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【発明の名称】 ダイカットロール
【発明者】 【氏名】指宿 耕一

【氏名】江口 庄司

【氏名】北原 浩平

【氏名】徳本 啓

【氏名】坂口 茂也

【要約】 【課題】切断すべき製品の形状に合わせて刃先を形成した凸状押切刃を回転駆動ロールの表面に設けたダイカッターと、このダイカッターの凸状押切刃の刃先を受けるアンビルロールとからなるダイカットロールにおいて、運転初期の、前記凸状押切刃の刃先の微少なチッピングの発生を低減して長寿命化を図る。

【構成】ダイカッターの凸状押切刃の刃先に、表面粗度Raが0.1μm以下の仕上げ傾斜面4を形成する。また、ダイカッターの軸方向に形成された刃先の刃幅と頂角を、同じくダイカッターの周方向に形成された刃先の刃幅と頂角より小さく形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断すべき製品の形状に合わせて形成した凸状押切刃を回転駆動ロールの表面に設けたダイカッターと、このダイカッターの凸状押切刃の刃先を受けるアンビルロールとからなるダイカットロールにおいて、前記凸状押切刃の刃先の先端平滑部に隣接する稜面に、表面粗度Ra0.1μm以下の仕上げ傾斜面を形成したことを特徴とするダイカットロール。
【請求項2】
前記ダイカッターの軸方向に形成された凸状押切刃の刃幅と頂角を、それぞれ、同じくダイカッターの周方向に形成された凸状押切刃の刃幅と頂角より小さくしたことを特徴とする請求項1記載のダイカットロール。
【請求項3】
ダイカッターの軸方向に形成された刃先の刃幅daと頂角θa、および、周方向に形成される凸状押切刃の刃幅dcと頂角θcが、それぞれ、以下の条件を満たすことを特徴とする請求項2記載のダイカットロール。
5≦da≦10μm、 60≦θa≦120度
10≦dc≦30μm、 80≦θc≦140度、θa≦θc
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、紙おむつ、サニタリーナプキンなどのシート状製品の裁断に使用するダイカットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
このダイカットロールは、図3に示すように、切断すべき製品の形状に合わせて形成した凸状押切刃10を回転駆動ロールの表面に設けたダイカッターAと、その下方にダイカッターの凸状押切刃の刃先を受けるアンビルロールBとを配置したものであり、両ロールの間に切断すべきシート状ワークPを走行させ、ダイカッターAをアンビルロールBに押圧して回転させることによって、凸状押切刃10によりシート状ワークPを所定の形状に切断する構造とされている。
【0003】
ダイカットロールにおける切断は、凸状押切刃10の鋭利な刃先を回転する硬質のアンビルロールBの表面に押圧してシート状ワークPを切断する特殊な方式であるため、その刃先は短命である。
【0004】
そのため、従来から凸状押切刃の刃先の切断性能の改善とともに長寿命化のための試みが多く行われている。たとえば、特許文献1には、凸状押切刃の押圧先端とアンビルロールの表面との硬さの関係がその寿命に影響することから、両方の硬度差をHrA0.1以上とすることによってその寿命を10倍以上延ばすことが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には刃先の形状面からの長寿命化が開示されており、刃先の幅を、回転駆動ロールの軸方向部分を周方向部分よりも小さくすることによって長寿命化できることが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、動径に対する刃先両斜面の角度をα、β(ここで、頂角はα+βとなる)とすれば、α≠βとし、0≦α≦60度、25≦β≦80度、5≦β−α≦80度とすることにより、切刃の強度を損なうことなく、その切れ味を向上させる技術が開示されている。
【特許文献1】特許第2593570号公報
【特許文献2】特開平8−71999号公報
【特許文献3】特開平9−267299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は凸状押切刃の刃先において運転初期に発生する微少なチッピング(欠損)が、ダイカットロールの短寿命の原因となるという観点から長寿命化の課題に取り組んだものである。
【0008】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、このような従来のダイカットロールにおける凸状押切刃の刃先の運転初期の微少なチッピングの発生を低減し、ダイカットロールを長寿命化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、従来の凸状押切刃の刃先の微少なチッピング発生の原因を解明してそれに対応する手段を確立した。
【0010】
図4は、従来のダイカッターの凸状押切刃の刃先の形態を示すもので、その刃先は、20μmから50μmの幅d1を有し、その表面粗度Raが0.3μm程度の先端平滑部1と、それに続く表面粗度Raが2.0μm程度の研削傾斜面2と焼結生地面3から形成される。また、その刃先の頂角θ1は、図3に示す回転駆動ロールの軸方向部分a、周方向部分bのいずれにおいても一定になっている。
【0011】
さて、このような従来のダイカッターの凸状押切刃の刃先においては、運転初期において微少なチッピングが発生する。
【0012】
このような微少なチッピングが発生する原因は、図4に示す従来の凸状押切刃の刃先の研削傾斜面2に存在する、先端平滑部を構成する稜線と平行なミクロ的なノッチによるものであることがわかった。ノッチはマニシングセンターで稜線と平行に研削する際に形成される。そして、ダイカットロールの運転の初期段階においては、ダイカッターの軸方向に形成されている凸状押切刃がアンビルロールと接する際に、このノッチが刃先における微小なチッピングを誘発し、これが切断性能の低下とともに、ダイカットロールを短寿命化に至らしめる。
【0013】
また、この他に従来のダイカットロールの短寿命の原因としては、凸状押切刃がアンビルロールと接する際に、ダイカッターの軸方向の刃先の接触面圧が、周方向の刃先の接触面圧に比べ、非常に小さいことが挙げられる。これは、軸方向の刃先の刃幅を周方向の刃先の刃幅よりも小さくすることによって、ある程度軽減できる。しかし、運転中、軸方向に形成する刃先の先端平滑部が摩耗することにより、その刃幅が僅かに拡大すると、加工物の切断に必要な接触面圧が得られず、軸方向部分の刃先の切れ味が悪くなることがわかった。いずれの場合も、ダイカットロールの切断性能を維持させるためにおこなうアンビルロールの位置調整等による加圧のサイクルが、特に運転初期において短くなり、結果的に短寿命となる。特にこの傾向が著しい場合、周方向に形成された刃先では、過大な接触面圧のために、寿命を左右するような致命的な欠け(割れ)が発生する恐れがある。
【0014】
これらの要因の解析から、先端平滑部に隣接して、刃先とアンビルロールとが接する際に生じる応力に耐え得る面を備えることが有効であり、その手段として、表面粗度Raが0.1μm以下の仕上げ傾斜面を形成することが、運転初期の段階において微少なチッピングの発生に効果的であることがわかった。
【0015】
また、運転初期における軸方向及び周方向に形成される刃先の接触面圧を適正なものとし、長時間の加圧サイクルを達成するためには、上記特許文献2に開示されているような軸方向の刃先の刃幅を周方向の刃幅よりも小さくすることのみでは不十分であり、すなわちダイカッターの軸方向に形成された凸状押切刃の刃幅と頂角が、同じくダイカッターの周方向に形成された凸状押切刃の刃幅と頂角より小さくすること、好ましくは、ダイカッターの軸方向に形成された刃先の刃幅daと頂角θa、および、周方向に形成される凸状押切刃の刃幅dcと頂角θcが、それぞれ、5≦da≦10μm、60≦θa≦120度、10≦dc≦30μm、80≦θc≦140度、θa≦θcの条件を満たすことが効果的であることがわかった。これにより、わずかに刃先が摩耗した時であっても、頂角θaが小さいので、軸方向部分の刃幅の拡大が小さく、したがって切れ味を長持ちさせることが可能となる。
【0016】
さらに、表面粗度Raが0.1μm以下の仕上げ傾斜面を形成し、なおかつ、刃幅と頂度をコントロールすればより一層の効果を奏することを見出した。上記特許文献3には、前記の仕上げ傾斜面がなく、しかも頂角が小さすぎる場合もあるので、このような効果は期待できない。
【0017】
それぞれダイカッターとアンビルロールを構成する材料としては、WC基合金等の超硬合金、Ti基合金等のサーメット、高速度鋼(ハイス)、Al系・ZrO系・SiC系・Si系のセラミックス等の硬質材料を使用できるが、そのうち特にWC基合金、Ti基合金等のカーバイドボンドの硬質材料の使用が好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以下の効果を奏する。
【0019】
(1) ダイカッターの特に軸方向に形成される凸状押切刃の刃先の微少なチッピングが無くなり、また、先端平滑部が摩耗により刃幅が拡大しても切断性能を維持でき、ダイカットロールの長寿命が達成できる。
【0020】
(2) 特に運転初期段階での加圧サイクルが長くなり、ダイカットロールの長寿命化が達成できる
(3) 刃先の異常摩耗がなく、切れ味も持続できる。
【0021】
(4) 軸方向に形成される凸状押切刃の刃幅を小さくすることによって、必要な接触面圧が得られるので、従来よりも初期荷重を低く設定することができ、ダイカットロールの長寿命化が達成できる。
【0022】
(5) 刃先形状の面から、刃先のチッピングの防止、ダイカットロールの長寿命化を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図3に示す切断すべき製品の形状に合わせて形成した凸状押切刃10を有するダイカッターAに適用した例について説明する。
【0024】
図1は、凸状押切刃10の刃先の形態を示すもので、図4に示す従来の凸状押切刃における先端平滑部1と、マシニングセンターによって稜線と平行(同じ方向)に研削した研削傾斜面2との間に、先端平滑部1の長手方向に対して、直角に研削加工を施した仕上げ傾斜面4を形成している。図1に示す仕上げ傾斜面4はマシニングセンターによって一旦仕上げられた刃先をさらに先端平滑部1を形成する稜線と垂直な方向に研削加工したものであり、仕上げ傾斜面4は、先端平滑部1を形成する稜線に対して50゜〜90゜の範囲の角度φで傾斜した研削筋41を有している。前記角度φは、80゜〜90゜の範囲がより好ましい。なお、図1における仕上げ傾斜面の表面粗度Raは0.3μm以下とされている。
【0025】
また、図1においては、凸状押切刃10の刃先は、先端平滑部の刃幅d、及び、先端平滑部1を挟んで対称な仕上げ傾斜面4からなる頂角θが、それぞれ以下の特定条件を満たすように形成される。しかも、図4に示すダイカッターAの軸方向aにおける刃幅、頂角をそれぞれdaとθa、同じく周方向における刃幅、頂角をdcとθcとすると、それぞれの刃幅da及びdcと頂角θa及びθcは異なる値に特定される必要がある。
【0026】
その特定条件は、以下の通りである。
【0027】
5≦da≦10μm、 60≦θa≦120度
10≦dc≦30μm、 80≦θc≦140度、 θa≦θc
ここにおいて、ダイカッターAの軸方向aにおける刃幅daは、必要な接触面圧を得るために小さくする必要があり、da≦10μmとしている。しかし、da<5μmであるとチッピングが生じるので上記の範囲が好ましい。また、ダイカッターの周方向においては接触面圧が高いためにチッピングが生じる恐れがあるので、dcを大にする必要がある。
【0028】
また、θaは、摩耗によって、刃幅があまり拡大しないようにθa≦120度としている。一方、θa<60度であると、チッピングを生じやすくなる。これに対して、ダイカッターの周方向においては接触面圧が高いためにチッピングが生じる恐れがあるので、θcを大にする必要がある。
【0029】
加工物をサニタリーナプキン用の約1mm厚のポリエチレンフィルムとし、daとdcをそれぞれ10μm、20μmに、また、θaとθcをそれぞれ100度、110度に設定した本発明のダイカットロール、一方、d1が20mm、θ1が90度であり、軸方向及び周方向とも同じ刃幅及び頂角である従来の刃を使用して、前記フィルムを図3に示す形状に切断したときの両ダイカットロールの寿命差を図2に示す。同図は、所定の刃先形状に形成されたWC−Co超硬合金製ダイカッターとアンビルロールとの組合せにより構成された各種ダイカットロールを製作し、テスト運転することによって得たものである。同図の縦軸はアンビルロールをダイカッターに押圧する加圧力を、横軸にダイカットロールの寿命を示す。同図において、ケース1とは従来のダイカットロールにおいて運転初期におけるミクロ的なノッチが発展してダイカッターの軸方向部分の切刃が破断した状態になったことを意味し、また、ケース2とは、従来のダイカットロールの運転初期において、ダイカッターの軸方向部分の刃先は微細なピッチングを繰り返すが切刃の破断までには至っていない状態を示す。
【0030】
従来のダイカットロールにおいては、特に運転初期の段階で、(1)研削傾斜面に稜線と平行にミクロ的なノッチが存在するため、軸方向部分の刃先がアンビルロールと接触する際に微細なチッピングが生じやすく、切断性能が低下する、(2)軸方向に形成された刃先の先端平滑部が摩耗し、刃幅が拡大することによって、切断に必要な接触面圧が不足し、切れ味が悪くなる、等の状況が発生する。これを改善すべく、軸方向部分の刃先の接触面圧を上げるためにアンビルロールの位置調整を行うと、再び刃先の切断性能は向上もしくは復帰するが、加圧のサイクルが短くなり、これは結果的にダイカットロールの寿命に影響する。
【0031】
さらに、軸方向と周方向部分における刃先の接触面圧の差が大きくなることを回避すべく、短いサイクルのうちにアンビルロールの加圧力を極端に上げていこうとすれば、周方向に形成された刃先では、過大な接触面圧が生じ、最悪の場合、寿命を決定づけるような欠け(割れ)が生じる恐れがある。
【0032】
なお、運転中期の段階では、刃先の先端平滑部および研削傾斜面の摩耗により、研削傾斜面に存在したミクロ的ノッチは軽減し、微細なチッピング発生率は減少するため、アンビルロールの加圧サイクルは、運転初期に比べれば長い。
【0033】
これに対して、本発明によれば、アンビルロールの加圧サイクルは、従来に比べ長くなり、ダイカットロールの寿命は、従来のものに比べ、約1.5倍の長寿命を達成することができた。
【0034】
この効果はダイカットロールに、前記ダイカッターの凸状押切刃の刃先が、先端平滑部と研削傾斜面との間に、先端平滑部に対して、50゜〜90゜、好ましくは80゜〜90゜の方向に研削筋を有するように研削加工を施し、平面粗度Raが0.3μm以下の仕上げ傾斜面を有することと、刃先の刃幅及び頂角の規定条件とを複合したことによるものであるが、それぞれの条件を単独に適用した場合も、程度の差こそあれ、それぞれに効果があることも確認されている。
【0035】
また、仕上げ傾斜面の研削方向が先端平滑部1の稜線に対して直角方向ではない場合には、表面粗度Raを0.1μm以下とすることによっても同様の効果を得ることができる。仕上げ傾斜面の表面粗度Raを0.1μm以下とすることによって、微細なチッピングを誘発するようなミクロ的なノッチが存在しなくなるためである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のダイカッターの表面に設けた凸状押切刃の刃先を示す。
【図2】本発明のダイカットロールの寿命を従来のダイカットロールの寿命との対比で示す。
【図3】ダイカットロールの一般的な構成を示す。
【図4】従来のダイカッターの表面に設けた凸状押切刃の刃先を示す。
【符号の説明】
【0037】
10 凸状押切刃 A ダイカッター B アンビルロール
1 先端平滑部 2 研削傾斜面 3 焼結生地
4 仕上げ傾斜面 41 研削筋
d 先端平滑部刃幅 θ 刃先の頂角
【出願人】 【識別番号】000229173
【氏名又は名称】日本タングステン株式会社
【出願日】 平成19年11月19日(2007.11.19)
【代理人】 【識別番号】100082164
【弁理士】
【氏名又は名称】小堀 益

【識別番号】100105577
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 隆人


【公開番号】 特開2008−62380(P2008−62380A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2007−299301(P2007−299301)