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鋏 - 特開2008−5896 | j-tokkyo
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【発明の名称】
【発明者】 【氏名】林 伸昭

【要約】 【課題】物を切る時の振動が手に伝わりにくく切断音を抑えることができて利用者が疲れにくい鋏の提供。

【構成】鋏1は、刀身部2a,3aと柄部2b,3bを有する一対の鋏片2,3を支軸4で枢支してなるものであって、鋏片2,3の全体または一部分が制振合金で構成されている。すなわち、物を切断する刀身部2a,3aの刃先2c,3cと、柄部に形成された指掛け5,5の指当り部5a,5aとの間に、制振合金が介在している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物を切断する刀身部と指で操作する柄部とを有する一対の鋏片を支軸で枢支してなる鋏において、刀身部の刃先と、柄部に形成された指掛けの指当り部との間に、制振合金が介在していることを特徴とする鋏。
【請求項2】
制振合金が、刀身部および/または柄部を被覆する被覆体を構成する請求項1に記載の鋏。
【請求項3】
物を切断する刀身部と指で操作する柄部とを有する一対の鋏片を支軸で枢支してなる鋏において、一対の刀身部の互いに摺接する刃先の両方もしくは一方が制振合金で構成されていることを特徴とする鋏。
【請求項4】
物を切断する刀身部と指で操作する柄部とを有する一対の鋏片を支軸で枢支してなる鋏において、柄部に形成された指掛けの少なくとも指当り部が制振合金で構成されていることを特徴とする鋏。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、カット時の振動が手に伝わりにくく切断音を抑えることのできる鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従前より理美容業界においては、湿らせた状態にして髪を切る、所謂ウエットカットが慣行されてきた。かかるウエットカットによれば、湿った髪が延ばされた状態で切られるので、カット後に髪を乾かすと髪が縮んで自然なヘアスタイルが得られにくいという問題がある。
そこで、乾いたままで髪を切る、所謂ドライカットが増えている。かかるドライカットに用いる理美容用鋏は例えば下記の特許文献1に記載されている。しかしながら、乾いた髪は硬いので、特許文献1記載のドライカット用鋏といえども、カット時に生じる振動(所謂キックバック)や音は大きい。そのために、いかにも「切っている」という感触が手や耳を通して伝わってくる。因みに、実際の切れ味と手や耳から感じる切れやすさとは必ずしも相関せず、実際には支障なく切れているにも拘わらず、切れていない感じがして美容師が疲れやすくなったりする。すなわち、美容師は、切っている感触ができるだけ手や耳に伝わらない「静かな鋏」を望んでいるのである。
【0003】
【特許文献1】特開2003−236269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、乾いた髪に負けぬよう、刀身部を厚く重く構成した理美容用鋏が使用されている。かかる理美容用鋏によると、刀身部の慣性力が大きいことから切れやすくなり、刀身部が振動しにくいことから切断音も小さくなるという利点がある。ところが、美容師は一日のうちで長時間にわたり理美容用鋏を持っていることが多いので、前記した重厚な理美容用鋏を用いると、肩こりが激しくなって非常に疲れやすくなり、延いては手首の腱鞘炎を患うおそれもあった。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、物を切る時の振動が手に伝わりにくく切断音を抑えることができて利用者が疲れにくい鋏の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る鋏は、刀身部と柄部を有する一対の鋏片を支軸で枢支してなる鋏において、物を切断する刀身部の刃先と、柄部に形成された指掛けの指当り部との間に、制振合金が介在しているものである。
【0007】
また、前記の構成において、制振合金が、刀身部および/または柄部を被覆する被覆体を構成しているものである。
【0008】
そして、本発明に係る鋏は、刀身部と柄部を有する一対の鋏片を支軸で枢支してなる鋏において、一対の刀身部の互いに摺接する刃先の両方もしくは一方が制振合金で構成されているものである。
【0009】
更に、本発明に係る鋏は、刀身部と柄部を有する一対の鋏片を支軸で枢支してなる鋏において、柄部に形成された指掛けの少なくとも指当り部が制振合金で構成されているものである。
【0010】
本発明で用いる制振合金としては特に限定されないが、例えば複合型合金、転位型合金、双晶型合金を用いることができる。
前記の複合型合金としては、Fe−C−Si系合金、Al−Zn系合金が挙げられる。転位型合金としては、Mg−Zr系合金(例えば、基材Mg−0.6原子%Zr)、Mg2−Ni系合金、Mg−Cu−Mn系合金(例えば、基材Mg−4原子%Cu−2原子%Mn)、Fe−Ni−Mn系合金(例えば、基材Fe−5原子%Ni−15原子%Mn)、Fe−Mn−Cr系合金(例えば、基材Fe−22原子%Mn−12原子%Cr)などが挙げられる。また、双晶型合金としては、Mn−Cu−Al−Fe−Ni系合金(例えば、基材Mn−37原子%Cu−4.25原子%Al−3原子%Fe−1.5原子%Ni)、Cu−Mn−Al系合金(例えば、基材Cu−40原子%Mn−2原子%Al)、Cu−Mn−Al−Sn系合金(例えば、基材Cu−40原子%Mn−2原子%Al−2原子%Sn)、Cu−Al−Ni系合金(例えば、基材Cu−14原子%Al−4原子%Ni)、Cu−Zn−Al系合金(例えば、基材Cu−26原子%Zn−5原子%Al)、Ni−Ti系合金、Mn−Cu−Ni−Fe系合金(例えば、基材Mn−20原子%Cu−5原子%Ni−2原子%Fe)などが挙げられる。尚、制振合金を刃先に使用する場合は、焼入れが可能な制振合金を選定する必要がある。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る鋏によれば、物を切断する刀身部の刃先と指掛けの指当り部との間に制振合金が介在しているので、物を切った際に刃先で生じた振動は指掛けに届くまでに制振合金で減衰され音の大きさも抑えられる。従って、物を切った時に生じた振動はそのまま利用者の手に伝わることがなく耳に入る切断音も小さい。このようにカット時の振動や音が小さいと、よく切れている感じがして利用者は感覚的に疲れにくくなる。加えて、かかる作用、効果は、従来汎用品同様の軽薄な形状、厚み、重さに鋏を形成した場合でも変わらないので、利用者が鋏を長時間持っていたとしても、従前以上に肩こりを生じたり疲れやすくなるといったことがない。
【0012】
前記した本発明特有の作用、効果は、制振合金が刀身部および/または柄部を被覆する被覆体である場合、一対の刀身部の互いに摺接する刃先の両方もしくは一方が制振合金で構成されている場合、または、柄部に形成された指掛けの少なくとも指当り部が制振合金で構成されている場合においても、同様に奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最良の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下に述べる実施形態は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。ここに、図1は本発明の一実施形態に係る鋏の開いた態様を示す平面図である。
図において、この実施形態に係る鋏1はヘアーカットに使用される理美容用鋏であり、一対の鋏片2,3と、鋏片2,3を連結する支軸4とから主に構成されている。前記の支軸4は、鋏片2の長手方向略中央部に形成された貫通穴11(図2参照)と、鋏片3の長手方向略中央部に形成された貫通穴12(図2参照)に通されてナットなどで螺止されることにより、鋏片2,3を揺動自在に枢支している。鋏片2は貫通穴11を境に、髪を切る刃先2cを有する刀身部2aと、指で操作される柄部2bとに区画される。鋏片3は貫通穴12を境に、髪を切る刃先3cを有する刀身部3aと、指で操作される柄部3bとに区画される。刀身部2a,3aにおける内面(他方の鋏片との対向面)は、それぞれ凹面部2d,3dとなっている。
【0014】
柄部2bの先端には中指を通す例えばリング状の指掛け5が形成され、柄部3bの先端には親指を通すリング状の指掛け5が形成されている。そして、柄部2bの指掛け5には薬指を掛ける指掛け突起7が突設されている。柄部3bの指掛け5には、柄部2bの指掛け5と当接したときに生じる当接音を抑制するための合成ゴム製の音止め部材6が突設されている。尚、使用者の好みに応じて、柄部2b,3bの指掛け5,5にゴム製のリングカバー8(図1中の2点鎖線で示す)が装着されることもある。
【0015】
前記した一対の鋏片2,3は、それぞれの刀身部2a,3aおよび柄部2b,3bの全体が制振合金で構成されている。かかる制振合金として、本実施形態ではマンガン基材系制振合金(株式会社セイシン製の製品型番M2052)を用いた。制振合金M2052はマンガンを基材とし、合金全体のうち、銅20原子%、ニッケル5原子%、鉄2原子%を含んでなる双晶型の合金である。また、制振合金M2052は鋼材との溶接や、焼入れを行なうことができる。
【0016】
以上のように構成された鋏1では、支軸4と音止め部材6を除く、一対の鋏片2,3の全体が制振合金M2052で構成されているので、ドライカット作業において毛髪を切った際に、刃先2c,3cで生じる振動および切断音は小さい。更に、生じた振動は指掛け5,5および指掛け突起7に届くまでに鋏片2,3で減衰されていっそう小さくなる。従って、ドライカット時に生じた振動は美容師の手にほとんど伝わらず耳に入る切断音も小さい。このようにカット時の振動や音が小さいと、「よく切れている」という感じがして美容師は感覚的に疲れにくくなる。これは、鋏1を従来汎用品と同様に軽薄な形状、厚み、重さに形成した場合も変わらないので、美容師が鋏1を一日中持っていたとしても、従前以上に肩こりを生じたり疲れやすくなったりすることがない。すなわち、本実施形態の鋏1は理美容のドライカット用として好適に用いることができる。
【0017】
尚、上記の実施形態では、一対の鋏片の刀身部および柄部の全体を制振合金で構成した例を示したが、本発明の鋏はそれに限定されるものでない。例えば、図2に示す鋏1Aのように、鋏片2Aにおいて刀身部2a全体と柄部2bの一部分が制振合金製の制振合金部13で構成されており、鋏片3Aにおいて刀身部3a全体と柄部3bの一部分が制振合金製の制振合金部14で構成されているものも、本発明に含まれる。鋏片2Aの制振合金部13と鋏片3Aの制振合金部14は、いずれも、原料の制振合金板をレーザーにより打ち抜いて得た打ち抜き品を使用してある。鋏片2Aの制振合金部13は柄部2bの残り部分と溶接で接合されている。鋏片3Aの制振合金部14も柄部3bの残り部分と溶接で接合されている。かかる構成の鋏1Aも、刀身部2a,3aの刃先2c,3c(図1参照)と指掛け5,5の指当り部5a,5aとの間に制振合金が介在するので、ドライカット時に生じた振動は美容師の手にほとんど伝わらず耳に入る切断音も小さい。尚、制振合金部品として、前記した打ち抜き品の代わりに、大量生産向けの鍛造品や、鋳造品を用いることも可能である。
【0018】
一方で、図2において、刀身部2a,3aの先端から一点鎖線Bで示す位置までを制振合金で構成し、一点鎖線Bから指掛け5,5までを汎用の鋼材で構成し、前記の制振合金と汎用鋼材とを溶接により連結するようにしても構わない。かかる構成の鋏も前記の鋏1Aと同様の作用、効果が得られる。
【0019】
また、図3に示す鋏1Bのように、鋏片2Bにおいて刀身部2aの凹面部2d全体および柄部2bの内側対向面を、制振合金製の被覆体9で被覆し、鋏片3Bにおいて刀身部3aの凹面部3d全体および柄部3bの内側対向面を、制振合金製の被覆体10で構成したものも、本発明に含まれる。これらの被覆体9,10は制振合金製の薄板材であり、基体である鋼材の表面を被った状態で溶接により被着される。尚、前記では、鋏片2Bと鋏片3Bの内側対向面を被覆体9,10で被覆したが、外側の表面を含む鋏片2Bと鋏片3Bの全表面を制振合金製の被覆体で被覆してもよい。
【0020】
そして、本発明に係る鋏は、図1に示すように、一対の刀身部2a,3aの互いに摺接する両方の刃先2c,3cを制振合金部15,16(図1中の二点鎖線で示す)で置き換えたものでも構わない。更には、刃先2c,3cのいずれか一方を制振合金で構成したものも、本発明に含まれる。
【0021】
また、本発明に係る鋏は、図1に示すように、柄部2b,3bにおいて図中一点鎖線Aで示す位置から先の指掛け5,5や指掛け突起7までの部分を制振合金で構成してよい。あるいは、指掛け5,5や指掛け突起7において、使用時に指が触れる内周面の指当り部5a,7aを制振合金で構成したり被覆したりしても構わない。更には、柄部2b,3bにおける一点鎖線A〜AA間の部分をそれぞれ制振合金で構成することもできる。
【0022】
また、図4に示した鋏1Cは理美容用の梳き鋏であり、一対の鋏片20,21と、鋏片20,21を揺動自在に枢支する支軸4とから主に構成されている。鋏片20は支軸4の位置を境に、棒刃20aと柄部20bとに区画される。鋏片21は支軸4の位置を境に、櫛刃21aと柄部21bとに区画される。櫛刃21aには、複数の櫛歯部21c,21c,21c,・・・が鋏片長手方向に間隔をあけて形成されている。そして、前記した一対の鋏片20,21は、棒刃20a、 櫛刃21a、および柄部20b,21bの全体が制振合金で構成されている。
【0023】
この鋏1Cでは、棒刃20aの刃先20cと櫛刃21aの櫛歯部21cとが交差して乾燥状態の髪を梳き切る際に生じた振動は、美容師の手にほとんど伝わらず耳に入る切断音も小さい。かかる梳き鋏において、部品の大部分を汎用の鋼材で構成し、櫛刃21aの櫛歯部21c,21c,21c,・・・の先端刃先だけ、あるいは棒刃20aの刃先20cだけを制振合金で置き換えたり被覆したりしても相応の効果を奏し得る。
【0024】
以上に述べた本発明の鋏は、上述の理美容用鋏に限るものでなく、工業用手鋏、裁縫鋏、事務用鋏、学童用鋏、その他の鋏に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係る鋏の開いた態様を示す平面図である。
【図2】本発明の別の実施形態に係る鋏の閉じた態様を示す側断面図である。
【図3】本発明の更に別の実施形態に係る鋏の閉じた態様を示す側断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る鋏の開いた態様を示す平面図である。
【符号の説明】
【0026】
1,1A,1B,1C 鋏
2,2A,2B,3,3A,3B,20,21 鋏片
2a,3a 刀身部
2b,3b、20b,21b 柄部
2c,3c,20c 刃先
4 支軸
5 指掛け
5a,7a 指当り部
7 指掛け突起(指掛け)
9,10 被覆体
13,14,15,16 制振合金部
20a 棒刃(刀身部)
21a 櫛刃(刀身部)
21c 櫛歯部
【出願人】 【識別番号】596022891
【氏名又は名称】林 伸昭
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳


【公開番号】 特開2008−5896(P2008−5896A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−176625(P2006−176625)