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【発明の名称】 外力検知方法およびマニピュレータ制御方法
【発明者】 【氏名】中村 卓磨

【要約】 【課題】マニピュレータの表面全体をセンサ部で覆うことなく、マニピュレータに物体が干渉することでアーム部に作用する外力を検知可能なマニピュレータの外力検知方法等を提供する。

【構成】固定リンク部材を含む複数のリンク部材から構成されるアーム部と、アーム部に固定されたハンド部を備えるマニピュレータにおいて、固定リンク部材に作用する第1の作用力の大きさとハンド部に作用する第2の作用力の大きさを検出し、作用力の検出箇所の位置姿勢を算出し、固定リンク部材・ハンド部の質量と動作により生じる慣性力から作用力の推測値を求め、この作用力から推測値を減算し作用力の補正値を求め、作用力の検出時の位置姿勢に基づきアーム部に外力が作用していない場合の固定リンク部材・ハンド部における作用力の関係から補正値が外れている場合にアーム部に外力が作用したと判断する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定面にとりつけられた固定リンク部材を含む複数のリンク部材から構成されるアーム部と、該アーム部に固定されたハンド部とを備えるマニピュレータにおいて、
前記固定リンク部材に取り付けられ、その取り付け箇所に作用する第1の作用力の大きさを検出する第1の検出部と、
前記ハンド部に取り付けられ、その取り付け箇所に作用する第2の作用力の大きさを検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部と、第2の検出部との位置姿勢を算出する位置姿勢算出部とを設け、
前記固定リンク部材およびハンド部の各々の質量と、各々の動作により生じる慣性力とから、前記第1の検出部の取り付け箇所と第2の検出部の取り付け箇所とに作用する作用力の推測値を各々求め、
前記第1の検出部および第2の検出部により検出される検出値から、前記推測値を減算し、前記第1の検出部の取り付け箇所に作用する第1の作用力と、第2の検出部の取り付け箇所に作用する第2の作用力の補正値を各々求め、
これらの作用力を検出した時の、前記第1の検出部および第2の検出部の位置姿勢に基づいて、アーム部に外力が作用していない場合に定められる、固定リンク部材における前記取り付け箇所に作用する作用力と、ハンド部における前記取り付け箇所に作用する作用力との所定の関係を、前記求められた補正値が満たしているか否かを判定し、これらの補正値が前記所定の関係から外れている場合に、アーム部に外力が作用したと判断することを特徴とする外力検知方法。
【請求項2】
固定面にとりつけられた固定リンク部材を含む複数のリンク部材から構成されるアーム部と、該アーム部に固定されたハンド部と、前記アーム部およびハンド部を駆動する駆動部と、を備えるマニピュレータを制御するためのマニピュレータ制御方法であって、
前記固定リンク部材の所定箇所に作用する第1の作用力の大きさと、前記ハンド部の所定箇所に作用する第2の作用力の大きさとを検出する作用力検出ステップと、
前記固定リンク部材およびハンド部における、前記第1の作用力および第2の作用力が作用した所定箇所の位置姿勢を各々算出する位置姿勢算出ステップと、
前記固定リンク部材およびハンド部の各々の質量と、各々の動作により生じる慣性力とから、前記固定リンク部材およびハンド部の、前記所定箇所に作用する作用力の大きさを各々推測する作用力推測ステップと、
前記作用力検出ステップで検出された作用力の大きさから、前記作用力推測ステップにより得られた作用力の大きさを減算し、前記固定リンク部材およびハンド部における前記所定箇所に作用する作用力の大きさを補正する作用力補正ステップと、
前記作用力を検出した、固定リンク部材およびハンド部材の所定箇所の位置姿勢に基づいて、アーム部に外力が作用していない場合に定められる、固定リンク部材における前記所定箇所に作用する作用力と、ハンド部における前記所定箇所に作用する作用力との所定の関係を、前記作用力補正ステップにより得られた補正後の作用力の値が満たしているか否かを判定する判定ステップと、を備えており、
前記判定ステップにより、前記補正後の作用力の値が、前記所定の関係から外れていると判定された場合に、アーム部に外力が作用していると判断し、前記駆動部によるアーム部の動きを停止することを特徴とするマニピュレータ制御方法。
【請求項3】
前記補正後の作用力の値が、所定の関係から外れている度合いを算出し、この度合いが所定の閾値を超えた場合にのみ、アーム部の動きを停止することを特徴とする請求項2に記載のマニピュレータ制御方法。
【請求項4】
固定面にとりつけられた固定リンク部材を含む複数のリンク部材から構成されるアーム部と、該アーム部に固定されたハンド部と、前記アーム部およびハンド部を駆動する駆動部とを有するマニピュレータと、該マニピュレータを制御するための制御部とを備えるマニピュレータ制御システムであって、
前記固定リンク部材の所定箇所に作用する第1の作用力の大きさと、前記ハンド部の所定箇所に作用する第2の作用力の大きさとを検出する作用力検出部と、
前記固定リンク部材およびハンド部における、作用力が作用した箇所の位置姿勢を各々算出する位置姿勢算出部と、
前記固定リンク部材およびハンド部の各々の質量と、各々の動作により生じる慣性力とから、前記固定リンク部材の所定箇所に作用する作用力と、前記ハンド部に作用する作用力を推測する作用力推測部と、
前記作用力検出部で検出された作用力の大きさから、前記作用力推測部により得られた作用力の大きさを減算し、前記固定リンク部材およびハンド部における前記所定箇所に作用する第1の作用力および第2の作用力の大きさを補正する作用力補正部と、
前記作用力を検出した、固定リンク部材およびハンド部材の所定箇所の位置姿勢に基づいて、アーム部に外力が作用していない場合に定められる、固定リンク部材における前記所定箇所に作用する作用力と、ハンド部における前記所定箇所に作用する作用力との所定の関係を、前記作用力補正ステップにより得られた補正後の作用力の値が満たしているか否かを判定する判定部と、を備えており、
前記判定部により、前記補正後の作用力の値が、前記所定の関係を満たしていないと判定された場合に、前記制御部により、駆動部によるアーム部の動きを停止することを特徴とするマニピュレータ制御システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、主として産業用に用いられるマニピュレータが作業を行う最中に、該マニピュレータに作用する外力の大きさなどを算出する外力検知方法および該外力検知方法を用いたマニピュレータ制御方法、およびマニピュレータ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、工場などの生産現場においては、ハンド部とロボットアームとからなるマニピュレータが用いられている。このようなマニピュレータは、物体を把持し、該物体をある場所から他の場所へ移動させたり、把持した物体を載置する方向を変化させたりするために用いられるものであり、PC等の制御部に記憶されたプログラムにより、定められたパターンに従った動作を行う。
【0003】
前述のマニピュレータにおいては、通常の使用に際しては、定められた動作を行うことが求められるが、異常が生じた場合には、定められたパターンに従った動作と異なる動作を行う必要が生じることがある。例えば、マニピュレータの動作中において、マニピュレータを構成するアーム部に対して、アーム部の動作経路上に干渉する物体が存在すると、アーム部はその動きを停止するか、該物体との干渉を避ける動きをしなければならない。
【0004】
そのため、このような物体との干渉を避けるために、マニピュレータを構成するアーム部の表面全体に、接触センサなどの検知手段を設けるとともに、力センサなどの力検出手段を設けることが考えられる(例えば特許文献1)。このように構成されたマニピュレータは、アーム部表面に干渉する物体が存在したことを検知し、さらに、その干渉した物体によりアーム部に作用した外力を算出することができる。
【特許文献1】特開2001−38664号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のように、マニピュレータに物体の干渉が生じたか否かを検知するためには、アーム部の表面全体を、力検出手段を備えるカバー部で覆う等の構造を構成する必要がある。しかしながら、マニピュレータを構成するアーム部は、一般的には多関節の駆動部を含む場合が多く、このような関節部を含む構造物の表面全体を覆うようにカバー部を設ける構造を構成することは困難である場合が多い。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、マニピュレータの表面全体をセンサ部で覆うことなく、マニピュレータに物体が干渉することでアーム部に作用する外力を検知可能なマニピュレータの外力検知方法、および該外力検知方法を用いたマニピュレータの制御方法、およびマニピュレータ制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる外力検知方法は、固定面にとりつけられた固定リンク部材を含む複数のリンク部材から構成されるアーム部と、該アーム部に固定されたハンド部とを備えるマニピュレータにおいて、前記固定リンク部材に取り付けられ、その取り付け箇所に作用する第1の作用力の大きさを検出する第1の検出部と、前記ハンド部に取り付けられ、その取り付け箇所に作用する第2の作用力の大きさを検出する第2の検出部と、前記第1の検出部と、第2の検出部との位置姿勢を算出する位置姿勢算出部とを設け、前記固定リンク部材およびハンド部の各々の質量と、各々の動作により生じる慣性力とから、前記第1の検出部の取り付け箇所と第2の検出部の取り付け箇所とに作用する作用力の推測値を各々求め、前記第1の検出部および第2の検出部により検出される検出値から、前記推測値を減算し、前記第1の検出部の取り付け箇所に作用する第1の作用力と、第2の検出部の取り付け箇所に作用する第2の作用力の補正値を各々求め、これらの作用力を検出した時の、前記第1の検出部および第2の検出部の位置姿勢に基づいて、アーム部に外力が作用していない場合に定められる、固定リンク部材における前記取り付け箇所に作用する作用力と、ハンド部における前記取り付け箇所に作用する作用力との所定の関係を、前記求められた補正値が満たしているか否かを判定し、これらの補正値が前記所定の関係から外れている場合に、アーム部に外力が作用したと判断することを特徴としている。
【0008】
前記外力検知方法は、固定リンク部材に対して作用力が作用する箇所と、ハンド部に対して作用力が作用する箇所とにおいて、アーム部に外力が作用していない場合に、これらの箇所において作用する作用力の所定の関係を満たすことを利用するものである。すなわち、このような所定の関係を満たしていない場合は、アーム部全体をセンサ部で覆うことなく、アーム部に外力が作用していることを検知することができる。
【0009】
また、このような外力検知方法において、ハンド部が物体を把持しており、ハンド部によって把持される物体の把持位置(重心位置)が既知の場合には、把持される物体と、ハンド部とを合わせた質量および慣性力を算出するとよい。
【0010】
さらに本発明は、前述の外力検知方法を用いて、マニピュレータの動作を制御することも提案するものである。すなわち、固定面にとりつけられた固定リンク部材を含む複数のリンク部材から構成されるアーム部と、該アーム部に固定されたハンド部と、前記アーム部およびハンド部を駆動する駆動部と、を備えるマニピュレータを制御するためのマニピュレータ制御方法であって、前記固定リンク部材の所定箇所に作用する第1の作用力の大きさと、前記ハンド部の所定箇所に作用する第2の作用力の大きさとを検出する作用力検出ステップと、前記固定リンク部材およびハンド部における、前記第1の作用力および第2の作用力が作用した所定箇所の位置姿勢を各々算出する位置姿勢算出ステップと、前記固定リンク部材およびハンド部の各々の質量と、各々の動作により生じる慣性力とから、前記固定リンク部材およびハンド部の、前記所定箇所に作用する作用力の大きさを各々推測する作用力推測ステップと、前記作用力検出ステップで検出された作用力の大きさから、前記作用力推測ステップにより得られた作用力の大きさを減算し、前記固定リンク部材およびハンド部における前記所定箇所に作用する作用力の大きさを補正する作用力補正ステップと、前記作用力を検出した、固定リンク部材およびハンド部材の所定箇所の位置姿勢に基づいて、アーム部に外力が作用していない場合に定められる、固定リンク部材における前記所定箇所に作用する作用力と、ハンド部における前記所定箇所に作用する作用力との所定の関係を、前記作用力補正ステップにより得られた補正後の作用力の値が満たしているか否かを判定する判定ステップと、を備えており、前記判定ステップにより、前記補正後の作用力の値が、前記所定の関係から外れていると判定された場合に、アーム部に外力が作用していると判断し、前記駆動部によるアーム部の動きを停止することを特徴としている。
【0011】
このようなマニピュレータ制御方法によると、アーム部に外力が検知された場合に、マニピュレータの動きを停止させるように制御することができるため、マニピュレータの干渉による物体の破損等を回避することができる。
【0012】
なお、このようなマニピュレータ制御方法においては、前述の作用力が所定の関係を満たしていない度合いを求め、その度合いに基づいてアーム部の動きを停止するか否かを定めるようにしてもよい。
【0013】
また、本発明は、前述のようなマニピュレータ制御方法を実行するためのマニピュレータ制御システムをも提供するものである。すなわち、前述のような、固定面にとりつけられた固定リンク部材を含む複数のリンク部材から構成されるアーム部と、該アーム部に固定されたハンド部と、前記アーム部およびハンド部を駆動する駆動部とを有するマニピュレータと、該マニピュレータを制御するための制御部とを備えるマニピュレータ制御システムであって、前記固定リンク部材の所定箇所に作用する第1の作用力の大きさと、前記ハンド部の所定箇所に作用する第2の作用力の大きさとを検出する作用力検出部と、前記固定リンク部材およびハンド部における、作用力が作用した箇所の位置姿勢を各々算出する位置姿勢算出部と、前記固定リンク部材およびハンド部の各々の質量と、各々の動作により生じる慣性力とから、前記固定リンク部材の所定箇所に作用する作用力と、前記ハンド部に作用する作用力を推測する作用力推測部と、前記作用力検出部で検出された作用力の大きさから、前記作用力推測部により得られた作用力の大きさを減算し、前記固定リンク部材およびハンド部における前記所定箇所に作用する第1の作用力および第2の作用力の大きさを補正する作用力補正部と、前記作用力を検出した、固定リンク部材およびハンド部材の所定箇所の位置姿勢に基づいて、アーム部に外力が作用していない場合に定められる、固定リンク部材における前記所定箇所に作用する作用力と、ハンド部における前記所定箇所に作用する作用力との所定の関係を、前記作用力補正ステップにより得られた補正後の作用力の値が満たしているか否かを判定する判定部と、を備えており、前記判定部により、前記補正後の作用力の値が、前記所定の関係を満たしていないと判定された場合に、前記制御部により、駆動部によるアーム部の動きを停止することを特徴としている。
【0014】
このようなマニピュレータ制御システムにおいても、アーム部に外力が検知された場合に、マニピュレータの動きを停止させるように制御することができるため、マニピュレータの干渉による物体の破損等を回避することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、本発明によると、マニピュレータの表面全体をセンサ部で覆うことなく、マニピュレータに物体が干渉することでアーム部に作用する外力を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の実施の形態1.
以下に、図1から図3を参照しつつ本発明の実施の形態1にかかるマニピュレータ制御システムについて説明する。この実施の形態においては、固定面としての床面にマニピュレータが固定されており、このマニピュレータを駆動部により駆動する例を示すものとする。
【0017】
図1は、床面Pに固定されたマニピュレータ20及び該マニピュレータを制御するための制御部10を含むマニピュレータ制御システム1を概略的に示す概略図である。このマニピュレータ制御システム1において、マニピュレータ20は床面Pに一端が固定されるアーム部22と、このアーム部22の他端にとりつけられるハンド部としてのロボットハンド30とを備えている。
【0018】
マニピュレータ2は、床面Pに固定される固定部211と、この固定部211に対して回動自在に回転駆動する回動部212とからなる固定リンク部材21と、第1リンク部材221および第2リンク部材222とからなるアーム部22と、ロボットハンド23とを備えている。固定部211は床面Pに埋め込まれた固定軸であり、この固定軸に対して回動自在に接続された回動部212は、図示しない駆動部としてのサーボモータによって固定部211に対して1自由度を有する動きをとるように駆動する。
【0019】
アーム部22の第1リンク部材221と第2リンク部材222は、互いに1自由度を有するように回動自在に接続されており、回動部212と同じく図示しない駆動部としてのサーボモータによって駆動される。また、回動部211と第1リンク部材221とは、軸部材24を介して接続されることで一体的に動作する。すなわち、回動部212が固定部211に対して回動することで、第1リンク部材221も回動部212に併せて回動する。このように、マニピュレータ2に含まれる回動部分は、マニピュレータ2内の関節部として作用する。
【0020】
ロボットハンド23は、1対の板状の把持部材が図示しないモータにより相対的に近接離間することで、物体を把持する構成を備えており、第2リンク部材に対して軸部材25を介して固定されている。なお、ロボットハンド23の物体を把持する動きは、アーム部22の動きから独立して制御されているが、アーム部22の動きに合わせて制御されてもよい。
【0021】
さらに、軸部材24、25には、例えば自身の歪み量により、受けた力の大きさを表す検出信号を送信可能な第1の検出部、第2の検出部としての第1センサ31、第2センサ32が各々取り付けられており、各々の軸部材の取り付け箇所に作用する力の大きさを検出する。そして、この第1センサ31および第2センサ32は、軸部材に作用する力の大きさを検出するだけでなく、取り付けられている各リンク部材の長さおよびその駆動した量等から、後述する位置姿勢算出部により、自身の相対的な位置姿勢を算出される。
【0022】
制御部10は、いわゆるCPU等の演算処理部を有するコンピュータであり、マニピュレータ20の動作を所定のプログラムに従って制御するものである。具体的には、制御部10は、マニピュレータに備えられるサーボモータの駆動を制御するモータ制御部11、固定リンク部材21およびロボットハンド23に作用する作用力を検出する作用力検出部12、作用力を検出したときの固定リンク部材21およびロボットハンド23に取り付けられた第1センサ31、第2センサ32の位置姿勢を検出する位置姿勢算出部13、位置姿勢算出部13により検出された位置姿勢等の情報から作用力を推測する作用力推測部14、検出された作用力の値を補正する作用力補正部15、および補正後の作用力が所定の関係を満たしているか否かを判定する判定部16と、を備えている。以下、図2を用いて詳細に説明する。
【0023】
制御部10に備えられたモータ制御部11は、マニピュレータ20に設けられた各リンク部材、アーム部およびハンド部等を駆動するためのサーボモータの駆動を制御するためのプログラムを備えたサーボコントローラである。モータ駆動を制御するためのプログラムは、制御部10内の図示しない記憶領域中に記憶されており、マニピュレータ20に対して所望の動作を行わせるものである。
【0024】
作用力検出部12は、第1センサ31および第2センサ32からの検出信号を受けるとともに、受信した検出信号を解析して固定リンク部材211、ロボットハンド23における第1センサ31および第2センサ32の取り付けられた箇所に作用する作用力F,Fを算出する。
【0025】
位置姿勢算出部13は、前述の第1センサ31および第2センサ32が、作用力F,Fを検出した時の第1センサ31および第2センサ32の位置姿勢S、Sを算出する。これらの位置姿勢は、取り付けられている各リンク部材の長さおよびその駆動した量等から求められる。
【0026】
作用力推測部14は、作用力検出部12によって算出される作用力とは別に、固定リンク部材211、ロボットハンド23における第1センサ31および第2センサ32の取り付けられた箇所に作用する、自重や慣性力等の影響により作用する作用力を推測する。これらの作用力は、モータ制御部11より得られる、回動する関節部が回動した角度、角速度、角加速度の3つのパラメータで特定される既知の関数を用いて得られる。
【0027】
作用力補正部15は、前記第1センサ31および第2センサ32から得られる検出値に基づいて算出された作用力から、前記推測により得られた作用力を減算し、固定リンク部材211、ロボットハンド23に各々作用する、作用力の値を補正する。
【0028】
判定部16は、作用力補正部15において補正されることで得られた固定リンク部材211、ロボットハンド23に各々作用する作用力F',F'が、所定の関係を満たしているか否かを判定する。このような所定の関係は、位置姿勢算出部13により算出された位置姿勢S、Sと、各センサ部の移動する移動速度とを関係づける、予め定められたヤコビ行列Jによって定められる。言い換えると、前述のヤコビ行列Jの転置行列Jは、外部から力を加えられることなくマニピュレータが動作している場合において、各センサ部の取り付け箇所に作用する作用力を所定の関係に対応づけるものである。したがって、前記補正後の各作用力F',F'は、この転置行列Jを用いた既知の関係式で表される場合は、マニピュレータに外部からの力(外力)が作用していないと言える。逆に、既知の関係式で表せない場合は、マニピュレータに外力が作用していると言える。
【0029】
このように構成されたマニピュレータ制御システム1において、アーム部22に作用した外力を検知し、かつ、マニピュレータ20の動きを制御する手順について、図3を用いて説明する。
【0030】
マニピュレータ20は、制御部10に備えられたモータ制御部11により、所定のプログラムに従ってその動作が制御されており、所望の作業等を行っている(STEP101)。その際に、アーム部22と固定リンク部材211とを接続する軸部材24に取り付けられた第1センサ31と、ロボットハンド23と第2リンク部材25とを接続する軸部材25に取り付けられた第2センサ32が検出した信号が、微小時間間隔で作用力検出部に送信されている(STEP102)。
【0031】
作用力検出部12部は、このように微小時間間隔で送信される検出信号を受けとり、固定リンク部材211、ロボットハンド23に各々作用する作用力F、Fを算出する。一方、位置姿勢算出部13は、検出信号を受信した際の第1センサ部31、第2センサ部32の位置姿勢S、Sを算出する。そして、これらの算出値が作用力推測部14に送信される(STEP103)。
【0032】
次に、作用力推測部14においては、モータ制御部11より各関節部の駆動した量(角度)や駆動した速度(角速度)等のパラメータを受け取り、これらのパラメータにより特定される既知の関数を用いて、固定リンク部材211、ロボットハンド23における所定箇所(軸部材24,25)に作用した作用力g,gを求める(STEP203)。そして、作用力補正部15は、作用力検出部12から送信された作用力F、F2の値から、これらの作用力g、gを減算し、固定リンク部材211、ロボットハンド23に作用する作用力の補正値F',F'を算出する(STEP104)。
【0033】
判定部16においては、アーム部22に外力が作用していない場合に定められる、固定リンク部材に作用する作用力fと、ハンド部に作用する作用力fとの関係を、前述のヤコビ行列Jの転置行列Jを用いて、例えば以下の式1に示すように定められている。
=J・f ・・・ 式1
【0034】
そこで、判定部15においては、位置姿勢算出部13で算出された、第1センサ31の位置姿勢Sおよび第2センサ32の位置姿勢S、および作用力推測部14より算出された、固定リンク部材211における所定箇所(軸部材24)に作用した作用力F'を上記式1のfに代入し、外力が作用していない場合における、ロボットハンド23における所定箇所(軸部材25)に作用する作用力F"を算出する(STEP105)。このようにして算出された、ロボットハンド23の所定箇所に作用する作用力F"と、作用力補正部15において算出された補正値F'と判定部16においてを比較し(STEP106)、その差が所定の閾値ΔFよりも大きい場合は、アーム部22に外力が作用していると判定(STEP107)し、モータ制御部11によりマニピュレータ20の動きを停止する(STEP108)。逆に、算出された作用力F"と補正値F'との差がΔFよりも小さい場合においては、アーム部22に外力が作用していない、または作用している外力が、考慮すべき程度ではないと判断し、通常のマニピュレータ20の制御を継続する。そして、再度マニピュレータに取り付けられた第1センサ31および第2センサ32により検出される信号を受信するSTEP103に戻り、同様の手順を繰り返す。
【0035】
このような制御により、本実施形態におけるマニピュレータ制御システムによれば、
マニピュレータ20のアーム部22に一定の値以上の外力が作用した場合に、マニピュレータにおける、駆動する関節部を含むアーム部全体を覆うことなく、その外力を検知し、マニピュレータの動きを停止することができる。
【0036】
なお、前述の実施形態においては、一定以上の外力がマニピュレータ(アーム部)に作用した場合に、マニピュレータの動きを停止しているが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、マニピュレータに外力が作用したことを検知した瞬間に、警告音等を出力することで、周囲の作業者にマニピュレータが外部の物体と干渉していることを知らせるようなものであってもよい。もしくは、作用する外力の大きさに比例するように、マニピュレータの動きの速度を変化させるなどといった、作用する外力の大きさに基づいたマニピュレータの駆動制御を行ってもよい。
【0037】
さらに、前述の実施形態においては、固定された床面に取り付けられたマニピュレータに関する例を説明しているが、たとえば、移動可能な移動体の側面を固定面とすることで、移動可能なマニピュレータシステムに適用することも可能である。すなわち、ヒューマノイド型のロボットに用いられるアーム部分に、本発明にかかる外力検知方法やマニピュレータ制御方法等を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施の形態に係るマニピュレータ制御システムの全体構成を概略的に示す概略図である。
【図2】図1に示すマニピュレータ制御システムに含まれる、制御部の内部構成を概念的に示すブロック図である。
【図3】図1に示すマニピュレータ制御システムにおいて、マニピュレータに作用する外力を検知する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1・・・マニピュレータ制御システム
20・・・マニピュレータ
10・・・制御部
12・・・作用力検出部
13・・・位置姿勢算出部
14・・・作用力推測部
15・・・作用力補正部
16・・・判定部
21・・・固定リンク部材
22・・・アーム部
221・・・第1リンク部材
222・・・第2リンク部材
23・・・ハンド部(ロボットハンド)
31・・・第1センサ(第1の検出部)
32・・・第2センサ(第2の検出部)
P・・・固定面(床面)
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健


【公開番号】 特開2008−6517(P2008−6517A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177339(P2006−177339)