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【発明の名称】 裁断刃
【発明者】 【氏名】有北 礼治

【要約】 【課題】裁断部分での裁断刃の温度上昇を抑え、積層されたシート材の溶着を防止することが可能な裁断刃を提供する。

【構成】裁断刃1には、本体部5に、溝10が設けられる。溝10は、裁断刃1の他側方、すなわち峰側に開口し、深さが一定である深さ一定部11と、その両端で深さが変化する上端部12および下端部13とを有する。自動裁断機では、被裁断材を載置する裁断テーブルの下方から吸引して被裁断材を裁断テーブル上に固定する状態で裁断が行われるので、溝10を吸気が通過し、冷却が効率よく行われる。溝10が開口するのは、裁断刃1の背面側であるので、被裁断材との接触はなく、吸気の通路は確保される。裁断刃1の背面側に溝10を設けることによって、裁断刃10の放熱面積が増加し、放熱面と発熱部との距離も短縮され、効率的な冷却が可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
楔形断面を有する直刀状で、テーブル上に載置される積層されたシート材に上方から貫通させ、往復動しながら楔形断面の一側方に形成される刃先でシート材を裁断する裁断刃において、
該楔形断面の他側方に開口する溝を、該刃先でシート材を裁断する部分の範囲内で、該楔形断面の内部に有することを特徴とする裁断刃。
【請求項2】
前記楔形断面は、前記他側方側に、厚みが一定の部分を有し、
前記溝は、該厚みが一定の部分内に形成されていることを特徴とする請求項1記載の裁断刃。
【請求項3】
前記溝は、前記往復動しながらシート材を裁断する部分の範囲が一定の深さに形成され、該範囲の上端では深さが該範囲から離れるに伴って減少するように形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の裁断刃。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を積層状態で裁断する自動裁断機などに使用する裁断刃に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、裁断テーブル上に積層状態のシート材を保持しながら、予め設定されるデータに従ってシート材を裁断する自動裁断機には、上下動させる裁断刃を備える形式のものが広く使用されている(たとえば、特許文献1参照。)。裁断刃は、裁断テーブルの表面に沿って二次元的に移動可能な裁断ヘッドから垂下して、積層状態のシート材を貫通しながら、楔形断面形状の一側方に設けられる刃先側でシート材を裁断する。裁断刃の刃先や、刃先に隣接する側面は、シート材に密着する状態で上下動し、摩擦熱を発生する。摩擦熱の発生量が多くなると、裁断刃の周囲のシート材の温度が上昇する。シート材として、ナイロンやポリエステル等の合成繊維材料や、糊付の芯地などが使用される場合、裁断箇所が溶着するおそれがある。裁断箇所が溶着すると、積層状態のシート材を、個々のシート材に分離することが困難になったり、さらには不可能になったりする。
【0003】
特許文献1に開示されている裁断刃は、刃先が両側に平面状の切刃面を伴う裁断刃先頭部となり、大略的に楔形の断面形状を有する。断面形状の側面には、切刃面と本体部分との間で、凹部が形成される。凹部を設けることによって、裁断刃の剛性を低下させることなく、被研磨部の体積を小さくして、研磨時間の短縮や裁断時の抵抗の緩和を図ることができる。裁断中のシート材を保持するための吸引作用を受けて、凹部を通って外部からの空気が流入し、裁断の際に摩擦で発熱する部分を冷却し、シート材同士の溶着を防ぐような効果を有することが期待される旨も記載されている。
【0004】
裁断刃となる衝撃カッタを支持する支持部材内に冷却路を設けて、冷却路に冷風を導入して衝撃カッタおよび支持部材を冷却する扁平材料用裁断機も開示されている(たとえば、特許文献2参照。)。また、裁断刃を中空に形成し、側面に中空部分に連通する孔を設けて、中空部分に冷気を供給して孔から放出させ、裁断部分を冷却する布地裁断中空多孔刃も開示されている(たとえば、特許文献3参照。)。さらに、布裁断ナイフの側面に凹凸部を設ける技術も開示されている(たとえば、特許文献4参照。)。特許文献4の明細書には、往復動に伴う空気の流れで、生地と接触しなくなって溶着が生じなくなる旨も記載されている。
【特許文献1】特開平5−84693号公報
【特許文献2】特開昭62−213994号公報
【特許文献3】特開2000−42992号公報
【特許文献4】実開平2−107487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、切刃面から本体部の間に凹部を設ける構成では、被研磨部の体積を小さくして研磨時間を短縮し、裁断時の抵抗を緩和する効果は充分にあるけれども、凹部を通る空気による冷却は充分ではない。特に、特許文献1の図7に示すように、裁断刃が被裁断材に突入して上下動しながら進行すれば、切り裂いた被裁断材の生地面が裁断刃の凹部を含む斜面に沿って密着するので、凹部からの空気の流入は少なくなる。凹部を大きくすれば、空気の流入を多くすることができるけれども、裁断刃としての剛性が低下するので、限界がある。
【0006】
特許文献2では、裁断刃を支持部材で支持する部分を冷却することはできても、被裁断材である積層されたシート材の上方での冷却となり、被裁断材の内部や裁断刃先端部の裁断部分へは冷風を流すことはできない。特許文献3のように、裁断刃を中空に形成することは、加工が困難で製造コストが上昇してしまう。特許文献4のように、空気の流れを発生させるための凹凸を側面に形成する布裁断ナイフも、凹部を形成する場合は剛性が低下し、凸部を形成する場合は加工が困難で製造コストが上昇してしまうと考えられる。
【0007】
本発明の目的は、裁断部分での裁断刃の温度上昇を抑え、積層されたシート材の溶着を防止することが可能な裁断刃を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、楔形断面を有する直刀状で、テーブル上に載置される積層されたシート材に上方から貫通させ、往復動しながら楔形断面の一側方に形成される刃先でシート材を裁断する裁断刃において、
該楔形断面の他側方に開口する溝を、該刃先でシート材を裁断する部分の範囲内で、該楔形断面の内部に有することを特徴とする裁断刃である。
【0009】
また本発明で、前記楔形断面は、前記他側方側に、厚みが一定の部分を有し、
前記溝は、該厚みが一定の部分内に形成されていることを特徴とする。
【0010】
また本発明で、前記溝は、前記往復動しながらシート材を裁断する部分の範囲が一定の深さに形成され、該範囲の上端では深さが該範囲から離れるに伴って深さが減少するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、楔形断面の一側方に形成される刃先でシート材を裁断する裁断刃の楔形断面の内部に、他側方に開口する溝を有するので、溝に空気などが流れれば、裁断刃を楔形断面の内部から冷却することができる。溝は、少なくとも裁断刃がシート材を裁断する部分の範囲内に有するので、溝を流れる空気で裁断刃の楔形断面の内部から冷却し、裁断刃の温度を低下させて、裁断部分での積層されたシート材への溶着を防止することができる。溝は、楔形断面の他側方に開口しているので、裁断刃の他側方からの切削加工などで、容易に形成することができる。
【0012】
また本発明によれば、溝は楔形断面で厚みが一定の部分の内部に形成されるので、楔形断面の一側方の刃先部分を研磨しても、溝は研磨に影響しないようにすることができる。
【0013】
また本発明によれば、溝は、往復動しながらシート材を裁断する範囲の上端は深さが範囲から離れるに伴って減少するように形成されているので、裁断刃の強度が急変することはなく、裁断くずの抜けも良くすることができる。往復動でシート材を裁断する部分の範囲では、溝は一定の深さに形成されるので、範囲外で溝に流入させた空気を円滑に流通させ、溝の内壁を通して裁断刃の表面で発生する熱を除去することができる。溝は、一定の深さのみに形成するよりも、少なくとも上端では深さが減少するように形成する方が加工も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の一形態としての裁断刃1の基本的な構成を示す。裁断刃1は、直刃状で、先端には押切刃2を有し、一側方に裁断刃先頭部3を有する。押切刃2は、被裁断材の表面から突刺すために使用する。被裁断材に突刺した後は、裁断刃先頭部3が上下動して被裁断材を裁断する。裁断刃先頭部3を頂部とする裁断刃1の両側面には、切刃面4がそれぞれ設けられる。裁断刃1で、裁断刃先頭部3の峰側は、本体部5となっている。本体部5と切刃面4との間には、特許文献1に記載されているような凹部6が設けられる。ここまでの裁断刃1の構成は、特許文献1に記載されている裁断刃と同等である。なお、裁断刃1の上部は記載を省略しているけれども、上下駆動を行う機構への連結部分が形成される。
【0015】
図1の裁断刃1には、本体部5に、溝10が設けられる。溝10は、裁断刃1の他側方、すなわち峰側に開口し、深さが一定である深さ一定部11と、その両端で深さが変化する上端部12および下端部13とを有する。深さ一定部11は、裁断刃先頭部3および切刃面4のうち、上下方向の往復動で被裁断材を実際に裁断する範囲に対応して設けられている。上端部12および下端部13のような深さの変化は、溝10をディスク状の切削具で切削して形成する場合に、容易に付加することができる。深さ一定部11を下端まで延長して、下端部13を設けないようにすることもできる。
【0016】
図2は、図1の裁断刃1および他の実施形態の裁断刃21の断面形状を示す。図2(a)および(d)は、溝10の深さ一定部11が形成されている部分の断面形状を示す。裁断刃1、21の断面形状は、大略的に裁断刃先頭部3を頂部とする楔形形状であり、本体部5は一定の幅tを有する。本体部5と裁断刃先頭部3との間の両切刃面4は、裁断部先頭部3側で対向する間隔が狭まるように傾斜している。裁断刃1,21の裁断刃先頭部3と本体部5の背面との間隔Lは、5〜10mm程度である。本体部5の幅tは、2〜3mm程度である。本体部5の高さAは、2〜4mm程度であり、幅tよりは大きくする。深さ一定部11での溝の深さは、たとえば本体部5の高さAの60〜80%程度とする。溝10の幅は、本体部5の幅tの30〜50%程度とする。溝の幅および深さを、本体部5の幅tおよび高さAに比較して小さくするのは、本体部5の剛性を保つためである。
【0017】
図2(a)に示すように、裁断刃1の本体部5には、その高さAのたとえば70%程度の深さとなり、幅が本体部5の幅tの40%程度となるよう溝10の深さ一定部11が形成される。
【0018】
図2(b)に斜線を施して示すように、裁断刃1は、切刃面4を研磨し、切れ味を維持しながら使用される。溝の深さ一定部11は、研磨によって破線で示すように切刃面4が後退しても、裁断刃1の剛性が低下しない範囲に形成される。すなわち、図2(c)に示すように、裁断刃1の本体部5は、ナイフガイド20による支持および案内を受けながら上下動するけれども、ナイフガイド20によって挟まれる部分には充分な剛性が必要となる。
【0019】
図2(d)は、本発明の実施の他の形態としての裁断刃21の断面形状を示す。裁断刃21は、裁断刃1よりも被裁断材の厚みが薄い場合に使用され、本体部5の幅tは、裁断刃1の幅tよりも若干小さくなる。切刃面4と本体部5との間には、凹部6が設けられる。溝の深さ一定部11の深さは、本体部5の高さAに対して、裁断刃21は裁断刃1と同等であるけれども、深さ一定部11の幅は、たとえば0.35t程度と、本体部5の幅tを基準として、裁断刃1の深さ一定部11の幅よりも、さらに小さくしておく。
【0020】
図3は、裁断刃1,21を自動裁断機の裁断ヘッド30に装着している状態を簡略化して示す。裁断刃1,21は、図示を省略している裁断ヘッド30の上部側に設けられる駆動機構で上下動し、図は最下位置付近まで下降している状態を示す。裁断ヘッド30の下端には、プレッサフット31が設けられ、被裁断材となる生地32の表面を押える。被裁断材は、布帛などのシート材の生地32を複数枚積層させ、表面を非通気性シートで覆った状態で裁断テーブル上に載置され、裁断テーブルの下方から吸引して固定する。裁断テーブルの表面は、ブラシ33で形成され、ブラシ33中に裁断刃1,21が侵入すると、ブラシ33の剛毛は部分的に退避する。裁断刃1,21は、積層状態の生地32を、裁断刃1,21を高速で上下動させながら裁断する。裁断ヘッド30は、裁断テーブルの表面に沿う二次元的な移動と、裁断テーブル表面に対して接近または離反する移動とが可能である。裁断ヘッド30内には、裁断刃1,21を、図の上下方向の軸のまわりに回転させて、裁断の向きを変える機構も搭載されている。自動裁断機では、予め設定される裁断データに従って、裁断ヘッド30の移動と裁断刃1,21の向きを制御しながら、生地32の裁断を行う。
【0021】
プレッサフット31の上方の裁断ヘッド30の内部には、裁断刃1,21を支持しながら上下動するように案内するナイフガイド20とともに、刃先の研磨を行う研磨ローラ34も設けられる。研磨ローラ34による研磨は、一定距離の裁断毎や一定時間毎など、予め設定される条件で、裁断刃1,21を被裁断材から引抜いている状態で、裁断刃1,21を上下動させ、研磨ローラ34の作用を裁断範囲が均一に受けるようにしながら行われる。
【0022】
図4は、裁断刃1での溝10の有無による生地の溶着性の比較の一例を示す。シート材の生地32として、合成皮革を20枚積層し、自動裁断機として、株式会社島精機製作所の製品名P−CAM182を使用すると、被裁断材として吸引時厚さは15mmとなるものを使用している。裁断刃1は、図の櫛形の図形を裁断するために、一旦被裁断材に突刺した状態を維持して、一筆書きのように、左下の起点から時計回り方向に一周させた。櫛形の図形全体の幅Wは200mmであり、全体の高さHは105mmであり、櫛の歯部分の幅wは13mmであり、櫛の歯部分の高さhは97mmである。裁断ヘッドの移動速度である裁断速度16m/minで、裁断刃を毎分約2000回上下動させる裁断条件で、裁断刃1を使用すれば、(a)に示すように、全パターンを良好に裁断することができた。溝10を設けない裁断刃では、(b)に示すように、裁断の途中で溶着を生じていることが確認された。溝10が設けられていなくても、見かけ上、裁断パターンを一周させることはできる。しかしながら、「×」印の裁断箇所では、積層されたシート材が上下で溶着して分離が困難ないし不可能となり、「△」印の裁断箇所では、分離は可能な程度の溶着が生じている。溝10の有無による溶着無し裁断可能距離は、溝10有りの(a)で1963mmとなるのに対し、溝無しの(b)では655mmとなり、溝10を設ける効果が確認された。
【0023】
図5は、裁断刃1での溝10の有無による生地の溶着性の比較の他の例を示す。図4よりも裁断速度を低下させて12m/minとし、裁断刃を毎分約3000回上下動させる裁断条件で裁断刃1を使用すれば、(a)に「○」印で示す範囲を溶着無しで裁断することが可能であると確認された。この溶着無し裁断可能距離は435mmである。(b)に示すように、溝無しでは、溶着無し裁断可能距離は210mmに短縮される。このような溶着無し裁断可能距離の長短は、裁断の生産性に影響する。溶着無し裁断可能距離が短いと、生地32の積層厚さ(枚数)を減らしたり、冷却のために裁断刃を生地32から引上げるナイフアップを行う必要があり、裁断に要する時間が長くなってしまう。
【0024】
図4および図5に示すように、裁断刃1では、背面側に溝10を設けているので、溝10内を流通する空気によって裁断刃1が冷却され、被裁断材が溶着を生じるまでの温度上昇が抑制される。図2(d)に示す裁断刃21でも同様であると期待される。自動裁断機では、被裁断材を載置する裁断テーブルの下方から吸引して被裁断材を裁断テーブル上に固定する状態で裁断が行われるので、溝10を吸気が通過し、冷却が効率よく行われる。溝10が開口するのは、裁断刃1,21の背面側であるので、特許文献1の図7に示されているように、被裁断材との接触はなく、吸気の通路は確保される。裁断刃1、21の背面側に溝10を設けることによって、裁断刃10,21の放熱面積が増加し、放熱面と発熱部との距離も短縮され、効率的な冷却が可能になる。
【0025】
なお、以上では、裁断刃1,21の本体部5に設ける溝10が角溝である場合を示しているけれども、溝10の断面は、V溝のように底部で幅が減少したり、U溝のように底面が曲面であってもよい。これらの断面形状は、切削工具の刃先形状に応じて変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の一形態としての裁断刃1の基本的な構成を示す部分的な側面図である。
【図2】図1の裁断刃1および他の実施形態の裁断刃21の断面図である。
【図3】図1の裁断刃1,21を自動裁断機の裁断ヘッド30に装着している状態を簡略化して示す部分的な側面断面図である。
【図4】図1の裁断刃1での溝10の有無による生地の溶着性の比較の一例を示す図である。
【図5】図1の裁断刃1での溝10の有無による生地の溶着性の比較の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1,21 裁断刃
3 裁断刃先頭部
4 切刃面
5 本体部
10 溝
11 深さ一定部
12 上端部
13 下端部
20 ナイフガイド
30 裁断ヘッド
32 生地
【出願人】 【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100101638
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 峰太郎


【公開番号】 特開2008−44030(P2008−44030A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−219356(P2006−219356)