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【発明の名称】 穴あけ方法
【発明者】 【氏名】小林 正俊

【要約】 【課題】繊維で強化された樹脂を積層する積層体であっても、大幅な強度低下や外観の損失を生じることなく容易に所望の穴あけを行うことができる穴あけ方法を提供する。

【解決手段】連続する繊維Fで強化された樹脂である繊維強化樹脂シート16〜19が積層された積層体10に貫通穴14をあける前に、ドリル12の挿入側面である繊維強化樹脂シート16の表面16a側の反対側の面である繊維強化樹脂シート19の表面19aの穴あけ部周辺の表層部をグラインダ22で除去し、表層除去部24を形成しておき、その後、ドリル12による穴あけ加工を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維で強化された樹脂を積層する積層体に、貫通穴をあける穴あけ方法であって、
穴あけ前に、前記積層体における穴あけ用工具の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部を除去しておくことを特徴とする穴あけ方法。
【請求項2】
連続する繊維で強化された樹脂を積層する積層体に、貫通穴をあける穴あけ方法であって、
穴あけ前に、前記積層体における穴あけ用工具の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部を除去しておくことを特徴とする穴あけ方法。
【請求項3】
繊維で強化された樹脂を積層する積層体に、貫通穴をあける穴あけ方法であって、
穴あけ前に、前記積層体における穴あけ用工具の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部に、固着剤を塗布しておくことを特徴とする穴あけ方法。
【請求項4】
連続する繊維で強化された樹脂を積層する積層体に、貫通穴をあける穴あけ方法であって、
穴あけ前に、前記積層体における穴あけ用工具の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部に、固着剤を塗布しておくことを特徴とする穴あけ方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の穴あけ方法において、
前記積層体は、前記樹脂が少なくとも3層以上積層されていることを特徴とする穴あけ方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維で強化された樹脂を積層する積層体に貫通穴をあける穴あけ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の車体を構成する各種部材は、取付部に貫通穴があけられ、該貫通穴にボルトが挿通されることにより、他の部材に対して締結される。
【0003】
前記貫通穴を形成する穴あけ方法として、特許文献1には、穴あけ加工の後、裏バリ(ドリル挿入側の反対側に生じるバリ)を除去することができるバリ取り機能付きドリルを用い、金属製の鋼材への穴あけとバリ取りを連続的に行うことが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−231011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、自動車等では金属以外の材料も多く使用されている。特に、連続する繊維で強化された樹脂(繊維強化樹脂、FRP)は、軽量且つ高強度であるためボンネットやルーフ等へと広範に利用されている。この種の繊維強化樹脂が積層され、成形された成形品においても、他部品に組み付けられるためにボルト締結されることが一般的であり、そのため、成形後の2次加工にてドリル等の刃具を用いた穴あけが行われている。
【0006】
このような繊維強化樹脂にドリルを用いて穴あけを行う方法の一例について、図7A〜図7Dを参照して説明する。
【0007】
図7Aに示す積層体100は、連続する繊維で強化された樹脂からなるシートが複数枚積層されて成形された成形品であり、この場合、4枚の繊維強化樹脂シート102〜105が積層され、成形されたものである。
【0008】
先ず、図7Aに示すように、積層体100の上面側、すなわち、最上層の繊維強化樹脂シート102の表面102a側からドリル110により穴あけ加工を開始する。ドリル110は、繊維強化樹脂シート102から、繊維強化樹脂シート103、104へと次第に貫通しながら進行する(図7B参照)。
【0009】
そして、最下層である繊維強化樹脂シート105への穴あけが始まると、図7Cに示すように、該繊維強化樹脂シート105とその上層の繊維強化樹脂シート104との間(層間)で剥離が発生し、該剥離が次第に進展する。最終的には、繊維強化樹脂シート105への穴あけ中に、該繊維強化樹脂シート105が貫通穴112から分断され、直線状に脱落してしまうことになる(図7D参照)。つまり、最下層である繊維強化樹脂シート105を構成する連続する繊維がドリル110の外径刃先で切断されずドリル110の軸線方向に曲げられて、引っ張られ、結果として、前記剥離や亀裂を生じることになる。
【0010】
このことは、不連続な、すなわち切断され、且つある一定以上の長さをもった繊維で強化された樹脂を積層する積層体においても同様に生じる。つまり、最下層である繊維強化樹脂シート105を構成する一定の長さ以上の不連続な繊維がドリル110の外径外刃で切断されずに、ドリル110の軸線方向に押されて、或いは曲げられて、繊維強化樹脂シートを引っ張り、結果として前記剥離や亀裂を生じることになる。さらに、繊維が浮き出るといったよくない現象も生じる。当然のことながら、連続する繊維で強化された樹脂を積層する積層体の方が、前記剥離や亀裂が顕著に現れることになる。
【0011】
以上のように、この種の繊維強化樹脂の積層体からなる成形品への穴あけ加工では、通常、裏側にバリを生じるだけの金属への穴あけ加工の場合とは異なり、ドリル挿入側と反対側の面に、表層剥離や、加工される穴周辺を基点とした亀裂を生じることがある。この場合、連続する繊維からなるものでは、成形品の奥部までもが該繊維により引っ張られ、結局、積層体の表層部が繊維に沿って直線状に剥がされることになる。さらに、繊維が直線状に剥がされることで、積層体には直線状に強度が低下した部分が発生すると共に、成形品の外観が損なわれるという問題もある。
【0012】
本発明は上記課題を考慮してなされたものであり、繊維で強化された樹脂を積層する積層体であっても、大幅な強度低下や外観の損失を生じずに、所望の穴あけを容易に行うことができる穴あけ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る穴あけ方法は、繊維で強化された樹脂を積層する積層体に、貫通穴をあける穴あけ方法であって、穴あけ前に、前記積層体における穴あけ用工具の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部を除去しておくことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る穴あけ方法は、連続する繊維で強化された樹脂を積層する積層体に、貫通穴をあける穴あけ方法であって、穴あけ前に、前記積層体における穴あけ用工具の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部を除去しておくことを特徴とする。
【0015】
このような方法では、穴あけ前に前記表層部を予め除去しておくことにより、該表層部に含まれる繊維を破断させておく。これにより、前記除去された表層部に対応する部分で実質的に最下層となる樹脂を、他の樹脂や前記最下層となる樹脂自身により支承することができる。従って、前記最下層となる樹脂で生じる剥離は極僅かなもので済み、積層体の外観への影響もほとんど生じることがない。
【0016】
さらに、本発明に係る穴あけ方法は、繊維で強化された樹脂を積層する積層体に、貫通穴をあける穴あけ方法であって、穴あけ前に、前記積層体における穴あけ用工具の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部に、固着剤を塗布しておくことを特徴とする。
【0017】
さらにまた、本発明に係る穴あけ方法は、連続する繊維で強化された樹脂を積層する積層体に、貫通穴をあける穴あけ方法であって、穴あけ前に、前記積層体における穴あけ用工具の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部に、固着剤を塗布しておくことを特徴とする。
【0018】
このような方法では、前記積層体の最下層となる樹脂が固着剤により支承することができる。これにより、穴あけ部において前記固着材が実質的な最下層となるため、積層体の最下層を構成する樹脂の剥離は局所的な極僅かなもので済み、積層体の外観への影響もほとんど生じることがない。さらに、前記固着剤による貫通穴周辺部の補強作用も図ることができる。
【0019】
また、前記積層体は、前記樹脂が少なくとも3層以上積層されている場合には、最下層の樹脂の上層である第2層の樹脂と、その上層である第3層の樹脂との間での剥離や、最下層の樹脂と、第2層の樹脂との間での剥離を有効に防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、穴あけ前に穴あけ用工具の挿入側と反対側の表層部を予め除去しておくことにより、実質的に最下層となる樹脂を他の樹脂等により支承した状態で穴あけ加工を行うことができる。
【0021】
また、本発明によれば、積層体の最下層となる樹脂を固着剤により支承しておくことにより、穴あけ部において前記固着材を実質的な最下層とした状態で、穴あけ加工を行うことができる。
【0022】
従って、穴あけ時に生じる剥離は極僅かなもので済み、積層体の外観への影響もほとんど生じることがない。さらに、繊維が直線状に剥がれてしまうことがないため、積層体の強度が大幅に低下することなく、容易に所望の貫通穴を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る穴あけ方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る穴あけ方法により繊維強化樹脂の積層体10に穴あけ加工を行う状態を示す一部省略斜視図である。本第1の実施形態に係る穴あけ方法は、連続する繊維Fで強化した樹脂(繊維強化樹脂)からなるシートを複数枚積層した積層体10に、ドリル12を用いて貫通穴14をあける穴あけ方法である。なお、積層体10を構成するシートのうち、数枚は一定の長さ以上の不連続な繊維で強化された樹脂からなるシートでもよく、全部が不連続な繊維で強化された樹脂でもよく、また、全部が連続する繊維で強化された樹脂でも構わない。そして、本実施形態の場合、前記積層体10は、繊維強化樹脂シートが複数枚積層され、所望の形状に成形された成形品であり、前記貫通穴14は、例えば、ボルトを挿通させて前記成形品を他の部材に取り付けるための取付穴である。
【0025】
以下、連続する繊維により強化された樹脂(FRP)である繊維強化樹脂シートを4枚積層した積層体10に穴あけ加工を施す場合を例示して本第1の実施形態に係る穴あけ方法を説明する。
【0026】
図1に示すように、積層体10は、4枚の繊維強化樹脂シート16〜19が積層された成形品である。
【0027】
図2は、本発明の穴あけ方法を好適に適用可能な繊維強化樹脂シートとして、前記繊維強化樹脂シート16を例示した概略斜視図である。図2に示すように、繊維強化樹脂シート16は、シートの一端から他端までに亘って連続した繊維Fが一方向(例えば、図2中の矢印A方向)に並んだものに樹脂を含浸させ、固めて成形したものである。なお、前記繊維Fとしては、任意の繊維を選択すればよく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ピッチ系繊維、セルロース系繊維、レーヨン、およびその他のポリマー繊維等が挙げられる。また、マトリックスである前記樹脂としては、任意の樹脂を選択すればよく、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、およびその他の熱硬化樹脂または熱可塑性樹脂が挙げられる。この場合、物性改良のために複数の樹脂を混合して用いたものでもよい。
【0028】
次に、本第1の実施形態に係る穴あけ方法を図3A〜図3Eを参照して説明する。なお、本発明の穴あけ方法を好適に適用できる加工品としては、繊維で強化された樹脂の積層体であればよい。この場合、不連続な樹脂で強化された樹脂を積層する積層体であってもよく、連続する繊維で強化された樹脂を積層する積層体の方が、その効果が顕著に現れる。また、上記の繊維以外で強化された樹脂でもよいことは言うまでもない。
【0029】
この穴あけ方法では、ドリル12の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部を除去した後、ドリル12による穴あけ加工を実施する。前記ドリル12は、積層体10の最上層(第4層)である繊維強化樹脂シート16の表面(上面)16a側から該積層体10内へと穴をあけながら挿入される。
【0030】
すなわち、先ず、前記表層部の除去を行うため、積層体10の最下層(第1層)である繊維強化樹脂シート19の表面(下面)19a側からグラインダ22による表層部の除去加工を施す(図3A参照)。これにより、前記表面19a側の貫通穴14が形成されるべき穴あけ部周辺の所望の範囲において、表層部として前記繊維強化樹脂シート19の一部が除去され、略円柱状の凹部である表層除去部24が形成される。
【0031】
前記表層除去部24の深さは、繊維強化樹脂シート19の厚さ分、すなわち、積層体10の1層分とすると、その後の加工性や仕上り状態が一層良好となるため好ましいが、例えば、2層分や0.5層分等に適宜設定可能である。
【0032】
前記表層除去部24の範囲(内径)は、ドリル12の外径(貫通穴14の内径)よりも多少大きく設定するとよく、例えば、ドリル12の外径が3〜5mm程度である場合には、4〜7mm等に設定すればよい。なお、前記表層除去部24の範囲がドリル12の外径よりも小さいと、ドリル12が該表層除去部24に接触するため好ましくなく、ドリル12の外径よりも大きすぎると、積層体10の強度低下等を引き起こす可能性がある。
【0033】
前記グラインダ22は、円柱状の砥石を高速回転させて前記表層部を削り取る構成からなるが、これ以外にも、例えば、外周および端面に刃部を有するフライスを用いてもよい。要は、積層体10の前記表層部を所定部分除去できるものであれば、グラインダ22に代えて用いることができる。
【0034】
次に、図3Bに示すように、最上層(第4層)の繊維強化樹脂シート16の表面16a側からドリル12による穴あけ加工を開始する。ドリル12は、積層体10に貫通穴14を形成しながら進行し、前記繊維強化樹脂シート16を貫通した後、その下層(第3層)の繊維強化樹脂シート17を貫通する。
【0035】
その後、図3Cに示すように、ドリル12の先端が第2層である繊維強化樹脂シート18の上面に到達する。この繊維強化樹脂シート18は、前記表層除去部24に対応する部分では、実質的に最下層(第1層)となっている。
【0036】
従って、第3層である繊維強化樹脂シート18への穴あけ加工が開始され、図3Dに示すように、該繊維強化樹脂シート18をドリル12が貫通する直前、該繊維強化樹脂シート18の表層除去部24に対応する部分では、その上層である繊維強化樹脂シート17との間(層間)で剥離が始まることになる。すなわち、ドリル12の刃先が繊維強化樹脂シート18を抜ける直前、該繊維強化樹脂シート18の一部の強度が極度に低下し、この部分がドリル12の外径刃先で切断されずに軸線方向に曲げられることにより、前記繊維Fが引っ張られ、剥離が引き起こされる。
【0037】
ドリル12の進行に伴って前記剥離はさらに進展し、繊維強化樹脂シート18をドリル12が完全に貫通した状態では、該繊維強化樹脂シート18の前記剥離された部分が表層除去部24の内側に多少垂下した状態となる(図3E参照)。しかしながら、図3Eからも諒解されるように、前記剥離して垂下する部分は、前記表層除去部24に対応する極微小な部分だけで済み、図7Dに示す上記従来の方法のように、最下層が大きく剥離して脱落してしまうことがない。
【0038】
以上のように、本第1の実施形態に係る穴あけ方法では、グラインダ22により積層体10の最下層に表層除去部24を形成しておくことによって、該最下層である繊維強化樹脂シート19の表層除去部24に含まれる部分で予め繊維Fを破断しておくことができる。このため、表層除去部24に対応する部分で実質的に最下層となる第2層の繊維強化樹脂シート18の大部分は、繊維強化樹脂シート19により支承されている。
【0039】
従って、表層除去部24に対応する第2層の繊維強化樹脂シート18の剥離は局所的な極僅かなもので済み、成形品である積層体10の外観への影響もほとんど生じない。また、連続する繊維Fが直線状に剥がれてしまうことがないため、積層体10の強度は十分に保持される。この場合、前記表層除去部24の深さを、例えば、0.5層分とした場合には、最下層である繊維強化樹脂シート19は、該繊維強化樹脂シート19自身により支承され、前記と同様な効果を得ることができる。
【0040】
なお、本第1の実施形態に係る穴あけ方法で貫通穴14が形成された積層体10を、他の部材に締結する際には、例えば、図4に示すように、最下層である繊維強化樹脂シート19の表面19aに締結対象部材26を当接させ、貫通穴14にボルト28を挿通されてナット30と共に締結すればよい。この場合、前記繊維強化樹脂シート18の剥離して垂下した部分や、前記表層除去部24が締結部内側に隠されるため、外観上の問題を生じることがない。また、前記剥離した部分や表層除去部24の範囲は、貫通穴14より多少大きい程度であるため、締結強度上の問題も十分に回避することができる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態に係る穴あけ方法について、図5A〜図5D並びに図6を参照して説明する。
【0042】
図5A〜図5Dは、本発明の第2の実施形態に係る穴あけ方法により繊維強化樹脂の積層体10に穴あけ加工を行う手順を説明するための一部省略断面図である。図6は、本第2の実施形態に係る穴あけ方法により貫通穴14を形成した積層体10を他の部材に締結する様子を示す一部省略断面図である。なお、図5A〜図5D並びに図6において、図1〜図4に示される参照符号と同一の参照符号は、同一又は同様な構成を示し、このため同一又は同様な機能及び効果を奏するものとして詳細な説明を省略する。
【0043】
この穴あけ方法では、ドリル12の挿入側と反対側の穴あけ部周辺の表層部に固着剤を塗布した後、ドリル12による穴あけ加工を実施する。
【0044】
すなわち、先ず、積層体10の最下層である繊維強化樹脂シート19の表面19aに固着剤として接着剤32を塗布する。該接着剤32としては、塗布後に乾燥固化するものが好ましい(図5A参照)。これにより、前記表面19a側の貫通穴14が形成されるべき穴あけ部周辺の所望の範囲に、固着した接着剤32による新たな層を形成することができる。なお、固着剤としては、接着剤32以外にも、塗布後固化し、切断された繊維Fを固着できる力を発揮できるものであればよく、例えば、シーラ等が挙げられる。
【0045】
前記接着剤32の塗布厚さは、繊維強化樹脂シート19を表面19a側から十分に支承できる厚さ、例えば、積層体10の0.2〜1層分程度でよいが、積層体10と接着剤32の間の特性(接着性)等を考慮して適宜設定可能である。
【0046】
前記接着剤32の塗布範囲(外径)は、前記表層除去部24の場合と同様に、ドリル12の外径(貫通穴14の内径)よりも多少大きく設定するとよく、例えば、ドリル12の外径が3〜5mm程度である場合には、4〜7mm等とすればよい。なお、本第2の実施形態の場合には、前記第1の実施形態の場合のように積層体10の表層部を除去するわけではないので、接着剤32の塗布範囲は、ドリル12よりも小さくない限りは、多少大きいものであっても問題はないが、あまり大きすぎると成形品の外観を損ね、他の部材への取付性が阻害される。
【0047】
次に、図5Bに示すように、最上層の繊維強化樹脂シート16の表面16a側からドリル12による穴あけ加工を開始する。ドリル12は、積層体10に貫通穴14を形成しながら進行し、繊維強化樹脂シート16を貫通した後、その下の繊維強化樹脂シート17、18を続けて貫通する。
【0048】
その後、最下層である繊維強化樹脂シート19への穴あけ加工が開始され、図5Cに示すように、繊維強化樹脂シート19をドリル12が貫通する直前、該繊維強化樹脂シート19と接着剤32との間(層間)で剥離が始まることになる。すなわち、ドリル12の刃先が繊維強化樹脂シート19を抜ける直前、該繊維強化樹脂シート19の一部の強度が極度に低下し、この部分がドリル12の外径刃先で切断されずに軸線方向に曲げられることにより、前記繊維Fが引っ張られ、剥離が引き起こされる。
【0049】
ところが、本第2の実施形態の場合、繊維強化樹脂シート19の表面19aにおける貫通穴14の穴あけ部周辺は、予め塗布され固化した接着剤32により支承されている。このため、前記剥離は極微小な部分だけで済み、ドリル12のさらなる進行によって、図5Dに示すように、接着剤32が貫通されると、貫通穴14が形成が完了する。従って、この場合にも、図7Dに示す上記従来の方法のように、最下層が大きく剥離して脱落してしまうようなことがない。
【0050】
以上のように、本第2の実施形態に係る穴あけ方法では、積層体10の最下層である繊維強化樹脂シート19を接着剤32により支承した後、ドリル12による穴あけ加工を行っている。従って、穴あけ部において実質的な最下層となる接着剤32の上層、すなわち、繊維強化樹脂シート19の剥離は局所的な極僅かなもので済み、成形品である積層体10の外観への影響もほとんどない。また、繊維強化樹脂シート19の連続する繊維Fが直線状に剥がれてしまうことがないため、積層体10の強度は十分に保持され、さらに、接着剤32による貫通穴14の周辺部の補強作用も図られることになる。
【0051】
また、本第2の実施形態に係る穴あけ方法で貫通穴14が形成された積層体10を、他の部材に締結する際には、例えば、図6に示すように、最下層である繊維強化樹脂シート19の表面19aに当接する締結対象部材26の表面に凹部26aを設けておき、貫通穴14にボルト28を挿通されてナット30と共に締結すればよい。そうすると、接着剤32の塗布層が前記凹部26a内に収納されるため、積層体10と締結対象部材26とを確実に密着させることができ、また、外観上の問題を生じることがない。
【0052】
上記各実施形態において、前記積層体10の繊維強化樹脂シートの積層枚数は4枚に限られず、2枚以上が積層されたものであればよく、該積層体10を構成するシートのうち、数枚は一定の長さ以上の不連続な繊維で強化された樹脂からなるシートでもよく、全部が不連続な繊維で強化された樹脂でもよく、また、全部が連続する繊維で強化された樹脂でも構わない。この場合、特に3層以上積層された場合には、第2層の繊維強化樹脂シートと、その上層である第3層の繊維強化樹脂シートとの間での剥離等を有効に防止することができる。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る穴あけ方法により繊維強化樹脂の積層体に穴あけ加工を行う状態を示す一部省略斜視図である。
【図2】本発明の穴あけ方法を好適に適用可能な繊維強化樹脂シートを例示した概略斜視図である。
【図3】図3Aは、本発明の第1の実施形態に係る穴あけ方法により繊維強化樹脂の積層体の表層部を除去している様子を示す一部省略断面図であり、図3Bは、図3Aに示す積層体にドリルによる穴あけ加工を行う直前の状態を示す一部省略断面図であり、図3Cは、図3Aに示す積層体にドリルによる穴あけ加工を行っている状態を示す一部省略断面図であり、図3Dは、図3Aに示す積層体の表層除去部にドリルが到達する直前の状態を示す一部省略断面図であり、図3Eは、図3Aに示す積層体に貫通穴をあけた状態を示す一部省略断面図である。
【図4】図3Eに示す貫通穴をあけた積層体を他の部材に締結した状態を示す一部省略断面図である。
【図5】図5Aは、本発明の第2の実施形態に係る穴あけ方法により繊維強化樹脂の積層体の表層部に接着剤を塗布した状態を示す一部省略断面図であり、図5Bは、図5Aに示す積層体にドリルによる穴あけ加工を行う直前の状態を示す一部省略断面図であり、図5Cは、図5Aに示す積層体にドリルによる穴あけ加工を行っている状態を示す一部省略断面図であり、図5Dは、図5Aに示す積層体に貫通穴をあけた状態を示す一部省略断面図である。
【図6】図5Dに示す貫通穴をあけた積層体を他の部材に締結する様子を示す一部省略断面図である。
【図7】図7Aは、従来の穴あけ方法により繊維強化樹脂の積層体に穴あけ加工を行う直前の状態を示す一部省略断面図であり、図7Bは、図7Aに示す積層体にドリルによる穴あけ加工を行っている状態を示す一部省略断面図であり、図7Cは、図7Bに示す状態からさらにドリルが進行した状態を示す一部省略断面図であり、図7Dは、図7Aに示す積層体に貫通穴をあけた状態を示す一部省略断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10、100…積層体 12、110…ドリル
14、112…貫通穴
16〜19、102〜105…繊維強化樹脂シート
16a、19a、102a…表面 22…グラインダ
24…表層除去部 32…接着剤
F…繊維
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成18年11月8日(2006.11.8)
【代理人】 【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏

【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸

【識別番号】100142066
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 直樹

【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫


【公開番号】 特開2008−119762(P2008−119762A)
【公開日】 平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願番号】 特願2006−303299(P2006−303299)