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【発明の名称】 油圧ブレーカ用鍔付きチゼルおよびチゼル用鍔部材
【発明者】 【氏名】小柴 英俊

【要約】 【課題】鍔部を大径にした場合であっても、比較的安価かつ容易に製造し得る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルおよびチゼル用鍔部材を提供する。

【解決手段】この鍔付きチゼル4は、チゼル本体3に、フロントヘッド6よりも外側に位置する部分に、円環状の溝部1を設け、この溝部1の両側に、径方向に張り出す一対の径大部2を形成している。そして、この溝部1には、弾性体から形成された円環状の鍔部材7が、自己が弾性変形することによって嵌め込まれている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ブレーカに用いられ、そのフロントヘッド内に軸方向に往復移動可能に挿着される鍔付きチゼルであって、
円環状の鍔部材と、その鍔部材が装着されるチゼル本体と、を備え、前記チゼル本体は、フロントヘッドよりも外側に位置する部位に、前記鍔部材を装着するための円環状の鍔部材装着部を有し、
前記鍔部材装着部と鍔部材とは、相互の径方向で対向する円環状の面に、いずれか一方が円環状の凹部を有し、いずれか他方が前記凹部に嵌合する円環状の凸部を有して形成されており、
前記鍔部材は、その凹部または凸部が、自己が弾性変形することによって前記鍔部材装着部の凸部または凹部に装着されるようになっていることを特徴とする油圧ブレーカ用鍔付きチゼル。
【請求項2】
前記鍔部材は、エラストマーまたはエラストマーを含む弾性体から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の油圧ブレーカ用鍔付きチゼル。
【請求項3】
前記鍔部材装着部および鍔部材の、前記いずれか一方の凹部とこれに嵌合するいずれか他方の凸部とは、前記相互の径方向で対向する円環状の面が、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の油圧ブレーカ用鍔付きチゼル。
【請求項4】
前記鍔部材装着部は、前記凹部と、その凹部の両側それぞれに隣接して設けられて径方向に張り出す一対の径大部と、を有し、その一対の径大部のうち少なくともチゼル基端側の径大部は、軸方向での前記凹部側に設けられた円筒部と、前記凹部とは反対の側に設けられて当該反対の側に向かうにつれて縮径する円錐面と、を有しており、
前記鍔部材は、前記鍔部材装着部の凹部に嵌合する円環状の凸部と、その凸部に対しチゼル基端側に設けられて前記基端側の径大部に嵌合する凹の段部と、を有することを特徴とする請求項3に記載の油圧ブレーカ用鍔付きチゼル。
【請求項5】
前記鍔部材装着部は、前記凸部と、その凸部よりもチゼル基端側に隣接して設けられて前記凸部よりも小径の第二の凸部と、を有し、その第二の凸部は、軸方向での前記凸部側に設けられた円筒部と、前記凸部とは反対の側に設けられて当該反対の側に向かうにつれて縮径する円錐面と、を有しており、
前記鍔部材は、前記鍔部材装着部の凸部に嵌合する円環状の凹部と、その凹部に対しチゼル基端側に設けられて前記第二の凸部に嵌合する凹の段部と、を有することを特徴とする請求項3に記載の油圧ブレーカ用鍔付きチゼル。
【請求項6】
前記鍔部材は、その軸方向でのチゼル基端側に、チゼル基端側に向けて延びる円環状の延長部を有し、当該延長部は、前記チゼル本体の外周面に直接嵌合するようになっていることを特徴とする請求項4または5に記載の油圧ブレーカ用鍔付きチゼル。
【請求項7】
油圧ブレーカ用鍔付きチゼルに装着される鍔部材であって、
鍔部材装着部を有するチゼル本体に装着されるようになっており、前記鍔部材装着部は、油圧ブレーカのフロントヘッドよりも外側に位置する部位に、凸部または凹部を有して円環状に形成され、
前記鍔部材は、前記鍔部材装着部の凸部または凹部に径方向で対向する円環状の面に、前記凸部または凹部に嵌合する円環状の凹部または凸部を有し、当該鍔部材の凹部または凸部は、自己が弾性変形することによって前記鍔部材装着部の凸部または凹部に装着されるようになっていることを特徴とするチゼル用鍔部材。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ブレーカに用いられ、その外周面に鍔を有する鍔付きチゼルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトンネル内で稼働する作業車両に取付けて使用される油圧ブレーカは、図9に示すように、ブレーカ本体10をブラケット20で支持し、このブラケット20を作業車両50のアーム40に取付けるようになっている。ブレーカ本体10には、軸方向での中央部に、以下不図示のシリンダを有し、そのシリンダの後端側にバックヘッドが連結されている。そして、シリンダ内には、ピストンが摺嵌され、公知の油圧打撃機構が構成されており、油圧供給源から切換弁を介してシリンダへ圧油を供給することにより、ピストンが前後進可能になっている。
【0003】
そして、図10に示すように、ブレーカ本体10は、その先端側にフロントヘッド6を有して構成されており、このフロントヘッド6内に、その軸方向に往復移動可能なチゼル(ロッド)130が挿着されている。
この種の油圧ブレーカでトンネル内での破砕作業を行なう場合には、チゼル130を被破砕物70に押し付け、ブレーカ本体10に内蔵されたピストンでチゼル130後端を打撃する。これにより、チゼル130には、ピストンでの打撃によって被破砕物70の方向に進行する圧縮の応力波が発生し、チゼル130が被破砕物70の方向に前進することで破砕可能になっている。
【0004】
ところで、この種の油圧ブレーカ30では、例えば図9ないし図10に示すように、チゼル130には、フロントヘッドよりも外側に位置する部位に鍔部170等を設けた鍔付きチゼルを用いており、ブレーカ本体10内への土砂等の進入を防止している。
しかし、特に上打ちする際などでの、ブレーカ本体10内への土砂等の進入を好適に防止する上では、鍔部が小径のものでは不十分である。
【0005】
そこで、例えば、図11(a)に例示するように、小径の鍔部171のブレーカ本体側に大径のワッシャ172を挟んだり、あるいは、図11(b)に例示するように、鍔172そのものの外径を大きくしたりして、ブレーカ本体内への土砂等の進入を防止している。例えば特許文献1に記載の技術では、チゼル本体の軸部に、外側に張り出した比較的大径の鍔を形成した鍔付きチゼルを用いており、この鍔およびパッキング等により、土砂等の進入を防止している。
【0006】
また、例えば、図11(c)に例示するように、鋼製で大径の鍔部173を別部材とし、この鍔部173を冷やし嵌めで固定したり、必要に応じて、同図に示すようなカシメ部材174を用いてさらにカシメを併用して大径の鍔部173を固定したりするものを例示できる。
また、例えば、特許文献2に記載の技術では、図11(d)に例示するように、チゼル本体の軸部に、位置決め用の突起条175を設け、その突起条175に、分割型の筒状のスペーサ176を介して鋼製の鍔177を嵌挿し、スペーサ176と鍔177とを溶着して固定して鍔付きチゼルを構成している。これにより、特に上打ちする際などでの、ブレーカ本体内への土砂等の進入を防止している。
【特許文献1】実開平05−88883号公報
【特許文献2】特開2002−103247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、図11(a)に例示する、小径の鍔部とブレーカ本体との間に大径のワッシャを挟むものでは、介装されたワッシャでは、耐久性が不十分であり、また、ワッシャ自体を介装せずに作業されるおそれがあり、未だ検討の余地がある。
また、図11(b)に例示する特許文献1に記載の技術のように、一体形成によって鍔の外径を大きくしているものは、最大径からの削り出しや、鍛造によって製作することになるので、材料や加工に要するコストが高い。
【0008】
また、例えば、図11(a)に例示する冷やし嵌めやカシメによって大径の鍔を固定するものでは、鍔とチゼルの軸部とは、嵌め合いを管理するための研摩加工が必要なので、やはり製造コストが高いものとなる。さらに、鋼製の鍔自体の重さによって稼働中に移動することを防止するためのカシメ部材をさらに要したり、固定用の止めピンを入れる必要が生じることもあり、単に鍔部を別体に形成し、これをチゼル本体に固定するだけでは不十分である。
【0009】
また、図11(d)に例示する特許文献2に記載の技術のように、スペーサ176を介して鍔177を嵌挿し、相互を溶着してチゼル本体に固定するものは、軸方向が長くなり、鍔部全体が大きくなってしまう。また、上記冷やし嵌めやカシメによる装着同様に、鍔の取り付けも難しく、取り外すことはさらに困難であり、製造工程も複雑で、コスト高となる。
【0010】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、鍔部を大径にした場合であっても、比較的安価かつ容易に製造し得る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルおよびチゼル用鍔部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のうち第一の発明は、油圧ブレーカに用いられ、そのフロントヘッド内に軸方向に往復移動可能に挿着される鍔付きチゼルであって、円環状の鍔部材と、その鍔部材が装着されるチゼル本体と、を備え、前記チゼル本体は、フロントヘッドよりも外側に位置する部位に、前記鍔部材を装着するための円環状の鍔部材装着部を有し、前記鍔部材装着部と鍔部材とは、相互の径方向で対向する円環状の面に、いずれか一方が円環状の凹部を有し、いずれか他方が前記凹部に嵌合する円環状の凸部を有して形成されており、前記鍔部材は、その凹部または凸部が、自己が弾性変形することによって前記鍔部材装着部の凸部または凹部に装着されるようになっていることを特徴としている。
【0012】
第一の発明によれば、チゼル本体の鍔部材装着部と鍔部材とは、いずれか一方に円環状の凹部を有し、いずれか他方に前記凹部に嵌合する円環状の凸部を有し、互いの凹部と凸部とを鍔部材の弾性変形によって嵌め合わせるだけで、チゼル本体の鍔部材装着部に、鍔部材を容易に装着することができるので、凹部と凸部との寸法管理は、上記例示したような、鋼材同士による嵌め合いに比べて許容範囲を広くとることができる。また、上記例示したような、冷やし嵌めやカシメは不要である。したがって、例えば鍔部を大径にする場合であっても、比較的安価かつ容易に製造することができる。
【0013】
ここで、上記例示した従来のチゼルは、いずれの例においても、鍔が鋼製なので、大径化する分、チゼル全体の質量が増えることになる。そのため、例えば油圧ブレーカ内部のブシュへの負担が増大し、ブシュの摩耗を早めることにもなる。また、鍔の取り付けも難しく、取り外すことはさらに困難である。そのため、チゼル本体を再利用することも難しい。
【0014】
そこで、本発明のうち第二の発明は、上記第一の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルであって、前記鍔部材は、エラストマーまたはエラストマーを含む弾性体から形成されていることを特徴としている。
第二の発明によれば、第一の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルによる作用・効果に加えて、その鍔部材が、エラストマーまたはエラストマーを含む弾性体から形成されているので、上記例示した鋼製の鍔部材と比べて軽量化可能である。また、上記弾性変形による嵌合に際し、十分な締め代を容易に確保することができる。そして、例えば使用時には、この第二の発明に係る鍔部材は、作業機械による推力によってチゼル本体の鍔部材装着部に容易に組み付け可能である。したがって、その製造をより容易とし、さらに、鍔部材の換装も容易である。
【0015】
また、本発明のうち第三の発明は、上記第一または第二の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルであって、前記鍔部材装着部および鍔部材の、前記いずれか一方の凹部とこれに嵌合するいずれか他方の凸部とは、前記相互の径方向で対向する円環状の面が、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面になっていることを特徴としている。
第三の発明によれば、第一または第二の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルによる作用・効果に加えて、鍔部材装着部および鍔部材の、互いの凹部および凸部は、相互の径方向で対向する円環状の面が、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面になっているので、組み付け後は、容易に外れることがない。したがって、装着状態をより確実にすることができる。
【0016】
また、本発明のうち第四の発明は、上記第三の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルであって、前記鍔部材装着部は、前記凹部と、その凹部の両側それぞれに隣接して設けられて径方向に張り出す一対の径大部と、を有し、その一対の径大部のうち少なくともチゼル基端側の径大部は、軸方向での前記凹部側に設けられた円筒部と、前記凹部とは反対の側に設けられて当該反対の側に向かうにつれて縮径する円錐面と、を有しており、前記鍔部材は、前記鍔部材装着部の凹部に嵌合する円環状の凸部と、その凸部に対しチゼル基端側に設けられて前記基端側の径大部に嵌合する凹の段部と、を有することを特徴としている。
【0017】
第四の発明によれば、第三の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルによる作用・効果に加えて、凹部の両側それぞれに隣接して設けられて径方向に張り出す一対の径大部を有するので、凹部に組み付けられた鍔部材は、組み付け後は、一対の径大部によって軸方向への移動がさらに拘束される。したがって、装着状態をより確実にすることができる。
さらに、チゼル基端側の径大部は、凹部とは反対の側に設けられて当該反対の側に向かうにつれて縮径する円錐面を有しているので、この円錐面が形成されている側から鍔部材を装着することで、その斜面に沿って滑らかに拡径させることが可能になっており、装着をより容易にすることができる。
【0018】
また、本発明のうち第五の発明は、上記第三の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルであって、前記鍔部材装着部は、前記凸部と、その凸部よりもチゼル基端側に隣接して設けられて前記凸部よりも小径の第二の凸部と、を有し、その第二の凸部は、軸方向での前記凸部側に設けられた円筒部と、前記凸部とは反対の側に設けられて当該反対の側に向かうにつれて縮径する円錐面と、を有しており、前記鍔部材は、前記鍔部材装着部の凸部に嵌合する円環状の凹部と、その凹部に対しチゼル基端側に設けられて前記第二の凸部に嵌合する凹の段部と、を有することを特徴としている。
【0019】
第五の発明によれば、第三の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルによる作用・効果に加えて、チゼル本体の大小二つの凸部に、鍔部材の二つの凹部がそれぞれ嵌合するようになっているので、装着状態をより確実にすることができる。
さらに、第二の凸部は、前記凸部とは反対の側に設けられて当該反対の側に向かうにつれて縮径する円錐面を有しているので、この円錐面が形成されている側から鍔部材を装着することで、その斜面に沿って滑らかに拡径させることが可能になっており、装着をより容易にすることができる。
【0020】
また、本発明のうち第六の発明は、上記第四または第五の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルであって、前記鍔部材は、その軸方向でのチゼル基端側に、チゼル基端側に向けて延びる円環状の延長部を有し、当該延長部は、前記チゼル本体の外周面に直接嵌合するようになっていることを特徴としている。
第六の発明によれば、上記第四または第五の発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルによる作用・効果に加えて、鍔部材は、その軸方向でのチゼル基端側に、チゼル基端側に向けて延びる円環状の延長部を有し、この延長部は、チゼル本体の外周面に直接嵌合するようになっているので、例えば軸方向に当該鍔部材をめくれあがらせるような外力が作用した場合であっても、その円環状の延長部によって自身の強度を向上させており、さらに、この延長部は、チゼル本体の外周面に直接嵌合することで接触面積が広く確保されているため、めくれあがり(変形)や、めくれあがり(変形)による脱落を防止または抑制することができる。
【0021】
また、本発明のうち第七の発明は、油圧ブレーカ用鍔付きチゼルに装着される鍔部材であって、鍔部材装着部を有するチゼル本体に装着されるようになっており、前記鍔部材装着部は、油圧ブレーカのフロントヘッドよりも外側に位置する部位に、凸部または凹部を有して円環状に形成され、前記鍔部材は、前記鍔部材装着部の凸部または凹部に径方向で対向する円環状の面に、前記凸部または凹部に嵌合する円環状の凹部または凸部を有し、当該鍔部材の凹部または凸部は、自己が弾性変形することによって前記鍔部材装着部の凸部または凹部に装着されるようになっていることを特徴としている。
【0022】
第七の発明によれば、鍔部材は、凹部または凸部を有し、その凹部または凸部が、チゼル本体の鍔部材装着部の凸部または凹部に、鍔部材の弾性変形によって嵌め合わせ可能なので、チゼル本体の鍔部材装着部に、鍔部材を容易に装着することができる。したがって、例えば鍔部を大径にする場合であっても、比較的安価かつ容易に鍔付きチゼルを製造し得る鍔部材を提供できる。
【発明の効果】
【0023】
上述のように、本発明によれば、鍔部を大径にした場合であっても、比較的安価かつ容易に製造し得る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルおよびチゼル用鍔部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る油圧ブレーカのブレーカ本体要部を説明する図であり、同図は、そのフロントヘッド部分を、軸線を含む断面にて図示している。なお、この油圧ブレーカは、上述した従来の油圧ブレーカ30に対し本発明に係る鍔付きチゼルのみ異なり他の部分は同様なので、他の部分については詳しい説明を省略する。
【0025】
図1に示すように、このブレーカ本体10には、そのフロントヘッド6内に、先端側から鍔付きチゼル4が挿着されている。また、フロントヘッド6の内周面の先端側には、略円筒状のフロントキャップ12が設けられている。そして、鍔付きチゼル4は、このフロントキャップ12により不図示のピストンと同軸線上に保持されており、ピストンの打撃によって軸方向に所定距離の往復移動が可能になっている。
【0026】
ここで、この鍔付きチゼル4は、チゼル本体(ロッド)3と、鍔部材7と、を備えて構成されている。
チゼル本体3は、フロントヘッド6よりも外側の所定の位置(軸方向での略中央部)に、溝部1を有しており、この溝部1の軸方向両側に、径方向に円環状に張り出す一対の径大部2を有している。そして、その溝部1に、径方向に張り出す円環状の鍔部材7が嵌め込まれるようになっている。鍔部材7は、チゼル本体3の軸部に着脱可能であり、その外径は、フロントキャップ12の先端部分の外径とほぼ同じ径の大径になっている。
【0027】
以下、この鍔付きチゼル4について、図2および図3を参照してより詳しく説明する。なお、図2は鍔付きチゼル4を説明する図であり、同図(a)は、鍔部材7をその軸線を含む断面で示している。また、同図(b)は鍔部材7を取り外したチゼル本体3の図、同図(c)は鍔部材7の平面図、同図(d)は鍔部材7の縦断面図である。また、図3は、図2(a)でのA部拡大図である。
【0028】
この鍔部材7は、図3に拡大図示するように、その外周面には、フロントヘッド6側(基端側)に短い円筒部7aを有し、この円筒部7aの先端側に、断面が先端側に向かうにつれて縮径する円錐面7bを有している。さらに、その内周面には、フロントヘッド6側(基端側)に円環状の凹の段部7dを有し、先端側に、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面7cが円環状の凸部として形成されている。ここで、この鍔部材7は、強化ゴム素材から形成されている。
【0029】
一方、チゼル本体3には、その軸部に、同軸且つ円環状をなす凹部として溝部1が形成されており、溝部1は、その径方向を向く外周面1cが、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面1cになっている。この溝部1のテーパ面1cは、鍔部材7のテーパ面7cに対向する面になっており、その軸方向での幅寸法およびテーパ角は、互いにほぼ同じになっている。なお、径方向の寸法は、鍔部材7の内径寸法が、嵌合の締め代を確保する分だけ溝部1の外径寸法に対し小さい。
【0030】
また、チゼル本体3には、溝部1の両側に、一対の径大部2がそれぞれ形成されている。一対の径大部2は、溝部1側に円筒部2aをそれぞれ有し、溝部1とは反対の側に、当該反対の側に向かうにつれて縮径する円錐面2bをそれぞれ有している。この円筒部2aの幅寸法および外径は、鍔部材7の凹の段部7dの幅寸法および内径に等しい。
そして、鍔部材7は、図2(a)に破線で示すように、チゼル本体3の軸部に対し、その基端側から挿入されて溝部1に装着されている。つまり、鍔部材7のテーパ面7cは、押付力Pが付与されて、基端側の径大部2の円錐面2bに当接したときに弾性変形することで拡径し、溝部1に対して軸方向から嵌め込まれるようになっている。
【0031】
このとき、テーパ面7cは、円錐面2bの斜面に沿って滑らかに拡径させることが可能になっており、その装着を容易にしている。そして、軸方向での所定の位置まで押し込まれることで、径大部2の円筒部2aと鍔部材7の凹の段部7dとが係合するとともに、相互の径方向で対向する円環状のテーパ面7c、1cが当接することで軸方向の移動が拘束されて、その位置が固定される。ここで、本実施形態では、溝部1と、その両側の一対の径大部2とによって上記鍔部材装着部が構成されている。
【0032】
次に、この鍔付きチゼル4の作用・効果について説明する。
上述のように、この鍔付きチゼル4を装着した油圧ブレーカによれば、チゼル本体3に大径の鍔部材7が装着されているので、例えば図4に示すように、トンネル内で破砕作業を行なう場合に、特に上打ちする際などでの、ブレーカ本体10内への土砂等の進入を好適に防止可能である。
【0033】
そして、この鍔付きチゼル4を装着した油圧ブレーカによれば、鍔部材7のテーパ面7cが、弾性変形することによってチゼル本体3の溝部1に嵌合する構成なので、溝部1に鍔部材7のテーパ面7cを嵌め合わせるだけで、チゼル本体3の所定の位置に、鍔部材7を容易に装着することができる。また、弾性変形による嵌合を採用しているので、溝部1と鍔部材7のテーパ面7cとの寸法管理は、上記例示したような、鋼材同士による嵌め合いに比べて許容範囲を広くすることができる。そのため、製造も容易である。
【0034】
また、上記例示した従来の鍔付きチゼル(図11参照)は、いずれの例においても、鍔が鋼製なので、大径化する分、チゼル全体の質量が増えることになる。そのため、例えば油圧ブレーカ内部のブシュへの負担が増大し、ブシュの摩耗を早めることにもなる。また、鍔の取り付けも難しく、取り外すことはさらに困難である。そのため、チゼル本体を再利用することも難しい。
【0035】
しかし、この鍔部材7をチゼル本体3に備えた鍔付きチゼル4を装着した油圧ブレーカによれば、鍔部材7が、強化ゴム素材から形成されているので、鍔部材を鋼製としたものと比べて、軽量化可能であり、油圧ブレーカ内部のブシュへの負担が軽減し、ブシュの摩耗が抑制される。また、上記弾性変形による嵌合に際し、十分な締め代を確保することができる。
【0036】
さらに、この鍔付きチゼル4によれば、その溝部1と鍔部材7とは、相互の径方向で対向する円環状の面が、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面1cおよびテーパ面7cになっているので、例えば稼働中の土砂の衝突や岩盤との接触等による外力(図3に符号Fで示す)が作用した場合であっても、組み付け後は容易に外れることがない。
【0037】
また、この鍔付きチゼル4によれば、鍔部材7は、例えば使用時には、ブレーカ本体10を作業車両に取付けて、図5に示すように、作業機械による推力によって容易に溝部1に組み付け可能である。
具体的には、同図(a)に示すように、まず、フロントヘッド6内にチゼル本体3を挿着し、フロントキャップ12と基端側の径大部2との間に、鍔部材7を所定の向きで介装しておく。このとき、同図に示すように、チゼル本体3の先端を被破砕物70にて支持するようにしておけば装着作業が行い易い。次いで、同図(b)〜(c)に示すように、作業機械による推力Pによってブレーカ本体10を押圧し、鍔部材7のテーパ面7cを弾性変形させることによって基端側の径大部2を乗り越えさせ、これにより、チゼル本体3の溝部1に嵌合させることで鍔付きチゼル4を構成できる。なお、この装着作業の際に、同図(c)および(d)に示すように、鍔部材7とフロントキャップ12との間に、さらに、二分割された一対のスペーサ60を介装してもよい。この一対のスペーサ60は、その内外径がフロントキャップ12とほぼ同じ円環板部材を径方向に二分割したものであり、押し込み用の治具として機能する。このスペーサ60を用いて、鍔部材7を溝部1に嵌合させた後、同図(e)に示すように、スペーサ60を径方向に引き出して取り外す。なお、この一対のスペーサ60に替えて薄板の端材を流用してもよい。
【0038】
このように、この鍔付きチゼル4によれば、製造(装着)をより容易に行うことができる。さらに、その鍔部材7は、強化ゴム素材から形成されているので、鍔部材7が摩耗したときには、残存物を刃物等で容易に除去可能であり、新しい鍔部材7への換装も容易である。したがって、鍔部材7の取り付けも取り外しも容易であり、また、チゼル本体3を再利用することを可能としている。
【0039】
以上説明したように、本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルによれば、比較的安価かつ容易に製造し得る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルおよびチゼル用鍔部材を提供することができる。
なお、本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能なことは勿論である。
【0040】
例えば、上記実施形態では、鍔部材装着部は、溝部1とその両側の一対の径大部2と、から構成する例で説明したが、これに限定されず、鍔部材装着部は、例えば溝部1のみから構成してもよい。しかし、軸方向での拘束力を確実にする上では、鍔部材装着部を、溝部1とその両側の一対の径大部2と、から構成することは好ましい。
また、鍔部材装着部は、溝部1に限定されず、鍔部材装着部と鍔部材とは、相互の径方向で対向する円環状の面に、いずれか一方が円環状の凹部を有し、いずれか他方が前記凹部に嵌合する円環状の凸部を有する構成とすることができる。
【0041】
例えば、図6に例示する第一の変形例のように、チゼル本体3Bの外周面に、円環状の凸部1Bを形成し、鍔部材7Bには、その内周面に、円環状の凸部1Bに嵌合可能な円環状の凹部7Mを形成する構成を例示できる。
ここで、この第一の変形例では、上記凸部1Bは、先端側の第一の凸部1gと、その第一の凸部1gに隣接して基端側に設けられて前記第一の凸部1gよりも小径の第二の凸部1fと、から形成されている。そして、この小径の第二の凸部1fは、その外周面に、第一の凸部1g側に設けられた円筒部1sと、前記第一の凸部1gとは反対の側に設けられて当該反対の側に向かうにつれて縮径する円錐面1tと、を有している。さらに、第一の凸部1gは、その外周面が、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面1hとして形成されている。一方、鍔部材7Bの凹部7Mは、上記第一の凸部1f、第二の凸部1gそれぞれに整合して嵌め込み可能に形成されてなる第一の凹部7rと、第二の凹部7pと、から形成されており、第二の凹部7pは、前記テーパ面1hに当接して、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面7hを有している。このような構成であっても、上記実施形態同様の作用・効果を奏することができる。
【0042】
ここで、例えば稼働中の土砂の衝突や岩盤との接触等による外力(図3での符号F)が強く作用した場合に、その外力Fの程度によっては、鍔部材7にめくれあがり(変形)が生じ、これにより鍔部材7がチゼル本体3から脱落する可能性もあり得る。そこで、上記実施形態ないし第一の変形例の更なる変形例として、このような、めくれあがり(変形)や、めくれあがり(変形)による脱落を防止または抑制する上で、より好適な形態とすることもできる。
【0043】
具体的には、上記実施形態に対応する変形例として、図7に例示する第二の変形例のように、鍔部材7には、その軸方向でのチゼル基端側に、チゼル基端側に向けて延びる円環状の延長部7eをさらに設ける。そして、この延長部7eは、その内径7fを、チゼル本体3の外径とほぼ同径に形成する。これにより、この延長部7eは、チゼル本体3の外周面に、隙間無く直接嵌合させるようにする構成を例示できる。
【0044】
また、上記第一の変形例に対応する変形例として、図8に例示する第三の変形例のように、鍔部材7Bには、その軸方向でのチゼル基端側に、チゼル基端側に向けて延びる円環状の延長部7gをさらに設ける。そして、この延長部7gは、その内径7mを、チゼル本体3の外径とほぼ同径に形成する。これにより、この延長部7gは、チゼル本体3の外周面に、隙間無く直接嵌合するようにする構成を例示できる。
【0045】
なお、これら第二ないし第三の変形例を採用する場合は、上記実施形態ないし第一の変形例での通常のチゼルを、延長部に対応する分だけ長くするか、あるいは鍔部材の軸方向での装着箇所をチゼルの先端側に移動させる。
これら第二ないし第三の変形例によれば、上記実施形態ないし第一の変形例での作用・効果に加えて、鍔部材7(ないし7B)は、その軸方向でのチゼル基端側に、チゼル基端側に向けて延びる円環状の延長部7e(ないし7g)を有し、この延長部7e(7g)は、チゼル本体3の外周面に直接嵌合するようになっているので、例えば軸方向に当該鍔部材7(7B)をめくれあがらせるような外力が作用した場合であっても、その円環状の延長部7e(7g)によって自身の強度を向上させており、さらに、この延長部7e(7g)は、チゼル本体3の外周面に直接嵌合することで接触面積が広く確保されているため、めくれあがり(変形)や、めくれあがり(変形)による脱落を防止または抑制することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、鍔部材7は強化ゴム素材から形成されている例で説明したが、これに限定されず、この鍔部材7の素材としては、例えば上記装着例として図5を参照して説明したように、チゼル本体3の基端側から鍔部材7が挿入されて、上記の押付力Pが鍔部材7に付与されて、弾性変形することで拡径し、溝部1等の鍔部材装着部に対して軸方向から嵌め込み可能なものであればよい。
【0047】
なお、上述のように、鍔部材が摩耗したときに、残存物を刃物等で容易に除去可能であり、新しい鍔部材への換装も容易とすることで、鍔の取り付けも取り外しも容易であり、また、チゼルを再利用することを可能とする上では、鍔部材7を、強化ゴム素材等の、エラストマーまたはエラストマーを含む弾性体から形成されていることが好ましい。
また、上記実施形態では、鍔部材装着部および鍔部材は、相互の径方向で対向する円環状の面が、軸方向での基端側に向けて縮径する傾斜をもつテーパ面になっている例で説明したが、これに限定されず、このようなテーパ面を有しない構成としてもよい。しかし、例えば稼働中の土砂の衝突や岩盤との接触等による外力が作用した場合であっても、組み付け後は容易に外れることがないようにする上では、前記相互の径方向で対向する円環状の面が、上述のテーパ面になっていることは好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明に係る油圧ブレーカのブレーカ本体要部を説明する図である。
【図2】本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルを説明する図である。
【図3】本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルの要部拡大図である。
【図4】本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルでの破砕作業を説明する図である。
【図5】本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルでの鍔部材の装着方法を説明する図である。
【図6】本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルの他の例(第一の変形例)を説明する要部拡大図である。
【図7】本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルの他の例(第二の変形例)を説明する要部拡大図である。
【図8】本発明に係る油圧ブレーカ用鍔付きチゼルの他の例(第三の変形例)を説明する要部拡大図である。
【図9】従来の油圧ブレーカを作業車両に取付けた使用例を説明する図である。
【図10】従来の油圧ブレーカ用鍔付きチゼルでの破砕作業を説明する図である。
【図11】従来の油圧ブレーカ用鍔付きチゼルの例を説明する図である。
【符号の説明】
【0049】
1 溝部(鍔部材装着部)
2 径大部(鍔部材装着部)
3 チゼル本体
4 鍔付きチゼル
6 フロントヘッド
7 鍔部材
10 ブレーカ本体
12 フロントキャップ
20 ブラケット
30 油圧ブレーカ
40 アーム
50 作業車両
60 スペーサ
70 被破砕物
【出願人】 【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
【出願日】 平成18年10月31日(2006.10.31)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也

【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭

【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼


【公開番号】 特開2008−114298(P2008−114298A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2006−296780(P2006−296780)