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【発明の名称】 金属屋根工事用の工具箱
【発明者】 【氏名】岩田 晃

【要約】 【課題】鋼板でふかれた屋根上に安定して置いておくことができ、持ち運びと取り扱いも容易な金属屋根工事用の工具箱を提供する。

【解決手段】底部を内底板と外底板からなる二重底構造とし、内底板は工具箱の上部開口面に平行に取り付ける。外底板は透磁率の低い材料を用い、内底板と所定角度をなすように傾斜して取り付ける。外底板の上面には永久磁石を、その磁束が外底板を貫く方向に向かうようにして固定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれた傾斜屋根上での作業に際し、工具類や小物建築材料等を収納して屋根上に載置しておく金属屋根工事用の工具箱であって、
底部が内底板と外底板からなる二重底構造に形成してあり、
前記内底板は前記工具箱の上部開口面に平行に取り付けてあり、
前記外底板は透磁率の低い材料を用い、その面が前記内底板と所定角度をなすように傾斜して取り付けてあり、その上面には永久磁石がその磁束を該外底板を貫く方向に向かわせるようにして取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱。
【請求項2】
鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれた傾斜屋根上での作業に際し、工具類や小物建築材料等を収納して屋根上に載置しておく金属屋根工事用の工具箱であって、
底部が内底板と外底板からなる二重底構造に形成してあり、
前記内底板は透磁率の高い材料を用い、前記工具箱の上部開口面に平行に取り付けてあり、
前記外底板は透磁率の低い材料を用い、その面が前記内底板と所定角度をなすように傾斜して取り付けてあり、
前記内底板と外底板との間には、永久磁石が上下に移動可能であって、上方に移動させた場合には前記内底板の下面に磁着し、下方に移動させた場合において前記外底板の下側に透磁率の高い材料が存在する場合には外底板を挟んで該材料に磁着するように取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の金属屋根工事用の工具箱であって、前記所定角度を5〜30度としたことを特徴とする金属屋根工事用の工具箱。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の金属屋根工事用の工具箱であって、前記永久磁石は前記内底板と外底板との間隔が狭くなる方向に寄せて取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱。
【請求項5】
請求項1に記載の金属屋根工事用の工具箱であって、前記外底板が内底板に対して傾斜せずに平行に取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱。
【請求項6】
鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれた傾斜屋根上での作業に際し、工具類や小物建築材料等を収納して屋根上に載置しておく金属屋根工事用の工具箱であって、
該工具箱の底板の下面に永久磁石がその磁束を底板の下方向に向かわせるようにして取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の金属屋根工事用の工具箱であって、前記永久磁石は底板の一方向に寄せて取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれた屋根上での作業に際し、工具類や小物建築材料等を入れて傾斜屋根上に載置しておくための金属屋根工事用の工具箱に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の主要構造部の一つである屋根を屋根材で仕上げる作業では、各種工具類や小物建築材料等が必要となる。そうした工具類、小物建築材料等は、通常、工具箱に入れて運ばれる。その工具箱は、作業中は常に作業者の傍らに置かれていることが望ましい。しかし、屋根は一般に傾斜しているため、工具箱を屋根上に直接に置いたのでは滑落する危険性がある。それを避けるため、作業場所から離れた平坦な足場に置いたり、足場に掛けたりすることが行なわれており、作業効率を低下させる原因の一つになっている。
【0003】
こうした問題を解決するため、従来、勾配屋根に載置可能な屋根工事用の工具箱が種々提案されてきた。例えば、特許文献1には図14に示すような屋根用工具箱50が開示されている。この工具箱50は、工具箱本体51と、その下端部に回動自在に取り付けられて建築材料等を載置する載置台52と、その載置台52の上方に設けられて屋根構造部材54に係止する係止部53とから構成されている。そして、載置台52は工具箱本体51に収納可能にしてある。しかし、この屋根用工具箱50の場合、係止部53を係止させる適当な屋根構造部材54を必要とするが、そのような屋根構造部材54が屋根上にいつも存在するとは限らない。また、例え存在しても、工具箱を移動させる度に載置台52も移動させる必要があり、利便性に問題がある。
【0004】
また、特許文献2には図15に示すような工具箱60が開示されている。この工具箱60は、箱形工具箱本体61の両側面に、底辺が箱本体の底板と、立辺が箱本体の前面板と略合致する三角板62が添わせてある。そして、その斜辺と対向する角部付近で工具箱本体61を支持し、2枚の三角板62の底辺間には保持杆63が取り付けられている。しかし、この工具箱60は、三角板62の底辺及び保持杆63と屋根面との間の摩擦力で滑り止めをしているだけであるため、傾斜角度の急な屋根上では工具箱60が滑落するおそれがある。
【特許文献1】特開平11−245181号公報
【特許文献2】実公昭62ー5906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術のこうした問題点を解決するためになされたもので、その課題は、鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれた屋根上での作業に際し、工具類や小物建築材料等を収納して傾斜屋根上に安定して置いておくことができ、持ち運びと取り扱いも容易な金属屋根工事用の工具箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれた傾斜屋根上での作業に際し、工具類や小物建築材料等を収納して屋根上に載置しておく金属屋根工事用の工具箱であって、底部が内底板と外底板からなる二重底構造に形成してあり、内底板は工具箱の上部開口面に平行に取り付けてあり、外底板は透磁率の低い材料を用いてその面が内底板と所定角度をなすように傾斜して取り付けてあり、その上面には永久磁石がその磁束を外底板を貫く方向に向かわせるようにして取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱である。
【0007】
このような構成の工具箱では、外底板に取り付けた永久磁石が傾斜屋根の鋼板を吸引するため、外底板と傾斜屋根表面との間の摩擦力が増加して工具箱の滑落が防止される。このため工具箱を作業者の傍らの傾斜屋根上に置いておくことが可能となり、屋根上作業の利便性が改善される。また、外底板が内底板に対して傾斜して取り付けてあるため、傾斜屋根上に置いた場合に工具箱の開口がほぼ水平となる。そのため工具類、小物建築材料等の収納、取り出しが容易になる。また、磁石は外底板の上面に取り付けてあるため、屋根上に鉄粉、鉄屑等が散乱してもそれらが磁石に付着することもない。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれた傾斜屋根上での作業に際し、工具類や小物建築材料等を収納して屋根上に載置しておく金属屋根工事用の工具箱であって、底部が内底板と外底板からなる二重底構造に形成してあり、内底板は透磁率の高い材料を用いて工具箱の上部開口面に平行に取り付けてあり、外底板は透磁率の低い材料を用いてその面が内底板と所定角度をなすように傾斜して取り付けてあり、内底板と外底板との間には、永久磁石が上下に移動可能であって、上方に移動させた場合には内底板の下面に磁着し、下方に移動させた場合において外底板の下側に透磁率の高い材料が存在する場合には外底板を挟んでその材料に磁着するように取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱である。
【0009】
このような構成によれば、工具箱を運ぶ際には磁石を上に移動させて内底板下面に磁着させておくことができる。また、傾斜屋根に載置する場合は、載置させた後に磁石を外底板上に移動させ、外底板を通して屋根に磁着させて工具箱の滑落を防止させることができる。そして、工具箱を屋根上から持ち上げる際は、工具箱を屋根に載置させたまま磁石を上に移動させて磁石による屋根の吸引を終わらせ、その後に工具箱を持ち上げる。このようにすることで磁石による屋根の吸引を終わらせる際に屋根を外底板で押し付けておくことができるため、磁石の吸引力により屋根板を変形させることがない。また、工具箱を持ち上げる際には磁石と屋根との間に吸引力が働いていないため、工具箱の重量分だけの力で持ち上げることができる。従って、工具箱の載置場所替えの作業性が改善される効果を奏する。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の金属屋根工事用の工具箱であって、外底板に取り付ける永久磁石は内底板と外底板との間隔が狭くなる方向に寄せて取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱である。
【0011】
このような構成とすれば、工具箱の転倒を防止する方向の回転モーメントが増加するため、工具箱の転倒をより効果的に防止することができる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の金属屋根工事用の工具箱であって、内底板と外底板とがなす所定角度を5〜30度としたことを特徴とする金属屋根工事用の工具箱である。
【0013】
一般家屋の屋根の傾斜角度は5〜30度が多い。従って、工具箱の内底板と外底板との傾斜角度を5〜30度として製作しておけば、磁石による屋根吸引効果と相まって殆どの傾斜屋根において工具箱の滑落、転倒を防止でき、屋根上工事の作業性を高めることができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の金属屋根工事用の工具箱であって、外底板が内底板に対して傾斜せずに平行に取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱である。
【0015】
このように外底板を傾斜させない構成であっても、屋根の傾斜角が小さい場合には外底板に取り付けた磁石が鋼板屋根を吸引することにより工具箱の滑落と転倒が防止される効果を奏する。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれた傾斜屋根上での作業に際し、工具類や小物建築材料等を収納して屋根上に載置しておく金属屋根工事用の工具箱であって、工具箱の底板の下面に永久磁石がその磁束を底板の下方向に向かわせるようにして取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱である。
【0017】
このような構成であっても、屋根の傾斜角が小さい場合には底板に取り付けた磁石が鋼板屋根を吸引することにより工具箱の滑落と転倒が防止される効果を奏する。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の金属屋根工事用の工具箱であって、永久磁石は底板の一方向に寄せて取り付けてあることを特徴とする金属屋根工事用の工具箱である。
【0019】
このような位置に磁石を取り付け、その磁石が屋根の上側方向に位置するように工具箱を置けば、板中央に取り付けた場合よりも工具箱の転倒が効果的に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る金属屋根工事用の工具箱の構成例を実施形態に分けて説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態の工具箱1は、傾斜屋根上での作業に際して工具類や小物建築材料等を収納して作業者の傍らに置いておくことを目的とするものであり、その傾斜屋根は鋼板をベースとする金属系屋根材でふかれていることを前提としている。鋼板をベースとする屋根材とは、例えば、塗装した溶融亜鉛めっき鋼板、塗装したガルバリウム鋼板(アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板)等をいい、透磁率が高く磁石に吸引される特性を有する。
【0021】
図1に、本実施形態の金属屋根工事用の工具箱1を斜視図で示す。図2は、その工具箱1の一部を断面にした側面図である。工具箱1は、工具箱本体2と蓋3により構成されている。工具箱本体2は箱形に形成してあり、その上部には開口部を開閉する蓋3が蝶番5を使用して取り付けてある。また、蓋3は工具箱本体2の上部開口部を閉じた状態でパチン錠型連結具6にてロックできるようになっている。蓋3の上面には、吊り下げ用の把手7が取り付けてある。
【0022】
工具箱本体2は、底部が内底板8と外底板9からなる二重底構造に構成してある。内底板8は、工具箱本体2の上部開口面に平行に取り付けてある。内底板8と側面板10とにより囲まれた空間が、工具類や小物建築材料等を収納する空間として使用される。
【0023】
外底板9は、内底板8の下側に、その面が内底板8に対して5〜30度の角度をなすように傾斜して取り付けてある。外底板9には透磁率の低い材料を用いる。透磁率の低い材料とは、例えば、アルミニウム、銅、合成樹脂材料等である。内底板8は強度があれば材質を選ばない。
【0024】
外底板9のほぼ中央の上面には、永久磁石12が固定板13を用いて取り付けてある。固定板13にも透磁率の低い材料を用いることが好ましい。永久磁石12は、その発生する磁束が外底板9をほぼ垂直に貫くように、例えば、外底板9に接する面側がN極、反対側面がS極となるように着磁してある。
【0025】
図1、図2に示した工具箱1は、内底板8と外底板9との角度を、一例として15度にした工具箱である。この工具箱1を15度傾いた屋根20上に置いた場合には、図3に示すように内底板8は水平になり側面板10はそれに垂直となる。屋根20が傾いているため工具箱1は滑り落ちようとする。この場合に工具箱1に働く力は、図3中のベクトル図のようになる。工具箱1の重心21には、工具箱1及び内部に収納された工具等の質量に比例した重力Wが鉛直下向きに働く。その重力Wは、屋根20の面を垂直に押し付ける屋根面垂直方向成分Wvと、屋根20の面に沿って滑落させようとする屋根面平行方向成分Whに分解して考えることができる。
【0026】
他方、工具箱1の外底板9の下面と屋根20の面との間には摩擦力Ffが働く。摩擦力Ffは、工具箱1を屋根20の面に沿って押し上げる方向(工具箱1の滑落を阻止する方向)に働く。摩擦力Ffの大きさは、工具箱1の外底板9が屋根20の面を垂直に押し付ける力Fに、外底板9の下面と屋根20の面との間の摩擦係数μを掛けた値である。磁石12が存在しない場合、その摩擦力Ffは、
Ff=μ・F=μ・Wv (1)式
となる。
【0027】
本実施形態の工具箱1では、外底板9の上面に磁石12が取り付けてある。その磁石12は、高い透磁率を有する鋼板をベースとする屋根材でふかれたと屋根20を吸引する。その反力として、磁石12は同じ力で屋根20を押し付ける。その力を吸引力Fmとする。吸引力Fmは、屋根20の面を垂直に押し付ける方向、即ち、重力Wの屋根面垂直方向成分Wvと同じ方向に働く。従って、磁石12が存在する場合の摩擦力Ffは次のようになる。
Ff=μ・F=μ・(Wv+Fm) (2)式
(1)式との比較から明らかなように、磁石12は摩擦力Ffを(μ・Fm)だけ増加させ、工具箱1の滑落を阻止する力Ffを増大させる。
【0028】
工具箱1が滑らずに静止している状態では、摩擦力Ffは重力Wの屋根面平行方向成分Whに等しく、次の関係が成立している。
Wh=Ff=μ・(Wv+Fm) (3)式
工具箱1が滑らずに静止している状態における摩擦係数μは、(3)式を満足する値になっている。
【0029】
屋根20の傾斜角をθとすると、工具箱1を滑落させようとする力である(3)式左辺の屋根面平行方向成分Whは(W・sinθ)で計算される。その値は傾斜角θが増すにつれて増大する。反対に、屋根面垂直方向成分Wvは(W・cosθ)で計算されるため、(3)式右辺の重力Wによる摩擦力(μ・Wv)は傾斜角θが増すにつれて減少する。従って、傾斜角θが増すに従って工具箱1は滑り落ち易くなる。磁石12の吸引力Fmによる摩擦力(μ・Fm)はその摩擦力の減少を補い、工具箱1の滑落を阻止する働きをする。このように磁石12を外底板9に取り付けた本実施形態の工具箱1では、滑落が効果的に防止される。
【0030】
上記は滑落を阻止するための力関係の説明であったが、工具箱1には屋根20の下り方向に転倒させようとする力も働く。図4は、工具箱1を転倒させようとする力の関係を説明する図である。工具箱1が静止している場合、外底板9の下り側端(以下、回転中心という。)23を回転中心として、工具箱1を図中右回りに回転させようとする回転モーメントと、それを阻止する左回りの回転モーメントとが働く。
【0031】
右回りに回転させようとする回転モーメントには、重力Wの屋根面平行方向成分Whによるものがある。工具箱1の重心21から屋根20の面に平行に引いた線と回転中心23との距離をLhとすると、その右回り回転モーメントは(Wh・Lh)で計算される。これに対し、左回り回転モーメントには、重力Wの屋根面垂直方向成分Wvによるものと、磁石12の吸引力Fmによるものとがある。工具箱1の重心21から屋根20の面に垂直に引いた線と回転中心23との距離をLvとすると、Wvによる左回り回転モーメントは(Wv・Lv)となる。磁石12の吸引力Fmが働く中心点から屋根20の面に垂直に引いた線と回転中心23との距離をLmとすると、吸引力Fmによる左回り回転モーメントは(Fm・Lm)となる。
【0032】
これらのことから、工具箱1が右回りに回転して転倒しないための条件は次のようになる。
Wh・Lh<Wv・Lv+Fm・Lm (4)式
屋根20の傾斜角をθとすると、Wh、Wvはそれぞれ(W・sinθ)、(W・cosθ)で表される。従って、(4)式は次のようになる。
W・sinθ・Lh<W・cosθ・Lv+Fm・Lm (5)式
傾斜角θが大きくなると(5)式の左辺の値は大きくなり、右辺第1項の値は小さくなる。従って、傾斜角θが大きくなると工具箱1は転倒し易くなる。
【0033】
吸引力Fmによる左回り回転モーメント(Fm・Lm)は、転倒を防止する方向に働く。その値は、吸引力Fmの値が一定の場合、距離Lmに比例して大きくなる。このことから、磁石12は距離Lmの値が大きい場所に取り付けておいた方が転倒防止に効果があることが分かる。こうした考えから、距離Lmの値が大きくなる位置に磁石12を取り付けたのが図5に示す工具箱1aである。距離Lmの値が大きくなる位置とは、内底板8と外底板9と間隔が狭まる位置である。このような位置に磁石12を取り付ければ、吸引力Fmが同じでも工具箱1aの転倒を防止する効果を高めることができる。
【0034】
本実施形態の工具箱1においては、外底板9に透磁率の低い材料を用いている。その理由は、磁石12から出る磁束の多くを屋根20の面に垂直に入射させるためである。磁石12による屋根20の吸引力Fmは、屋根20の面に垂直に入射する磁束の磁束密度の二乗に比例する。外底板9に透磁率の低い材料が用いてある場合、磁石12から出た磁束は、その殆どが図6に示すように屋根20の面に垂直に入射する(図6は内底板8の透磁率は低いと仮定してある。)。これに対して外底板9に透磁率の高い材料が用いてある場合には、磁石12から出た磁束のかなりの部分が、図7に示すように透磁率の外底板9の中を水平方向に走り、屋根20の面に入射することなく磁石12の反対側極に戻る。このため、磁石12は外底板9を強く吸引するのみで、屋根20を吸引する吸引力Fmは弱まる。こうした理由から、外底板9には透磁率の低い材料を用いることが好ましい。また、その厚みも可能な限り薄くしておくことが好ましい。外底板9は、屋根20上に散らばる鉄粉が磁石12に磁着するのを防止する効果も発揮する。
【0035】
図2に示した工具箱1は、内底板8と外底板9との傾斜角度を15度にした工具箱である。これを傾斜角10度の屋根上に置いた場合には、図8の(1)に示すように少し傾いた状態となる。傾斜角20度の屋根上に置いた場合は、図8の(2)に示すように図8の(1)とは反対側に少し傾いた状態となる。水平面上に置いた場合は図8の(3)に示すようになる。しかし、何れの場合も工具箱1の傾きは小さいので作業する上での不都合は少ないと考えられる。
【0036】
一般家屋の屋根の傾斜角度は5〜30度位が多い。従って、工具箱1の内底板8と外底板9との傾斜角度を5〜30度として製作しておけば、殆どの傾斜屋根に対応することができる。但し、傾斜角度が5〜10度といった緩い勾配屋根上で使うことを目的とする工具箱については、外底板9を内底板8に平行に取り付けた構成としてもよい。図9はそのような構成の工具箱1bの一部を断面にした側面図である。この場合も、磁石12は外底板9上の中央に取り付けるのでなく、屋根20の上方側に位置させると決めた側に寄せて取り付けておくことが好ましい。更に、このような緩い勾配屋根上で使うことを目的とする工具箱については、外底板9を無くして磁石12を内底板8の下側に取り付ける構成としてもよい。図10はそのようなそのような構成の工具箱1cの一部を断面にした側面図である。この場合は内底板8が底板となる。磁石12としては、付着した磁粉の除去が容易なように、表面を薄い樹脂層で被覆したものを使用することが好ましい。
【0037】
(第2の実施形態)
本実施形態の工具箱は、磁石を外底板上に固定しておくのでなく、手動で上下動させられるようにしたものである。図11はその工具箱30の斜視図であり、側面板10を透視して描いてある。図12、図13は工具箱30の一部を断面にした側面図であり、図12は磁石12を上方に移動させた状態、図13は磁石12を下方に移動させた状態を示している。
【0038】
使い方として、この工具箱30を持ち運ぶ際は、図12に示すように磁石12を上方に移動させて内底板8の下面に磁着させておく。工具箱30を屋根20上に載置する場合は、図13に示すように磁石12を外底板9上に移動させ、屋根20に磁着させて工具箱30の滑落と転倒を防止させる。
【0039】
工具箱の滑落を効果的に防止するには、磁気吸引力の強い永久磁石を使用する必要がある。前述の工具箱1の場合、磁石12の吸引力が強いと、工具箱を屋根20から持ち上げる際に屋根20上面の鋼板に大きな上向き力が働く。この吸引力が大き過ぎると鋼板が変形することがある。また、変形しなくても、工具箱1を持ち上げるには工具箱1の重量に吸引力を加えた力を必要とする。持ち上げの際に大きな力が必要では作業性が悪い。そこで、本実施形態の工具箱30では、工具箱30を屋根20から持ち上げる際には、工具箱30は動かさずに、まず、磁石12による屋根20の吸引だけを終わらせる。次に、吸引力を無くさせた工具箱30を持ち上げる。このような動作を可能にすることで、屋根20の鋼板を変形させることなく、工具箱30の重量分だけの力で持ち上げ可能にしようとするものである。
【0040】
工具箱30の内底板8には透磁率の高い材料が用いてあり、外底板9には透磁率の低い材料が用いてある。磁石12は、蝶番31を中心として上下に回動する取付板32に固定してある。磁石12の上下面は開放状態にしてある。取付板32における蝶番31とは反対側の一部は、側面板10に設けた開口33を通して工具箱30の外側に突出させてある。その突出部には把手34が取り付けてある。把手34を手動で上下動させることで、磁石12を上下動させることができる。
【0041】
工具箱30を屋根20上に運ぶ際には、把手34を上に動かし磁石12を上に移動させる。磁石12は内底板8下面に磁着し、把手34を離してもその状態を維持する。その状態で工具箱30を持ち上げ、屋根20上に運び載置させる。載置させた後、把手34を下に動かし磁石12を外底板9上に移動させる。磁石12は外底板9を通して屋根20に磁着し、工具箱30はその場所に固定される。
【0042】
屋根20上に載置された工具箱30を持ち上げる際は、まず、工具箱30の蓋3を上から押さえ、工具箱30の側面板10と外底板9とで屋根20を押し付ける。その状態で把手34を上に動かして磁石12を上方移動させ、内底板8の下面に磁着させる。この状態では磁石12と屋根20との間隔が開き、磁石12による屋根20の吸引力は小さくなる。その状態で工具箱30を持ち上げる。磁石12による屋根20の吸引力が弱まっているため、工具箱30の重量分だけの力で持ち上げることができる。
【0043】
このようにすれば、磁石12による屋根20の吸引を終わらせる時に屋根20は内底板8により押し付けられているため、屋根20が磁石12の吸引力で変形することはない。また、工具箱30は工具箱30の重量分だけの力で持ち上げることができる。従って、工具箱30の載置場所替えの作業性が良くなる効果がもたらされる。
【0044】
なお、本実施形態においても図5において説明したように、磁石12は工具箱1を屋根20上に置いた場合に上方になる位置に取り付けるとよい。そのようすれば工具箱1の転倒をより効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】第1の実施形態に係る工具箱1の斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る工具箱1の一部を断面にした側面図である。
【図3】傾斜屋根上に載置した工具箱1を滑落させようとする力の関係の説明図である。
【図4】傾斜屋根上に載置した工具箱1を転倒させようとする力の関係の説明図である。
【図5】工具箱1の転倒を防止するのに効果的な磁石12の取り付け位置の説明図である。
【図6】外底板9に透磁率の低い材料を用いた場合の磁束経路の説明図である。
【図7】外底板9に透磁率の高い材料を用いた場合の磁束経路の説明図である。
【図8】内底板8と外底板9との角度を15度とした工具箱1を様々な傾斜角度の屋根上に置いた場合の状態を示す図である。
【図9】外底面9を内底面8と平行に取り付けた工具箱である。
【図10】磁石12を内底面8の下面に取り付けた工具箱である。
【図11】第2の実施形態に係る工具箱30の斜視図である。
【図12】磁石12を上方に移動させて内底板8の下面に磁着させた状態の側面図である。
【図13】磁石12を下方に移動させて外底板9を通して屋根に磁着させた状態の側面図である。
【図14】従来技術に係る傾斜屋根用の工具箱の例である。
【図15】従来技術に係る傾斜屋根用の工具箱の他の例である。
【符号の説明】
【0046】
図面中、1、1a、1b、1c、30は工具箱、2は工具箱本体、8は内底板、9は外底板、10は側面板、12は永久磁石、13は固定板、20は傾斜屋根、32は取付板を示す。
【出願人】 【識別番号】305030777
【氏名又は名称】岩田 晃
【出願日】 平成19年5月7日(2007.5.7)
【代理人】 【識別番号】100119769
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 清


【公開番号】 特開2008−272907(P2008−272907A)
【公開日】 平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願番号】 特願2007−122022(P2007−122022)