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【発明の名称】 燃焼式作業工具
【発明者】 【氏名】田中 勝利

【要約】 【課題】可燃性ガスを点火プラグの点火によって燃焼室内にて燃焼させた際の高圧力を利用して所定の加工作業を遂行する燃焼式作業工具において、点火プラグによる確実な点火を可能とする技術を提供する。

【構成】本発明にかかる燃焼式の釘打機101は、燃焼室143に配設される単一の点火プラグ140に対し各々独立して電力を入力可能な複数の点火回路を備える構成とされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、
前記燃焼室内へ可燃性ガスを供給するガス供給部と、
前記燃焼室内に配設されるとともに、前記ガス供給部から前記燃焼室内へ可燃性ガスが供給された状態で、供給電源から供給された電力を出力することで前記燃焼室内の可燃性ガスを燃焼させる単一の点火プラグと、
前記単一の点火プラグにて出力される電力を制御する点火制御装置と、
前記燃焼室に連接されたシリンダと、
前記シリンダ内に摺動可能に収容され、前記燃焼室内における可燃性ガスの燃焼によって生じる燃焼圧力により前記シリンダ内を摺動するピストン部材と、
前記ピストン部材の摺動に伴って作動し、被加工材に対し衝撃力を作用させることで所定の加工作業を遂行する工具部材と、
を有する燃焼式作業工具であって、
前記点火制御装置は、前記単一の点火プラグに接続されて当該点火プラグに対し各々独立して電力を入力可能な複数の点火回路と、各点火回路における電力入力態様を制御することによって前記単一の点火プラグにおける電力出力態様を可変とする制御部を備える構成であることを特徴とする燃焼式作業工具。
【請求項2】
請求項1に記載の燃焼式作業工具であって、
前記供給電源の電圧を検出する電圧検出部を備え、前記制御部は、前記電圧検出部にて検出された前記供給電源の電圧値に基づいて、当該電圧値が予め設定された電圧しきい値を下回った場合には、前記しきい値を上回る場合よりも少ない数の点火回路によって前記単一の点火プラグに対し電力を入力する構成であることを特徴とする燃焼式作業工具。
【請求項3】
請求項1に記載の燃焼式作業工具であって、
前記燃焼室に関する温度を検出する温度検出部を備え、前記制御部は、前記温度検出部にて検出された前記燃焼室に関する温度に基づいて、各点火回路における次回の電力入力時期を設定する構成であることを特徴とする燃焼式作業工具。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の燃焼式作業工具であって、
前記単一の点火プラグのプラグ点火時におけるスパーク電流を検出する電流検出部と、作業者に対し報知出力を行う報知出力部を備え、前記制御部は、前記電流検出部にて検出された前記単一の点火プラグのプラグ点火時におけるスパーク電流値が予め設定された電流しきい値を下回った場合に前記報知出力部に対し報知出力信号を伝送する構成であることを特徴とする燃焼式作業工具。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか1項に記載の燃焼式作業工具であって、
前記燃焼室内における燃焼圧力に関する圧力情報、および前記作動部材の作動位置に関する位置情報の少なくとも一方の情報を検出する情報検出部を備え、前記制御部は、前記情報検出部にて検出された情報に基づいて、前記燃焼室内における燃焼完了を判定する構成であることを特徴とする燃焼式作業工具。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の燃焼式作業工具であって、
前記点火制御装置は、前記複数の点火回路が少なくとも2つのコンデンサ式点火回路を用いて構成されていることを特徴とする燃焼式作業工具。
【請求項7】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の燃焼式作業工具であって、
前記点火制御装置は、前記複数の点火回路がコンデンサ式点火回路及びトランジスタ式点火回路を用いて構成されていることを特徴とする燃焼式作業工具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室内にて可燃性ガスを燃焼させた際の燃焼圧力を利用して所定の加工作業を遂行する燃焼式作業工具の構築技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1には、この種の燃焼式作業工具として、燃焼室内で可燃性ガスと空気との混合気を点火プラグの点火によって爆発燃焼させて釘を打込む釘打機が開示されている。この釘打機は、単一の点火プラグに接続された単一のコンデンサ式点火回路を有する点火制御装置を備え、この点火制御装置がコンデンサ式点火回路のスパーク火花を複数回連続して発生させる制御を行う構成とされている。
【特許文献1】特開2006−95638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1に記載の釘打機によれば、コンデンサ式点火回路のスパーク火花を複数回連続して発生させることによって、スパーク火花の失火現象を防止する可能性を有するが、単一の点火プラグに対し単一のコンデンサ式点火回路が接続された構成ゆえ、当該点火プラグの2回目以降のスパーク動作に関しては点火回路内の充電コンデンサが充電されるまで次の動作に移行できないため、混合気のガス濃度にばらつきのある場合には、着火できない場合や相当数のスパークが必要となることが想定される。また、コンデンサ式点火回路におけるスパーク時間が充電コンデンサの容量に依存しているので、点火プラグ周りが低温の場合はプラグ電極の消炎作用よって失火することが想定される。
そこで、本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、可燃性ガスを点火プラグの点火によって燃焼室内にて燃焼させた際の高圧力を利用して所定の加工作業を遂行する燃焼式作業工具において、点火プラグによる確実な点火を可能とする技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を達成するため、各請求項記載の発明が構成される。
【0005】
本発明に係る燃焼式作業工具は、燃焼室内にて可燃性ガスを燃焼させた際の燃焼圧力を利用して所定の加工作業を遂行する作業工具であって、燃焼室、ガス供給部、単一の点火プラグ、点火制御装置、シリンダ、ピストン部材、作動部材を少なくとも備える。
本発明のガス供給部は、本発明の燃焼室内へ可燃性ガスを供給する機能を有する。典型的には、可燃性ガスが充填されたガスボンベ、このガスボンベと燃焼室とを接続する接続経路、可燃性ガスを燃焼室内に噴射する噴射口などを用いてガス供給部を構成することができる。
本発明の単一の点火プラグは、燃焼室内に配設されるとともに、ガス供給部から燃焼室内へ可燃性ガスが供給された状態で、供給電源から供給された電力を出力することで燃焼室内の可燃性ガスを燃焼させる点火プラグとして構成される。単一の点火プラグにて出力される電力が、本発明の点火制御装置によって制御される。この場合、供給電源は電池のように作業工具内に装着される電源であってもよいし、或いは外部電源のように作業工具外の電源であってもよい。
本発明のシリンダは燃焼室に連接されており、このシリンダ内に本発明のピストン部材が摺動可能に収容されている。このピストン部材は、燃焼室内における可燃性ガスの燃焼によって生じる燃焼圧力によりシリンダ内を摺動する部材として構成される。また、本発明の工具部材は、ピストン部材の摺動に伴って作動し、被加工材に対し衝撃力を作用させることで所定の加工作業を遂行する部材として構成される。すなわち、本発明の燃焼式作業工具では、ガス供給部から燃焼室内へ可燃性ガスが供給された状態で、制御部にて制御された電力を単一の点火プラグから出力することによって、当該燃焼室内で可燃性ガスを燃焼させ、この燃焼で生じた燃焼圧力を利用して被加工材に対し所定の加工作業を遂行する。
【0006】
特に、本発明では、上記点火制御装置の構成に関し特徴を有しており、点火制御装置は、単一の点火プラグに接続され当該点火プラグに対し各々独立して電力を入力可能な複数の点火回路と、各点火回路における電力入力態様を制御することによって単一の点火プラグにおける電力出力態様を可変とする制御部を備える構成とされる。この点火制御装置の点火回路に関しては、コンデンサ式点火回路やトランジスタ式点火回路によって構成された点火回路を用いることができる。また、ここでいう各点火回路における「電力入力態様」には、単一の点火プラグに対して入力される電力の種々の入力態様が包含されるものであり、具体的には、電力の入力に寄与する点火回路の数をはじめ、各点火回路における電力の入力時間、入力時期、入力強度などが電力入力態様の一例として挙げられる。また、ここでいう単一の点火プラグにおける「電力出力態様」には、当該点火プラグにて出力される電力の種々の出力態様が包含されるものであり、具体的には、単一の点火プラグにおける電力の出力時間、出力時期、出力強度などが電力出力態様の一例として挙げられる。
【0007】
ところで、単一の点火プラグに対し単一の点火回路、例えばコンデンサ式の点火回路が接続された従来の点火制御装置にあっては、当該点火プラグの2回目以降のスパーク動作に関しては点火回路内の充電コンデンサが充電されるまで次の動作に移行できないため、混合気のガス濃度にばらつきのある場合には、着火できない場合や相当数のスパークが必要となることが想定される。また、コンデンサ式点火回路におけるスパーク時間が充電コンデンサの容量に依存しているので、点火プラグ周りが低温の場合はプラグ電極の消炎作用(スパーク放電によって生じた混合気の火炎核が、外気、さらにはプラグ電極に接していることが要因で熱を奪われる現象)よって失火することが想定される。
【0008】
そこで、本発明の点火制御装置の如く、単一の点火プラグに対し各々独立して電力を入力可能な複数の点火回路を設けた構成を採用するのが有効とされる。このような構成によれば、例えばバッテリ電圧値、燃焼室に関する温度、プラグ点火時におけるスパーク電流値などの検出結果に基づいて、使用する点火回路の数、各点火回路における放電時期(スパークのタイミング)、各点火回路における放電波形などを変更し、各点火回路における電力入力態様を制御することが可能となる。従って、本発明の点火制御装置を用いることによって、単一の点火プラグにおける所望の電力出力態様を実現することができ、以って少ない点火回数で点火プラグによる確実な点火が可能となる。例えば、単一の点火プラグに対し2つのコンデンサ式の点火回路が接続された構成の点火制御装置においては、各充電コンデンサの放電時期を独立して制御することができるため、一方の充電コンデンサを放電した後、遅滞なく他方の充電コンデンサを放電することによって、単一の点火プラグのプラグ点火時におけるスパーク動作を連続的に遂行することができる。なお、使用する点火回路の数を変更する形態は、本発明の「各点火回路における電力入力態様」の制御に包含されるものであり、一例としてバッテリ電圧値やスパーク電流値が低いことが検出されると、複数の点火回路のうち1つの点火回路のみを使用するように設定することができる。
【0009】
本発明に係る更なる形態の燃焼式作業工具は、供給電源の電圧を検出する電圧検出部を備える。そして、制御部は、電圧検出部にて検出された供給電源の電圧値に基づいて、当該電圧値が予め設定された電圧しきい値を下回った場合には、電圧しきい値を上回る場合よりも少ない数の点火回路によって単一の点火プラグに対し電力を入力する構成とされる。このような構成によれば、供給電源の電圧が相対的に低い場合には、使用する点火回路の数を抑えることによって、単一の点火プラグにおける確実なプラグ点火を実現することが可能となる。
【0010】
本発明に係る更なる形態の燃焼式作業工具は、燃焼室に関する温度を検出する温度検出部を備える。そして、制御部は、温度検出部にて検出された燃焼室に関する温度に基づいて、各点火回路における次回の電力入力時期を設定する構成とされる。ここでいう「燃焼室に関する温度」とは、点火プラグが配設される燃焼室の温度に対し関連性を有する部位の温度を広く含む趣旨であり、当該温度として、燃焼室自体の温度はもちろん、この燃焼室に連接されたシリンダの表面温度、更には工具周辺の外気温度などを適宜用いることができる。このような構成によれば、燃焼室に関する温度に応じた制御が可能となる。具体的には、燃焼室の温度が相対的に低い場合には、確実なプラグ点火を実現するべく次回の電力入力時期を早めることができる。
【0011】
本発明に係る更なる形態の燃焼式作業工具は、単一の点火プラグのプラグ点火時におけるスパーク電流を検出する電流検出部と、作業者に対し報知出力を行う報知出力部を備える。そして、制御部は、電流検出部にて検出された単一の点火プラグのプラグ点火時におけるスパーク電流値が予め設定された電流しきい値を下回った場合に報知出力部に対し報知出力信号を伝送する構成とされる。本発明の報知出力部に関しては、音声出力、表示出力などの報知出力態様を適宜用いることができる。
このような構成によれば、単一の点火プラグのプラグ点火時におけるスパーク電流値に応じた報知が可能となる。具体的には、単一の点火プラグのプラグ点火時におけるスパーク電流値が相対的に低い場合には、スパーク電流値が低いことを報知出力部によって作業者に対し報知することができる。
【0012】
本発明に係る更なる形態の燃焼式作業工具は、燃焼室内における燃焼圧力に関する圧力情報、および作動部材の作動位置に関する位置情報の少なくとも一方の情報を検出する情報検出部を備える。そして、制御部は、情報検出部にて検出された情報に基づいて、燃焼室内における燃焼完了を判定する構成とされる。
このような構成によれば、燃焼室内における燃焼完了を判定することによって、燃焼が正常に完了していない場合には、点火プラグのプラグ点火動作を繰り返す処理を行うことによって、燃焼室内にてより確実に燃焼処理を遂行することが可能となる。これにより、燃焼室内における燃焼状態に応じたフィードバック制御が可能となり、無駄なスパークエネルギーの放出や不完全燃焼の確率を低減するのに有効である。
【0013】
本発明に係る更なる形態の燃焼式作業工具では、点火制御装置は、複数の点火回路が少なくとも2つのコンデンサ式点火回路を用いて構成される。このような構成によれば、少なくとも2つのコンデンサ式点火回路を用いた構成の点火制御装置が実現される。
【0014】
本発明に係る更なる形態の燃焼式作業工具では、点火制御装置は、複数の点火回路がコンデンサ式点火回路及びトランジスタ式点火回路を用いて構成される。このような構成によれば、コンデンサ式点火回路及びトランジスタ式点火回路を組み合わせた構成の点火制御装置が実現される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、点火プラグの点火によって燃焼室内にて可燃性ガスを燃焼させた際の燃焼圧力を利用して所定の加工作業を遂行する燃焼式作業工具において、特に単一の点火プラグに対し各々独立して電力を入力可能な複数の点火回路を設ける構成を採用することによって、点火プラグによる確実な点火が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の「燃焼式作業工具」の一実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施の形態では、燃焼式作業工具の一例として、燃焼室内にて可燃性ガスを燃焼させた際の燃焼圧力を利用して被加工材に対する釘の打込み作業を行う釘打機について説明する。なお以下においては、釘打機101の射出部110側(図1中における左側)を前側ないし先端側とし、その反対側(図1中における右側)を後側として説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態の釘打機101の全体構成を模式的に示す図であって、ピストンが初期状態の位置にある場合を示すものである。
図1に示すように、本実施の形態の釘打機101は、ハウジング103、ハンドグリップ105、マガジン109、射出部110、トリガ113を主体としてその外郭が形成されている。ハウジング103内には、シリンダ120、ピストン121、ピストン121と一体に形成されたドライバ122、クッションラバー123、ファン130、モータ131、点火プラグ140、ガスボンベ141、噴射口142、燃焼室143、排気口144、点火制御装置150、衝撃センサ160及び光電スイッチ170が設けられている。
【0018】
ハンドグリップ105は、釘打機101を用いた作業時に作業者によって把持される把持部分を有する。このハンドグリップ105の下部に装着されるホルダ107には、バッテリ(「電池」或いは「蓄電池」ともいう)108が収容される構成になっている。このバッテリ108には、バッテリ電圧を検出する電圧検出回路108aが設けられている。この電圧検出回路108aが、本発明における「電圧検出部」を構成する。また、このハンドグリップ105よりも前側にトリガ113が設けられており、作業者は、ハンドグリップ105の把持部分を把持した状態でこのトリガ113の引き絞り操作が可能とされる。トリガ113の引き絞り操作によるトリガスイッチ114の作動によって点火制御装置150が作動し、これによって点火プラグ140の点火動作が遂行される。点火プラグ140のこの点火動作の詳細については後述する。
【0019】
マガジン109は、釘打機101のハウジング103先端側に形成された射出部110に取り付けられ、相互に連接された多数の釘を収容するとともに、打込み対象となる釘を射出部110に臨ませる。なおマガジン109自体の構成は周知ゆえ、その詳細な説明については、便宜上省略する。射出部110の先端には、コンタクトアーム111が配設されている。このコンタクトアーム111は、射出部110の長軸方向(すなわち釘打機101の長軸方向であって、図1では左右方向に相当する)につき、当該射出部110に対し相対的に摺動動作可能とされるとともに、付勢手段としてのスプリング(図示省略)によって常時には先端側(前側)へと付勢されている。また、コンタクトアーム111がスプリングに付勢力に抗して被加工材に押し付けられたことを検知するコンタクトアームスイッチ112が設けられている。
【0020】
シリンダ120は、燃焼室143に連接され工具前後方向(図1中の左右方向)に長手状に延在するピストン収容部を構成する。このシリンダ120が、本発明における「シリンダ」に相当する。ピストン121は、シリンダ120内に収容されて、燃焼室143内の燃焼圧力によりこのシリンダ120内を工具前後方向に摺動可能とされている。このピストン121が、本発明における「ピストン部材」に相当する。シリンダ120内の前側領域にはクッションラバー(「バンパ」ともいう)123が設けられており、このクッションラバー123は、ピストン121が釘を打込むために高速駆動されてシリンダ120内の前側領域へと急激に移動したとき、高速駆動されたこのピストン121の衝撃を吸収緩和してピストン121を受け止め、これによってピストン121の余剰なエネルギを吸収する機能を有する。ドライバ122は、ピストン121の摺動に伴って作動し、被加工材に対する釘の打込み作業を遂行する部材を構成する。このドライバ122が、本発明における「工具部材」に相当する。
【0021】
燃焼室143は、可燃性ガスと空気の混合気が燃焼する燃焼空間であり、燃焼室壁143a、シリンダ120及びピストン121によって区画された空間として構成される。この燃焼室143が、本発明における「燃焼室」に相当する。この燃焼室143内には、モータ131によって回転駆動されるファン130、トリガ113の引き絞り操作によって電極間にスパークを発生させる単一の点火プラグ140が設けられている。
【0022】
ガスボンベ141は、所定の可燃性ガス(液化ガス)を貯留する機能を有する。このガスボンベ141に充填されている可燃性ガスは、ガス供給経路を通じて燃焼室143と連通されており、このガス供給経路の下流の噴射口142から燃焼室143に供給されるように構成されている。このガスボンベ141及び噴射口142によって、本発明における「ガス供給部」が構成される。
【0023】
ファン130は、この可燃性ガス供給時において、モータ131によって回転駆動されて、噴射口142を通じて燃焼室143に供給され可燃性ガスを撹拌することによって燃焼室143内における可燃性ガスのガス濃度を均一にする機能を有する。また、燃焼室143にける燃焼後の燃焼ガスは、燃焼室壁143aとシリンダ120との間に形成される排気口144を通じて燃焼室143外へ排出されるように構成されている。ファン130は、このガス排出時において、モータ131によって回転駆動されて、燃焼後のガスを排気口144を通じて燃焼室143外へ速やかに排出する機能を有する。
【0024】
点火プラグ140は、燃焼室143内に配設されるとともに、ガスボンベ141から噴射口142を通じて燃焼室143へ可燃性ガスが供給された状態で、バッテリ108から供給された電力を出力することで燃焼室143内の可燃性ガスを燃焼させる機能を有する。この点火プラグ140が、本発明における「単一の点火プラグ」に相当する。この点火プラグ140では、その点火部が、互いに対向状に配置される2つの電極140a,140bを主体として構成され、一方の電極140aが中心電極を構成し、他方の電極140bが接地電極を構成する。また、この点火プラグ140には、燃焼室143に関する温度(燃焼室143の温度、或いはシリンダ120の表面温度)を検出する温度検出回路140cが設けられている。この温度検出回路140cが、本発明における「温度検出部」を構成する。
【0025】
点火制御装置150は、点火プラグ140の電極間にて出力される電力を制御する機能を有する。この点火制御装置150が、本発明における「点火制御装置」に相当する。この点火制御装置150は、トリガスイッチ114等の制御信号伝送対象と電気的に接続されており、制御信号の伝送を行う。具体的には、この点火制御装置150は、点火回路ユニット(後述する点火回路ユニット210,220,230)と、当該点火回路ユニットと電気的に接続されたマイクロコンピュータ(「マイコン」或いは「コントローラ」ともいう)151を備える。このマイコン151は、後述する点火回路1,2の充電コンデンサC1,C2の充電制御や、点火プラグ140のスパークの発生制御をはじめ、モータ131の起動制御及び回転制御を遂行する。このマイコン151が、本発明における「制御部」を構成している。なお、この点火制御装置150には、ホルダ107に収容されたバッテリ108と電気的に接続されており、このバッテリ108から電源が供給される構成になっている。
【0026】
衝撃センサ160は、点火プラグ140のスパーク時における燃焼圧力を燃焼室143付近にて検知するセンサとして構成される。光電スイッチ170は、ドライバ122の位置検出を行うセンサとして構成される。
【0027】
ここで、上記点火制御装置150における具体的な点火回路構成及び点火回路動作に関しては、図2〜図13が参照される。
【0028】
図2には、本実施の形態の点火制御装置150における第1実施の形態の点火回路ユニット210の概念図が示される。図2に示すように、この点火回路ユニット210は、「コンデンサ式」の点火回路1,2を二つ組み合わせた構成が特徴部分であり、具体的には点火コイルの1次側に、充電コンデンサC1,C2と、これら充電コンデンサC1,C2を放電するためのトリガ素子SCR1,SCR2を備える。ここでいうコンデンサ式の点火回路1,2が、本発明における「複数の点火回路」に相当する。点火回路1の充電コンデンサC1における充電は、前述のマイコン151からの充電信号1に基づいて行われ、充電状態の充電コンデンサC1における放電は、マイコンからの点火信号1に基づいて行われる。同様に、点火回路2の充電コンデンサC2における充電は、マイコン151からの充電信号2に基づいて行われ、充電状態の充電コンデンサC2における放電は、マイコン151からの点火信号2に基づいて行われる。従って、本実施の形態の点火回路ユニット210では、充電コンデンサC1における充電や放電のタイミング、また充電コンデンサC2における充電や放電のタイミングは、それぞれがマイコン151によるマイコン制御によって個別に制御可能な構成となっている。
【0029】
また、この点火回路ユニット210では、衝撃センサ160及び光電スイッチ170によって燃焼室143内の燃焼圧力やドライバ122等の挙動が電気的に検知され、この検知情報に基づいて燃焼が正常に完了したか否かがマイコン151によって判定される。このとき、燃焼室143内における可燃性ガスの正常燃焼が完了したとマイコン151が判定した場合には、速やかに点火回路ユニット210をシャットダウンする。これら衝撃センサ160及び光電スイッチ170は、燃焼室143内における燃焼圧力に関する圧力情報、およびドライバ122の作動位置に関する位置情報を検出する、本発明における「情報検出部」を構成している。これら衝撃センサ160及び光電スイッチ170のうちのいずれか一方のみによって検出された情報に基づいて、燃焼室143内における燃焼完了を判定するようにしてもよい。
なお、燃焼室143内の燃焼圧力やドライバ122等の挙動を電気的に検知する手段としては、衝撃センサ160や光電スイッチ170のほか、打込み時ドライバの移動距離を検知する超音波センサ、圧電素子等を使って打込み時の打撃音を検出するセンサなどを用いることもできる。
【0030】
図3には、本実施の形態の点火制御装置150における第2実施の形態の点火回路ユニット220の概念図が示される。図3に示すように、この点火回路ユニット220は、点火回路ユニット210と同様に「コンデンサ式」の点火回路1,2を二つ組み合わせた構成を有し、更に電流検出回路221,222を備える。
【0031】
電流検出回路221は、充電コンデンサC1,C2と並列に設けられた電流検出回路であって、スパーク電流を連続的ないし断続的に検出し、当該検出電流値を予め記憶されている電流値と毎回比較する事で、充電コンデンサC1,C2の異常を検出する機能を有する。一方、電流検出回路222は、点火コイルに設けられた電流検出回路であって、点火コイルの短絡を検出する機能を有する。これら電流検出回路221,222が、本発明における「単一の点火プラグのプラグ点火時におけるスパーク電流を検出する電流検出部」を構成する。このとき、電流検出回路221,222によって検出された情報に基づいて回路が正常であるか異常であるかがマイコン151によって判定される。回路が異常であるとマイコン151が判定した場合には、点火回路ユニット220への電源供給遮断や、警報装置(警報回路)223によりLED(表示出力)やブザー(音声出力)等で作業者に警告を行なう。この場合の警報装置223が、本発明における「作業者に対し報知出力を行う報知出力部」に相当する。これにより点火コイルの短絡によるマイコン151側の破壊、電源短絡による発煙を防止し、安全性を確保することが可能とされる。なお、故障部位が充電コンデンサC1,C2のいずれかだけならば、故障の警報のみで、普通のコンデンサ式点火回路として作業は継続可能である。これら電流検出回路221,222の構成は、ダイオード、抵抗の組み合わせでも可能である。
【0032】
上記点火制御装置150における点火回路ユニット210の点火回路作動タイミングに関しては、図2に加えて図4及び図5が参照される。図4には、本実施の形態の点火回路ユニット210における点火回路動作タイムチャートが示される。また、図5には、本実施の形態の点火回路ユニット210における放電波形が示される。
【0033】
図2に示すように、トリガスイッチ114入力時にマイコン151より充電信号1がトランジスタQ1に出力され、また充電信号2がトランジスタQ2に出力される。これによって、スイッチングトランスT1,T2の2次コイルの高い電圧(例えば数百ボルトの電圧)が、ダイオードD1,D2を介して、充電コンデンサC1,C2に充電される。このとき、充電信号2がトランジスタQ2に出力されるタイミング(充電コンデンサC1に充電がなされるタイミング)に関しては、所定の範囲(図4中の矢印で示すような範囲)において任意に変更可能である。その後、マイコン151よりトリガ素子SCR1へ点火信号1が印加され、充電コンデンサC1に充電された電荷が、点火コイルT3の1次側へ放電されると、点火コイルT3の2次側に誘起された数十キロボルトの高電圧が発生し、これによって点火プラグ140にてスパーク火花が発生する(1回目の放電)。
【0034】
続いて、マイコン151より点火信号2が出力され、トリガ素子SCR2がオンし、充電コンデンサC2に充電されていた電荷が、点火コイルT3の1次側へ放電され、点火コイルT3の2次側に誘起された数十キロボルトの高電圧が点火プラグ140より連続してスパークされる(2回目の放電)。その結果、点火回路ユニット210における2回目の放電波形は、図4中に実線にて示すように1回目の放電波形に連接する形態や、図5中に破線にて示すように1回目の放電波形に対し部分的に重なり合う形態と成り得る。なお、図5においては、1回目の放電波形及び2回目の放電波形は、いずれもピーク値及び放電時間が同一の場合について記載している。
【0035】
ところで、点火プラグ140に対し単一の点火回路、例えばコンデンサ式の点火回路1のみが接続された点火制御装置にあっては、点火プラグ140の2回目以降のスパーク動作に関しては点火回路1内の充電コンデンサC1が充電されるまで次の動作に移行できないため、混合気のガス濃度にばらつきのある場合には、着火できない場合や相当数のスパークが必要となることが想定される。とりわけ、本実施の形態のようにガスボンベ141から可燃性ガスを供給する構成にあっては、低温時等においてガス圧が下がり、ファン130により攪拌された混合気のガス濃度はまばらに燃焼室143内に存在する場合には、相当数のスパーク回数、或いは点火しない状況も考えられる。また、コンデンサ式点火回路1におけるスパーク時間が充電コンデンサC1の容量に依存しているので、点火プラグ140周りが低温の場合はプラグ電極の消炎作用(スパーク放電によって生じた混合気の火炎核が、外気、さらにはプラグ電極に接していることが要因で熱を奪われる現象)よって失火することが想定される。
【0036】
そこで、本実施の形態の点火制御装置150では、上述のように、マイコン151が各点火回路1,2における電力入力態様を独立して制御することによって点火プラグ140における電力出力態様を可変とする制御を行う構成を採用している。このような構成によれば、少ない点火回数で点火プラグ140による確実な点火が可能となる。具体的には、一方の点火回路1の充電コンデンサC1を放電した後、遅滞なく他方の点火回路2の充電コンデンサC2を放電することによって、点火プラグ140のプラグ点火時におけるスパーク動作を連続的に遂行することができる。
【0037】
上記構成の点火制御装置150を備える釘打機101の打込み制御及び動作に関しては、図6〜図13が参照される。図6〜図9には、いずれも本実施の形態の釘打機101の打込み制御に関するフローチャートが示され、図10〜図13には、いずれも本実施の形態の釘打機101の打込み動作過程の様子が模式的に示される。なお、図6〜図13に示すフローチャートにおける打込み制御は、点火制御装置150のマイコン151における制御によって遂行される。
【0038】
図6に示すように、釘打機101の打込み作業に際しては、まず図6中のステップS100によって、初期設定を行う。この初期設定では、バッテリ108が収容されたホルダ107を、ハンドグリップ105の下部に装着する等の準備作業を行う。この初期設定が完了し、動作可能となった初期状態(釘打機101の図1に示す初期状態)から実際の打込み作業を開始する。
【0039】
図6中のステップS101では、被加工材Wに対しコンタクトアーム111が押し付けられているか否かを判定する。この判定は、図6に示すように、釘打機101を被加工材Wに向かって移動させるとともに、コンタクトアーム111を被加工材Wに対し押し付けたときのこのコンタクトアーム111の反対方向への移動をコンタクトアームスイッチ112が検出することによって可能となる。このステップS101は、被加工材Wに対しコンタクトアーム111が押し付けられていると判定する(ステップS101のYESの判定)まで継続し、被加工材Wに対しコンタクトアーム111が押し付けられていると判定した場合にステップS102にすすむ。
【0040】
図6中のステップS102では、ファン130の回転に関する制御を行う。この制御に関しては、図7のシーケンスに示すように、ステップS102aによってモータ131が駆動されてファン130の回転動作が開始される。その後、ステップS102bによって、所定時間(図3では8秒)が経過したことがタイマ検知されると、ステップS102cによってモータ131が駆動停止されてファン130の回転動作が停止される。このように、本実施の形態では、ファン130の回転動作の開始が、コンタクトアーム111を被加工材Wに押し付ける動作に連動して遂行される構成とされる。同様に、なおガスボンベ141からの可燃性ガスの供給も、コンタクトアーム111を被加工材Wに押し付ける動作に連動して遂行される(図10参照)。
【0041】
図6中のステップS103では、一定時間(ファン130が回転している時間)トリガスイッチ(図10中のトリガスイッチ114)がオン状態であるか否かを判定する。この判定は、図11に示すようなトリガ113の矢印10方向への引き絞り操作において、トリガスイッチ114の状態を検出することによって可能となる。このステップS103は、トリガスイッチがオン状態であると判定する(ステップS103のYESの判定)まで継続し、トリガスイッチがオン状態であると判定した場合にステップS104にすすむ。
【0042】
図6中のステップS104では、ホルダ107中のバッテリ108の電池電圧(バッテリ電圧)を前述の電圧検出回路108aによって検出して読み込み、読込んだバッテリ電圧が予め設定された規定値1以上(例えば7ボルト以上)であるか否かをステップS105によって判定する。読込んだ当該バッテリ電圧が規定値1以上である場合(ステップS105のYESの場合)には、ステップS106にすすみ、そうでない場合(ステップS105のNOの場合)、すなわちバッテリ電圧が規定値1(電圧しきい値)以下である場合には、充電信号2をオンさせ、バッテリ残量不足の警告を表示させたうえで、点火回路1をオンさせるステップ(ステップS106)をバイパスしてステップS107にすすむ。本実施の形態では、バッテリ電圧が予め設定された電圧しきい値を下回った場合には、電圧しきい値を上回る場合よりも少ない数の点火回路、すなわち点火回路2のみによって点火プラグ140に対し電力を入力する構成とされる。このような構成によれば、バッテリ電圧が相対的に低い場合には、使用する点火回路の数を抑えることによって、点火プラグ140における確実なプラグ点火を実現することが可能となる。
【0043】
図6中のステップS106では、点火回路1をオンする。こときの点火回路1の動作に関しては、図8のシーケンスが参照される。すなわち、図8に示すように、まずステップS106aによって充電信号1をオンさせ、またステップS106bによって充電信号2をオンさせる。これによって、充電コンデンサC1,C2における充電が開始される。その後、ステップS106cによって、所定の充電時間が経過したか否かをタイマ検知する。所定の充電時間が経過した場合(ステップS106cのYESの場合)に、ステップS106dにすすみ、燃焼完了割り込み処理設定を行い、ステップS106eによって点火信号1をオンさせる。これによって、充電コンデンサC1に充電された電力が点火プラグ140の電極間にて放電され、点火プラグ140にて1回目のスパーク火花が発生する。
【0044】
このとき、図8中のステップS106fでは、電流検出回路221によってプラグ点火時におけるスパーク電流値を検出する。具体的には、前述の電流検出回路221,222にて検出されたプラグ点火時におけるスパーク電流値を、予め設定された電流しきい値と比較して、実際のスパーク電流値が電流しきい値よりも相対的に低い場合には、前述の警報装置223により作業者に対しスパーク電流値が低いこと、つまり、点火回路に異常があることを報知することができる。また、ステップS106gでは、前述の温度検出回路140cによって検出された燃焼室143に関する温度に基づいて、次回の電力入力時期(スパーク時期)を算出する。具体的には、検出された温度を予め設定された温度しきい値と比較して、実際の検出温度が温度しきい値よりも相対的に低い場合には、確実なプラグ点火を実現するべく次回の電力入力時期を早める設定を行う。これによって、次回の電力入力時期(スパーク時期)が最適化され、点火プラグ140のスパーク火花による可燃性ガスの正常な燃焼が可能とされる。
【0045】
図8中のステップS106hでは、ステップS106gにて算出した所定時間が経過したか否かをタイマ検知する。所定時間が経過した場合(ステップS106hのYESの場合)に、ステップS106iにすすみ、更に燃焼が正常に完了したか否かを判定する。この判定は、前述の衝撃センサ160及び光電スイッチ170によって燃焼室143内の燃焼圧力やドライバ122等の挙動を電気的に検知することによって可能となる。燃焼が正常に完了したと判定した場合(ステップS106iのYESの場合)には、ステップS106jにて燃焼完了割り込み処理設定解除を行い、図6中のステップS108にすすむ。一方、燃焼が正常に完了していないと判定した場合(ステップS106iのNOの場合)には、図6中のステップS107にすすみ、点火回路2のオン動作を行う。このような制御によれば、燃焼室143内の燃焼が正常に完了していない場合には、点火プラグ140のプラグ点火動作を繰り返す処理を行うことによって、燃焼室143内にてより確実に燃焼処理を遂行することが可能となる。これにより、燃焼室143内における燃焼状態に応じたフィードバック制御が可能となり、無駄なスパークエネルギーの放出や不完全燃焼の確率を低減するのに有効である。
【0046】
図6中のステップS107における点火回路2の動作に関しては、図9のシーケンスが参照される。すなわち、図9に示すように、まずステップS107aによって点火信号2をオンさせる。これによって、充電コンデンサC2に充電された電力が点火プラグ140の電極間にて放電され、点火プラグ140にて2回目のスパーク火花が発生する。
【0047】
このとき、図9中のステップS107bでは、電流検出回路221によってプラグ点火時におけるスパーク電流値を検出する。また、ステップS107cによって、燃焼が正常に完了したか否かを判定する。この判定は、前述の衝撃センサ160及び光電スイッチ170によって燃焼室143内の燃焼圧力やドライバ122等の挙動を電気的に検知することによって可能となる。燃焼が正常に完了したと判定した場合(ステップS107cのYESの場合)には、ステップS107dにて燃焼完了割り込み処理設定解除を行い、図6中のステップS108にすすむ。一方、燃焼が正常に完了していないと判定した場合(ステップS107cのNOの場合)には、図6中のステップS106に戻り、再び点火回路1のオン動作を行う。このような制御によれば、燃焼室143内の燃焼が正常に完了していない場合には、点火プラグ140のプラグ点火動作を繰り返す処理を行うことによって、燃焼室143内にてより確実に燃焼処理を遂行することが可能となる。これにより、燃焼室143内における燃焼状態に応じたフィードバック制御が可能となり、無駄なスパークエネルギーの放出や不完全燃焼の確率を低減するのに有効である。
【0048】
この点火プラグ140のプラグ点火時においては、図11に示すように、排気口(図1中の燃焼室壁143aとシリンダ120との間に形成される隙間)が閉鎖された状態で燃焼室143内の可燃性ガスと空気との混合気が燃焼し、これによって燃焼室143内が燃焼膨張する。このときの燃焼圧力によってピストン121はシリンダ120内を工具先端側へと摺動し、工具先端側へと作動するドライバ122を介して被加工材Wに対する釘の打込み作業が遂行されることとなる。ドライバ122の打込み後は、図12に示すように、ドライバ122は工具後側へと戻り、また燃焼室143内は冷却収縮する。
【0049】
その後、コンタクトアーム111が被加工材から離され、またトリガ113の引き絞り操作が解除された場合には、図6中のステップS108にて点火回路1をオフし、またステップS109にて点火回路2をオフして、テップS110にすすむ。このとき、図13に示すように、トリガ113は矢印20方向へと引き絞り操作が解除され、またコンタクトアーム111が被加工材Wから離されて押し付けが解除される。また、燃焼室143にて燃焼後の燃焼ガスは、燃焼室壁143aとシリンダ120との間に形成される排気口144を通じて燃焼室143外へ排出される。
【0050】
図6中のステップS110では、コンタクトアーム111が被加工材Wから離されて押し付けが解除され、コンタクトアームスイッチ112がオフされ、またトリガ113の引き絞り操作が解除されてトリガスイッチ114がオフされたか否かを判定する。当該解除がなされたと判定した場合(ステップS110のYESの場合)に、ステップS111において電池電圧(バッテリ電圧)を前述の電圧検出回路108aによって検出して読み込む。ステップS112では、ステップS111にて読み込んだ電圧に基づいて、当該電圧が予め設定された規定値2以上(例えば5.9ボルト以上)であるか否かを判定する。当該電圧が規定値2以上である場合(ステップS112のYESの場合)には、ステップS101に戻り、そうでない場合(ステップS112のNOの場合)、すなわちバッテリ電圧が規定値2以下である場合には、ステップS113によってバッテリ108からの電源供給を強制的に解除することで打込み動作不可状態とし、あわせてバッテリ交換表示を行なう。
【0051】
(他の実施の形態)
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、本実施の形態に基づいた種々の応用例や変更例を想到することができる。例えば、本実施の形態を応用した以下の形態を実施することもできる。
【0052】
上記実施の形態では、点火制御装置150における点火回路ユニット210,220を、「コンデンサ式」の点火回路1,2を用いて構成する場合について記載したが、本発明では、「コンデンサ式」の点火回路に加えて或いはかえて、別の形式の点火回路である「トランジスタ式」の点火回路を用いることもできる。また、本発明では、同形式或いは別形式の点火回路を2つ以上組み合わせて、点火回路ユニットを構成することができる。
【0053】
ここで、図14には、本実施の形態の点火制御装置150における別の実施の形態の点火回路ユニット230の概念図が示される。
図14に示すように、この点火回路ユニット230は、前述の点火回路ユニット210,220と同様の「コンデンサ式」の点火回路2に、別の形式の点火回路である「トランジスタ式」の点火回路1を組み合わせた構成が特徴部分とされる。ここでいうトランジスタ式の点火回路1と、コンデンサ式の点火回路2が、本発明における「複数の点火回路」に相当する。この点火回路ユニット230では、点火コイルの1次側に設けられた点火回路1のドライブ回路が、マイコン151からの充電信号1に基づいてトランジスタQ1に信号を出力する一方、点火コイルの1次側に設けられた点火回路2の充電コンデンサC1における充電がマイコン151からの充電信号2に基づいて行われ、充電状態の充電コンデンサC1における放電がマイコン151からの点火信号2に基づいて行われる。従って、この点火回路ユニット230では、トランジスタQ1に対する充電信号1の出力タイミング、また充電コンデンサC1における充電や放電のタイミングは、それぞれがマイコン151のマイコン制御によって個別に制御可能な構成となっている。
【0054】
この点火回路ユニット230を用いた場合の放電波形が図15及び図16に示される。点火回路ユニット230における2回目の放電波形は、図15中に実線にて示すように1回目の放電波形に連接する形態や、図16中に実線にて示すように1回目の放電波形に対し部分的に重なり合う形態と成り得る。なお、図15及び図16においては、2回目の放電波形は、1回目の放電波形よりもピーク値が低く、且つ1回目の放電波形よりも放電時間が長い場合について記載している。このような構成の点火回路ユニット230を用いる場合においても、上記点火回路ユニット210,220を用いる場合と同様に、点火プラグ140による確実な点火を可能とする技術が実現されることとなる。具体的には、点火回路1による電力出力後、遅滞なく他方の点火回路2の充電コンデンサC1を放電することによって、点火プラグ140のプラグ点火時におけるスパーク動作を連続的に遂行することができる。また、異なる点火方式を用いることによって、異なる点火波形(放電波形)を生成することが可能となり、少ない点火回数で確実に点火させることが可能となる。
【0055】
また、本発明では、点火回路1,2のそれぞれにおいて点火プラグ140に対し入力される電力の入力態様に関しては、電力の入力に寄与する点火回路の数をはじめ、各点火回路における電力の入力時間、入力時期、入力強度などを適宜選択可能である。これによって、点火プラグ140においては、電力の出力時間(スパーク時間)、出力時期(スパーク時期)、出力強度(スパーク強度)などが適宜変更されて出力されることとなる。例えばバッテリ電圧値、燃焼室に関する温度、プラグ点火時におけるスパーク電流値などの検出結果に基づいて、使用する点火回路の数、各点火回路における放電時期(スパークのタイミング)、各点火回路における放電波形などを変更し、各点火回路における電力の入力態様を制御することができる。なお、使用する点火回路の数を変更する形態は、ここでいう「各点火回路における電力の入力態様」の制御に包含されるものであり、一例としてバッテリ電圧値やスパーク電流値が低いことが検出されると、複数の点火回路のうち1つの点火回路のみを使用するように設定することができる。
【0056】
また、上述した本実施の形態の点火制御装置150では、バッテリ108のバッテリ電圧検出結果に基づいて、使用する点火回路の数を抑える処理(第1の処理)、燃焼室143に関する温度の検出結果に基づいて、次回の電力入力時期を算出する処理(第2の処理)、プラグ点火時におけるスパーク電流値検出結果に基づいて、異常を検出する処理(第3の処理)、燃焼室143内における燃焼圧力に関する圧力情報、およびドライバ122の作動位置に関する位置情報に基づいて燃焼完了を判定してスパーク処理を繰り返す処理(第4の処理)を行う場合について記載したが、本発明では、第1〜第4の処理のうちの少なくとも1つの処理が可能な構成の点火制御装置を採用することができる。
【0057】
また、上述した本実施の形態では、燃焼式作業工具の一例として釘打機について記載したが、本発明は、燃焼式の他の作業工具、例えばいわゆるステーブルの打ち込み作業に用いられるタッカの構成に対し適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本実施の形態の釘打機101の全体構成を模式的に示す図であって、ピストンが初期状態の位置にある場合を示すものである。
【図2】本実施の形態の点火制御装置150における第1実施の形態の点火回路ユニット210の概念図である。
【図3】本実施の形態の点火制御装置150における第2実施の形態の点火回路ユニット220の概念図である。
【図4】本実施の形態の点火回路ユニット210における点火回路動作タイムチャートである。
【図5】本実施の形態の点火回路ユニット210における放電波形を示す図である。
【図6】本実施の形態の釘打機101の打込み制御に関するフローチャートである。
【図7】本実施の形態の釘打機101の打込み制御に関するフローチャートである。
【図8】本実施の形態の釘打機101の打込み制御に関するフローチャートである。
【図9】本実施の形態の釘打機101の打込み制御に関するフローチャートである。
【図10】本実施の形態の釘打機101の打込み動作過程の様子を模式的に示す図である。
【図11】本実施の形態の釘打機101の打込み動作過程の様子を模式的に示す図である。
【図12】本実施の形態の釘打機101の打込み動作過程の様子を模式的に示す図である。
【図13】本実施の形態の釘打機101の打込み動作過程の様子を模式的に示す図である。
【図14】本実施の形態の点火制御装置150における別の実施の形態の点火回路ユニット230の概念図である。
【図15】点火回路ユニット230を用いた場合の放電波形を示す図である。
【図16】点火回路230ユニットを用いた場合の放電波形を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
101 釘打機(燃焼式作業工具)
103 ハウジング
105 ハンドグリップ
107 ホルダ
108 バッテリ
108a 電圧検出回路
109 マガジン
110 射出部
111 コンタクトアーム
112 コンタクトアームスイッチ
113 トリガ
114 トリガスイッチ
120 シリンダ
121 ピストン
122 ドライバ
123 クッションラバー
130 ファン
131 モータ
140 点火プラグ
140a,140b 電極
141 ガスボンベ
142 噴射口
143 燃焼室
143a 燃焼室壁
140c 温度検出回路
144 排気口
150 点火制御装置
151 マイクロコンピュータ
160 衝撃センサ
170 光電スイッチ
210,220,230 点火回路ユニット
221,222 電流検出回路
223 警報装置
【出願人】 【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸

【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行


【公開番号】 特開2008−18513(P2008−18513A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−194197(P2006−194197)