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【発明の名称】 ロボットの制御装置
【発明者】 【氏名】阪下 英知

【要約】 【課題】センサによる倣いを行っている際に、センサによる認識率又は認識失敗率を手元でリアルタイムに確認できる手段を備えたロボットの制御装置を提供する。

【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
教示データを入力する可搬式操作部と、ロボットに設けられる作業ツールと、前記作業ツールに搭載され、作業に先行して作業対象物の形状を認識するセンサとを有し、前記教示データに基づいて予め設定された主軌道に沿って前記作業ツールを動作させるとともに、前記センサの出力により前記作業ツールの動作を補正するロボットの制御装置において、
前記センサが作業対象物の形状を認識できた認識率又は認識失敗率を算出する算出手段を備え、
前記可搬式操作部に前記認識率又は認識失敗率を表示する表示手段が設けられたことを特徴とするロボットの制御装置。
【請求項2】
前記認識率が下限値未満、或いは認識失敗率が上限値以上になったとき、前記作業ツールの動作を停止する停止手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のロボットの制御装置。
【請求項3】
前記停止手段は、前記認識率が下限値未満、或いは認識失敗率が上限値以上になった状態が許容上限時間継続したとき、前記作業ツールの動作を停止することを特徴とする請求項2に記載のロボットの制御装置。
【請求項4】
前記停止手段は、前記認識率が下限値未満になった状態、或いは認識失敗率が上限値以上になった状態で、作業ツールが許容上限距離を越えて移動したとき、前記作業ツールの動作を停止することを特徴とする請求項2に記載のロボットの制御装置。
【請求項5】
前記表示手段は、その時々の認識率、又は認識失敗率を表又はグラフで表示することを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項に記載のロボットの制御装置。
【請求項6】
前記教示データに基づいて作業ツールの位置及び姿勢を示す複数の主軌道補間点を算出する主軌道補間点算出手段と、
前記作業ツールの現在位置及び姿勢を算出する現在位置算出手段と、
前記算出された作業ツールの現在位置及び姿勢と前記センサの出力とに基づいて前記作業ツールの目標位置及び姿勢を設定する目標位置設定手段と、
前記目標位置設定手段から前記目標位置及び姿勢が送信された際、前記主軌道補間点を、該目標位置及び姿勢に置き換えて補正を行うとともに、前記目標位置設定手段から前記目標位置及び姿勢が送信されなかった際、これまでの補間点補正を保持する倣い補正処理手段を備え、
前記算出手段は、前記目標位置設定手段から前記倣い補正処理手段への送信内容に基づいて認識率又は認識失敗率を算出することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のロボットの制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットに設けられる作業ツールと、前記作業ツールに配置され作業対象物の形状を検出するセンサとを有し、予め設定された主軌道に沿って前記作業ツールを動作させるとともに、前記センサの出力により前記作業ツールの動作を補正するロボットの制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶接ロボットの作業ツールに、進行方向側の被溶接物の形状を検出するレーザセンサを搭載し、溶接を行う際に溶接ロボットに正確な作業を行わせるようにしたロボットの制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなロボットの制御装置では、溶接作業に先行して被溶接物の開先の特徴点をレーザセンサにより検出し、それらを3次元的につなぎ合わせることで作業ツールの目標位置及び姿勢を演算している。そして、予め設定された主軌道に沿って作業ツールを動作させるとともに、レーザセンサから順次得られる検出結果に応じて、作業ツールの動作位置及び姿勢を倣い補正している。
【0003】
上記のようなロボットの制御装置が行う制御について説明する。
ここで前記制御装置は、溶接ロボットを制御するロボット制御部とレーザセンサを制御するセンサ制御部とを備えている。ロボット制御部は、予め入力されている教示データから主軌道補間点を算出する主軌道補間点算出処理部と、作業ツールの目標位置及び姿勢に基づいて倣い補正を行う倣い補正処理部と、作業ツールの現在位置及び姿勢を算出する現在位置算出処理部とを備えている。
【0004】
前記主軌道補間点算出処理部は、作業ツールの移動に先行して、作業ツールの位置及び姿勢を示す複数の主軌道上の補間点(以下、主軌道補間点という)を前記教示データから算出する。算出された主軌道補間点は、順次倣い補正処理部に出力されて、現在位置算出処理部に送られる。現在位置算出処理部は、作業ツールの現在位置及び姿勢を算出し、その現在位置及び姿勢をセンサ制御部に送信する。
【0005】
一方、センサ制御部は、受信した作業ツールの現在位置及び姿勢と、レーザセンサによる被溶接物の形状検出結果とを照らし合わせて、作業ツールの目標位置及び姿勢を設定(すなわち、計算)し、その目標位置及び姿勢を、ロボット制御部の倣い補正処理部に返信する。倣い補正処理部は、主軌道補間点を受信した目標位置及び姿勢に置き換える。前記ロボットの制御装置は、このようなフィードバック制御を行うことで、作業ツールの目標位置及び姿勢を倣い補正し、溶接ロボットに正確な作業を行わせるようにしている。
【特許文献1】特開平9-76065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記センサ制御部では、作業ツールの目標位置及び姿勢が設定(計算)ができない場合がある。このような事態は、例えばレーザセンサが被溶接物の開先を認識できなかった場合に発生する。開先が認識できない場合の例としては、被溶接物において予め設定したプロファイルに、実際の形状が当てはまらない場合である。例えば、被溶接物において倣い区間中にある仮付けにより開先がなくなる場合や、或いは被溶接物に大きな湾曲があり、開先上にレーザ光を照射できなくなった場合である。
【0007】
このような場合、センサ制御部は、目標位置等が算出できた場合と、目標位置等が算出できない場合とに応じてロボット制御部に対する送信コマンドを変えることにより、ロボットの補正方法をリアルタイムに変更している。すなわち、算出できないコマンドをロボット制御部が受けた場合、ロボット制御部はこれまでの補間点補正を保持する。
【0008】
ところが、倣いを行っている途中では、算出できなかった旨のコマンドを1回受信した場合、ロボット制御部では溶接を止めないようにしている。この理由は、開先の状態によっては、数十補正に1回の割合で目標位置等の計算ができない場合もあり、計算が出来なかった時点で必ず溶接を停止すると、しばしば生産を止めることになるためである。
【0009】
一方、教示を丁寧に行い、教示位置と実ワークのずれが大きくない場合、ずれが小さいが故に、ロボットが本当に倣っているのか或いは教示通りないし保持動作で動作しているのかの判断を目視で行うことは難しい。
【0010】
なお、調整用パーソナルコンピュータをセンサ制御部に接続することにより、調整のみならず、レーザセンサ倣い状況の確認を行うことができる。しかしながら、調整時以外に溶接現場に調整用パーソナルコンピュータを設置したままにしておくことは、アーク溶接が行われる場所である周囲環境の状況から適切ではない。
【0011】
そのために、調整が完了した後、レーザセンサ倣いが適切に行われているのかをオペレータが手元で確認できる手段が要望されていた。
本発明の目的は、センサによる倣いを行っている際に、センサによる認識率又は認識失敗率を手元でリアルタイムに確認できる手段を備えたロボットの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、教示データを入力する可搬式操作部と、ロボットに設けられる作業ツールと、前記作業ツールに搭載され、作業に先行して作業対象物の形状を認識するセンサとを有し、前記教示データに基づいて予め設定された主軌道に沿って前記作業ツールを動作させるとともに、前記センサの出力により前記作業ツールの動作を補正するロボットの制御装置において、前記センサが作業対象物の形状を認識できた認識率又は認識失敗率を算出する算出手段を備え、前記可搬式操作部に前記認識率又は認識失敗率を表示する表示手段が設けられたことを特徴とするロボットの制御装置を要旨とするものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記認識率が下限値未満、或いは認識失敗率が上限値以上になったとき、前記作業ツールの動作を停止する停止手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2において、前記停止手段は、前記認識率が下限値未満、或いは認識失敗率が上限値以上になった状態が許容上限時間継続したとき、前記作業ツールの動作を停止することを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項2において、前記停止手段は、前記認識率が下限値未満になった状態、或いは認識失敗率が上限値以上になった状態で、作業ツールが許容上限距離を越えて移動したとき、前記作業ツールの動作を停止することを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4のうちいずれか1項において、前記表示手段は、その時々の認識率、又は認識失敗率を表又はグラフで表示することを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項において、前記教示データに基づいて作業ツールの位置及び姿勢を示す複数の主軌道補間点を算出する主軌道補間点算出手段と、前記作業ツールの現在位置及び姿勢を算出する現在位置算出手段と、前記算出された作業ツールの現在位置及び姿勢と前記センサの出力とに基づいて前記作業ツールの目標位置及び姿勢を設定する目標位置設定手段と、前記目標位置設定手段から前記目標位置及び姿勢が送信された際、前記主軌道補間点を、該目標位置及び姿勢に置き換えて補正を行うとともに、前記目標位置設定手段から前記目標位置及び姿勢が送信されなかった際、これまでの補間点補正を保持する倣い補正処理手段を備え、前記算出手段は、前記目標位置設定手段から前記倣い補正処理手段への送信内容に基づいて認識率又は認識失敗率を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、請求項1の発明によれば、センサによる倣いを行っている際に、オペレータはセンサによる認識率を手元でリアルタイムに確認できる効果を奏する。この結果、センサ倣いが適切に行われているのかをオペレータが手元で確認できる効果を奏する。
【0018】
請求項2の発明によれば、認識率が下限値未満、或いは認識失敗率が上限値以上になった際に、作業ツールの動作を停止できるため、誤った作業ツールの動きを自動停止させることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、設計上で許容している許容上限時間内では停止させずに、かつ、誤った作業ツールの動作を停止することができる。
請求項4の発明によれば、設計上で作業ツールの移動を許容している許容上限距離内では停止させずに、かつ、誤った作業ツールの動作を停止することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、その時々の認識率が表又はグラフで表示されるため、オペレータはその時々のセンサの認識率、又は認識失敗率を時系列で確認することができる。
請求項6の発明によれば、算出手段は、目標位置設定手段から倣い補正処理手段への送信内容に基づいて認識率又は認識失敗率を算出することにより、確実に認識率又は認識失敗率を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るロボットの制御装置を溶接ロボットの制御装置に適用した第1実施形態を図1〜9を参照して説明する。
【0022】
図1は溶接ロボットの制御装置10の構成を示すブロック図である。溶接ロボットの制御装置10は、ワーク(作業対象物)Wに対してアーク溶接を自動で行うように制御するものであり、溶接作業を行うマニピュレータMと、マニピュレータMを制御するロボット制御部RCと、ワークWの形状を検出するセンサとしてのレーザセンサLSと、レーザセンサLSを制御するセンサ制御部LUとを備える。又、ロボット制御部RCには、図9に示すように可搬式操作部としてのティーチペンダントTPが接続されている。ティーチペンダントTPはキーボード41及び表示手段としての液晶ディスプレイ42が設けられている。キーボード41により各種の教示データがロボット制御部RCに入力される。
【0023】
マニピュレータMは、フロア等に固定されるベース部材12と、複数の軸を介して連結された複数のアーム13とを備える。最も先端側に位置するアーム13の先端部には、作業ツールとしての溶接トーチ14が設けられる。溶接トーチ14は、溶加材としてのワイヤ15を内装し、図示しない送給装置によって送り出されたワイヤ15の先端とワークWとの間にアークを発生させ、その熱でワイヤ15を溶着させることによりワークWに対して溶接を施す。アーム13間には複数のモータ(図示しない)が配設されており、モータの駆動によって溶接トーチ14を前後左右に自在に移動できるように構成されている。
【0024】
ロボット制御部RCは、前記モータを駆動制御することにより、予め設定された教示データの主軌道に沿って溶接トーチ14を動作させる。又、ロボット制御部RCは、溶接電流及び溶接電圧といった溶接条件を溶接電源WPSに対して出力し、溶接電源WPSからパワーケーブルPKを通じて供給される電力によって溶接作業を行わせる。
【0025】
レーザセンサLSは、レーザの発光及び受光によりワークWまでの距離を測定する走査型のレーザセンサであり、溶接トーチ14に搭載される。図3にレーザセンサLSの概略構成を示す。レーザセンサLSは、レーザをワークWに向けて発光する発光部32と、ワークWで反射したレーザを受光する受光部33と、発光及び受光されるレーザを反射するミラースキャナ34とを備える。発光部32で発光されたレーザは、ミラースキャナ34で反射してワークWに照射される。ワークWで乱反射したレーザは、ミラースキャナ34で反射して受光部33に導かれる。受光部33は、CCDラインセンサにより構成されており、受光量分布の重心位置からワークWまでの距離を測定する。又、ミラースキャナ34は回転軸34aを中心に所定角度回転可能に構成されており、ミラースキャナ34の回転によって例えばワークWの位置Aから位置Bまでの範囲を走査しながら距離を測定する。
【0026】
センサ制御部LUは、レーザセンサLSを駆動制御し、測定される距離情報からワークWの開先形状を検出する。測定対象のワークWが図3に示すような重ね継手である場合、ミラースキャナ34を回転させて、所定の範囲を走査しながら各サンプリング点について距離を測定すると、図2に示すような2次元データが得られる。センサ制御部LUは、複数のサンプリング点CからワークWの開先形状Wfを作成し、開先形状WfからワークWの特徴点Dを取得する。センサ制御部LUは、溶接トーチ14が移動した位置においても、同様の手法で距離を測定してワークWの特徴点Dを取得する。
【0027】
そして、図4に示すように、センサ制御部LUは、取得された特徴点Dをつなぎ合わせることで特徴点の3次元軌道Eを生成する。センサ制御部LUは、このように求めた3次元軌道Eから溶接トーチ14の目標位置及び姿勢を設定する。すなわち、センサ制御部LUは、3次元軌道Eの接線ベクトルを進行方向ベクトルvとして目標位置を設定するとともに、ワークWの法線に対して予め設定された所定の目標相対角度αを与えることで目標姿勢を設定する。
【0028】
なお、センサ制御部LUは、目標位置及び姿勢を設定する際に、レーザセンサLSにより検出される開先情報だけでは、レーザセンサLSを基準としたセンサ座標系に対する位置及び姿勢しか算出できない。このため、センサ制御部LUは、ロボット制御部RCから溶接トーチ14の現在位置及び姿勢を取得して、レーザセンサLSを基準としたセンサ座標系からマニピュレータMを基準としたロボットの基準座標系への変換を適宜行う。すなわち、センサ制御部LUは、ロボット制御部RCから取得した現在位置及び姿勢と、センサ制御部LUに予め記憶されているセンサ座標系から基準座標系への同次変換行列と、レーザセンサLSにより検出される開先情報とから、基準座標系における目標位置及び姿勢を算出する。
【0029】
次に、マニピュレータMにより溶接作業が行われるときに、ロボット制御部RC及びセンサ制御部LUが行う制御について説明する。ロボット制御部RCには、溶接作業が行われる前に、溶接が行われる際のマニピュレータMの動作及び溶接条件等を示す教示データが入力されている。図5にロボット制御部RC及びセンサ制御部LUの機能ブロック図を示す。ロボット制御部RC及びセンサ制御部LUは、それぞれコンピュータから構成されている。
【0030】
ロボット制御部RCは、教示データから溶接トーチ14の主軌道補間点を算出する主軌道補間点算出処理部22と、溶接トーチ14の目標位置及び姿勢に基づいて倣い補正を行う倣い補正処理部23と、溶接トーチ14の現在位置及び姿勢を算出する現在位置算出処理部25と、センサ制御部LUと通信を行うための通信処理部27を備える。主軌道補間点算出処理部22は主軌道補間点算出手段に相当し、倣い補正処理部23は倣い補正処理手段に相当する。又、現在位置算出処理部25は現在位置算出手段に相当する。センサ制御部LUは目標位置設定手段に相当する。
【0031】
又、ロボット制御部RCは、センサ制御部LUの目標位置及び姿勢の計算が成功した率(以下、認識率という)を算出する算出部26及びロボット制御部RCとセンサ制御部LU間の通信時の所定のコマンドを逐次カウントし、そのカウント数を格納する記憶手段としてのメモリ28を備えている。メモリ28の詳細については後述する。ここで、算出部26は算出手段に相当する。
【0032】
主軌道補間点算出処理部22は、溶接トーチ14の移動に先行して、溶接トーチ14の位置及び姿勢を示す複数の主軌道補間点を前記教示データから算出する。算出された主軌道補間点は、バッファ24に格納されるとともに、順次倣い補正処理部23に出力されて、現在位置算出処理部25に送られる。
【0033】
現在位置算出処理部25は、マニピュレータMに内蔵されているとともにモータ(図示しない)の回転位置を検出するエンコーダ等から読み出した位置検出値に基づいて、溶接トーチ14の現在位置及び姿勢を算出する。前記算出された現在位置及び姿勢は、通信処理部27を介してセンサ制御部LUに送信される。なお、通信処理部27は、センサ制御部LUに対して制御情報を送信する際に、その種類を明示するためのコマンドを付して送信したり、或いは通信開始や、通信終了等を示す各種コマンドを送信する。前記算出された現在位置及び姿勢を制御情報として通信処理部27が送信する場合、例えば、前記制御情報の先頭にはコマンドとして「CG」が付される。
【0034】
センサ制御部LUは、通信処理部LUaを介して前記現在位置及び姿勢を受信する。そして、センサ制御部LUは、レーザセンサLSによるセンサ補正周期Scycle(秒)で得られるワークWの形状検出結果と受信した現在位置及び姿勢とを照らし合わせて、溶接トーチ14の目標位置及び姿勢を設定(算出)する。そして、センサ制御部LUは、設定(算出)された目標位置及び姿勢を、通信処理部LUaを介してロボット制御部RCの通信処理部27に送信する。なお、通信処理部LUaは、ロボット制御部RCに対して制御情報を送信する際に、その種類を明示するためのコマンドを付して送信したり、或いは通信開始や、通信終了等を示す各種コマンドを送信する。ここで、前記設定(算出)された目標位置及び姿勢を制御情報として通信処理部LUaが送信する場合、例えば、前記制御情報の先頭にはコマンドとして「cc」が付される。
【0035】
ロボット制御部RCの通信処理部27は受信した目標位置及び姿勢を倣い補正処理部23に入力する。そして、倣い補正処理部23は、前記主軌道補間点を、前記受信した目標位置及び姿勢に置き換える。
【0036】
なお、センサ制御部LUは、溶接トーチ14の目標位置及び姿勢を設定(算出)ができない場合がある。例えば、レーザセンサLSが被溶接物であるワークWの開先を認識できなかった場合に発生する。開先が認識できない場合としては、ワークWにおいて予め設定したプロファイルに、実際の形状が当てはまらない場合であって、ワークWにおいて倣い区間中にある仮付けにより開先がなくなる場合や、或いはワークWに大きな湾曲があり、開先上にレーザ光を照射できなくなった場合である。
【0037】
この場合は、センサ制御部LUは、溶接トーチ14の目標位置及び姿勢を設定(算出)ができなかった、すなわち、目標位置等計算不成功を意味するコマンド「cz」をロボット制御部RCに送信する。
【0038】
この場合、ロボット制御部RCはこのコマンド「cz」を通信処理部27を介して受信すると、これまでの補間点補正を保持する。
ここで、ロボット制御部RCとセンサ制御部LUとの間で行われている通信の具体例を図6及び図7を参照して説明する。
【0039】
図6は、センサ制御部LUで目標位置等の計算が成功した事例であって、ロボット制御部RCとセンサ制御部LU間の通信において、倣い開始から倣い終了までの通信例が示されている。図6において、ロボット制御部RCから倣い開始コマンドMTが送信され、センサ制御部LUでこのコマンドを受信すると、センサ制御部LUから倣い開始レディコマンドmoが送信される。以後、ロボット制御部RCからコマンドCGが付された現在位置及び姿勢の送信がされ、センサ制御部LUでこれを受信すると、センサ制御部LUでは、前述したように目標位置等の設定(算出)がされる。そして、センサ制御部LUは目標位置等をロボット制御部RCにコマンドccを付して送信する。以後、同様に繰り返される。ここで、コマンドccは、目標位置等の計算に成功した場合に該目標位置等に付されるコマンドであるため、レーザセンサLSがワークWの形状を認識できた結果を示すことになる。
【0040】
そして、倣いが終了される際には、ロボット制御部RCから倣い終了コマンドMEがセンサ制御部LUに送信される。そして、センサ制御部LUはこのコマンドを受信すると、倣い終了コマンドとしてmoを送信する。ロボット制御部RCは、このコマンドを受信することにより、倣いを終了する。
【0041】
図7は、センサ制御部LUで、目標位置等計算が不成功の事例が示されている。なお、図6での重複説明は省略する。ここでは、目標位置等の設定(すなわち、計算)が不成功の場合は、コマンドczがロボット制御部RCに送信される。図7の例では、続けてコマンドczがロボット制御部RCに送信されていることが示されている。コマンドczは目標位置等の計算に成功しなかった場合に送信されるコマンドであるため、レーザセンサLSがワークWの形状を認識できなかった結果を示すことになる。
【0042】
ここで、ロボット制御部RCのメモリ28について説明する。メモリ28には、倣いが開始されてから終了するまでの間に、ロボット制御部RCが受信したコマンドcc,czの数、及び両コマンドの合計数(以下、全受信データ数という)がそれぞれ格納される。すなわち、メモリ28はカウンタとして機能する。
【0043】
ここで、コマンドccのカウント数をCcc、コマンドczのカウント数をCcz、両コマンドの合計カウント数をCtとする。メモリ28は倣い開始時には、前記カウント数が0に初期化された後、以下のようにカウントする。
【0044】
Ccc= Ccc +1 …(1)
Ccz= Ccz +1 …(2)
Ct = Ct +1 …(3)
すなわち、コマンドccがあった場合は、目標位置等の計算に成功したときであり、Cccは1加算される。又、コマンドczがあった場合は、目標位置等の計算に失敗したときであり、Cczは1加算される。又、Ctは目標位置等の計算に成功、失敗にかかわらず1加算される。
【0045】
ここで、メモリ28において、Ctの格納領域は区間最大データ数Nmaxの初期値を100(個)としたリングバッファである。なお、区間最大データ数Nmaxはソフトウェアで正の範囲で自由に変えられるものとする。Ctが区間最大データ数Nmaxを越えたとき、前記式(1)〜式(3)で加算処理された後、Ccc,Ccz,Ctから「1」を減ずるものとする。
【0046】
算出部26は、このときの全受信データ数に対する目標位置計算成功の比率である認識率Rrを式(4)で算出する。
Rr=Ccc/Ct × 100(%) …(4)
算出部26は算出した認識率RrをティーチペンダントTPに出力して、図8、図9に示すように液晶ディスプレイ42の表示画面42aに表示する。ここで、認識率Rrは区間最大データ数Nmaxでの移動平均値となる。
【0047】
又、算出部26は、連続認識不可距離を、不成功の連続回数とセンサ補正周期Scycle(秒)に基づいて算出し、前記認識率Rrと合わせてティーチペンダントTPに出力して、図8に示すように液晶ディスプレイ42の表示画面42aに表示する。
【0048】
なお、算出部26は、認識失敗率Frを式(5)で算出するとともに認識失敗率FrをティーチペンダントTPに出力して、液晶ディスプレイ42の表示画面42aに表示するようにしてもよい。
【0049】
Fr=Ccz/Ct × 100(%) …(5)
なお、区間最大データ数Nmaxを長さDN(mm)を使用して設定してもよい。この場合は、レーザセンサ倣い速度をVt(mm/秒)、センサ補正周期Scycle(秒)とすると、区間最大データ数Nmaxは式(6)で得られる。
【0050】
Nmax=(DN/Vt)/Scycle …(6)
このようにすれば、長さDN(mm)毎の認識率Rrが得られるためオペレータにとっては理解しやすいものとなる。
【0051】
上記第1実施形態の溶接ロボットの制御装置10によれば、以下のような効果を得ることができる。
さて、本実施形態によれば、以下のような特徴がある。
【0052】
(1) 本実施形態では、ロボットの制御装置10は、レーザセンサLSがワークWの形状を認識できた認識率を算出する算出部26(算出手段)を備えているとともに、ティーチペンダントTPに認識率Rrを表示する液晶ディスプレイ42が設けられている。この結果、レーザセンサLSによる倣いを行っている際に、オペレータはレーザセンサLSによる認識率Rrを手元でリアルタイムに確認できる効果を奏する。
【0053】
特に溶接中は、ワークWにオペレータが近づけない環境にある場合、ロボット動作中にはオペレータは離れた位置から目視で倣い溶接状況をみるしかない。しかし、それでは、レーザセンサ倣いが適切に行われているのかを確認することが難しい。しかし、本実施形態によれば、ティーチペンダントTPの液晶ディスプレイ42により認識率を確認することができるため、レーザセンサ倣い状況を簡単に確認することができる。
【0054】
(2) 本実施形態では算出部26(算出手段)は、センサ制御部LU(目標位置設定手段)からロボット制御部RCの倣い補正処理部23(倣い補正処理手段)への送信内容に基づいて認識率を算出するようにした。具体的には、レーザセンサLSによりワークWの形状の認識ができた結果を意味するコマンドccや、認識ができなかった結果を示すコマンドczがメモリ28にてカウントされるので、このカウント結果に基づいて算出部26は認識率を算出するようにした。この結果、センサ制御部LUからロボット制御部RCに送信される内容に基づいて容易に認識率の算出ができる。
【0055】
(3) 又、本実施形態では、認識率Rrは区間最大データ数Nmaxでの移動平均値が得られるようにしている。このため、メモリ28のCtのカウントのための格納領域はリングバッファとすることができ、メモリ28の容量を大きくする必要がなくなる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図10を参照して説明する。なお、第1実施形態と同一構成については同一符号を付す(第2実施形態を含めた他の実施形態についても同様)。第2実施形態では、算出部26がその時々に算出した認識率RrがティーチペンダントTPの液晶ディスプレイ42の表示画面42aに図10に示すように折れ線グラフで表示されている。なお、グラフは折れ線グラフ以外に棒グラフ等の他のグラフで表示するようにしてもよい。このようにすると、認識率Rrが時系列でどのようにかわったのかをオペレータは知ることができる。又、第1実施形態で述べた長さDN(mm)毎に認識率Rrの変化を折れ線グラフや、棒グラフ等で表示するようにしてもよい。又、認識率Rrに変えて、認識失敗率Frをグラフで表示するようにしてもよい。
【0057】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態のロボットの制御装置10を説明する。第3実施形態では、算出部26は、認識率Rrを算出した後、予め設定されるとともにメモリ28に格納された下限値Rrl(%)と該認識率Rrの大小関係を判定し、Rrl>Rrの場合に、倣い溶接を自動停止させる。他の構成は、第1実施形態と同様である。第3実施形態の算出部26は算出手段及び停止手段に相当する。このようにロボットの制御装置10が構成されていることにより、認識率が下限値未満になった際に、溶接トーチ14の溶接作業を自動停止できるため、誤った溶接トーチ14による溶接を未然に防止できる。
【0058】
(第4実施形態)
第4実施形態は第3実施形態の構成にさらに下記の構成を追加してもよい。すなわち、前記下限値Rrl(%)に加えて、許容上限時間Tallow(秒)が予め設定されてメモリ28に格納されている。そして、算出部26は、Rrl>Rrとなる回数が、Tallow(秒)/Scycle(秒)回連続した場合に、許容上限時間Tallow(秒)連続して下限値Rrl(%)を下回ったものとして、倣い溶接を自動停止させる。第4実施形態の算出部26は算出手段及び停止手段に相当する。なお、前記許容上限時間Tallow(秒)は、仮付け区間と対応して設定されたものであり、予め設定されている倣い溶接速度に基づいて算出して得られるものである。このように構成されていることにより、第4実施形態では、設計上で許容している仮付け区間では停止させずに、かつ誤った溶接を未然に防止することができる効果がある。
【0059】
(第5実施形態)
第5実施形態は、第4実施形態で説明した許容上限時間Tallow(秒)の代わりに予め許容上限距離DUpper(mm)が設定されている。予め設定されている倣い溶接速度をvt(mm/秒)とすると、算出部26は、Rrl>Rrとなる回数が(DUpper(mm)/vt(mm/秒))/Scycle(秒)回連続した場合に、DUpper(mm)連続して下限値を下回ったものとし、倣い溶接を自動停止させる。第5実施形態の算出部26は算出手段及び停止手段に相当する。
【0060】
このように構成されていることにより、許容上限距離DUpper(mm)を越えたときにはロボットを停止させることができるため、誤った溶接を未然に防止することができる。
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0061】
○ 第2実施形態では、認識率をグラフで表したが、グラフの代わりに、或いはグラフとともにその時々に算出された認識率Rrや認識失敗率Frを表でティーチペンダントTPの液晶ディスプレイ42に表示してもよい。この場合にも、第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0062】
○ 第3実施形態では、認識率Rrが下限値Rrl(%)未満のとき、算出部26は、ロボットを停止するようにしたが、これに代えて下記のように構成してもよい。すなわち、算出部26は、認識失敗率Frを算出した後、予め設定されるとともにメモリ28に格納された上限率Rru(%)と該認識失敗率Frの大小関係を判定し、認識失敗率Frが上限率Rru(%)以上の場合に、倣い溶接を自動停止させる。この場合も、算出部26は算出手段及び停止手段に相当する。
【0063】
このようにロボットの制御装置10を構成しても、第3実施形態と同様の効果を奏する。
○ 第4実施形態の構成において、算出部26は、認識率Rrを算出する代わりに、下記のようにしてもよい。すなわち、算出部26は認識失敗率Frを算出し、認識失敗率Frが上限率Rru(%)以上の回数が、Tallow(秒)/Scycle(秒)回連続した場合に、許容上限時間Tallow(秒)連続して上限率Rru(%)以上の認識失敗率Frがあったものとして、倣い溶接を自動停止させてもよい。
【0064】
この場合も、算出部26は算出手段及び停止手段に相当する。このようにロボットの制御装置10を構成しても、第4実施形態と同様の効果を奏する。
○ 第5実施形態の構成において、算出部26は、認識率Rrを算出する代わりに下記のようにしてもよい。すなわち、算出部26は認識失敗率Frを算出し、認識失敗率Frが上限率Rru(%)以上の回数が、(DUpper(mm)/vt(mm/秒))/Scycle(秒)回連続してなった場合に、DUpper(mm)連続して上限率Rru(%)以上の認識失敗率Frがあったものとして、倣い溶接を自動停止させてもよい。
【0065】
この場合、算出部26は算出手段及び停止手段に相当する。このようにロボットの制御装置10を構成しても、第5実施形態と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明を具体化した第1実施形態に係る溶接ロボットの制御装置の構成を示すブロック図。
【図2】レーザセンサが測定するワークの2次元データ。
【図3】レーザセンサの概略構成図。
【図4】ワークの特徴点から生成される3次元軌道を示す概略図。
【図5】ロボット制御部及びセンサ制御部の機能ブロック図。
【図6】ロボット制御部とセンサ制御部間の送受信の説明図。
【図7】ロボット制御部とセンサ制御部間の送受信の説明図。
【図8】ティーチペンダントの表示装置の表示画面の説明図。
【図9】ティーチペンダントの概略図。
【図10】他の実施形態におけるティーチペンダントの表示装置の表示画面の説明図。
【符号の説明】
【0067】
14…溶接トーチ(作業ツール)、
22…主軌道補間点算出処理部(主軌道補間点算出手段)、
23…倣い補正処理部(倣い補正処理手段)、
25…現在位置算出処理部(現在位置算出手段)、
26…算出部(算出手段、停止手段)、
LU…センサ制御部(目標位置設定手段)、
TP…ティーチペンダント(可搬式操作部)、
LS…レーザセンサ(センサ)。
【出願人】 【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
【出願日】 平成18年8月31日(2006.8.31)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣

【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠


【公開番号】 特開2008−55552(P2008−55552A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−235778(P2006−235778)