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【発明の名称】 マーキング装置
【発明者】 【氏名】銀杏田 秀樹

【要約】 【課題】墨壷のようにマーキング材が漏洩するおそれがなく、粉体によるマーキング装置のようにマーキング用粉体の飛散や、粉体の充填に起因する各種不具合等もなく、使い勝手の良いマーキング装置を提供する。

【構成】泡状マーキング材Mを付着させた糸状体3により線引きを行うマーキング装置であり、ボディ1と、このボディ1内に設けられた糸巻2と、ボディ1内に形成された充填室1Cとを備え、マーキング材又はこのマーキング材と起泡剤との混合物からなる液状又はペースト状材料を起泡又は発泡させた泡状マーキング材Mが充填室1Cに充填され、糸巻2から充填室1Cを通ってボディ1の外部へ引き出される糸状体3に付着される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
泡状マーキング材を付着させた糸状体により線引きを行うことを特徴とするマーキング装置。
【請求項2】
ボディと、このボディ内に設けられた糸巻と、前記ボディ内に形成され泡状マーキング材が充填される充填室とを備え、前記泡状マーキング材が、前記糸巻から前記充填室を通って前記ボディの外部へ引き出される糸状体に付着されることを特徴とする請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項3】
泡状マーキング材が、墨汁、水性インク、油性インク、顔料、水性塗料、油性塗料、及び染料等の適当な色彩のマーキング材又はこのマーキング材と起泡剤との混合物からなる液状又はペースト状材料を起泡又は発泡させたものであることを特徴とする請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項4】
泡状マーキング材が、着色粉体と起泡剤とを混合した液状又はペースト状材料を起泡又は発泡させたものであることを特徴とする請求項1に記載のマーキング装置。
【請求項5】
ボディ内に、糸状体に付着した余剰な泡状マーキング材を漉し取るスクレーパを設けたことを特徴とする請求項2に記載のマーキング装置。
【請求項6】
泡状マーキング材が、エアゾール式の泡状注出容器又は起泡ポンプにより充填室に充填されることを特徴とする請求項2に記載のマーキング装置。
【請求項7】
ボディに、請求項3又は4に記載の液状又はペースト状材料を起泡させる起泡装置が内蔵されたことを特徴とする請求項2に記載のマーキング装置。
【請求項8】
起泡剤が、界面活性剤からなることを特徴とする請求項3又は4に記載のマーキング装置。
【請求項9】
エアゾール式の泡状注出容器又は起泡ポンプがボディに内蔵されたことを特徴とする請求項6に記載のマーキング装置。
【請求項10】
起泡装置が、請求項3又は4に記載の液状又はペースト状材料に、空気等の気体を噴射混合する装置からなることを特徴とする請求項6に記載のマーキング装置。
【請求項11】
起泡装置が、請求項3又は4に記載の液状又はペースト状材料を吸収可能な多孔質弾性体と、この多孔質弾性体を押圧可能な押動部材からなることを特徴とする請求項6に記載のマーキング装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、木工あるいは建築において、糸状体に付着させたマーキング材により線引きを行うマーキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木工や建築において使用されるマーキング装置としては、従来から、例えば特許文献1に開示されているように、マーキング材に墨汁などの着色液を用いて、このような着色液を付着させた糸で線引きを行う墨壷や、特許文献2に開示されているように、マーキング材にチョーク粉などの粉体を用いて、これを付着させた糸で線引きを行うものが知られている。
【特許文献1】特開2002−66964号公報
【特許文献2】特開2004−1142号公報
【0003】
ところが、墨壷の場合、マーキング材として着色液を用いるので、これが作業者の手や衣服に付着すると落ちにくく、相手材に一度線引きした後で、これを消して修正することが困難であった。しかも、充填した着色液が墨壷の外部へ漏洩しないように、ボディの開閉部分や結合部分などを、パッキンで厳重にシールする必要があり、それでも着色液が漏洩して周囲を汚損するおそれがあった。
【0004】
一方、マーキング材として粉体を用いるマーキング装置の場合、粉体を付着させた糸をマーキング装置のボディの糸出口から引き出す過程で、その粉体の一部が飛散して空気中に浮遊する「粉舞い」が発生し、粉体が無駄に消費される問題が指摘される。しかも「粉舞い」が発生した場合、作業者がこれを吸い込んでしまうことによる健康への悪影響も懸念される。また、相手材の表面が濡れているような場合、このような面に線引きを行うと、糸が湿り、これに付着させた粉体も湿って粒状の塊になってしまい、あるいは糸に粉体が均一に付着しにくいことや、特に使用初期には糸に粉体が付着しにくいことなどから、良好な線引きが困難であり、粉体が糸の表面にしか付着しないため、1回の糸引出しで複数回連続して線引きを行うことができなかった。
【0005】
さらには、ボディ内に粉体を充填する必要があるため、この粉体がボディ内部の部品間に介入して負荷を与え、抵抗となって動作しなくなったり、所要の充填量を確保するためにボディをある程度大きくする必要があり、適量充填も困難であった。しかも、糸巻の周囲にも粉体が充填されるので、例えばメンテナンスの時には、内部の粉体をすべて出さないと、ボディからいったん取り外した糸巻を再びセットすることができないなど、作業の煩雑さを余儀なくされていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、墨壷のようにマーキング材が漏洩するおそれが少なく、粉体を用いるマーキング装置のような粉体の飛散や、粉体の充填に起因する各種不具合等もなく、使い勝手の良いマーキング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るマーキング装置は、泡状マーキング材を付着させた糸状体により線引きを行うものである。なお、ここでいう泡状マーキング材とは、適当な色彩を有する流動性材料と微細な無数の気泡との混合物のことであり、糸状体とは、糸、撚り線、紐、ロープ、ワイヤなどを総称するものである。
【0008】
請求項2の発明に係るマーキング装置は、請求項1に記載のマーキング装置において、ボディと、このボディ内に設けられた糸巻と、前記ボディ内に形成され泡状マーキング材が充填される充填室とを備え、前記泡状マーキング材が、前記糸巻から前記充填室を通って前記ボディの外部へ引き出される糸状体に付着されるものである。このマーキング装置は、糸巻からボディの外部へ引き出した糸状体の先端を相手材の線引き起点に止着してから、ボディを移動させることによってその移動距離分だけ糸巻から糸状体を引き出し、その過程で泡状マーキング材が付着した前記糸状体に適当なテンションを与えた状態で、線引き対象面に向けて手指などではじくことによって、泡状マーキング材による線を転写するものである。泡状マーキング材は、気泡によって比重が小さいことに加え、液又はペーストが毛細管現象によって気泡間に膜状に保持されているので、液状のマーキング材に比較して滞留性が良く、このため充填室から漏洩しにくく、しかも、泡状マーキング材は、糸巻などの動作部分に介入すると、無数の気泡による流体軸受効果を発揮するので、ボディ内部の部品の動作に対する抵抗が少なくなる。
【0009】
請求項3の発明に係るマーキング装置は、請求項1に記載の構成において、泡状マーキング材が、墨汁、水性インク、油性インク、顔料、水性塗料、油性塗料、及び染料等の適当な色彩のマーキング材又はこのマーキング材と起泡剤との混合物からなる液状又はペースト状材料を起泡又は発泡させたものである。この場合、起泡とは、空気などの気体を混入させて物理的に気泡を生成することをいい、発泡とは、液中に炭酸ガスなどを発生させて気泡を生成することをいう。
【0010】
請求項4の発明に係るマーキング装置は、請求項1に記載の構成において、泡状マーキング材が、着色粉体と起泡剤とを混合した液状又はペースト状材料を起泡又は発泡させたものである。この場合は、線引き作業によって線引き対象面に転写された線(泡状マーキング材)は、乾くと着色粉体を付着させた糸状体で線引きした場合と同様の線となる。
【0011】
請求項5の発明に係るマーキング装置は、請求項2に記載の構成において、ボディ内に、糸状体に付着した余剰な泡状マーキング材を漉し取るスクレーパを設けたものである。これによって、泡状マーキング材が糸状体に均一に付着する。
【0012】
請求項6の発明に係るマーキング装置は、請求項2に記載の構成において、泡状マーキング材が、エアゾール式の泡状注出容器又は起泡ポンプにより充填室に充填されるものである。なお、ここでいう起泡ポンプとしては、例えばシリンダ内の空気を、トリガレバーで動作するピストンでノズルへ押し出し、吸い上げた液状又はペースト状材料を巻き込んで起泡させながら前記ノズルから噴射するものなどが好適である。
【0013】
請求項7の発明に係るマーキング装置は、請求項2に記載の構成において、ボディに、請求項3又は4に記載の液状又はペースト状材料を起泡させる起泡装置が内蔵されたものである。
【0014】
請求項8の発明に係るマーキング装置は、請求項3又は4に記載の構成において、起泡剤が、界面活性剤からなるものである。この場合、泡状マーキング材の無数の気泡による流体軸受効果に加え、界面活性剤自体が優れた潤滑性を有するので、ボディ内部の部品の動作に対する抵抗が一層少なくなる。
【0015】
請求項9の発明に係るマーキング装置は、請求項6に記載の構成において、エアゾール式の泡状注出容器又は起泡ポンプがボディに内蔵されたものである。この場合、特にエアゾール式の泡状注出容器は、カセット式に着脱自在に内蔵させることができる。
【0016】
請求項10の発明に係るマーキング装置は、請求項6に記載の構成において、起泡装置が、請求項3又は4に記載の液状又はペースト状材料に、空気等の気体を噴射混合する装置からなるものである。すなわち、空気等の気体を噴射混合することによって液状又はペースト状材料が起泡されるものである。
【0017】
請求項11の発明に係るマーキング装置は、請求項6に記載の構成において、起泡装置が、請求項3又は4に記載の液状又はペースト状材料を吸収可能な多孔質弾性体と、この多孔質弾性体を押圧可能な押動部材からなるものである。ここでいう多孔質弾性体とは、スポンジ、フェルト、綿などを総称するものであり、いったん多孔質弾性体に液状又はペースト状材料を吸収させてから、これを押動部材によって押圧すると、前記液状又はペースト状材料が押し出される過程で、多孔質弾性体内の残存空気も押し出されて混入し、起泡するものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係るマーキング装置によれば、泡状マーキング材を付着させた糸状体により線引きを行うものであり、無数の微細気泡を含むために着色剤自体の消費量が少なく、粉体を用いた場合のような飛散がないので、作業者が吸い込んで健康を損ねるおそれもない。また、泡状マーキング材は液体に比較して滞留性が著しく良いので、充填した泡状マーキング材が漏洩して周囲を不用意に汚損するのを有効に防止することができる。
【0019】
請求項2の発明に係るマーキング装置によれば、泡状マーキング材は滞留性が良く、ボディの充填室から漏洩しにくいので、ボディの開閉部分や結合部分などをパッキンで厳重にシールする必要がなくなり、構造を簡素にすることができる。しかも、泡状マーキング材は、無数の気泡による流体軸受効果を発揮するので、糸巻などボディ内部の部品の動作による負荷が小さく、このため耐久性を向上することができる。
【0020】
請求項3の発明に係るマーキング装置によれば、マーキング材と起泡剤とを混合した液状又はペースト状材料に、空気などの気体を混入させることによって起泡させる方法、あるいは炭酸ガスなどを発生させることによって発泡させる方法によって、容易に泡状マーキング材を得ることができる。
【0021】
請求項4の発明に係るマーキング装置によれば、請求項3と同様、容易に泡状マーキング材を得ることができるのに加え、泡状マーキング材を付着させた糸状体で転写された線が、乾くと着色粉体からなる線となるため、線引き作業後に容易に拭き取って消去することができる。
【0022】
請求項5の発明に係るマーキング装置によれば、泡状マーキング材が糸状体に均一に付着するので、均一な線を描くことができ、しかも泡状マーキング材の無駄な消費を防止することができる。
【0023】
請求項6の発明に係るマーキング装置によれば、泡状マーキング材を、ボディの充填室に、容易に充填することができる。
【0024】
請求項7の発明に係るマーキング装置によれば、ボディの充填室に充填した泡状マーキング材の気泡が時間の経過と共に消えて液化又はペースト化しても、この液状又はペースト状材料をボディ内で再度起泡させ、容易に泡状マーキング材を再製することができる。
【0025】
請求項8の発明に係るマーキング装置によれば、起泡剤として界面活性剤を用いるため、気泡による流体軸受効果と界面活性剤の優れた潤滑性によって、糸巻などボディ内部の部品の動作による負荷が一層小さくなり、このため耐久性を向上することができる。しかも、過って泡状マーキング材で周囲を汚損させたような場合でも、この泡状マーキング材自体が界面活性剤を含んでいるので、容易に拭き取ったり汚れを落とすことができる。
【0026】
請求項9の発明に係るマーキング装置によれば、ケースに内蔵されたエアゾール式の泡状注出容器又は起泡ポンプによって、泡状マーキング材が充填室に適時に充填されるため、使い勝手を一層良くすることができる。
【0027】
請求項10の発明に係るマーキング装置によれば、ボディ内で、液状又はペースト状材料に空気を噴射混合することによって、容易に泡状マーキング材を生成することができる。
【0028】
請求項11の発明に係るマーキング装置によれば、ボディ内で、液状又はペースト状材料を吸収させた多孔質弾性体を押動部材で反復的に押圧するだけで、容易に泡状マーキング材を生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明に係るマーキング装置の好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、マーキング装置の外観斜視図、図2は、マーキング装置の内部機構を示す分離斜視図、図3は、糸の先端に繋着された止着具を示す断面図である。
【0030】
まず図1及び図2に示されるように、本発明に係るマーキング装置は、ボディ1と、このボディ1内に回転可能に収納された糸巻2と、この糸巻2に巻装されケース1外部へ引き出される糸3を備える。なお、糸3は、請求項1に記載された糸状体に相当するものであって、ボディ1の外部へ導出されたその先端に、止着具5が繋着されている。
【0031】
ボディ1は、外観が略円筒状の握り部1Aと、扁平な円形の糸巻収納部1Bを備える。図2に示されるように、握り部1Aの内部には、この握り部1Aにヒンジ11aを介して取り付けられた蓋11によって開閉可能な充填室1Cが形成されており、糸巻収納部1Bは、可能に係止されたリング状のホルダ12によって開閉可能となっている。
【0032】
糸巻2は、外周に糸3を巻回するボビン21と、このボビン21の軸方向一側に一体的かつ同心的に設けられた巻き取りハンドル22とを有し、巻き取りハンドル22の外側面には、手指で回転操作するための複数の指掛け凹部22aが形成されている。ボビン21の内部には、糸巻2を糸3の引き出し方向へ回転させることによって蓄勢されて、この糸巻2を巻き取り方向へ付勢する不図示の巻き取りばねと、この巻き取りばねの付勢力を任意に調整可能な不図示のばねチャージ機構が設けられている。
【0033】
糸巻2のボビン21に巻回された糸3は、充填室1Cにおける糸巻収納部1B側の仕切壁13に形成された糸通し溝13aから、充填室1C内、及び糸巻収納部1Bと反対側の仕切壁14に形成された糸通し溝14aを通って、握り部1Aの先端の糸出口1Dからボディ1の外部へ導出されている。また、糸通し溝13a,14aには、それぞれスポンジ、綿あるいはゴム板等からなるスクレーパ15,16が設けられている。
【0034】
ボディ1の握り部1Aにおける蓋11の中央部に開設された円形孔にはゴム材からなるドーム状のダイアフラム43が密嵌されており、このダイアフラム43の内面には、合成樹脂材等からなる押圧部材17が取り付けられている。そして、前記蓋11を閉じた状態で、ダイアフラム43を手指などで押して凹ませることによって、押圧部材17が押し下げられ、充填室1Cを通る糸3を、この充填室1Cの底部側へ変位させることができるようになっている。手指などによるダイアフラム43の押し付けを解除すれば、押圧部材17は、ダイアフラム43の復元力によって復帰動作する。
【0035】
止着具5は、図3に示されるように、針突出口51a及びこの針突出口51aから延びる中空部51bを有する柄51と、前記中空部51b内にその長手方向移動可能に収蔵され一部が柄51の側面から露出したコア部材52と、このコア部材52に設けられて前記針突出口51aから突没される針53と、この針53を中空部51b内へ没入させる方向へ常時付勢するコイルスプリング54とを備え、糸3の先端が、柄51に形成された糸留め部51cに、針突出口51aを通って係止されている。
【0036】
そしてこの止着具5は、通常は、コア部材52がコイルスプリング54の付勢力で柄51の中空部51b内の移動後端位置に後退しているため、コア部材52と一体の針53は、針突出口51aから中空部51b内に没入した状態に保持されており、使用の際には、コイルスプリング54の付勢力に抗してコア部材52を手指で押すことによって、図3に一点鎖線で示されるように、針突出口51aから針53を押し出し、線引き対象の木材W等に刺し込むことができるようになっている。
【0037】
上述の形態を有するマーキング装置は、ボディ1の握り部1A内に形成された充填室1Cに泡状マーキング材Mを封入充填し、糸巻2のボビン21からボディ1の外部へ引き出す糸3に充填室1Cの泡状マーキング材Mを付着させ、この糸3で線引きを行うものである。
【0038】
泡状マーキング材Mは、白、黒、朱、その他適当な色彩の水性インク、油性インク、墨汁、顔料、水性塗料、油性塗料、染料、及び着色粉体から選択されたマーキング材に、適量の起泡剤を混合させ、さらに必要に応じて水などの液体又は流体を加えることにより、液状又はペースト状の流動性材料とし、これに微細な無数の気泡を混合させることによって、ホイップクリーム状にしたものである。ここでは、マーキング材として着色粉体を用いた場合について説明する。また起泡剤としては、界面活性剤(例えば石鹸や液状の合成洗剤)あるいは卵白などのたんぱく質や、サポニンなどが考えられるが、ここでは界面活性剤を用いるものとして説明する。
【0039】
図示の実施の形態によるマーキング装置を用いて木材等に線引きを行う場合は、まず、ボディ1の握り部1Aの蓋11を開き、エアゾール式の泡状注出容器又はトリガ式の起泡ポンプ付き容器によって、泡状マーキング材Mを外部から充填室1C内へ充填しておく。
【0040】
そして、止着具5の針53を、コア部材52によって柄51から押し出し、図3に示される線引き対象の木材Wの表面における線引きの一方の起点に刺し込むことによって、糸3の先端を止着してから、ボディ1を線引きの方向へ移動させると、ボディ1内の糸巻2の回転を伴いながら、そのボビン21に巻かれた糸3が、ボディ1の移動距離分だけ引き出されて行く。また、これによって、糸巻2に内蔵された不図示の巻き取りばねが巻き込まれて蓄勢される。
【0041】
糸3は、糸巻2から引き出される過程で、ボディ1の充填室1Cを通るので、この充填室1C内の泡状マーキング材Mが接触して付着する。このとき、泡状マーキング材Mは、チョーク粉などの粉体のみからなるマーキング材を用いた場合に比較して付着性が良く、しかも界面活性剤を含んでいるので水分が糸3の繊維間に染み込み、このため糸3によく馴染んだ状態で付着する。
【0042】
また、充填室1Cを通過した糸3は、糸通し溝14aに設けられたスポンジ、綿あるいはゴム板等からなるスクレーパ16によって、余分な泡状マーキング材Mが漉し取られるので、糸3は、泡状マーキング材Mが均一に付着した状態で引き出される。
【0043】
先に説明したように、泡状マーキング材Mは着色粉体を含んでいるが、界面活性剤等と混合して液状又はペースト状としたものを起泡させてホイップクリーム状にしたものであるため、ボディ1の糸出口1Dから引き出される際に着色粉体が飛散して浮遊する「粉舞い」が発生するようなことはない。しかも、微細な無数の気泡を含むため、着色粉体等の消費量が少なくなる。
【0044】
また、充填室1C内の泡状マーキング材Mは、ホイップクリーム状であるため滞留性が良く、したがって、マーキング材として着色液を使用した場合のように、充填室1Cからボディ1の外部へ漏れてしまうおそれが少ない。
【0045】
また、この泡状マーキング材Mは無数の気泡による流体軸受効果を有すると共に、起泡剤として界面活性剤が配合されているので、糸3の摩擦などによる負荷が著しく小さく、このため、糸3が円滑に引き出され、糸3との摺動部分の摩耗も有効に抑制される。
【0046】
さらに、充填室1C内の泡状マーキング材Mの量が少なくなっても、ボディ1の握り部1Aにおける蓋11に設けられたドーム状のダイアフラム43を手指などで押して凹ませることによって、押圧部材17を押し下げれば、充填室1C内を通る糸3が充填室1Cの底部側へ強制的に変位されるので、泡状マーキング材Mを確実に付着させることができる。
【0047】
ボディ1を線引きの他方の起点まで移動させたら、このボディ1の糸出口1Dの先端で糸3を線引き対象の木材Wに押止することによって、糸3を止着具5との間に張設し、この糸3を、前記木材Wの表面に向けて指などではじくことによって、糸3に付着していた泡状マーキング材Mが打ち付けられるので、泡状マーキング材Mによる線が描かれる。そして、糸3には泡状マーキング材Mが均一に付着しているので、太さの均一な線を得ることができる。また、泡状マーキング材Mは、先に説明したように、界面活性剤を含んでいるので水分が糸3の繊維間に染み込み、このため糸3によく馴染んだ状態で付着するので、1回の糸引出しで複数回の線引きを連続的に行うことができる。
【0048】
また、線引き対象の木材Wの表面に描かれた線は、乾いて泡が消えると、殆ど着色粉体からなるものであり、線引き作業後に容易に拭き取って消去することができ、したがって、一度線引きした後も、容易に消去して作業をやり直すことができる。しかも泡状マーキング材Mが、過って作業者の手や衣服などに付着しても、この泡状マーキング材Mの成分は、着色粉体と界面活性剤であるため、容易に洗い落とすことができる。
【0049】
線引き作業終了後は、ボディ1を、止着具5によって糸3の先端が止着された線引き起点へ向けて移動させると、ボディ1内の糸巻2が、糸3の引き出し過程で蓄勢された巻き取りばねの弛緩動作によって巻き取り方向に回転し、糸3が自動的にボビン21に巻き取られて行く。最後に、止着具5を木材Wから引き抜けば、糸3が更に巻き取られ、止着具5がボディ1の糸出口1Dに半収容状態に係止される。
【0050】
そして、上述のような巻き取り過程では、充填室1C内を糸巻2へ向けて通過する糸3に、泡状マーキング材Mが付着するが、この糸3は、糸巻収納部1B側の仕切壁13に形成された糸通し溝13aに設けられたスポンジ、綿あるいはゴム板などからなるスクレーパ15によって泡状マーキング材Mが漉し取られてから糸巻2に巻き取られる。また、既述のとおり、泡状マーキング材Mによる負荷が著しく小さいため、糸3の巻き取りが円滑に行われる。
【0051】
なお、糸巻2(ボビン21)は、手動ハンドルによって、あるいは電動モータ等で回転させて糸3を巻き取る構造とすることも可能である。
【0052】
図4は、本発明の第二の形態によるマーキング装置の内部機構を示す分離斜視図、図5及び図6は、第二の形態における起泡装置の一例を示す要部断面図である。すなわち、この形態によるマーキング装置は、ボディ1に起泡装置4を内蔵したものであって、その他の部分は、基本的に上述の図1及び図2と同様に構成されている。
【0053】
起泡装置4は、図5又は図6に示されるように、ボディ1における充填室1C内に配置された多孔質弾性体であるスポンジ41と、ボディ1における蓋11に取り付けられて前記スポンジ41を押圧可能な押動部材42からなる。詳しくは押動部材42は、前記蓋11の中央部に開設された円形孔に密嵌されたゴム材からなるドーム状のダイアフラム43の内面に取り付けられており、蓋11を閉じた状態でダイアフラム43を手指などで押して凹ませることによって、押動部材42が下方変位して、スポンジ41を圧縮することができるようになっている。
【0054】
なお、図5は、スポンジ41を充填室1C内の底部全体に配置した例を示すものであり、図6は、スポンジ41を充填室1C内の底部の一部に複数配置した例を示すものである。
【0055】
この形態のマーキング装置も、先に説明したものと同様、ボディ1の握り部1A内に形成された充填室1Cに、エアゾール式の泡状注出容器又はトリガ式の起泡ポンプ付き容器等によって、泡状マーキング材Mを封入充填し、糸巻2のボビン21からボディ1の外部へ引き出す糸3に充填室1Cの泡状マーキング材Mを付着させ、この糸3で線引きを行うものである。
【0056】
泡状マーキング材Mの気泡は、起泡剤としての界面活性剤やたんぱく質などの種類、配合率などを調整することによって、長時間にわたって消えずに持続される安定泡沫とすることができるが、配合成分によっては、充填室1Cにいったん封入した泡状マーキング材Mは、水分の蒸発などによって経時的に気泡が消滅して、液状又はペースト状の流動性材料に戻ってしまう。そして、第二の形態のマーキング装置によれば、このような流動性材料を充填室1C内で再度起泡させ、泡状マーキング材Mを容易に再製可能とするものである。
【0057】
詳しくは、気泡が消滅した上述の流動性材料は、充填室1C内のスポンジ41に吸収される。そこで、充填室1Cの蓋11に設けられたダイアフラム43を手指などで押すことによって押動部材42を下方変位させると、この押動部材42がスポンジ41を圧縮することによって前記流動性材料が押し出され、その際に、スポンジ41内の残存空気も押し出されて両者が混合し、無数の気泡を発生する。そして、手指などによるダイアフラム43の押圧を解除すると、押動部材42がダイアフラム43の復元力によって元の位置へ復帰すると共に、圧縮されていたスポンジ41が元の形状に膨らみ、その過程で再び流動性材料の一部を吸収する。したがって手指などによる上述の押圧動作を適当な回数だけ反復して行うことによって、充填室1C内に泡状マーキング材Mを再製することができる。
【0058】
なお、第二の形態は、ボディ1に起泡装置4を備える構成としたが、このような起泡装置4に代えて、例えば蓋11に設けられたダイアフラム43を手指などで押して凹ませることによって、押動部材42を介して動作するピストンで空気をノズルへ送り込み、その過程で吸い上げた着色粉体と界面活性剤の混合液を巻き込んで、泡状マーキング材Mを充填室1C内へ供給する起泡ポンプを備えるように構成することもできる。
【0059】
また、上述の説明では、泡状マーキング材Mを、エアゾール式の泡状注出容器又はトリガ式の起泡ポンプ付き容器等によって、充填室1C内へ封入充填するものとしたが、例えば、予め着色粉体などのマーキング材と界面活性剤とを混合することによって液状又はペースト状とした流動性材料を、ボディ1の握り部1Aの蓋11を開いて充填室1Cに適量注入し、起泡装置4で起泡させることによって、充填室1Cで生成して使用することも可能である。
【0060】
また、起泡装置4としては、上述のようなスポンジなどの多孔質弾性体を反復的に押圧するもの限らず、電力あるいはその他の動力によって液状又はペースト状材料を振動的に撹拌し、起泡させるものも考えられる。
【0061】
なお、上述の説明では、糸3の先端に繋着される止着具5が、木材用として針53を有するものとしたが、フックやマグネットなどで止着するものも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係るマーキング装置の好ましい実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】本発明に係るマーキング装置の好ましい実施の形態の内部機構を示す分離斜視図である。
【図3】糸の先端に繋着された止着具を示す断面図である。
【図4】本発明に係るマーキング装置の好ましい第二の形態の内部機構を示す分離斜視図である。
【図5】第二の形態における起泡装置の一例を示す要部断面図である。
【図6】第二の形態における起泡装置の他の例を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ボディ
1A 握り部
1B 糸巻収納部
1C 充填室
15,16 スクレーパ
2 糸巻
3 糸(糸状体)
4 起泡装置
41 スポンジ(多孔質弾性体)
42 押動部材
43 ダイアフラム
5 止着具
M 泡状マーキング材
【出願人】 【識別番号】391032026
【氏名又は名称】株式会社パテントアイランド
【出願日】 平成18年8月8日(2006.8.8)
【代理人】 【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一


【公開番号】 特開2008−36790(P2008−36790A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−215554(P2006−215554)