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【発明の名称】 電気かみそり用の内刃
【発明者】 【氏名】佐藤 正顕

【氏名】小森 俊介

【氏名】岩崎 重左エ門

【氏名】柴 武志

【要約】 【課題】髭の切断時に髭導入孔の中央部分で導入された髭を内刃のみで髭が突出方向に対して略垂直となるように切断する。

【構成】電気かみそり用の内刃である。内刃はベース20に支持された複数のブレード30を備え、外刃10に対してこれとの間でせん断係合して駆動されて髭Hを切断するものである。ブレード30は互いに平行に配列され、一対の刃先エッジ32が各ブレード30上部の両側に設けられる。刃先エッジ32はブレード30の上面と下面に形成されたすくい面33との間で規定される。すくい面33は上面に対して角度α(°)で傾斜し、上記刃先エッジ32の尖端は曲率半径R(μm)で丸められ、この曲率半径はR≦−0.02・刃先角α+1.1(μm)の関係を満足するように設定してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気かみそり用の内刃であり、この内刃はベースに支持された複数のブレードを備え、外刃に対してこれとの間でせん断係合して駆動されて髭を切断するものであり、上記ブレードは互いに平行に配列され、一対の刃先エッジが各ブレード上部の両側に設けられ、上記刃先エッジはブレードの上面と下面に形成されたすくい面との間で規定され、このすくい面は上面に対して角度α(°)で傾斜し、上記刃先エッジの尖端は曲率半径R(μm)で丸められ、この曲率半径はR≦−0.02・刃先角α+1.1(μm)の関係を満足するように設定してあることを特徴とする電気かみそり用の内刃。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電気かみそり用の内刃、更に詳しくは、往復駆動式の電気かみそりに使用する複数の平行に配列されたブレードを備えた内刃に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気かみそりの切断ヘッドは、多数の髭導入孔を形成した外刃と、複数のブレードを備えた内刃とで構成され、内刃は駆動源に連結されて外刃に対して往復駆動される。従来の内刃に使用するブレードは、特許文献1に示されるように、上端近傍の側面にアンダーカットが施されて所定の刃先角度で刃先エッジが形成され、髭を切断するに際しては図11に示すように、外刃10の髭導入孔11から導入した髭Hを外刃10の刃先縁とブレード30の上端の刃先エッジ32との間で挟み切りするものである。この場合、図11(a)に示すように、髭導入孔11の中央部分で導入された髭Hは、外刃10の刃先縁に達するまでブレード30の刃先エッジ32で押されて倒され、図11(b)のように外刃10の刃先縁に達した状態で押し倒されると共に該押し倒された髭Hが外刃10の刃先縁とブレード30の刃先エッジ32とで挟み切りされることで切断されることになり、このように髭Hをブレード30で押して倒した状態で外刃10の刃先縁とブレード30の刃先エッジ32とで挟み切りしているので、短く仕上がらないという問題があった。
【0003】
そこで、本出願人は、髭導入孔11の中央部分で導入された髭Hを切断するに当って、髭Hを押し倒して外刃10の刃先縁とブレード30の刃先エッジ32とで挟み切りすることなく、外刃10の髭導入孔11から導入した髭Hを内刃のブレード30のみで切断することができる内刃を特許文献2により既に提案している。
【0004】
この特許文献2に示された内刃は、ブレード30の上部の両側に一対の刃先エッジ32を設け、この刃先エッジ32はブレード30の上面と下面に形成されたすくい面との間で規定され、このすくい面は上面に対して角度α(°)で傾斜し、上記刃先エッジ32の尖端は曲率半径R(μm)で丸められ、この曲率半径はR<−0.067・刃先角α+4.7(μm)の関係を満足するように設定したものである。
【0005】
このようにすることで、髭導入孔11の中央部分で導入された髭Hは、図12(a)に示すように、外刃10の刃先縁に達しないうちに内刃のブレード30により髭Hの根元付近から切断が開始されるが、ブレード30のみで切断していくにつれて肌Sに弾性的に支持されている髭Hがブレード30の刃先エッジ32に押されて図12(b)のように少し傾きながら切断されることになり、特許文献1に示される従来例よりも短く切断されるといえども、髭切断面は図12(c)に示すように傾斜してしまう。図12(c)のhで示す髭切断面の傾斜の高さは髭Hが伸びる数時間分に相当する。このため、髭Hの切断面が根元部分で髭Hの突出方向に対して略垂直となるように切断するには、ブレードによる切断を何回か繰り返して切断する必要があった。
【特許文献1】特開平6−142347号公報
【特許文献2】国際公開WO20003/016000号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、その目的とするところは、髭の根元部分で髭の突出方向に対して略垂直となるように切断することができる電気かみそり用の内刃を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る電気かみそり用の内刃は、電気かみそり用の内刃であり、この内刃はベース20に支持された複数のブレード30を備え、外刃10に対してこれとの間でせん断係合して駆動されて髭Hを切断するものであり、上記ブレード30は互いに平行に配列され、一対の刃先エッジ32が各ブレード30上部の両側に設けられ、上記刃先エッジ32はブレード30の上面と下面に形成されたすくい面との間で規定され、このすくい面33は上面に対して角度α(°)で傾斜し、上記刃先エッジ32の尖端は曲率半径R(μm)で丸められ、この曲率半径はR≦−0.02・刃先角α+1.1(μm)の関係を満足するように設定してあることを特徴とするものである。
【0008】
このような構成とすることで、髭Hの切断時に髭導入孔11の中央部分で導入された髭Hは外刃10の刃先縁に達しないうちに髭Hの根元付近から切断が開始され、そのまま、髭Hが傾くことなく切断が継続され、髭Hが突出方向に対して略垂直となるように切断される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように、刃先エッジの尖端は曲率半径R(μm)で丸められ、この曲率半径はR≦−0.02・刃先角α+1.1(μm)の関係を満足するように設定してあるので、髭の切断時に髭導入孔の中央部分で導入された髭は外刃の刃先縁に達しないうちに髭の根元付近から切断が開始され、そのまま、髭が傾くことなく切断が継続され、髭が突出方向に対して略垂直となるように切断されることになって、従来のように何回も繰り返し切断することなく、短く切断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。本発明の電気かみそりの内刃は図1に示すように、往復駆動式の電気かみそりに適用されるもので、合成樹脂製のベース20へ互いに平行に配置された複数枚のブレード30を備え、かみそりハウジング1内に収めた駆動源、例えば、モータ2にベース20が結合され、外刃10に対して往復駆動される。外刃10は多数の髭導入孔11を有しており、髭導入孔11内に捉えた髭をブレード30にて切断する。外刃10はハウジング1の上端に取り付けられ、この外刃10に対して、ハウジング1上端に突出する内刃が外刃の内面に沿って後述する各ブレード30の刃先エッジ32に対して直交する方向に沿って往復駆動する。このハウジング1内には、モータ2と共にモータに電力を供給する電池3が収容され、ハウジング1は使用者の手にて保持できる形状とされる。
【0011】
図2に示すように、各ブレード30は、略U字形に湾曲して両端がベース20へ固定され、中央の弧状部に所定の角度範囲X、例えば、略100°に亘って刃先エッジ32が形成され、この弧状部が同様に湾曲した外刃10の下面にスライド係合する。図3に示すように、ブレード30の下面側の中央にはリブ34が突出しており、リブ34の上端から側方に刃先エッジ32が突出している。
【0012】
刃先エッジ32は、リブ34の上端からブレード30上面に対して所定の刃先角度α(°)で傾斜するすくい面33とブレード上面31との間に形成され、髭切断面角度θ(°)を髭Hの突出方向に対して略垂直(つまり髭切断面角度が85°以上)となるようにするために、刃先エッジ32の尖端の曲率半径R(μm)(以下、刃先エッジRと称する)と刃先角度α(°)との関係が、R≦−0.02・刃先角α+1.1(μm)の関係を満足するように設定してある。
【0013】
ところで、刃先エッジ32は、その仕上げ度合いによって、図4(a)〜図4(c)に示される形状となることが多く、本発明において規定する刃先エッジ32の曲率半径Rは、刃先の有効最小厚さLから近似により求めた(R=L/2)。すなわち、図4(a)〜図4(c)に示す形状については、すくい面33の延長線と、ブレード30上面の刃先エッジ32側における変曲点を通り且つすくい面33の延長線と平行な線との間隔を有効最小長さLと見なし、曲率半径RをR=L/2と規定する。
【0014】
上記のように髭切断面角度θ(°)を髭Hの突出方向に対して略垂直(つまり髭切断面角度が85°以上)となるような刃先角度α(°)と刃先エッジ32尖端の曲率半径R(μm)との関係を求めるに当って、まず、種々の刃先角度α(°)における髭切断抵抗(N)と刃先エッジR(μm)の関係を実験により求めた(実験においては、15°、30°、45°、60°の刃先角度α(°)の各場合における刃先エッジR(μm)と髭切断抵抗(N)との関係を求めた)。結果を図6に示す。
【0015】
また、上記刃先角度α(°)と刃先エッジR(μm)という2つのパラメータを髭切断抵抗(N)に置き換えた場合における、髭切断抵抗(N)と髭切断面角度θ(°)の関係を求めた。結果を図7に示す。この場合、一般的な電気かみそりの内刃の切断速度は略0.5m/秒以上である(つまり、一般的な電気かみそりの最も遅い内刃の切断速度は略0.5m/秒である)ので、内刃の切断速度は略0.5m/秒で切断して実験した。
【0016】
ここで、髭切断面角度θ(°)は、図8に示すように髭Hの肌Sからの突出方向に対する切断面のなす角度である。実験により、髭切断面角度θ(°)が90°、85°、80°、70°、60°の場合における髭Hの切断による傾斜の高さh(mm)を求めたところ、図7に示すように、θ=90°の場合はh=0(mm)であり、85°の場合はh=0.001(mm)であり、θ=80°の場合はh=0.03(mm)であり、70°の場合はh=0.06(mm)であり、θ=60°の場合はh=0.09(mm)であった。ところで、髭Hが伸びるのに要する時間は、0.03mm伸びるのに2時間、06mm伸びるのに4時間、0.09mm伸びるのに6時間かかる。このため、θ=80°の場合は髭の伸び量の2時間分が剃り残され、θ=70°の場合は髭の伸び量の4時間分が剃り残され、θ=60°の場合は髭の伸び量の6時間分が剃り残されることになる。したがって、θ=85°以上でなければ、髭Hの伸びの1時間分以上の剃り残しが生じてしまうことになって好ましくないことが判る。
【0017】
そして、図7から明らかなように、髭切断面角度θ(°)が85°以上になるための条件は、髭切断抵抗(N)が0.2(N)以下であることが判明する。言い換えれば髭切断抵抗(N)が0.2(N)以下であると、髭切断面角度θ(°)が85°以上になって髭Hが突出方向に対して略垂直(つまり髭切断面角度が85°以上)となるように切断できることが判明する。
【0018】
これは、前述の図6において髭切断抵抗(N)が0.2以下の領域(図6における破線より下の領域)を満足する刃先角度αと刃先エッジ32の曲率半径Rをもつブレード30を備えた内刃であれば髭Hを髭切断面角度θ(°)が85°以上となるように切断できることを意味する。
【0019】
そこで、本発明においては、髭切断抵抗(N)が0.2(N)以下であると、髭切断面角度が85°以上となることに着目し、髭切断抵抗(N)が0.2(N)以下を満たす刃先角度α(°)と刃先エッジ32の曲率半径R(μm)の関係を求めたものであり、これを数式で表すと、R≦−0.02・刃先角α+1.1(μm)で示すことができ、図5のようになる。
【0020】
すなわち、図5において、R≦−0.02・刃先角α+1.1(μm)で表示されるラインよりも下の領域を満たす刃先角度αと刃先エッジ32の曲率半径R(μm)をもつブレード30を備えた内刃であれば、図9(a)(b)に示すように、髭Hの切断時に髭導入孔11の中央部分で導入された髭Hは外刃10の刃先縁に達しないうちに髭Hの根元付近から切断が開始され、そのまま、髭Hが傾くことなく切断が継続され、髭Hが肌Sからの突出方向に対して略垂直(つまり切断面角度が85°以上)となるように内刃のみで切断される。
【0021】
尚、前述のように切断抵抗は内刃の切断速度が大きくなるとともに減少していくものであるから内刃の切断速度が0.5m/秒以上の場合には切断抵抗はより低減される方向であり、ここに示した関係を満たすことは明らかである。この結果、一般的な電気かみそりの全ての切断速度のものにおいて、内刃のみで髭Hが突出方向に対して略垂直(つまり切断面角度が85°以上)となるように切断できるものである。
【0022】
なお、図6から明らかなように、刃先角度α=60°の場合は、髭切断抵抗が0.2(N)以下とならないので、刃先角度α<60°、好ましくはα≦45°である。
【0023】
また、切断抵抗(N)の下限値は特に限定はないが、製造上の制約を考慮すると、0.02(N)以上が好ましい。
【0024】
ところで、ブレード30の上面両側の刃先エッジ32は、リブ34からの突出量Pを0.05mm以上としてある。これは以下の理由に基づく。一般的な髭Hの直径Dは略0.1mmであり、この髭Hを図3に示すようにブレード30の刃先エッジ32で切断するに当たって、髭Hを直径方向に1/2以上切断するまではリブ34が髭Hに当たらず、したがって髭Hが1/2以上切断される前にリブ34が髭Hに押し当たって髭Hを倒すことがないものであり、髭Hを直径方向に1/2以上切断した後でリブ34が髭Hに当たるので、髭Hを倒すことなく切断することができる。
【0025】
尚、図10に示すように、刃先エッジ32を形成するすくい面33に、硬化層35を形成することで、刃先エッジ32の摩耗を防止し、切れ味を長く保つことができる。硬化層35は例えば、TiやAl等のクラッド材を重ね合わせて一体化することで形成したり、あるいは、レーザ焼き入れ、衝撃焼き入れ等の熱処理により形成したり、あるいは、TiN、TiC、CrN、硬質カーボン膜等をコーティング処理して形成することができる。この硬化層35は、すくい面33に加えてブレード30上面に形成しても良い。
【0026】
尚、本発明に係る内刃に使用するブレードは、往復駆動式の電気かみそりだけでなく、その他の形式の電気かみそりの内刃に適用できるものであり、上述したような独特な刃先エッジがブレードに形成されることで髭の切断効果が向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の電気かみそり用の内刃を使用する電気かみそりの一例を示す分解図である。
【図2】同上の内刃の側面図である。
【図3】同上の内刃を構成するブレードの断面図である。
【図4】(a)(b)(c)はそれぞれ同上のブレードの刃先エッジの曲率半径の求め方を示す説明図である。
【図5】同上の髭切断抵抗0.2(N)以下を満たす刃先角度と刃先エッジの曲率半径の関係を示すグラフである。
【図6】同上の刃先エッジRと髭切断抵抗との関係を示すグラフである。
【図7】同上の髭切断抵抗と髭切断面角度の関係を示すグラフである。
【図8】同上の髭切断面角度を説明する説明図である。
【図9】(a)(b)は内刃による髭の切断を示す説明図である。
【図10】同上のブレードに硬化層を設けた例を示す断面図である。
【図11】(a)(b)(c)は従来例において髭を外刃の刃先縁とブレードの刃先エッジとで挟み切りする際の問題点を示す説明図である。
【図12】(a)(b)(c)は他の従来例において髭を内刃のみで切断する際の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0028】
10 外刃
20 ベース
30 ブレード
32 刃先エッジ
33 すくい面
H 髭
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年7月21日(2006.7.21)
【代理人】 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清

【識別番号】100085604
【弁理士】
【氏名又は名称】森 厚夫


【公開番号】 特開2008−23122(P2008−23122A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−199953(P2006−199953)