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【発明の名称】 無端ベルト及び無端ベルト基体カット装置
【発明者】 【氏名】高梨 寛之

【要約】 【課題】画像形成装置に使用可能で高品質画像の形成可能な無端ベルトの提供と、前記無端ベルトの製造可能な無端ベルト基体カット装置の提供。

【構成】無端ベルト基体を2箇所で一巡するように切断形成された切断端面における切断開始端と切断終了端との段差が50μm以下であることを特徴とする無端ベルト、無端ベルト基体を外装可能とする回転可能な固定胴部と、前記固定胴部の上下両側に配置され、半径方向に拡張可能で前記軸線を中心にして回転可能な、複数の分割周面部を有する拡開胴部とを有する無端ベルト基体装着胴部、及び無端ベルト基体切断用の切断刃を有し、前記各分割周面部は、前記複数の分割周面部により形成される円周部のその周面を一巡するように形成された溝を備え、前記切断刃は、拡開胴部上の無端ベルト基体に接触するように回動可能に形成されて成ることを特徴とする無端ベルト基体カット装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端ベルト基体をその軸線方向に対して直交する2箇所で一巡するように切断された切断端面を有し、その切断端面における切断開始端と切断終了端とにより形成される段差が50μm以下であることを特徴とする無端ベルト。
【請求項2】
前記切断端面の直進性が0.5mm以下である請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項3】
無端ベルト基体を外装可能とする直径を有し、軸線を中心にして回転可能な固定胴部と、前記固定胴部の軸線方向における両側に配置されると共に、前記軸線に対して直交方向に拡張可能で前記軸線を中心にして回転可能な、複数の分割周面部で形成された拡開胴部とを有する無端ベルト基体装着胴部、及び無端ベルト基体を切断する切断刃を有し、
前記各分割周面部は、前記複数の分割周面部により形成される円周部のその周面を一巡するように形成された溝を備え、
前記切断刃は、前記溝に臨んで配置され、拡開胴部により張架状態にされた無端ベルト基体に接触するように回動可能に形成されて成ることを特徴とする無端ベルト基体カット装置。
【請求項4】
前記拡開胴部は、円周部を4分割することにより、軸線に直交する平面内でそれぞれ90度の開き角を有してなる4個の分割周面部と、それら分割周面部それぞれを前記軸線に対して直交方向に沿って移動可能に駆動する拡開駆動部とを備えて成る前記請求項3に記載の無端ベルト基体カット装置。
【請求項5】
前記拡開胴部における4個の分割周面部のうち、隣接する2個の分割周面部の拡開量が同じであり、残余の2個の分割周面部の拡開量が同じであり、隣接する2個の分割周面部の拡開量が残余の2個の分割周面部の拡開量よりも大きく、隣接する2個の分割周面部の拡開時期が残余の2個の分割周面部の拡開時期と相違して成る前記請求項4に記載の無端ベルト基体カット装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は無端ベルト及び無端ベルト基体カット装置に関し、さらに詳しくは、輪切り状の切断端面において段差が殆ど存在しない無端ベルト及びそのような無端ベルトに無端ベルト基体を切断することのできる無端ベルト基体カット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンター等の画像形成装置に使用される無端ベルトは、軸線方向長さが前記無端ベルトよりも大きな無端ベルト基体を所定の長さに輪切り状に切断することにより、作製されている。その切断方法の一つが、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載の「チューブ状ベルトの切断方法」は「軸方向に少なくとも2分割され、チューブ状ベルトの挿入されたドラムを内面から押すことにより、前記ドラムに前記ベルトを固定せしめ、その状態を保ちつつ、前記ベルトを輪切り状に切断することを特徴とする」方法である(特許文献1の請求項1参照)。
【0004】
特許文献1には、前記「チューブ状ベルトの切断方法」を実施するための切断装置として、「チューブ状ベルトが挿入でき、軸方向に少なくとも2分割された回転可能なドラムと、前記ドラムの内側に設けられたシャフトと、前記シャフトの内部に設けられ、前記ドラムを内側から押すための弾性部材からなる膨張体と、前記ベルトを切断するカッターとを備え、且つ前記カッターと対応する前記ドラムに細溝を備えたことを特徴とするチューブ状ベルトの切断装置」が開示されている(特許文献1の請求項5参照)。
【0005】
特許文献1によると、チューブ状ベルトの挿入されたドラムを内側から押す手段に関して、『ベルトをドラムに固定するために必要な、ドラムを内側から押す機構は特に制限はないが、前例の如く弾性部材からなる膨張体の作用でドラムを内側から押すことが望ましく、こうしてドラムを外方向にスライドさせて、ベルトをドラムに動かないように固定することが望ましい。前記した弾性部材としてはゴム等を例示でき、膨張体としてはチューブ等を例示できる。いずれにしろ強度に優れ、密封性の良い材質を用いれば良い。ドラムを内側から押すには、膨張体がシャフトの内部に設けられ、しかもラグ板とラグを介して押すことが望ましいが、これらのことも特に制限はない。ここでこの発明において、「ドラムを内側から押す」とは、ドラムに挿入されたベルトが動かないようにしっかりと固定される程度に押すことを意味しており、いかなる方法で押してもよいが、こうしないとベルトを高精度で切断することはできない。』と開示している(特許文献1の[0009]参照)。
【0006】
特許文献1では「ドラムを内側から押す機構は特に制限がない」としながら、特許文献1で開示された前記機構は「弾性部材からなる膨張体」が開示されていて他の機構についての具体的記載が見当たらない。
【0007】
また、この膨張体によるドラムの動きについて、特許文献1では、次のように開示されている。すなわち、「ここで膨張体10に加圧エアーを注入すると膨張体が膨張し、シャフト3に付設されたラグ11を、ラグ板12を介して外方向に押し出す。この状態が図5であり、ラグ板12の作用で軸方向に2分割されたドラム2は、ラグ11により内側から押されると共に、外方向にスライドして分割線Cに間隙が生じ、ドラム2に挿入されたベルト1にテンションがかかって、ベルト1はドラム2に動かないようにしっかりと固定されるのである」(特許文献1の[0007]参照)。
【0008】
この特許文献1においては前記したように「ベルト1にテンションがかかって、ベルト1はドラム2に動かないようにしっかりと固定される」と記述されてはいるが、特許文献1における図6を参照すると、膨張体10が2分割されたドラム2の軸線から偏心した状態に配置され、このような状態で膨張体10が膨張することにより2分割されたドラム2が外方向に押し出されるにしても同心円状に押し出されるかどうかが、懸念される。
【0009】
【特許文献1】特開平8−25283号公報
【0010】
一方、チューブを輪切りにして作製された無端ベルトが画像形成装置に装着されて長期間に渡って駆動される場合に、その無端ベルトがしばしばその輪切り端面から無端ベルトの周面に向って亀裂が入ることがあり、また、無端ベルトが回転しているときに無端ベルトの両サイドから無端ベルトの周面における等距離にある中心線が搖動することがあり、それがために例えば無端ベルトで搬送される記録体に形成される画像の品質が低下することがある。画像の品質の低下としては、色ずれ等を挙げることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明者らの検討によると、前記無端ベルトを使用する画像形成装置における画像品質の劣化、無端ベルトの走行中での亀裂発生等といった問題点を生じさせる原因が無端ベルトを作製する際の無端ベルト基体の切断時に生じていることを突き止めて、この発明に到達した。
【0012】
この発明の課題は、画像形成装置に組み込むことによって高品質の画像を形成することのできる無端ベルトを提供することにある。この発明の他の課題は、そのような無端ベルトを製造することのできる無端ベルト基体カット装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、無端ベルト基体をその軸線方向に対して直交する2箇所で一巡するように切断された切断端面を有し、その切断端面における切断開始端と切断終了端とにより形成される段差が50μm以下であることを特徴とする無端ベルトであり、
請求項2は、前記切断端面の直進性が0.5mm以下である請求項1に記載の無端ベルトであり、
請求項3は、無端ベルト基体を外装可能とする直径を有し、軸線を中心にして回転可能な固定胴部と、前記固定胴部の軸線方向における両側に配置されると共に、前記軸線に対して直交方向に拡張可能で前記軸線を中心にして回転可能な、複数の分割周面部で形成された拡開胴部とを有する無端ベルト基体装着胴部、及び無端ベルト基体を切断する切断刃を有し、
前記各分割周面部は、前記複数の分割周面部により形成される円周部のその周面を一巡するように形成された溝を備え、
前記切断刃は、前記溝に臨んで配置され、拡開胴部により張架状態にされた無端ベルト基体に接触するように回動可能に形成されて成ることを特徴とする無端ベルト基体カット装置であり、
請求項4は、円周部を4分割することにより、軸線に直交する平面内でそれぞれ90度の開き角を有してなる4個の分割周面部と、それら分割周面部それぞれを前記軸線に対して直交方向に沿って移動可能に駆動する拡開駆動部とを備えて成る前記請求項3に記載の無端ベルト基体カット装置であり、
請求項5は、前記拡開胴部における4個の分割周面部のうち、隣接する2個の分割周面部の拡開量が同じであり、残余の2個の分割周面部の拡開量が同じであり、隣接する2個の分割周面部の拡開量が残余の2個の分割周面部の拡開量よりも大きく、隣接する2個の分割周面部の拡開時期が残余の2個の分割周面部の拡開時期と相違して成る前記請求項4に記載の無端ベルト基体カット装置である。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、無端ベルト基体をその軸線方向に直交する2箇所で一巡するように切断された切断端面における切断開始端と切断終了端とにより形成される段差が50μm以下であるので、この段差を起点とする亀裂等が発生し難い無端ベルトを提供することができる。また、この発明によると、前記段差が50μm以下であると共に、切断端面の直進性が0.5mm以下であることにより、段差部を起点とする亀裂等、段差以外の切断端面を起点とする亀裂等が発生しがたい無端ベルトを提供することができる。
【0015】
この発明によると、無端ベルト基体の少なくとも2個所を輪切りにして無端ベルトを製造するに際し、無端ベルト基体の輪切り切断部分の所定部分を拡開胴部で拡開し、拡開胴部と拡開胴部との間に位置する固定胴部は無端ベルト基体を拡開せず、前記拡開胴部の拡開により張架状態にされた無端ベルト基体を切断刃で切断する無端ベルト基体カット装置が、提供される。この無端ベルト基体カット装置においては、無端ベルト基体のほぼ全体をラジアル方向に拡開するのではなく、切断部分近傍だけを拡開胴部により無端ベルト基体を拡開し、しかも拡開胴部の拡開により無端ベルト基体が張架状態に保持されているので、明確な理由が明らかではないものの、切断端面における切断開始端と切断終了端とにより形成される段差が50μm以下である無端ベルトが、無端ベルト基体から切り出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明に係る無端ベルトは、円筒状の無端ベルト基体を所定の部位で切断することにより得ることができる。したがって、この発明に係る無端ベルトは、無端ベルト基体をその軸線方向に直交する2箇所で一巡するように切断された切断端面を有する。そして重要なことは、この発明に係る無端ベルトは、図1に示されるように、その切断端面における切断開始端と切断終了端とにより形成される段差が50μm以下である。なお、切断端面における段差は、工具顕微鏡などにより測定することができる。
【0017】
また、この無端ベルトは、複写機、プリンター等の画像形成装置に使用される。前記画像形成装置には、搬送ベルト、定着ベルト、転写ベルト等の各種の無端ベルトが適用されている。この発明に係る無端ベルトは、画像形成装置に使用される各種の無端ベルトに使用されることができる。
【0018】
切断開始端と切断終了端とにより形成される段差が50μm以下である無端ベルトが画像形成装置内の各種のベルトに採用されると、段差からの亀裂、切れ、破断等が僅少となるので画像形成装置の長寿命化が達成される。
【0019】
また、この発明に係る無端ベルトは、その切断端面における直進性が0.5mm以下であるのが、望ましい。切断端面における直進性が0.5mm以下であると、前記段差以外の切断端面における切れ、亀裂等の発生を抑制することができる。したがってこのような無端ベルトを画像形成装置に採用すると、超寿命の画像形成装置とすることができる。なお、切断端面における直進性は、以下のようにして決定することができる。すなわち平行な二軸以上のロールに無端ベルトを架けて無端ベルトをロールの回転により無限軌道上を走行させる。走行する無端ベルトの、走行方向に直交する方向における切断端面が、観察手段例えばCCDカメラで観察される。観察された画面内の上から下へと無端ベルトの切断端面が位置するように、前記観察手段の位置調整を行う。その上で、走行する無端ベルトの端縁部を観察手段により観察すると、無端ベルトの切断端面が画面内で左右に揺動するのが認められる。前記直線性は、画面内における無端ベルトの切断端面の揺動幅により、評価されることができる。
【0020】
段差が50μm以下であるとともに、画像形成装置における無端ベルトとして好適な無端ベルトは、以下のようにして製造されることができる。
【0021】
画像形成装置内に好適に使用される無端ベルトは、無端ベルト基体を切断して得られる無端ベルト本体とその無端ベルト本体の端部に設けられたガイド部材とを有して成り、場合によってはガイド部材を備えずに無端ベルト本体だけで形成されることもある。以下の説明はガイド部材付きの無端ベルトに関する。
【0022】
無端ベルト基体は、樹脂組成物を成形して成る。樹脂組成物は、ある程度の強度を有し、繰返し変形に耐える可撓性に富む樹脂単体又は複数種類の樹脂を含有してなる樹脂組成物であるのがよく、このような樹脂組成物に含有される樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、架橋型ポリエステル樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、機械的強度及び耐久性等の観点から、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂が好ましく、ポリアミドイミド樹脂がより好ましく、特に、芳香族ポリアミドイミド樹脂が、機械的強度、可撓性、寸法安定性及び耐熱性等の機械的特性がバランスよく優れている点で、好ましい。
【0023】
前記芳香族ポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを反応させるジイソシアネート法により製造することができ、原料の入手、反応性及び副生成物が少ない等の点で優れている。ジイソシアネート法で製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂の他にも、重縮合反応を好適に進めることができるのであれば、ジイソシアネート化合物に代えてジアミン化合物を用いて製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂も、好ましい。ジアミン化合物を用いて得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂は、ヤング率が高く、無端ベルトを形成する樹脂組成物に含まれる樹脂として好適である。また、トリカルボン酸無水物の一部をテトラカルボン酸二無水物に代えてイミド結合を増加させた芳香族ポリアミドイミド樹脂は、耐湿性に優れている。芳香族ポリアミドイミド樹脂は、適宜の溶媒中で、常温下又は加熱下で反応させることにより、容易に合成することができる。
【0024】
前記トリカルボン酸無水物としては、芳香族トリカルボン酸無水物が好ましく、例えば、トリメリット酸無水物、3,4,4’−ジフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、2,3,5−ピリジントリカルボン酸無水物、ナフタレントリカルボン酸無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの酸無水物は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
トリカルボン酸無水物の一部に代えて用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
前記ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート化合物を好ましく挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物として、芳香族ジイソシアネート化合物と共に、又は芳香族ジイソシアネート化合物に代えて、脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を、又はこれらの誘導体であるアミン類を使用することもできる。
【0027】
芳香族ジイソシアネート化合物として、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−ジイソシアネートジフェニルスルホン、4,4’−ジイソシアネートビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、2,4−トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの芳香族ジイソシアネート化合物の誘導体であるジアミン類も原料として利用できる。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、無端ベルト基体又は無端ベルト本体の耐熱性、機械的特性及び溶解性等を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の60質量%以上、好ましくは70質量%以上を、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、イソホロンジイソシアネート又はこれらの誘導体であるジアミン類とすることが好ましい。さらに、無端ベルト1の寸法安定性を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の70質量%以上をジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート又はこの誘導体である4,4’−ジアミノジフェニルメタンとすることがより好ましい。
【0028】
芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒としては、溶解性の点で極性溶媒が好ましく、反応性を考慮すると非プロトン性極性溶媒が特に好ましい。非プロトン性極性溶媒として、例えば、N,N−ジアルキルアミド類が挙げられ、N,N−ジアルキルアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、及び、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等が挙げられる。また、極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等も好ましい。これらの溶媒は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
樹脂組成物は、例えば、転写搬送ベルト等のように、ガイド部材付き無端ベルトにある程度の導電性が要求される場合には、導電性付与剤が添加され、導電性樹脂組成物とされる。導電性樹脂組成物に含有される導電性付与剤としては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の各種カーボンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛粉末、金属又は合金等からなる針状、球状、板状及び不定形等の粉末、セラミックス粉末、表面が金属メッキされた各種粒子等が挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが、粒径、導電性及び樹脂との親和性等がバランスよく優れている点で、好ましい。また、カーボンブラックは、樹脂との親和性が向上する点で、酸化処理により、カルボキシ基、ヒドロキシ基等を付加した酸化処理カーボンブラックがより好ましく、pH56以下の酸化処理カーボンブラックも好ましい。この導電性付与剤は、球状又は不定形であるのが好ましく、そのサイズは0.01〜10μm程度であるのが好ましい。
【0030】
導電性付与剤の添加量は、導電性付与剤の導電性及び粒径、並びに、ガイド部材付き無端ベルトに要求される導電性等により、適宜調整すればよいが、通常、樹脂組成物と溶媒と導電性付与剤との合計100質量%に対して、1〜25質量%であるのが好ましく、5〜20質量%であるのがより好ましい。導電性付与剤の添加量が1質量%より少ないと、発現する導電性が小さいことがあり、一方、導電性付与剤の添加量が25質量%を超えると、ガイド部材付き無端ベルトの機械的強度が低下することがある。導電性付与剤を樹脂に分散させるには、公知の方法を適宜選択することができ、公知の方法として、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダ、押出機、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル及びビーズミル等を用いた混合方法が挙げられる。
【0031】
樹脂組成物は、この発明の目的を阻害しない限り、前記樹脂又は前記樹脂及び導電性付与剤に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素系有機化合物、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、補強性充填材、反応助剤、反応抑制剤等の各種添加剤、他の樹脂及び溶媒等が挙げられる。
【0032】
次に、この発明における無端ベルト基体の製造方法を説明する。無端ベルト基体を製造するには、まず、前記樹脂組成物を、公知の成形方法によって、環状に成形する。例えば、無端ベルト基体を形成する樹脂組成物に含有される樹脂として熱可塑性樹脂を選択した場合には、遠心成形、押出成形、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形等により、一方、樹脂として熱硬化性樹脂を選択した場合には、遠心成形、RIM成形等により、無端ベルト基体を成形することができる。これらの成形方法の中でも、材料を問わずに適用可能であり、かつ厚さ精度に優れる等の点で、遠心成形が好ましい。
【0033】
無端ベルト基体を遠心成形によって成形する場合には、無端ベルト基体を形成する樹脂組成物は、その成形時の粘度を50,000mPa・s以下に調整するのが好ましい。粘度が50,000mPa・sを超えると、厚さの均一な無端ベルト基体を製造するのが困難になることがある。樹脂組成物の粘度の下限については、特に限定されるものではないが、10mPa・s以上であるのが好ましい。樹脂組成物の粘度が上記範囲を外れる場合は、前記溶媒の添加量等を調整することにより、樹脂組成物の粘度を前記範囲内に調整することができる。溶媒としては、例えば前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒等が挙げられる。
【0034】
遠心成形によると、溶媒を含有することにより流動性を発現した樹脂組成物を円筒形の金型に注入し、金型を回転させて遠心力で金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開し、樹脂組成物の層から溶媒を乾燥除去して、無端ベルト基体が製造される。金型は各種金属管を用いることができる。好適な金型としては、金型の内周面は鏡面研磨されており、鏡面となった内周面はフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の離型剤によりコーティング処理され、形成した無端ベルトが内周面から容易に脱型できるようにされた金属管を挙げることができる。
【0035】
なお、樹脂組成物に含まれる樹脂としてポリアミドイミド樹脂を選択する場合には、上述した遠心成形による他に、ポリアミドイミド樹脂の原料であるトリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とが一部重合したポリアミド酸の溶液を、金型の内周面や外周面に浸漬方式、遠心方式、塗布方式等によってコートし、又は前記ポリアミド酸の溶液を注形型に充填する等の適宜な方式で筒状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベルト形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する公知の方法(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)等により、無端ベルト基体を製造することもできる。
【0036】
金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去して、無端ベルト基体が製造される。ここで、除去される溶媒は、金型内周面に展開された樹脂組成物の層に含有された溶媒であり、例えば、樹脂組成物の粘度を調整する際に使用される溶媒の他に、前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する際に使用される溶媒等が挙げられる。金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去する処理として、加熱処理を挙げることができるが、溶媒を高度に除去するには、以下の一次溶媒除去工程及び二次溶媒除去工程からなる溶媒除去処理を行うのが好ましい。
【0037】
前記一次溶媒除去工程は、金型を回転して金型内周面に展開された樹脂組成物の層から、金型を回転したまま5〜60分間、40〜150℃の熱風を金型内に通過させることにより、成形しつつ溶媒を除去する。一次溶媒除去工程では、熱風温度が150℃を超えると、及び/又は、60分を超えると、成形されるフィルム状成形体が酸化されることがある。
【0038】
二次溶媒除去工程は、一次溶媒除去工程で成形されたフィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、取り出した金型ごと加熱して、フィルム状成形体から溶媒を高度に除去する。例えば、熱風乾燥機、オーブン等の加熱器を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜300℃で1〜3時間加熱すればよく、また、過熱水蒸気炉を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜300℃の過熱水蒸気で、0.5〜1時間加熱すればよい。このようにして、フィルム状成形体中の溶媒を高度に除去することができる。
【0039】
二次溶媒除去工程において、加熱雰囲気は、その酸素濃度を5%以下に保つのが、フィルム状成形体を酸化させない点で、好ましい。酸素濃度は3%以下であるのがより好ましく、1%以下であるのが特に好ましい。加熱雰囲気の酸素濃度を5%以下に保つには、酸素を含有しないガス又は酸素含有量が少ないガス、例えば、過熱水蒸気、窒素ガス、希ガス等の不活性ガス等で、加熱装置内部を置換すればよい。なお、熱風乾燥機を用いる場合には、噴射される熱風を前記不活性ガス等にすることもできる。酸素濃度は、公知の酸素濃度計、例えば、「直接挿入形一体型ジルコニア式酸素濃度計/高温湿度計、ZR202G」等(横河電機株式会社製)によって、測定することができる。
【0040】
このようにしてフィルム状成形体から溶媒を高度に除去した後、フィルム状成形体を取り出し、放冷する。なお、金型ごとフィルム状成形体を放冷すると、金型とフィルム状成形体との熱膨張率の差により、樹脂組成物でできたフィルム状成形体を脱型することができる。
【0041】
脱型した円筒状のフィルム状成形体は、無端ベルト基体として取り扱われる。そこで、この無端ベルト基体の両側端部を、例えばこの発明に係る無端ベルト基体カット装置により切断除去し、所定幅に裁断して、無端ベルト本体が製造される。なお、以下においてこの無端ベルト基体カット装置を単にカット装置と略称することがある。
【0042】
なお、上記のようにして製造された無端ベルト本体は、単層であっても複数層からなる積層体であっても良い。
【0043】
無端ベルト本体の大きさは、このガイド部材付き無端ベルト又はガイド部材のない無端ベルトがどのような装置のどのような部位に装着されるかその用途に応じて適宜に決定される。このガイド部材付き無端ベルト又はガイド部材のない無端ベルトが画像形成装置における転写搬送ベルトとして使用される場合には、このガイド部材付き無端ベルト又はガイド部材のない無端ベルトの肉厚は、例えば1〜1000μm、好ましくは50〜300μmであり、走行方向に直交する長さである幅は、搬送されるもの例えば記録体の幅に応じて適宜に決定される。
【0044】
この発明におけるガイド部材は、通常の場合、長尺のテープ状に形成され、単層であってもよく、複数層からなっていても良い。また、このガイド部材は適度の硬度を有する弾性体で形成されていればよい。ガイド部材を形成するための素材としては、例えばポリウレタン樹脂、ネオプレンゴム、ウレタンゴム、ポリエステル樹脂、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。
【0045】
このガイド部材は、通常、0.5〜2.5mmの厚みを有する。このような厚みを有するガイド部材を無端ベルト本体に装着するとガイド部材付き無端ベルトの蛇行が防止される。
【0046】
このガイド部材は、無端ベルト本体の内周面における、走行方向に平行な両端又はいずれか端部縁辺に、装着される。好適なガイド部材付き無端ベルトは、無端ベルト本体の内周面における、走行方向に平行な両端縁辺に、装着される。両端縁辺にそれぞれガイド部材が取り付けられていると、走行安定性が確保されるからである。
【0047】
次に、この発明に係るカット装置につき、その一例を示す図面を参照しながら、説明し、次いでこの発明に係る無端ベルトについて説明する。
【0048】
図2は、この発明の一例であるカット装置を示す概略正面図である。図2に示されるように、この発明の一例であるカット装置1は、固定胴部2と拡開胴部3と切断刃4とを備える。
【0049】
図2に示されるように、このカット装置1を所定の場所に据え付けるときに床面に接すると共に装置全体の荷重を支持する支持台5と、この支持台5の上に、下から、固定胴部2(これを下部固定胴部2aと称することがある。)と、拡開胴部3(下側の拡開胴部を下部拡開胴部3aと称することがある。)と固定胴部2と2番目の拡開胴部3(これを上部拡開胴部3bと称することがある。)と、上端部を形成する固定胴部2(これを上部固定胴部2bと称することがある。)とが、積み上げられている。
【0050】
このカット装置1においては、前記支持台5上で、前記下部固定胴部2a、下部拡開胴部3a、固定胴部2、上部拡開胴部3b及び上部固定胴部2bが、一体となって垂直な仮想的軸線を中心にして回転する。前記下部固定胴部2a、前記下部拡開胴部3a、固定胴部2、上部拡開胴部3b及び上部固定胴部2bの全体を全体胴部6と称することがある。全体胴部6が回転する時の仮想的軸線に対する最大振れは、0.2mmである。図2においては、この全体胴部6は固定胴部2とその上下両端それぞれに1個の拡開胴部3a,3bが配置されてなる構造として示されている。この図2に示されるカット装置1によると1個の無端ベルト本体が切り出される。もっとも、この発明においては、このカット装置から切り出される無端ベルト本体の数は複数であってもよく、無端ベルト本体の生産効率を考慮すると、1個の無端ベルト基体から2個、好ましくは3個の無端ベルト本体が切り出されるように、全体胴部を形成する固定胴部の数及び拡開胴部の数が決定される。例えば最終的に2個の無端ベルトを製造するカット装置は、下から上へと、下部固定胴部、第1の拡開胴部、第1の固定胴部、第2の拡開胴部、第2の固定胴部、第3の拡開胴部及び上部固定胴部を配設して成る全体胴部を備え、最終的に3個の無端ベルトを製造するカット装置は、下から上へと、下部固定胴部、第1の拡開胴部、第1の固定胴部、第2の拡開胴部、第2の固定胴部、第3の拡開胴部、第3の固定胴部、第4の拡開胴部及び上部固定胴部を配設して成る全体胴部を備えてなる。
【0051】
図3及び図4に示されるように、前記全体胴部6の内部には、回転軸7がこの全体胴部6の中心軸を共有するように配置され、図示しない駆動源例えば駆動モータにより回転可能になっている。
【0052】
この回転軸7は、また、全体胴部6の内部に、全体胴部6の中心軸線を共有するように配置されると共に、中心軸線が垂直である場合にその中心軸線に直交する平面すなわち水平断面における外側輪郭が方形であり、水平断面における内部輪郭が円形である支柱8の内部に配設される。この支柱8は、換言すると、外形が四角柱であり、内部に円筒形の内部空間8aを備えて成る。この支柱8における内部空間8a内に、前記回転軸7が配置され、しかも、前記回転軸7は、連結支持体9で前記支柱8に一体的に結合される。なお、この発明においては、支柱は、内部に回転軸を内装するとともに、固定胴部を支持することができ、また拡開胴部にあってはこれを支持することができる限り、前記支柱8が有する構造に限定はされない。
【0053】
この全体胴部6に組み込まれている複数の拡開胴部3(3a,3b)はいずれも同じ構造を有する。
【0054】
拡開胴部3は、図3に示されるように、円筒体を90°の中心角となるように4分割することにより形成される分割周面部10と、中心軸線に対して直交方向にこれら分割周面部10を移動可能にする拡開駆動部11と、分割周面部10が中心軸線に対して直交方向に移動中に分割周面部10に生じる位置ズレを防止するガイド部12とを備える。
【0055】
前記分割周面部10は、4個の分割周面部における中心軸線方向に延在する周端面同士を付き合わせるように4個の分割周面部10を組立てると、円筒体が形成される。4個の分割周面部10で組立てられた円筒体の中心軸線方向における長さは、製造しようとする最終的な無端ベルトの規模に応じて決定されることができる。例えば内径120〜400mmの無端ベルトに張架を与えずにこれを円形にした場合の直径が119.5〜399.5mmであり、軸線方向長さが225〜350mmである無端ベルトXを製造しようとするときには、4個の分割周面部で組立てられた円筒体の中心軸線方向における長さは、通常800〜1,200mmである。円筒体における前記長さが前記範囲内にあると、無端ベルト基体の芯ぶれが小さく出来るといった利点がある。
【0056】
この分割周面部10の外周面部には、図2、図3、図5に示されるように、中心軸線に直交する平面内で一巡するように溝13が、形成される。
【0057】
この溝の幅及び深さは、製造しようとする最終的な無端ベルトの規模に応じて決定されることができる。前記した規模の無端ベルトXを製造する場合には、溝の幅は通常、0.5〜4.0mmであり、溝の深さは通常、0.5〜10.0mmである。溝の幅が前記下限値よりも小さいと、無端ベルト基体の切断時に前記溝内に挿入される切断刃の先端部が全体胴部の回転中に溝の内壁に接触する可能性が生じ、その結果、無端ベルト基体を円滑に切断することのできないおそれを生じる。また、溝の幅が前記上限値を超えると、無端ベルト基体の切断端に凹凸を生じる可能性がある。
【0058】
前記分割周面部10の外周面に形成される前記溝13の形成位置は、分割周面部10の上下端、すなわち縦方向に延在する仮想的な中心軸線に沿った方向における両端それぞれからほぼ等距離にある位置であることが、望ましい。さらに具体的には、前記無端ベルトXを製造しようとする場合に、例えば分割周面部10の中心軸線方向における幅、換言すると縦方向長さが40mmであるときに、分割周面部10の中心軸線に沿う方向での分割周面部10の両端面間の中央から0〜15.0mmの領域内に、前記溝が形成されているのが、好ましい。前記溝が、前記領域内に形成されていると、この拡開胴部を拡開して無端ベルト基体に張架を与えると、無端ベルト基体の切断部位に均等な張力を与えることができて、無端ベルト基体の切断刃による切断を無理なく行うことができる。
【0059】
前記拡開駆動部11は、前記分割周面部10を、中心軸線に対して直交方向に移動可能する。この拡開駆動部11は、4個の分割周面部10ごとに設けられる。つまり、一つの分割周面部10に一つ拡開駆動部11が配設される。4個の分割周面部10それぞれに設けられた拡開駆動部11はいずれも同じ構造を有する。その拡開駆動部11は、流体例えば圧力油により往復直線運動を行うアクチュエータを利用して形成することができ、例えば図3に示されるように、前記支柱8の縦面に据えられたシリンダ11aと、このシリンダ11aに出没可能に装着され、先端が前記分割周面部10の内周面に結合されてなるロッド11bとを備え、シリンダ11a内に圧力油が圧入されるとロッド11bがシリンダ11aから突出して分割周面部10を中心軸線に対して直交方向外側に押し出し、シリンダ11a内の圧力油をシリンダ11aから排出するとロッド11bがシリンダ11a内に後退して分割周面部10を中心軸線に対して直交方向内側に戻るようになっている。
【0060】
前記ガイド部12は、前記分割周面部10が中心軸線に対して直交方向に移動するときに分割周面部10の中心軸線方向における両端部つまり縦両端部及び中心軸線方向に直交する直交方向面内における両端部つまり横両端部の移動量が同じくなるように分割周面部10の移動をガイドするように、形成される。4個の分割周面部10それぞれには、同じ構造をした2基のガイド部12が設けられる。具体的には、図3に示されるように、このガイド部12は、前記支柱8の縦面に、前記シリンダ11aの両側に固定されたガイドシリンダ12aとこのガイドシリンダ12aに出没可能に装着され、先端が前記分割周面部10の内周面に結合されてなるガイドロッド12bとを備える。
【0061】
4基の分割周面部10の動作としては、4基の分割周面部10それぞれが同期して、かつそれぞれ同じ移動量をもって拡開する動作を挙げることができ、好適には、隣接する2個の分割周面部10,10とそれら分割周面部10,10に対向しつつ隣接する2個の分割周面部10,10とが、同じ移動量をもって異なる時期に拡開する動作を挙げることができる。つまり、好適な拡開動作は、隣接する2個の分割周面部10,10が同時に拡開動作してから、例えば0〜2秒後に、残りの隣接する2個の分割周面部10,10が同じ移動量をもって同時に拡開する動作である。このように拡開時期を異ならせて分割周面部10を拡開させると、ベルトがたわむことなくきっちりと装置にセットされるためカット段差と直進性を向上させるという利点がある。
【0062】
固定胴部2は、図4に示されるように、支柱8に支持部材14で固定される。
【0063】
前記切断刃4は、前記拡開胴部3における溝13に臨む位置に、初期状態として配置され、無端ベルト基体を切断するときには、前記溝13内に僅かに切断刃4が入るように初期状態位置から移動するように形成される。具体的には、この切断刃4は、薄くて鋭利な刃部4aとこれを支持する基部4bと刃部4aを初期状態位置から溝13内にこの基部4bを移動させる移動手段(図示せず。)とを備えて成る。
【0064】
この発明に係るカット装置の作用について説明する。
【0065】
この作用説明は、無端ベルトXを製造する場合を例とする。
【0066】
図2に示されるように、無端ベルト基体Yを全体胴部6の上方から全体胴部6に装着する。全体胴部6に無端ベルト基体Yを装着したまま、下部拡開胴部3aと上部拡開胴部3bとを同時に拡開させる。すなわち、互いに隣接する分割周面部10,10における拡開駆動部11,11を同時に駆動することにより、ロッド11bをシリンダ11aから突出させる。ロッド11bの突出前進動作により分割周面部の初期位置から外側方向に沿って0.3〜1.0mm前進させる。隣接する2個の分割周面部10,10が同時に前進する。各分割周面部10が前進する際、ガイド部12におけるガイドシリンダ12aからガイドロッド12bが分割周面部10の前進に追随して突出前進するので、分割周面部10の外周面が同心円状に外側方向に移動して分割周面部10の上下左右の端部が搖動することがない。
【0067】
前記した隣接する2個の分割周面部10,10が同時に拡開動作してから0.2秒後に、残余の隣接する2個の分割周面部10,10が拡開動作する。この残余の2個の分割周面部10,10の拡開動作は、先に拡開動作をした隣接する2個の拡開動作と同じである。
【0068】
下部拡開胴部3aと上部拡開胴部3bとが拡開動作を完了すると、図6に示されるように、無端ベルト基体Yは、固定胴部2においては無端ベルト基体Yの内周面と固定胴部2の外周面とが大きな張力を受けずに接しており、下部拡開胴部3a及び上部拡開胴部3bにおいては無端ベルト基体Yの内周面と拡開胴部3の外周面とが無端ベルト基体Yに大きな張力を与えつつ接している。
【0069】
この状態で、回転軸7を回転させることにより全体胴部6を回転させる。回転している全体胴部6に対して切断刃4を移動させて刃4aが溝13内に僅かに入るようにする。
【0070】
刃4aが、拡開胴部3により大きな張力を受けている無端ベルト基体Yに接すると、張力を受けている無端ベルト基体Yは刃4aの接する部分で直ちに切断が始まる。全体胴部6の回転により無端ベルト基体Yは刃4aにより切断されて、全体胴部6に装着された状態の無端ベルト本体Xが形成される。この無端ベルト本体Xは、ガイド部材無しの無端ベルトとして使用可能である。
【0071】
刃4aによる無端ベルト基体Yの切断が完了すると、前記下部拡開胴部3a及び上部拡開胴部3bの拡開状態を元の初期状態に戻す。初期状態に戻す動作は、拡開動作の逆である。もっとも、4個の分割周面部10を同時に初期状態に戻すのが、効率的である。
【0072】
全体胴部6の回転を停止してから、前記全体胴部6に装着されている無端ベルト本体Xを前記全体胴部6から抜き取ることにより、無端ベルト本体Xが取り出される。
【0073】
得られる無端ベルト本体Xは、無端ベルトそのものとして使用可能であり、図1に示されるように、無端ベルト本体Xの端面部における刃4aによる切断開始端と切断終了端とにより形成される段差Zが50μm以下となっている。
【0074】
このカット装置1を利用すると前記段差Zが50μm以下である無端ベルトが製造できることは、注目に値するのでその理由について考察する。
【0075】
仮に、軸線方向長さが無端ベルトの軸線方向長さよりも長く設定された4個の分割周面部を備えた拡開胴部と、拡開胴部の上限両端に配置された下部固定胴部及び上部固定胴部とを有する全体胴部を備えたカット装置を想定する。このカット装置を想定カット装置と称することにする。
【0076】
想定カット装置では全体胴部に無端ベルト基体Yを外装し、次いで拡開胴部を拡開させると、無端ベルト基体Yの全体にわたって張力がかかる。全体にわたって張力がかかっている状態の無端ベルト基体Yの表面に切断刃を当てると、無端ベルト基体Yの切り目を入れられた部分が、張力により急速に収縮する。そうすると無端ベルト基体Yにおける切り目部分が直進性を維持することができず、僅かに切断端面の直進性が崩れてしまう。その結果、無端ベルトXにおける切断開始端と切断終了端とにより形成される段差が50μmを越えることとなり、段差のある無端ベルト本体X、換言すると無端ベルトXが製造されてしまう。
【0077】
一方、この発明に係るカット装置においては、全体胴部6に装着された無端ベルト基体Yは下部拡開胴部3a及び上部拡開胴部3bにより拡開された部位にだけ張力がかかる。想定カット装置に比べると、無端ベルト基体Yにおける切り目を入れようとする所定部位だけに張力がかかった状態で、下部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bに密着している無端ベルト基体Yを刃4aで切断するのであるから、想定カット装置におけるような大きな張力がかかっていないことにより、無端ベルト基体Yにおける切り目部分の直進性が良好に維持されて、その結果、無端ベルトXにおける切断開始端と切断終了端とにより形成される段差が50μm以下になるものと考えられる。
【実施例】
【0078】
(実施例1)
反応容器内で、当量のトリメリット酸無水物と4,4’−ジアミノジフェニルメタンとをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解し、これを加熱して、固形分濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド)28質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。この溶液に、N,N−ジメチルアセトアミドをさらに加え、固形分濃度15質量%、固形分の比重1.2のポリアミドイミド溶液を調製した。得られたポリアミドイミド溶液に酸化処理カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、Degussa社製、pH5.8、揮発分10.0%)をポリアミドイミド溶液と酸化処理カーボンブラックとの合計100質量%に対して10質量%となるように配合し、ポットミルで24時間混合分散して、導電性樹脂組成物を調製した。成形に使用する金型は、内径226mm、外径246mm、長さ400mmの大きさを有し、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。次いで、金型両端の開口部に、リング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して、金型を閉塞し、導電性樹脂組成物を1,000rpmの速度で回転する金型内周に190g注入した。次いで、金型を同速度で回転させて金型内周面に導電性樹脂組成物の層を均一に展開した。次いで、金型を同速度で回転させつつ、熱風乾燥機により金型周囲の温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持し、フィルム状成形体を成形した。その後、金型の回転を停止し、金型ごと250℃のオーブンに2時間投入して、二次溶媒除去工程を行い、無端ベルト形成用の無端ベルト基体を得た。なお、二次溶媒除去工程は酸素濃度が5%の雰囲気下で行った(酸素濃度は、「直接挿入形一体型ジルコニア式酸素濃度計/高温湿度計、ZR202G」(横河電機株式会社製)を用いて測定した。)。次いで、金型を放置して室温まで冷却し、金型と無端ベルト基体との熱膨張差を利用して、この無端ベルト基体を金型から脱型した。
【0079】
次いで、前記無端ベルト基体を、図2に示されるカット装置1の全体胴部に装着した。下部拡開胴部3aにおける4分割された分割周面部10の内、互いに隣接する2個の分割周面部10,10と上部拡開胴部3bにおける4分割された分割周面部10の内、互いに隣接する2個の分割周面部10,10であって前記下部拡開胴部3aにおける分割周面部10,10と上下の対応関係にある分割周面部10、10とをそれぞれの拡開駆動部11を同時に駆動する事により、ロッド11bをシリンダ11aから突出させ、上下に位置する分割周面部10,10を外側方向に沿って0.5mm前進させた。このように上部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bにおける隣接する2個の分割周面部10,10が同時に拡開動作してから0.2秒後に、上部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bにおける残余の隣接する2個の分割周面部10,10を外側方向に沿って0.5mm前進させて拡開動作させ、前記無端ベルト基体の内周面と上部拡開胴部の外周面及び下部拡開胴部の外周面とが前記無端ベルト基体に大きな張力を与えつつ接するようにした。次いで、全体胴部を回転させ、前記無端ベルト基体を切断刃で切断し、幅240mm、内径226mm、厚さ100μmの無端ベルトを作製した。
【0080】
(実施例2)
上部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bにおける隣接する2個の分割周面部10,10が同時に拡開動作してから、上部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bにおける残余の隣接する2個の分割周面部10,10を外側方向に向かって拡開動作させるまでの時間を0.2秒から0.4秒に代えた外は前記実施例1と同様にし、幅240mm、内径226mm、厚さ100μmの無端ベルトを作製した。
【0081】
(実施例3)
上部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bにおける隣接する2個の分割周面部10,10が同時に拡開動作してから0.2秒後に、上部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bにおける残余の隣接する2個の分割周面部10,10を外側方向に向かって拡開動作させる代わりに、上部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bにおける4個の分割周面部10を同時に拡開動作させることの外は、実施例1と同様にし、幅240mm、内径226mm、厚さ100μmの無端ベルトを作製した。
【0082】
(実施例4)
図2に示されるカット装置1における4分割された分割周面部の代わりに2分割された分割周面部を有する外は、図2に示されるカット装置と同じ構造を有するカット装置を用いた。このカット装置は、図3における隣接する2個の分割周面部10が1個の分割周面部10となった半円状の分割周面部2個を備えた下部拡開胴部3bとこの下部拡開胴部3bと同様の構造を有する上部拡開胴部3aとを備えてなる。換言すると、このカット装置における上部拡開胴部3a及び下部拡開胴部3bはそれぞれ、2分割された分割周面部を備えてなる。
実施例1同様に無端ベルト基体を金型から脱型後、無端ベルト基体をカット装置の全体胴部に装着したまま、上部拡開胴部及び下部拡開胴部それぞれにおける2分割された分割周面部の内、一方の分割周面部における拡開駆動部を同時に駆動する事により、ロッドをシリンダから突出させ、上下に位置する分割周面部を外側方向に沿って同時に0.5mm前進させた。次いで、一方の上下分割周面部が同時に拡開動作してから0.2秒後に、他方の上下分割周面部を拡開動作させ、無端ベルト基体の内周面と拡開胴部の外周面とが無端ベルト基体に大きな張力を与えつつ接するようにした。次いで、全体胴部を回転させ、無端ベルト基体を切断刃で切断し、幅240mm、内径226mm、厚さ100μmの無端ベルトを作製した。
【0083】
(比較例1)
図2に示されるカット装置における下部拡開胴部、下部拡開胴部の下にある下部固定胴部、上部拡開胴部、上部拡開胴部の上にある上部固定胴部、及びこの下部拡開胴部と上部拡開胴部との間に挟まれた固定胴部を備える全体胴部の代わりに、軸線方向長さが無端ベルト基体の軸線方向長さよりも長く設計された4個の分割周面部を備えた拡開胴部と、拡開胴部の上下両端に配置された下部固定胴部及び上部固定胴部とを有する全体胴部を有する外は、図2に示されるカット装置と同じ構造を有するカット装置を使用した。このカット装置における全体胴部に、実施例1と同じ無端ベルト基体を装着し、4個の分割周面部における拡開駆動部を同時に駆動する事により、ロッドをシリンダから突出させ、分割周面部を外側方向に沿って同時に0.5mm前進させ、無端ベルト基体の内周面と拡開胴部の外周面とが無端ベルト基体に大きな張力を与えつつ接するようにした。次いで、全体胴部を回転させ、無端ベルト基体を切断刃で切断し、幅240mm、内径226mm、厚さ100μmの無端ベルトを作製した。
【0084】
(比較例2)
図2に示されるカット装置における下部拡開胴部、下部拡開胴部の下にある下部固定胴部、上部拡開胴部、上部拡開胴部の上にある上部固定胴部、及びこの下部拡開胴部と上部拡開胴部との間に挟まれた固定胴部を備える全体胴部の代わりに、軸線方向長さが無端ベルト基体の軸線方向長さよりも長く設定された2個の分割周面部を備えた拡開胴部と、拡開胴部の上下両端に配置された下部固定胴部及び上部固定胴部とを有する全体胴部を備えている外は図2に示されるカット装置と同じ構造を有するカット装置を使用した。このカット装置の全体胴部に無端ベルト基体を装着したまま、2個の分割周面部における拡開駆動部を同時に駆動する事により、ロッドをシリンダから突出させ、分割周面部を外側方向に沿って0.5mm前進させ、無端ベルト基体の内周面と拡開胴部の外周面とが無端ベルト基体に大きな張力を与えつつ接するようにした。次いで、全体胴部を回転させ、無端ベルト基体を切断刃で切断し、幅240mm、内径226mm、厚さ100μmの無端ベルトを作製した。
【0085】
(無端ベルトの切断端面の段差及び直進性の評価)
実施例1〜4、比較例1〜2における無端ベルトを各5個ずつ用意し、平行な2本の軸に無端ベルトを架け、工具顕微鏡(商品名:MEASURIG MICROSCOPE MTM OLYMPUS株式会社製)により切断端面の段差及び直進性を測定し、測定した結果から算術平均により値を求めた。実施例及び比較例における測定結果を表1に示す。
【0086】
次いで、実施例1〜4、比較例1〜2における無端ベルトの耐久性試験として、それぞれをタンデム方式のカラープリンタ(株式会社沖データ製、商品名「C series 5800n」)における転写搬送ベルトとして組み込んで、A4用紙を横26枚/分印刷する速度で、20万枚印刷した。1万枚印刷毎に印刷を停止し、無端ベルト端面の亀裂状態を確認した。1mm以上の亀裂が確認された時点で、耐久性試験を中止した。実施例及び比較例における測定結果を表1に示す。
【0087】
【表1】


耐久性試験
◎:20万枚印刷しても、無端ベルト端面に亀裂が生じなかった。
○:15万枚印刷した時に、無端ベルト端面に亀裂が生じた。
×:10万枚印刷した時に、無端ベルト端面に亀裂が生じた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、この発明の一例である無端ベルトの段差のある部分を示す部分説明図である。
【図2】図2は、この発明の一例であるカット装置における全体胴部を示す概略正面図である。
【図3】図3は、この発明の一例であるカット装置における拡開胴部を示す水平断面図である。
【図4】図4は、この発明の一例であるカット装置における固定胴部を示す水平断面図である。
【図5】図5は、この発明の一例であるカット装置における拡開胴部を示す正面図である。
【図6】図6は、この発明の一例であるカット装置における全体胴部に無端ベルト基体を装着した状態を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 無端ベルト基体カット装置
2 固定胴部
2b 上部固定胴部
3 拡開胴部
3a 下部拡開胴部
3b 上部拡開胴部
4 切断刃
4a 刃
4b 基部
5 支持台
6 全体胴部
7 回転軸
8 支柱
9 連結支持体
10 分割周面部
11 拡開駆動部
11a シリンダ
11b ロッド
12 ガイド部
12a ガイドシリンダ
12b ガイドロッド
13 溝
14 支持部材
X 無端ベルト
Y 無端ベルト基体


【出願人】 【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
【出願日】 平成18年8月1日(2006.8.1)
【代理人】 【識別番号】100087594
【弁理士】
【氏名又は名称】福村 直樹


【公開番号】 特開2008−36725(P2008−36725A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−210305(P2006−210305)