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【発明の名称】 真空チャック兼用万力
【発明者】 【氏名】石川 徹

【要約】 【課題】非磁性体でしかも挟持すると破壊するような薄い脆性材料であっても自在に保持することが可能な真空チャックの機能を有し、かつ、ワークを堅固に狭持可能な万力の機能をも併せ持つ真空チャック兼用の万力を提供する。

【解決手段】ベース部と、ベース部に一体的に形成されあるいは固定された固定ジョーと、ベース部上を移動可能な可動ジョーを備える万力であって、固定ジョーは真空チャック機能を有する構成としたことを特徴とする真空チャック兼用万力である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、ベース部に一体的に形成されあるいは固定された固定ジョーと、
ベース部上を移動可能な可動ジョーを備える万力であって、
前記固定ジョーは真空チャック機能を有する構成としたことを特徴とする真空チャック兼用万力。
【請求項2】
前記固定ジョーの上面には碁盤目状にOリング溝を刻設することを特徴とする請求項1記載の真空チャック兼用万力。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、種々の材質あるいは種々の形状のワークを保持することができる真空チャック兼用の万力に関する。詳しくは、ワークを旋削、研削、研磨あるいは切断するために、種々の材質あるいは種々の形状のワークを自在に挟持することができ、かつ、非磁性であっても、薄くあるいは脆くて掴むことが困難なワークであっても保持可能な真空チャック兼用の万力に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを挟持するために用いられるバイスの最も基本的な構造は、例えば、しゃこ万力に見られるように、対向して配置した挟持体を、その一方の挟持体が他方の挟持体に対して進退できるように設け、その可動の挟持体側に螺子軸を連結し、この螺子軸をレバーで回動操作することによって、前記可動の挟持体を固定の挟持体に向け移動させ、両挟持体間にワークを挟持しワークを位置固定するものである。
【0003】
従来の万力の一例を図8に示す。この万力は、コの字型のベース部1と、対向して配置した挟持体として固定ジョー2と可動ジョー3を備える。ベース部1の上面は平坦なスライド面を形成する。固定ジョー2はベース部1の左端においてベース部1に一体的に固定され、可動ジョー3はベース部1の上に摺動自在に設けられる。そして、右端の駆動軸4はねじ部を備え、ベース部1の他端の右端に形成された雌ねじと螺合され、その他端へ取り付けられるハンドル等を回転することにより可動ジョー3を固定ジョー2に対して接近或いは離隔する方向へ移動可能とされている。
【0004】
このような万力を用いてワーク5を挟持して加工する場合、固定ジョー2と可動ジョー3の間にワーク5を支持した状態で可動ジョー3を固定ジョー2へ接近させて両ジョー2、3によってワーク5を挟持する。この状態のまま工作機械のテーブルの上に万力をセットし、バイト、エンドミルあるいは砥石等の工具を使ってワークを加工する。
【0005】
このように、従来からワークを加工する際にワークが動かないように挟持するためにバイスに関する提案が多くなされている。その中で、例えばバイスの使用状態における全長が変わらずコンパクト性を有し、またワークの挟持を弾力的に強固に行うことができる万力が提供されている(特許文献1参照)。他に、複数枚のワークを挟持した場合でもワークの浮き上がりを抑制することが可能な万力が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献2】特開2000−306256号公報
【特許文献2】実開平5−51564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の通りであって、特許文献に代表されるように、従来の万力には次のような問題点がある。
【0008】
即ち、従来の万力の問題点の第一は、挟持すると破壊するような脆くて薄いワークを掴むことができない。この場合、ワークが磁性体の場合は電気あるいは永久磁石式のチャックによってワークを吸着、保持することができる。しかしながら、例えば、シリコンウエハー板、アルミナ板等のセラミックのような非磁性体で、しかも脆性材からなる扁平状のワークの場合は、万力ではワークが破壊するし、電気あるいは永久磁石式のチャックを使用してもワークを保持することができない。
【0009】
第二に、従来の万力は、ワークを単に挟持するだけの用途に過ぎず、チャックとしての機能を有しない。そのため、加工機械のテーブル上に万力を固定した場合、扁平状のワークを保持して加工をすることができない。扁平状のワークを平面加工する場合、万力を加工機械から外し、改めて別のチャックを工作機械のテーブル上にセットし直す必要がある。このように、ワークの材質あるいは形状が代わるたびに、万力あるいはチャックを交換する必要がある。即ち、ワークの形状あるいは種類によって保持する機能の万能性に欠けていた。
【0010】
そこで、本発明の真空チャック兼用の万力は、このような従来の万力の持つ問題点を解決するためになされたもので、非磁性体でしかも挟持すると破壊するような薄い脆性材料であっても自在に保持することが可能な真空チャックの機能を有し、かつ、ワークを堅固に狭持可能な万力の機能をも併せ持つ真空チャック兼用の万力を提供することを目的としている。即ち、ワークのいかなる材質あるいはいかなる形状に係らず自在に狭持および保持することができるようにした真空チャック兼用の万力を提供することを目的としている。
【0011】
さらに、本発明は、ワークに加工を施すいかなる工作機械においても使用可能な真空チャック兼用の万力を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明者等は、真空チャックを使用することにより材質的に脆い扁平状のシリコンウエハーを確実に保持することができることに着目し、一方、堅固に挟持しても破壊することの無い鋼等の金属材料をも保持することのできる万力と真空チャックを兼用させることが可能な治工具へと着想を展開した。この着想に基づき真空チャック兼用の万力を試作したところ、あらゆる工作機械の上で非常に使い勝手がよいという知見を得た。本発明の真空チャック兼用の万力はかかる知見を基に具現化したもので、請求項1の発明は、ベース部と、ベース部に一体的に形成されあるいは固定された固定ジョーと、ベース部上を移動可能な可動ジョーを備える万力であって、固定ジョーは真空チャック機能を有する構成としたことを特徴とする真空チャック兼用万力である。
【0013】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明の上記特徴に加えて、固定ジョーの上面には碁盤目状にOリング溝を刻設することを特徴とする真空チャック兼用万力である。
【発明の効果】
【0014】
一台の治工具で各種材質あるいは各種形状のワークを挟持でき、かつ、各種材質の扁平状ワークを保持することができる。具体的には、脆くて破壊しやすい扁平状の各種の非磁性体を真空チャックにより保持し、かつ、ブロック等各種形状の金属材料を万力で挟持することができる。従って、一度工作機械のテーブルにセットしたら、ワークの材質あるいは形状が変わっても万力を取り外し交換する面倒がない。そのために、治工具を工作機械に段取りする時間を省くことができ、ワークを加工する能率が向上する等の効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態を、添付図面に例示した本発明の実施例に基づいて以下に具体的に説明する。
【実施例】
【0016】
先ず、本発明の実施例1について、図1〜図7を参照しながら説明する。図1は、真空チャック兼用万力の全体構造を示す斜視図である。図2は、固定ジョーの上面に刻設されたOリング溝を示す斜視図である。図3は、固定ジョーの上面にOリングを装着した状態を示す斜視図である。図4は、万力として使用する場合で、可動ジョーをロックしてワークを挟持する状態を示す断面図である。図5は、真空チャックとして使用する場合で、固定ジョーにワークを保持する状態を示す真空経路の断面図である。図6は、可動ジョーをロックする状態を示す裏面図である。図7は、真空チャック専用として使用する状態を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施の形態による真空チャック兼用の万力は、下方のベース部10と、この上に固定ジョー20とこれに対向して可動ジョー30を備える。ベース部10の長手方向両側において角を直角に落としたスライド部11、11が形成される。なお、可動ジョー30の底面は、スライド部11、11の角落ち形状に合わせて凹状に形成される。
【0018】
図の左端において、固定ジョー20はベース部10に裏面から螺子等で一体的に固定される。他方の可動ジョー30は、固定ジョー20に対面するようにベース部10の長手方向両側のスライド部11、11を上方から跨ぐように配置され、両側のスライド部11、11に沿って図示の矢印Aの方向に摺動する。ベース部10には、中央長手方向に長穴7を貫通するように設ける。図1および図4に示すように、可動ジョー30にはベース部10方向に上方から斜め下方にロック螺子6を貫通して設け、その先端部にストッパー9を設ける。ここで、ストッパー9は、先端部断面が円状の係止部92と柄部91とから構成される。また、図6に示すように、ベース部10の裏面で長穴7の長手方向に沿って、両側に凹部71、71を複数個所設け、ストッパー9先端の係止部92の両端部が凹部71、71の溝に係止される。
【0019】
また、図2に示すように、固定ジョー20の上面にはOリング溝22が碁盤目状に刻設される。Oリング溝の縦横方向の隣接するピッチ間隔および溝の寸法はワークの大きさあるいは形状によって自由に選択することができる。
【0020】
以上のように構成され、次に作用について説明する。
【0021】
ベース部10の長手方向両側のスライド部11、11に沿って、可動ジョー30を左方へ押す。可動ジョー30は摺動自在に設けられているので固定ジョー20に対して接近或いは離隔するように移動する。
【0022】
先ず、真空チャック兼用万力を万力として使用する場合について説明する。基本的には、ワークの形状は肉厚のあるブロックであって、挟持することにより歪んで変形を生じないものである。ブロックに旋削、研磨、穴あけ、切断、溝加工等あらゆる加工を施す場合に使用することができる。図4に示すように、被加工物のワーク5を固定ジョー20と可動ジョー30との間に挟んだ状態で可動ジョー30の位置を決め、次に可動ジョー30をベース部10にロックして固定する。ここで、ロック螺子6が可動ジョー30の中を斜め左下方に貫通しており、ロック螺子6の先端部がベース部10に設けた長穴7に達する。ロック螺子6の先端螺子部にベース部10の裏側からストッパー9が螺合する。この詳細をベース部10の裏側から見た図6に示すように、ストッパー9は柄部91と係止部92とからなり、係止部92の断面は円状であってこの外郭部が長穴7に設けた凹部71に係止される。そして、斜め上方からロック螺子6を締め付けることによって、ストッパー9の係止部92の両端部が両側の凹部71、71に堅く係止されるので可動ジョー30の位置を固定することができる。ここで、長穴7に沿う複数個所の凹部71、71の位置をワークの大きさによって選択することによってストッパー9の位置を変えることができる。凹部71、71は長穴7に沿って複数個所設けられるので、可動ジョー30はワーク5の大きさに応じて移動して適宜位置にロックされる。可動ジョー30の位置が決まったら、上からロック螺子6をストッパー9の螺子に締め付け固着する。図4のように、ロック螺子6は、右斜め上方から下方のストッパー9を締め付けるので、可動ジョー30には左方向への力が作用して保持されているワーク5を固定ジョー20との間に堅固に挟持することができる。
【0023】
次に、真空チャック兼用万力を真空チャックとして使用する場合について説明する。ワークの材質および形状は、基本的には電磁チャックでは保持することができない非磁性体で、かつ、扁平状である。万力で挟むと変形あるいは破壊するような脆いワークでも保持可能である。図5の断面図に真空経路を示すように、固定ジョー20の上面に吸引口23を設け、その延長上の導管24を経て、ベース部10の長手方向に穿孔した導管12へと続き、さらにベース部10の右端部の吸引口13へと連通する真空経路が形成される。この吸引口13にホース40が配管されて真空源のエジェクター50に接続される。そして、固定ジョー20の上面のOリング溝22にはOリング8が装着されるのでワーク5と固定ジョー20の上面との間の空間は密封状態が保たれる。この真空経路によって吸引口23から真空吸引されると、ワーク5はOリング8の上でソフトに保持される。例えば、以上に述べた真空チャック兼用万力を工作機械のテーブル上にセットする。次いで、固定ジョー20の表面に刻設されたOリング8の上に、扁平状のシリコンウエハーを真空吸着して小片へとスライス加工する。
【0024】
固定ジョー20の上面には碁盤目状にOリング溝22が交差している。従って、Oリング溝22の位置にOリング8を装着するに際し、ワーク5の大きさに応じてOリングの位置を変えることができる。例えば、扁平状のワーク5の直径が大きい場合は、碁盤目状のOリング溝22の外側の溝に沿ってOリング8を装着すればよい。
【0025】
他の使い方として、この真空チャック兼用万力を真空チャック専用として使用することができる。例えばOリング溝22を刻設した3基の固定ジョー20、20、20をベース部10の上に並べて固着した状態を図7に示す。真空チャックの面積を拡大することにより、一度に多量のワークをチャックして加工できるので生産能率を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の使途は、各種の工作機械でワークを加工するために使用可能な真空チャック兼用の万力である。旋盤による切削、研磨機による研削、研磨、カッターによる切断、あるいは、ワークをバフ等でポリシングするためにワークを保持する用途に拡大できる。シリコンウエハー、ファインセラッミク材等非磁性体で、かつ、脆い電子材料を吸着して切断等加工するには最適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係わる真空チャック兼用万力の全体構造を示す斜視図である。
【図2】同上、固定ジョーの上面に刻設されたOリング溝を示す斜視図である。
【図3】同上、固定ジョーの上面にOリングを装着した状態を示す斜視図である。
【図4】同上、万力として使用する場合で、可動ジョーをロックしてワークを挟持する状態を示す断面図である。
【図5】同上、真空チャックとして使用する場合で、固定ジョーにワークを保持する状態を示す真空経路の断面図である。
【図6】同上可動ジョーをロックする状態を示す裏面図である。
【図7】同上、真空チャック専用として使用する状態を示す斜視図である。
【図8】従来例を示すもので、万力の側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1、10 ベース部
11 スライド部
12 導管
13 吸引口
2、20 固定ジョー
22 Oリング溝
23 吸引口
24 導管
3、30 可動ジョー
4 駆動軸
5 ワーク
6 ロック螺子
7 長穴
71 凹部
8 Oリング
9 ストッパー
91 柄部
92 係止部
40 ホース
50 真空エジェクター
【出願人】 【識別番号】506317554
【氏名又は名称】株式会社石川精工
【出願日】 平成18年9月20日(2006.9.20)
【代理人】 【識別番号】100068663
【弁理士】
【氏名又は名称】松波 祥文


【公開番号】 特開2008−73796(P2008−73796A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−254656(P2006−254656)