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【発明の名称】 打撃工具
【発明者】 【氏名】平山 俊郎

【要約】 【課題】工具ビットを保持するツールホルダの耐久性および加工性の向上に資する技術を提供する。

【解決手段】ビット保持孔137aを有するツールホルダ137と、ビット保持孔137aに挿入されて長軸方向に移動可能に保持される工具ビット119と、を有する打撃工具101において、ツールホルダ137は、ビット保持孔137aに挿入された工具ビット119の外面と接触して当該工具ビット119を長軸方向に移動可能に保持するビット保持領域137Aを有する。ビット保持領域137Aは、ビット保持孔137aのビット挿入口側から奥側に向って第1の保持領域165aと、第2の保持領域166aと、第3の保持領域167aを順に有する。そして第1の保持領域165aの硬度が、第2および第3の保持領域166a,167aの硬度よりも高く設定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビット保持孔を有するツールホルダと、
前記ビット保持孔に挿入されて長軸方向に移動可能に保持される工具ビットと、を有し、
前記工具ビットを、少なくとも長軸方向に打撃動作させて被加工材に所定の加工作業を行わせる打撃工具であって、
前記ツールホルダは、前記ビット保持孔に挿入された工具ビットの外面と接触して当該工具ビットを長軸方向に移動可能に保持するビット保持領域を有し、
前記ビット保持領域は、前記ビット保持孔のビット挿入口側から奥側に向って第1の保持領域と、第2の保持領域と、第3の保持領域を順に有し、
前記第1の保持領域は、前記ビット保持孔に挿入された前記工具ビットを長軸方向の相対移動を許容しつつ保持する領域として備えられ、前記第2の保持領域は、前記工具ビットと係合することによって当該工具ビットが前記ビット保持孔から抜け出ることを制止する抜け止め部材の配置領域として備えられ、前記第3の保持領域は、前記ビット保持孔に挿入された前記工具ビットの挿入方向端部を長軸方向の相対移動を許容しつつ保持する領域として備えられ、
前記第1の保持領域の硬度が、前記第2および第3の保持領域の硬度よりも高く設定されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項2】
請求項1に記載の打撃工具であって、
前記第3の保持領域の硬度が、前記第2の保持領域の硬度よりも高く設定されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の打撃工具であって、
前記第1および第3の保持領域のうちの、少なくとも第1の保持領域が、前記第2の保持領域の硬度よりも高い硬度の別部材により形成されていることを特徴とする打撃工具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の打撃工具であって、
前記第2の保持領域に配置された抜け止め部材は、前記ビット保持孔の内径方向に移動して前記工具ビットに係合することで当該工具ビットを抜け止めし、前記ビット保持孔の外径方向に移動して前記工具ビットの抜け止めを解除する構成とされ、前記第2の保持領域には、前記抜け止め部材を径方向に移動可能に配置する開口部が形成されていることを特徴とする打撃工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、工具ビットを長軸方向に打撃動作することにより被加工材に所定の加工作業を行う打撃工具に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンマ、あるいはハンマドリルのような打撃工具では、ハンマビットは、その軸部がツールホルダによって長軸方向に移動可能に保持される。したがって、ツールホルダのビット保持孔内壁面と、ビット保持孔に挿入されるハンマビットの軸部の外面との間には、軸部の挿入を許容する程度の微少な隙間が形成されている。このため、コンクリートのような被加工材に対するハンマ作業あるいはハンマドリル作業時において、当該作業によって発生したコンクリート粉塵がハンマビットの軸部外面に付着して上記の隙間に侵入する。そして当該侵入した粉塵が介在した状態でハンマビットがツールホルダに対して相対移動することでツールホルダのビット保持孔内壁面が摩耗し、ハンマビットが振れて作業が困難化する。そこでツールホルダに摩耗対策を施した打撃工具がWO国際公開02/20224号公報(特許文献1)に開示されている。上記公報に記載された打撃工具では、ツールホルダの本体に、当該本体よりも硬い材料で形成された別部材のスリーブを圧入することでビット保持孔内壁面の摩耗の低減を図っている。
【0003】
ところで、打撃工具では、ツールホルダのビット保持孔に挿入されたハンマビットは、ツールホルダに配置された鋼球により抜け止めされるように構成されている。したがって、ツールホルダには、ハンマビットが打撃動作する際、当該ハンマビットから鋼球を介して軸方向の衝撃力が作用する。このようなことから、上記の公報に記載された、ハンマビットの軸部が挿入されるビット保持孔の全長について硬質のスリーブで形成する技術では、当該スリーブに衝撃力が作用することになる。しかしながら、硬質材料からなるスリーブは、硬質であるが故に衝撃的な力でひび割れを主ずる可能性がある。またスリーブには、鋼球を配置するための径方向に貫通する長孔を形成するが、スリーブが硬質であるが故に機械加工による孔加工が困難であるといった問題がある。すなわち、公報に記載された従来の打撃工具は、耐久性あるいは加工性の面で、なお改良すべき余地がある。
【特許文献1】WO国際公開02/20224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる点に鑑み、打撃工具において、工具ビットを保持するツールホルダの耐久性および加工性の向上に資する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
請求項1に記載の発明によれば、ビット保持孔を有するツールホルダと、ビット保持孔に挿入されて長軸方向に移動可能に保持される工具ビットと、を有し、工具ビットを、少なくとも長軸方向に打撃動作させて被加工材に所定の加工作業を行わせる打撃工具が構成される。なお本発明における「少なくとも長軸方向に打撃動作させる」とは、工具ビットを打撃動作のみで駆動する態様、および工具ビットを打撃動作と回転動作を複合した動作で駆動する態様がこれに該当する。
本発明は、特徴的構成として、ツールホルダは、ビット保持孔に挿入された工具ビットの外面と接触して当該工具ビットを長軸方向に移動可能に保持するビット保持領域を有する。ビット保持領域は、ビット保持孔のビット挿入口側から奥側に向って第1の保持領域と、第2の保持領域と、第3の保持領域を順に有する。第1の保持領域は、ビット保持孔に挿入された工具ビットを長軸方向の相対移動を許容しつつ保持する領域として備えられる。また第2の保持領域は、工具ビットと係合することによって当該工具ビットがビット保持孔から抜け出ることを制止する抜け止め部材の配置領域として備えられる。更に第3の保持領域は、ビット保持孔に挿入された工具ビットの挿入方向端部を長軸方向の相対移動を許容しつつ保持する領域として備えられる。そして第1の保持領域の硬度が、第2および第3の保持領域の硬度よりも高く設定された構成とされる。なお本発明における「第1の保持領域の硬度」は、好ましくはロックウェルCスケール硬さ(HRC)60以上に設定され、第1の保持領域の材料としては、合金工具鋼鋼材(SKD)、高速度工具鋼(SKH)、高炭素クロム軸受鋼(SUJ)等が好適に用いられる。
【0006】
工具ビットを保持するビット保持領域の摩耗を考慮した場合、加工作業によって生じた粉塵が侵入し易い箇所、つまりビット挿入口側が最も摩耗を生じ易い環境下にある。本発明によれば、ビット保持領域のうち、最も摩耗が生じ易い挿入口側である第1の保持領域の硬度につき、これを第2および第3の保持領域の硬度よりも高く設定することにより、第1の保持領域の耐摩耗性を高めることができる。これにより、第1の保持領域の摩耗を低減して耐久性を向上できる。ビット保持領域の摩耗は、工具ビットに振れを生じさせることになり、それに伴い、例えばハンマドリルの場合には、ツールホルダの回転動作を工具ビットに伝達するために当該ツールホルダに形成されたトルク伝達用突起の摩耗を引き起こし、工具ビットの振れによる加工作業の困難化を来たすことになる。本発明によれば、第1の保持領域の摩耗が低減されることによって工具ビットの振れが抑えられ、結果としてトルク伝達用突起の摩耗も低減される。
一方、ツールホルダの第2の保持領域には、ビット保持孔に挿入された工具ビットがビット保持孔から抜け出ないように制止する抜け止め部材(例えば鋼球)が配置される。このため、工具ビットの打撃動作時には、この抜け止め部材を介してツールホルダに軸方向の衝撃力が作用する。本発明によれば、ビット保持領域のうち、第1の保持領域以外の領域については、好ましくは、従前通りの硬度に設定される。つまり抜け止め部材を配置する第2の保持領域の硬度については、好ましくは、従前通りの硬度に設定することが可能なため、工具ビットの打撃動作時に受ける衝撃力によって、硬度が高すぎるが故に生ずるひび割れを防止できる。また抜け止め部材を配置するべく、第2の保持領域に径方向の貫通孔を、例えば機械加工によって形成する場合、当該第2の保持領域の硬度については、好ましくは、従前通りの硬度に設定することが可能なため、機械加工性が損なわれることもない。
【0007】
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の打撃工具において、第3の保持領域の硬度が、第2の保持領域の硬度よりも高く設定された構成とされる。すなわち、「第3の保持領域の硬度」は、第1の保持領域の硬度と同等に設定される。工具ビットが打撃動作して加工作業する場合、当該工具ビットには、被加工材からの反力として長軸方向の力のみならず、長軸方向と交差する方向の外力も作用する。ビット保持領域は、工具ビットに作用する当該交差方向の力を特に第1の保持領域と第3の保持領域で支えることになる。本発明によれば、上記の交差方向の力を受ける部位、すなわち、第1の保持領域と第3の保持領域の硬度を、第2の保持領域の硬度よりも高く設定することで、当該第1の保持領域と第3の保持領域に関する摩耗を低減して耐久性を向上できる。また第1の保持領域と第3の保持領域の摩耗が低減されることに伴い工具ビットの振れ防止効果がより向上され、ひいては打撃工具がハンマドリルとして構成されている場合であれば、トルク伝達用突起の摩耗を効果的に低減できる。
【0008】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の打撃工具において、第1の保持領域と第3の保持領域のうちの、少なくとも第1の保持領域が、第2の保持領域の硬度よりも高い硬度の別部材により形成されている。なお本発明における「別部材」は、典型的には、リング状の部材がこれに該当する。また本発明における「形成される」とは、典型的には、リング状の部材をツールホルダの筒孔に圧入する態様がこれに該当するが、圧入以外の手段、例えばネジにより固定する態様、あるいは溶接により固定する態様等を好適に包含する。本発明によれば、第1の保持領域を別部材によって形成する構成としたことにより、軸方向に関し硬度の異なる保持領域を有するビット保持孔を簡単に製作することが可能となり、製作性を向上できる。
【0009】
(請求項4に記載の発明)
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3のいずれかに記載の打撃工具における第2の保持領域に配置された抜け止め部材は、ビット保持孔の内径方向に移動して工具ビットに係合することで当該工具ビットを抜け止めし、ビット保持孔の外径方向に移動して工具ビットの抜け止めを解除する構成とされる。そして第2の保持領域には、抜け止め部材を径方向に移動可能に配置する開口部が形成されている。本発明によれば、抜け止め部材が配置される開口部を、第1および第2の保持領域の硬度よりも低い硬度の第2の保持領域に設ける構成としている。このため、当該開口部を、たとえば機械加工によって形成する場合に、その加工を楽に行うことが可能となり、加工性を向上できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、打撃工具において、工具ビットを保持するツールホルダの耐久性および加工性の向上に資する技術が提供されることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態につき、図1〜図3を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、打撃工具の一例として電動式ハンマドリルを用いて説明する。図1は本実施の形態に係る電動式ハンマドリルの全体構成を示す断面図である。図1に示すように、本実施の形態に係るハンマドリル101は、概括的に見て、ハンマドリル101の外郭を形成する本体部103と、当該本体部103の先端領域(図示左側)にツールホルダ137を介して着脱自在に取り付けられたハンマビット119と、本体部103のハンマビット119の反対側に連接された作業者が握るグリップ109とを主体として構成されている。ハンマビット119は、ツールホルダ137に対し長軸方向には相対移動可能とされ、周方向にはツールホルダ137とともに回転するように装着される。このハンマビット119は、本発明における「工具ビット」に対応する。なお説明の便宜上、ハンマビット119側を前、グリップ109側を後という。
【0012】
本体部103は、駆動モータ111を収容したモータハウジング105と、運動変換機構113、動力伝達機構114および打撃要素115を収容したギアハウジング107とによって構成されており、モータハウジング105とギアハウジング107とは、図示省略のネジ等によって互いに接合される。
【0013】
駆動モータ111の回転出力は、運動変換機構113によって直線運動に適宜変換された上で打撃要素115に伝達され、当該打撃要素115を介してハンマビット119の長軸方向(図1における左右方向)への衝撃力を発生する。また駆動モータ111の回転出力は、動力伝達機構114によって適宜減速された上でハンマビット119に回転力として伝達され、当該ハンマビット119が周方向に回転動作される。なお駆動モータ111は、グリップ109に配置されたトリガ117の引き操作によって通電駆動される。
【0014】
運動変換機構113は、駆動モータ111のアーマチュアシャフト112の先端(前端)に設けられて鉛直面内にて回転駆動される駆動ギア121、当該駆動ギア121に噛み合い係合する被動ギア123、当該被動ギア123と中間軸125を介して一体回転する回転体127、回転体127の回転によってハンマビット119の軸方向に揺動されるスワッシュプレート129、スワッシュプレート129の揺動によって直線状に往復移動する筒状ピストン141を主体として構成される。中間軸125はハンマビット119の長軸方向に平行(水平)に配置され、当該中間軸125に取り付けられた回転体127の外周面が中間軸125の軸線に対し所定の傾斜角度で傾斜状に形成されている。スワッシュプレート129は、回転体127の傾斜外周面にボールベアリング126を介して相対回転可能に取り付けられ、当該回転体127の回転動作に伴ってハンマビット119の軸方向に揺動される。またスワッシュプレート129は、上方(放射方向)に一体に突設された揺動ロッド128を有し、当該揺動ロッド128が筒状ピストン141の後端部と連結軸124を介して相対回動可能に連結されている。なお筒状ピストン141は、ギアハウジング107内に配置されたスリーブ135内に摺動動作可能に配置されるとともに、筒孔の後端部が塞がれている。
【0015】
動力伝達機構114は、駆動モータ111から駆動ギア121および中間軸125を介して鉛直面内にて回転駆動される第1伝達ギア131、当該第1伝達ギア131に噛み合い係合する第2伝達ギア133、当該第2伝達ギア133とともに回転されるスリーブ135、当該スリーブ135とともに鉛直面内にて回転されるツールホルダ137を主体として構成されている。
【0016】
打撃要素115は、図1に示すように、筒状ピストン141と、当該筒状ピストン141の筒孔内壁に摺動動作可能に配置されたストライカ143と、ツールホルダ137に摺動動作可能に配置されるとともに、ストライカ143の運動エネルギをハンマビット119に伝達するインパクトボルト145とを主体として構成されている。
【0017】
上記のように構成されるハンマドリル101は、使用者によるトリガ117の引き操作によって駆動モータ111が通電駆動されると、その回転出力により、駆動ギア121が鉛直面内にて回動動作する。すると、駆動ギア121に噛み合い係合される被動ギア123、中間軸125を介して回転体127が鉛直面内にて回転動作され、これによってスワッシュプレート129および揺動ロッド128がハンマビット119の軸方向に揺動する。揺動ロッド128の揺動によって筒状ピストン141が直線状に摺動動作され、それに伴う筒状ピストン141の空気室141a内の空気の圧力変化、すなわち空気バネの作用により、ストライカ143は筒状ピストン141内を直線運動する。ストライカ143は、インパクトボルト145に衝突することで、その運動エネルギをハンマビット119に伝達する。
【0018】
一方、中間軸125とともに第1伝達ギア131が回転されると、第1伝達ギア131に噛み合い係合される第2伝達ギア133を介してスリーブ135が鉛直面内にて回転され、更にスリーブ135とともにツールホルダ137およびこのツールホルダ137にて保持されるハンマビット119が一体状に回転される。かくして、ハンマビット119が軸方向のハンマ動作と周方向のドリル動作を行い、被加工材(コンクリート)にドリル作業(主として穴開け作業)を遂行する。
【0019】
なお本実施の形態に係るハンマドリル101は、上述したハンマビット119にハンマ動作と周方向のドリル動作とを行わせる、ハンマドリルモードでの作業態様のほか、ハンマビット119にドリル動作のみを行わせる、ドリルモードでの作業態様に切り換えることが可能とされているが、このモードの切換機構については、本発明に直接関係しないため、その説明については省略する。
【0020】
次にツールホルダ137に挿入されたハンマビット119を保持するためのビット保持機構151につき、図2および図3を参照して説明する。ビット保持機構151は、ハンマビット119の軸部119aが抜き取り可能に挿入される円形断面のビット保持孔137aを有するツールホルダ137と、ビット保持孔137aに挿入されたハンマビット119の抜き取りを規制し、あるいは抜き取りを許容する係止部材としての複数の鋼球(スチールボール)153と、当該鋼球153をビット抜き取り規制位置とビット抜き取り許容位置とに切り替えるツールスリーブ155とを主体として構成される。なおツールホルダ137は、ビット保持孔137aが長軸方向に貫通状に形成されたビット保持部137Aと、インパクトボルト145を収容する空間が形成されたインパクトボルト収容部137Bとを有し、ビット保持部137Aの長軸方向後側にインパクトボルト収容部137Bが一体に設けられる。そしてインパクトボルト収容部137Bが前述したスリーブ135と連結され、これによりツールホルダ137がスリーブ135とともに回転する構成とされる。なおツールホルダ137とスリーブ135は、一体に形成する構成であっても構わない。ツールホルダ137のビット保持部137Aは、本発明における「ビット保持領域」に対応する。
【0021】
ビット保持孔137aは、先端がビット挿入口として開口され、後端がインパクトボルト収容部137Bの空間に開口される。ツールホルダ137のビット保持部137Aには、径方向に貫通する複数の長孔137bが形成されている。複数の長孔137bは、当該ビット保持部137Aの長軸方向に所定長さで延びるとともに、ビット保持部137Aの周方向に所定間隔で形成されており、それら長孔137bには、それぞれ鋼球153が配置されている。鋼球153は、長孔137b内において長軸方向に移動可能とされ、かつビット保持部137Aの径方向に移動(変位)可能とされる。長孔137bは、本発明における「開口部」に対応する。
【0022】
ツールスリーブ155は、ビット保持部137Aの外側にビット長軸方向に移動可能に配置され、その内側には鋼球153の外径方向への変位を規制する規制リング157が配置され、更に規制リング157の後側には規制プレート159が配置されている。規制プレート159は、ツールスリーブ155に対して当該ツールスリーブ155の長軸方向への移動が可能とされ、ビット保持部137Aとの間に配置された付勢バネ161によって規制リング157の後面に押し付けられている。付勢バネ161の付勢力は、ツールスリーブ155を前方へ押す力として作用している。このため、ツールスリーブ155は、常時にはその前端部がビット保持部137Aの前端部に装着されたキャップ163に当接する位置、すなわちビット抜き取り規制位置に保持されている。
【0023】
この状態において、ハンマビット119の軸部119aがビット保持部137Aのビット保持孔137aに挿入されると、鋼球153は、ハンマビット119の軸部119a後端で押されて後方へ移動する。後方へ移動した鋼球153は、付勢バネ161に抗して規制プレート159を後方へ押しつつ外径方向へと移動し、ハンマビット119の更なる挿入を許容する。そしてハンマビット119の軸部119a後端が鋼球153を通過すると、当該鋼球153は、付勢バネ161の付勢力で規制プレート159を介して内径方向へと移動され、ハンマビット119の軸部外面に設けられた係止溝119bに係合してこれを抜け止めする。ハンマビット119の係止溝119bは、長軸方向に所定長さで延びている。
【0024】
またビット保持部137Aのビット保持孔137aの内面には、径方向に突出するトルク伝達部としての複数の突起137cが周方向に所定間隔で設けられている。トルク伝達用の突起137cは、当該ビット保持部137Aの長軸方向に所定長さで延在されており、ビット保持孔137aに挿入されるハンマビット119の軸部119a外面に形成されたトルク伝達溝119c(図3参照)に嵌り合い(係合し)、この状態でビット保持部137Aの回転力をハンマビット119に伝達する。なおトルク伝達溝119cは、軸部119aの後端において開放しており、ハンマビット119をビット保持孔137aに挿入する際の周方向の位置決めとして用いられる。かくして、ハンマビット119は、ビット保持機構151によって長軸方向の移動が許容された状態でツールホルダ137のビット保持部137Aに保持される。
【0025】
なおハンマビット119をビット保持部137Aから取り外す場合は、ツールスリーブ155を付勢バネ161の付勢力に抗して後方のビット抜き取り許容位置へ移動させると、規制リング157による鋼球153の外径方向への移動規制が解除される。この状態でハンマビット119を前方へ引けば、鋼球153が外径方向へと押し出されることになり、ハンマビット119をビット保持孔137aから取り外すことができる。
【0026】
ツールホルダ137のビット保持部137Aには、ビット保持孔137aのビット挿入口側と、ビット挿入方向奥側、つまりインパクトボルト収容部137B側に、それぞれ保持リング165,167が圧入されている。両保持リング165,167は、ビット保持部137Aの硬度よりも硬い材料、例えばロックウェルCスケール硬さ(HRC)60以上の、合金工具鋼鋼材(SKD)、高速度工具鋼(SKH)、高炭素クロム軸受鋼(SUJ)等から形成されている。ビット挿入口側の保持リング165は、ビット保持孔137aに挿入されたハンマビット119を長軸方向の相対移動を許容しつつ保持する領域として設けられる。ビット挿入方向奥側の保持リング167Aは、ビット保持孔137aに挿入されたハンマビット119の挿入方向端部を長軸方向の相対移動を許容しつつ保持する領域として設けられる。そして両保持リング165,167によって挟まれる領域は、ビット保持孔137aに挿入されたハンマビット119を抜け止めする機構、およびツールホルダ137の回転駆動力をハンマビット119に伝達する機構を配置する領域として設けられる。
【0027】
上記のように、本実施の形態においては、ハンマビット119の軸部119aの外面と接触するビット保持孔137aの内壁面につき、ビット挿入口側内壁面165aと奥側内壁面167aの硬度を、当該ビット挿入口側内壁面165aと奥側内壁面167aとの間の中間内壁面166aの硬度よりも高く設定した構成とされる。ビット挿入口側内壁面165aは、本発明における「第1の保持領域」に対応し、奥側内壁面167aは、本発明における「第3の保持領域」に対応し、中間内壁面166aは、本発明における「第2の保持領域」に対応する。そして前述した抜け止め部材としての鋼球153を配置するための長孔137bおよびトルク伝達用突起137cは、両保持リング165,167によって挟まれる中間内壁面166aを構成するビット保持部137Aに設けられる。
【0028】
本実施の形態に係るハンマドリル101は、上述のように構成している。ハンマビット119の軸部119aが挿入されるビット保持孔137aの内壁面は、加工作業によって発生した粉塵が侵入し易いビット挿入口側内壁面165aが最も摩耗を生じ易い環境下に置かれる。本実施の形態においては、ビット保持孔137aの内壁面のうち、摩耗が生じ易いビット挿入口側内壁面165aを、硬度の高い(ロックウェルCスケール硬さ(HRC)60以上の硬度を有する)保持リング165によって形成することにより、ビット挿入口側内壁面165aの耐摩耗性を高めることができる。これにより、ビット挿入口側内壁面165aの摩耗を低減して耐久性を向上できる。
【0029】
またハンマビット119が打撃動作して加工作業する場合、当該ハンマビット119には、被加工材からの反力として長軸方向の力のみならず、長軸方向と交差する径方向成分を含む外力も作用する。ビット保持孔137aの内壁面は、ハンマビット119に作用する当該交差方向の力を主としてビット挿入口側内壁面165aと奥側内壁面167aで支えることになる。本実施の形態によれば、上記の交差方向の力を受ける部位、すなわち、ビット挿入口側と奥側の内壁面165a,167aを硬度の高い保持リング165,167によって形成することにより、高負荷作用部位であるビット挿入口側と奥側の内壁面165a,167aの耐久性を高め、当該内壁面165a,167aの摩耗を合理的に低減することが可能となる。
【0030】
ビット保持孔137aの内壁面の摩耗は、ハンマビット119に振れを生じさせ、それに伴い、特にハンマドリル101の場合においては、ツールホルダ137の回転力をハンマビット119に伝達するために当該ツールホルダ137に形成されたトルク伝達用突起137cの摩耗を引き起こし、その結果としてハンマビット119の振れによる穴開け作業等の困難化を招くことになる。本実施の形態によれば、上述したように、ビット保持孔137aの内壁面につき、ビット挿入口側および奥側の内壁面165a,167aの摩耗が低減されることでハンマビット119の振れが抑えられてトルク伝達用突起137cの摩耗も低減される。
【0031】
ところで、ビット保持孔137aの内壁面を軸方向の全長に渡って高い硬度のスリーブによって形成する構成によれば、ハンマビット119の打撃動作時において、鋼球153を介してビット保持部137Aの長孔137bの前端部(図2の左端部)に作用する軸方向の衝撃力で、硬いが故に前端部付近にひび割れを生ずる可能性があり、またビット保持部137Aの長孔137bを機械加工によって形成するとすれば、加工性が低下することにもなる。しかるに、本実施の形態によれば、ビット保持孔137aの内壁面のうちの中間内壁面166aを構成するビット保持部137Aについては、従前通りの硬度に設定できるため、上記のようなひび割れの問題、あるいは加工性の低下といった問題が解決される。また本実施の形態においては、ビット保持孔137aの挿入口側および奥側に、それぞれビット保持部137Aの硬度よりも高い硬度の保持リング165,167を圧入する構成としたことにより、硬度の異なる内壁面を有するビット保持孔137aを簡単に製作することができる。
【0032】
なお本実施の形態では、ビット保持孔137aのビット挿入口側と奥側にそれぞれ保持リング165,167を設ける構成としたが、ビット挿入口側にのみ保持リング165を設ける構成に変更しても構わない。また保持リング165,167の固定は、圧入以外の手段、例えば溶接あるいはネジ等を用いても構わない。また本実施の形態は、打撃工具の一例として、電動ハンマドリルを用いて説明したが、ハンマビット119がハンマ作業のみを行う電動ハンマに適用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本実施の形態に係る電動ハンマドリルの全体構成を示す断面図である。
【図2】ハンマビットの保持機構部の構成につき、ビット抜け止め部を主体として示す断面図である。
【図3】ハンマビットの保持機構部の構成につき、トルク伝達部を主体として示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
101 ハンマドリル(打撃工具)
103 本体部
105 モータハウジング
107 ギアハウジング
109 グリップ
111 駆動モータ
112 アーマチュアシャフト
113 運動変換機構
115 打撃要素
117 トリガ
119 ハンマビット(工具ビット)
119a 軸部
119b 係止溝
119c トルク伝達溝
121 駆動ギア
123 被動ギア
124 連結軸
125 中間軸
126 ボールベアリング
127 回転体
128 揺動ロッド
129 スワッシュプレート
131 第1伝達ギア
133 第2伝達ギア
135 スリーブ
137 ツールホルダ
137A ビット保持部(ビット保持領域、第2の保持領域)
137B インパクトボルト収容部
137a ビット保持孔
137b 長孔(開口部)
137c トルク伝達用の突起
141 筒状ピストン
141a 空気室
143 ストライカ
145 インパクトボルト
151 ビット保持機構
153 鋼球
155 ツールスリーブ
157 規制リング
159 規制プレート
161 付勢バネ
163 キャップ
165 ビット挿入口側の保持リング
165a ビット挿入口側内壁面(第1の保持領域)
166a 中間内壁面(第2の保持領域)
167 ビット挿入方向奥側の保持リング
167a 奥側内壁面(第3の保持領域)
【出願人】 【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
【出願日】 平成18年11月22日(2006.11.22)
【代理人】 【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸

【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行


【公開番号】 特開2008−126378(P2008−126378A)
【公開日】 平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願番号】 特願2006−316087(P2006−316087)