トップ :: B 処理操作 運輸 :: B27 木材または類似の材料の加工または保存;釘打ち機またはステ−プル打ち機一般

【発明の名称】 木質繊維束の製造方法及びそれにより得られた木質繊維束
【発明者】 【氏名】柳橋 邦生

【要約】 【課題】少なくとも10mm以上の長さを有し、高強度であり、補強材などに有用な木質繊維束を、低エネルギーで廃棄物の少ない方法で製造することができる木質繊維束の製造方法及びその方法により得られた高強度の木質繊維束を提供する提供する。

【構成】木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、繊維束に平行な短冊状に切断して木質片を作製する切断工程と、該木質片をpH10〜14のアルカリ水溶液中で、アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素を作用させる酵素処理工程とを含み、該酵素処理工程とを経ることで、木質片の繊維質を結束している物質を除去し、50mm以上の長さを有する竹繊維束または木繊維束を得ることを特徴とする木質繊維束の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、長辺が繊維束に平行となるよう短冊状に切断して木質片を作製する切断工程と、該木質片をpH10〜14のアルカリ水溶液中で、アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素を作用させるアルカリ/酵素処理工程とを含み、該アルカリ/酵素処理工程とを経ることで、木質片の繊維質を結束している物質を除去し、竹繊維束または木繊維束を得ることを特徴とする木質繊維束の製造方法。
【請求項2】
前記アルカリ水溶液のpHが12〜13の範囲にある請求項1記載の木質繊維束の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ水溶液の温度が20〜80℃であり、アルカリ水溶液中での前記セルロース分解酵素の作用時間が、6〜168時間である請求項1又は請求項2に記載の木質繊維束の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素が、アルカリ耐性セルラーゼ、好アルカリ性バチルス細菌由来のアルカリセルラーゼ、カルボキシメチルセルラーゼからなる群より選択される1種以上である請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の木質繊維束の製造方法。
【請求項5】
前記アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素の、アルカリ水溶液中の含有量が0.1〜5.0質量%の範囲である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の木質繊維束の製造方法。
【請求項6】
木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、繊維束に平行な短冊状に切断して木質片を作製する切断工程と、該木質片をpH13〜14のアルカリ水溶液中に浸漬するアルカリ処理工程と、その後、該木質片をセルロース分解酵素を含む液体に浸漬する酵素処理工程とを含み、該アルカリ処理工程及び酵素処理工程を経ることで、繊維質を結束している物質を除去し、木質繊維束を得ることを特徴とする木質繊維束の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の木質繊維束の製造方法により得られた長さ10mm以上の木質繊維束。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は木質繊維束、特には、高強度で所定の長さを有する木質繊維束の製造方法及びそれにより得られた木質繊維束に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、天然材料としての木質繊維が注目されている。木材や竹の導管や師管を形成する繊維束鞘は、高強度のセルロース細胞及びリグニンの集合体であり、この繊維束を取り出すことで、高強度でかつ所定の長さを有する木質繊維束が得られる。このような所定の長さを有する繊維束は高強度で靭性に優れ、且つ、生分解性を有するため、繊維補強材として注目され、例えば、繊維を補強材とする複合樹脂ボード、建設工事に用いられる木質系ボード、繊維補強された無機系(セメント系)ボード、木質系ブロック、繊維補強された無機系ブロックに用いられる補強繊維などへの利用が期待されている。
【0003】
従来からの木質繊維の利用としては、パルプなどの短繊維を得るため、強アルカリや強酸による加水分解反応や熱分解反応による解繊が一般に行われており、また、このような繊維を効率よく取り出すため、竹材を冷凍し、解凍した上で、解繊処理を施す技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法は、冷凍と解凍を行うことで、維管束の内部組織中に多数の空孔あるいはき裂を生じさせ、これにより、主としてリグニンに由来する単繊維間の結着力を低下させるため、得られた繊維は、短繊維に近い、短いものとなり、所定の長さを有する繊維束を取り出すことは困難であった。
同様に、現在、パルプなどの木質短繊維を取り出すのに適用される強アルカリや強酸による加水分解反応や、さらに熱分解反応を組み合わせた方法によっても、取り出されるセルロース繊維は、短繊維であった。また、強アルカリ処理のみを行って、繊維束の形状を維持した状態で解繊を行うことも試みられているが、繊維間に残存する強アルカリ成分が十分に除去できず、得られた繊維束を樹脂加工する場合や接着剤処理する場合に併用する樹脂成分によっては硬化不良を引き起こす懸念がある。さらにこれらの方法では、高濃度の酸やアルカリ廃液を処理するという後処理が必要であった。
【0004】
一方、所定の長さを有する木質繊維束を製造する方法として、竹を押潰し状態の短冊状竹片とし、所定の形状の回転内筒とその外周面に軸方向に並列して取付けてあるインペラーと、内周面に解繊細溝を有する外筒を有する解繊機を用いて、所定の径まで解繊された竹繊維束を取出す竹繊維製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば、解繊を物理的な応力のみで行うため、得られた竹繊維束にはリグニンやヘミセルロースなどの成分が付着しており、また、所望されない傷が発生して、均一で、且つ、不純物の少ない木質繊維束を得ることは困難であった。
【特許文献1】特開2005−153160公報
【特許文献2】特開2000−71209公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点を考慮してなされた本発明の目的は、所定の長さを有し、高強度であり、補強材などに有用な木質繊維束を、低エネルギーで廃棄物の少ない方法で製造することができる木質繊維束の製造方法を提供することにある。
また、本発明のさらなる目的は、上記本発明の木質繊維束の製造方法により得られた、高強度の木質繊維束を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、検討の結果、弱アルカリ性の水溶液による処理と、弱アルカリの条件下で活性を有する酵素処理とを組み合わせることにより、高強度で所定の長さを有する木質繊維束を製造しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の構成は以下の通りである。
<1> 木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、繊維束に平行な短冊状に切断して木質片を作製する切断工程と、該木質片をpH10〜14のアルカリ水溶液中で、アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素を作用させるアルカリ/酵素処理工程とを含み、該アルカリ/酵素処理工程とを経ることで、木質片の繊維質を結束している物質を除去し、竹繊維束または木繊維束を得ることを特徴とする木質繊維束の製造方法。
<2> 前記アルカリ水溶液のpHが12〜13の範囲にある<1>記載の木質繊維束の製造方法。
<3> 前記アルカリ水溶液の温度が20〜80℃であり、アルカリ水溶液中での前記セルロース分解酵素の作用時間が、6〜168時間である<1>又は<2>に記載の木質繊維束の製造方法。
<4> 前記アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素が、アルカリ耐性セルラーゼ、好アルカリ性バチルス細菌由来のアルカリセルラーゼ、カルボキシメチルセルラーゼからなる群より選択される1種以上である<1>乃至<3>のいずれか1項に記載の木質繊維束の製造方法。
<5> 前記アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素の、アルカリ水溶液中の含有量が0.1〜5.0質量%の範囲である<1>乃至<4>のいずれか1項に記載の木質繊維束の製造方法。
<6> 木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、繊維束に平行な短冊状に切断して木質片を作製する切断工程と、該木質片をpH13〜14のアルカリ水溶液中に浸漬するアルカリ処理工程と、その後、該竹片をセルロース分解酵素を含む液体に浸漬する酵素処理工程とを含み、該アルカリ処理工程及び酵素処理工程を経ることで、繊維質を結束している物質を除去し、木質繊維束を得ることを特徴とする木質繊維束の製造方法。
<7> <1>乃至<6>のいずれか1項記載の木質繊維束の製造方法により得られた長さ10mm以上の木質繊維束。
本発明における木質繊維束とは、木質材料から低密度の柔組織を除去して得られた密度1.0以上で長さ10mm以上の繊維状組織の集合体を指す。例えば、竹を原料とした木質繊維の場合、ヘミセルロースを多く含む柔組織を除去した後に残るセルロースがリグニンで接着された繊維状の集合体であり、元々導管や師管の周囲にあった繊維束鞘に相当する。
本発明における木質繊維束は、一般的に使用されるパルプなどの木質短繊維と異なり、所定の長さと強度を有することを特徴とするものであり、長さ10mm以上であることが好ましい。本発明の方法によれば、木質材料の切断長に適合した長さの繊維束を容易に得ることができ、例えば、補強材などとして使用しやすい50mm以上の長さの木質繊維束を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、所定の長さを有し、高強度であり、補強材などに有用な木質繊維束を、低エネルギーで廃棄物の少ない方法で製造することができる木質繊維束の製造方法を提供することができる。
また、本発明の木質繊維束は、上記本発明の木質繊維束の製造方法により得られ、高強度であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の木質繊維束の製造方法の第1の態様は、(I)木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、繊維束に平行な短冊状に切断して木質片を作製する切断工程、(II)該木質片をpH10〜14のアルカリ水溶液中で、アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素を作用させるアルカリ/酵素処理工程と、を含み、該アルカリ/酵素処理工程とを経ることで、木質片の繊維質を結束している物質を除去し、竹繊維束または木繊維束を得ることを特徴とする。
なお、本明細書において、このようなアルカリ水溶液中における酵素処理を「アルカリ/酵素処理」と記載する。
以下、この方法を工程順に説明する。
【0009】
〔(I)木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、繊維束に平行な短冊状に切断して木質片を作製する切断工程〕
この(I)工程では、木質材料を、得ようとする木質繊維束の長さに応じた長さに切断する。
ここで用いられる木質材料には特に制限はないが、導管、師管を形成する繊維束鞘の強度、得られる繊維束の靭性という観点からは、孟宗竹、マダケなどの竹や笹類、スギ、ヒノキ、カシ、ナラ、ベイマツなどの木材などが好ましく挙げられる。
これらの木質材料を短冊状に切断するが、短冊状の木片の長辺に相当する方向を繊維束の方向と平行にすることで短冊の長辺と略同一、即ち、同一或いは僅かに短い長さの繊維束を得ることができる。
木質材料として竹を用いる場合、節を取り除き、節と節との間を長辺とすることが得られる繊維束の均一性の観点から好ましい。竹の場合には、節を取り除いた円筒形の部分を必要に応じて2片以上に切断して用いれば、厚みはそのままでもよい。
【0010】
ベイマツなどの木材の幹や枝を木質材料として用いる場合には、短冊状の木片の長辺に相当する方向を繊維束の方向と平行にして、所望の長さで切断すればよい。木材の場合には、幅、厚みも、引き続き行われる液への浸漬工程に適切な大きさに切断することが好ましい。
これらの木質片の大きさには特に制限はないが、アルカリ溶液槽に入る大きさであって、取り扱いが可能な重量の範囲であること、アルカリや酵素の効果を及ぼしやすい断面の大きさであることを考慮して選択すればよい。例えば、長さは得ようとする木質繊維束の長さに応じて、10mm以上であることが必要であり、50mm以上であることが好ましく、取り扱い性の観点から、長さは1000mm以下であり、断面積は30cm以内であることが好ましい。断面積が30cmの場合、例えば、厚さ5mm、幅60mm程度となる。
短冊状木片の厚みが厚すぎると、処理に時間が掛かり、薄すぎると切断加工に手間を要するため、工業的に処理を行う方法としては適さない。
【0011】
〔(II)該木質片をpH10〜14のアルカリ水溶液中で、アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素を作用させるアルカリ/酵素処理工程〕
この(II)アルカリ/酵素処理工程を経ることで、木質片の繊維質を結束している物質、例えば、リグニンやヘミセルロースが除去され、繊維束鞘を中心とする繊維束が得られる。
このアルカリ/酵素処理工程では、まず、pH10〜14のアルカリ水溶液を準備する。アルカリ水溶液のpHはpHが12〜13の範囲であることが好ましい。
このようなアルカリ水溶液中に、前記(I)工程で得られた短冊状の木質片を浸漬し、アルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素を作用させる。
【0012】
アルカリ/酵素処理工程における、酵素を含むアルカリ水溶液の温度は、20〜60℃に維持されることが好ましく、酵素の活性といった観点からは、好ましくは、25〜35℃の範囲である。
アルカリ水溶液中でのセルロース分解酵素の作用時間、即ち処理時間は、木質材料の種類、木質片のサイズ、アルカリ溶液の濃度、温度により適宜、選択されるが、6〜168時間の範囲であることが好ましく、より好ましくは、6〜120時間の範囲である。一例を挙げれば、孟宗竹を厚さ5mm、幅60mm、長さ300mmの短冊状にして用い、pH13のアルカリ水溶液中で、温度30℃で処理する場合で、24〜36時間の範囲であることが好適である。
アルカリ水溶液は、公知のアルカリ剤、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
などを用い、pHを測定しながら、これらを適切な量、水に溶解して調整することができる。pHの微調製は、アンモニアや無機酸類などの公知のpH調整剤を用いて行うこともできる。また、pHの測定は公知の方法、例えば、pH電極を用いる方法や、呈色反応を示すpH試験紙による方法などにより行うことができる。
アルカリ水溶液の溶媒となる水には特に制限はなく、工業用水、水道水、イオン交換水、純水などを用いることができるが、アルカリ性の調整や、酵素に対する影響を考慮して、有機質の不純物が少なく、酸性物質を含まない水を選択して用いることが好ましい。
【0013】
アルカリ/酵素処理工程に用いられるアルカリ条件下で活性なセルロース分解酵素には、特に制限はないが、アルカリ耐性セルラーゼ、好アルカリ性バチルス細菌由来のアルカリセルラーゼ、カルボキシメチルセルラーゼからなる群より選択される1種以上が、効果の観点及び入手容易性の観点から好ましい。
より具体的には、例えば、特開2005−287441公報、特開2003−310270公報、特開平7−87971号公報、特開平7−87972号公報、特開平7−203960号公報、特開平7−255468号公報、特開平1−269495号公報及び、特開平1−112982号公報に記載されるセルロース分解酵素のうち、例えば、花王(株)製アルカリ耐性セルラーゼK−597の如く、アルカリ条件下で活性なもの、アルカリ耐性に優れるものは本発明に適用可能である。
アルカリ/酵素処理工程に用いられるこれらの酵素は、0.1〜5.0質量%程度の水溶液にして、前記アルカリ水溶液中に添加される。
【0014】
所定時間浸漬し、アルカリ/酵素処理工程を経た後、木質片から繊維束同士を互いに接着させていたリグニン、ヘミセルロースなどが除去され、直径0.1〜3mm程度、長さが短冊状に加工した長辺とほぼ同一の繊維束が得られる。ここで、酵素を含むアルカリ水溶液を除去し、その後、過剰の水で洗浄して残存するアルカリ成分、酵素などを除去し、以下に挙げるような任意の方法で解繊し、繊維束を取り出す。
解繊方法としては、櫛を用いて手作業で処理物を抄く方法、機械的に振動や衝撃を加えて、柔組織をふるい落とす方法などが挙げられる。
得られた木質繊維束は、切断された木片の長辺と略同一の長さを有し、強度と靭性に優れたものであるため、繊維質補強材などとして好適に用いることができる。
【0015】
次に、本発明の木質繊維束の製造方法の第2の態様について説明する。
木質繊維束の製造方法の第2の態様は、(I)木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、繊維束に平行な短冊状に切断して木質片を作製する切断工程と、(II−1)該木質片をpH10〜14のアルカリ水溶液中に浸漬するアルカリ処理工程と、(II−2)該木質片をセルロース分解酵素を含む液体に浸漬する酵素処理工程とを含み、該アルカリ処理工程及び酵素処理工程を経ることで、繊維質を結束している物質を除去し、10mm以上、好ましくは50mm以上の長さを有する木質繊維束を得ることを特徴とする。
この第2の態様における(I)木材及び竹から選択される1種以上の木質材料を、繊維束に平行な短冊状に切断して木質片を作製する切断工程は、第1の態様におけるのと同様である。
【0016】
〔(II−1)木質片をpH10〜14のアルカリ水溶液中に浸漬するアルカリ処理工程〕
第2の態様では、アルカリ水溶液によるアルカリ処理と酵素処理とを別工程で行う。この(II−1)工程は、木質片をアルカリ水溶液のみで処理する工程である。
ここで用いるアルカリ水溶液のpHは、13〜14であることが好ましいく、第1の態様におけるよりもややアルカリ性の強い水溶液を用いることが効果の観点から好ましい。
このようなアルカリ水溶液中に、前記(I)工程で得られた短冊状の木質片を浸漬し、アルカリ水溶液浸漬処理する。
【0017】
アルカリ処理工程における、アルカリ水溶液の温度は、20〜90℃の範囲であることが好ましい。
この(II−1)工程で用いられるアルカリ水溶液は、pH条件を目的に合わせ調整するほかは、第1の態様における(II)工程のアルカリ水溶液と同様にして調整することができる。
浸漬時間は、3〜9時間が好ましい。ここでアルカリ水溶液に浸漬された木片は、その後、後述する酵素処理工程に付するが、アルカリ処理工程の後、引き上げた木質片は、余分なアルカリ水溶液を除去した後、洗浄工程を経ることなく、酵素処理工程を行うことが好ましい。このようにすることで、酵素処理における処理液が、アルカリ処理工程において使用されたアルカリ剤の混入により弱いアルカリ性を示すようになり、後述するセルロース分解酵素により好適な環境を与えることになる。
【0018】
〔(II−2)木質片を、セルロース分解酵素を含む液体に浸漬する酵素処理工程〕
酵素処理工程における、酵素溶液の温度は、20〜60℃に維持されることが好ましく、酵素の活性といった観点からは、好ましくは、25〜35℃の範囲である。
酵素処理工程におけるセルロース分解酵素の作用時間、即ち処理時間は、木質繊維の特性などから適宜選択されるが、3〜60時間の範囲であることが好ましく、より好ましくは、6〜40時間の範囲である。
この(II−2)工程で用いられる酵素溶液は、アルカリ水溶液を共存させないこと以外は、第1の態様における(II)工程に使用された酵素溶液と同様のものを用いることができ、使用される好ましいセルロース分解酵素もまた同様のものを挙げることができる。
【0019】
所定時間酵素溶液に浸漬し、酵素処理工程を経た後、木質片から繊維束同士を互いに接着させていたリグニン、ヘミセルロースなどが除去され、直径0.1〜3.0mm程度で、長さが木片の長辺と略同一の繊維束が得られる。ここで、酵素溶液を除去し、その後、過剰の水で洗浄して残存するアルカリ成分、酵素などを除去し、前記した如き任意の方法で解繊し、繊維束を取り出す。
得られた木質繊維束は、切断された木片の長辺と略同一の長さを有し、強度と靭性に優れたものであるため、繊維質補強材などとして好適に用いることができる。
【0020】
本発明の木質繊維束は、前記本発明の木質繊維束の製造方法のいずれかにより得られたものであり、長さ50mm以上、好ましくは50〜1000mm程度の木質繊維束である。この用にして得られた木質繊維束は、一本の繊維束の断面の直径が0.1〜3.0mm程度であり、高い引っ張り強度を有するという特性を有する。
また、その応用としては、例えば、本発明の方法により得られた木質繊維束を並列させ、繊維束に対して10〜80質量%のフェノール樹脂、イソシアネート系樹脂などのバインダー樹脂を用いて硬化させることで、高強度の棒状材料を作製することができ、各種樹脂成形材料の補強材として好適に用いることができる。
このように本発明の木質繊維束は、軽量、高強度で靭性に優れ、且つ、生分解性を有することから、各種材料からなるボードの補強材、構造材料の原料、プレストレス鋼棒の代替材料等に有用であり、その応用範囲は広い。
【実施例】
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕
孟宗竹の節を除くように切断し、さらに、環状の部分を4個に切断して、短冊状の竹片(長さ200mm×幅60mm×厚み5mm)を得た。
得られた孟宗竹片を、0.4g/Lの水酸化ナトリウムとともに、5g/Lのアルカリ性で活性のあるセルラーゼ(セルザイム(登録商標)、ノボザイムズ ジャパン(株)製)を添加した溶液を30℃に維持したものに浸漬し、18時間浸漬した。ここで用いた溶液のpHは12であった。
浸漬後、組織全体が軟化し、繊維束を容易に解繊できる状態となった。これを溶液中から取りだし、水洗し、その後、櫛を用いて手解繊し、長さ200mm、直径0.7〜1.3mmの繊維束を得た。
ここで得られた孟宗竹を原料とする竹繊維束の引張強度は、320MPaであり、鉄筋に匹敵する強さであった。また、このように高強度であるにも拘わらず、木質材料を原料とするところから軽量であり、密度は1.1g/cm程度である。
また、この竹繊維束を並列させ、バインダーとしてポリイソシアネート系樹脂(KR−134、光洋産業社製)を用い、竹繊維束に対して50質量%用いて硬化させ、太さ20mm角の棒状材料を作製した。このとき、フェノール樹脂の硬化不良は見られなかった。棒状材料の物性を測定したところ、密度1.0g/cm、引っ張り強度は200MPaであり、本発明の方法により得られた竹繊維束を用いて、高強度の材料を形成しうることが確認された。
【0022】
〔実施例2〕
ベイマツを長さ200mm×幅20mm×厚さ20cmに切断し、木片(ベイマツ)を得た。
得られた木片を、4g/Lの水酸化ナトリウムとともに、5g/Lの実施例1で用いたのと同様のセルラーゼを添加した溶液を30℃に維持したものに120時間浸漬した。ここで用いた溶液のpHは13であった。
浸漬後、組織全体が軟化し、繊維束を容易に解繊できる状態となった。これを溶液中から取りだし、水洗し、その後、櫛を用いて手解繊し、長さ50〜200mm、直径0.5〜1.5mmの繊維束を得た。
〔実施例3〕
孟宗竹の節を除くように切断し、さらに、環状の部分を4個に切断して、短冊状の竹片(長さ200mm×幅60mm×厚み5mm)を得た。
得られた孟宗竹片を、40g/Lの水酸化ナトリウム溶液を温度80℃に維持しながら9時間浸漬した。ここで用いた溶液のpHは14であった。
その後、5g/Lの実施例1で用いたのと同様のセルラーゼを添加した溶液を30℃に維持しながら、そこにアルカリ浸漬後の孟宗竹片を60時間浸漬した。
浸漬後、組織全体が軟化し、繊維束を容易に解繊できる状態となった。これを溶液中から取りだし、水洗し、その後、櫛を用いて手解繊し、長さ200mm、直径0.7〜1.3mmの繊維束を得た。
【0023】
〔実施例4〕
ベイマツを長さ200mm×幅20mm×厚さ20cmに切断し、木片(ベイマツ)を得た。
得られた木片を、40g/Lの水酸化ナトリウムを温度80℃に維持しながら72時間浸漬した。ここで用いた溶液のpHは14であった。
その後、5g/Lの実施例1で用いたのと同様のセルラーゼを添加した溶液を30℃に維持しながら、36時間浸漬した。
浸漬後、組織全体が軟化し、繊維束を容易に解繊できる状態となった。これを溶液中から取りだし、水洗し、その後、櫛を用いて手解繊し、長さ50〜200mm、直径0.5〜1.5mmの繊維束を得た。
【0024】
〔比較例1〕
孟宗竹の節を除くように切断し、さらに、環状の部分を4個に切断して、短冊状の竹片(長さ200mm×幅60mm×厚み5mm)を得た。
得られた孟宗竹片を、5g/Lの実施例1で用いたのと同様のセルラーゼの溶液を30℃に維持しながら、72時間浸漬したが、外観上も変化がなく、繊維束を解繊できる状態にならなかった。
【0025】
このように、本発明の方法によれば、所定の長さ、好ましくは50mm以上の長さの木質繊維を容易に得ることができ、得られた木質繊維束は高強度で靭性に優れるものであった。
【出願人】 【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−1064(P2008−1064A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175372(P2006−175372)