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【発明の名称】 油圧式トルクレンチ
【発明者】 【氏名】横田 義明

【要約】 【課題】駆動入力部の回転を減速して伝達することにより高いトルク出力を得ることができ、且つ軸方向にコンパクトな油圧式トルクレンチを提供する。

【構成】駆動入力部の主軸51の回転により外装部3内でシリンダ20を回転させ、その回転に伴って出力軸10に衝撃的に回転力を伝達する油圧式トルクレンチにおいて、主軸51の回転が遊星歯車機構5を介してシリンダに伝達され、シリンダの後方には、遊星歯車機構5の遊星歯車53が配置されており、シリンダ20は、主部をなす大径部と、遊星歯車の軸支持部の径方向外方に位置する小径部とを備え、シリンダ後部を支持するベアリング35が小径部と外装部3との間に配置されていることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にトルクを与える出力軸と、該出力軸を回転可能に支持し前方へ突出するように貫通させた前壁、駆動入力部を接続可能とされた後壁、及びこれらの間に位置する側壁を備えて、内部に作動油収容の液密室を形成し、前記出力軸と同一の回転軸線回りに回転し得るシリンダと、前記液密室内で前記出力軸により径方向に摺動可能に保持された複数の摺動部材と、前記シリンダと共に回転するように前記後壁に接続されて前記出力軸内に延びる作動部材とを備え、前記シリンダの側壁内面には、隆起部が周方向に複数形成されており、前記作動部材は、回転に伴って前記摺動部材に作用し、該摺動部材を前記隆起部に接触し得る位置に間欠的に至らしめ、該接触により駆動入力部のトルクを前記出力軸に伝達する油圧式トルクレンチにおいて、
駆動入力部の主軸の回転は遊星歯車機構を介して減速下に前記シリンダに伝達され、前記シリンダの後方には、該遊星歯車機構の遊星歯車が配置されており、
該遊星歯車の軸は前方へ延びて前記シリンダの支持穴に支持されており、
前記シリンダは、前記摺動部材の径方向外方に位置する大径部と、前記支持穴の径方向外方に位置する小径部とを備え、該シリンダ後部をトルクレンチ外装部に対して回転可能に支持するためのベアリングが前記小径部と前記外装部との間に配置されていることを特徴とする油圧式トルクレンチ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルト、ナットなどのねじ嵌合部材、その他の回転部材に回転トルクや締め付け又は弛めのためのトルクを与える油圧式トルクレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧式トルクレンチは、対象物にトルクを与える出力軸に対して、駆動入力部の回転力を衝撃的に伝達し、瞬発的なトルクを繰り返し出力するものである。その基本的な構造は、外装部(ハウジング)内の後部に駆動入力部を設け、その主軸の回転を伝達するように前方にシリンダを配置し、シリンダ内から前方へ出力軸を突出させたものとなっている。シリンダは内部に作動油を収容し内周面には隆起部が設けられており、出力軸には径方向へ出没する摺動部材が設けられており、隆起部と摺動部材との接触時に、接触圧又は接触の液密性に基づく液圧により瞬間的にトルクの伝達を行なう。これにより、駆動入力部の連続的な回転力が、出力軸の瞬発的な回転力となって出力される。
【0003】
油圧式トルクレンチの駆動機構においては、駆動入力部の主軸の回転力を変速歯車機構を介在させてシリンダへ伝える場合がある。特に、駆動入力部が、電動モータのように高い回転数を有する場合に、そのような伝動機構が必要とされる。これは、直結による伝達では、出力軸の回転数が駆動入力部と同じとなり、回転数が高い分、1回転毎に出力される衝撃力が弱くなるので、変速歯車機構で減速下に伝達することにより、1回転毎の出力を高めるためである。
【0004】
しかしながら、変速歯車を介在させた分、トルクレンチが軸方向に大きくなり、手で把持して作業を行なう際の操作性に劣ることとなる。これに対処する提案が、例えば、特許文献1においてなされている。特許文献1に記載されたものは、駆動入力部の主軸からシリンダ(インパクト装置)へ回転を伝達する変速歯車機構全体を駆動入力部側に配置することなく、変速歯車機構に遊星歯車を用い、その遊星歯車をシリンダに支持させたものである。変速歯車機構全体を駆動入力部側に配置すると、変速歯車機構とシリンダとの間の軸方向のカップリング部材を介在させる必要があり、その分軸方向の寸法が大きくなっていたが、上記構造によれば、遊星歯車と駆動歯車との噛合が径方向に行なわれるので、軸方向寸法が減少しコンパクト化が図られるというものである。
【特許文献1】特開平8−187673号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の油圧式トルクレンチは、遊星歯車をシリンダに支持し、且つシリンダの後部を回転可能に支持する構造として、図5に示す構造を採っていた。すなわち、シリンダ101の後部を閉じる壁部102で遊星歯車103を支持し、該壁部を遊星歯車より後方へ延ばして筒部104を形成し、該筒部の外周面にベアリング105を嵌合した構造である。したがって、トルクレンチは、或る程度、軸方向に小さくなったものの、直結構造のものに比べれば、シリンダの後部の遊星歯車とベアリングが介在する分、長くなっており、さらなる小型化が要請されていた。
【0006】
本発明は、この要請に応え、駆動入力部の回転を減速して伝達することにより高いトルク出力を得ることができ、且つ軸方向にコンパクトな油圧式トルクレンチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、対象物にトルクを与える出力軸と、該出力軸を回転可能に支持し前方へ突出するように貫通させた前壁、駆動入力部を接続可能とされた後壁、及びこれらの間に位置する側壁を備えて、内部に作動油収容の液密室を形成し、前記出力軸と同一の回転軸線回りに回転し得るシリンダと、前記液密室内で前記出力軸により径方向に摺動可能に保持された複数の摺動部材と、前記シリンダと共に回転するように前記後壁に接続されて前記出力軸内に延びる作動部材とを備え、前記シリンダの側壁内面には、隆起部が周方向に複数形成されており、前記作動部材は、回転に伴って前記摺動部材に作用し、該摺動部材を前記隆起部に接触し得る位置に間欠的に至らしめ、該接触により駆動入力部のトルクを前記出力軸に伝達する油圧式トルクレンチにおいて、駆動入力部の主軸の回転は遊星歯車機構を介して減速下に前記シリンダに伝達され、前記シリンダの後方には、該遊星歯車機構の遊星歯車が配置されており、該遊星歯車の軸は前方へ延びて前記シリンダの支持穴に支持されており、前記シリンダは、前記摺動部材の径方向外方に位置する大径部と、前記支持穴の径方向外方に位置する小径部とを備え、該シリンダ後部をトルクレンチ外装部に対して回転可能に支持するためのベアリングが前記小径部と前記外装部との間に配置されていることを特徴とする油圧式トルクレンチを提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、次の効果を奏する油圧式トルクレンチを提供することができる。すなわち、油圧式トルクレンチにおいて、駆動入力部の主軸の回転は、遊星歯車機構を介して減速下に前記シリンダに伝達されるので、出力軸からは高いトルク出力が得られる。そして、該遊星歯車機構の遊星歯車の軸は、前方へ延びてシリンダの支持穴に支持されており、シリンダは、摺動部材の径方向外方に位置する大径部と、前記支持穴の径方向外方に位置する小径部とを備え、ベアリングが該小径部と外装部との間に配置されシリンダ後部をトルクレンチ外装部に対して回転可能に支持している。摺動部材は、作動部材及び出力軸の径方向外方に位置し、しかも隆起部との接触位置と非接触位置と進退動するので、これを覆うシリンダ部分(大径部)は、これに見合った大きな径となる。一方、遊星歯車軸を支持する支持穴は、その中心軸線が、遊星歯車の半径に相当する距離だけ冠歯車から径方向内方に位置するので、シリンダにおける支持穴径方向外方に位置する部分は、径を小さくすることができる。そして、その部分を径の小さい小径部とすることにより、ベアリングを、遊星歯車軸の支持穴の径方向外方に位置させることができる。このベアリングの配置によれば、軸方向への寸法を拡大することなくシリンダ後部を回転可能に支持することができる。その結果、軸方向にコンパクトな油圧式トルクレンチを実現することができるのである。
【0009】
また、ベアリングは、シリンダにおける遊星歯車支持穴の径方向外側であって外装部の内側に位置することにより、大きな径を持つことになる。その結果、シリンダの支持が安定で強固になるという利点も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しつつ説明する。図面中の同一又は同種の部分については、同じ符号を付して説明を省略することがある。
【0011】
図1は本発明に係る油圧式トルクレンチの一実施形態を示している。この油圧式トルクレンチは、ボディ1とハンドル2とを備え、ボディ1は、後部に駆動モータ4、前部に伝動装置6を備え、これらの間に遊星歯車機構5が介在している。ボディ1及びハンドル2の外表面は、外装部3で覆われ、ボディ1の前端から出力軸10が突出している。ハンドル2は、片手で把持される大きさとされ、前側にモータ作動のオン・オフ用スイッチ7が設けられている。駆動モータは、電動モータ、エアモータ等、適宜の駆動源を備えたものを用いることができる。
【0012】
図2は、図1における遊星歯車機構5及び伝動装置6を中心に示す縦断面図であり、図3は図2のIII-III線に沿う断面図である。図示のように、伝動装置6は、ボディ1内で回転可能に支持されたシリンダ20を備えており、該シリンダは、該出力軸を回転可能に支持し前方へ突出するように貫通させた前部部材21と、駆動入力部を接続可能とされた後部部材22と、これらの間に位置する側壁23とを備えている。前部部材21は、側壁23の前半部分の外側を覆う環状部211と、該環状部の前端から径方向内容へ延びる前フランジ212と、該前フランジから前方へ延びる前筒部213とを備えて、一体的に形成されている。後部部材22は、側壁23の後端から径方向内方へ延びる後フランジ221と、該後フランジから後方へ延びる後筒部222と、該後筒部の後端を閉じる端壁223とを備えている。
【0013】
この実施形態においては、側壁23に対して後部部材22は後壁の役割をなし、両者は一体的に形成されカップ状になっている。前部部材21は、側壁23の外周面に形成された雄ねじ部と該前部部材21の内周面に形成された雌ねじ部との螺合により側壁23と結合され、側壁23前端の開口を閉じる前壁の役割をなす。側壁23と前部部材21との間には、シールリング230が介在している。また、側壁23及び環状部211は、外装部3の内面に接近する径を有した大径部を形成し、後部部材22の後筒部222は、側壁23より小さい径を有した小径部を形成している。シリンダ20は、内部に液密室24を形成し作動油を収容しており、出力軸10と同一の回転軸線回りに回転可能に支持されている。
【0014】
出力軸10は、外装部前端の開口部に支持され前方へ突出した軸先部11と、液密室24内に位置する軸基部12とを備えている。軸先部11は、外装部3の前端部にベアリング32を介して回転可能の指示されており、軸基部12は後端部を後部部材22の後筒部222の内側に回転可能に支持されている。また、軸基部12は、軸線方向に延びる収容孔14を内部に形成された囲繞壁15を備え、該囲繞壁には軸線方向に延び周面から径方向に深くされ、相互に平行に延びる側壁を備えた1対のガイド溝16が形成されている。また、囲繞壁15におけるガイド溝16の底壁15aには、1対の貫通孔17が形成されている。
【0015】
液密室24内では、軸基部12のガイド溝16に摺動部材40が径方向に摺動可能に保持されている。摺動部材40は、ガイド溝16の軸方向長さに亘って延びる外側部分41と、該外側部分41の内側に位置するローラである内側部分42とを備え、軸基部12のガイド溝16により径方向に摺動可能に保持されている。外側部分41は、ガイド溝16の側壁に平行な側壁を有し、ガイド溝16にほぼ密に嵌合している。内側部分42は、前述の貫通孔17に挿入され、摺動位置により該貫通孔17から収容孔14内に突出した位置と該収容孔14から後退した位置とを取り得る。1対の摺動部材40は、内側部分42を軸線方向における相互に異なる箇所に備えている。
【0016】
図3に示すように、シリンダ20の側壁23は、内周面の断面形状がほぼ円形とされ、なだらかに隆起した1対の隆起部31が対向位置に設けられており、これらの隆起部31は各々軸方向に延びている。これらの部分は、シリンダ20の回転位置において、1対の隆起部31と1対の摺動部材40とが同時に対向位置に至るように配置されており、その位置で隆起部31は摺動部材40に接して径方向に押し込み力を与える。
【0017】
また、軸基部12の収容孔14には、作動部材50が収容されている。作動部材50は、図4に示すように、前端部51,中央部52及び後端部53が、収容孔14の内径に近い外径を有した円板状とされ、前端部51と中央部52との間、及び中央部52と後端部53との間に、扁平部54,55が各々設けられている。2つの扁平部54,55は、軸線方向において摺動部材の内側部分42に対応した位置で、相反する径方向に延びている。後端部53の後端には径方向に細長く延びる凸部56が設けられ、シリンダ20の端壁223には該凸部56に対応した凹部が形成され、両者の嵌合により、作動部材50はシリンダ20と共に回転するようになっている。
【0018】
作動部材50は、回転に伴って扁平部54,55が、摺動部材40の内側部分42に当接することにより、摺動部材40をガイド溝16から押し出すように作動するカムの役割をなす。
【0019】
遊星歯車機構5は、駆動入力部4の歯付き主軸51を太陽歯車とし、外装部3の内周面に固定された環状の内歯歯車52を冠歯車とし、その間に複数(例えば2個)の遊星歯車53を噛合させて形成されている。シリンダ20の後筒部222には、遊星歯車53の位置に対応して雌ねじ付きの支持穴222aが形成されており、遊星歯車53の軸530は、該支持穴222aに螺入され、遊星歯車53を回転自在に支持している。これにより、後筒部222は遊星歯車53のキャリアの役割をなす。
【0020】
支持穴222aは、その中心軸線が、遊星歯車53の半径に相当する距離だけ内歯歯車52から径方向内方に位置する。この例では、遊星歯車53の軸530の中心軸線は、出力軸10の中心軸線から外装部3の内周面までの半径のほぼ半分の位置にある。したがって、シリンダ20の側壁23及び環状部211による大径部に比し、後部部材22の後筒部222による小径部は、顕著に径を小さくすることができる。その結果、小径部と外装部3内面との間には、十分なスペースが形成され、そこにベアリング35が配置されている。ベアリング35は、この例ではラジアルボール軸受けとされ、外輪を外装部3内面に固定され、内輪をシリンダ20の後部外周に固定されることにより、シリンダ20後部を外装部3に対し回転可能に支持している。
【0021】
このように、遊星歯車機構5が、主軸51、遊星歯車53及び内歯歯車52により、径方向の伝動構造で形成され、しかも、シリンダ20後部を回転可能に支持するためのベアリングはシリンダ20の小径部に配置されているので、遊星歯車機構5を設けることによる軸方向への寸法の拡大は、ほぼ遊星歯車53の厚さ分に抑えられている。
【0022】
この油圧式トルクレンチの作動は、以下のようにして作動する。駆動入力部が作動し主軸51が回転すると、その回転は、遊星歯車53に伝えられ、遊星歯車53は自転しながら内歯歯車52に沿って公転する。これにより、遊星歯車53の軸530を支持したシリンダ20は、主軸51に対して減速された回転数で回転する。ねじの締め付け等のために出力軸10がねじに係合した状態では、締め付け反力で出力軸10がほぼ静止状態となり、これに伴って、出力軸10の軸基部12に支持された摺動部材40も回転方向にほぼ静止状態となる。この状態で、シリンダ20は回転し、これと共に作動部材50も回転する。その結果、摺動部材40は、扁平部54,55に接触したときにガイド溝16から押し出され、そのときにシリンダ20の隆起部31と接触し、これにより衝撃的な回転力を受ける。摺動部材40が隆起部31と接触する際には、扁平部54,55は摺動部材40の内側部分42から外れているが、収容孔14内に閉じこめられた作動油の圧力により、摺動部材40は突出位置に保持され、これに基づき隆起部31からの回転力の伝達が維持される。この機構の詳細は、特願2006−55000,特願2006−158897に記載されている。また、シリンダの回転と摺動部材の出没とに基づく同様の衝撃的回転力の伝達機構は、上記特許文献1の他、特開昭64−45582、特開2006−35358等の公知の機構が知られており、これらの機構を本発明に適用することも可能である。このように、この油圧式トルクレンチは、駆動入力部の回転を減速して伝達することにより高いトルク出力を得ることができ、且つ軸方向にコンパクトなものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧式トルクレンチを一部断面で示す正面図である。
【図2】図1における遊星歯車機構及び伝動装置を中心に示す縦断面図である。
【図3】図2のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1の油圧式トルクレンチに使用される作動部材を示す斜視図である。
【図5】従来の油圧式トルクレンチの一例を一部断面で示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 出力軸
20 シリンダ
21 前部部材(前壁)
22 後部部材(後壁)
23 側壁
24 液密室
31 隆起部
40 摺動部材
50 作動部材
【出願人】 【識別番号】393024441
【氏名又は名称】株式会社光洋
【出願日】 平成18年8月18日(2006.8.18)
【代理人】 【識別番号】100065215
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 英二

【識別番号】100076510
【弁理士】
【氏名又は名称】掛樋 悠路

【識別番号】100094101
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 泰光


【公開番号】 特開2008−44080(P2008−44080A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−223050(P2006−223050)