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【発明の名称】 ウェブ切断装置及び方法並びにウェブ製造方法
【発明者】 【氏名】北川 俊夫

【要約】 【課題】フイルムの走行速度を落とすことなく耳切位置を変更する。

【構成】回転刃を有するスリッタ本体30をトー角形成部33により、フイルム21面に平行な面内で回転させる。トー角形成部33をシフト部36によりフイルム21の幅方向(Y方向)で移動自在に構成する。シフト部36を駆動して、回転刃による切断ラインをY方向で変更する。フイルム21の走行方向(X方向)に対する回転刃の向き角度(傾斜角度)θtをトー角とする。フイルム21の走行速度をVw、Y方向における回転刃の移動速度をVcとしたときに、トー角θtがtan(Vc/Vw)の関係となるように、移動速度Vc又はトー角θtを変更する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対の回転刃でウェブを挟み、前記回転刃によって前記ウェブの走行方向に前記ウェブを切断して、前記ウェブを幅方向に分離するウェブ切断装置において、
前記1対の回転刃を前記ウェブの幅方向に移動して前記回転刃による切断位置を変更する回転刃移動部と、
前記回転刃移動部による前記切断位置の変更に際し、変更する切断位置側に前記回転刃の向きを変えて、前記ウェブの走行方向に対する前記回転刃の刃向き角度であるトー角を形成するトー角形成部と、
前記ウェブの走行速度をVw、前記回転刃の前記ウェブの幅方向における移動速度をVc、前記トー角をθtとしたときに、θt=tan−1(Vc/Vw)の関係となるように、前記移動速度Vc又はトー角θtを変更する制御部とを備えることを特徴とするウェブ切断装置。
【請求項2】
前記トー角θtを5°以上30°以下の一定値に設定し、この設定したトー角θtに基づいて前記移動速度Vcを求め、この移動速度Vcで前記回転刃を移動させることを特徴とする請求項1記載のウェブ切断装置。
【請求項3】
1対の回転刃でウェブを挟み、前記回転刃によって前記ウェブの走行方向に前記ウェブを切断して、前記ウェブを幅方向に分離するウェブ切断方法において、
前記1対の回転刃を前記ウェブの幅方向に移動して前記ウェブの幅方向における前記回転刃による切断位置を変更し、
前記切断位置の変更に際し、変更する切断位置側に前記回転刃の向きを変えて、前記ウェブの走行方向に対する前記回転刃の刃向き角度であるトー角を形成し、
前記ウェブの走行速度をVw、前記回転刃の前記ウェブの幅方向における移動速度をVc、前記トー角をθtとしたときに、θt=tan−1(Vc/Vw)の関係となるように、前記移動速度Vc又はトー角θtを変更することを特徴とするウェブ切断方法。
【請求項4】
前記トー角θtを5°以上30°以下の一定値に設定し、この設定したトー角θtに基づいて前記移動速度Vcを求め、この移動速度Vcで回転刃を移動させることを特徴とする請求項3記載のウェブ切断方法。
【請求項5】
前記ウェブは厚みが30μm以上150μm以下のポリマーフイルムであり、請求項3または4記載のウェブ切断方法を用いて、前記ポリマーフイルムの両側縁部を切断することを特徴とするウェブ製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に走行するフイルム等の可撓性支持体(ウェブともいう)をその走行方向に切断するウェブ切断装置及び方法並びにウェブ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフイルム(以下「フイルム」とする)は、優れた光透過性や柔軟性を有し、軽量薄膜化が可能であることから、光学機能性フイルムとして多岐に利用されている。この中でも、セルロースアシレート等を用いたセルロースエステル系フイルムは、前述の特性に加えて、さらに強靭性や低複屈折率を有している。このセルロースエステル系フイルムは、写真感光用フイルムを始めとして、近年市場が拡大している液晶表示装置(LCD)の構成部材である偏光板の保護フイルムや光学補償フイルムとして利用されている。
【0003】
フイルムの製造方法の一つとして、溶液製膜方法が挙げられる。この溶液製膜方法は、ポリマーと溶媒とが含まれたドープを流延ダイから支持体上に流延して流延膜を形成し、流延膜が自己支持性を有するものとなった後に、支持体から剥ぎ取って湿潤フイルムとし、テンタ内で湿潤フイルムを搬送させながら乾燥させてフイルムを製造する。この溶液製膜方法の利点は、光学等方性や厚み均一性に優れるとともに、含有異物が少ないフイルムを製造することができることにある。したがって、LCDに利用される光学機能性フイルムは、溶液製膜方法により製造されたものが多い。
【0004】
フイルムの製造の際には、その側端部(以下「耳部」という)をスリッタにより切断してその幅を所望の大きさに揃えている。このスリッタは、1対の回転刃でフイルムを挟み、その回転刃によってフイルムの走行方向にフイルムを切断して、フイルムを幅方向に分離する。しかしながら、例えば製品幅を変更する際に、フイルムは連続的に走行しているため、回転刃を新たに設定する耳切位置に移動させる必要がある。この回転刃の移動は、フイルムが厚い場合にはフイルムの剛性によってシワなどを発生させることなく回転刃の移動が可能であり、耳切位置の変更を容易に行うことができる。一方、厚みが40μm以上120μm以下の程度の薄いフイルムの場合にはフイルムの剛性が低いことに起因して、シワが発生することがある。このシワは、耳部の折れやフイルムの破れの原因となり、最終的に製造ラインを停止せざるを得ない場合がある。また、耳切位置の変更の他に、回転刃を交換する場合にも、同様に回転刃をフイルムの幅方向で移動させる必要があり、同様の問題が発生する。したがって、耳切位置の変更や回転刃の交換時には、製膜速度を下げた状態で回転刃の移動を行い、その後に製膜速度を通常の速度に戻している。このため、製膜速度を下げた状態で製造されたフイルムは製造条件が通常状態と異なるため、製品として用いることができず、製品ロスが発生してしまうという問題がある。
【0005】
上記の回転刃の移動の際のシワを抑制する方法として、例えば、回転刃の隣にウェブガイドを設け、このウェブガイドでウェブを押さえつつ耳部を切断することも行われており(例えば特許文献1参照)、この場合にはシワの発生が抑えられ、シワに起因する耳部の折れや破れの発生が抑えられる。また、特許文献2では、切断した後の耳部を回収装置に風送する際に、風送路の詰まりを無くして、製膜ラインを停止させることがないようにしている。
【特許文献1】特開2003−291090号公報
【特許文献2】特開2005−238801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、生産性の向上から製膜速度を上げる必要があるときに、上記特許文献1又は2のものでは、十分なシワ抑制効果が達成されず、シワに起因する耳部の折れやフイルムの破れが発生し、製膜ラインの停止となることがあった。また、近年、市場で求められているフイルムの薄膜化の要請に対応する場合にも、耳切位置の変更などに伴う回転刃の移動によってシワが発生しやすい傾向にあり、同様にして製膜ラインの停止となることがあった。
【0007】
このため、切断位置の変更などによる回転刃のウェブ幅方向での移動に伴うフイルムの破れや、耳折れ現象を鋭意検討した結果、以下の知見を得て、本発明をするに至った。図8に示すように、切断された耳部2aの先端角であるθdは、フイルム2の走行速度をVw、回転刃3のフイルム2の幅方向の移動速度をVcとした場合に、tan−1(Vc/Vw)として表される。例えば、生産性向上のためにフイルム2の走行速度Vwを上げている場合には、耳屑先角θdは小さくなる。この場合、耳部2aの先端部は細くなり、その剛性が不足して進行方向に向かうことができず、耳部2aは回転刃3に巻きついてしまうおそれがある。
【0008】
また、フイルム2の走行方向に対する回転刃3の傾きであるトーイン角θtは、例えば0.5°に固定されているため、そのトーイン角θtと前述のVw及びVcで決まる耳屑先角θdとの間にはズレが生じ、回転刃3にはそのズレに起因する切断抵抗がかかってしまう。したがって、回転刃3をスムーズにフイルム2に切り込ませることができず、結果として、フイルム2を破いてしまうことになる。この課題に対して、特許文献1及び2記載の発明の適用が考えられるが、トーイン角θtは同様に固定した状態にあるため、フイルム2の走行速度Vwを大きくするほど、耳部2aは裂け易くなり、回収装置(図示省略)へのシュートが不良になりやすい。
【0009】
本発明は、回転刃によってウェブの走行方向にウェブを切断して、ウェブを幅方向に分離する際に、ウェブの走行速度やウェブの厚みに影響を受けることなく、その切断幅を変更可能にするウェブ切断装置及び方法並びにウェブ製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、1対の回転刃でウェブを挟み、前記回転刃によって前記ウェブの走行方向に前記ウェブを切断して、前記ウェブを幅方向に分離するウェブ切断装置において、前記1対の回転刃を前記ウェブの幅方向に移動して前記回転刃による切断位置を変更する回転刃移動部と、前記回転刃移動部による前記切断位置の変更に際し、変更する切断位置側に前記回転刃の向きを変えて、前記ウェブの走行方向に対する前記回転刃の刃向き角度であるトー角を形成するトー角形成部と、前記ウェブの走行速度をVw、前記回転刃の前記ウェブの幅方向における移動速度をVc、前記トー角をθtとしたときに、θt=tan−1(Vc/Vw)の関係となるように、前記移動速度Vc又はトー角θtを変更する制御部とを備えることを特徴とする。前記トー角θtを5°以上30°以下の一定値に設定し、この設定したトー角θtに基づいて前記移動速度Vcを求め、この移動速度Vcで前記回転刃を移動させることが好ましい。
【0011】
本発明のウェブ切断方法は、前記1対の回転刃を前記ウェブの幅方向に移動して前記ウェブの幅方向における前記回転刃による切断位置を変更し、前記切断位置の変更に際し、変更する切断位置側に前記回転刃の向きを変えて、前記ウェブの走行方向に対する前記回転刃の刃向き角度であるトー角を形成し、前記ウェブの走行速度をVw、前記回転刃の前記ウェブの幅方向における移動速度をVc、前記トー角をθtとしたときに、θt=tan−1(Vc/Vw)の関係となるように、前記移動速度Vc又はトー角θtを変更することを特徴とする。前記トー角θtを5°以上30°以下の一定値に設定し、この設定したトー角θtに基づいて前記移動速度Vcを求め、この移動速度Vcで回転刃を移動させることが好ましい。
【0012】
本発明のウェブ製造方法は、ウェブの厚みは特に限定されないが、30μm以上150μm以下のポリマーフイルムであることが好ましく、請求項3または4記載のウェブ切断方法を用いて、前記ポリマーフイルムの両側縁部を切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、1対の回転刃でウェブを挟み、前記回転刃によって前記ウェブの走行方向に前記ウェブを切断して、前記ウェブを幅方向に分離するウェブ切断装置において、前記1対の回転刃を前記ウェブの幅方向に移動して前記回転刃による切断位置を変更する回転刃移動部と、前記回転刃移動部による前記切断位置の変更に際し、変更する切断位置側に前記回転刃の向きを変えて、前記ウェブの走行方向に対する前記回転刃の刃向き角度であるトー角を形成するトー角形成部と、前記ウェブの走行速度をVw、前記回転刃の前記ウェブの幅方向における移動速度をVc、前記トー角をθtとしたときに、θt=tan−1(Vc/Vw)の関係となるように、前記移動速度Vc又はトー角θtを変更する制御部とを備えることにより、ウェブの走行速度を落とすことなく、ウェブを幅方向に分離することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示すように、フイルム製造設備10は、ドープ製造ライン11、流延室12、テンタ13、フイルム乾燥室14、及び巻取室15などを備えている。
【0015】
ドープ製造ライン11では、セルロースアセテートを溶媒に溶解又は分散して得られるポリマー溶液からなるドープを製造する。流延室12では、例えばステンレス製のバンド16を循環走行させて、このバンド16上に流延ダイ17からドープ18を流延する。バンド16上の流延膜19は、流延室12内でバンド16に沿って送風される乾燥風などによって、流延膜19内の溶媒の乾燥が促進される。そして、自己支持性を有するようになったときに、剥取ローラ20で流延膜19が剥ぎ取られ、フイルム21が得られる。
【0016】
バンド16から剥ぎ取られたフイルム21は、自己支持性を有するものの、溶媒を多量に含んでおり、この後、テンタ13及びフイルム乾燥室14においてフイルム21が十分に乾燥される。テンタ13では、フイルム21の両端をクリップで把持しながら、フイルム21を走行させて、フイルム21を乾燥させる。テンタ13から出たフイルム21は、その下流に設けられた耳切装置22において、フイルム21の耳部が切断される。
【0017】
耳切装置22から出たフイルム21は、フイルム乾燥室14内で乾燥ローラ25上を走行することにより、溶媒が十分に揮発されて乾燥される。図2に示すように、フイルム乾燥室14を出たフイルム21は、ナーリング装置26に送られる。ナーリング装置26はエンボスローラ26a,26bを備えており、フイルム21の耳部21a近傍に微細な凹凸からなるローレット加工を施し、ナーリング21bを付与する。次に、フイルム21は、後述するフイルム切断装置27により、その側端部(以下「耳部」という)が切断されて、所望の幅に整えられる。この後、図1に示すように、巻取室15において、フイルム21が巻芯28に巻き取られる。なお、ローレット加工される位置は、製品幅の変更に伴って変更される。
【0018】
図2に示すように、本発明のフイルム切断装置27は、フイルム21の耳部21aをその走行方向(以下「X方向」という)に切断して、フイルム21の幅方向(以下「Y方向」という)で、製品フイルム21cと耳部21aとに分離するものであり、スリッタ本体30,31と、トー角形成部33,34と、シフト機構36,37と、カッタコントローラ40を備えている。カッタコントローラ40は、マスターコントローラ41により制御される。切断された耳部21aは、回収装置38,39により回収される。なお、フイルムの厚みは特に限定されないが、30μm以上150μm以下であることが好ましい。
【0019】
図3及び図4に示すように、スリッタ本体30は、フイルム21の一方の側縁部近くに配置されており、機枠43、回転刃44、刃駆動部45を備えている。なお、他方のスリッタ本体31も、スリッタ本体30と同様に構成されている。回転刃44は、上回転刃46と下回転刃47とから構成されている。上回転刃46及び下回転刃47は、機枠43の支持部43a,43bによって回転自在に保持されている。上回転刃46及び下回転刃47の回転軸46a,47aは、Y方向に配置されている。
【0020】
上回転刃46は円盤状のカッタ本体46bを備えており、カッタ本体46bの周縁部が刃先となっている。下回転刃47は周溝47bを備えており、周溝47bの一方の側壁には刃が形成されている。この刃に上回転刃46が接触し、この接触部分がフイルム21の切断位置となる。また、周溝47bから先端にかけて、円柱状のガイド面47cとこれに続くテーパ状のガイド面47dとが形成されている。
【0021】
下回転刃47には刃駆動部45が接続されており、下回転刃47を、例えばフイルム21の走行速度Vwと同じ周速度となるように、回転させる。刃駆動部45は減速機48及びモータ49から構成されている。上回転刃46はフリー状態とされており、フイルム21の走行によって回転する。なお、上回転刃46にも刃駆動部を設けて、独自に回転させてもよい。また、図示は省略したが、各回転刃46,47の一方又は両方には、フイルム21面に垂直方向な方向で昇降させる昇降機構(図示省略)が設けられている。この昇降機構は刃の交換時に用いられる。
【0022】
トー角形成部33は、スリッタ本体30をフイルム面21と平行な面内で回転させて、トー角θtを任意角度で形成するものであり、回転軸50と、機枠51と、回転軸50を回転変位させる駆動ギア52及び従動ギア53と、モータ54とから構成されている。なお、他方のトー角形成部34もトー角形成部33と同様に構成されている。回転軸50は、スリッタ本体30の機枠43の下面に下方に突出して設けられている。機枠51は、回転軸50を鉛直方向で回転自在に保持する。回転軸50には従動ギア53が固着されており、この従動ギア53には駆動ギア52が噛み合っている。したがって、モータ54が所定量回転すると、この回転が駆動ギア52、従動ギア53を介して、回転軸50に伝達され、回転軸50が所定角度だけ回転する。これにより、トー角θtを任意に設定することができる。モータ54は、ドライバ(図示省略)を介して、カッタコントローラ40によって回転制御される。
【0023】
シフト部36は、トー角形成部33をY方向にシフトする。シフト部36は、カッタコントローラ40によって制御される。トー角形成部33がY方向にシフトされると、このトー角形成部33に取り付けられているスリッタ本体30もY方向に移動し、各回転刃46,47による切断位置を変更する。シフト部37についても、シフト部36と同様の機能を有する。
【0024】
マスターコントローラ41は、フイルム製造設備10の全体を制御するものであり、フイルム21の製品幅の変更時に、新たな製品幅情報及びその製品幅切換タイミング情報を、カッタコントローラ40に送る。カッタコントローラ40は、マスターコントローラ41からの情報に基づいて、各部を制御する。そして、製品幅の変更時には、シフト部36,37及びトー角形成部33,34を制御して、切断位置の変更を安定的に行う。その際、フイルム21の走行速度をVw、トー角形成部33,34の移動速度をVcとしたときに、トー角θtがtan−1(Vc/Vw)の関係となるように、走行速度Vw及び移動速度Vcが変更される。その変更に基づいて、シフト部36,37及びトー角形成部33,34は駆動制御される。
【0025】
次に、図5のフローチャート、図6、及び図7の説明図を用いて、本発明の作用を説明する。図6(A)は回転刃44のY方向における位置P(t)を時間軸tの変化で示している。同じく(B)はトー角形成部33の移動速度Vc(t)を、(C)はトーイン角θt(t)を、(D)はトーイン角速度ω(t)を時間軸tの変化で示している。図7(A)はシフト部36による回転刃44のY方向移動時のトー角θtの変化を、(B)は回転刃44によるフイルム21上の切断ライン(図7中「CL」)を示している。P1は回転刃44が移動を開始する位置を、P2は回転刃44によるフイルム21への切り込み開始位置を、P3はシフト部36による回転刃44の減速開始位置を、P4は回転刃44の目標切断位置を示している。ここで、P3とP4との間の領域を減速領域とする。なお、以下においては、スリッタ本体30側の作用について説明するが、他方のスリッタ本体31の作用についても同様であるため説明は省略する。また、フイルム製品幅を狭める方向での切断位置変更について説明するが、フイルム製品幅を拡げる方向での切断位置変更についても同様の制御手順となる。
【0026】
製品幅の変更によって切断位置の変更量を示す信号がマスターコントローラ41からカッタコントローラ40に入力されると、切断位置の移動量に基づき最適なトー角θtが求められる。切断位置の移動量と最適なトー角θtとの関係は予め求められてカッタコントローラ内のメモリに記憶されている。最適なトー角θtが求められると、トー角形成部33によってトー角θtが設定される。このときのトー角θtは5°以上30°以下であることが好ましい。また、このトー角θtに一致する切断ラインCLとなるように、トー角θtとフイルム21の走行速度Vwとから、θt=tan−1(Vc/Vw)の関係に基づき回転刃44のY方向移動速度Vcを求める。
【0027】
次に、カッタコントローラ40は、マスターコントローラ41からのカット位置変更信号に基づき、回転刃44をY方向にシフトを開始する。まず、加速を開始し、移動速度Vcに達した状態で加速を停止して、一定速度Vcでフイルム21への切り込みを開始する。このままの速度Vcを維持した状態で回転刃44が減速開始点P3に達すると、目標切断位置P4で回転刃44が停止するように減速を開始する。また、この減速に応じて、目標切断位置P4でのトー角になるように、トー角θtを減少させる。目標切断位置でのトー角は0°付近であればよく、本実施形態では0.5°とし、わずかにトー角を形成して、切断ラインの直進安定性を確保している。
【0028】
図7は、回転刃44のトー角変化と、シフト部36による切断位置変化との関係を図示したものであり、初期位置P1でまずトー角θtが所定角度、例えば15°に設定され、この状態で目標切断位置P4に向けてY方向に移動速度Vcで移動する。このとき、移動速度Vcは、θt=tan−1(Vc/Vw)の関係に基づき、フイルム21の走行速度Vwとθtとから求められ、この移動速度Vcで移動する。
【0029】
目標切断位置P4に近づき減速開始点P3に達すると、Vcが「0」となるように減速される。また、この減速に応じて、トー角θtも次第に小さくされ、目標切断位置P4ではトー角θtが0.5°とされる。
【0030】
なお、本発明のフイルム切断装置を、テンタの下流の耳切装置22に対して適用してもよい。
【0031】
また、本実施形態では、スリッタ本体とシフト部の間にトー角形成部を設けたが、トー角形成部はスリッタ本体内に内蔵させて、そのスリッタ本体をY方向でシフト部により移動自在に構成してもよい。
【実施例】
【0032】
次に、本発明の実施例を説明する。実施例1〜5において、フイルム21の種別及びベース厚みTをそれぞれ変えて実施した。また、各実施例において、トー角θtを0.5°に固定、5°から0°に変更、15°から0°に変更の3つのパターンに分けて実施した。さらに、それぞれのパターンにおいて、フイルムの走行速度Vwを30m/分(低速)もしくは200m/分(高速)の場合に分けて実施した。なお、耳部の幅は、30mmもしくは100mmとした。また、回転刃44をP4から±0.5mmの位置にセットできるように、スリッタ本体30を移動させた。
[実施例1]
フイルム21のベース厚みTが80μmである通常品のフイルムについて実施した。
[実施例2]
フイルム21のベース厚みTが80μmである塗布品のフイルムについて実施した。
[実施例3]
フイルム21のベース厚みTが40μmである薄手品のフイルムについて実施した。
[実施例4]
フイルム21のベース厚みTが92μmである延伸品のフイルムについて実施した。
[実施例5]
フイルム21のベース厚みTが125μmである厚手品のフイルムについて実施した。
【0033】
表1は、各実施例における結果を示している。
【表1】


[評価]
◎:切り込み、回収装置38,39へのシュートともに良好(OK)。
○:切り込みは良好(OK)、回収装置38,39へのシュートはややバタツクが良好(OK)。
×:切り込みは不良(NG)。
【0034】
表1の実施例3が示すように、トー角θtが固定であると、走行速度Vwを低速にしたときであっても、切り込みがNGとなったのに対して、トー角θtを可変にしたことにより、切り込みが円滑に行われOKとなった。また、それぞれの実施例において、走行速度Vwを高速にした場合であっても、トー角θtを可変にしたことにより、切り込みがOKとなるとともに、回収装置38,39へのシュートもバタツクことなく円滑に行われOKとなった。さらに、フイルム21へ切り込む際のトー角θtを大きくしたことにより、切り込み性及び回収装置38,39へのシュート性が向上した。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】フイルム製造設備を示す概略図である。
【図2】本発明を適用したフイルム切断装置及びその周辺を示す概略図である。
【図3】スリッタ本体、トー角形成部、及びその周辺を示す概略の断面図である。
【図4】スリッタ本体、トー角形成部、及びその周辺を示す概略の平面図である。
【図5】本発明の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】回転刃の位置P(t)、移動速度Vc(t)、トー角θt(t)、トー角速度ω(t)を時間変化と共に示すグラフである。
【図7】(A)は回転刃のY方向移動時のトー角θtの変化を示す平面図であり、(B)はこのときのフイルム上における切断ラインを示す平面図である。
【図8】耳屑先角θd及びトー角θtの関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0036】
21 フイルム
30,31 スリッタ本体
33,34 トー角形成部
36,47 シフト部
44 回転刃
46 上回転刃
47 下回転刃
θt トー角
Vc (フイルムの幅方向への)移動速度
Vw フイルムの走行速度
CL 切断ライン
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100075281
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 和憲

【識別番号】100095234
【弁理士】
【氏名又は名称】飯嶋 茂

【識別番号】100117536
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 英了


【公開番号】 特開2008−874(P2008−874A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175649(P2006−175649)