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【発明の名称】 液圧式打撃装置
【発明者】 【氏名】小泉 匡弘

【要約】 【課題】打撃効率を高めるとともに、加工コストを低減し得る液圧式打撃装置を提供する。

【構成】この液圧式打撃装置は、ピストンとは非同軸の弁室内に中実構造の切換弁が摺嵌されている。そして、この切換弁は、弁大径部と、その弁大径部の前後端にそれぞれ設けられた弁小径部と、弁大径部および後端の弁小径部の間に配置されて当該切換弁の後方への移動を規制する弁後退規制部と、弁大径部の中央に後室と高圧回路とを連通可能に設けられた弁高圧供給溝と、弁大径部および弁後端規制部の間に後室と低圧回路とを連通可能に設けられた弁排油溝と、を備えている。そして、弁室には、その前端の弁小径部側に形成された弁制御室と、その後端の弁小径部側に形成された弁規制室と、がそれぞれ画成されており、弁規制室が高圧回路に常時接続され、弁制御室がピストンの前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通可能に構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径部およびこの大径部の前後にそれぞれ設けられた小径部を有するピストンと、このピストンを内部に摺嵌してその軸方向の前後に前室および後室がそれぞれ画成されるシリンダと、このシリンダ内にピストンとは非同軸に形成される弁室と、この弁室内に摺嵌される切換弁と、を備え、前室が高圧回路に常時接続され、後室が前記切換弁の前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通されることによりピストンを前後進させて、打撃用のロッドをピストンで打撃可能に構成される液圧式打撃装置であって、
前記切換弁は、弁大径部と、この弁大径部の前後端にそれぞれ設けられた弁小径部と、弁大径部および後端の弁小径部の間に配置されて当該切換弁の後方への移動を規制する弁後退規制部と、弁大径部の中央に設けられて後室と高圧回路とを連通させるための弁高圧供給溝と、弁大径部および弁後退規制部の間に設けられて後室と低圧回路とを連通させるための弁排油溝と、を備えてなる中実構造であり、
前記弁室は、その前端の弁小径部側に画成された弁制御室と、その後端の弁小径部側に画成された弁規制室と、を有し、弁規制室が高圧回路に常時接続され、弁制御室がピストンの前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通可能に構成されていることを特徴とする液圧式打撃装置。
【請求項2】
大径部およびこの大径部の前後にそれぞれ設けられた小径部を有するピストンと、このピストンを内部に摺嵌してその軸方向の前後に前室および後室がそれぞれ画成されるシリンダと、このシリンダ内にピストンとは非同軸に形成される弁室と、この弁室内に摺嵌される切換弁と、を備え、前室が高圧回路に常時接続され、後室が前記切換弁の前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通されることによりピストンを前後進させて、打撃用のロッドをピストンで打撃可能に構成される液圧式打撃装置であって、
前記切換弁は、弁大径部と、この弁大径部の前後端にそれぞれ設けられた弁小径部と、弁大径部および後端の弁小径部の間に配置されて当該切換弁の後方への移動を規制する弁後退規制部と、弁大径部の中央に設けられて後室と高圧回路とを連通させるための弁高圧供給溝と、弁大径部および弁後退規制部の間に設けられて後室と低圧回路とを連通させるための弁排油溝と、後端の弁小径部の側面に一端側が開口するとともに弁高圧供給溝に他端側が開口してこれら開口が相互に連通してなる弁連通孔と、を備えてなる中実構造であり、
前記弁室は、その前端の弁小径部側に画成された弁制御室と、その後端の弁小径部側に画成された弁規制室と、を有し、弁制御室がピストンの前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通可能に構成されていることを特徴とする液圧式打撃装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、さく岩機やブレーカ等の液圧式打撃装置に係り、特にその切換弁機構に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の液圧式打撃装置としては、例えば本出願人によって提案されている、特許文献1に記載の技術が知られている。
この特許文献1に記載の技術では、図3に示すように、軸方向中央の大径部51aと、その大径部51aの前後に形成された小径部51b、51cとを有するピストン51を備えている。そして、このピストン51が、シリンダ50内に摺嵌して設けられることで、シリンダ50内に前室52と後室53とがそれぞれ画成されている。前室52には、前室52を高圧回路56へ連通させる前室高圧ポート58が付設され、一方、後室53には、後室53を切換弁54の前後進切換えにより高圧回路56と低圧回路57とにそれぞれ連通させる後室高圧ポート59と後室低圧ポート60とがそれぞれ付設されている。
【0003】
また、シリンダ50には、バルブプラグ55が嵌着されており、このバルブプラグ55の外周とシリンダ50の内周との間が、ピストン51と同心状の弁室61として形成されている。そして、この弁室61に円環形状の切換弁54が摺嵌されている。
弁室61には、後室高圧ポート59を介して高圧回路56に対し連通して切換弁54を後方に付勢する弁規制室67が設けられている。さらに、弁室61の後端部は、後室低圧ポート60を介し低圧回路57と連通しており、また、弁室61の前端部は、弁室低圧ポート61aを介して常時低圧回路57と連通している。
【0004】
さらに、シリンダ50内には、切換弁54の前後進切換えを行う弁制御室65(同図(b)参照)および弁制御回路68を介して接続される弁前進制御ポート70を、ピストン51が後進したときに前室52に連通する位置に設けている。また、シリンダ50内には、弁前進制御ポート70の後方に所定距離離隔して弁制御ポート64に弁制御回路68で接続される弁後進制御ポート73を設けており、さらに、この弁後進制御ポート73の後方に所定距離隔離して低圧回路57に連通される排油ポート71を設けている。そして、ピストン51が前進したときに、弁後進制御ポート70と排油ポート71とを連通させる排油溝72を、ピストン51の大径部51aの外周に設けて構成されている。
【0005】
このような構成からなるこの液圧式打撃装置によれば、切換弁54が前方にある状態では、後室53が給排油孔66、給排油室62、および給排油切換孔63を介して後室高圧ポート59と連通されているので、後室53と前室52とは共に高圧回路56と連通する。そして、ピストン51の後室53側の受圧面積は前室52側の受圧面積より大となっている。したがって、ピストン51は前進する。さらに、この状態では、弁前進制御ポート70が前室52側に開かれており、弁後進制御ポート73はピストン51の大径部51bで閉じられている。そのため、弁制御孔69、弁制御ポート64、および弁制御回路68を介して前室52と連通している弁制御室65は高圧になっている。したがって、弁規制室67と弁制御室65とは共に高圧であり、弁制御室65側の受圧面積が弁規制室67側の受圧面積より大となっているので、切換弁54は前方に保持されている。
【0006】
次いで、上記作用によってピストン51が前進すると、ピストン51の大径部51aで弁前進制御ポート70が閉じられ、弁後進制御ポート73が排油溝72を介して排油ポート71と連通する。そのため、弁制御回路68、弁制御室65が低圧となる。このとき、弁規制室67は高圧のままであるから、切換弁54は後退する。そして、切換弁54が後退すると給排油孔66が給排油切換孔63を介して後室低圧ポート60と連通し、後室53が後室低圧ポート60を経て低圧回路57に連通する。これにより、前進したピストン51の先端は、打撃用のロッド(図示略)の後端を打撃して前進を停止し、後室53が低圧となっているため後退を開始する。
【0007】
次いで、ピストン51が後退すると、弁前進制御ポート70が前室52側に開かれ、弁後進制御ポート73がピストン51の大径部51aで閉じられる。そのため、弁制御回路68を介して前室52と連通した弁制御室65は再び高圧となって切換弁54が前進する。そして、切換弁54が前進すると、後室53が後室高圧ポート59を経て高圧回路56と連通し、これにより、後室53の圧力が上昇して、慣性により後退を続けようとするピストン51は制動を受け、後退の運動エネルギーが高圧油の形でアキュムレータ(図示略)に蓄積される。そして、後退を停止したピストン51は再び前進行程に入り、以後同様のサイクルが繰返される。
【0008】
ところで、この液圧式打撃装置では、弁室61がバルブプラグ55の外周とシリンダ50の内周との間に形成されている。そして、ピストン51の後室53への作動油の給排はバルブプラグ55内の通路(給排油室62および給排油孔66)によって行われる。さらに、切換弁54は円環形状を基本として、その内周に弁制御室65の受圧面、および外周に弁規制室67の受圧面がそれぞれ形成されている。
【0009】
しかし、この切換弁54では、上述のように、その内周側の受圧面積の方を外周側の受圧面積よりも大きく設定する必要があるので内径側の段差はより大きくなる。これに加えて、その円筒形状の肉厚分と外径側の段差が加算されるので、結果として切換弁54は全体的に径大となってしまう。そして、この切換弁54が径大化すると、切換弁54の重量が増加し切換弁54を前進後退させるために消費される圧油量が増大する。そのため、ピストン51を前進後退させるための圧油が減少するので打撃効率が低下するという問題がある。
【0010】
また、この切換弁54は、その外径とシリンダ50の内径とが摺接しており、さらに、切換弁54の内径とバルブプラグ55の外径とが相互に摺接している。そして、それぞれの摺接部にはクリアランスが設けられている。さらに、弁室61には、前方から、弁室低圧ポート61a(=低圧)、弁制御ポート64(=高圧)、後室高圧ポート59(=高圧)および後室低圧ポート60(=低圧)が各設けられているが、高圧ポートからは隣接する低圧ポートにクリアランス部を経て常時圧油がリークする。したがって、この液圧式打撃装置での切換弁機構では、バルブ54の内外径で圧油がそれぞれリークするので、摺接部が内径または外径のどちらかだけの場合に比べてそのリーク量は2倍近くになる。
【0011】
ここで、この圧油のリーク量については、切換弁54の径が大きい程その摺接面積、つまりクリアランス量が大きくなり、リーク量も増加する。すなわち、この切換弁機構では、切換弁54の内外径の両方に摺接部を有しており、切換弁54が径大であることから圧油のリーク量が多く打撃効率が低下するという問題がある。
さらに、この切換弁54では、その内外径と各段差の同軸度、および真円度を高度に制御して加工する必要があり、また、切換弁54の側壁に弁制御孔69および給排油切換孔63を多数設ける必要があることから加工コストが嵩むという問題がある。
【0012】
そこで、本出願人は切換弁の径小化による打撃効率の向上を目的として、バルブプラグとシリンダとの間に弁室を形成して、バルブプラグと切換弁とをピストンとは非同軸に配設した液圧式打撃装置の切換弁機構を提案している(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】実開昭61−169587号公報
【特許文献2】特公平5−16990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載の液圧式打撃装置においても、バルブプラグとシリンダとの間に弁室を形成しているので、バルブプラグ内の通路を経て後室に作動油を給排するという基本構成に変更はない。そのため、特許文献1と比較して切換弁機構の径小化はなされているものの、切換弁の内外径の摺接部からの圧油リークに由来する打撃効率の低下、および、切換弁の内外径を高精度に加工する必要があるため加工コストが嵩むという問題を解決する上で、未だ検討の余地がある。
【0014】
なお、このような油圧機器においては、シリンダ内に油圧通路を多数設けるのはそのレイアウト上の制約を解決しなければならず、また、その加工も難しい場合が多いので、油圧通路を削減することが好ましい。
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、打撃効率が高く、加工コストを低廉とし得る液圧式打撃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、大径部およびこの大径部の前後にそれぞれ設けられた小径部を有するピストンと、このピストンを内部に摺嵌してその軸方向の前後に前室および後室がそれぞれ画成されるシリンダと、このシリンダ内にピストンとは非同軸に形成される弁室と、この弁室内に摺嵌される切換弁と、を備え、前室が高圧回路に常時接続され、後室が前記切換弁の前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通されることによりピストンを前後進させて、打撃用のロッドをピストンで打撃可能に構成される液圧式打撃装置であって、前記切換弁は、弁大径部と、この弁大径部の前後端にそれぞれ設けられた弁小径部と、弁大径部および後端の弁小径部の間に配置されて当該切換弁の後方への移動を規制する弁後退規制部と、弁大径部の中央に設けられて後室と高圧回路とを連通させるための弁高圧供給溝と、弁大径部および弁後退規制部の間に設けられて後室と低圧回路とを連通させるための弁排油溝と、を備えてなる中実構造であり、前記弁室は、その前端の弁小径部側に画成された弁制御室と、その後端の弁小径部側に画成された弁規制室と、を有し、弁規制室が高圧回路に常時接続され、弁制御室がピストンの前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通可能に構成されていることを特徴としている。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、この切換弁は、例えば上述の各特許文献での切換弁に比べて、小径の中実円筒形状とすることができる。そのため、切換弁の前後進に要する作動油が少量で済むので打撃効率を向上させることができる。また、切換弁の摺接部は外径だけで、かつ、クリアランス量も少ないので圧油のリーク量が減り打撃効率が向上する。さらに、内径加工や多数の側面穴を開削する必要がないので加工コストも低減される。なお、本明細書において「切換弁が中実構造である」とは、切換弁が、その軸方向での両端面間を連通する貫通孔を有しない構造であることをいう。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、大径部およびこの大径部の前後にそれぞれ設けられた小径部を有するピストンと、このピストンを内部に摺嵌してその軸方向の前後に前室および後室がそれぞれ画成されるシリンダと、このシリンダ内にピストンとは非同軸に形成される弁室と、この弁室内に摺嵌される切換弁と、を備え、前室が高圧回路に常時接続され、後室が前記切換弁の前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通されることによりピストンを前後進させて、打撃用のロッドをピストンで打撃可能に構成される液圧式打撃装置であって、前記切換弁は、弁大径部と、この弁大径部の前後端にそれぞれ設けられた弁小径部と、弁大径部および後端の弁小径部の間に配置されて当該切換弁の後方への移動を規制する弁後退規制部と、弁大径部の中央に設けられて後室と高圧回路とを連通させるための弁高圧供給溝と、弁大径部および弁後退規制部の間に設けられて後室と低圧回路とを連通させるための弁排油溝と、後端の弁小径部の側面に一端側が開口するとともに弁高圧供給溝に他端側が開口してこれら開口が相互に連通してなる弁連通孔と、を備えてなる中実構造であり、前記弁室は、その前端の弁小径部側に画成された弁制御室と、その後端の弁小径部側に画成された弁規制室と、を有し、弁制御室がピストンの前後進によって高圧回路と低圧回路とを交互に切換えて連通可能に構成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同等の作用効果を得るとともに、シリンダ側の油圧通路を一部削減することができるので加工コストをさらに低減する上で好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、打撃効率を高めるとともに、加工コストを低減し得る液圧式打撃装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る液圧式打撃装置の第一実施形態を説明する図である。
この液圧式打撃装置は、同図に示すように、シリンダ1と、ピストン2と、を備えて構成されている。
【0021】
ピストン2は、その略中央に大径部2aを有しており、その大径部2aの前後には、小径部2b、2cがそれぞれ設けられている。そして、このピストン2が、シリンダ1の内部に摺嵌されることで、シリンダ1内に前室3と後室4とがそれぞれ画成されている。前室3は、前室高圧ポート8を介して高圧回路6へ常時連通されている。一方、後室4には、後室高圧ポート9と後室低圧ポート10とがそれぞれ付設されており、後述の切換弁5の前後進切換えによって、これら後室高圧ポート9と後室低圧ポート10とを高圧回路6と低圧回路7とにそれぞれ交互に連通可能になっている。
ここで、この液圧式打撃装置では、そのシリンダ1内に、ピストン2と非同軸に略並行して弁室11が形成されており、この弁室11内に略中実円筒状の切換弁5が摺嵌されている。
【0022】
詳しくは、この切換弁5は、中実の円筒体であり、その軸方向の中央に弁大径部21を有している。この弁大径部21の径は、弁室11がピストン2と非同軸に設けられているので、ピストン2の大径部2aの径よりも小さく設定可能であり、図1に示す例ではピストン2の約半分の径になっている。そして、この弁大径部21の前後端に弁小径部22、23がそれぞれ設けられている。一方、弁室11は、この切換弁5で区画されることによって、その前端部に弁制御室15が、その後端部に弁規制室16がそれぞれ画成されている。また、この弁室11には、弁制御室15と弁規制室16との間に、後室高圧ポート9および後室低圧ポート10がそれぞれ付設されており、後室高圧ポート9と後室低圧ポート10の間には給排油切換ポート14が設けられている。
【0023】
そして、切換弁5の前端の小径部22は弁制御室15の内径と摺接可能な径寸法になっており、また、後端の小径部23は弁規制室16の内径と摺接可能な径寸法になっている。さらに、前端の弁小径部22の径寸法は、後端の弁小径部23の径寸法よりも大きく設定されている。すなわち、前端の弁小径部22の受圧面積は後端の弁小径部23の受圧面積よりも大きく設定されており、弁制御室15と弁規制室16の両方に高圧油が供給されると受圧面積差によって切換弁5は後退するようになっている。
【0024】
また、切換弁5は、その弁大径部21と後端の弁小径部23との間に、当該切換弁5の後方への移動を規制する弁後退規制部26を備えて構成されている。なお、切換弁5の弁大径部21と前端側の弁小径部22との間には段差が設けてあり、この段差によって当該切換弁5の前方への移動を規制可能になっている。
また、切換弁5は、その弁大径部21に、切換弁5が後退したときに給排油ポート12、給排油回路13、給排油切換ポート14および後室高圧ポート9をそれぞれ介して後室4と高圧回路6とを連通させる弁高圧油供給溝24が設けられている。さらに、弁大径部21と弁後退規制部26との間には、切換弁5が前進したときに給排油ポート12、給排油回路13、給排油切換ポート14および後室低圧ポート10をそれぞれ介して後室4と低圧回路7とを連通させる弁排油溝25が設けられている。そして、この弁排油溝25と弁後退規制部26の外径との間には弁後退規制部26側に向けて拡径する略円錐状の傾斜面27が形成されている。
【0025】
さらに、シリンダ1内でのピストン2との摺接面には、ピストン2が後進したときに前室3と連通する位置に、切換弁5の前後進切換えを行う弁制御室15と弁制御回路17とを介して接続される弁前進制御ポート18が設けられている。また、その後方に所定の距離を隔てた位置には、弁制御室15と弁制御回路17を介して接続される弁後進制御ポート19が設けられている。そして、この弁後進制御ポート19の後方には、所定の距離を隔てた位置に低圧回路7に連通される排油ポート20が設けられ、さらに、ピストン2が前進したときに弁後進制御ポート19と排油ポート20とを連通させる排油溝2dが、ピストン2の大径部2aの外周に設けられている。そして、弁規制室16は、高圧連通回路16aを介して高圧回路6と常時連通しており、切換弁5を常に前方に付勢可能になっている。また、弁制御室15には、弁制御回路17がピストン2の前後進によって高圧回路6と低圧回路7に交互に連通するのに伴い切換弁5を後方へと付勢する圧油が断続的に作用するようになっている。
【0026】
次に、この液圧式打撃装置の作用・効果について説明する。
上述した構成からなるこの液圧式打撃装置は、切換弁5が後方にある状態では、後室4が給排油ポート12、給排油回路13、給排油切換ポート14および後室高圧ポート9を介して高圧回路6と連通されているので、後室4と前室3とは共に高圧回路6と連通する。
【0027】
このとき、ピストン2の後室4側の受圧面積は前室3側の受圧面積より大となっているので、ピストン2は前進する。そして、この状態では、弁前進制御ポート18が前室3側に開かれており、弁後進制御ポート19はピストン2の大径部2aで閉じられているので、弁制御回路17を介して前室3と連通している弁制御室15は高圧になっている。したがって、弁規制室16と弁制御室15とは共に高圧であり、切換弁5は後方に保持されている。
【0028】
次いで、ピストン2が前進すると、ピストン2の大径部2aで弁前進制御ポート18が閉じられ、弁後進制御ポート19が排油溝2dを介して排油ポート20と連通するので、弁制御回路17、弁制御室15が低圧となる。このとき、弁規制室16は高圧のままであるから、切換弁5は前進する。切換弁5が前進すると後室4が給排油ポート12、給排油回路13、給排油切換ポート14および後室低圧ポート10を介して低圧回路7に連通する。これにより、前進したピストン2の先端は、打撃用のロッドRの後端を打撃して前進を停止し、後室4が低圧となっているため後退を開始する。
【0029】
次いで、ピストン2が後退すると、弁前進制御ポート18が前室3側に開かれ、弁後進制御ポート19がピストン2の大径部2aで閉じられるので、弁制御回路17を介して前室3と連通した弁制御室15は再び高圧となって切換弁5が後退する。そして、切換弁5が後退すると、後室4が給排油ポート12、給排油回路13、給排油切換ポート14および後室高圧ポート9を介して高圧回路6と連通し、これにより、後室4の圧力が上昇して、慣性により後退を続けようとするピストン2は制動を受け、後退の運動エネルギーが高圧油の形でアキュムレータ(図示略)に蓄積される。そして、後退を停止したピストン2は再び前進行程に入り、以後同様のサイクルを繰り返すことができる。
【0030】
特に、この液圧式打撃装置によれば、その切換弁機構での切換弁5が、例えば上述の各特許文献での切換弁に比べて、小径の中実円筒形状で構成されている。そのため、この切換弁5は、その前後進に要する作動油を少量で済ませることができる。したがって、液圧式打撃装置の打撃効率を向上させることができる。また、切換弁5の摺接部はその外径だけであり、かつ、そのクリアランス量も少ないので圧油のリーク量を減らして、液圧式打撃装置の打撃効率を向上させることができる。さらに、その内径加工や多数の側面穴を開削する必要がないので加工コストも低減させることができる。
【0031】
次に、本発明に係る液圧式打撃装置の第二実施形態について説明する。なお、この第二実施形態は、上述の第一実施形態に対し、弁室11の弁規制室16に高圧回路6を連通するための高圧連通回路16aが削除されている点、および後述する連通孔38、39が開削されている点以外は、シリンダ1とピストン2との間の各種ポート、および弁室11の各種ポートは第一実施形態と共通しており、そのピストンおよびバルブの作動についても、第一実施形態と同様であるので、その図示および説明については適宜これを省略する。
【0032】
図2は本発明に係る液圧式打撃装置の第二実施形態を説明する図であり、同図では、その切換弁機構の要部を拡大して示している。
同図に示すように、この切換弁30は、その基本構成は上述の第一実施形態と共通しており、その中央に弁大径部31、弁大径部31の前後に弁小径部32、33、および弁大径部31と後端の弁小径部33との間に切換弁30の後方への移動を規制する弁後退規制部36を備えてなる円筒形状であり、連通孔38、39が開削されている部分以外は基本的に中実体である。すなわち、この切換弁30は、その軸方向での両端面間を連通する貫通孔を有しない中実構造である。
【0033】
この切換弁30の前方への移動を規制するのは、弁大径部31と前端側の弁小径部32との間の段差である。切換弁5の弁大径部31の径は、弁室11がピストン2と非同軸に設けられているので、上述の第一実施形態同様に、ピストン2の大径部2aの径よりも小さく設定可能であり、ピストン2の約半分の径になっている。
切換弁30の前端の弁小径部32は弁制御室15の内径と摺接し、後端の弁小径部33は弁規制室16の内径と摺接しており、前端の小径部32の径が後端の弁小径部33の径よりも大きく設定されている。すなわち、前端の小径部32の受圧面積は後端の小径部33の受圧面積よりも大きいので、弁制御室15と弁規制室16の両方に高圧油が供給されると受圧面積差によって切換弁30は後退可能になっている。
【0034】
そして、切換弁30の弁大径部31には、切換弁30が後退したとき給排油ポート12、給排油回路13、給排油切換ポート14および後室高圧ポート9を介して後室4と高圧回路6を連通させる弁高圧油供給溝34が設けられており、弁大径部31と弁後退規制部36との間には、切換弁30が前進したとき給排油ポート12、給排油回路13、給排油切換ポート14および後室低圧ポート10を介して後室4と低圧回路7を連通させる弁排油溝35が設けられている。この弁排油溝35と弁後退規制部36の外径との間には上記同様の傾斜面37が形成されている。
【0035】
さらに、この切換弁30には、その後端の弁小径部33の側面に開口する弁連通孔38が設けられている。そして、この弁連通孔38と連通して弁高圧供給溝34の軸直方向に向けて開口する弁連通孔39が設けられており、弁規制室16は、これら弁連通孔38、39および後室高圧ポート9を介して高圧回路6と連通されており、切換弁30を常に前方に付勢するようになっている。
【0036】
このような構成からなるこの第二実施形態の液圧式打撃装置によれば、上記第一実施形態と同等の作用効果を奏するとともに、例えば上記第一実施形態での構成に比べて、シリンダ内の油圧通路の一部を削減可能なので、その加工コストをさらに低減することが可能となる。
なお、本発明に係る切換弁機構、およびこれを備える液圧式打撃装置は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る液圧式打撃装置の第一実施形態を説明する図である。
【図2】本発明に係る液圧式打撃装置の第二実施形態を説明する図であり、同図では、その切換弁機構の要部を拡大して示している。
【図3】従来の液圧式打撃装置での切換弁機構の説明図であり、同図(a)はその全体図、同図(b)は同図(a)の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0038】
1 シリンダ
2 ピストン
2a 大径部
2b 小径部
2c 小径部
2d 排油溝
3 前室
4 後室
5 切換弁
6 高圧回路
7 低圧回路
8 前室高圧ポート
9 後室高圧ポート
10 後室低圧ポート
11 弁室
12 給排油ポート
13 給排油回路
14 給排油切換ポート
15 弁制御室
16 弁規制室
17 弁制御回路
18 弁前進制御ポート
19 弁後進制御ポート
20 排油ポート
21 弁大径部
22 弁小径部
23 弁小径部
24 弁高圧油供給溝
25 弁排油溝
26 弁後退規制部
27 傾斜面
30 切換弁
31 弁大径部
32 弁小径部
33 弁小径部
34 弁高圧油供給溝
35 弁排油溝
36 弁後端規制部
37 傾斜面
38 弁連通孔
39 弁連通孔
R ロッド
【出願人】 【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
【出願日】 平成18年8月3日(2006.8.3)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也

【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭

【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼


【公開番号】 特開2008−36746(P2008−36746A)
【公開日】 平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願番号】 特願2006−212447(P2006−212447)