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【発明の名称】 電動工具
【発明者】 【氏名】深津 伸一

【要約】 【課題】電動工具において、簡易な構造でモータの固定子巻線を粉塵等から保護できる技術を提供する。

【構成】本発明の電動工具は、先端工具117と、モータ111と、モータハウジング105とを有する。モータ111は、筒状の固定子鉄心123と、環状の固定子巻線129と、固定子鉄心123と固定子巻線129間の電気的な接続を絶縁する絶縁紙131とを有する。固定子巻線129は、固定子鉄心123の軸方向に延在する巻線軸方向領域129aと、周方向に延在する巻線周方向領域129bとを有する。絶縁紙131は、固定子鉄心123と巻線軸方向領域129aとの間に介在される絶縁部131aと、絶縁部131aから固定子鉄心123の軸線方向に所定長さで延長して巻線周方向領域129aの外表面を覆う覆い部131bとを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工材に所定の加工作業を行う先端工具と、
前記先端工具を駆動するモータと、
前記モータを収容するモータハウジングと、を有する電動工具であって、
前記モータは、
筒状の固定子鉄心と、
前記固定子鉄心の内側に配置されて当該固定子鉄心の軸方向に延在する巻線軸方向領域と、当該巻線軸方向領域に連続するとともに前記固定子鉄心の軸方向端面から突出して当該固定子鉄心の周方向に延在する巻線周方向領域とを有する環状の固定子巻線と、
前記固定子鉄心と前記固定子巻線間の電気的な接続を絶縁する絶縁紙と、を有し、
前記絶縁紙は、
前記固定子鉄心と前記巻線軸方向領域との間に介在される所定の形状および寸法を有する絶縁部と、
前記絶縁部から前記固定子鉄心の軸線方向に所定長さで延長して前記巻線周方向領域の外表面を覆う覆い部と、を有し、
前記モータハウジングの外部から内部へと侵入する異物が前記巻線周方向領域の外表面に干渉することを前記覆い部によって回避する構成としたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
請求項1に記載の電動工具であって、
前記巻線周方向領域は、前記巻線軸方向領域と交差する交差部を有し、当該交差部が前記覆い部によって覆われる構成としたことを特徴とする電動工具。
【請求項3】
請求項2に記載の電動工具であって、
前記交差部は、前記固定子鉄心の径方向に関する外径側と内径側の両方の外表面が前記覆い部によって覆われる構成としたことを特徴とする電動工具。
【請求項4】
請求項1に記載の電動工具であって、
前記巻線周方向領域は、前記固定子鉄心の径方向に関する外径側と内径側のいずれか一方または両方の外表面が周方向の全体にわたって前記覆い部によって覆われる構成としたことを特徴とする電動工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、モータを用いて先端工具を駆動する電動工具に関し、詳しくはモータにおける固定子巻線の粉塵からの保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの固定子は、円筒状の固定子鉄心と、当該固定子鉄心の内側に配置される環状の固定子巻線とを主体として構成されている。固定子巻線は、その一部が固定子鉄心の軸方向端部から突出して当該固定子鉄心の周方向に延在されている。この固定子鉄心の周方向に延在する領域としての突出端部は、通常コイルエンドと呼称されているが、固定子鉄心から露出された状態に置かれるために、モータハウジング内部に侵入する粉塵と干渉し、コイル外表面の絶縁塗膜が剥離する虞がある。とりわけ被加工材の切削作業、切断作業、あるいは穴開け作業等に用いられる電動工具においては、加工作業に伴い発生する粉塵がモータ内に侵入する可能性が高く、このため、この突出端部を粉塵から保護する必要がある。特開平3−150035号公報(特許文献1)には、固定子巻線をテープで巻く技術が開示されている。
しかしながら、上記公報に記載のモータにおいては、環状に巻き上げられた固定子巻線の全体にわたってテープを巻き付ける構成である。このため、テープの巻き付け作業が面倒であること、手間が掛かること等からコストが高く付くものであり、この点で一層の合理化が要請される。
【特許文献1】特開平3−150035号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、電動工具において、簡易な構造でモータの固定子巻線を粉塵等から保護できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明によれば、被加工材に所定の加工作業を行う先端工具と、先端工具を駆動するモータと、モータを収容するモータハウジングとを有する電動工具が構成される。本発明における「電動工具」は、電動グラインダーのような研削工具、電動ハンマドリルや電動ドリルのような穴開け工具、電動丸鋸のような切断工具、電動ドライバのような締付け工具等、各種電動工具を広く包含する。
【0005】
本発明のモータは、筒状の固定子鉄心と、環状の固定子巻線と、絶縁紙とを有する。なお本発明における「筒状」とは、筒状に一体に製作される態様のみならず、例えば半筒状に製作した2つの半筒体を互いに向き合うように接合することによって筒状に形成する態様を好適に包含する。すなわち、固定子鉄心は、製品段階で筒状に形成されていれば足りる。固定子巻線は、固定子鉄心の内側に配置されて当該固定子鉄心の軸方向に延在する巻線軸方向領域と、当該巻線軸方向領域に連続するとともに固定子鉄心の軸方向端面から突出して当該固定子鉄心の周方向に延在する巻線周方向領域とを有する。絶縁紙は、固定子鉄心と固定子巻線間の電気的な接続を絶縁するために備えられ、固定子鉄心と巻線軸方向領域との間に介在される所定の形状および寸法を有する絶縁部と、当該絶縁部から固定子鉄心の軸線方向へと所定長さで延長して巻線周方向領域の外表面を覆う覆い部とを有する。そしてモータハウジングの外部から内部へと侵入する異物が巻線周方向領域の外表面に干渉することを覆い部によって回避する構成とした。なお本発明における「巻線周方向領域」とは、固定子鉄心の軸方向端面から突出して露出される固定子巻線の突出端部、すなわち、コイルエンドがこれに該当する。また本発明における「所定の形状および寸法」とは、固定子鉄心と固定子巻線間に介在される絶縁紙につき、規格によって定められた形状と寸法をいう。因に、絶縁紙は、固定子鉄心の軸方向端面からの突出量が最小2mmに定められている。また本発明における「異物」とは、典型的には、粉塵あるいは加工屑等がこれに該当する。また本発明における「巻線周方向領域を覆う」とは、覆い部が巻線周方向領域の一部に被さるように接触状態で配置される態様、あるいは巻線周方向領域の全体に被さるように接触状態で配置される態様のいずれも好適に包含する。
【0006】
本発明においては、固定子鉄心の軸方向端面から突出して露出する巻線周方向領域の外表面を絶縁紙に設けた覆い部で覆う構成としたものである。電動工具では、外気をモータハウジング内に流通させてモータの冷却を行うように構成されている。したがって、電動工具を用いての被加工材の加工作業時において、加工作業によって生じる粉塵あるいは加工屑が外気とともに、モータハウジング内に侵入した際、粉塵あるいは加工屑等の異物が巻線周方向領域の外表面に干渉することを覆い部によって回避し、当該巻線周方向領域を保護することができる。なお絶縁紙に形成される覆い部は、規格によって定められた上記の最小突出量を超えて延長される。本発明によれば、既存の絶縁紙の一部を延長するという簡単な構成で、固定子巻線の巻線周方向領域に関する異物からの保護対策を実現することができ、製造コストの低減が可能となる。
【0007】
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の電動工具における巻線周方向領域は、巻線軸方向領域と交差する交差部を有し、当該交差部が覆い部によって覆われる構成とした。固定子巻線の巻線周方向領域の異物との干渉による影響を精査した結果、巻線周方向領域が巻線軸方向領域と交差する交差部、すなわち固定子巻線の隅部において、異物による影響が最も大きいことが判明した。本発明では、異物の干渉による影響を最も受ける領域である交差部を覆う構成としたことにより、少ない量の絶縁紙で巻線周方向領域を合理的に保護できる。
【0008】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の電動工具における交差部は、固定子鉄心の径方向に関する外径側と内径側の両方の外表面が覆い部によって覆われる構成とした。本発明によれば、交差部の外径側と内径側の両方を覆う構成のため、交差部に関する保護性能をより高めることができる。
【0009】
(請求項4に記載の発明)
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の電動工具における巻線周方向領域は、固定子鉄心の径方向に関する外径側と内径側のいずれか一方または両方の外表面が周方向の全体にわたって覆い部によって覆われる構成とした。本発明によれば、巻線周方向領域の周方向全体を覆い部によって覆う構成のため、巻線周方向領域の広い範囲にわたって異物の干渉を回避し、巻線周方向領域の保護性能を高めることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電動工具において、簡易な構造でモータの固定子巻線を粉塵等から保護できる技術が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態につき、図1〜図6を参照しつつ説明する。本発明の実施形態は、電動工具の一例として、金属、コンクリート、石材等の各種被加工材の研磨作業あるいは研削作業に用いられる手持ち式の電動ディスクグラインダーを用いて説明する。図1には電動ディスクグラインダーの全体構成が示される。本実施の形態に係る電動ディスクグラインダー101(以下、グラインダーという)は、図1に示すように、長軸方向を前後方向(図示左右方向)とするものであって、モータハウジング105およびギアハウジング107からなる工具本体としての本体部103によって外郭が構成されている。モータハウジング105は、概ね円筒形状に形成され、当該モータハウジング105内には、駆動モータ111が収容されている。駆動モータ111は、本発明における「モータ」に対応する。駆動モータ111は、交流整流子モータであり、モータハウジング105内に回転可能に配置される回転子113と、モータハウジング105内に固定される固定子115とから構成され、回転子113の回転軸線方向がグラインダー101の長軸方向、すなわち本体部103の長軸方向となるように配置されている。
【0012】
モータハウジング105の前端部に連接されるギアハウジング107内には、駆動モータ111の回転出力を砥石117に伝達する動力伝達機構(便宜上図示を省略する)が収容されている。砥石115は、本発明における「先端工具」に対応する。駆動モータ111の回転出力は、動力伝達機構を介して砥石117に周方向の回転運動として伝達される。砥石117は、本体部103の長軸方向の一端側(前側)において、その回転軸線が本体部103の長軸方向(駆動モータ111の回転軸線)に対して直交するように配置される。またモータハウジング105内には、駆動モータ111によって回転駆動される冷却ファン(便宜上図示を省略する)が収容されている。そして駆動モータ111の駆動時において、冷却ファンの吸引力によって吸入口(便宜上図示を省略する)からモータハウジング105内に吸入された冷却風が、回転子113と固定子115との間の隙間、あるいは固定子115とハウジング内壁面との間に形成された隙間を通って前方(ギアハウジング107側)へと流通することで駆動モータ111を冷却し、その後、排気口(便宜上図示を省略する)から外へ排出される構成とされている。
【0013】
またモータハウジング105の他端側(後側)には、メインハンドル109が連接されている。メインハンドル109は、その長軸方向が本体部103の長軸方向となるように設けられる。すなわち、メインハンドル109は、本体部103の長軸方向に概ね直線状に延在されている。なお図示はしないが、大型のディスクグラインダー101の場合であれば、メインハンドル109のほかに、ギアハウジング107の側面あるいは上面に取り外し可能な補助ハンドルが設けられ、当該補助ハンドルは、その長軸方向が本体部103の長軸方向に概ね直交するように装着される。作業者はこのメインハンドル109および補助ハンドルを手で握り、砥石117を回転駆動して被加工材の研削作業あるいは切断作業を行うことができる。
【0014】
図2および図3には、本実施の形態に係る駆動モータ111の固定子(ステータ)115の構成が示されている。固定子115は、長軸方向の両端が開口される円筒状(中空状)の固定子鉄心123と、環状の固定子巻線129とを主体として構成される。固定子鉄心123は、本発明における「固定子鉄心」に対応し、固定子巻線129は、本発明における「固定子巻線」に対応する。固定子巻線129は、図4に示すように、予め所定の巻数で略長方形の環状に巻き上げられるとともに、長手方向に延在する2つの長辺部129a(図4における左右2辺)、および当該長辺部129aと交差する方向に延在する2つの短辺部129b(図4における上下2辺)が、それぞれ結束用テープ128によってコイル線がばらけることがないように結束されている。
【0015】
固定子巻線129は、図3に示すように、左右2つの長辺部129aを、固定子鉄心123の内径側に形成された2つのスロット125に嵌め込むことによって当該固定子鉄心123の内側に取り付けられる。なおスロット125は、固定子鉄心123の内周部に突設された一対の磁極片127と、固定子鉄心123の内周面とによって囲まれる当該固定子鉄心123の軸線方向に延在する固定子巻線収容空間である。スロット125は、磁極片127の先端部(突出端部)側に巻線挿入口としての開口を備えた巻線収容部を構成し、当該開口から固定子巻線129の長辺部129aが挿入される構成とされる。固定子巻線129が固定子鉄心123の内側に配置された状態において、当該固定子巻線129の上下2つの短辺部129bは、図2に示すように、それぞれ固定子鉄心123の軸方向端面から突出される。すなわち、上下2つの短辺部129bは、固定子鉄心123の軸方向端面から突出して当該固定子鉄心123の周方向に延在される露出部分であり、コイルエンドと呼称される。上記のように、固定子巻線129の長辺部129aは、固定子鉄心123のスロット125に収容される領域であり、本発明における「巻線軸方向領域」に対応する。また固定子巻線129の短辺部129bは、スロット125から突出して露出される領域であり、本発明における「巻線周方向領域」に対応する。以下の説明では、短辺部129bにつき、これをコイルエンド129bという。
【0016】
固定子巻線129の各長辺部129aには、当該長辺部129aを固定子鉄心123のスロット125に嵌め込む前段階において、絶縁紙131が巻き付けられる(図5参照)。これにより、図3に示すように、固定子巻線129を固定子鉄心123に取り付けた際、固定子鉄心123に対する長辺部129aの直接の接触が回避され、固定子鉄心123と固定子巻線129間における電気的な接続が絶縁される構成とされる。
【0017】
本実施の形態に係る絶縁紙131は、図7に示すように、固定子巻線129の長辺部129aに巻き付けるための長方形の絶縁本体部131aと、固定子巻線129のコイルエンド129bを覆うための絶縁本体部131aよりも小さい長方形の延長部131b(図7の斜線領域)とを有する。絶縁本体部131aは、規格に基づく寸法、すなわち固定子鉄心123の軸方向長さL(図2参照)を僅かに超える縦幅(長辺長さ)L1(図7参照)と、固定子巻線129の長辺部129aの周方向長さと等しいかあるいはそれを超える横幅L2(図7参照)とを有する長方形に形成されている。一方、延長部131bは、絶縁本体部131aの長辺方向である縦幅方向両端(図7の上下方向)からそれぞれ所定の長さで延長されている。絶縁本体部131aは、本発明における「絶縁部」に対応し、延長部131bは、本発明における「覆い部」に対応する。
【0018】
上記のように構成された絶縁紙131は、2枚準備される。そして図4に示すように、固定子巻線129を固定子鉄心123に取り付ける前の段階で、固定子巻線129に装着される。すなわち、上下の延長部131bが固定子巻線129におけるコイルエンド129bの長辺部129aとの交差部、すなわち固定子巻線129の隅部129cの外側(固定子鉄心123の径方向に関する外径側)から被さる(重なる)ように配置し、その状態で、絶縁本体部131aを固定子巻線129の2つの長辺部129aに巻き付ける。その後、例えば粘着テープ133によって絶縁本体部131aを巻き付けた状態に止着する。この状態が図5および図6に示される。かくして、2つの各長辺部129aにつき、絶縁紙131が取り付けられた固定子巻線129は、前述したように、固定子鉄心123に取り付けられる。絶縁紙131の絶縁本体部131aがスロット125の内周面に接触し、これにより固定子鉄心123と固定子巻線129間での電気的な接続が絶縁される。
【0019】
本実施の形態に係る駆動モータ111の固定子121は、上記のように構成したものである。グラインダー101を使用して砥石117による加工作業時において、加工作業によって生じる粉塵あるいは加工屑が外気とともに、モータハウジング105内に侵入し、固定子巻線129のコイルエンド129bに干渉してコイル表面の絶縁塗膜を剥離する虞がある。
本実施の形態によれば、固定子鉄心123の軸方向端面から突出する固定子巻線129のコイルエンド129bを、固定子鉄心123と固定子巻線129との絶縁に用いられる絶縁紙131から延長した延長部131bによって覆う構成としたものであり、これによって上記の粉塵あるいは加工屑がコイルエンド129bの外表面に干渉することを回避し、当該コイルエンド129bを保護することができる。特に本実施の形態では、既存の絶縁紙131の一部を延長するという簡単な構成で、固定子巻線129のコイルエンド129bに関する粉塵等からの保護対策を実現することができ、製造コストの低減を図る上で有効となる。
【0020】
固定子巻線129のコイルエンド129bの粉塵等との干渉による影響は、コイルエンド129bの隅部129cにおいて、最も顕著であることが分かっている。本実施の形態によれば、粉塵等と最も干渉する可能性の高い領域を覆う構成とすることで、少ない量の絶縁紙131を用いて固定子巻線129のコイルエンド129bを合理的に保護することができ、製造コストをより低く抑えることが可能となる。
【0021】
なお固定子巻線129の隅部129cは、一般的に図示のように湾曲されている。このため、延長部131bの形状については、当該隅部129cの外径側形状に対応した湾曲状に形成することが、材料費の無駄を省く上で有効である。
【0022】
(本発明に第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態につき、図8および図9を参照しつつ説明する。第2の実施形態は、固定子巻線129の粉塵対策に関し、コイルエンド129bの隅部129cの外径側と内径側との両方の外表面を覆う構成としたものであり、この点を除いた固定子115の構成については、前述した第1の実施形態と同様である。本実施の形態における絶縁紙131は、図9に示すように、第1の実施形態における絶縁本体部131aと同形状の絶縁本体部131aと、当該絶縁本体部131aの長辺方向である縦幅方向の両端からそれぞれ当該縦幅方向(長辺方向)へと延長する上下の延長部131bとを有する。延長部131bは、前述した第1の実施形態の延長部131bに比べ、同じ長さの縦幅と2倍以上の長さの横幅を有する構成とされる。具体的には、延長部131bは、横幅方向の一辺が絶縁本体部131aの横幅方向一辺の延長線上に設定され、横幅方向他辺が絶縁本体部131aの横幅方向他辺よりも内側に入り込んだ位置に設定されている。
【0023】
上記のように構成された絶縁紙131は、2枚準備される。図8に示すように、絶縁紙131は、固定子巻線129の長辺部129aに絶縁紙131の絶縁本体部131aを巻き付ける際、上下の延長部131bが固定子巻線129におけるコイルエンド129bの隅部129cの外径側と内径側との両方の外表面に被さるように配置される。本実施の形態によれば、上下の延長部131bが、コイルエンド129bの隅部129cの外径側および内径側の外表面をそれぞれ覆う構成のため、モータハウジング105内に侵入する粉塵等の干渉防止がより有効となり、コイルエンド129bの保護効果がアップする。
【0024】
(本発明に第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態につき、図10〜図12を参照しつつ説明する。第3の実施形態は、固定子巻線129の粉塵対策に関し、1枚の絶縁紙131を用いてコイルエンド129bの全体を覆う構成としたものであり、この点を除いた固定子115の構成については、前述した第1の実施形態と同様である。本実施の形態における絶縁紙131は、図12に示すように、絶縁本体部131aと、当該絶縁本体部131aの長辺方向である縦幅方向の両端からそれぞれ当該縦幅方向(長辺方向)へと延長される延長部131bとを有し、前述した第2の実施形態における絶縁紙131を2枚横並びに連ねた構成とされる。絶縁本体部131aは、第2の実施形態における絶縁本体部131aと同形状の左右2枚の絶縁本体部131a1,131a2を横並びに連ねた構成、すなわち固定子巻線129の一方の長辺部129aに対応する絶縁本体部131a1と、他方の長辺部129aに対応する絶縁本体部131a2とを横並びに有する構成とされ、それら左右2つの絶縁本体部131a1,131a2の境界部には、縦方向の切り込み(スリット)131cが設けられている。
【0025】
絶縁紙131の延長部131bは、第2の実施形態における延長部131bの横幅の約2倍の横幅を有する横方向に長い長方形、すなわち、固定子巻線129におけるコイルエンド129bの横幅方向長さ(固定子鉄心123の周方向長さ)に対応する長さと高さ(固定子鉄心123の軸方向長さ)を有する構成とされる。そして上下の延長部131bと左右の絶縁本体部131a1,131a2との境界部における長さ方向中程には、横幅方向に延びる所定長さの切り込み(スリット)131dが設けられている。
【0026】
上記のように構成された絶縁紙131は、図10および図11に示すように、上下の延長部131bが固定子巻線131の外径側の外表面に被さるように配置した状態で、左右の絶縁本体部131a1,131a2をそれぞれ固定子巻線129の左右2つの長辺部129aに巻き付けることによって固定子巻線129に取り付けることができる。この絶縁紙131aの取り付け作業によって、延長部131bは、固定子巻線129の上下のコイルエンド129bにおける外径側の外表面全体を覆うことができる。本実施の形態によれば、コイルエンド129bの外径側の外表面全体を延長部131bによって覆う構成のため、モータハウジング105内に侵入する粉塵等の干渉防止をコイルエンド129bの広い範囲にわたって行うことができる。
【0027】
ところで、グラインダー101に限らず、電動工具の場合、前述したように、駆動モータ111を冷却するために、モータハウジング105内に冷却用の外気(空気)を強制的に流通させる構成を採用している。このような構成においては、冷却空気が駆動モータ111の軸方向へと流通される。したがって、固定子巻線129の2つのコイルエンド129bのうち、冷却空気の上流側に位置するコイルエンド129bの方が、冷却空気の下流側に位置するコイルエンド129bよりも粉塵の干渉を受け易い。
【0028】
このようなことから、粉塵の影響を受け易い片側のコイルエンド129bについてのみ、粉塵や加工屑から保護する構成に変更することが可能である。すなわち、絶縁本体部131aの長辺方向である縦幅方向の片側にのみ延長部131bを有する構成に変更してもよい。片側のコイルエンド129bに対応する変更例が図13〜図15に示される。
図13に示す変更例1は、2枚の絶縁紙131を用いて片側のコイルエンド129bの隅部129cを保護する例であり、第1の実施形態を変更したものである。この変更例1は、絶縁紙131の絶縁本体部131aの縦幅方向の一端にのみ、隅部129cの外径側外表面を覆うことが可能な大きさの延長部131bが形成されている。したがって、変更例1によれば、片側のコイルエンド129bの隅部129cの外表面を延長部131bで覆うことにより、当該隅部129cの外表面を粉塵や加工屑から保護することができる。
【0029】
図14に示す変更例2は、2枚の絶縁紙131を用いて片側のコイルエンド129bの外径側および内径側の外表面を保護する例であり、第2の実施形態を変更したものである。この変更例2は、絶縁紙131の絶縁本体部131aの縦幅方向の一端にのみ、片側のコイルエンド129bの外径側および内径側の外表面を覆うことが可能な大きさの延長部131bが形成されている。したがって、変更例2によれば、片側のコイルエンド129bの隅部129cの外径側および内径側の外表面を延長部131bで覆うことにより、当該隅部129cの外径側および内径側の外表面を粉塵や加工屑から保護することができる。
【0030】
図15に示す変更例3は、1枚の絶縁紙131を用いて片側のコイルエンド129bの外径側の外表面全体を保護する例であり、第3の実施形態を変更したものである。この変更例3は、絶縁紙131が固定子巻線129の左右2つの長辺部129aに対応する左右の絶縁本体部131aを有し、それら左右の絶縁本体部131aの縦幅方向の一端にのみ、片側のコイルエンド129bの外径側の外表面を覆うことが可能な大きさの延長部131bが形成されている。したがって、変更例2によれば、片側のコイルエンド129bの外径側の外表面全体を延長部131bで覆うことにより、当該コイルエンド129bの外径側の外表面全体を粉塵や加工屑から保護することができる。
【0031】
なお上述した各実施の形態および各変更例では、本発明の固定子の粉塵対策に関し、交流整流子モータの固定子巻線のコイルエンドを粉塵から保護する場合につき説明したが、本発明は、固定巻線のコイルエンドが固定子鉄心から露出する構成のモータであれば好適に採用することが可能である。また絶縁紙131に設けられる延長部131bの形状については、上述した実施の形態で説明した形状に限定されるものではなく、更なる変更が可能である。例えば外径側と内径側の両外表面の全体を覆うような形状、あるいは外径側と内径側に加え、軸方向端面の外表面全体を覆うような形状に変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態に係る電動工具の一例としてのディスクグラインダーの全体構成を示す一部破断側面図である。
【図2】固定子を示す正面図である。
【図3】固定子を示す平断面図である。
【図4】固定子巻線に絶縁紙を巻き付ける態様を説明する図である。
【図5】絶縁紙が取り付けられた固定子巻線を示す正面図である。
【図6】絶縁紙の延長部によるコイルエンドの保護形態を示す平面図である。
【図7】第1の実施形態に係る絶縁紙の構成を示す正面図である。
【図8】第2の実施形態に係る絶縁紙の延長部によるコイルエンドの保護形態を示す平面図である。
【図9】第2の実施形態に係る絶縁紙の構成を示す正面図である。
【図10】第3の実施形態に係る絶縁紙が取り付けられた固定子巻線を示す正面図である。
【図11】第3の実施形態に係る絶縁紙の延長部によるコイルエンドの保護形態を示す平面図である。
【図12】第3の実施形態に係る絶縁紙の構成を示す正面図である。
【図13】片側コイルエンドに対応する変更例1の絶縁紙を示す図である。
【図14】片側コイルエンドに対応する変更例2の絶縁紙を示す図である。
【図15】片側コイルエンドに対応する変更例3の絶縁紙を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
101 ディスクグラインダー(電動工具)
103 本体部
105 モータハウジング
107 ギアハウジング
109 メインハンドル
111 駆動モータ(モータ)
113 回転子
115 固定子
117 砥石(先端工具)
123 固定子鉄心
125 スロット
127 磁極片
128 結束用テープ
129 固定子巻線
129a 長辺部(巻線軸方向領域)
129b 短辺部(巻線周方向領域、コイルエンド)
129c 隅部(交差部)
131 絶縁紙
131a 絶縁本体部(絶縁部)
131b 延長部(覆い部)
131c,131d スリット
133 粘着テープ
【出願人】 【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸

【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行


【公開番号】 特開2008−6562(P2008−6562A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182093(P2006−182093)