トップ :: B 処理操作 運輸 :: B25 手工具;可搬型動力工具;手工具用の柄;作業場設備;マニプレ−タ

【発明の名称】 移動型ロボット
【発明者】 【氏名】村瀬 有一

【要約】 【課題】移動型ロボットに関し、転倒開始前に転倒の可能性を評価することにより、転倒を未然に防止することを目的とする。

【構成】走行部1と、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部と、
走行部上に搭載される操作アームと、
走行部の接地面におけるゼロモーメントポイントを検出するZMP検出センサと、
ゼロモーメントポイントの支持多角形に対する位置から転倒安定性を評価する安定性評価部と、
を有する移動型ロボット。
【請求項2】
前記操作アームを走行部に対して支持点位置可変に支持するアーム保持部と、
アーム保持部を駆動するアーム位置変更用アクチュエータと、
ゼロモーメントポイントが支持多角形内に位置するようにアーム位置変更用アクチュエータを駆動制御するZMP制御部と、
を有する請求項1記載の移動型ロボット。
【請求項3】
前記アーム保持部は、走行部上を水平移動可能に立設される支柱と、
支柱に対して支持高さ可変に連結されて前記操作アームを回転駆動可能に支持するアーム連結部と、
を有する請求項2記載の移動型ロボット。
【請求項4】
前記アーム保持部は、走行部上に固定される固定支柱と、
固定支柱に対して垂直回転可能に連結されて前記操作アームを回転駆動可能に支持するアーム連結部と、
を有する請求項2記載の移動型ロボット。
【請求項5】
前記ZMP検出センサは、走行部上に設定される接地面からの高さの異なる複数の検出平面上での加重作用点を決定可能な複数の単軸力センサにより構成され、
接地面におけるゼロモーメントポイントが、前記加重作用点間で演算される荷重ベクトルを使用して検出される請求項1、2、3または4記載の移動型ロボット。
【請求項6】
前記複数の検出平面に代えて、接地面近傍の1面に対して演算された加重作用点を接地面におけるゼロモーメントポイントの近似値として使用する請求項5記載の移動型ロボット。



【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、移動型ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐転倒性能に優れた移動型ロボットとしては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、移動型ロボットは、全方位移動台車(走行部)上にロボットアームを搭載して形成される。全方位移動台車には直動アクチュエータにより駆動される支持部材が搭載され、全方位移動台車上に固定される傾斜角センサが全方位移動台車の傾斜を検出すると、支持部材が全方位移動台車の側方に張り出し駆動され、移動型ロボットの転倒が防止される。
【特許文献1】特開2006-53731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述した従来例において、支持部材による転倒防止動作は、傾斜角センサが転倒危険傾斜角を検出した際、すなわち、実際に転倒が開始した際のさらなる転倒を防止するためのもので、転倒を予め予見することができないという欠点を有する。
【0004】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、転倒開始前に転倒の可能性を評価することにより、転倒を未然に防止することのできる移動型ロボットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
移動型ロボットは、車輪1a、あるいはクローラからなる移動手段を備える走行部1上に操作アーム2を搭載して構成される。移動型ロボットの転倒に対する安定性を評価するために、ZMP検出センサ4によりゼロモーメントポイント(以下、「ZMP」)が計測され、安定性評価部5において評価される。
【0006】
ZMPは、重力と慣性力との合力が接地面3と交わる交点であり、走行部1の接地点の凸包として定義される支持多角形内にあるときは、転倒の可能性はないと判定できる。ZMPは、慣性力を考慮して決定されるために、例えば、加速移動等の動的安定性の評価も可能であり、安定性評価部5は、支持多角形内にZMPが存在するか否かにより転倒の危険性を判定する。
【0007】
安定性評価部5からの出力は、ロボットの運用方法によって種々の態様で利用することができ、例えば、ZMPが支持多角形の辺縁近傍に位置する場合には、ZMPが当該辺縁を超える方向の加速度運転を制限する等、走行部1での運転制御に加え、搬送物の積載状態の判定等に利用でき、安定性評価部5からの出力値も、利用方法によって、”OK”、”NG”の2値以外に、支持多角形に対する位置から求められた離散的、あっるいは連続的な安定性余裕値とすることができる。
【0008】
したがってこの発明において、移動型ロボットは、ZMPを利用した転倒安定性を評価可能であるために、安定的な走行、運用が可能になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、転倒開始前に転倒の可能性を評価することができるため、転倒を未然に防止し、安定した運用が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1、2に示すように、移動型ロボットは、走行部1上にアーム保持部6を保持して形成される。走行部1はベースプレート1b上に走行部本体1cを積層、保持して形成され、ベースプレート1bに車軸1dが回転自在に保持されて4個の車輪1aが取り付けられる。車輪1aは、走行部1に組み込まれたモータ等の走行部用アクチュエータ14により回転駆動され、さらに、図外の操舵部により方向転換できる。
【0011】
アーム保持部6は、走行部1上に前後方向移動可能に立設される支柱9と、支柱9に上下移動可能に連結されるアーム連結部10とを有する(以下、本明細書において、直進時の走行方向を「前方」とする。)。アーム保持部6の上端には、カメラ15aを備えた頭部15が固定される。
【0012】
上記支柱9、およびアーム連結部10を駆動するために、アーム位置変更用アクチュエータ7が設けられる。図1(a)において、アーム位置変更用アクチュエータ7は、走行部1内に収容されて支柱9を前後に駆動する支柱駆動用アクチュエータ7Aと、アーム連結部10内に収容されてアーム連結部10を支柱9に沿って上下駆動するアーム連結部駆動用アクチュエータ7Bとから構成される場合を示したが、配置、個数は適宜変更できる。
【0013】
図1において2は先端に2枚の把持爪2aを備えた操作アーム2であり、アーム連結部10に回転自在に連結される。この操作アーム2は、関節部2bと把持爪2a間の連結部に回転自由度を有しており、図外のアーム駆動用アクチュエータにより、各部が回転駆動される。
【0014】
したがってこの実施の形態において、アーム位置変更用アクチュエータ7を駆動することにより、用途に応じた種々の姿勢を取ることができる。図1(a)は、アーム連結部10を支柱9の上端近傍に位置させるとともに、支柱9を走行部1の後端部近傍に位置させることにより、高い位置での搬送物の受け渡しを可能にし、かつ、走行部1前部を搬送物の載置部として利用可能にした姿勢を示す。
【0015】
これに対し、図1(b)は、アーム連結部10を支柱9の下端近傍に位置させるとともに、支柱9を前方に移動させてアーム連結部10を走行部1の中央部に位置させることにより重心位置を低く、かつ、走行部1中心に位置させ、高速走行時の安定性を高めた姿勢を示す。
【0016】
上記走行部1には複数の単軸力センサから構成されるZMP検出センサ4が配置される。図2(a)に示すように、単軸力センサ4は、ベースプレート1b上に固定され、荷重測定方向を鉛直方向に向けて走行部本体1cとの境界部に配置される。
【0017】
図2(a)に示すように、ベースプレート1bの一部には上方への膨隆部16が形成され、単軸力センサ4は、一般部と膨隆部16の頂部により形成される2段の検出平面12上に各々配置される(以下、上下検出平面12を分ける必要がある場合、下段の検出平面を12-1、上段の検出平面を12-2と付番する。)各検出平面12は、車輪1aの走行面(接地面3)に平行であり、図2(b)に示すように、各検出平面12上に4個の単軸力センサ4が配置される。単軸力センサ4間の間隔を大きくして検出精度を高めるために、各検出平面12の四隅部近傍に配置される。図2(b)において、下段の検出平面12-1に配置される単軸力センサを符号4-1で、上段の検出平面12-2に配置される単軸力センサを符号4-2で示す。
【0018】
上記単軸力センサ4を使用したZMPの検出方法を図3に示す。ZMPの検出に際し、まず、各検出平面12における加重作用点13を求める。ZMPは接地面3上で定義される用語であるために、本明細書においては、検出平面12を接地面3と仮定した場合の検出平面12上のZMP相当点を加重作用点13としてZMPと区別する。
【0019】
以上の定義に基づいて、加重作用点13は、重力、慣性力の重心を支点とする合力の検出平面12との交点として与えられ、図3(a)に示すように、単軸力センサ4・・が配置される検出平面12上の加重作用点13は、各単軸力センサ4での検出力をそれぞれF1、F2、F3、F4とすると、
x=A(F3 + F4 - F1 - F2)/(F1 + F2 + F3 + F4)
y=B(F1 + F3 - F2 - F4)/(F1 + F2 + F3 + F4)
で与えられる。
【0020】
以上のようにして2面の検出平面12-1、12-2上の荷重作用点13を求めた後、接地面3上のZMPを求める。ZMPの検出は、図3(b)に示すように、各検出平面12上の荷重作用点13を結ぶベクトルを求めた後、このベクトルと接地面3との交点を求めることにより行われる。ベクトル、および接地面3との交点は、上述した各検出平面12上での荷重作用点位置、検出平面12間の距離、および検出平面12と接地面3との距離を使用して幾何学的に求めることができる。
【0021】
次に、以上のようにして求められるZMPを使用したロボットの制御について、図4(a)の制御用の機能ブロック図、図4(b)の制御フローに基づいて説明する。上述した方法でZMP検出センサ4によるZMP検出が終了すると(ステップS1)、ZMP値は安定性評価部5に通知され、安定性評価部5において安定性評価が行われる(ステップS2)。
【0022】
上述したように、安定性評価部5における転倒安定性は、ZMPが支持多角形(本実施の形態においては、図2(c)においてハッチングを施して示すように、車輪1aの接地面3への接触点を四隅とする矩形状領域)内に包含される場合には”安定”、支持多角形外にあるときは”不安定”と評価すれば足りるが、この実施の形態においては、所定の評価マージンを設定するために、ZMPが支持多角形に比して一回り小さな図心が一致する余裕支持多角形内に属する場合には”安全許容域内”、それ以外は”安全許容域外”の評価信号を生成し、ZMP制御部8に通知する。
【0023】
安定性評価部5から評価信号を受領したZMP制御部8は、当該信号が”安全許容域内”である場合には(ステップS3)、最高許容速度設定値を上げて高速移動を可能にする(ステップS3-1)。これに対しステップS3においてZMP制御部8が”安全許容域外”の評価信号を受領した場合には、転倒を防止するために重心を下げることが可能か否かを検出し(ステップS4)、可能であれば、アーム位置変更用アクチュエータ7を駆動して重心位置を下げる(ステップS4-1)。
【0024】
ステップS4-1での操作には、アーム連結部駆動用アクチュエータ7Bによるアーム連結部10の降下操作に加え、支柱駆動用アクチュエータ7Aの駆動による支柱9の前後方向駆動も含まれ、ステップS4において重心位置の調整による安定性向上の余地がない場合には、最高許容速度設定値を下げて不安定姿勢での高速走行による転倒危険性を低下させる(ステップS5)。
【0025】
以上ステップS1からS5に至るルーチンはロボットの運用全期間に渡ってリアルタイムに繰り返され、転倒が防止される。
【0026】
以上において、ZMPは、2面の検出平面12での加重作用点13を外挿して求めたが、図5に示す方法により簡易的に求めることもできる。この変形例において、検出平面12は1面設けられ、当該検出平面12の四隅部に4個の単軸力センサ4が配置される。
【0027】
ロボットに慣性力が与えられている場合には、図5(b)において鎖線で示すように、重心を通る力の作用線は鉛直線に対して傾きを持ち、接地面3上におけるZMPと検出平面12上の加重作用点13との間にはずれ(δ)が発生するが、検出平面12と接地面3との間隔が小さければずれ(δ)も小さくなる。
【0028】
この変形例は、この点に着目したもので、図5(a)に示すように、単軸力センサ4は接地面3に可及的に近接して配置される。また、このとき、上述した安定性評価部5におけるマージンを大きめに取り、誤差吸収することもできる。
【0029】
さらに、図1において、アーム保持部6は、支柱9にアーム連結部10を連結して形成されているが、図6に示すように、走行部1上に立設される固定支柱11と、固定支柱11に回転駆動可能に連結されるアーム連結部10とから構成することができる。アーム連結部10には操作アーム2と頭部15とが各々回転軸17、18周りに回転操作可能に連結される。
【0030】
この変形例において、ロボットは、アーム位置変更用アクチュエータ7を使用することにより、図6(a)における起立姿勢から、図6(b)に示すように、固定支柱11との回転軸周りにアーム連結部10を前傾させて重心位置を落とした姿勢との間で姿勢変更できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明を示す図で、(a)は重心が高い姿勢を示す図、(b)低重心姿勢を示す図である。
【図2】ZMP検出センサを示す図で、(a)は図1(a)の2A部拡大図、(b)単軸力センサの配置を示す図、(c)は支持多角形を示す図である。
【図3】ZMP検出方法を示す図で、(a)は荷重作用点の検出方法を示す説明図、(b)はZMPの演算方法を示す説明図である。
【図4】姿勢制御を示す図で、(a)は機能ブロック図、(b)は制御フローである。
【図5】ZMP検出センサの検出方法の変形例を示す図である。
【図6】アーム保持部の変形例を示す図で、(a)は重心が高い姿勢を示す図、(b)低重心姿勢を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 走行部
2 操作アーム
3 接地面
4 ZMP検出センサ
5 安定性評価部
6 アーム保持部
7 アーム位置変更用アクチュエータ
8 ZMP制御部
9 支柱
10 アーム連結部
11 固定支柱
12 検出平面
13 加重作用点
【出願人】 【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
【出願日】 平成18年7月7日(2006.7.7)
【代理人】 【識別番号】100093986
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 雅男


【公開番号】 特開2008−12642(P2008−12642A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188440(P2006−188440)