トップ :: B 処理操作 運輸 :: B26 切断手工具;切断;切断機

【発明の名称】 光ファイバの切断装置及び光ファイバの切断方法
【発明者】 【氏名】大村 真樹

【氏名】大塚 健一郎

【氏名】田村 充章

【要約】 【課題】光ファイバの被覆除去工程を不要とし、容易に光ファイバを切断できることのできる光ファイバの切断方法及び切断装置を提供する。

【解決手段】ガラス31と被覆32とを含む光ファイバ30を切断予定箇所CTの両側で把持するクランプ11a,11bと、切断予定箇所CTにおいて光ファイバ30の軸線に対して直交する方向へ移動して被覆32を切り込み、さらに、ガラス31に傷を付与する円板状の刃部材12と、被覆32の切り込みとガラス31の傷付与時に切断予定箇所CTを刃部材12の反対側から所定の圧力で押圧する枕20とを有し、枕20の先端に、刃部材12のスライド方向に沿った溝22が形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスと被覆とを含む光ファイバを切断予定箇所の両側で把持するクランプと、前記切断予定箇所において前記光ファイバの軸線に対して直交する方向へ移動して前記被覆を切り込み、さらに、ガラスに傷を付与する円板状の刃部材と、前記被覆の切り込みと前記ガラスの傷付与時に前記切断予定箇所を前記刃部材の反対側から所定の圧力で押圧する枕とを有する光ファイバの切断装置であって、
前記枕の先端に、前記刃部材のスライド方向に沿った溝が形成されていることを特徴とする光ファイバの切断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ファイバの切断装置であって、
前記溝の幅が1mm以上5mm以下であることを特徴とする光ファイバの切断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ファイバの切断装置であって、
前記枕は、内部に光ファイバ押し曲げ用のサブ枕を備えていることを特徴とする光ファイバの切断装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の光ファイバの切断装置であって、
前記枕先端に光ファイバ位置ずれ防止用の溝が形成されていることを特徴とする光ファイバの切断装置。
【請求項5】
ガラスと被覆とを含む光ファイバを切断予定箇所の両側においてクランプで把持し、前記切断予定箇所において枕により前記光ファイバを押えた状態で前記光ファイバの軸線に対して直交する方向へ円板状の刃部材を移動して前記被覆を切り込み、さらに、前記ガラスに傷を付与した後、前記光ファイバを前記刃部材側へ押し曲げて切断する光ファイバの切断方法であって、
前記枕の先端に前記刃部材のスライド方向に沿って幅1mm以上5mm以下の溝を設けておき、前記ガラスに傷を付与した後、前記刃部材の押し込みによって前記光ファイバを押し込み量50μm以上300μm以下で前記溝に押し込んで切断することを特徴とする光ファイバの切断方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆付きの光ファイバを切断する光ファイバの切断装置及び光ファイバの切断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図14に示すような光ファイバの切断装置及び切断方法が知られている(例えば特許文献1参照)。この光ファイバの切断装置100では、刃101が備えられ、この刃101の両側に、テープ心線102の裸ファイバ103を把持するための上下一対のクランプ104a,104bがそれぞれ備えられている。また、刃101とは反対側には、裸ファイバ103を挟んで、枕部105が上下方向に移動可能に配置されている。
【0003】
この光ファイバの切断装置を用いて光ファイバを切断するには、図14(A)に示すように、各クランプ104a,104b,104a,104bで、裸ファイバ103を把持した後、刃101を裸ファイバ103の長手方向と垂直な方向(図面の表側から裏側に向かう方向)に刃101を移動して裸ファイバ103の表面に傷をつける。そして、図14(B)に示すように、枕部105を図でみて下方向に移動させて、傷が外側になるように裸ファイバ103に外力を加え、劈開によって裸ファイバ103を切断している。
【0004】
【特許文献1】特開平11−264909(図4,図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した特許文献1に記載されているような光ファイバの切断装置及び切断方法では、光ファイバを切断するに際し、専用のリムーバで被覆を除去した後に、専用のカッターでガラスを切断するのが一般的である。光ファイバのコアはシングルモードでφ10μm、マルチモードでφ50〜62.5μmと小さいため、接続損失を小さくするには、マイクロメートルオーダーの位置決め精度が要求される。しかしながら、被覆つきの状態では、被覆の変形及び偏肉のため位置精度が確保しにくい。また、カット端面の状態も接続損失を左右するため、専用工具で鏡面を出すことが要求され、面倒である。
【0006】
また、近年では、光接続の簡易化の要請から、被覆を除去せずに光ファイバの切断を行うことが行われつつある。既存のカッターを用いて光ファイバを切断する場合、まず、被覆に切り込みを入れてからガラス表面に傷を付ける必要がある。ところが、図14(A)に示した状態で被覆に切り込みを入れるには、光ファイバの両側を2つのクランプ104a,104b,104a,104bで把持するだけでは、光ファイバが刃101と反対側へ逃げるため抗力が十分ではなく、ガラス表面に傷を付けることができない。また、ガラスの劈開面を鏡面とするには、光ファイバに適正な張力を付す必要があり、むやみにクランプ力を上げて抗力を増すことができない。
【0007】
本発明の目的は、光ファイバの被覆除去工程を不要とし、容易に光ファイバを切断できることのできる光ファイバの切断方法及び切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することのできる本発明に係る光ファイバの切断装置は、ガラスと被覆とを含む光ファイバを切断予定箇所の両側で把持するクランプと、前記切断予定箇所において前記光ファイバの軸線に対して直交する方向へ移動して前記被覆を切り込み、さらに、ガラスに傷を付与する円板状の刃部材と、前記被覆の切り込みと前記ガラスの傷付与時に前記切断予定箇所を前記刃部材の反対側から所定の圧力で押圧する枕とを有する光ファイバの切断装置であって、前記枕の先端に、前記刃部材のスライド方向に沿った溝が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る光ファイバの切断装置において、前記溝の幅が1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る光ファイバの切断装置において、前記枕は、内部に光ファイバ押し曲げ用のサブ枕を備えていることが好ましい。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバの切断装置において、前記枕先端に光ファイバ位置ずれ防止用の溝が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記課題を解決することのできる本発明に係る光ファイバの切断方法は、ガラスと被覆とを含む光ファイバを切断予定箇所の両側においてクランプで把持し、前記切断予定箇所において枕により前記光ファイバを押えた状態で前記光ファイバの軸線に対して直交する方向へ円板状の刃部材を移動して前記被覆を切り込み、さらに、前記ガラスに傷を付与した後、前記光ファイバを前記刃部材側へ押し曲げて切断する光ファイバの切断方法であって、前記枕の先端に前記刃部材のスライド方向に沿って幅1mm以上5mm以下の溝を設けておき、前記ガラスに傷を付与した後、前記刃部材の押し込みによって前記光ファイバを押し込み量50μm以上300μm以下で前記溝に押し込んで切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバの切断装置及び切断方法によれば、光ファイバの切断に際し、刃部材により被覆を切り込み更にガラスに傷を入れることができるため、光ファイバの被覆を除去する工程を不要とし、簡易な切断作業を可能とすることができる。また、光ファイバのガラスが露出することがないので、切断後の光ファイバの取り扱いが容易となる。また、切断屑の光ファイバもガラスが露出していないので、取り扱いが容易となる。
さらに、刃部材のスライドによって光ファイバの被覆に切り込みを入れ、ガラスに傷を付ける際に、光ファイバを押さえている枕の先端に設けられている溝の両側の壁がクランプと同様の作用を果たすので、光ファイバを把持する間隔を小さくすることができる。このため、刃部材の押し込みに伴う光ファイバの曲げ半径が小さくなるので、少ない押し込み量で光ファイバに所望の抗力を発生することができ、被覆に切り込みを入れるとともにガラスに初期傷を付けることができる。
また、溝の幅を1mm以上5mm以下とするとともに、刃部材の押し込み量を50μm以上300μm以下とすることにより、刃部材の押し込みに伴う光ファイバの曲げ半径が小さくなるので、押し込み量を小さくしても所望の抗力を発生させて光ファイバの切り込み及び初期傷の付与を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の光ファイバの切断装置に係る実施形態の例を示す構成図、図2は刃部材により切断予定位置の被覆に設けた切り込み及びガラスに付与した傷を示す光ファイバの断面図、図3は被覆付き光ファイバの通常の切断方法を示す説明図、図4は切断時における光ファイバの抗力を大きくする方法を示す説明図、図5(A)は刃圧を上昇させた場合の状態を示す説明図、図5(B)は光ファイバの切断面の拡大図、図6(A)は刃圧を上昇させた場合の別の状態を示す説明図、図6(B)は光ファイバの撓み状態を示す拡大側面図、図7は枕によって光ファイバを押圧した切断時の状態を示す説明図、図8は溝付き枕のパラメータの説明図、図9はパラメータを変化させた場合のファイバ押し込み量と荷重との関係を示すグラフである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の光ファイバの切断装置10は、コアとクラッドを有するガラスファイバであるガラス31(図2参照)と、ガラス31の外周を覆う被覆32とを含む光ファイバ30を、切断予定箇所CTの両側で把持するクランプ11a,11bと、切断予定箇所CTにおいて光ファイバ30の軸線に対して直交する方向へ移動して被覆32を切り込み、さらに、ガラス31に傷31aを付与する円板状の刃部材12と、被覆32の切り込み32aとガラス31の傷31a付与時に切断予定箇所CTを刃部材12の反対側から所定の圧力で押圧する枕20とを有している。そして、枕20の先端21に、刃部材12のスライド方向に沿った溝22が形成されている。
【0016】
切断装置10は、断面でみて形状が略コ字状の本体13を備え、この本体13のコ字状の内側で、本体13に対し、光ファイバ30の軸に直交する方向(図面直交方向)にスライド自在なスライダ14を備えている。このスライダ14は、作業者の操作により手動でスライドできてもよく、また、バネ等の弾性部材やモータにより自動的にスライドできるものであってもよい。また、図2に示すように、光ファイバ30は、中心にガラス31を有しており、ガラス31の外側を被覆32で覆ったものである。なお、光ファイバ30は単心のものでも、多心のものでも適用できる。
【0017】
スライダ14には、円板形状をした刃部材12が、締結部材14aを介して取り付けられている。また、刃部材12は、締結部材14aを緩めると上下に調整することができる。この刃部材12の外周縁である刃先12aは、鋭角な形状をしており、この鋭利な刃先12aで図2に示すように光ファイバ30の被覆32に切り込み32aを入れたり、ガラス31の表面に傷31aをつけたりすることができる。刃先12aは、被覆32の切り込み32aやガラス31表面の傷31aを付与する作業を繰り返すことで、鋭角でなくなる、すなわち、切れにくくなることがある。このような時は、締結部材14aを緩めたり、解除して刃部材12を回転させてやることで、鋭利な刃先12aを光ファイバ30の被覆32やガラス31にあてることができる。
なお、刃部材12は、超鋼製で直径(2R)が20mm、刃先12aの角度が60°の丸刃であると良い。先端角度は30°〜90°の範囲で被覆の切断面をきれいにカット(変形小)とするためには鋭角(30°)が好ましい。
【0018】
刃部材12を挟んだところの本体13の両側には光ファイバ30を把持する下クランプ11a,11aが設けられ、この下クランプ11aの上部先端には下ゴム15a,15aが装着されている。下クランプ11a,11aの上側に対向して上クランプ11b,11bが設けられ、この上クランプ11b,11bは上部でつながって門型形状となっている。上クランプ11b,11bはその下方先端に上ゴム15b,15bが装着されているとともに、図1における上下方向に移動可能である。光ファイバ30を把持するときに上クランプ11b,11bを上方向に移動させ、光ファイバ30を下クランプ11a,11aに載せた後、上クランプ11b,11bを下方向に移動させて上下ゴム15a,15bで光ファイバ30を挟み込んで把持する。この上下のゴム15a,15bにより、光ファイバ30を確実に把持するとともに、光ファイバ30の不用意な変形を防止することができる。
【0019】
前後の上クランプ11b,11bの間にはガイド部17が上下方向に設けられており、このガイド部17には、光ファイバ30に側圧を作用させたり、ガラス31の劈開の際に外力を作用させたりすることができる枕20が上下方向に移動可能に配置されている。この枕20は切断予定位置CT(図2参照)に設けられていて、ばね23によって下方へ付勢されている。すなわち、枕20は光ファイバ30を挟んで刃部材12と対向している。
【0020】
このような切断装置10を用いて多心の被覆付き光ファイバ30を切断する場合には、図3に示すように、ある一定以上の抗力を光ファイバ30に発生させて光ファイバ30が浮き上がらないようにすることが必要である。そのためには、外部から光ファイバ30に応力を付与する方法があるが、多心の光ファイバ30においては、光ファイバ30ごとにばらつきをなくすことが困難であり、各光ファイバ30自身で抗力を発生させるような簡易な構造が望ましい。
【0021】
そこで、抗力を大きくする方法として、図4に示すように以下の2つが考えられる。
(1)刃圧(すなわち、刃部材12の刃先12aによって光ファイバ30を押し上げる距離)を大きくする。
(2)クランプ間隔を狭める。
【0022】
(1)に示す刃圧を大きくする場合には、刃導入時の光ファイバ押し上げ量が大きくなるため、図5に示すように、刃部材12が光ファイバ30に対して側方から入り、初期傷31aが押し曲げ方向(図5(B)において真下)に対して斜め方向に形成されるおそれがあり、平滑な切断面が得られない場合がある。また、光ファイバ30にねじれ力が作用して、被覆32の変形が大きくなるおそれがある。さらに、図6に示すように、刃部材12が光ファイバ30を押し上げた際に、クランプ11a,11a間で光ファイバ30が撓む(図6(B)参照)ため、切断面の一部に圧縮応力が作用するおそれがあり、好ましくない。
一方、(2)に示すクランプ間隔を狭めた場合には、同じ押し込み量でも光ファイバの曲げ半径が小さくなるので、低い刃圧で必要な抗力を得ることも可能となるが、クランプ間隔を狭めるのは装置の構造上限界がある。
【0023】
そこで、本実施形態では、刃圧を上げることなく、また、クランプ間隔を狭めることもなく、簡易な構造で光ファイバ30へ一定の抗力を発生させるために、図7に示すように、枕20の先端21に溝22を設ける構造としている。すなわち、枕20は、例えば、矩形断面の柱状部材であり、先端に刃部材12のスライド方向に沿った溝22が設けられているので、光ファイバ30を押圧した際に、溝22の両側の壁24,24がクランプの作用を果たす。このため、光ファイバ30のクランプ間隔を容易に狭めることができる。
【0024】
図8に示すように、枕20の溝22の幅をW、切断時における光ファイバ30の押し込み量をδBとする。図9には、Wを変化させたときの、押し込み量δBと抗力Fとの関係を示している。ここでは、光ファイバ30として、被覆付きの細径ファイバ(被覆/ガラス=125μm/80μm)を用い、クランプによる張力T=2Nとした。また、被覆付きの細径ファイバに適切な初期傷を付与できる刃荷重を50gf前後とした。その結果、図9に示すように、標準のクランプ間隔(W=10mm)とした場合には、押し込み量δBは500μm以上と非常に大きくなる。また、枕20の溝幅Wを小さくするにしたがって、光ファイバ30の押し込み量δBが小さくて良いことがわかる。このため、押し込み量は小さいことが望まれるが、被覆変形を極力小さくすべきであるという観点から、枕20の溝22幅Wは、1mm以上5mm以下が適当といえる。
【0025】
上記実施形態の光ファイバの切断装置及び光ファイバの切断方法によれば、刃部材12のスライドによって光ファイバ30の被覆32に切り込み32aを入れ、ガラス31に傷31aを付ける際に、光ファイバ30を押さえている枕20の先端に設けられている溝22の両側の壁24がクランプ11と同様の作用を果たすので、光ファイバ30を把持する間隔を小さくすることができる。このため、刃部材12の押し込みに伴う光ファイバ30の曲げ半径が小さくなるので、少ない押し込み量で光ファイバ30に所望の抗力を発生することができ、被覆32に切り込み32aを入れるとともにガラス31に初期傷31aを付けることができる。
【0026】
(第1実施例)
次に、第1実施例について説明する。図10(A)〜(D)には、前述した溝22が設けられた枕20を用いた光ファイバの切断方法を示している。
まず、図10(A)に示すように、光ファイバ30をクランプ11a,11bで把持して、枕20の下面を光ファイバ30に当接する。次いで、図10(B)に示すように、刃部材12をスライドさせて、被覆32に切り込み32aを入れるとともに、ガラス31に初期傷31aを付与する。このとき、前述したように、枕20の先端21の溝22の両側の壁24,24が光ファイバ30を押さえて実質的なクランプ間隔を短くするため、刃部材12による押し上げ量が小さくても、所望の抗力を得ることができる。その後、図10(C)に示すように、枕20を落下させて、ガラス31を劈開し、図10(D)に示すように光ファイバ30の切断を行う。
【0027】
(第2実施例)
次に、第2実施例について説明する。前述したように、切断面全面にわたって平滑な鏡面を得るためには、初期傷31aを破断起点として、切断面は全て引っ張り応力が作用した状態で破断することが望まれる。このため、この実施例は、枕20の内部、例えば溝22の内部にサブ枕25を上下移動自在に設け、ばね26によって下方へ付勢したものである。
【0028】
図11(A)〜(D)には、このような枕20及びサブ枕25を用いた光ファイバの切断方法を示している。
まず、図11(A)に示すように、光ファイバ30をクランプ11a,11bで把持して、枕20の下面を光ファイバ30に当接する。このとき、サブ枕25は溝22の内部で上方へ保持されていて、光ファイバ30には接触していない。次いで、図11(B)に示すように、刃部材12をスライドさせて、被覆32に切り込み32aを入れるとともに、ガラス31に初期傷31aを付与する。このとき、前述したように、枕20の先端21の溝22の両側の壁24,24が光ファイバ30を押さえて実質的なクランプ間隔を短くするので、刃部材12による押し上げ量が小さくても、所望の抗力を得ることができる。その後、図11(C)に示すように、サブ枕25を落下させて、ガラス31を劈開し、図11(D)に示すように光ファイバ30の切断を行う。
【0029】
図12には、図11のようにして光ファイバ30を切断した際の、光ファイバ30のガラス31における応力分布を示している。
図12(A)に示すように、光ファイバ30のガラス31の断面は、半径がaである。したがって、外側面から距離aの位置がガラス31の中立軸である。前述したように、切断面は全て引っ張り応力で破断することが望まれる。図12(B)に示すように、光ファイバ30を曲げる前は、張力Tが光ファイバ30の全断面に略一定に作用する(図12(B)中(1))ため、全断面で一定の引っ張り応力が生じている。
【0030】
光ファイバ30の曲げが進行するに従い、ガラス31の外側から内側へ向かって(すなわち、中立軸を中心として回転(図中矢印A)して)応力の傾斜が発生する。そして、ガラス31の外側の応力が破断可能な応力(Z0)に達した時点(図12(B)中(2))でガラス31が劈開する。このとき、図12(B)中(3)で示すように、ガラス31断面の一部に圧縮力が作用している場合には、平滑な切断面が期待できない。また、ガラス31の径が小径になるほど、応力の傾きを大きくする必要がある(図12(B)中(4))。すなわち、ガラス31が小径の場合ほど光ファイバ30を小さい半径で曲げる必要があり、このため枕20の溝22の幅を小さくする必要がある。
【0031】
このように、枕20の溝22の内部にさらに上下動するサブ枕25を設けたため、枕20によって光ファイバ30を小さく曲げた状態で刃部材12のスライドによって被覆32を切り込み、ガラス31に初期傷31aを付けた後、サブ枕25を落下させることにより、初期傷31aを破断起点として切断面を全て引っ張り状態で破断させることができる。これにより、切断面全面にわたって平滑な鏡面を得ることができる。
【0032】
次に、枕20の先端面形状の好適な例について説明する。
図13に示すように、枕20の先端面21に、多心の光ファイバ30の各光ファイバ30の位置ずれを防止するための溝として例えばV溝27が設けられている。なお、V溝27の形状は、V溝27内に光ファイバ30を収容した際に、少なくとも初期傷31aを設けるガラス31部分が枕20の先端面21から下方に突出するものとする。
このように、光ファイバ30を押える枕20の先端面21に、光ファイバ30の位置ずれを防止するV溝27を設けているため、刃部材12のスライドによって被覆32を切り込み、ガラス31に初期傷31aを付ける際に、光ファイバ30がスライド方向に逃げるのを防止することができる。
【0033】
以上説明した光ファイバの切断装置及び光ファイバの切断方法によれば、刃部材12により、被覆32を切り込み更にガラス31に傷を入れることができるため、被覆32を備えた光ファイバ30の状態で切断作業を行うことができる。また、切断する際に光ファイバ30のガラス31が露出することがないので、切断後の光ファイバ30の取り扱いが容易となる。また、切断屑となる光ファイバもガラスが露出せず、後処理などの取り扱いが容易となる。
さらに、光ファイバ30を押さえている枕20の先端に設けられている溝22の両側の壁24がクランプ11と同様の作用を果たすため、刃部材12の押し込みに伴う光ファイバ30の曲げ半径が小さくなり、少ない押し込み量で被覆32に切り込み32aを入れるとともにガラス31に初期傷31aを付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の光ファイバの切断装置に係る実施形態を示す構成図である。
【図2】刃部材により切断予定位置の被覆に設けた切り込み及びガラスに付与した傷を示す光ファイバの断面図である。
【図3】被覆付き光ファイバの通常の切断方法を示す説明図である。
【図4】切断時における光ファイバの抗力を大きくする方法を示す説明図である。
【図5】(A)は刃圧を上昇させた場合の状態を示す説明図、(B)は光ファイバの切断面の拡大図である。
【図6】(A)は刃圧を上昇させた場合の別の状態を示す説明図、(B)は光ファイバの撓み状態を示す拡大側面図である。
【図7】枕によって光ファイバを押圧した切断時の状態を示す説明図である。
【図8】溝付き枕のパラメータの説明図である。
【図9】パラメータを変化させた場合のファイバ押し込み量と荷重との関係を示すグラフである。
【図10】溝が設けられた枕を用いた光ファイバの切断方法の各工程を示す説明図である。
【図11】枕にサブ枕を設けた場合の光ファイバの切断方法の各工程を示す説明図である。
【図12】(A)は光ファイバのガラスを曲げた状態を示す説明図、(B)はガラスにおける応力分布を示すグラフである。
【図13】先端面に溝を設けた枕の正面図及び溝の拡大図である。
【図14】従来の光ファイバの切断方法の工程図である。
【符号の説明】
【0035】
10 切断装置
11a,11b クランプ
12 刃部材
20 枕
22 溝
25 サブ枕
27 位置ずれ防止用の溝
30 光ファイバ
31 ガラス
31a 傷
32 被覆
32a 切り込み
CT 切断予定箇所
【出願人】 【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
【出願日】 平成18年10月4日(2006.10.4)
【代理人】 【識別番号】100116182
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 照雄

【識別番号】100135194
【弁理士】
【氏名又は名称】林 智雄


【公開番号】 特開2008−87137(P2008−87137A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−273373(P2006−273373)