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【発明の名称】 押さえコンベヤおよびこれを備えた食品裁断装置
【発明者】 【氏名】朝日 七郎

【要約】 【課題】極めて滑りやすい食品であっても確実にこれを押さえ込んで搬送できる新規な押さえコンベヤおよびこれを備えた食品裁断装置の提供。

【構成】搬送コンベヤ14との間に食品を挟み込んで当該食品に押圧力を加えながら前記搬送コンベヤ14と協働して搬送する押さえコンベヤ16において、一対のプーリー16b,16bと、当該プーリー16b,16b間に架け渡される無端状のコンベヤベルト17とからなり、当該コンベヤベルト17は、ベルト本体表面17aに、太さ寸法よりも高さ寸法が大な背高に形成された可撓性ある突起17bを多数分布させてなる。これにより、極めて滑りやすくかつ軟らかい食品の場合は、突起17bが食い込むことにより、また、極めて滑りやすくかつ硬い食品の場合は、突起17b先端が変形して密着することにより、確実にこれを押さえ込んで搬送することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送コンベヤとの間に食品を挟み込んで当該食品に押圧力を加えながら前記搬送コンベヤと協働して搬送する押さえコンベヤにおいて、
一対のプーリーと、当該プーリー間に架け渡される無端状のコンベヤベルトとからなり、
当該コンベヤベルトは、ベルト本体表面に、太さ寸法よりも高さ寸法が大な背高に形成された可撓性ある突起を多数分布させてなることを特徴とする押さえコンベヤ。
【請求項2】
請求項1に記載の押さえコンベヤにおいて、
前記突起は、前記ベルト本体表面から突出する基部と、当該基部の先端から連続する先部とからなり、当該先部は前記基部側から先端に亘って順次細くなっていることを特徴とする押さえコンベヤ。
【請求項3】
請求項2に記載の押さえコンベヤにおいて、
前記突起の基部は、円柱または角柱状となっていると共に、前記先部はその先端が半球状をなす円錐形状または角錐形状となっていることを特徴とする押さえコンベヤ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の押さえコンベヤにおいて、
前記突起は、ポリウレタン樹脂またはウレタンゴムからなることを特徴とする押さえコンベヤ。
【請求項5】
請求項4に記載の押さえコンベヤにおいて、
前記突起の硬度は、ショアA50〜80であることを特徴とする押さえコンベヤ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の押さえコンベヤにおいて、
前記プーリーは、前記搬送コンベヤに対して近接離間自在となっていることを特徴とする押さえコンベヤ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の押さえコンベヤの搬出端にカッターを備えたことを特徴とする食品裁断装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、食品をカッターで高速裁断するための食品裁断装置に係り、特にその食品を押さえ込みつつカッター側に搬送するための押さえコンベヤおよびこれを備えた食品裁断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品加工業者等は大量の食品を加工する必要があることから、食品の搬送および裁断作業を可能な限り自動化(機械化)し、作業の迅速化や低コスト化等を図るようにしている。
例えば、以下の特許文献1に開示されているような食品搬送装置は、下側ベルトコンベヤと上側ベルトコンベヤを備え、下側ベルトコンベヤと上側ベルトコンベヤとの間に搬送される食品を挟持したまま、食品裁断装置側に搬送して食品を裁断している。
【0003】
このとき、食品裁断装置が下側ベルトコンベヤと上側ベルトコンベヤとの間に挟持された食品を裁断する際、食品を挟持する力が弱いと、食品裁断装置において食品の位置が安定せず、食品を見栄え良く裁断できず、食品の裁断面が荒れたものとなりやすい。
食品の裁断面が荒れていると、裁断面から食品の旨み成分等が流れ出しやすく、裁断面の乾燥も速くなり、短時間で食品の食味が低下し、食品販売業者等は高品質の食品を提供できなくなってしまう。
【0004】
このため、スプリングを用いて下側ベルトコンベヤと上側ベルトコンベヤのうち、一方のベルトコンベヤを他方のベルトコンベヤに向けて押圧し、スプリングの弾性力によって下側ベルトコンベヤと上側ベルトコンベヤとに食品を挟持する力を与える。
しかしながら、従来の食品搬送装置においては、下側ベルトコンベヤと上側ベルトコンベヤとが食品を挟持する力の大きさを、食品の種類に応じて適切なものとすることが困難であった。
【0005】
例えば、硬い食品を食品裁断装置が裁断する際、下側ベルトコンベヤと上側ベルトコンベヤとが食品をしっかりと挟持していなければ、食品裁断装置の刃物から加わる力によって食品が転がる等し、食品の位置が安定せず、食品の裁断面が荒れてしまう。また、食品裁断装置の刃物が、位置の安定していない硬い食品を裁断すると、刃物の刃先が損傷しやすく、損傷した刃物を使用することが裁断面を荒らす原因となる。
【0006】
一方、軟らかい食品を食品裁断装置が裁断する際、下側ベルトコンベヤと上側ベルトコンベヤとが食品を挟持する力が強過ぎると、食品が押しつぶされ、やはり、食品の裁断面が荒れてしまう。
そのため、本発明者は以下の特許文献2に示すように上下動可能に支承された上側無端コンベヤに調整可能な大きさの押下力を与える押下機構と、上側無端コンベヤに前記押下力以下の大きさの押上力を与える押上機構を設けた食品搬送装置を既に提案しており、これによって、下側無端コンベヤと上側無端コンベヤとの間に挟持された食品に働く力の大きさを調整して、適切な大きさの力で食品を挟持したまま食品を食品裁断装置まで搬送可能としている。
【特許文献1】特開2004−50398号公報
【特許文献2】特開2005−298097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、このようにコンベヤ間に挟持された食品に働く力の大きさを調整する機構を備えたにも拘わらず、例えば、極めてヌメリ(潤滑性)の強い食品(生アワビ、ナマコ、ホタテ貝など)や、冷凍物などのように氷結して表面が極めて滑りやすい食品などの場合は、その搬送中に食品がコンベヤ表面を滑ってしまい、コントロールが効かなくなってしまうことがあった。
【0008】
この結果、コンベヤによる搬送量が不均一となって裁断部における食品の裁断厚さ(刻みサイズ)が一定でなくなってしまい、加工品質が著しく悪化してしまうことになる。
そこで、本発明はこのような課題を有効に解決するために案出されたものであり、その目的は、極めて滑りやすい食品であっても確実にこれを押さえ込んで搬送することができる新規な押さえコンベヤおよびこれを備えた食品裁断装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1の発明は、
搬送コンベヤとの間に食品を挟み込んで当該食品に押圧力を加えながら前記搬送コンベヤと協働して搬送する押さえコンベヤにおいて、一対のプーリーと、当該プーリー間に架け渡される無端状のコンベヤベルトとからなり、当該コンベヤベルトは、ベルト本体表面に、太さ寸法よりも高さ寸法が大な背高に形成された可撓性ある突起を多数分布させてなることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の押さえコンベヤは、
請求項1に記載の押さえコンベヤにおいて、前記突起は、前記ベルト本体表面から突出する基部と、当該基部の先端から連続する先部とからなり、当該先部は前記基部側から先端に亘って順次細くなっていることを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の押さえコンベヤは、
請求項2に記載の押さえコンベヤにおいて、前記突起の基部は、円柱または角柱状となっていると共に、前記先部はその先端が半球状をなす円錐形状または角錐形状となっていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項4に記載の押さえコンベヤは、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の押さえコンベヤにおいて、前記突起は、ポリウレタン樹脂またはウレタンゴムからなることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の押さえコンベヤは、
請求項4に記載の押さえコンベヤにおいて、前記突起の硬度は、ショアA50〜80であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に記載の押さえコンベヤは、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の押さえコンベヤにおいて、前記プーリーは、前記搬送コンベヤに対して近接離間自在となっていることを特徴とするものである。
請求項7に記載の食品裁断装置は、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の押さえコンベヤの搬出端にカッターを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ベルト本体表面に、太さ寸法よりも高さ寸法が大な背高に形成された可撓性ある突起を多数分布させてなるものであることから、生アワビ、ナマコ、ホタテなどの極めて表面が滑りやすい食品であっても、確実にこれを押さえ込み、搬送コンベヤと協働して裁断部側へ搬送することができる。
また、請求項2の発明によれば、前記突起が基部とその先端から連続する先部とからなると共に、その先部が前記基部側から先端に亘って順次細くなっていることから、その硬さも基部側から先部先端に掛けて徐々に軟らかくなる。
【0014】
従って、食品がナマコのような軟体の場合は、その突起先端の先部が食品の表面に食い込むことによって滑りを止めることで確実にこれを押さえ込み、また、食品が氷結体の場合は、主にその突起先端の先部部分が大きく撓んでその表面を前後左右から抱え込むように密着し、食品との摩擦力を強めることで確実にこれを押さえ込むことができる。
また、請求項3の発明によれば、前記突起の基部は、円柱または角柱状となっていると共に、前記先部はその先端が半球状をなす円錐形状または角錐形状となっているため、請求項3のような効果を発揮しつつ、その食品表面を傷つけるようなことも回避できる。
【0015】
また、請求項4の発明によれば、前記突起は、ポリウレタン樹脂またはウレタンゴムからなることから、傷みやすい食品を押さえ込むのに適度な硬さと軟らかさを兼ね備えることができる。また、この突起を射出成形などによって容易に製造することができる。
また、請求項5の発明によれば、前記突起の硬度は、ショアA50〜80であることから、傷みやすい食品を押さえ込むのに適度な硬さと軟らかさを兼ね備えることができる。
【0016】
ここで、この突起の硬度をショアA50〜80と限定したのは、ショアA50未満では、突起が軟らかくなり過ぎて直ぐに変形してしまうため、食品を確実に押さえ込むことができなくなるからである。反対にこの突起の硬度がショアA80を超えてしまうと突起が硬くなり過ぎて変形し難くなってしまい、食品を傷つけたりするおそれがあるからである。従って、より望ましくは、前記突起の硬度はショアA60〜70の範囲である。
【0017】
また、請求項6の発明によれば、前記プーリーは、前記搬送コンベヤに対して近接離間自在となっていることから、大小様々な滑りやすい食品でも確実にこれを押さえ込むことができる。
また、請求項7の発明によれば、これら請求項1〜6のいずれか1項に記載の押さえコンベヤの搬出端にカッターを備えたことから、常に裁断厚さが均一な食品裁断処理を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を添付図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る食品裁断装置10の正面図、図2は本発明に係る食品裁断装置10の一部分を破断して示す側面図である。
図1および図2に示すようにこの食品裁断装置10は、基礎フレーム12を有し、基礎フレーム12の上部には搬送コンベヤ14が水平方向に延びるように設置されている。
【0019】
この搬送コンベヤ14は、無端状をしたゴム製のコンベヤベルト14aが無限循環する公知のベルトコンベヤであり、調整可能な所定の間隔(ピッチ)で間歇的に回動して食品を搬送可能に構成されている。
基礎フレーム12は、左右の縦枠20と上枠22とからなる門形の枠体18を上部に有し、枠体18内に左右2本の案内軸24が立設されており、左右2本の案内軸24の間に、搬送コンベヤ14の前端部分が位置している。
【0020】
各案内軸24には、リング状部材がカラー26として嵌っており、このカラー26は固定用螺子68によって任意の高さで案内軸24に固定可能となっている。
また、このカラー26の上には、弾性体である主コイルスプリング30が載っており、主コイルスプリング30を案内軸24が貫通している。
この主コイルスプリング30を貫通した案内軸24は、さらに、板状部材である支承体32の左右の案内孔34を貫通しており、支承体32が左右の案内軸24の主コイルスプリング30の上に載っている。
【0021】
また、支承体32の左右両側には、枠体18の左右の縦枠20に装着された滑車36を介して、分銅38がバランス錘として懸下されている。
また、前記支承体32の上側中央には主軸40が立設されており、主軸40が枠体18の上枠22の主軸孔42内を上下に摺動可能に貫通している。
この主軸孔42から上方に突出する主軸40の先端部分は大径部となっており、この大径部の下部に段部46が形成されている。
【0022】
また、この支承体32の下側には、押さえコンベヤ16が懸下されて支承されている。
この押さえコンベヤ16は、その前端部分が左右2本の案内軸24の間に位置し、その前端部分とその下の搬送コンベヤ14との間に食品を押さえ込んで挟持可能に構成されている。
そして、この押さえコンベヤ16は、搬送コンベヤ14と同期して所定の間隔(ピッチ)で間歇的に回動可能に構成されている。
【0023】
この押さえコンベヤ16は、支承体32に固定されたブラケット32aと、このブラケット32aに固定されたフレーム16aと、このフレーム16aの両端に可動自在に取り付けられた一対のプーリー16b、16bと、このプーリー16b、16b間に架け渡された無端状のコンベヤベルト17とから構成されている。
このコンベヤベルト17は、図3および図4に示すように、無端状のベルト本体17a表面に、ポリウレタン樹脂またはウレタンゴムなどの可撓性材料からなる突起17bが前後左右に整然と多数配列するように分布して構成されている。
【0024】
また、この突起17bは、図5(B)に示すように、太さ寸法よりも高さ寸法が大な背高に形成されており、ベルト本体17a側に直接立設された円柱状の基部17cと、その基部17c先端から連続する先部17dとから構成されている。なお、このベルト本体17aと突起17bは一体成形され、また、このベルト本体17aの裏面には図4及び図5(B)に示すように帆布などからなる補強層17eが接着されている。
【0025】
そして、この突起17bの先部17dは、前記基部17c側から先端に亘って円錐状に順次細くなっており、さらにその先部17d先端部は半球面状に丸く加工されている。
具体的には、この突起17bは、図5(B)に示すように、その全体の高さが「6.5」mm、基部17cの高さが「2.5」mmとなっており、基部17cの高さよりも先部17dの高さの方がやや高く(「4.0」mm)なっている。
そして、図5(A)に示すようにこれら突起17b、17b…は、搬送方向に対して斜め千鳥格子状に設けられており、斜め方向に互いに隣接する突起17b、17b間の距離は「6.0」mmとなっている。なお、この突起17bは、ショアA70の硬度となっている。
【0026】
一方、前記枠体18の上枠22の左端側(図1において左側)には、支柱48が立設されており、支柱48の先端がリンク腕50の一端にピン止めされて関節54をなし、関節54において支柱48の先端回りをリンク腕50が回動可能に構成されている。そして、腕部52の一端がリンク腕50の他端にピン止めされて関節56をなし、関節56においてリンク腕50のこの他端回りを腕部52が回動可能に構成されている。なお、関節54と関節56とが第1の関節部をなしている。
【0027】
また、腕部52の中間部分は、上枠22の主軸孔42から突出する主軸40の先端にピン止めされて関節58をなし、関節58において主軸40の先端回りを腕部52が回動可能に構成されている。なお、関節58が第2の関節部をなしている。
上枠22の主軸孔42から上方に突出する主軸40は、弾性体である補助コイルスプリング62および座金64を貫通しており、上枠22の上に補助コイルスプリング62が載り、補助コイルスプリング62の上に座金64が載っている。
【0028】
補助コイルスプリング62の長さは、主軸孔42内を上下に摺動する主軸40の摺動部分の長さよりも短く、主軸40が主軸孔42内を下降すると、主軸40の段部46が座金64の上に載り、主軸40が主軸孔42内を上昇すると、主軸40の段部46が座金64から離れる構成となっている。
関節56と反対側の腕部52の端部にはハンドル60が形成されており、腕部52上に、錘66が関節56とハンドル60との間をスライド可能に載っており、錘66は固定用螺子70によって関節56とハンドル60との間の任意の位置で固定可能に構成されている。
【0029】
そして、主コイルスプリング30、分銅38および補助コイルスプリング62が押上機構を構成している。また、押さえコンベヤ16、フレーム16a、ブラケット32aを含む支承体32、主軸40、腕部52および錘66と、これらの付属品が、これらの荷重によって押さえコンベヤ16を押し下げる作用があるので、押下機構を構成している。
また、この押さえコンベヤ16および搬送コンベヤ14の搬出端には、裁断部72が設けられており、上下動するカッター74によって押さえコンベヤ16および搬送コンベヤ14の搬出端から搬送されてくる食品を裁断可能に構成されている。
【0030】
また、このカッター74の上下動方向は、搬送コンベヤ14の上側の搬送面に対して直交しており、さらに、押さえコンベヤ16側の前端とカッター74の裏面とは互いに近接している。
例えば、押さえコンベヤ16側の前端とカッター74の裏面との距離(より正確には、押さえコンベヤ16の突起17b先端からの距離)は、「0.5」mmである。
また、このカッター74は、所定の間隔で間歇的に回動する搬送コンベヤ14と同期して、搬送コンベヤ14の間歇的な停止時に下降し且つ上昇するように、所定の時間間隔で上下動可能に構成されている。なお、図1においては、裁断部72の図示を省略している。
【0031】
以上において、図1に示されるように、錘66が腕部52の左端部(関節56に最も近い位置)にあるときに、押さえコンベヤ16が搬送コンベヤ14と所定間隔をあけて浮いた状態となるように、腕部52、錘66、主軸40、支承体32、押さえコンベヤ16を降下させようとする荷重(押下力)と、この荷重に対抗する主コイルスプリング30、分銅38、補助コイルスプリング62による押上力とをバランスさせてある。この状態では、搬送コンベヤ14上の食品に押さえコンベヤ16による押圧力は負荷されない。
この押圧力を調整するための一方法は、錘66を前記位置から図1における右方にスライドさせることである。
【0032】
まず、食品裁断装置10により裁断部72まで搬送する食品の種類に応じて、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16との間に食品を挟持するために必要な大きさの力Fを定める。
例えば、食品が軟らかいものである場合、この食品を押しつぶすことなく、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16の間で食品を挟持するに足りる大きさの力Fを定める。
また、食品が硬いものである場合、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16の間で挟持されている食品に、裁断部72のカッター74から裁断力が働いても、食品が移動や姿勢を崩すことのない力Fを定める。
【0033】
力Fを定めたら、錘66を腕部52上で後述する位置にスライドさせ、関節58を作用点として主軸40を介して錘66から押さえコンベヤ16に力Fを加える。
支柱48の先端の関節54においてリンク腕50が回動し、リンク腕50の一端の関節56において腕部52が回動して、腕部52における関節58が常に枠体18の上枠22の主軸孔42の直上に位置している。
【0034】
腕部52が回動すると、関節58において腕部52と主軸40がなす角度が変化して、主軸40は主軸孔42内を常に上下に摺動可能となっており、腕部52と主軸40がなす角度にかかわらず、力Fが常に主軸40から押さえコンベヤ16に働く。
なお、錘66が腕部52の左端部(関節56に最も近い位置)にあるとき、押さえコンベヤ16が搬送コンベヤ14と所定間隔をあけて浮いた状態となっており、力Fの大きさは零である。従って、このとき、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16の間において、食品の上面が押さえコンベヤ16と接触するだけであり、食品には押さえコンベヤ16から負荷が働かない。
【0035】
錘66が腕部52の左端部から図1の右方へスライドすると、錘66のスライド量に応じて力Fが大きくなり、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16との間において、食品を挟持する力が大きくなる。
なお、腕部52上における錘66の位置は以下のようにして求められる。
いま、関節54回りの回転モーメントを考えると次式(1)式が成立し(図6を参照)、支承体32に働く力のつりあいを考えると次式(2)が成立する(図7を参照)。
【0036】
11−W1gL2−W2gL3=0 ・・・(1)
1+W3g−F−2F2−F3−2W4g=0 ・・・(2)
ただし、L:主軸40と関節54との間の水平距離
:錘66と関節54との間の水平距離
:リンク腕50および腕部52の重心と関節54との間の水平距離
:錘66の質量
:リンク腕50および腕部52の合計質量
:押さえコンベヤ16、主軸40、支承体32、フレーム16aおよびブラケット32aの合計質量
:分銅38の質量
F:搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16との間に食品を挟持する力
:主軸40と腕部52との間に働く力
:主コイルスプリング30から支承体32に働く押上力
:補助コイルスプリング62から支承体32に働く押上力
g:重力加速度
【0037】
式(1)および式(2)より関節54と錘66との間の水平距離Lは次式(3)によって表される。
2=(FL1+2F2L1+F3L1+2W4gL1−W3gL1+W2gL3)/(W1g) ・・・(3)
式(3)によって求められた位置まで、錘66を腕部52上でスライドさせ、錘66を固定用螺子70によって固定する。これによって、食品に対する押さえコンベヤ16の押圧力は最適の状態に設定される。
【0038】
錘66を腕部52に固定したら、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16とを所定の間隔で間歇的に回動させ、同じ所定の間隔で裁断部72のカッター74を上下動させ、食品を搬送コンベヤ14の上に載せる。
食品が搬送コンベヤ14によって裁断部72へ向かって搬送され、裁断部72の手前において、食品が搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16との間に力Fで挟持される。
【0039】
そして、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16との間に挟持された食品が、所定の間隔で一定距離ずつ裁断部72に向かって進み、裁断部72に達し、裁断部72のカッター74が食品を裁断する。
カッター74が搬送コンベヤ14および押さえコンベヤ16の回動間隔と同期して上下動しているので、裁断される食品の厚さは通常の食品、例えば野菜や漬け物、乾物などの場合は勿論、前述したように生アワビ、ナマコ、ホタテ貝などのような極めてヌメリ(潤滑性)の強い食品や、冷凍物などのように氷結して表面が滑りやすい食品であっても、その種類にかかわらず常に一定(設定厚さ)の厚さで裁断することができる。
【0040】
すなわち、本発明の食品裁断装置10は、押さえコンベヤ16で用いるコンベヤベルト17として、ベルト本体17aの表面に可撓性ある突起17bを多数分布させてなるものであることから、生アワビ、ナマコ、ホタテなどの極めて表面が滑りやすい食品であっても、確実にこれを押さえ込んで搬送することができる。
しかも、この突起17bは、その先部17dが基部17c側から先端に亘って順次細くなっていることから、その硬さも基部17c側から先部17d先端に掛けて徐々に軟らかくなっているため、食品がナマコのような軟体の場合は、図8に示すように、その突起17b先端の先部17dが食品の表面に食い込んで滑りを止めることで、確実にこれを押さえ込み、また、食品が氷結体のように硬い食品である場合は、図9に示すように特にその突起17b先端の先部17d部分が大きく撓んでその食品の表面を前後左右から抱え込むように密着して食品との摩擦力を強めることで確実にこれを押さえ込むことができる。
【0041】
このとき、突起17bは、先部17dが前記形状をしている基部17cよりも先端になるほど曲がりやすくなっていることから、先部17dが変形しても基部17cまでが大きく変形することがなく、従って、押さえコンベヤ16の前記押下力の調整力と相まって突起17bが座屈して損傷することが防止される。
また、この突起17bの先部17dは、その先端が半球状をなす円錐形状または角錐形状となっているため、図8に示すようにその食品が軟らかいものであってもその表面を傷つけるようなことも回避できる。
【0042】
すなわち、食品の滑りを防止するためには、本発明のように可撓性に富んだ突起17bの代わりに、例えば針のような硬く先端が尖った金属製スパイクを用いることも考えられるが、この場合滑り止めという効果は期待できるが、その代わりに金属製スパイクが食品表面に食い込むことにより、その食品表面が傷んでしまい商品価値を著しく低下してしまうことが考えられる。これに対し、本発明では上記のような形状をした可撓性に富んだ突起17bを用いたことにより、食品を必要以上に傷つけることなく上記のような効果を確実に得ることができる。
【0043】
また、前述したようにこの突起17bは、ショアA50〜80のポリウレタン樹脂またはウレタンゴムからなることから、食品を確実に押さえ込むのに適度な硬さと軟らかさを兼ね備えることができると共に、射出成形などによって容易に製造することができる。
なお、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16とが食品を挟持する力Fは、腕部52上における錘66の位置を変化させること、すなわち、関節54と錘66との間の水平距離Lを変化させることによって調整できるが、錘66の質量W、分銅38の質量W、補助コイルスプリング62の弾性係数、主コイルスプリング30の弾性係数を変えることによっても調整できる。
【0044】
例えば、食品が軟らかいものである場合、Lを小さくすることにより、すなわち錘66を左端部の関節56に最も近い位置までスライドさせることにより、力Fを零まで小さくすることができ、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16との間に挟持された食品が力Fによって押しつぶされる等することを防止できる。
また、食品が硬いものである場合、Lを大きくすることにより、すなわち、錘66を図1の右方へスライドさせることにより、力Fを大きくすることができ、搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16との間に挟持された食品が転がる等することを防止できる。
【0045】
搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16とが、食品の種類や性状に応じた大きさの力F、つまり、裁断時に食品の移動や姿勢変化を防止するために必要な最低の押さえ力で食品を挟持し、力Fで挟持された食品を裁断部72のカッター74が裁断するので、食品の裁断面が荒れることが防止され、裁断部72のカッター74が損傷することも防止できる。
搬送コンベヤ14と押さえコンベヤ16とによって挟持されている食品の厚さが変動する場合、主コイルスプリング30および補助コイルスプリング62が伸縮し、支承体32が上下動し、押さえコンベヤ16も上下動する。
【0046】
また、主コイルスプリング30および補助コイルスプリング62の各弾性係数を変化させることによって、食品の厚さの変動に追従する押さえコンベヤ16の上下動の速度を調整できる。
すなわち、主コイルスプリング30および補助コイルスプリング62の各弾性係数を小さくした場合、食品の厚さが変動して、食品から押さえコンベヤ16に働く反力の大きさが変化すると、主コイルスプリング30および補助コイルスプリング62における伸縮量の変化が大きくなり、食品の厚さの変動に対して、押さえコンベヤ16はその高さを迅速且つ敏感に上下に変化させることができる。
【0047】
また、押さえコンベヤ16には主コイルスプリング30および補助コイルスプリング62から押上力F、Fが働くので、腕部52のハンドル60を引き上げ、押さえコンベヤ16を上昇させた場合、主コイルスプリング30および補助コイルスプリング62がクッションとして働き、押さえコンベヤ16が急激に下降して食品を押しつぶしたりすることは防止されている。
【0048】
従って、食品を挟持する力Fを、食品の硬軟に応じた適切な大きさの力に簡単に調整でき、食品を適切な大きさの力Fで挟持しつつ裁断部72まで搬送でき、押さえコンベヤ16の高さが食品の厚さに応じて迅速且つ敏感に上下にスライドして変化し、そのまま、裁断部72のカッター74が食品を裁断しているので、食品の裁断面は、あたかも熟練した職人が包丁と俎とを用いて食品を切った場合と同様の滑らかで美しいものとなる。
【0049】
これにより、熟練した職人ではない人であっても、本発明の食品裁断装置10を用いて食品を裁断すれば、熟練した職人が包丁と俎とを用いて食品を切った場合と同様の食品の裁断面を得ることができる。また、裁断する食品の量にかかわらず、常に一定厚さに裁断されて滑らかで美しい裁断面を有する食品を、高速且つ低コストで得ることができる。
なお、本実施の形態では、搬送コンベヤ14上に押さえコンベヤ16を配置し、食品を上下に挟持して搬送するようにしたが、これらを搬送方向左右に位置させたり、あるいは上下逆に位置させても同様の効果を得ることができる。
さらに、この押さえコンベヤ16のコンベヤベルト17に設けられている突起17bをさらに搬送コンベヤ14のコンベヤベルト14a側にも同様に設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る食品裁断装置の正面図である。
【図2】本発明に係る食品裁断装置の一部分を破断して示す側面図である。
【図3】本発明に係る食品裁断装置で用いる押さえコンベヤのコンベヤベルトを示す平面図である。
【図4】本発明に係る食品裁断装置で用いる押さえコンベヤのコンベヤベルトを示す側面図である。
【図5】本発明に係る食品裁断装置で用いる押さえコンベヤのコンベヤベルトを示す部分拡大図である。
【図6】リンク腕および腕部における回転モーメントの説明図である。
【図7】支承体における力のつりあいの説明図である。
【図8】本発明に係る押さえコンベヤのコンベヤベルトで軟らかい食品を挟持したときの状態を示す概念図である。
【図9】本発明に係る押さえコンベヤのコンベヤベルトで硬い食品を挟持したときの状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0051】
10…食品裁断装置
12…基礎フレーム
14…搬送コンベヤ
14a…コンベヤベルト
16…押さえコンベヤ
16a…フレーム
16b…プーリー
17…コンベヤベルト
17a…ベルト本体
17b…突起
17c…基部
17d…先部
17e…補強層
18…枠体
20…縦枠
22…上枠
24…案内軸
30…主コイルスプリング
32…支承体
40…主軸
60…ハンドル
66…錘
72…裁断部
74…カッター
【出願人】 【識別番号】500523076
【氏名又は名称】朝日 七郎
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也

【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭

【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼


【公開番号】 特開2008−845(P2008−845A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172670(P2006−172670)