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可撓性積層木質材およびその製法 - 特開2008−173879 | j-tokkyo
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【発明の名称】 可撓性積層木質材およびその製法
【発明者】 【氏名】中山 一孝

【要約】 【課題】間伐材などの小さな木材や加工時に発生するクレーク状の木質材を有効に使用して、高度の弾性変形が可能な可撓性積層木質材を安価に得ることができるようにする。

【解決手段】複数の木質材の表面に接着剤を塗布し、これら木質材をその繊維方向がおおむね同一方向となるように積層して積層物2とする。この積層物2を耐圧容器4内のプレス装置7にセットし、高圧水蒸気を耐圧容器4内に送り込んで、加熱しつつ、積層方向に圧縮して積層厚さを1/2〜1/5とし、この圧縮状態を保って冷却し、得られた積層体を積層方向に平行にスライスして可撓性積層木質材とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木質材の表面に接着剤を塗布し、これら木質材をその繊維方向がおおむね同一方向になるように積層した状態で加熱しつつ、積層方向に圧縮して積層厚さを1/2〜1/5とし、この圧縮状態を保って冷却し、得られた積層物を積層方向に平行にスライスすることを特徴とする可撓性積層木質材の製法。
【請求項2】
加熱温度が60〜100℃であることを特徴とする請求項1記載の可撓性積層木質材の製法。
【請求項3】
加熱温度が100℃を越え、140℃以下であることを特徴とする請求項1記載の可撓性積層木質材の製法。
【請求項4】
前記接着剤が、加熱の際に硬化しない接着剤であることを特徴とする請求項1記載の可撓性積層木質材の製法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、高度の弾性変形が可能な可撓性積層木質材の製造方法に関する。
本発明によって得られた可撓性積層木質材は、ゴムと同様の極めて弾性に富み、弱い力で大きく変形し、復元するユニークな特性を有する新しい木質系材料である。
【背景技術】
【0002】
木質積層材として、ラワン合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)、OSB(オリエンテッドストランドボード)などが周知である。
しかしながら、これらの周知の木質積層材にあっては、板厚が2mm以下の板材であれば、ある程度の曲げ変形が可能であるが、厚さが厚いものでは実質的には剛体であって、そのような変形を生じさせることは、不可能である。
【0003】
一方、特開平11−77619号公報、特開2005−205799号公報には、木材を高圧水蒸気下で軟化処理し、この軟化処理した木材を型に入れて三次元形状を有する木材加工品を製造することが開示されている。
しかし、この先行発明では、木材を三次元加工して、変形を永久に保つようにするもので、変形を弾性的に復元させることには言及されていない。
【0004】
さらに、特開2006−305842号公報には、木材を軟化処理したのち、これを厚さが1/3〜2/3に圧縮し、ついで加圧力をわずかに減少させて、この木材を元の体積未満に復元する改質処理方法が開示されており、これによれば木材に柔軟性、弾力性を与えることができるとしている。
しかし、この先行発明では、木材として太い角材、丸太などが用いられており、間伐材などを使用することができず、コストが高くなる問題がある。
【特許文献1】特開平11−77619号公報
【特許文献2】特開2005−205799号公報
【特許文献3】特開2006−305842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明における課題は、間伐材などの小さな木材や加工時に発生するフレーク状の木質材を有効に使用して、高度の弾性変形が可能な可撓性積層木質材を安価に得ることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、複数の木質材の表面に接着剤を塗布し、これら木質材をその繊維方向がおおむね同一方向となるように積層した状態で加熱しつつ、積層方向に圧縮して積層厚さを1/2〜1/5とし、この圧縮状態を保って冷却し、得られた積層物を積層方向に平行にスライスすることを特徴とする可撓性積層木質材の製法である。
【0007】
請求項2にかかる発明は、加熱温度が60〜100℃であることを特徴とする請求項1記載の可撓性積層木質材の製法である。
請求項3にかかる発明は、加熱温度が100℃を越え、140℃以下であることを特徴とする請求項1記載の可撓性積層木質材の製法である。
【0008】
請求項4にかかる発明は、前記接着剤が、加熱中に硬化しない接着剤であることを特徴とする請求項1記載の可撓性積層木質材の製法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、間伐材などの従来廃棄されていた木質材を有効に利用でき、高度の弾性変形が可能な可撓性積層木質材を得ることができる。
また、加熱温度を70〜100℃とすれば、耐圧容器内で処理する必要がなく、製造設備が簡略化でき、製造コストを安価にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を詳しく説明する。
図1ないし図5は、本発明での可撓性積層木質材の製法の一例を工程順に示すものである。
図1において、符号1は、木質材を示す。
【0011】
この木質材1には、その形状が単板状、フレーク状、ファイバ状などであるものが用いられ、その寸法が、厚さ5〜30mm、幅10〜300mm、長さ50〜1000mm程度の寸法のもので、種々の樹種、例えばスギ、マツ、ツガ、ヒノキ、ヒバなどの主に針葉樹からなるものが用いられる。その水分量は5〜20%程度であるものが好ましい。
なお、図面では木質材1として単板を用いたものを例示してある。
【0012】
ついで、この木質材1の表面に接着剤を塗布する。この接着剤には、酢酸ビニルエマルジョン系、フェノール樹脂系、メラミン樹脂系、ユリア樹脂系、ポリウレタン樹脂系などの合成高分子系接着剤やタンニン系接着剤、ニカワなどの天然系接着剤などが用いられる。これらのなかでも、次工程の加熱の際に硬化しない性質の接着剤、例えばタンニン・ニカワ系接着剤などが、圧縮工程での木質材の成形を阻害しない点で好ましい。
【0013】
接着剤を塗布した木質材1を、図2に示すようにその複数枚積層する。この積層の際に、図示のように、各木質材1の繊維方向がおおむね同一方向になるように積層形態が定められる。
ついで、図3に示すように、この積層物2全体を、耐圧容器4内に収める。この耐圧容器4内には、プレス装置7が設置されており、プレス装置7の載置台71上に置かれた枠72内に積層物2が置かれ、押圧盤73によって鉛直方向に加圧されるように構成されている。
【0014】
また、この耐圧容器4内には、その内部に管5を通って高圧水蒸気が導入されるようになっており、この高圧水蒸気により積層物2が水分の共存下で加熱されるように構成されている。
この際の水蒸気の温度は、100〜140℃とされ、約0.5〜5時間水蒸気処理を行う。この水蒸気処理により木質材1の組織が軟化した状態となり、大きな変形を与えることができる。
【0015】
ついで、耐圧容器4内の温度を100〜140℃とし、積層物2を加熱すると同時にプレス装置7を動作させて、積層物2をその積層方向に加圧し、積層物2の積層厚さが元の厚さの1/2〜1/5となるようにする。加熱温度が140℃を越えると、木質材1の可撓性が低下して好ましくない。積層物2の積層厚さを元の厚さの1/2よりも厚くすると必要な弾性が得られず、元の厚さの1/5よりも薄く圧縮するには過大なプレス力が必要となり、経済的な観点から現実的でない。
【0016】
この加圧状態を0.5〜2時間保ち、その後加熱を停止し、積層物2を放冷し、その温度が50℃以下となったのち、加圧を開放し、積層物2を耐圧容器4から取り出す。
以上の加熱加圧処理により、接着剤が固化し、個々の木板1が相互に接合し、ブロック状の積層体8となるとともにその厚さが1/2〜1/5に圧縮された状態となる。
【0017】
この処理の際の加熱方法としては、上述の水蒸気雰囲気中での加熱に限られず、耐圧容器4内の空気の温度を60〜140℃として加熱する方法、プレス装置7の押圧盤72内にヒータを内蔵したものを用いて加圧中に加熱する方法、高周波加熱による方法、積層物2を温水中に浸した状態で加熱する方法などを用いても良い。
【0018】
加熱温度は、原則、木質材1の軟化温度以上であればよく、この軟化温度は、木質材1中の水分量が多くなると低下するので、木質材1の水分量を3〜5%程度以上とすることが好ましく、このようなことを加味して、60〜140℃の範囲で良く、100℃未満で水蒸気中で加熱しない方法を採用すれば耐圧容器を用いなくともよい。また、加熱温度が低い方が可撓性が増加して好ましい。加熱温度が60℃未満では細胞壁の軟化がほとんど生じない。
【0019】
ついで、このようにして得られたブロック状の積層体8を、図4に示すように、スライスして板状とする。このスライスの際の切断方向は、図4に示すように積層体8の積層方向に平行とされ、スライスには鋸などが用いられる。
図5は、このようにして得られた板状の可撓性積層木質材11を示すものである。図5において、符号11aは木質板1相互の積層面を示し、符号11bは、木質材1の木理を示す。
【0020】
この板状の可撓性積層木質材11に積層面方向の外力を与えると、図6に示すように、容易に大きく湾曲し、外力を取り去ると元の板状に復元する。したがって、このものでは、その曲げ弾性率は、元の木質材1の曲げ弾性率の約1/400の値を示す。
このような可撓性積層木質材11にあっては、積層物2を水分の共存下で加熱することによって木質材1中の細胞壁が軟化し、変形が可能な状態となり、この状態で圧縮し、冷却することで、細胞壁が収縮した状態が保たれた積層体8が得られる。
【0021】
このため、この積層体8をスライスした可撓性積層木質材11では、これを伸長すると処理過程での圧縮する前の状態まで伸びることができ、しかも圧縮すると細胞壁の変形の余地が残っているところまで縮むことができる。
また、この可撓性積層木質材11では、積層方向に平行に引っ張り力を与えた時の破断時の伸びは40〜100%で、破断強度は1〜2.5N/mmの範囲となり、この値からも通常の木材に比べて格段に変形しやすいことがわかる。
このため、極めて可撓性に富む木質材料となる。
【0022】
なお、この可撓性積層木質材11では、製造後に一度、引張、圧縮、曲げなどの変形を与えておくと、次回以降の変形では1回目の変形に要した外力よりも小さな外力で変形すると言う性質を有している。
【0023】
ただし、この可撓性積層木質材11では、全ての方向に変形できるわけではなく、曲がる方向に異方性がある。可撓性積層木質材11の切断面に対して直交する方向に特異的に曲がる。この方向は、木質材1を積層する際の積層方向に平行な方向である。
【0024】
図7は、本発明の可撓性積層木質材11の引張試験の結果を示す応力−歪み曲線の代表的な例を模式的に示すものである。
この曲線の形状から、変形初期領域では弾性率が高く弾性体として挙動し、その後は弾性率が緩やかに上昇し、塑性変形を示す領域となることを示している。このことから、本可撓性積層木質材11は、比較的硬く粘り強い特性を有していることがわかる。
【0025】
図8および図9は、本発明で得られた可撓性積層木質材を曲げた際の木質組織の走査型電子顕微鏡写真であり、図8は曲げた際に圧縮された側の部分を、図9は同じく引っ張られた側の部分を示している。
圧縮側では空隙がほとんど認められない状態にあり、曲げ応力(圧縮)が加わっても簡単には歪みが増加しにくいことが理解できる。一方、引張側には空隙が認められ、大きな変形回復が確認できる。曲げ応力(引張)が加わった際に、容易にひずみやすいことがわかる。
【0026】
また、図10は、木質材としてのスギ木片の組織を示す走査型電子顕微鏡写真であり、図11は、このスギ木片を加熱下に圧縮したものの組織を示す走査型電子顕微鏡写真である。これより、細胞組織が圧縮されてほぼ空隙が無くなっていることがわかる。
【0027】
このような可撓性積層木質材11では、例えば円筒状に加工して木製パイプとして用いることができる。また、可撓性があることから、免振材料としても使用できる。さらに、水分を吸収すると体積が膨張するので、基礎杭として用いれば高い摩擦力を発揮する摩擦杭として使用できるなど種々の用途が考えられる。
【0028】
以下、具体例を説明する。
(実施例1)
厚さ20mm、幅110mm、長さ500mmのスギ板を25枚用意し、この表面にタンニン系接着剤を塗布し、その繊維方向がおおむね同一方向となるように積層した。ついで、この積層物をオートクレーブ内に設けられたプレス装置の枠内に収めた。
【0029】
オートクレーブ内に高圧水蒸気を導入し、オートクレーブ内を110〜120℃としたのち、30分後にプレス装置を作動させ、積層物の厚さを167mmとした。この状態を1時間持続したのち、高圧水蒸気の導入を停止し、加圧状態を維持したまま3時間かけて常温まで冷却して、厚さ167mm、幅110mm、長さ500mmのブロック状の積層体を得た。
【0030】
この積層体をその積層方向に平行な二面を鋸でスライスして、厚さ5mm、幅167mm、長さ500mmおよび厚さ5mm、幅167mm、長さ約105mmの2枚の板状の可撓性積層木質材を得た。
これらの可撓性積層木質材は、図6に示すように簡単に曲げることができ、また元の平板状に復元した。
【0031】
(実施例2)
本発明で得られた可撓性積層木質材の曲げ試験を行った。
試験片は、A、B、Cの3種である。
試験片Aは、厚さ20mmのスギ板を用い、90℃で60分加熱して軟化させたのち、圧縮し、さらに90℃で60分加熱したもので、圧密度67%である。
試験片Bは、同様のスギ板を用い、90℃で60分加熱して軟化させたのち、圧縮し、90℃で30分加熱したのち、圧縮力を若干軽減して圧縮量を減少させ、さらに120℃で30分加熱したもので、圧密度53%ものである。この試験片Bは、上述の特開2006−305842号公報に開示の方法に準じたものである。
【0032】
試験片Cは、厚さ20mmのスギ板を用い、90℃で60分加熱して軟化させたのち、圧縮し、さらに120℃で60分加熱したもので、圧密度67%である。
試験片の寸法は、いずれも厚さ19〜20mm、幅19〜20mm、長さ360〜370mmであった。
【0033】
曲げ試験は、JIS Z2101「木材の試験方法」における木材の3点曲げ試験に準拠し、スパン長さを280mmとした。
載荷は、試験片のスパン間の中央位置に下向きの荷重を負荷させ、中央位置の変形量を測定した。1回目の載荷とその後の繰り返し載荷の影響を確認するために、載荷は2回行った。1回目は、試験片を切り出したままの状態で実施し、2回目は、1回目の試験を終了した試験片に対して、手により曲げおよび曲げ戻し処理を5往復(正曲げ、負曲げで1往復)行った後載荷を実施した。
【0034】
結果を図12に示す。なお、図12および表1において、試験片A(2)などの(2)との表示は、2回目の載荷での結果を示している。
圧密処理に関しては120℃での処理よりも90℃での処理したものの方が剛性が小さく、曲がりやすくなっている。試験片Bについては、試験片Cと同様の曲げ特性を示している。
また、2回目の載荷による結果は、すべて試験片に共通して、1回目の載荷におけるものに比べて、剛性が低下している。
【0035】
表1に曲げヤング率の結果を示した。ヤング率の値は、原点からの値である。比例部分(ここでは載荷質量300g)では、試験片A、B、Cで1回目の載荷では、それぞれ29.2N/mm、59.1N/mm、62.4N/mmであり、2回目の載荷では、16.9N/mm、25.0N/mm、31.9N/mmであり、試験片Aでは、試験片B、Cの約1/2となっている。
スギ板の曲げヤング率は、6860N/mmであることから、試験片Aでのヤング率は、1回目では約1/235で、2回目では約1/406と非常に小さくなっている。
【0036】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明で用いられる木質材の例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明での積層材の例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明で用いられる耐圧容器を示す概略構成図である。
【図4】本発明での積層体の例を示す概略斜視図である。
【図5】本発明で得られた可撓性積層木質材の例を示す概略斜視図である。
【図6】本発明で得られた可撓性積層木質材を変形させた状態を示す図面である。
【図7】本発明で得られた可撓性積層木質材の応力−歪み曲線の例を示すグラフである。
【図8】本発明で得られた可撓性積層木質材の変形させた際の組織の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】本発明で得られた可撓性積層木質材の変形させた際の組織の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】木質材の細胞組織の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】木質材を圧密処理したものの細胞組織の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】曲げ試験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1・・・木質材、2・・・積層物、4・・・耐圧容器、7・・・プレス装置、11・・・可撓性積層木質材
【出願人】 【識別番号】000217686
【氏名又は名称】電源開発株式会社
【出願日】 平成19年1月19日(2007.1.19)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦


【公開番号】 特開2008−173879(P2008−173879A)
【公開日】 平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願番号】 特願2007−10038(P2007−10038)