トップ :: B 処理操作 運輸 :: B27 木材または類似の材料の加工または保存;釘打ち機またはステ−プル打ち機一般

【発明の名称】 インクジェット印刷されてなる化粧材
【発明者】 【氏名】三俣 寛

【氏名】中原 修

【要約】 【課題】木材、例えば突板を基材としてインクジェット印刷されてなる化粧材を提供する。

【解決手段】木材と、該木材の表面に塗布形成したインク受容層と、該インク受容層の表面にインクジェットプリンタによる印刷を行った印刷インク層と、該印刷インク層の表面にクリア塗装を施したクリア塗料層とを備える化粧材であって、前記インク受容層は透明性を有する充填材を含むものであり、及び前記インク受容層の表面は、前記木材表面のうち道管が存在する箇所において、該道管内に充填されたインク受容層材料の表面のうちの最深部位と、塗布形成された前記インク受容層の表面との間隔が10μmないし300μmとなるように形成されていることを特徴とする、化粧材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材基材と、該木材基材の表面に塗布形成したインク受容層と、該インク受容層の表面にインクジェットプリンタによる印刷を行った印刷インク層と、該印刷インク層の表面にクリア塗装を施したクリア塗料層とを備える化粧材であって、
前記インク受容層は透明性を有する充填材を含むものであり、及び
前記インク受容層の表面は、前記木材基材表面のうち道管が存在する箇所において、該道管内に充填されたインク受容層材料の表面のうちの最深部位と、塗布形成された前記インク受容層の表面との間隔が10μmないし300μmとなるように形成されていることを特徴とする、化粧材。
【請求項2】
木材基材と、該木材基材の表面に塗布形成したインク受容層と、該インク受容層の表面にインクジェットプリンタによる印刷を行った印刷インク層と、該印刷インク層の表面にクリア塗装を施したクリア塗料層とを備えた化粧材であって、
前記インク受容層は透明性を有する充填材を含むものであり、及び
前記化粧材の表面は、その算術平均高さ10μmないし300μmの範囲内の非平坦性を有することを特徴とする、化粧材。
【請求項3】
前記インク受容層は、水溶性高分子系インクジェット用樹脂を含むものである、請求項1又は2に記載の化粧材。
【請求項4】
前記インク受容層は、木材基材表面で造膜しないように調整された組成からなる、請求項3に記載の化粧材。
【請求項5】
前記クリア塗料層は、木材基材及びインク受容層に対し浸透性を有する塗料からなる、請求項1又は2に記載の化粧材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、基材にインクジェット印刷されてなる化粧材に関する。詳細には、木材、例えば突板を基材とした化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙又はプラスチックフィルムなどの基材の他に、天然木材を基材としてインクジェットプリンタを用いて印刷する技術に対する要望が高まってきている。而して、かような技術に関して、例えば特許文献1は、天然木材基材及びその上に設けられたインク受容層を含み、かつ該インク受容層表面の中心線平均粗さが一定値以下であるインクジェット印刷用記録材を提案している。特許文献2は、木材の表面に、該表面の素材に適合するプライマーを被層し、該プライマー層の上にアンダーコート液を吹きつけもしくは塗布し、該アンダーコート層の乾燥を待って印刷を行い、該印刷面が乾燥した後少なくとも印刷面全体の表面にトップコートを被層せしめることを特徴とする高耐久性印刷方法を提案している。特許文献3は、記録媒体の印刷面にエマルジョン接着剤、具体的には酢酸ビニルエマルジョンを塗布することにより当該印刷面に受像層を形成し、前記受像層の表面に印刷を行うことを特徴とする印刷方法を提案している。
【特許文献1】特開2003−300379号公報
【特許文献2】特開2002−187340号公報
【特許文献3】特開2000−190462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
木材の切り口表面は、木目の模様が美しいだけでなく、該表面の持つ独特の立体的な美観をも有する。例えば、木材の切り口表面には、繊維方向に沿って多数の道管が細い溝の凹部形態として形成されており、これにより木材表面が立体的なものとなって木材らしい美しい印象を見る者に与える。そのため、記録材に印刷されてなる化粧材としては、木材表面の立体的美観ができるだけ維持されていることが意匠的価値の上で望ましい。
インクジェットプリンタを用いて木材表面に普通に印刷する場合、インクは木材表面に露出している木材の細胞から由来する空隙に浸透する。しかしながら、これらの空隙は道管をはじめとする様々な大きさや種類の組織や構造からなっており、空隙の内径及び細胞表面とインクとの親和性等は組織に依存し大きく異なる。そのため、インクジェットプリンタを用いて木材の表面に普通に印刷すると、木材表面に着弾したインクの浸透性能は、着弾先の組織に依りその良否が大きく異なるため、着弾したインクは付近のより浸透性の良い組織に移動し所定の箇所で定着しない。その結果、印刷面に色むら、色滲み、目ばち等を多く生じさせやすくなるという問題点がある。この問題を解決するには、例えば木材表面をポリマー材料等でコートし、平坦化することが考えられる。
上記特許文献1は、この解決手段の一例を提案するものであり、インク受容層表面の中心線平均粗さをかなり小さい数値以下(4.0μm以下)に設定することを特徴とするものである。しかし、特許文献1に記載の技術は、インク受容層が高い平坦性を有するようにすることが前提となっているため、木材表面の道管の内部は完全に埋まって印刷後の印刷面は平坦な表面になってしまう可能性が高い。つまり特許文献1に記載の技術は、木材表面の立体的美観を印刷後も維持することについて何ら考慮されておらず、そのため印刷面において木材本来の美観が失われ、意匠的価値において十分に満足できるものではなかった。
さらに、特許文献2に記載の方法は、木材表面にプライマー層及び該プライマー層の上にアンダーコート層を被層することによって、色滲みや色むらの問題はある程度解決される。しかし、木材組織へのプライマー及びアンダーコート液の浸透性は、木材の組織構造
に依り大きく異なるため、道管内部においてプライマー及びアンダーコート液が浸透しにくく、且つ道管径が大きい材種(例えばタモ、ナラ等が挙げられる。)を基材として用いた場合では、プライマー層及びアンダーコート層の道管凹部における形成が妨げられ、この結果、印刷したときに道管内部においてインクが定着せず、目ばちが目立ってしまう。
一方、木材の美観を高め、水や汚れ等から木材表面を保護するために、通常は印刷層の表面に塗装が施される。木材を基材とした化粧材の場合、塗装に用いた塗料が木材に十分に浸透して木材の立体的美観を現すとともに、塗膜の耐水性や耐熱性等の耐久性能が必要とされるが、特許文献3記載の技術は、受像層が造膜性の高い酢酸ビニルエマルジョン系の樹脂を塗布することにより形成されているため、印刷層の表面に塗装を施したとしても、塗装に用いた塗料は木材にまで浸透せず、また酢酸ビニルエマルジョン系接着剤は耐水性及び耐熱性に劣るため、長期使用時において塗膜が剥れ易くなるなど、塗膜の耐久性能に悪影響を及ぼす可能性がある。その上、酢酸ビニルエマルジョン系接着剤は粘度が高く、木材表面に均一に塗布することは非常に難しいため、木材の立体的美観を十分に現すことができない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで出願人は、木材基材表面の立体的美観が保持された化粧材を開発するべく、鋭意研究した結果、木材基材表面の道管の内部を、インク受容層の材料により適度に充填し、その部位においてインク受容層の表面に対して凹部がなお残るようにコートした後、印刷及びクリア塗装を施すことにより、表面の立体的美観が保持され、しかも印刷面の色むら、色滲み、目ばちのないところの優れた化粧材を提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の一の発明は、木材基材と、該木材基材の表面に塗布形成したインク受容層と、該インク受容層の表面にインクジェットプリンタによる印刷を行った印刷インク層と、該印刷インク層の表面にクリア塗装を施したクリア塗料層とを備える化粧材であって、
前記インク受容層は透明性を有する充填材を含むものであり、及び
前記インク受容層の表面は、前記木材基材表面のうち道管が存在する箇所において、該道管内に充填されたインク受容層材料の表面のうちの最深部位と、塗布形成された前記インク受容層の表面との間隔が10μmないし300μmとなるように形成されていることを特徴とする、化粧材に関する。
また本発明の二の発明は、木材基材と、該木材基材の表面に塗布形成したインク受容層と、該インク受容層の表面にインクジェットプリンタによる印刷を行った印刷インク層と、該印刷インク層の表面にクリア塗装を施したクリア塗料層とを備えた化粧材であって、
前記インク受容層は透明性を有する充填材を含むものであり、及び
前記化粧材の表面は、その算術平均高さ10μmないし300μmの範囲内の非平坦性を有することを特徴とする、化粧材に関する。
本発明において好ましい態様は、前記インク受容層が、水溶性高分子系インクジェット用樹脂を含むものであるところの、一の発明の又は二の発明の化粧材である。
この中でより好ましい態様は、前記インク受容層が木材基材表面で造膜しないように調整された組成からなるところの化粧材である。
一の発明又は二の発明において好ましい態様は、クリア塗料層は、木材基材及びインク受容層に対し浸透性を有する塗料からなるところの化粧材である。
【発明の効果】
【0005】
本発明の化粧材は、木材基材表面のうち、道管が存在する箇所において窪み(凹部)が観察され、木材基材表面の立体的美観が十分に維持され、且つ、印刷面に色むら、色滲み及び目ばちを起こすことがないという優れた効果を有する。
さらに、道管径が大きく、上記従来技術では印刷面に目ばちが目立つような材種であっても、本発明においては、充填材を含有したインク受容層により道管内部が適度にむらな
く充填され、そのため道管内部に着弾したインクは充填材間の間隙に浸透し、水溶性高分子系インクジェット用樹脂の膨潤により、道管内部においてもむらなく着色され、もって印刷面の目ばちの発生が効果的に抑えられる。さらに、インク受容層が木材基材表面において造膜しないものであることによりクリア塗装に用いる塗料の木材基材への浸透がインク受容層によって阻害されず、もってクリア塗料層の耐水性や耐熱性等の塗膜性能を損なうおそれもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
目ばちとは、一般には「木目に塗料が入らず開いたままの状態」のことをいうが(木材塗装研究会編(2005);“木材の塗装”,海青社,第295頁参照)、本明細書においては、目ばちとは、木材基材の道管の内部に印刷インク(着色剤)が入らず道管が開いたままの状態になることをいう。
色むらとは、同色の印刷インクで印刷したときに、印刷面において色の濃さが均等とならず、部分的に濃淡が生じて異なった色合いに見えてしまう状態をいう。
また、色滲みとは、文字又は図画を印刷したときに、印刷インクがその文字又は図画の寸法を超えてその周辺にまで広がって、印刷された文字又は図画の輪郭(境界)がぼやけてしまう状態をいう。
図面の簡単な説明
図1は、本発明の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図2は、図1の模式図である。
図3は、本発明の化粧材の製造段階において、木材基材表面にインク受容層、印刷インク層及びクリア塗料層を形成させて完成された前記化粧材の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図4は、図3の模式図である。
図5は、実施例1の化粧材の色滲み及び色むらを評価する試験パターンを示す図である。
図6は、比較例1の化粧材の色滲み及び色むらを評価する試験パターンを示す図である。
図7は、比較例5の化粧材の色滲み及び色むらを評価する試験パターンを示す図である。
図8は、比較例24の化粧材の色滲み及び色むらを評価する試験パターンを示す図である。
図9は、実施例1の化粧材のインク受容層の分布状況を撮影した写真を示す図である。
図10は、図9の模式図である。
図11は、比較例5の化粧材のインク受容層の分布状況を撮影した写真を示す図である。
図12は、図11の模式図である。
図13は、本発明の化粧材の断面部分のインク受容層の構成を示す断面模式図である。
図14は、実施例5の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図15は、図14の模式図である。
図16は、実施例5の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図17は、図16の模式図である。
図18は、実施例6の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図19は、図18の模式図である。
図20は、実施例6の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図21は、図20の模式図である。
図22は、比較例5の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図23は、図22の模式図である。
図24は、比較例9の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図25は、図24の模式図である。
図26は、比較例10の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図27は、図26の模式図である。
図28は、比較例11の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図29は、図28の模式図である。
図30は、比較例18の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図31は、図30の模式図である。
図32は、比較例18の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図33は、図32の模式図である。
図34は、比較例19の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図35は、図34の模式図である。
図36は、比較例19の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図37は、図36の模式図である。
図38は、比較例20の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図39は、図38の模式図である。
図40は、比較例20の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図41は、図40の模式図である。
図42は、比較例21の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図43は、図42の模式図である。
図44は、比較例21の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図45は、図44の模式図である。
図46は、比較例22の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図47は、図46の模式図である。
図48は、比較例22の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図49は、図48の模式図である。
図50は、比較例23の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図51は、図50の模式図である。
図52は、比較例23の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図53は、図52の模式図である。
図54は、木材基材表面のうち、インク受容層により完全に埋められた、直径が約60μmの道管を含む断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
図55は、図54の模式図である。
図56は、実施例1並びに比較例1、5及び24の化粧材において、ウレタンクリア塗装する前後におけるΔLの変化を表したグラフを示す図である。
図57は、本発明の化粧材において、インク受容層が透明性を有することを構造的に示した模式図である。
【0007】
本発明の化粧材の製造段階及びそれにより得られる構成を、基材となる木材表面のうち道管が存在する箇所の断面部の顕微鏡写真を示す図1及び図3並びにそれぞれ対応する模式図である図2及び図4を挙げて以下説明する。
本発明の化粧材は、まず目的に応じて木材基材の材種が選ばれ、その木材基材、例えば突板1の表面に、インク受容層2を塗布形成させる(図1及び図2参照。)。このとき、
突板1表面の道管の内部3は、インク受容層2の材料により適度に充填される。詳細には、インク受容層2は、木材基材表面のうちの道管が存在する箇所において、該道管内部3に充填されたインク受容層材料の表面のうちの最深部位4と、塗布形成された前記インク受容層の表面5との間隔v(以後、インク受容層の窪み深さと呼ぶ。)が、およそ10μmないし300μmの範囲内となるように形成される。インク受容層2の窪み深さvが10μm未満であると、道管が存在する箇所で窪みが殆ど観察されず木材基材表面の立体的美観が不十分にしか得られない。木材基材表面の立体的美観を十分なものとし且つ印刷面の色むらを防止する観点より、インク受容層2は、その窪み深さvが、20μm以上100μm以下の範囲内となるよう形成されることがより好ましい。インク受容層2の窪み深さvは、化粧材において木材基材表面のうちの道管が存在する箇所の断面部を撮影した顕微鏡写真より計測することができる(図1及び図2参照。)。
次に、形成されたインク受容層2の表面に、インクジェット印刷して印刷インク層6を形成させ、その後印刷インク層6の表面にクリア塗装を施すことによってクリア塗料層7を形成させて、本発明の化粧材が作られる(図3及び図4参照。)。
また、本発明において、化粧材表面の性状を測定容易な物性値で特定するとき、化粧材表面は、算術平均高さが木材基材の樹種にもよるが、10μmないし300μmの範囲となる非平坦性を有するように定められる。化粧材表面の非平坦性は、JIS B0601−2001に従って測定した算術平均高さとして表される。
インク受容層の窪み深さにより充填度合を設定する場合及び化粧材表面の算術平均高さにより充填度合を設定する場合のいずれの場合においても、インク受容層の組成は、クリア塗料層の耐久性能の低下を防止するために、木材基材表面で造膜しないように調整される。
またインク受容層は、木材基材表面の木目又は道管の外観を遮ることがないように、透明性の高いことが望まれる。そのため、インク受容層は、可視光域(約400〜700nm)において通常その全域にわたっておよそ60%以上の透過率、好ましくは70%以上の透過率、より好ましくは80%以上の透過率を有する。
【0008】
インク受容層は、基本的に水溶性高分子系インクジェット用樹脂を含む他、透明性を有する充填材をさらに含み得る。充填材は、水溶性高分子系インクジェット用樹脂を道管内部にむらなく保持させるためのものであり、その寸法が平均粒径として、基材となる木材の道管径よりも小さなものから選択される必要がある。さらに効率良く道管内部に充填材が沈着するためには、平均粒径が10μm以下、好ましくは4μm以下のものから選択されることが望ましい。
かかる充填材は、木材基材の道管内部が水溶性高分子系インクジェット用樹脂により所定の充填度合になるような割合で配合される。材種にもよるが、用いる水溶性高分子系インクジェット用樹脂の全量に基づきおよそ10ないし50質量%の範囲で配合するのが適当である。さらに、クリア塗料の木材基材への浸透を良くするため、顔料容積濃度(PVC)を、少なくともインク受容層内に(充填材間に)空隙の発生する臨界顔料容積濃度(CPVC)以上になるように水溶性高分子系インクジェット用樹脂との割合を調整して配合するとよい。つまり、充填材は、インク受容層内の空隙が連続し、塗料がインク受容層及び木材基材に十分浸透するような配合割合に調整されることが好ましい。
水溶性高分子系インクジェット用樹脂は、径の大きい道管内部以外では木材基材表面にも浸透し、インク着弾時にはこれが膨潤して印刷インク層を定着させる働きをするので、道管内部以外の箇所では充填材を沈着させなくても、十分良好な印刷結果が得られる。
【0009】
インク受容層は通常、溶媒、水溶性高分子系インクジェット用樹脂及び充填材を一緒にコート剤の形態で木材基材の表面に塗布後、乾燥することにより形成される。このとき、コート剤に充填材を含有させることにより、径の大きい道管の内部であっても、水溶性高分子系インクジェット用樹脂が充填材に付着して道管内部にむらなく広がり保持されるため、インク受容層が道管内部において均質に形成される。もちろんこのとき、コート剤は
、道管内部が所定の充填度合となるように塗布される。なお、本発明に言う塗布とは、塗布の他、噴霧、浸漬など、木材基材に対し接触し得るすべての形態をも包含するものとする。また、インク受容層が木材表面に均一に形成、浸透し、且つ、木材表面で造膜しないためには、コート剤の粘度は、例えばフローカップ法などによりある一定数値以下に調整される。そのための水溶性高分子系インクジェット用樹脂の含有量は、印刷時のインクの吐出量にもよるが、通常、コート剤の全量に基づき1.5ないし15質量%である。
コート剤を木材表面に塗布した後の乾燥は、木材乾燥で一般に行われる天然乾燥、人工乾燥として温風乾燥、真空乾燥、熱盤乾燥などの方法を採用し得るが、コート剤中の水分の木材基材への影響を避けるため、温風乾燥で速やかに乾燥することが望ましい。
【0010】
なお、使用される木材基材の樹種又はその部位によっては、もともとその道管の径が小さい場合がある。この場合には、水溶性高分子系インクジェット用樹脂を適切な濃度に調整したコート剤を用いてインク受容層を形成することによって印刷面の色滲みを防止することも出来る。この際、場合によっては、コート剤の配合成分から充填材を省くことができる。また、このときの水溶性高分子系インクジェット用樹脂の含有量は、樹種や印刷時のインクの吐出量にもよるが、一般にコート剤の全量に基づき1.5ないし15質量%の範囲に調整される。
【0011】
クリア塗料層は、化粧材表面の光沢及び美観をより高めるとともに、耐熱性及び耐水性を高めるために用いられ、印刷インク層の表面にクリア塗装に用いられる塗料を塗布乾燥することにより形成される。クリア塗装に用いられる塗料は、用いられる木材基材及びインク受容層の双方に対して浸透性を有することが好ましい。このことは、形成されたクリア塗料層がより強固に形成され、そのためにインク受容層及び印刷インク層を保護し剥れ難くさせるという利点を有する。
【0012】
水溶性高分子系インクジェット用樹脂としては、一般に市販されているものの中から、硬化後に光透過に影響のない透明又は半透明のものが選択される。その一例として、カチオン性アクリル共重合ポリマーを主成分とした非PVA系溶液タイプの組成物を挙げることができる。その中で好ましいのはNS−650X(高松油脂株式会社製)である。その他の水溶性高分子系インクジェット用樹脂として使用されるものは例えば、デンプン、セルロース、タンニン、リグニン、アルギン酸やアラビヤゴムなどの多糖類、ゼラチンのような天然系高分子化合物、或いは、酢酸ビニル、エチレンオキシド、アクリル酸、アクリルアミド、無水マレイン酸、フタル酸などを構成成分とした重合体又は共重合体、又はポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリアミンのような合成高分子化合物の親水性又は水溶性を示すものも挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
本発明において使用され得る充填材は、透明性を有する無機又は有機微粒子である。かような充填材は、可視光域(約400〜700nm)において通常その全域にわたっておよそ60%以上の透過率、好ましくは70%以上の透過率、より好ましくは80%以上の透過率を有する。具体的には例えば、アクリル系ポリマー、ポリカーボネート、ポリエチレン、シリカ、ポリスチレン及びガラス等が挙げられる。この中でアクリル系ポリマー、特に、道管の内部を効率良く充填するという点からビーズ形態のものが好ましい。充填材の含有量は、コート剤の全量に基づきおよそ10ないし50質量%の範囲が適当である。
【0014】
クリア塗装に用いられる塗料は、木材基材に使用される一般的な塗料を使用し得る。但し、木材基材及びインク受容層に対し浸透性を有する塗料を用いる。例えばセラックニス類、ニトロセルロースラッカー、柿渋、漆、カシュー樹脂塗料、ワックス、オイルフィニッシュ用塗料、アクリル樹脂塗料、フタル酸樹脂塗料、不飽和ポリエステル樹脂塗料、二
液型ポリウレタン樹脂塗料、湿気硬化型ポリウレタン樹脂塗料、紫外線硬化型塗料などが使用できる。またクリア塗装に用いられる塗料には、変色防止剤などの添加剤、染料系、顔料系のステイン等を添加することが出来る。
【0015】
本発明に使用される木材基材としては、種々の樹種から切り出して、インクジェット印刷するのに適する形状に、例えば板状、シート状に加工したものが用いられる。木材基材は針葉樹及び広葉樹等ほとんど全ての樹種のものが使用され得、例えば、松、杉、桧、楢、欅、桜、楡、黒柿、栃、桂、楓、槐、楠、キハダ、シオジ、タブオキ、アカダモ、タモ、セン、ミズナラ等の国産材、及び、チーク、ローズウッド、マホガニー、バーズアイメープル、ブラックウォールナット、ゼブラウッド、コクタン(黒壇)、アボデイラ、シタン(紫檀)、マンガシノロ、サテンウッド、ブラジリアンローズ、アンデスローズ、ブラジリアンコア、アフリカンローズ、ユーラシアンチーク、ホワイトタガヤ、バンゼルローズ、アマゾンローズ、タマクラ、パイン、シャム柿、ブビンガ、オリーブウォールナット、アイリスローズ、クラロウォールナット、シルバーハート、ラテンウォールナット、ゼブラウッド、カリン(花梨)、レッドウッド、パープルウッド、アメリカンチェリー、シルキーオーク、タイワンクス、黒レオ(ダオ)、白レオ、サペリ、ブビンカ、マコレ、マドローナ、ミルトル、メープルなどの輸入材が挙げられる。また、寸法変化や割れ止め、変色防止等を目的として薬品処理されていてもよく、さらに着色や染色処理を施したものでも良い。
本発明において、好ましくは、木材基材として突板を使用することができる。その厚さとしては、50μm〜600μm程度であり、好ましくは100ないし500μmである。突板は、その破損の防止のために、下側が不織布又は紙等の繊維質材で裏打ちされたものであってもよい。
【0016】
本発明の化粧材は、例えば以下の方法により製造され得る。まずは化粧材の用途、例えば葉書用又は鑑賞用などに応じて樹種及び寸法が選定された木材基材の印刷面となる表面に、溶媒、水溶性高分子系インクジェット用樹脂、充填材及び所望により他の添加剤を含むコート剤を、道管内部の充填度合が上記要件を満たすように塗布する。コート剤の塗布の前に、用いられる木材基材の道管の凹部の深さを予め測定しておくと、コート剤のおおよその塗布量を推測することができる。用いられる木材基材又はコート剤の配合にもよるが、コート剤の塗布量は、おおむね20ないし50g/m2となる量である。その後、室
温ないし100℃で数分間ないし数時間乾燥してインク受容層を形成し、さらに所望の模様又は印字等に印刷し、そして、その印刷インク層の表面に上記の塗料を塗布することによってクリア塗料層を形成して、本発明の化粧材を得ることができる。印刷後の印刷面は、ブラック単色であっても、また多色であっても鮮明であり、木材基材表面の立体的美観は維持される上に、色むら、色滲み及び目ばちは見られない。なお、使用されるインクジェットプリンタとしては、木材基材に対応し得るものであればその機種は特に問われない。その一例として、MAXART K3シリーズ(セイコーエプソン社製)のものが挙げられる。
【0017】
以下、本発明をより具体的に説明するが、これらの例は、本発明を限定するものと理解されるべきではない。
【実施例】
【0018】
(実施例)
実施例1ないし4
木材基材として、タモ(柾目)、サペリ(柾目)、ブラックウォールナット(板目)、パープル(板目)からのそれぞれの突板(0.2mm厚)を、不織布を用いて裏打ちし、4枚の突板裏打ちシートを作成した。一方で、NS−650X(高松油脂製)を固形分が1.65質量%となるように水性溶媒を用いて希釈し、該希釈液にアクリルポリマービー
ズ(商品名ガンツパール(ガンツ化成株式会社製);平均粒径4μm)を全量に対し30質量%となる量で添加し、そして均質となるまで混合し、コート剤を得た。そして、各突板裏打ちシートの裏打ちされていない側の表面に、塗布量25g/m2となる量でコート
剤を塗布し、70℃で5分間乾燥してインク受容層を形成させ、その後、該インク受容層にインクジェット印刷を行って印刷インク層を形成させ、さらにウレタンクリア塗装を施してクリア塗料層を形成させ、実施例1(タモ(柾目)使用)、実施例2(サペリ(柾目)使用)、実施例3(ブラックウォールナット(板目)使用)及び実施例4(パープル(板目)使用)の化粧材をそれぞれ得た。
実施例5ないし7
木材基材として、道管径が平均およそ40μmのハードメープル、道管径が平均およそ100μmのサテンシカモア、道管径が平均およそ150μmのタモからのそれぞれの突板(0.2mm厚)を使用した他は実施例1ないし4と同様にして、実施例5(ハードメープル使用)、実施例6(サテンシカモア使用)及び実施例7(タモ使用)の化粧材を得た。
実施例8ないし10
充填材として、平均粒径およそ10μmのアクリルポリマービーズを用いた他は、上記実施例5ないし7と同様にして、実施例8(ハードメープル使用)、実施例9(サテンシカモア使用)及び実施例10(タモ使用)の化粧材を得た。
実施例11ないし13
充填材として、平均粒径およそ20μmのアクリルポリマービーズを用いた他は、上記実施例5ないし7と同様にして、実施例11(ハードメープル使用)、実施例12(サテンシカモア使用)及び実施例13(タモ使用)を得た。
【0019】
比較例1ないし4
上記実施例1ないし4と同様に4枚の突板裏打ちシートを作成し、これら突板裏打ちシートに直接にインクジェット印刷を行って印刷インク層を形成させ、さらにウレタンクリア塗装を施してクリア塗料層を形成させて、比較例1(タモ(柾目)使用)、比較例2(サペリ(柾目)使用)、比較例3(ブラックウォールナット(板目)使用)及び比較例4(パープル(板目)使用)の化粧材をそれぞれ得た。
比較例5ないし8
上記実施例1ないし4と同様に4枚の突板裏打ちシートを作成した。一方で、NS−650X(高松油脂製)を固形分が1.65質量%となるように水性溶媒を用いて希釈し、コート剤を得た。そして、各突板裏打ちシートの裏打ちされていない側の表面に、塗布量25g/m2となる量でコート剤を塗布し、70℃で5分間乾燥してインク受容層を形成
させ、さらにインクジェット印刷して印刷インク層を形成させ、その後ウレタンクリア塗装を施してクリア塗料層を形成させて、比較例5(タモ(柾目)使用)、比較例6(サペリ(柾目)使用)、比較例7(ブラックウォールナット(板目)使用)及び比較例8(パープル(板目)使用)の化粧材をそれぞれ得た。
比較例9ないし11
木材基材として、道管径が平均およそ40μmのハードメープル、道管径が平均およそ100μmのサテンシカモア、道管径が平均およそ150μmのタモからのそれぞれの突板(0.2mm厚)を使用した他は比較例1ないし4と同様にして、比較例9(ハードメープル使用)、比較例10(サテンシカモア使用)及び比較例11(タモ使用)の化粧材をそれぞれ得た。
比較例12ないし14
木材基材として、道管径が平均およそ40μmのハードメープル、道管径が平均およそ100μmのサテンシカモア、道管径が平均およそ150μmのタモからのそれぞれの突板(0.2mm厚)を不織布を用いて裏打ちし、3枚の突板裏打ちシートを作成した。一方で、酢酸ビニルエマルジョン接着剤(固形分45質量%)をコート剤として、各突板裏打ちシートの裏打ちされていない側の表面に、塗布量25g/m2となる量でコート剤を
塗布し、70℃で5分間乾燥してインク受容層を形成させ、さらにインクジェット印刷して印刷インク層を形成させ、その後ウレタンクリア塗装を施してクリア塗料層を形成させて、比較例12(ハードメープル使用)、比較例13(サテンシカモア使用)及び比較例14(タモ使用)の化粧材をそれぞれ得た。
比較例15ないし17
比較例12ないし14で用いた酢酸ビニルエマルジョン接着剤を水で希釈し固形分22.5質量%に調整した酢酸ビニルエマルジョン接着剤を用いた他は、比較例12ないし14と同様にして比較例15(ハードメープル使用)、比較例16(サテンシカモア使用)及び比較例17(タモ使用)の化粧材をぞれぞれ得た。
比較例18ないし20
木材基材として、道管径が平均およそ40μmのハードメープル、道管径が平均およそ100μmのサテンシカモア、道管径が平均およそ150μmのタモからのそれぞれの突板(0.2mm厚)を使用した他は比較例5ないし8と同様にして比較例18(ハードメープル使用)、比較例19(サテンシカモア使用)及び比較例20(タモ使用)の化粧材をぞれぞれ得た。
比較例21ないし23
木材基材として、道管径が平均40μmのハードメープル、道管径が平均100μmのサテンシカモア、道管径が平均150μmのタモからのそれぞれの突板(0.2mm厚)を用意した。一方で、NS−650X(高松油脂製)を固形分が1.65質量%となるように水性溶媒を用いて希釈し、該希釈液にアクリルポリマービーズ(商品名ガンツパール;平均粒径4μm)を全量に対し30質量%となる量で添加し、そして均質となるまで混合し、コート剤を得た。そして、突板の一方側の表面に塗布量25g/m2となる量でコ
ート剤を塗布し、70℃で5分間乾燥してインク受容層を形成させ、さらに該インク受容層表面をサンドペーパー(#400)にて表面研磨する、という一連の操作(塗布及び表面研磨)を2回繰り返すことによって、インク受容層表面を平滑なものとした。そして、これら突板のインク受容層を形成させていない側の表面を不織布を用いて裏打ちして、突板裏打ちシートを作成した後、インク受容層にインクジェット印刷を行って印刷インク層を形成させ、さらにウレタンクリア塗装を施してクリア塗料層を形成させて、比較例21(ハードメープル使用)、比較例22(サテンシカモア使用)及び比較例23(タモ使用)の化粧材をそれぞれ得た。
比較例24ないし27
上記実施例1ないし4と同様に4枚の突板裏打ちシートを作成した。一方で、NS−650X(高松油脂製)を固形分が1.65質量%となるように水性溶媒を用いて希釈し、該希釈液に軽質炭酸カルシウム(平均粒径:10μm)を全量に対し30質量%となる量で添加し、そして均質となるまで混合し、コート剤を得た。そして、各突板裏打ちシートの裏打ちされていない側の表面に、塗布量25g/m2となる量でコート剤を塗布し、7
0℃で5分間乾燥してインク受容層を形成させ、その後、該インク受容層にインクジェット印刷を行って印刷インク層を形成させ、さらにウレタンクリア塗装を施してクリア塗料層を形成させ、比較例24(タモ(柾目)使用)、比較例25(サペリ(柾目)使用)、比較例26(ブラックウォールナット(板目)使用)及び比較例27(パープル(板目)使用)の化粧材をそれぞれ得た。

上記実施例1ないし13及び比較例1ないし27の物性並びにインク受容層の窪み深さ及び化粧材表面の算術平均高さを各々下記の表1に示す。
【表1】


【表2】


【0020】
実施例及び比較例の各化粧材について、下記の試験方法に従い、試験1ないし試験4を行った。
(試験方法)
試験1:印刷適性
a)色滲み及び色むら
突板裏打ちシートにインク受容層を形成させ、該インク受容層に、インクジェットプリンタ(EPSON PX−9500)を用いて印刷し印刷インク層を形成させ、さらにウレタンクリア塗装(3部艶)することによりクリア塗料層を形成させて化粧材を作成した後、該各々の化粧材につき、色滲み及び色むらについて評価した。色滲み及び色むらを評価する試験パターンは、幅方向に隣り合って並ぶ8つの長方形(1×20cm)の区画内が、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、水色(C)、紫色(M)、黄色(Y)、黒色(K)、灰色(G)の8色にそれぞれ塗りつぶされ、且つ、同様の色の、各色あたりそれぞれ幅0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mmの計32本の直線が8つの長方形の区画を通り交差するように行った。
b)目ばち
タモ(柾)を用いた突板裏打ちシートにインク受容層を形成させ、さらにインクジェットプリンタ(EPSON PX−9500)を用いて紺色一色に印刷を行って印刷インク層を形成させ、さらにクリア塗料層を形成させて化粧材を作成した後、紺色で着色した箇所について、任意の10×10cmの範囲を、1cm角のグリッドで区画し、着色されていない道管の数を計測した。
【0021】
試験2:塗装適性
a)インク受容層の透明性(木目の鮮明さ)の評価
化粧材のインクジェット印刷面において、着色されている部分と、着色されていない部分の透明性を目視で評価した。
b)立体的美観の評価
化粧材の塗装表面を目視で評価した。
c)JAS2類浸漬剥離試験
化粧材を70℃温水中に2時間浸漬した後、引き上げて60℃にて3時間乾燥した後、印刷面の滲み及び塗装の状態を評価した。
d)密着試験
c)の試験の前後で表面に縦横2mmの間隔で切れ込みを11本入れ、粘着テープで引き剥がした。
【0022】
試験3:インク受容層の分布状況
a)化粧材のインク受容層の分布状況をそれぞれ目視して確認した。
b)化粧材を得る段階において、インク受容層を形成させた突板裏打ちシートの表面のうち道管を含む断面部を顕微鏡で観察した。
c)化粧材の道管を含む断面部を顕微鏡で観察した。
【0023】
試験4:インク受容層の隠蔽性
JIS−K5101−1991 顔料試験方法 8 隠ぺい力 8.1 隠ぺい率試験紙法と同様に試験を行い、そして評価した。すなわち、EPSONフォトマット紙上に、白色及び黒色面からなる試験紙を作成し、この試験紙上に、コート剤を30μmのバーコーターで塗工し、乾燥してインク受容層を形成させた後、その表面にさらにウレタンクリアー塗装した後に、白色面と黒色面の色彩を測定して両者の明度差ΔLを算出した。すなわち、ΔLの値が大きいものほど透明性が高い(隠ぺい力が低い)ということができる。
【0024】
これらの試験結果を下記に記載する。試験1(印刷適性)及び試験2(塗装適性)については結果を表2にもまとめた。
試験1:印刷適性
a)色滲み・色むら
実施例1、比較例1、比較例5及び比較例24(各々突板としてタモ(柾目)を使用したもの)にそれぞれ対応する結果を示す図5、図6、図7及び図8から判るように、インク受容層を形成させなかった比較例1では、色滲み及び色むらが顕著に発生した。また、比較例5ではインク受容層を形成させたものの、インク受容層に充填材が含有されていないために、色滲み及び色むらが目立ち、また、比較例24では、インク受容層に充填材として軽質炭酸カルシウムが含有されているものの、軽質炭酸カルシウムの白書によって道管部分が白みがかって見えてしまった。これらに対し、充填材としてアクリルポリマービーズを含有させた実施例1では、色滲み及び色むらが効果的に解消され、且つ、道管部の白さもなかった。また、比較例12ないし14(上記特許文献3に記載の技術に相当)においては、色滲みは解消されたが、色むらが発生してしまった。比較例12ないし14の作製に使用したコート剤の固形分を22.5質量%にまで低下させて作製した比較例15ないし17の化粧材については、色むらの解消に特に改善が見られない上に、色滲みがかえって多く発生する結果となった。
b)目ばち
比較例9ないし11の結果から、木材基材として道管径が比較的細いハードメープル(道管径:40μm)を用いた場合(比較例9)においては、インク受容層を形成させなくとも目ばちの発生を抑えることができたが、サテンシカモア(道管径:100μm)(比較例10)及びタモ(道管径:150μm)(比較例11)を用いた場合においては、目ばちが顕著に発生してしまい、道管径のより太い木材基材を用いるにはインク受容層の形成が必要であることが判る。そしてさらに、表2において、比較例12ないし14は目ばちの発生が抑えられているが、色むらが発生したため、化粧材としては不適である。この結果より、適する化粧材を作製するには、インク受容層には充填材が含有されていることが必要であると判る。さらに、平均粒径4μm、10μm及び20μmのアクリルポリマービーズを充填材としてそれぞれ用いた実施例5ないし7、実施例8ないし10及び実施例11ないし13の各化粧材の結果から、木材基材としてサテンシカモア(道管径:100μm)を用いた場合は平均粒径10μm以下の範囲にある充填材がより好ましく、及び、タモ(道管径:150μm)を用いた場合は平均粒径4μm以下の範囲にある充填材がより好ましいことが判った。
【0025】
試験2:塗装適性
a)インク受容層の透明性の評価
比較例24ないし27の化粧材は、充填材として軽質炭酸カルシウムを用いているため、道管部のうち充填材の堆積の多い箇所については白く濁ってしまった。これに対し、実施例1ないし13の化粧材については、高い透明性が観察された。この実施例1ないし13の化粧材は、インク受容層に充填材を含んでいるにもかかわらず、インク受容層が透明であり、木目の模様や光沢が美しく見えた。
b)立体的美観の評価
インク受容層を備えた実施例1ないし13の化粧材の立体的美観は非常に良好であり、このことは、所定の充填材を使用したことにより、インク受容層が適度に道管内部を充填し得たためと考えられる。比較例12ないし14では、印字結果は比較的良好で、目ばちも発生しないが、インク受容層の表面は凹凸が発生し、立体的美観を著しく損ねている。また、この凹凸に起因し、色むらが発生していることが判る。一方、比較例12ないし14の化粧材は、コート剤の粘度が高く、且つ、充填材を含有しない配合のものであったため、塗布むらによるインク受容層表面の凹凸の発生、造膜による気泡の発生、及び木材基材への浸透性の悪さにより、立体的美観を損なったと考えられる。
c)JAS2類浸漬剥離試験
実施例1ないし13の各化粧材において、クリア塗料層の浮き、割れ等の異常は認められなかった。比較例12においては、温水後に木材基材と受容層の間で界面剥離が発生しており、使用環境下においては塗膜性能が不十分であることが伺える。造膜により塗料の浸透が阻害され、且つ、耐水性及び耐熱性に乏しい樹脂を使用したためと考えられる。
d)密着試験
実施例1ないし13の各化粧材において、クリア塗料層の剥離は認められなかった。インク受容層単独よりも、クリア塗料がインク受容層に浸透してクリア塗料層が形成することにより、塗膜の耐水性及び耐熱性がより高まる。
【表3】


【表4】


【0026】
試験3:インク受容層の分布状況
a)コート剤に水性インク(ブルーブラック)を添加して着色することにより目視し得
るインク受容層を形成させた他は、実施例1及び比較例2と同様に化粧材を得た。
実施例1及び比較例2の各々の化粧材の平面撮影図を、図9及び図11にそれぞれ示し、各図に対応する模式図を図10及び図12にそれぞれ示す。
実施例1の化粧材(図9及び対応する図10参照。)によると、道管内部8にはアクリルビースが均質に沈着し、かつアクリルビーズ表面にもインク受容層9(図中の斜線部分)が形成されているため、結果として道管内部8にインク受容層9が均質に形成されていた。
一般に広葉樹の道管を着色する方法として、目止め着色法がある。目止め着色剤は無色又は淡色の体質顔料に、濃色の顔料及び少量の染料、バインダーを混ぜて作るが(木材塗装研究会編(2005):“木材の塗装”、海青社、第34頁)、本発明においては体質顔料の代わりに無色透明のアクリルビーズを用いた。すなわち、(1)水溶性高分子系インクジェット用樹脂は、道管内部表面での濡れが悪いものの、アクリルビーズ表面での濡れは良いこと、(2)水溶性高分子系インクジェット用樹脂は、乾燥後、アクリルビーズを固定するバインダーとしての役割も果すこと、この2点の特徴から道管内部ではアクリルビースを介して最表面にインクジェット受容層が形成されていると考えられる(図13参照。)。
また一方、比較例2の化粧材(図11及び対応する図12参照。)によると、道管内部8の大部分にコート剤が浸透せず、インク受容層9が形成されていないことがわかる。すなわち、比較例2の化粧材において目ばちが顕著に発生するのは、道管内部8にインク受容層9が形成されにくいためであり、道管内部8に着弾したインクは弾かれ、定着しないで隣接する木繊維に移動していると考えられる。
b)実施例1の化粧材の製造段階のうちの一段階を示すところの、基材となる木材基材表面のうち道管が存在する箇所の断面部の顕微鏡写真を示す図である図1及び対応する模式図である図2を見ると、該道管の直径は約150μmである。インク受容層表面5には含まれたアクリルビーズ10が約10〜20μmほど堆積しており、道管内部3ではさらに厚く堆積している部分があるが、凹部を完全に埋めることは無く、窪み深さは約70μmを確保しており、最終的な立体的美観を確保するのに役立っていることが判る。
c)実施例1、5、6、比較例5、9ないし11、18ないし23の各化粧材のインク受容層の断面部を観察した。
そして、実施例1に対応する図3及び図4によると、インク受容層2は道管内部3にむらなく充填されているために、道管内部3においてもインクがはじかれることなく定着して印刷インク層6が切れ目なく形成されたことにより目ばちの発生が抑えられていることが判る。さらに、印刷インク層は充填材(アクリルビース)間の空隙にも浸透していたことが観察された。すなわち、アクリルビーズ表面の水溶性高分子系インクジェット用樹脂の膨潤効果と、充填材間の空隙へのインクの浸透により、印刷インク層6が道管内部3において定着していると考えられる。
また、実施例5に係る図14及び対応する図15から、インク受容層2が10μmの厚さで形成されており、道管内部3においては窪み深さが10μm確保されていることが判る。
実施例1の化粧材に対し、比較例5の化粧材においては、コート剤が浸透せずにインク受容層2が形成されていない道管内部3では、インクが定着しなかったため印刷インク層6が形成されず、従ってコート剤が浸透してインク受容層2が形成された部分である周囲の木繊維に移動して定着してしまっていることが解る。
比較例9においては、道管内部3よりもさらに深くインクが浸透しており、このことは、木材組織のうち浸透性の高い経路を通ったためと考えられ、このことが色むらの原因となったと考えられる。比較例10の場合、道管内部3においてはインクが弾かれて印刷インク層を形成しておらず、付近の木繊維にインクが移動して目ばちが発生している。また、インクの浸透の深さにはバラつきがあり、そのため色むらが多く発生した。比較例11の場合も同様に、道管内部3においては印刷インク層が形成されておらず、インクが周囲の木繊維に移動して目ばちが発生している。インク受容層を形成しなかったためといえる

比較例18の場合、インク受容層2の窪み深さはおよそ20μmないし40μmであったが、道管内部3においてはインクが弾かれて定着していない。比較例19の場合、インク受容層2の窪み深さは60ないし90μmであったが、道管内部3においてインクが弾かれ定着していなかった。比較例20についても同様に道管内部3において印刷インク層が形成されなかった。
なお、参考として、インク受容層2により完全に埋められた、直径が約60μmというやや細い道管を含む断面部分の顕微鏡写真を示す図54及び対応する模式図を図55に示した。図54及び図55によると、充填材の配合割合は、樹種の道管の直径の大小を考慮して決定されるべきであることが判る。
【0027】
試験4:インク受容層の隠蔽性
実施例1、比較例5及び比較例24の化粧材においてそれぞれ用いたコート剤を白色及び黒色面からなる試験紙に塗工、乾燥してインク受容層を形成し、さらにその表面にウレタンクリア塗装してクリア塗料層を形成させたものにつき試験を行った。なお、比較例1については、試験紙にクリア塗料層のみを形成させたものにつき試験を行った。結果を以下の表3に示す。また、ウレタンクリア塗装する前後におけるΔLの変化を表したグラフを図56に示す。
【表5】


図56によると、充填材を含んだ実施例1のインク受容層において、クリア塗装前のΔL値は37を示し、充填材を含まない比較例1及び比較例5のΔL値である75及び74よりも低く、隠蔽度が高いものとなっている。しかし、ウレタンクリア塗装によって、実施例1のインク受容層のΔL値は64まで上昇し、比較例1及び比較例5のウレタンクリア塗装後のΔL値である65及び65に近づいたことが判る。比較例24の化粧材のインク受容層においては、クリア塗装前にはΔL値38と隠蔽度が高く、クリア塗装後でもΔL値が59にとどまった。
このように、アクリルビーズを含むインク受容層がクリア塗装前は透明性が低かったが、クリア塗装後には充填材を含まない比較例1及び比較例5とほぼ同等の透明性を有するまでに改善された理由として、以下のことが推量される。すなわち、充填材であるアクリルビーズは透明であるが、インク受容層の固形分1部に対してアクリルビーズは20部という固形分比から考えて、アクリルビーズ間は点接着されていると考えられる。そのため、アクリルビーズ間には連続した空隙が存在していると考えられ、ここでアクリルビーズの表面に起因する乱反射が起こり、透明性を低めていると考えられる。ここで、図57に示すように、クリア塗装を施すことによって、クリア塗料がアクリルビーズ間の連続した空隙に浸透し、該浸透により空隙がほぼ完全に埋められると考えられる。このため、アクリルビーズ表面に起因する乱反射が著しく抑えられ、且つ、アクリルビーズの透明性の高さにより、木材基材の有する特有の光沢を効果的に透かして現すことができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図2】図1の模式図である。
【図3】本発明の化粧材の製造段階において、木材基材表面にインク受容層、印刷インク層及びクリア塗料層を形成させて完成された前記化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図4】図3の模式図である。
【図5】実施例1の化粧材の色滲み及び色むらを評価する試験パターンを示す図である。
【図6】比較例1の化粧材の色滲み及び色むらを評価する試験パターンを示す図である。
【図7】比較例2の化粧材の色滲み及び色むらを評価する試験パターンを示す図である。
【図8】比較例24の化粧材の色滲み及び色むらを評価する試験パターンを示す図である。
【図9】実施例1の化粧材のインク受容層の分布状況を撮影した写真を示す図である。
【図10】図9の模式図である。
【図11】比較例2の化粧材のインク受容層の分布状況を撮影した写真を示す図である。
【図12】図11の模式図である。
【図13】本発明の化粧材の断面部分のインク受容層の構成を示す断面模式図である。
【図14】実施例5の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図15】図14の模式図である。
【図16】実施例5の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図17】図16の模式図である。
【図18】実施例6の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図19】図18の模式図である。
【図20】実施例6の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図21】図20の模式図である。
【図22】比較例5の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図23】図22の模式図である。
【図24】比較例9の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図25】図24の模式図である。
【図26】比較例10の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図27】図26の模式図である。
【図28】比較例11の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図29】図28の模式図である。
【図30】比較例18の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図31】図30の模式図である。
【図32】比較例18の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図33】図32の模式図である。
【図34】比較例19の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図35】図34の模式図である。
【図36】比較例19の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図37】図36の模式図である。
【図38】比較例20の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図39】図38の模式図である。
【図40】比較例20の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図41】図40の模式図である。
【図42】比較例21の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図43】図42の模式図である。
【図44】比較例21の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図45】図44の模式図である。
【図46】比較例22の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図47】図46の模式図である。
【図48】比較例22の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図49】図48の模式図である。
【図50】比較例23の化粧材の製造段階において、木材基材表面に形成されたインク受容層の断面を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図51】図50の模式図である。
【図52】比較例23の化粧材の断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図53】図52の模式図である。
【図54】木材基材表面のうち、インク受容層により完全に埋められた、直径が約60μmの道管を含む断面部分を撮影した顕微鏡写真を示す図である。
【図55】図54の模式図である。
【図56】実施例1並びに比較例1、5及び24の化粧材において、ウレタンクリア塗装する前後におけるΔLの変化を表したグラフを示す図である。
【図57】本発明の化粧材において、インク受容層が透明性を有することを構造的に示した模式図である。
【符号の説明】
【0029】
1 木材基材 2,9 インク受容層 3,8 道管内部 4 インク受容層材料の表面のうちの最深部位 5 塗布形成されたインク受容層の表面 6 印刷インク層 7 クリア塗料層 v 間隔
【出願人】 【識別番号】591214619
【氏名又は名称】北三株式会社
【出願日】 平成18年10月10日(2006.10.10)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫

【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫

【識別番号】100080908
【弁理士】
【氏名又は名称】舘石 光雄

【識別番号】100093193
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 壽夫

【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉

【識別番号】100109690
【弁理士】
【氏名又は名称】小野塚 薫

【識別番号】100131266
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼ 昌宏

【識別番号】100093414
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 祐輔


【公開番号】 特開2008−93910(P2008−93910A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−276818(P2006−276818)