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【発明の名称】 電動工具
【発明者】 【氏名】大久保 貴啓

【氏名】鈴裏 司

【要約】 【課題】打撃子の駆動による振動を低減し、作業性を向上させた電動工具の提供。

【構成】駆動軸22を有するモータ21と、少なくともモータ21を内蔵するケーシング部2と、モータ21により駆動されると共に打撃子56を駆動するピストン54と、ピストン54と駆動軸22との間に配置されて駆動軸22と平行に延び駆動軸22により回転駆動される中間軸部41と、中間軸部41上に配置されて中間軸部41と選択的に連動可能であり、中間軸部41の回転運動を往復運動に変換する運動変換機構とを備え、運動変換機構は、第一運動変換機構を有し、ピストン54は第一運動変換機構に接続されて中間軸部41の軸方向に往復運動可能に構成され、更にピストン54の往復運動と逆位相で中間軸部41の軸方向に往復運動可能な第二ウェイト55を備えた電動工具を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を備えたモータと、
少なくとも該モータを内蔵するケーシング部と、
該駆動軸により駆動されると共に打撃子を駆動するピストンと、
該ピストンと該駆動軸との間に配置されて該駆動軸と平行に延びると共に、該駆動軸により回転駆動される中間軸と、
該中間軸上に配置されて該中間軸と連動可能であると共に、該駆動軸の回転運動を往復運動に変換する運動変換機構とを備え、
該運動変換機構は、第一運動変換機構を有し、該ピストンは該第一運動変換機構に接続されて該中間軸の軸方向に往復運動可能に構成され、
更に該ピストンの往復運動と逆位相で該中間軸の軸方向と略平行に往復運動可能なカウンタウェイトを備えたことを特徴とする電動工具。
【請求項2】
該カウンタウェイトは、該ピストンと略同一質量であることを特徴とする請求項1に記載の電動工具。
【請求項3】
該運動変換機構は、第二運動変換機構を有し、
該カウンタウェイトは、該第二運動変換機構に接続されて、該ピストンの往復運動と逆位相に往復運動可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2載のいずれかに記載の電動工具。
【請求項4】
該第一運動変換機構と該第二運動変換機構とは、該カウンタウェイトと該ピストンとのそれぞれの重心を結ぶ直線と平行な直線上に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電動工具。
【請求項5】
該カウンタウェイトと該ピストンとは、それぞれの重心位置が、該中間軸の軸方向と平行な直線上に位置するように配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一に記載の電動工具。
【請求項6】
該第一運動変換機構と該第二運動変換機構とは、略同一形状に構成されていることを特徴とする請求項3または請求項4のいずれかに記載の電動工具。
【請求項7】
該第一運動変換機構は、該中間軸の軸方向に沿って往復揺動する第一端部と、該中間軸に関して該第一端部と反対側に位置する第二端部とを有し、
該ピストンは該第一端部に接続されて往復運動し、
該第二端部には該カウンタウェイトが接続されて往復駆動されることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の電動工具。
【請求項8】
該ピストンの運動量と、該カウンタウェイトの運動量と、該第一端部の運動量と、該第二端部の運動量との和は、略0になるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の電動工具。
【請求項9】
少なくとも該モータと該ケーシング部とから構成される本体に加わった振動に起因し該ピストンの往復運動方向に往復運動するウェイトが設けられた動吸振器を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載の電動工具。
【請求項10】
該ケーシング部は、該モータを内蔵するモータケーシングと、該ピストンと該中間軸と該運動変換機構と該カウンタウェイトとを内蔵するギアケーシングとを有し、
該動吸振器は、該モータケーシングと該ギアケーシングとの間に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項11】
該動吸振器は、該ケーシング部の外周に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の電動工具。
【請求項12】
該動吸振器は、該ケーシング部に連結される保持部と、該保持部から延出されて該中間軸の軸方向と略直交する方向に延出された弾性変形部とを備え、該ウェイトは該弾性変形部に付設されていることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一に記載の電動工具。
【請求項13】
該動吸振器は、該ケーシング部に連結される保持部と、該保持部内に配置され該中間軸の軸方向と平行な方向に延びる弾性変形部とを備え、該ウェイトは該保持部内に配置されて該弾性変形部部に支持されていることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれか一に記載の電動工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具に関し、特に、制振機構を有する電動工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から制振機構を有する電動工具が提案されている。例えば、互いに接続されたハンドル部、モータケーシング、及びギヤケーシングからなるケーシングを備える電動工具では、モータケーシングに電動モータが収納されている。ギヤケーシング内には、電動モータの回転運動を電動モータの回転軸と同方向の往復運動に変換する運動変換機構が設けられている。打撃ケーシング内には、電動モータの回転軸と同方向に延びるシリンダが設けられている。シリンダの先端側には工具保持部が設けられ、先端工具が着脱自在に取り付けられる。
【0003】
また、シリンダには、その内周に摺動可能にピストンが設けられている。ピストンは、運動変換機構により、シリンダの内周に沿って往復運動される。シリンダ内の先端側には打撃子が、シリンダの内周に摺動可能に設けられている。シリンダ内であってピストンと打撃子との間には空気室が画成されている。打撃子の先端側には、中間子がシリンダ内に前後方向に摺動可能に設けられている。上述の先端工具は、中間子の先端側に位置している。
【0004】
そして、電動モータの回転駆動力は、運動変換機構に伝達され、運動変換機構により、ピストンは、シリンダ内において往復運動される。ピストンの往復運動により空気室中の空気の圧力は上昇及び低下を繰り返し、打撃子に打撃力を付与する。打撃子が前進して中間子の後端に衝突し、中間子を介して打撃力が先端工具に伝達される。これにより、被削材は破砕される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−040880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の電動工具では、打撃子の駆動に起因する振動が発生し、この振動により電動工具の作業性が低下していた。
【0006】
そこで、本発明は、打撃子の駆動による振動を低減し、作業性を向上させた電動工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明は、駆動軸を備えたモータと、少なくとも該モータを内蔵するケーシング部と、該駆動軸により駆動されると共に打撃子を駆動するピストンと、該ピストンと該駆動軸との間に配置されて該駆動軸と平行に延びると共に、該駆動軸により回転駆動される中間軸と、該中間軸上に配置されて該中間軸と連動可能であると共に、該駆動軸の回転運動を往復運動に変換する運動変換機構とを備え、該運動変換機構は、第一運動変換機構を有し、該ピストンは該第一運動変換機構に接続されて該中間軸の軸方向に往復運動可能に構成され、更に該ピストンの往復運動と逆位相で該中間軸の軸方向と略平行に往復運動可能なカウンタウェイトを備えた電動工具を提供する。
【0008】
このような構成によると、カウンタウェイトにより、ピストンの往復移動に係る振動を相殺して低減することができる。
【0009】
上記構成の電動工具において、該カウンタウェイトは、該ピストンと略同一質量であることが好ましい。このような構成によると、カウンタウェイトによりピストンの往復移動に係る振動をより好適に相殺することができる。
【0010】
また該運動変換機構は、第二運動変換機構を有し、該カウンタウェイトは、該第二運動変換機構に接続されて、該ピストンの往復運動と逆位相に往復運動可能に構成されていてもよい。
【0011】
このような構成によると、カウンタウェイトにより、好適にピストンの振動を相殺することができる。
【0012】
また該第一運動変換機構と該第二運動変換機構とは、該カウンタウェイトと該ピストンとのそれぞれの重心を結ぶ直線と平行な直線上に配置されていてもよく、該カウンタウェイトと該ピストンとは、それぞれの重心位置が、該中間軸の軸方向と平行な直線上に位置するように配置されていてもよい。
【0013】
このような構成によると該第一運動変換機構と該第二運動変換機構、カウンタウェイトとピストンとを同軸上に配置できるため、効率よくピストンに係る振動を相殺することができる。
【0014】
また第一運動変換機構と該第二運動変換機構とは、略同一形状に構成されていてもよい。このような構成によると、より好適にピストンに係る振動を相殺することができる。
【0015】
また該第一運動変換機構は、該中間軸の軸方向に沿って往復揺動する第一端部と、該中間軸に関して該第一端部と反対側に位置する第二端部とを有し、該ピストンは該第一端部に接続されて往復運動し、該第二端部には該カウンタウェイトが接続されて往復駆動されていてもよい。
【0016】
このような構成によると、ピストンとカウンタウェイトとを、中間軸に関してそれぞれ反対側の位置に配置することができ、ケーシング部の全長を短縮できる。
【0017】
また該ピストンの運動量と、該カウンタウェイトの運動量と、該第一端部の運動量と、該第二端部の運動量との和は、略0になるように構成されていてもよい。このような構成によると、ピストンに係る振動をカウンタウェイトで好適に相殺することができる。
【0018】
また該電動工具は、少なくとも該モータと該ケーシング部とから構成される本体に加わった振動に起因し該ピストンの往復運動方向に往復運動するウェイトが設けられた動吸振器を更に備えることが好ましい。
【0019】
このような構成によると、カウンタウェイトで相殺できなかったピストンに係る振動や、その他の要因により発生する振動を低減することができる。特に、空気室の圧力変動により打撃子が往復動することにより本体に発生する振動、打撃子が往復動することにより発生する振動を低減することが可能となり、打撃動作時の振動を低減することができる。
【0020】
また該ケーシング部は、該モータを内蔵するモータケーシングと、該ピストンと該中間軸と該運動変換機構と該カウンタウェイトとを内蔵するギヤケーシングとを有し、該動吸振器は、該モータケーシングと該ギヤケーシングとの間に配置されていてもよい。
【0021】
このような構成によれば、動吸振器を、モータケーシングとギヤケーシングとの間に配置することができ、別ユニットとして構成することができる。またモータケーシンやとギヤケーシングの径を過度に大きくせずに構成することができる。
【0022】
また該動吸振器は、該ケーシング部の外周に配置されていてもよい。このような構成によると電動工具の長さを増加させずに動吸振器を配置することができる。
【0023】
また該動吸振器は、該ケーシング部に連結される保持部と、該保持部から延出されて該中間軸の軸方向と略直交する方向に延出された弾性変形部とを備え、該ウェイトは該弾性変形部に付設されていてもよい。
【0024】
また該動吸振器は、該ケーシング部に連結される保持部と、該保持部内に配置され該中間軸の軸方向と平行な方向に延びる弾性変形部とを備え、該ウェイトは該保持部内に配置されて該弾性変形部部に支持されていてもよい。
【0025】
このような構成によると、ウェイトが電動工具に発生する振動に応じて弾性変形部の付勢力に逆らって往復運動することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電動工具によれば、作業時に発生する振動を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の電動工具を打撃工具に適用した第1の実施の形態について、図1乃至図4に基づき説明する。打撃工具1は、互いに接続されたハンドル部10及びモータケーシング20と、ウェイトケーシング30と、ギヤケーシング40とを含んで構成されるケーシング部2を外殻として構成されている。
【0028】
ハンドル部10は、モータケーシング20に、モータケーシング20の反ウェイトケーシング30側位置の側面から延出されて設けられている。ハンドル部10には電源ケーブル11が取り付けられていると共に、スイッチ機構12が内蔵されている。スイッチ機構12には使用者により操作可能なトリガ13が機械的に接続されている。電源ケーブル11はスイッチ機構12を外部電源(図示せず)に接続し、トリガ13を操作することにより、スイッチ機構12と電源との接続と断続とが切換えられる。尚、打撃工具1において、ケーシング部2の長手方向においてハンドル部10が設けられている側を後側と定義し、長手方向反対側を前側と定義する。またハンドル部10のケーシング部2からの延出方向であって前後方向と略直交する方向を下側と定義し、反下側を上側と定義する。
【0029】
モータケーシング20は樹脂成型品で、ハンドル部10と一体成型されている。モータケーシング20内には電動モータ21が収納されている。電動モータ21は駆動軸である出力軸部22を備え、回転駆動力を出力している。また出力軸部22の前側には、駆動軸の長さを延長し、ウェイトケーシング30を貫通している延長軸部22Aが設けられている。延長軸部22Aは、後述の軸受30A、軸受40Cにより軸支され、その前側先端がギヤケーシング40内に位置している。また延長軸部22Aのギヤケーシング40内に位置している前側先端部分には、第一ギヤ22Bが設けられている。
【0030】
ウェイトケーシング30は、モータケーシング20の反ハンドル部10側となる端面に設けられて動吸振器を構成している。ウェイトケーシング30のモータケーシング20との接合部分には、軸受30Aが設けられ延長軸部22Aを回転可能に軸支している。
【0031】
また、ウェイトケーシング30内には、第一ウェイト31が配置されている。図2に示されるように、第一ウェイト31は、一対の接続部材32、32と、一対のウェイト支持部材33、33とによりウェイトケーシング30内に支持されている。具体的には、一対の接続部材32、32がウェイトケーシング30内において、出力軸部22の軸方向と直交する上下方向の一端部と他端部とに配置され、一対の接続部材32、32の間に一対のウェイト支持部材33、33のそれぞれの一端と他端とが固定されて接続される。そして一対のウェイト支持部材33、33の一端と他端との略中間位置に第一ウェイト31がネジ33A、33Aにより固定されて配置される。
【0032】
一対のウェイト支持部材33、33は、板バネにより構成されており、その両端は接続部材32、32によりウェイトケーシング30に固定されている。また、一対のウェイト支持部材33、33の略中間には第一ウェイト31が配置されている。故に一対のウェイト支持部材33、33は、接続部材32、32位置を節、第一ウェイト31位置を腹として振動することができる。
【0033】
第一ウェイト31には、ウェイトケーシング30がモータケーシング20に取り付けられた際に出力軸部22と対向する位置に、挿通孔31aが形成されている。挿通孔31aには、延長軸部22Aが挿通されている。また、打撃工具1の重心Gは、ウェイトケーシング30内に位置している。
【0034】
ギヤケーシング40はウェイトケーシング30の反モータケーシング20側に設けられている。ギヤケーシング40は、ウェイトケーシング30と接続され略筒状をなして最外殻となる第一ギヤケーシング40Aと、第一ギヤケーシング40A内に配置されて後述の第二ウェイト55及びピストン54を摺動可能に支持する第二ギヤケーシング40Bとから構成されている。
【0035】
第二ギヤケーシング40Bには前述の軸受40Cが設けられており、軸受40Cにより延長軸部22Aが回転可能に支持されている。第一ギヤケーシング40Aと第二ギヤケーシング40Bとによって、後述の回転伝達機構を収容する機構室である減速室40aが画成されている。また第二ギヤケーシング40B内であって後述の第二ウェイト55が配置される個所には、第二ウェイト55を摺動可能に支持する一対の溝40b、40bが形成されている(図3)。
【0036】
第一ギヤケーシング40A内であって第二ギヤケーシング40Bの下方側には、中間軸部41が配置されている。中間軸部41は、出力軸部22と平行であり、軸受41B等を介して第一ギヤケーシング40Aと第二ギヤケーシング40Bとにより、その軸心を中心に回転可能に支承されている。また、第一ギヤケーシング40Aの、後述する工具保持部15近傍には、サイドハンドル16が設けられている。
【0037】
中間軸部41の後側となる電動モータ21側端部には、第一ギヤ22Bと噛合する第二ギヤ41Aが中間軸部41と同軸固定されている。中間軸部41の前側には中間軸部41と供回りし、かつ中間軸部41の軸方向に摺動可能な第一クラッチ42及び第二クラッチ43が、第二ギヤ41A側からこの順に並んで配置されている。また第二クラッチ43の反第一クラッチ42側である前側には、後述の第四ギヤ44Aと噛合可能な第三ギヤ43Aが設けられている。
【0038】
第一ギヤケーシング40A内であって中間軸部41の他端側かつ上側近傍位置には、シリンダ44が設けられている。シリンダ44は中間軸部41と平行に延び、第二ギヤケーシング40Bに軸受40D等により回転可能に支承されている。シリンダ44の外周であって第三ギヤ43A近傍には第四ギヤ44Aがシリンダ44と同軸回転可能に固定されている。第三ギヤ43Aと第四ギヤ44Aとの噛合により、シリンダ44はその軸心を中心としてギヤケーシング40に対して回転可能である。
【0039】
シリンダ44は、内部に空間44aが画成されており、空間44aはシリンダ44の前側及び後側でそれぞれ開口している。シリンダ44後端の開口部分から空間44a内にピストン54が往復方向及び周方向に摺動可能に配置されている。シリンダ44の前側には図示せぬ先端工具の装着箇所となる工具保持部15が設けられている。工具保持部15では、シリンダ44の前側の開口から空間44a内に図示せぬ先端工具を挿入可能となっており空間44a内に挿入された先端工具を固定可能となっている。
【0040】
ピストン54は、筒部54Aと接続部54Bとから一体に構成されている。筒部54Aは前側が開口し後側が閉塞された略円筒状に構成されており、内部に空気室54aが画成されている。空気室54aを画成する壁部分であってピストン54の側面部分には、複数の空気孔54bが形成されている。また筒部54Aの外径は、空間44aの後端側の内径と略同一に構成されている。接続部54Bは筒部54Aの後端側に設けられており、後述の第一腕部52Aと連結されている。
【0041】
ピストン54の空気室54a内には、打撃子56が往復摺動可能に配置されている。打撃子56は、ピストン54が後側から前側へと移動した際に、空気室54a内の圧縮された空気の圧力により、前側へと移動可能に構成されている。またシリンダ44の空間44a内において、ピストン54と工具保持部15との間の部分には、打撃子56及び工具保持部15で保持された図示せぬ先端工具とそれぞれに接触可能な中間子57が摺動可能に配置されている。よって打撃子56が中間子57を打撃した際に、その打撃力は中間子57を介して図示せぬ先端工具に加えられる。
【0042】
中間軸部41において、第二ギヤ41Aと第一クラッチ42との間には、カム部51が設けられている。カム部51は、中間軸部41の軸方向に並んで第一クラッチ42側に略半球状の第一カム51Aと第二ギヤ41A側に第二カム51Bとを備えており、中間軸部41とは通常非接続となっている。よって後述の第一クラッチ42と接続されない限り、カム部51が中間軸部41と供回りすることはない。
【0043】
第一カム51Aと第二カム51Bとは、中間軸部41の軸と直交する平面に関して対称な形状を成しており、その表面に中間軸部41の軸と交差する方向に球面外周全周に亘る溝51a、51bがそれぞれ形成されている。第一カム51Aと第二カム51Bとにはそれぞれ同形状の第一運動変換部材52、第二運動変換部材53が設けられている。第一運動変換部材52は、略環状に構成され、環状の内部に複数のボール52Bを備え、このボール52Bが溝51aと係合して第一カム51Aに取り付けられている。第一運動変換部材52の上方に位置する環状の側面からは第一端部である第一腕部52Aが延出されピストン54の後端部分と連結されている。この第一カム51Aと第一運動変換部材52とボール52Bとから第一運動変換機構が構成される。
【0044】
第二運動変換部材53も第一運動変換部材52と同様に複数のボール53Bが第二カム51Bの溝51bに挿入されて取り付けられ、第二端部である第二腕部53Aを備えている。第二腕部53Aには、第二ウェイト55が接続されている。この第二カム51Bと第二運動変換部材53とボール53Bとから第二運動変換機構が構成される。よって第一運動変換機構と第二運動変換機構とは、それぞれ中間軸部41上に配置されて略同形状構成されているため、第一運動変換機構と第二運動変換機構は、中間軸部41の軸と平行な軸上に配置されている。
【0045】
第二ウェイト55は、ピストン54と同質量になるように構成されており、図3に示されるように、その両側の一部がそれぞれ溝40b、40b内に挿入されて第二ギヤケーシング40B内を摺動可能となっている。また第二ウェイト55は、その重心位置からピストン54の重心位置に向かう軸が、中間軸部41の軸方向と平行な直線上に位置するように構成されて配置されている。
【0046】
第一ギヤケーシング40Aの下部であって第一クラッチ42及び代にクラッチ43近傍位置には、チェンジレバ45設けられている。チェンジレバ45は、使用者が操作することにより、第一クラッチ42及び第二クラッチ43をそれぞれ前後に摺動させることができる。より詳しくは、第一クラッチ42をチェンジレバ45で後側に摺動させることにより、第一クラッチ42とカム部51とが連結され、カム部51が第一クラッチ42と供回りする。また第二クラッチ43をチェンジレバ45で前側に摺動させることにより、第三ギヤ43Aと第四ギヤ44Aとが噛合し、シリンダ44が第二クラッチ43と供回りする。第一クラッチ42と第二クラッチ43とは中間軸部41と常に供回りするため、チェンジレバ45により、中間軸部41とカム部51及びシリンダ44との接続・非接続を制御することができる。
【0047】
上記構成の打撃工具1において使用者が作業をする場合には、先ずチェンジレバ45により、先端工具を回転駆動するか、打撃駆動するか、若しくは両方を行うか選択する。
【0048】
先端工具を回転・打撃駆動する場合には、第一クラッチ42とカム部51とを連結すると共に、第二クラッチ43の第三ギヤ43Aとシリンダ44の第四ギヤ44Aとを交合させる。
【0049】
シリンダ44が回転することにより、シリンダ44の先端に取り付けられた図示せぬ先端工具はシリンダ44と一緒に回転することができる。
【0050】
またカム部51も中間軸部41周りを回転するが、第一運動変換部材52はボール52Bを介して第一カム51Aに接続されているため、第一運動変換部材52が第一カム51Aと共に中間軸部41周りを回転することはない。しかしボール52Bが挿入されている溝51aが中間軸部41と交差して形成されているため、第一腕部52Aが中間軸部41の軸方向に往復揺動する。よって第一腕部52Aに接続されたピストン54も往復運動する。ピストン54が後側から前側に移動する場合には、筒部54Aと打撃子56とにより画成される空気室54a内の空気が圧縮され、その反力により打撃子56が急激に前側に移動し、中間子57を打撃することにより図示せぬ先端工具に打撃力が加えられる。
【0051】
第二運動変換部材53も第一運動変換部材52と同様に回転せずに揺動するが、第二カム51Bは第一カム51Aと対称に構成されているため、その往復揺動の位相は第一運動変換部材52の位相と逆位相になる。よって図1に示されるように、ピストン54が前側に移動する場合は、第二ウェイト55が後側へと移動し、図4に示されるようにピストン54が後側へと移動する場合は、第二ウェイト55は前側へと移動する。ピストン54と第二ウェイト55とは重心位置がその摺動方向と直交する方向において同位置にあり、かつ同質量である。また第一運動変換部材52と第二運動変換部材53とは同形状でピストン54と第二ウェイト55とのそれぞれの重心位置を結ぶ直線と平行な直線上にある。故に第二ウェイト55の運動量により、ピストン54に係る運動量を相殺し、ピストン54が往復運動することにより発生する振動を低減することができる。
【0052】
また打撃工具1の動作において、ピストン54の往復摺動に係る摺動以外にも、打撃子56の往復動に起因した振動が発生する。この振動がウェイトケーシング30を介して、接続部材32に伝達される。接続部材32に伝達された振動は、ウェイト支持部材33及び第一ウェイト31に伝達され、第一ウェイト31は、ピストン54の往復運動方向と同じ方向に振動する。この振動により、打撃子56の往復動に起因する打撃工具1の振動を更に低減することができ、打撃工具1の作業性を向上させることができる。
【0053】
第一ウェイト31は、ウェイトケーシング30内に配置したので、筒状をなすウェイトケーシング30の径方向の寸法をコンパクトに設計することができる。即ち、ケーシング部2の径を大きくせずに打撃工具1を構成することができる。これにより壁際の作業等が困難な場所であっても、作業性が低下するのを防止することができる。
【0054】
次に本発明の第二の実施の形態に係る電動工具について、図5及び図6に基づき説明する。図5に示される、第二の実施の形態に係る電動工具である打撃工具101は、動吸振器(第一の実施の形態のウェイトケーシング30に係る構成物)に係る構成以外は、第一の実施の形態に係る打撃工具1と同じであるため、符号に100を追加してその詳細な説明を省略する。
【0055】
打撃工具101を構成するギヤケーシング140の、最外殻部分となる第一ギヤケーシング140Aの下方には、図6に示されるように、一対のウェイトケーシング130、130が設けられている。一対のウェイトケーシング130、130は、何れも略同一の形状を成しているため、図5に示されている一方のウェイトケーシング130の説明を行い、他方のウェイトケーシング130説明については省略する。
【0056】
ウェイトケーシング130は、図6に示されるように、内部に前後方向と直交する断面が円形の空間130aを有している。空間130a内部には、図5に示されるように、第一ウェイト131と、一対のウェイト支持部材133、133が配置されている。第一ウェイト131は、空間130a内を前後方向に摺動可能に構成されている。一対のウェイト支持部材133、133は、何れもコイルバネより構成され、第一ウェイト131の前側と後側とに配置されて第一ウェイト131を弾性的に支持している。
【0057】
上記構成の打撃工具101において使用者が作業をする場合に、ピストン154の往復運動に係る振動は、ピストン154と略同質量で逆位相に往復運動する第二ウェイト155で相殺されて低減される。また打撃工具101の動作において、ピストン154の往復摺動に係る摺動以外にも、ピストン154により打撃され、図示せぬ先端工具に連続する中間子157を打撃する打撃子156の往復動に起因した振動が発生する。この振動が打撃子156を内蔵するシリンダ144及びシリンダ144を支持する第一ギヤケーシング140Aを介してウェイトケーシング130に伝達される。
【0058】
ウェイトケーシング130内の空間には第一ウェイト131が前後方向に摺動可能に配置されているため、ウェイトケーシング130に伝達された振動により、第一ウェイト131はウェイトケーシング130に対して前後方向に往復摺動する。しかし第一ウェイト131は、一対のウェイト支持部材133、133により弾性的に支持されているため、第一ウェイト131の往復摺動に係る運動エネルギーは一対のウェイト支持部材133、133で吸収される。よって打撃子156等に起因する打撃工具101の振動を、第一ウェイト131により低減すると共に、第一ウェイト131の往復運動により生じる振動を一対のウェイト支持部材133、133で吸収することができ、打撃工具101の作業性を向上させることができる。
【0059】
第二の実施の形態に係る打撃工具101では、ギヤケーシング140にウェイトケーシング130を設けている。これにより、打撃工具101の前後方向の長さを過度に長くすることなく、コンパクトにすることができる。またウェイトケーシング130は、他の場所、たとえばモータケーシング120や、ギヤケーシング140の上側等に取り付けることも考えられるが、図5に示されるように、ギヤケーシング140の下方位置に配置することが望ましい。この位置に配置することにより、壁際の作業等が困難な場所であっても、壁とウェイトケーシング140とが干渉することがないため、作業性が低下するのを防止することができる。
【0060】
次に本発明の第三の実施の形態に係る電動工具について、図7に基づき説明する。図7に示される第三の実施の形態に係る電動工具である打撃工具201は、運動変換機構(第一の実施の形態のカム部51及びこれに係る構成物)に係る構成以外は、第一の実施の形態に係る打撃工具1と同じ構成であるため、符号に200を追加して、その詳細な説明を省略する。
【0061】
カム部251は、電動モータ221の出力をシリンダ244及びピストン254に伝達する中間軸部241上であって、第二ギヤ241Aと第一クラッチ243との間に配置されており、第一クラッチ243と接続された場合のみ中間軸241と同軸回転可能に構成されている。カム部251には、略半球状のカム251Aが設けられており、カム251Aには、その表面に中間軸部241の軸と交差する方向に球面外周全周に亘る溝51aが形成されている。251Aには運動変換部材252が設けられている。運動変換部材252は、略環状に構成され、環状の内部に複数のボール252Bを備え、このボール252Bが溝51aと係合してカム251Aに取り付けられている。運動変換部材252の上方に位置する環状の側面からは第一端部である第一腕部252Aが延出されピストン254の後端部分と連結されている。また運動変換部材252の中間軸部241に関して第一腕部と反対側に位置する側面からは第二端部である第二腕部253Aが延出されており、後述の第二ウェイト255と連結されている。尚、第二腕部253Aの長さや重心位置等は、運動変換部材252の環状部分に関して、第一腕部252Aと必ずしも対称な位置にある必要はない。
【0062】
第二ウェイト255は、第一ギヤケーシング240A内であって中間軸部241を挟んでピストン254の反対側となる位置に前後方向に摺動可能に配置され、第二腕部253Aに接続されている。よって第二ウェイト255とピストン254とは、運動変換部材252を挟んで反対側の位置に配置されているため、互いに逆位相の動きをとる。また第二ウェイト255の質量は、運動変換部材252が駆動された際に第二ウェイト255の運動量と第二腕部253Aの運動量と第一腕部252Aの運動量とピストン254との和が0になるように予め調整されて構成されている。
【0063】
上記構成の打撃工具201において使用者が作業をする場合に、ピストン254の往復運動に係る振動は、ピストン254と逆位相に往復運動する第二ウェイト255で相殺されて低減される。この場合に第一腕部252Aと第二腕部252Bとの質量・重心位置の差により振動が発生することが考えられる。しかし第二ウェイト255の質量を調整することにより、上述のように運動量の和が0となっている。従って運動変換部材252により駆動されるピストン254や第二ウェイト255に係る振動は抑制されて低減される。
【0064】
また第二ウェイト255では吸収されない、打撃子256等に起因する振動は、第一の実施の形態と同様に第一ウェイト231により抑制されて低減されるため、打撃工具201の作業性を向上させることができる。
【0065】
第三の実施の形態に係る打撃工具201は、ピストン254と第二ウェイト255とを前後方向において略並列するように配置しているため、ギヤケーシング240の前後方向の長さを短くすることができる。よって打撃工具201をよりコンパクトに構成することが可能となる。
【0066】
本発明による電動工具は、上述した実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば第二の実施の形態に係る動吸振器の構成と、第三の実施の形態に係る運動変換部材の構成とを組み合わせてもよい。このような構成の場合、動吸振器を構成するウェイトケーシングをギヤケーシングとモータケーシングとの間に介在させる必要が無く、かつギヤケーシングの全長を短くすることができる。これにより電動工具の前後方向の長さを更に短くしてコンパクトに構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の電動工具は、ハンマードリルや、削岩機等の、打撃を伴う工具において広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第一の実施の形態に係る電動工具の側面断面図。
【図2】図1のII-II線に沿った断面図。
【図3】図1のIII-III線に沿った断面図。
【図4】本発明の第一の実施の形態に係る電動工具のピストンとカウンタウェイトの動きを示す部分断面図。
【図5】本発明の第二の実施の形態に係る電動工具の側面断面図。
【図6】図5のVI-VI線に沿った断面図。
【図7】本発明の第三の実施の形態に係る電動工具の側面断面図。
【符号の説明】
【0069】
1・・打撃工具 2・・ケーシング部 10・・ハンドル部 11・・電源ケーブル
12・・スイッチ機構 13・・トリガ 15・・工具保持部 16・・サイドハンドル
20・・モータケーシング 21・・電動モータ 22・・出力軸部
22A・・延長軸部 22B・・第一ギヤ 30・・ウェイトケーシング
30A・・軸受 31・・第一ウェイト 31a・・挿通孔 32・・接続部材
33・・ウェイト支持部材 33A・・ネジ 33・・第一ウェイト
40・・ギヤケーシング 40A・・第一ギヤケーシング
40B・・第二ギヤケーシング 40C・・軸受 40D・・軸受 40a・・減速室
40b・・溝 41・・中間軸部 41A・・第二ギヤ 41B・・軸受
42・・第一クラッチ 43・・第二クラッチ 43A・・第三ギヤ 44・・シリンダ
44A・・第四ギヤ 44a・・空間 45・・チェンジレバ 51・・カム部
51a、51b・・溝 51A・・第一カム 51B・・第二カム
52・・第一運動変換部材 52A・・第一腕部 52B・・ボール
53・・第二運動変換部材 53A・・第二腕部 53B・・ボール 54・・ピストン
54A・・筒部 54B・・接続部 54a・・空気室 54b・・空気孔
55・・第二ウェイト 56・・打撃子 57・・中間子
【出願人】 【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
【出願日】 平成18年7月20日(2006.7.20)
【代理人】 【識別番号】100094983
【弁理士】
【氏名又は名称】北澤 一浩

【識別番号】100095946
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 伸

【識別番号】100099829
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 朗子


【公開番号】 特開2008−23653(P2008−23653A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−198679(P2006−198679)