で調湿したが、他の試験片は、それぞれ、水酸化カルシウムの飽和水溶液中に4時間ならびに12時間浸漬、10、20、40%に調製した炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液に12時間浸漬、20%に調製した炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を不燃木質材料の表面に塗布、同溶液を減圧含浸ならびに加圧含浸させた後、23℃で相対湿度が50%の恒温恒湿機中で調湿した。
【0045】
その後、コーンカロリーメータによる発熱量測定試験を実施した。その結果、表1に示すように、準不燃に性能の低下をみる処理条件も認められたものの、リン酸イオンの不溶化処理が著しく防火性能を低減させる処理ではないことが明らかになった。
【0046】
【表1】


二次処理によるリン酸の固定化と燃焼試験結果
【実施例6】
【0047】
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを15mm厚のヒノキ板目剤に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa)2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、10、20、40%に調製した炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液に12時間浸漬させた。再び60℃で十分に乾燥させた後、30℃で相対湿度が90%の恒温恒湿機中で2日間調湿した。表面からの薬剤の滲み出し状況を目視及び手触りにより確認したところ、やや湿った感じはしたが、べたつきはなく、明らかに滲み出しが抑制されていることを確認した。
【実施例7】
【0048】
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを20mm角で長さが10mmのスギ辺材に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hP)2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、約30%に調製した炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液に5分間浸漬させた。再び60℃で十分に乾燥させた後、JIS K 1571に基づく耐候操作と耐菌操作を実施した結果、オオウズラタケによる重量減少率が1.4%となった。このときの無処理スギ辺材の重量減少率は、63.2%であったので、同処理に起因する高い耐朽性の付与が認められた。
【実施例8】
【0049】
JIS K 1571に基づき30mm角で先端部分を角錐状に尖らせた長さ350mmのスギ辺材杭に対して、約6〜30%に調製した炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を、加圧式注入缶を用いて、減圧(50hP)2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、和歌山県日高郡美浜町の煙樹ケ浜に埋設して、イエシロアリに対する抵抗性を調べた。被害度を0〜5の6段階で評価した結果、無処理のスギ試験杭では、食害が進み、2年経過で平均被害度が3.8(2.5を超えた時点が耐用年数としている。)となったのに対して、12%以上の炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を注入した試験杭では平均被害度が1.0〜1.2(1は軽微な被害)であり、耐蟻性の付与が認められた。また、このとき、地上に露出している部分を観察したところ、無処理の杭では藻の付着が認められたのに対して、炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液を注入した杭では藻が観察されず、防藻性も付与されていることが確認できた。
【0050】
〔比較例1〕
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを木質材料である15mm厚のヒノキ板目板に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、23℃で相対湿度が50%の恒温恒湿機中で調湿した。
【0051】
このようにして不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料である前記ヒノキ板目板の表面を軽くサンディングした後、下地塗料WSC STの塗布を試みたところ、この下地塗料WSC STは瞬時にゲル化した。
【0052】
〔比較例2〕
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを木質材料である15mm厚のヒノキ板目板に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、3%の炭酸ナトリウム水溶液に12時間浸漬して、木質材料の表面のpHを7〜9に調整した。23℃で相対湿度が50%の恒温恒湿機中で調湿した。
【0053】
このようにして不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料である前記ヒノキ板目板の表面を軽くサンディングして、下地塗料WSC STの塗布を試みたところ、この下地塗料WSC STはやや時間をおいてゲル化し、均一な塗膜を得ることができなかった。
【0054】
〔比較例3〕
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを15mm厚のヒノキ板目材に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、30℃で相対湿度が90%の恒温恒湿機中で2日間調湿した。表面からの薬剤の滲み出し状況を目視及び手触りにより確認したところ、水滴のような滲み出しが多くみられた。それはべたつきから考えて注入したリン酸系の薬剤であると判断した。
【0055】
〔比較例4〕
リン酸グアニジンを主成分として、水500gに同薬剤を300g溶解させて、不燃薬剤を調製し、それを20mm角で長さ10mmのスギ辺材に加圧式注入缶を用いて、減圧(50hPa) 2時間、加圧(1.2MPa)2時間という条件で含浸させた。送風式の乾燥機を用いて、60℃で十分に乾燥させた後、JIS K 1571に基づく耐候操作と抗菌操作を実施した結果、オオウズラタケによる重量減少率が64.4%となった。このときの無処理スギ辺材の重量減少率は63.2%であり、リン酸系不燃薬剤処理による耐朽性の向上は認められなかった。
【0056】
なお、カルシウム又はマグネシウムの水酸化物はいずれも溶解度が低いので、処理に支障がある場合は、アンモニウム塩を助剤として足すことで、飛躍的に溶解度が向上することが確認されている。このように、助剤を用いて溶解度を高めることは課題を解決する上で、非常に有効な手段となるが、助剤の種類や使用の有無はここでは問われない。
【0057】
また、リン酸イオンならびにホウ酸イオンの不溶化又は難溶化処理の時期であるが、それは、木材あるいは木質材料の不燃、準不燃又は難燃化を目的とした水溶性薬剤処理の後であればよく、薬剤処理後に行う乾燥工程の前であっても後であってもよい。
【0058】
ここで、アルカリ土金属、チタン、ジルコニウム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムのリン酸塩及びホウ酸塩の溶解度を示す。
【0059】
リン酸塩
アルカリ土類金属
リン酸カルシウム 0.0025g/100g(水)
リン酸マグネシウム0.02g/100g(水)
リン酸バリウム 不溶
リン酸ジルコニウム 不溶
リン酸マンガン 微溶〜不溶
リン酸鉄 水に不溶
リン酸コバルト 不溶
リン酸ニッケル 不溶
リン酸銅 不溶
リン酸銀 ほとんど不溶(0.65mg/100g)
リン酸亜鉛 不溶
リン酸アルミニウム 不溶
以上は、化学大辞典(共立出版社編)より引用
リン酸チタニウムは、特に溶解度についての資料を発見することはできなかったが、ジルコニウムと同属の4A族であることや、光触媒として雨水のかかる部位で使用されることが多いことから、不溶と考えられる。
【0060】
ホウ酸塩
アルカリ土類金属
ホウ酸カルシウム 不溶
ホウ酸マグネシウム 難溶
ホウ酸バリウム 不溶
ホウ酸ジルコニウム 不溶
ホウ酸マンガン 不溶
ホウ酸ニッケル 不溶(ただし、八ホウ酸ニッケルは可溶)
ホウ酸銅 不溶
ホウ酸亜鉛 不溶
ホウ酸アルミニウム 不溶
以上は、化学大辞典(共立出版社編)より引用
ホウ酸鉄、ホウ酸コバルトについては、特に溶解度についての資料を発見することはできなかったが、ニッケルと同じ周期律表8の化合物であることからおそらく不溶と考えられる。
【0061】
ホウ酸銀、ホウ酸チタニウムについても特に溶解度についての資料を発見することはできなかったが、化学大辞典(共立出版社編)によれば、「アルカリ金属以外の金属のホウ酸塩は一般に難溶」とあることから、これらの塩も難溶か、不溶と考えられる。
【0062】
よって、ジルコニウムだけでなく、アルカリ土金属、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛又はアルミニウムの塩、酸化物、水酸化物又は錯体のうち少なくとも1つ以上が溶解された溶液を、リン酸系又はホウ酸系の水溶液により不燃、準不燃又は難燃性処理を行なった木質材料に塗布、含浸又は浸漬すると、水性塗料の塗布のための下地処理が行なえるものと考えられる。
【出願人】 【識別番号】598151599
【氏名又は名称】太洋塗料株式会社
【識別番号】000225142
【氏名又は名称】奈良県
【出願日】 平成18年11月1日(2006.11.1)
【代理人】 【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫

【識別番号】100085936
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 孝治


【公開番号】 特開2008−114394(P2008−114394A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2006−297349(P2006−297349)