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【発明の名称】 電動打撃工具
【発明者】 【氏名】生田 洋規

【氏名】渡邊 将裕

【要約】 【課題】打撃開始時に打撃用のビットが打撃対象物の加工目的位置から位置ズレし難いようにすることを目的とする。

【解決手段】本発明に係る電動打撃工具は、打撃用のビットの先端部が打撃対象物に押し付けられる反力で、そのビットが軸方向に変位したときに、モータの回転力を受けて動作するピストンがシリンダ内の空気を圧縮できるようにして、前記ビットに対し空気圧に起因する打撃力が付与される電動打撃工具であって、打撃開始を検知する打撃開始検知手段と、モータの回転速度を低速回転NLから高速回転NHまで制御可能なモータ回転速度制御手段とを有し、モータ回転速度制御手段は、打撃開始が検知されたときのモータの回転速度を低速回転NLとし、打撃開始から設定時間(Δt1+Δt2)が経過した後にモータの回転速度を高速回転NHにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
打撃用のビットの先端部が打撃対象物に押し付けられる反力で、そのビットが軸方向に変位したときに、モータの回転力を受けて動作するピストンがシリンダ内の空気を圧縮できるようにして、前記ビットに対し空気圧に起因する打撃力が付与されるように構成されている電動打撃工具であって、
前記ビットが前記打撃対象物に押し付けられる反力で軸方向に変位し、打撃が開始されたことを検知する打撃開始検知手段と、
前記モータの回転速度を、低速回転から高速回転まで制御可能なモータ回転速度制御手段とを有し、
前記モータ回転速度制御手段は、前記打撃開始検知手段により打撃開始が検知されたときの前記モータの回転速度を前記低速回転とし、前記打撃開始から設定時間が経過した後に前記モータの回転速度を前記高速回転にすることを特徴とする電動打撃工具。
【請求項2】
請求項1に記載された電動打撃工具であって、
モータ回転速度制御手段は、打撃開始検知手段により打撃開始が検知されたときから一定時間だけモータの回転速度を低速回転に制御し、その後、前記モータの回転速度を高速回転まで増加させることを特徴とする電動打撃工具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された電動打撃工具であって、
モータ回転速度制御手段は、前記モータの回転速度を低速回転から高速回転まで連続的に増加させることを特徴とする電動打撃工具。
【請求項4】
請求項1に記載された電動打撃工具であって、
モータ回転速度制御手段は、前記モータの回転速度を低速回転から高速回転まで段階的に増加させることを特徴とする電動打撃工具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された電動打撃工具であって、
モータ回転速度制御手段は、低速回転と高速回転との間の回転速度差と前記設定時間とを調整可能に構成されていることを特徴とする電動打撃工具。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された電動打撃工具であって、
打撃開始検知手段は、モータの負荷電流が所定値を超えた時に、打撃開始と判定することを特徴とする電動打撃工具。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃用のビットの先端部が打撃対象物に押し付けられる反力で、そのビットが軸方向に変位したときに、モータの回転力を受けて動作するピストンがシリンダ内の空気を圧縮できるようにして、前記ビットに対し空気圧に起因する打撃力が付与されるように構成されている電動打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した電動打撃工具ではモータの回転速度を制御する装置が設けられており、その回転速度制御装置の一例が特許文献1に記載されている。
特許文献1に記載の回転速度制御装置は、図4(A)に示すように、無負荷時にはモータを低速で回転させ、負荷駆動時にはモータを高速で回転させる構成である。さらに、無負荷時から負荷駆動時に移り変わるときには、モータの負荷電流にほぼ比例するように前記モータの回転速度を上昇させる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−194422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電動打撃工具の場合、打撃用のビットが打撃対象物から離れている状態、即ち、打撃が開始されない状態では、モータの回転力でピストンを往復移動させてもシリンダ内の空気がほとんど圧縮されないため、モータに加わる負荷が小さく、負荷電流も小さい。これに対し、前記ビットが打撃対象物に押し付けられる反力で軸方向に変位すると、前記ピストンがシリンダ内の空気を圧縮して打撃が開始されるため、モータに加わる負荷が大きくなり、負荷電流も大きくなる。
特許文献1の回転速度制御装置は、上記したようにモータの負荷電流にほぼ比例するように前記モータの回転速度を上昇させる。このため、ビットが打撃対象物から離れている状態では負荷電流が小さいためにモータの回転速度は低速である。しかし、ビットが打撃対象物に押し付けられて打撃が開始されると、モータの負荷電流が増加し、これに比例して前記モータの回転速度が上昇する。即ち、打撃開始時にモータの回転速度が高速に設定されるため、電動打撃工具の打撃力が大きくなり、これに比例して振動も大きくなる。ここで、打撃開始時には、ビットが打撃対象物に当接しているだけで(図4(B)参照)、図4(C)に示すように、ビット101の先端が加工により形成された凹部Whに入り込んでいない。このため、電動打撃工具の振動が大きいと、ビット101が打撃対象物Wの加工目的位置から位置ズレを起こし易くなる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、打撃開始時に打撃用のビットが打撃対象物の加工目的位置から位置ズレし難いようにすること、さらに位置ズレし難いようにすることで打撃対象物の加工効率が低下しないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、打撃用のビットの先端部が打撃対象物に押し付けられる反力で、そのビットが軸方向に変位したときに、モータの回転力を受けて動作するピストンがシリンダ内の空気を圧縮できるようにして、前記ビットに対し空気圧に起因する打撃力が付与されるように構成されている電動打撃工具であって、前記ビットが前記打撃対象物に押し付けられる反力で軸方向に変位し、打撃が開始されたことを検知する打撃開始検知手段と、前記モータの回転速度を、低速回転から高速回転まで制御可能なモータ回転速度制御手段とを有し、前記モータ回転速度制御手段は、前記打撃開始検知手段により打撃開始が検知されたときの前記モータの回転速度を前記低速回転とし、前記打撃開始から設定時間が経過した後に前記モータの回転速度を前記高速回転にすることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、モータ回転速度制御手段は、打撃開始検出手段により打撃開始が検知されたときにモータの回転速度を低速回転とする。このため、打撃開始時には打撃用のビットが打撃対象物を弱い打撃力で緩やかに加工し、電動打撃工具の振動が小さくなって、前記ビットが打撃対象物の加工目的位置から位置ズレし難くなる。さらに、打撃開始時から設定時間が経過するまでは、前記モータの回転速度が高速回転にならないため、打撃力による電動打撃工具の振動がさほど大きくならない。このため、前記ビットによって打撃対象物の加工目的位置にそのビットの先端が入り込む凹部を良好に形成できる。
そして、打撃開始時から設定時間が経過すると、前記モータの回転速度が高速回転になり打撃対象物の加工が通常通り強い打撃力で速やかに行われる。このとき、電動打撃工具の振動は大きくなるが、前記ビットの先端が打撃対象物の加工目的位置に形成された凹部に入り込んでいるため、そのビットの先端が打撃対象物の加工目的位置から位置ズレすることがない。即ち、打撃開始から設定時間後は打撃対象物の加工を強い打撃力で速やかに、かつ効率的に行えるようになる。
【0008】
請求項2の発明によると、モータ回転速度制御手段は、打撃開始検知手段により打撃開始が検知されたときから一定時間だけモータの回転速度を低速回転に制御し、その後、前記モータの回転速度を高速回転まで増加させることを特徴とする。
このように、打撃開始から一定時間だけモータの回転速度を所定の低速回転に制御するため、前記ビットが打撃対象物の加工目的位置からさらに位置ズレし難くなる。
【0009】
請求項3の発明によると、モータ回転速度制御手段は、前記モータの回転速度を低速回転から高速回転まで連続的に増加させることを特徴とする。
請求項4の発明によると、モータ回転速度制御手段は、前記モータの回転速度を低速回転から高速回転まで段階的に増加させることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明によると、モータ回転速度制御手段は、低速回転と高速回転との間の回転速度差と前記設定時間とを調整可能に構成されていることを特徴とする。
このため、打撃対象物の材質等や作業姿勢、作業方向、ビットの種類、サイズ等に応じて、適正な打撃力を設定できるようになる。
請求項6の発明によると、打撃開始検知手段は、モータの負荷電流が所定値を超えた時に、打撃開始と判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、打撃開始時にビットが打撃対象物の加工目的位置から位置ズレし難くなるとともに、打撃対象物の加工効率も低下することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(実施形態1)
以下、図1から図3に基づいて、本発明の実施形態1に係る電動打撃工具の説明を行なう。本実施形態に係る電動打撃工具は、電動ハンマー等の打撃工具であり、図1に電動打撃工具におけるモータの回転速度制御装置の模式電気回路図等が示されている。図2は、モータの回転速度設定状態の一例を表す模式図であり、図3は電動打撃工具の構成を表す縦断面図である。
【0013】
<電動打撃工具10の構成について>
先ず、図3に基づいて電動打撃工具10の機械的な構成を簡単に説明する。
電動打撃工具10は、中央にシリンダ12と、そのシリンダ内を軸方向に摺動可能なピストン11とを備えている。シリンダ12の軸方向中央部には、そのシリンダ12の壁部を半径方向に貫通する複数の通気孔12bが形成されており、それらの通気孔12bがシリンダ12の外側に摺動可能な状態で装着された筒状のスリーブスライド17により開閉可能に構成されている。スリーブスライド17は圧縮バネ19の力でシリンダ12の複数の通気孔12bを開く方向(シリンダの先端方向(図中左方向))に付勢されている。前記シリンダの先端部には、打撃子13が軸方向に変位可能な状態で収納されており、その打撃子13がシリンダ12内の空気圧を受けて中間子24を打撃できるように構成されている。
中間子24は、打撃子13の打撃をビット25に伝える部材であり、その先端面がビット25の基端面(後面)に接触し、前記ビット25と共に軸方向に変位可能な状態でツールホルダ20内に同軸に収納されている。そして、ビット25及び中間子24がシリンダ12等と同軸になるように、前記ツールホルダ20の基端部が前記シリンダ12及びスリーブスライド17等を収納する筒状のバレル15の先端部に取付けられている。
前記ビット25の先端部分はバネ(図示省略)の力を受けてツールホルダ20の先端から突出している。そして、ビット25の先端部分が打撃対象物Wに押し付けられると、そのビット25は押し付け反力で前記バネ力に抗して一定寸法だけツールホルダ20内に押し込まれる。これによって、中間子24はビット25に押されてツールホルダ20内を後方(図中右方向)に変位する。
【0014】
中間子24の基端部には、その中間子24と共にツールホルダ20内を後方(図中右方向)に変位してスリーブスライド17を圧縮バネ19の力に抗してシリンダ12の通気孔12bを塞ぐ方向に押圧する押圧機構21が設けられている。このため、ビット25の先端が打撃対象物W(図4(B)等参照)に押し付けられる反力で、ビット25と共に中間子24がツールホルダ20の後方に変位すると、スリーブスライド17が圧縮バネ19の力に抗してシリンダ12の通気孔12bを塞ぐ(図3参照)。これにより、ピストン11がシリンダ12内を往復動すると、そのピストン11がシリンダ12内の空気を圧縮し、打撃子13、中間子24を介してビット25に対し空気圧に起因する打撃力が付与される。
【0015】
また、ビット25が打撃対象物Wから離れると、ビット25が前記バネの力でツールホルダ20から突出する方向(前方)に変位し、中間子24、押圧機構21及びスリーブスライド17が圧縮バネ19の力で前方に変位する。これによって、シリンダ12の通気孔12bが開放され、ピストン11がシリンダ12内を往復動しても、シリンダ12内の空気はほとんど加圧されない状態となる。
ピストン11は、図3に示すように、連結ピン9b、コネクティングロッド9、クランクピン9aを介して回転体8に連結されている。回転体8はモータ6によって駆動されるギヤ機構7の出力回転軸7pに連結されており、その出力回転軸7pと一体で回転する。回転体8に取付けられたクランクピン9aは、出力回転軸7pに対して偏心しているため、回転体8が回転すると前記クランクピン9aは出力回転軸7pと同心の一定円周上を移動する。これによって、クランクピン9aに連結されたコネクティングロッド9が進退動し、連結ピン9bを介してコネクティングロッド9に連結されたピストン11がシリンダ12内を往復動するようになる。
【0016】
<モータ6の回転速度制御装置50について>
次に、図1、図2に基づいて、モータ6の回転速度制御装置50について説明する。
回転速度制御装置50はモータ6の回転速度を制御する装置であり、図1(A)に示すように、電源スイッチ52と、モータ6を駆動させる交流電源51、ステータ6c、トライアック57tと、モータ6の速度制御に使用される電源部54、演算部55、回転検出部56、モータ駆動部57、負荷検出部58とを備えている。
電源部54は、交流電源51から供給された交流電力を直流電力に変換し、基準電圧で演算部55に電力を供給する。
回転検出部56は、モータ6の回転速度を検出する部分であり、モータ6の回転軸に接続されたマグネットを検出する励磁コイル6e等のパルス信号を回転速度に比例した電圧信号に変換して演算部55に入力する。
モータ駆動部57は、演算部55からの出力電圧信号に基づいてモータ6を駆動する部分であり、前記出力電圧信号に基づいてトライアック57tの位相制御を行う。
負荷検出部58は、モータ6の負荷電流を検出する部分であり、シャント抵抗58sにより得られた前記負荷電流に比例する電圧を所定レベルの電圧信号に変換して演算部55に入力する。
【0017】
演算部55は、モータ6の回転速度が後記する設定速度に近づくように、前記モータ6の回転速度制御を行う部分である。前記演算部55は、図1(B)に示すように、操作回路551と回転速度設定回路552と制御回路553とから構成されている。
回転速度設定回路552は、制御回路553に対してモータ6の設定速度に対応する電圧信号を出力する回路である。回転速度設定回路552は、図2(A)に示すように、打撃開始から時間Δt1の間はモータ6の設定速度を低速回転NLに保持する。打撃開始から時間Δt1経過後は、前記設定速度を低速回転NLから一定比率で増加させ、時間Δt2後に設定速度を高速回転NHまで上昇させる。また、打撃開始から時間(Δt1+Δt2)経過後は、モータ6の設定速度を高速回転NHに保持する。そして、打撃終了後はモータ6の設定速度を再び低速回転NLに戻す。
ここで、打撃開始とは、ビット25の先端が打撃対象物Wに押し付けられる反力で後方に変位し、シリンダ12の通気孔12bが閉じられて、前記ビット25に対して空気圧に起因する打撃力が加えられるタイミングをいう。このとき、モータ6の負荷電流は急上昇して所定値を超えるため、演算部55は前記負荷電流が所定値を超えたタイミングを打撃開始と判定する。即ち、回転速度設定回路552は、モータ6の負荷電流が所定値を超えたタイミングから時間Δt1、及び時間Δt2のカウントを開始する。
また、ビット25の先端が打撃対象物Wから離れ、モータ6の負荷電流が所定値よりも下降すると、打撃終了と判定される。
即ち、前記負荷検知部58、シャント抵抗58s及び演算部55等が本発明の打撃開始検知手段に相当する。また、打撃開始時からモータ6の設定速度が高速回転NHに上昇するまでの時間、即ち、時間(Δt1+Δt2)が本発明の設定時間に相当する。
【0018】
操作回路551は、回転速度設定回路552における時間Δt1と、時間Δt2、及び高速回転NHと低速回転NLとの速度差ΔHを設定するための回路であり、各々の値(Δt1、Δt2、ΔH)を設定するための操作ダイヤル(図示省略)を備えている。
本実施形態に係る電動打撃工具10では、図2(A)に示すように、時間Δt1=5秒、時間Δt2=5秒に設定されている。また、モータ6の低速回転NLは、ビット25が打撃対象物Wを弱い打撃力で緩やかに加工可能な回転速度に設定されており、高速回転速度NHは前記ビット25が打撃対象物Wを強い打撃力で速やかに加工可能な回転速度に設定されている。
ここで、前記高速回転NHと低速回転NLとの速度差ΔHは、打撃対象物Wの材質等に応じて操作回路551の前記操作ダイヤルにより自由に設定することが可能である。
図2(B)は、時間Δt1=0秒、時間Δt2=10秒に設定した例を表しており、図2(C)は、モータ6の回転速度を低速回転NLから高速回転NHまで段階的に変化させる例を表している。
制御回路553は、回転速度設定回路552から出力された設定速度に対応する電圧信号と、回転検出部56から出力されたモータ6の回転速度に対応する電圧信号とを比較し、その偏差が零に近づくように、モータ駆動部57に対して信号を出力する(モータ6を回転させる)部分である。
即ち、演算部55等が本発明のモータ回転速度制御手段に相当する。
【0019】
<電動打撃工具10の動作について>
次に、上記した電動打撃工具10の動作について説明する。
先ず、打撃対象物Wの材質や作業姿勢、作業方向、ビット25の種類、サイズ等に応じて操作回路551の操作ダイヤルを操作して、時間Δt1、時間Δt2、及び速度差ΔHを設定する(図2(A)参照)。
この状態で、打撃対象物Wの加工を開始する。即ち、トリガスイッチ(図示省略)を引き操作してモータ6を起動させ、打撃対象物Wの加工目的位置に電動打撃工具10のビット25の先端を押し付ける。これにより、ビット25に対して空気圧に起因する打撃力が加えられて、打撃対象物Wに対する打撃が開始される。このとき、モータ6の負荷電流値が上昇して設定値を超えるため、演算部55が打撃開始を検知する。
前記打撃開始が検知されると、図2(A)に示すように、回転速度設定回路552がモータ6の設定速度を低速回転NLにし、制御回路553に対して低速回転NLに対応する設定速度信号を出力する。制御回路553は、モータ6の回転速度が低速回転NLに近づくようにモータ駆動部57を制御する。
このように、モータ6の回転速度が低速回転NLに制御されるため、ビット25は弱い打撃力で打撃対象物Wを緩やかに加工できるようになる。このため、電動打撃工具10の振動が小さくなって、ビット25が打撃対象物Wの加工目的位置から位置ズレし難くなる。これにより、打撃対象物Wの加工目的位置にビット25の先端が入り込む凹部Wh(図4(C)参照)を良好に形成できる。
【0020】
そして、打撃開始から時間Δt1(例えば、5秒)が経過すると、回転速度設定回路552がモータ6の設定速度を低速回転NLから予め設定された一定比率で増加させ、その設定速度信号を制御回路553に対して出力する。制御回路553は、一定比率で増加する設定速度信号に追従するようにモータ6の回転速度を制御する。これにより、モータ6の回転速度が徐々に増加し、ビット25が打撃対象物Wを打撃する際の打撃力が徐々に強くなる。
そして、打撃開始から時間Δt1+Δt2(例えば、10秒)が経過してモータ6の設定速度が高速回転NHになると、回転速度設定回路552がモータ6の設定速度を高速回転NLに保持し、それに対応する設定速度信号を制御回路553に対して出力する。制御回路553は、モータ6の回転速度を高速回転NHに制御する。このため、ビット25は強い打撃力で打撃対象物Wを速やかに加工できるようになる。このとき、ビット25の先端は、図4(C)に示すように、打撃対象物Wの加工目的位置の凹部Whに入り込んでいるため、電動打撃工具10の振動が大きくなっても、ビット25が加工目的位置から位置ズレすることはない。
打撃対象物Wの加工が完了して、ビット25が打撃対象物Wから離れると、モータ6の負荷電流値が所定値よりも低下し、演算部55が打撃終了を検知する。そして、打撃終了が検知されることで、回転速度設定回路552がモータ6の設定速度を低速回転NLし、これを受けて制御回路553はモータ6の回転速度を低速回転NLに制御する。
なお、モータ6の設定速度を、図2(A)に示すように変化させる例を示したが、図2(B)に示すように変化させても良いし、図2(C)に示すように変化させても良い。
【0021】
<本実施形態に係る電動打撃工具10の長所について>
本実施形態に係る電動打撃工具10によると、回転速度制御装置50の演算部55における回転速度設定回路552は、打撃開始が検知されたときにモータ6の回転速度を継続して低速回転NLとする。このため、打撃開始時にはビット25が打撃対象物Wを弱い打撃力で緩やかに加工するようになり、電動打撃工具10の振動が小さくなって、前記ビット25が打撃対象物Wの加工目的位置から位置ズレし難くなる。さらに、打撃開始時から設定時間(Δt1+Δt2)が経過するまでは、モータ6の回転速度が高速回転NHまで上昇しないため、加工による電動打撃工具10の振動がさほど大きくならない。このため、ビット25によって打撃対象物Wの加工目的位置にそのビット25の先端が入り込む凹部Wh(図4(C)参照)を良好に形成できる。
そして、打撃開始時から設定時間(Δt1+Δt2)が経過すると、モータ6の回転速度が所定の高速回転になり打撃対象物Wの加工が通常通り速やかに行われる。このとき、電動打撃工具10の振動は大きくなるが、ビット25の先端が打撃対象物Wの加工目的位置に形成された凹部Whに入り込んでいるため、そのビット25の先端が打撃対象物Wの加工目的位置から位置ズレし難くなる。即ち、打撃開始から設定時間(Δt1+Δt2)後は打撃対象物Wの加工を速やかに、かつ効率的に行えるようになる。
また、操作回路551の操作ダイヤルにより回転速度設定回路552の低速回転NLと高速回転NHとの間の速度差ΔHと設定時間(Δt1+Δt2)とを調整可能に構成されているため、打撃対象物Wの材質等や作業姿勢、作業方向、ビット25の種類、サイズ等に応じて、適正な打撃力を設定できるようになる。
【0022】
<変更例>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、モータ6の負荷電流値が所定値を超えたときを打撃開始と判定したが、ビット25が押し付け反力で後方に一定距離だけ変位したときに打撃開始と判定することも可能である。また、打撃音が所定値を超えたとき、あるいは振動が所定レベルを超えたときに打撃開始と判定することも可能である。
また、設定時間(Δt1+Δt2)を10秒に設定する例を示したが、前記設定時間は適宜変更可能である。
また、本実施形態では、図2(A)(C)に示すように、モータ6の設定回転速度を低速回転NLから高速回転NHまで一定比率で連続的、あるいは段階的に増加させる例を示したが、時間が経過するにつれて増加比率を大きくすることも可能である。ここで、前記設定回転速度の増加パターンの切替えは、操作回路551の操作ダイヤルで行うようにするのが好ましい。
また、本実施形態では、電動打撃工具10として電動ハンマーを例示したが、電動ハンマードリルに本発明を適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態1に係る電動打撃工具におけるモータの回転速度制御装置の模式電気回路図(A図)、及び演算部のブロック図(B図)である。
【図2】モータの回転速度設定状態の例を表す模式図(A図、B図、C図)である。
【図3】電動打撃工具の構成を表す縦断面図である。
【図4】従来のモータの回転速度制御装置の制御を表すグラフ(A図)、電動打撃工具で打撃対象物を加工している状態を表す模式図(B図、C図)である。
【符号の説明】
【0024】
W 打撃対象物
NL 低速回転
NH 高速回転
Δt1+Δt2 設定時間
6 モータ
11 ピストン
12 シリンダ
25 ビット
55 演算部(打撃開始検知手段、モータ回転速度制御手段)
56 回転検出部
57 モータ駆動部
58 負荷検出部(打撃開始検知手段)
551 操作回路
552 回転速度設定回路
553 制御回路

【出願人】 【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
【出願日】 平成19年1月24日(2007.1.24)
【代理人】 【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所


【公開番号】 特開2008−178935(P2008−178935A)
【公開日】 平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願番号】 特願2007−13812(P2007−13812)