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【発明の名称】 電動工具の駆動制御回路、電動工具
【発明者】 【氏名】河合 啓

【要約】 【課題】使用者に違和感を与えない回転制御を行うことのできる電動工具を提供する。

【解決手段】スイッチング素子SW3は、制御端子が制御部7に、入力端子がモータMに、出力端子が電池Eの負極に夫々接続されており、制御部7により、そのオンオフがPWM制御される。制御部7から出力されるPWM信号のオンデューティが変わることで、1周期あたりのスイッチング素子3のオン時間が変化し、これにより、モータMに供給される電力量が制御される。この構成において、前記PWM信号におけるオンデューティの増加量の上限値をボリューム電圧に応じて設定した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具のモータの駆動を制御する電動工具の駆動制御回路において、
前記モータに逆起電圧が発生した場合に、該逆起電圧と予め定められた基準電圧との大小を比較し、その比較結果に応じた比較信号を出力する比較部と、
電源から前記モータへの電力供給のオンオフを切り替えるためのスイッチング素子と、
前記モータの出力を所望の状態に設定する入力を行うための入力操作部の操作量に応じたレベルの信号を出力するボリュームスイッチと、
前記比較部から出力される比較信号と前記ボリュームスイッチの出力信号とに基づき、前記スイッチング素子のスイッチング動作をPWM制御する制御部とを備え、
前記制御部によるPWM信号のデューティの変化に関する制限値が、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルに応じて設定されており、
前記制御部は、前記制限値により定められる制限範囲内で、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティを変化させる電動工具の駆動制御回路。
【請求項2】
前記制御部による前記PWM信号のデューティの変化に関する制限値として、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの上限値が、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルに応じて設定されている請求項1に記載の電動工具の駆動制御回路。
【請求項3】
前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルが0から予め定められた微小レベルまでの範囲は、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加量が0に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の電動工具の駆動制御回路。
【請求項4】
前記制御部による前記PWM信号のデューティの変化に関する制限値として、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加率についての上限値が、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルに応じて設定されている請求項1に記載の電動工具の駆動制御回路。
【請求項5】
前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルが0から予め定められた微小レベルまでの範囲は、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加率が0に設定されていることを特徴とする請求項4に記載の電動工具の駆動制御回路。
【請求項6】
モータと、
前記モータの駆動を制御する駆動制御回路とを備える電動工具において、
前記駆動制御回路は、請求項1ないし5のいずれかに記載の駆動制御回路である電動工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを動力とする電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特開2005−137134号公報に開示されているような手持ち式の電動工具が広く知られており、このような電動工具に搭載されるモータの駆動制御回路として図15に示す回路がある。
【0003】
図15に示す駆動制御回路6’は、モータM’に電力を供給する電源E’と、モータM’に逆起電圧が発生したときに、該逆起電圧をモータM’に回生するフライホイールダイオードD’と、図略の動作ボタンの操作開始によりオンするトリガスイッチSW1’と、前記動作ボタンの操作量に応じた電圧信号を出力するボリュームスイッチSW2’と、モータM’への電力供給のオンオフを切り替えるためのスイッチング素子SW3’と、電源電圧とモータM’に発生した逆起電圧との大小を比較し、その比較結果に応じてH(ハイ)又はL(ロー)のディジタル信号を出力するコンパレータCMP’と、スイッチング素子SW3’のスイッチング動作をPWM制御するとともに、コンパレータCMP’の出力信号とボリュームスイッチSW2’の出力信号とに応じてPWM信号のデューティを変える制御部7’とを備えている。
【0004】
この回路においては、負荷によりモータM’に発生する逆起電圧が基準電圧を超えると、コンパレータCMP’からH(ハイ)のディジタル信号(比較信号)が出力され、制御部7’は、オンデューティを増大する。
【特許文献1】特開2005−137134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この駆動制御回路において、コンパレータCMP’からH(ハイ)のディジタル信号を取得している間、PWM信号のオンデューティを制限なく増大させるように構成した場合、次のような問題が考えられる。
【0006】
すなわち、制御部7’の分解幅が大きい(制御部7’の処理能力が低い)場合、分解幅が小さい(処理能力が高い)制御部7’を採用する場合に比して、PWM信号におけるデューティの調整ピッチが粗く、デューティを変化させたときにモータM’の回転動作に段付きが生じやすくなる。また、低速回転領域では、現在のデューティに対するデューティの変化量の割合が比較的大きいために、特に分解幅が大きい制御部7’が採用された場合には、デューティの調整ピッチの粗さと相まって、デューティの変化によりモータM’の回転動作が短時間の間に段付で比較的大きく変動する。このようなデューティの変化は、モータM’の不安定な挙動となって現れ、電動工具の使用者に違和感を与える虞がある。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、使用者に違和感を与えないモータの回転制御を行うことのできる駆動制御回路及び電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、電動工具のモータの駆動を制御する電動工具の駆動制御回路において、前記モータに逆起電圧が発生した場合に、該逆起電圧と予め定められた基準電圧との大小を比較し、その比較結果に応じた比較信号を出力する比較部と、電源から前記モータへの電力供給のオンオフを切り替えるためのスイッチング素子と、前記モータの出力を所望の状態に設定する入力を行うための入力操作部の操作量に応じたレベルの信号を出力するボリュームスイッチと、前記比較部から出力される比較信号と前記ボリュームスイッチの出力信号とに基づき、前記スイッチング素子のスイッチング動作をPWM制御する制御部とを備え、前記制御部によるPWM信号のデューティの変化に関する制限値が、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルに応じて設定されており、前記制御部は、前記制限値により定められる制限範囲内で、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティを変化させるものである。
【0009】
この発明によれば、前記制御部による前記PWM信号のデューティの変化に関する制限値を、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルに応じて設定し、前記制限値により定められる制限範囲内で、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティを変化させるようにしたので、デューティが大きく変化するのを防止又は抑制することができる。したがって、低速回転領域で、デューティの変化によりモータMの回転動作が短時間の間に段付きで比較的大きく変動するのを防止又は抑制することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動工具の駆動制御回路において、前記制御部による前記PWM信号のデューティの変化に関する制限値として、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの上限値が、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルに応じて設定されているものである。
【0011】
この発明によれば、前記ボリュームスイッチの出力信号レベルごとに、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティが或る一定の上限値までしか増大しない。したがって、低速回転領域でデューティが大きく変化するのを防止又は抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電動工具の駆動制御回路において、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルが0から予め定められた微小レベルまでの範囲は、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加量が0に設定されていることを特徴とするものである。
【0013】
前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルが0から予め定められた微小レベルまでの範囲においては、PWM信号におけるデューティの変化が小さいものであっても、現在のデューティに対するその変化の割合が比較的大きなものとなり、モータの回転動作が急激に大きく変化し、違和感を使用者に与える場合がある。
【0014】
そこで、本発明のように、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルが0から予め定められた微小レベルまでの範囲については、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加量を0に設定することで、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルが0から予め定められた微小レベルまでの範囲においてモータの回転動作が急激に大きく変化するのを防止又は抑制することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電動工具の駆動制御回路において、前記制御部による前記PWM信号のデューティの変化に関する制限値として、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加率についての上限値が、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルに応じて設定されているものである。
【0016】
この発明によれば、前記ボリュームスイッチの出力信号レベルごとに、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加率が或る一定の増加率までしか増加しない。したがって、低速回転領域でデューティが大きな増加率で(急激に)変化するのを防止又は抑制することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電動工具の駆動制御回路において、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルが0から予め定められた微小レベルまでの範囲は、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加率が0に設定されていることを特徴とするものである。
【0018】
この発明によれば、前記ボリュームスイッチの出力信号の信号レベルが0から予め定められた微小レベルまでの範囲については、前記スイッチング素子に出力するPWM信号のデューティの増加率を0に設定することで、請求項3に記載の発明と同様、その範囲においてモータの回転動作が急激に大きく変化するのを防止することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明は、モータと、前記モータの駆動を制御する駆動制御回路とを備える電動工具において、前記駆動制御回路は、請求項1ないし5のいずれかに記載の駆動制御回路である電動工具である。
【0020】
この発明によれば、電動工具において、請求項1ないし5のいずれかに記載の作用が得られる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、デューティが急激に大きく変化するのを防止又は抑制することができる。これにより、低速回転域で使用者に違和感を与えるようなモータの不安定な挙動の発生を防止又は低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明に係る実施形態の構成の一例を示す外観斜視図である。
【0023】
図1に示すように、電動工具1は、例えば、インパクトドライバーを構成する工具部2と、この工具部2に装着された電池パック3とを備えている。工具部2は、図略のドライバーやドリル等の工具が取り付けられる回転部4と、作動ボタン5とを備えている。作動ボタン5は、ユーザによって押し込まれることにより、電池パック3内の電池E(図2参照)から出力された電源電圧Vを制御部7及びモータM(図2参照)へ供給する主電源スイッチである。作動ボタン5は、押し込み開始によりトリガスイッチSW1(図2参照)がオンさせて前記電池EからモータMに電力供給を開始させ、押し込み量に応じて供給電力を変化させるためのものである。
【0024】
図2は、電動工具1に搭載される電力供給回路6を示す図である。図2に示すように、電力供給回路6は、電池Eと、モータMと、フライホイールダイオードDと、トリガスイッチSW1と、ボリュームスイッチSW2と、スイッチング素子SW3と、コンパレータCMPと、制御部7とを有する。
【0025】
電池Eは、電池パック3に搭載されているモータMの電力源である。モータMは、トリガスイッチSW1を介して電池Eに直列接続されている。フライホイールダイオードDは、アノード(陽極)がモータMの電池E側の端子に接続されるように、電池Eに対してモータMと並列接続されている。
【0026】
トリガスイッチSW1は、前記作動ボタン5の押しこみ動作によりオンするスイッチである。ボリュームスイッチSW2は、抵抗素子R1と制御部7に接続された端子Tとを備え、前記作動ボタン5の押し込み量に応じて、前記端子Tが抵抗素子R1と接続する位置が変化することにより、電源電圧Vを用いて生成する制御部7への出力電圧(以下、ボリューム電圧という)が変化するように構成されたスイッチである。
【0027】
スイッチング素子SW3は、例えばFETからなり、制御端子が制御部7に、入力端子がモータMに、出力端子が電池Eの負極に夫々接続されており、制御部7により、そのオンオフがPWM(Pulse Width Modulation)制御される。制御部7から出力されるPWM信号のオンデューティが変わることで、1周期あたりのスイッチング素子3のオン時間が変化し、これにより、モータMに供給される電力量が制御される。
【0028】
コンパレータCMPは、反転入力端子(−)にモータMの電池E側の端子が接続され、非反転入力端子(+)にフライホイールダイオードDのアノードに接続されており、非反転入力端子(+)に入力されるモータMの逆起電圧と、前記基準電圧の一例としての電源電圧Vとの大小に応じて、H(ハイ)又はL(ロー)のディジタル信号を出力する。
【0029】
すなわち、スイッチング素子SW3がオンからオフに切り替わると、モータMに逆起電圧が発生する。この逆起電圧は、瞬間的に大きくなった後、除々に小さくなっていく。一方、コンパレータCMPは、前記逆起電圧が電源電圧Vより大きいときに、制御部7にH(ハイ)のディジタル信号を出力する。ここで、前記コンパレータCMPの比較動作における1周期において、無負荷時は、図3に示すように、前記逆起電圧が前記電源電圧Vを超える時間が電源電圧Vを下回る時間より短く、本実施形態では、コンパレータCMPによる比較動作タイミングを、少なくとも前記逆起電圧が電源電圧Vを超える時間だけ遅延させるようにしている。したがって、無負荷時は、図4に示すように、コンパレータCMPから常にL(ロー)のディジタル信号が一定の周期で出力される。
【0030】
一方、負荷がある場合には、図5に示すように、無負荷時とは逆に、前記逆起電圧が電源電圧Vを超える時間が電源電圧Vを下回る時間より大幅に長い。したがって、図6に示すように、コンパレータCMPが前述の比較動作タイミングで比較動作を行うことで、コンパレータCMPからH(ハイ)のディジタル信号が一定の周期で出力される。
【0031】
制御部7は、例えば制御プログラムを記憶するROMや一時的にデータを記憶するRAM等が内蔵されたマイクロコンピュータからなり、機能的に、テーブル記憶部8と、PWM信号出力部9とを有する。
【0032】
テーブル記憶部8は、無負荷時におけるボリューム電圧とPWM信号におけるオンデューティとの対応関係をテーブル形式で予め記憶しているものである。図7に示すように、PWM信号のオンデューティは、ボリューム電圧の増大に伴って大きくなるように設定されており、テーブル記憶部8は、この関係をテーブル形式で予め記憶している。
【0033】
PWM信号出力部9は、ボリュームスイッチSW2から出力されるボリューム電圧と、前記コンパレータCMPから出力される比較信号とに応じたデューティのPWM信号を生成し、このPWM信号をスイッチング素子SW3に出力するものである。
【0034】
すなわち、PWM信号出力部9は、前述したとおり、無負荷時には、コンパレータCMPからH(ハイ)のディジタル信号が出力されることはないため、作動ボタン5の押し込み量に応じたボリューム電圧に対応するオンデューティを、テーブル記憶部8のテーブルを参照して導出し、この導出したオンデューティのPWM信号をスイッチング素子SW3に出力する。
【0035】
一方、負荷がある場合、PWM信号出力部9は、テーブル記憶部8のテーブルに格納された、現在のボリューム電圧に対応するデューティを初期値としてPWM信号を生成し、コンパレータCMPからH(ハイ)のディジタル信号を受けて、スイッチング素子SW3に出力するPWM信号のオンデューティを増大させていく。
【0036】
ここで、コンパレータCMPからH(ハイ)のディジタル信号を取得している間、PWM信号のオンデューティを制限なく増大させるものとすると、図7(b)の実線で示すように、デューティは負荷に応じた変動範囲内で変動するが、特に制御部7の分解幅が大きい(制御部7の処理能力が低い)場合には、そのデューティの変動範囲が非常に大きくなる。
【0037】
すなわち、制御部7の分解幅が小さい(制御部7の処理能力が高い)場合には、0(%)から100(%)までのオンデューティを例えば1024段階で制御するのに対して、制御部7の分解幅が大きい場合には、0(%)から100(%)までのオンデューティを例えば256段階で制御し、制御部7の分解幅が大きい場合は、制御部7の分解幅が小さい場合に比して1段階当たりのデューティの変化量が大きい。その結果、制御部7の分解幅が大きい場合は、制御部7の分解幅が小さい場合ほどきめ細かくデューティを増減させることができないから、デューティを変化させたときにモータMの回転動作に段付きが生じやすくなるとともに、制御部7の分解幅が小さい場合に比してデューティの変動範囲が大きくなる。
【0038】
制御部7の分解幅が小さい場合であってもモータMの高速回転域では、現在のデューティに対するデューティの変化量の割合が比較的小さい。したがって、デューティを変化させた場合に、そのデューティの変化量(絶対量)が比較的大きくても、該デューティの変化が、使用者に違和感を与えるようなモータMの動作変化となって現れることは少ないと考えられる。
【0039】
しかし、モータMの低速回転域では、現在のデューティに対するデューティの変化量の割合が比較的大きい。したがって、デューティを変化させた場合に、そのデューティの変化量(絶対量)が小さいものであっても、該デューティの変化が、使用者に違和感を与えるようなモータMの動作変化となって現れやすい。
【0040】
さらに、モータMの誤制御を防止するため、制御部7が、例えばデューティを大きくする旨の比較信号をコンパレータCMPから所定回数連続して受信したときにのみデューティを大きくする制御を行うように設計されている場合には、前記比較信号の内容が変化しても、制御部7によりその変化に対して速やかに(前記変化の直後に)デューティが変化されず、制御部7によるデューティの制御が前記比較信号の内容変化(比較結果の切り替わり)に対して遅延する場合がある。特に、制御部7の分解幅が大きい場合には、制御部7の分解幅が小さい場合に比してデューティの制御周期が長いから、制御部7の分解幅が小さい場合に比してPWM信号の制御が粗くなり、これが、デューティを変化させた場合に、電動工具1の使用者に違和感を与えるモータMの動作変化として表れる可能性が高い。
【0041】
このように、特に制御部7として分解幅が大きいものが使用された場合において、デューティを制限なく変化させたときに、特にモータMの低速回転域で電動工具1の使用者に違和感を与える可能性が高いことから、本実施形態では、オンデューティの上限値をボリューム電圧に応じて設定するとともに、特に低速回転域では、高速回転域に比してオンデューティの上限値(変動範囲)を小さく設定している。
【0042】
例えば、図8、図9に示すように、ボリュームスイッチSW2から出力され得るボリューム電圧を5段階に分け、無負荷時において、ボリューム電圧が小さい方から1段階目及び2段階目に対してはオンデューティ「10」が、3段階目及び4段階目に対してはオンデューティ「20」が、5段階目に対してはオンデューティ「30」がそれぞれ設定されているものとする。なお、図8に示すボリューム電圧の欄の「1」〜「5」は、ボリューム電圧の段階数を示す。
【0043】
この場合において、本実施形態では、ボリューム電圧が小さい方から1段階目及び2段階目は「20」を、3段階目から5段階目は「40」を、オンデューティの増加量の上限値として設定されている。すなわち、ボリューム電圧が1段階目のときには、オンデューティを10%から30(=10+20)%までの範囲で増減でき、また、3段階目のときには、オンデューティを20%から40(=20+20)%までの範囲で増減できることを意味している。ボリューム電圧に応じて設定されたオンデューティの上限値は、テーブル記憶部8に記憶されている。
【0044】
このように、PWM信号におけるオンデューティの増減範囲を限定することで、急激なデューティの変化が発生して急激に回転部4の回転速度が変化するという状況が発生するのを抑制することができる。特に、低速回転域で、高速回転域に比してオンデューティの上限値を小さく設定する(図9に示すΔD1<ΔD2)ことで、低速回転域で急激に回転部4の回転速度が変化するという状況が発生するのを抑制することができる。その結果、電動工具1の使用者に違和感を与えるのを防止又は抑制することができる。
【0045】
図10は、電力供給回路6における各部の動作を示すフローチャートである。図10に示すように、モータMに負荷がかかると(ステップ♯1)、モータMに発生する逆起電圧が変化し(ステップ♯2)、その逆起電圧が電源電圧Vを超えると(ステップ♯3)、コンパレータCMPからH(ハイ)のディジタル信号が出力される(ステップ♯4)。このディジタル信号を制御部7が受信し(ステップ♯5)、制御部7は、予め設定された上限値までの範囲でデューティを変更する(ステップ♯6)。
【0046】
以上のように、オンデューティの上限値をボリューム電圧に応じて設定し、PWM信号におけるオンデューティの増減範囲を限定することで、モータMの急激な動作変化の発生を抑制することができる。その結果、特に制御部7として分解幅が大きいものが使用された場合において、特にモータMの低速回転域で、電動工具の使用者に違和感を与えるのを防止又は抑制することができる。
【0047】
本件は、前記実施形態に加えて、又は前記実施形態に代えて、次の変形形態も採用可能である。
【0048】
(1)前記第1の実施形態では、ボリューム電圧に応じたデューティの増加量の上限値を設定し、その上限値までの範囲内でデューティを変更するようにしたが、この態様に限らず、デューティの増加率の上限値を設定するようにしてもよい。
【0049】
図12は、無負荷時におけるデューティの増加率の上限値を示すグラフであり、図13,図14は、負荷があるときのデューティの増加率の上限値を示すグラフ及び図である。
【0050】
図12に示すように、無負荷時においては、デューティの増加率の上限値は一定である。したがって、PWM信号出力部9は、無負荷時においては、ボリューム電圧の如何に拘わらず、制御部7による制御周期ごとに、その増加率の上限値までの範囲でデューティを変更する。
【0051】
一方、図13,図14に示すように、負荷があるときには、ボリューム電圧に応じて、デューティの増加率の上限値が設定されている。例えば、予め設定されているボリューム電圧が5段階に分けられており、無負荷時において、ボリューム電圧の各段階におけるデューティが図8と同様に設定されているものとすると、ボリューム電圧が小さい方から1段階目及び2段階目は「2」を、3段階目から5段階目は「4」が、オンデューティの増加率の上限値として設定されている。すなわち、ボリューム電圧が1段階目のときには、制御部7による1制御周期につき2%までの範囲でオンデューティを増大させることができ、また、3段階目のときには、前記1制御周期につき4%までの範囲で増大させることができることを意味している。ボリューム電圧に応じて設定されたオンデューティの増加率の上限値は、テーブル記憶部8に記憶されている。
【0052】
このように、デューティの増加率の上限値を設定することによっても、急激なデューティの変化が発生して急激に回転部4の回転速度が変化するという状況が発生するのを抑制することができる。特に、低速回転域で、高速回転域に比してオンデューティの増加率の上限値を小さく設定する(図13に示すΔd1<Δd2)ことで、低速回転域で急激に回転部4の回転速度が変化するという状況が発生するのを抑制することができる。その結果、電動工具1の使用者に違和感を与えるのを防止又は抑制することができる。
【0053】
(2)ボリューム電圧が0(V)から予め定められた微小レベルまでの微小範囲は、PWM信号のデューティが微小に変化しても、使用者に違和感を与え得るモータMの大きな動作変化となる可能性が高い。すなわち、前記微小範囲では、現在のデューティに対するその変化の割合が非常に大きなものとなり、モータの回転動作が急激に大きく変化して違和感を使用者に与える場合がある。そこで、前記微小範囲については、PWM信号におけるデューティの初期値からの増加量を0、又は前記初期値からの増加率を0に設定することで、前記微小範囲において使用者に違和感を与え得るモータMの大きな動作変化の発生を防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る電動工具の構成の一例を示す外観図である。
【図2】電動工具に搭載される電力供給回路を示す図である。
【図3】無負荷時における逆起電圧と電源電圧との大小関係を示す図である。
【図4】無負荷時におけるコンパレータの出力信号の波形を示す図である。
【図5】負荷があるときにおける逆起電圧と電源電圧との大小関係を示す図である。
【図6】負荷があるときにおけるコンパレータの出力信号の波形を示す図である。
【図7】(a)は、無負荷時におけるボリューム電圧とオンデューティとの関係を示すグラフであり、(b)は、負荷があるときにおけるオンデューティの変動を表す図である。
【図8】本件の特徴部分の説明図である。
【図9】本件の特徴部分を示す図である。
【図10】電力供給回路の動作を示すフローチャートである。
【図11】本件の特徴部分を示す図である。
【図12】無負荷時におけるデューティの増加率の上限値を表す図である。
【図13】本件の特徴部分を示す図である。
【図14】本件の特徴部分の説明図である。
【図15】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 電動工具
7 制御部
8 テーブル記憶部
9 PWM信号出力部
M モータ
CMP コンパレータ
SW2 ボリュームスイッチ
SW3 スイッチング素子
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年11月27日(2006.11.27)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司

【識別番号】100096150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 孝夫

【識別番号】100099955
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 次郎


【公開番号】 特開2008−132545(P2008−132545A)
【公開日】 平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願番号】 特願2006−318735(P2006−318735)