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【発明の名称】 締め付けトルク体得用治具
【発明者】 【氏名】嶋田 信義

【要約】 【課題】トルクレンチを用いる必要がなく、簡単且つ経済的な構成で、所望の締め付けトルクを確実に体得することを可能にする。

【構成】治具10は、基台12に回転可能に配設される軸部18を備える。軸部18には、寸法の異なる第1ボルト部材32、第2ボルト部材34及び第3ボルト部材36が設けられるとともに、前記軸部18には、該軸部18の径方向外方に延在する腕部22が一体に設けられる。腕部22には、軸部18が締め付け方向に回転される際、揺動する前記腕部22に所望の締め付けトルクに相関する負荷を与えるスプリング50が係合し、表示部52を介して前記軸部18が所望の締め付け状態に至ったことが示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルト又はナットが一体に設けられる軸部と、
前記軸部が回転可能に配設される基台と、
前記軸部に一体に設けられ、該軸部の径方向外方に延在する腕部と、
前記腕部に係合し、前記ボルト又は前記ナットを介して前記軸部が締め付け方向に回転される際、揺動する前記腕部に負荷を与える弾性部材と、
前記ボルト又は前記ナットが所望の締め付け状態に至ったことを示す表示部と、
を備えることを特徴とする締め付けトルク体得用治具。
【請求項2】
請求項1記載の治具において、前記軸部には、寸法の異なる複数のボルト又はナットが一体に設けられることを特徴とする締め付けトルク体得用治具。
【請求項3】
請求項1又は2記載の治具において、前記基台には、前記腕部に係合して前記軸部が前記締め付け方向とは逆方向に回転することを規制するストッパ部が設けられることを特徴とする締め付けトルク体得用治具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の治具において、前記表示部は、前記ボルト又は前記ナットが所望の締め付け状態に至った際に、前記腕部の揺動先端部が指し示す位置に設けられることを特徴とする締め付けトルク体得用治具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者がレンチ(スパナ)によって六角ボルトやナット又はソケットボルト等を締め付ける際に必要な所望の締め付けトルクを体得するための締め付けトルク体得用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、機械部品同士の締め付けや固定、又は構造物同士の締め付けや固定に際して、ボルトやナット等のねじ部品が使用されている。このねじ部品としては、例えば、レンチに嵌合する略六角柱状の頭部と、この頭部と一体に回転する雄ねじ部とを備える六角ボルトが知られている。
【0003】
一般的に、機械部品同士を締め付け固定する際に、多数の六角ボルトが用いられており、安定した締め付け状態を得るためには、前記六角ボルトによるそれぞれの締め付けトルクを均一に設定する必要がある。従って、通常、多数の六角ボルトを用いて締め付け処理が行われた後、各六角ボルトが所定の締め付けトルクで締め付けられているか否かを、トルクレンチを用いて確認する作業が行われている。
【0004】
このトルクレンチとしては、例えば、特許文献1に開示されている「締結トルク測定に適したトルクレンチ」や、特許文献2に開示されている「マーカ筒付トルクレンチ」等が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−52477号公報(図1)
【特許文献2】特開平6−226653号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1及び特許文献2では、それぞれトルクレンチが用いられており、前記トルクレンチの操作が煩雑である。特に、多数の六角ボルトが締め付けられる際に、前記トルクレンチによる作業が相当に煩雑且つ時間のかかるものとなるという問題がある。
【0007】
しかも、作業スペースが狭い場合には、トルクレンチが使用できない場合があり、汎用性に劣るという問題がある。その上、トルクレンチ自体は、相当に高価であり、複数のトルクレンチが必要な場合に、相当なコストアップが惹起されるという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、トルクレンチを用いる必要がなく、簡単且つ経済的な構成で、所望の締め付けトルクを確実に体得することが可能な締め付けトルク体得用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ボルト又はナットが一体に設けられる軸部と、前記軸部が回転可能に配設される基台と、前記軸部に一体に設けられ、該軸部の径方向外方に延在する腕部と、前記腕部に係合し、前記ボルト又は前記ナットを介して前記軸部が締め付け方向に回転される際、揺動する前記腕部に負荷を与える弾性部材と、前記ボルト又は前記ナットが所望の締め付け状態に至ったことを示す表示部とを備えている。
【0010】
また、軸部には、寸法の異なる複数のボルト又はナットが一体に設けられることが好ましい。
【0011】
さらに、基台には、腕部に係合して軸部が締め付け方向とは逆方向に回転することを規制するストッパ部が設けられることが好ましい。
【0012】
さらにまた、表示部は、ボルト又はナットが所望の締め付け状態に至った際に、腕部の揺動先端部が指し示す位置に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボルト又はナットにレンチを嵌合して回転させると、軸部と一体に揺動する腕部には、弾性部材を介して負荷が与えられる。そして、表示部を介してボルト又はナットが所望の締め付け状態に至ったことが表示されるため、作業者は、前記ボルト又は前記ナットに必要な締め付けトルクを正確に体得することができる。これにより、トルクレンチを用いる必要がなく、簡単且つ経済的な構成で、所望の締め付けトルクを確実に体得することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る締め付けトルク体得用治具10の概略斜視説明図であり、図2は、前記治具10の一部断面側面図である。
【0015】
治具10は、板状の基台12を備え、この基台12の長手方向一端側には、取り付け孔部14が厚さ方向に貫通形成される。この取り付け孔部14には、ベアリング16を介して略円筒状の軸部18が回転可能に挿入される。軸部18は、基台12上に配置される大径部20を設けるとともに、この大径部20の外周部には、径方向外方に延在する腕部22が一体に設けられる。
【0016】
軸部18内には、第1孔部24、第2孔部26及び第3孔部28が同軸的に、且つそれぞれの直径を大きくして連通する。軸部18は、取り付け孔部14にベアリング16を介して挿入されるとともに、端部にワッシャ30が装着されて基台12から抜け止めされる(図2参照)。
【0017】
図2及び図3に示すように、軸部18の第1孔部24、第2孔部26及び第3孔部28には、それぞれ第1ボルト部材32、第2ボルト部材34及び第3ボルト部材36が固着される。第1ボルト部材32、第2ボルト部材34及び第3ボルト部材36は、ソケットボルトを構成しており、それぞれ、例えば、M5、M6及びM8ソケットボルトに対応する寸法に設定されている。なお、M5、M6及びM8の他、種々の寸法に設定可能である。
【0018】
第3ボルト部材36には、後述するM8用ヘキサゴンレンチ56cが嵌合するとともに、M6用ヘキサゴンレンチ56bを挿入させる孔部36aが形成される。第2ボルト部材34には、このM6用ヘキサゴンレンチ56bが嵌合するとともに、M5用ヘキサゴンレンチ56aを挿入させる孔部34aが設けられる。
【0019】
腕部22は、長尺な角柱形状を有し、その先端部に先鋭部38が設けられており、前記腕部22の途上(略中間部)には、孔部40が形成される。基台12には、一方の長辺側略中央部にボルト42を介してロッド部44が装着される。ロッド部44は、略円柱状を有するとともに、このロッド部44は、腕部22の孔部40よりも小径に設定される。ロッド部44には、例えば、ナットであるストッパ部46が所定の位置に取り付けられる。ストッパ部46が腕部22に当接することにより、軸部18が矢印B方向(矢印A方向とは逆方向)に回転することを規制する。
【0020】
ロッド部44は、腕部22の孔部40に挿入されて基台12の他方の長辺側に延在し、固定部48に連結される。このロッド部44には、弾性体、例えば、スプリング50が外装されており、このスプリング50は、固定部48と腕部22との間に介装される。
【0021】
スプリング50は、軸部18がボルト締め付け方向(矢印A方向)に回転される際、揺動する腕部22に負荷を与えるものであり、基台12には、所望のボルト締め付け状態になったことを示す表示部52が設けられる。
【0022】
表示部52は、軸部18が回転されて所望のボルト締め付け状態に至った際に、腕部22の揺動先端部である先鋭部38が指し示す位置に設けられる。具体的には、第1ボルト部材32に対応するM5ソケットボルトを実際に工具で締め付けた際のトルクと、スプリング50による負荷との相関を予め測定し、その締め付けトルクに対応するスプリング負荷が発生する軸部18の回転角度位置に対応してM5表示54aが設定される。
【0023】
同様に、第2ボルト部材34に対応するM6ソケットボルトを締め付ける際の締め付けトルクに相当するスプリング50の負荷が測定され、そのスプリング負荷が発生する軸部18の回転角度位置に対応してM6表示54bが設定される。さらに、第3ボルト部材36に対応するM8ソケットボルトの締め付けトルクに相当するスプリング50の負荷が測定され、そのスプリング負荷が発生する軸部18の角度位置に対応してM8表示54cが設定される。
【0024】
このように構成される治具10の動作について、以下に説明する。
【0025】
先ず、図4に示すように、作業者がM5ソケットボルトの締め付けトルクを体得しようとする際、M5用ヘキサゴンレンチ56aを把持し、このM5用ヘキサゴンレンチ56aを第2ボルト部材34の孔部34a及び第3ボルト部材36の孔部36aを貫通して第1ボルト部材32に嵌合させる。そして、作業者が、M5用ヘキサゴンレンチ56aを矢印A方向に回転させると、軸部18は、ベアリング16を介して基台12に対し矢印A方向に回転し、この軸部18に一体に設けられている腕部22が矢印A方向に揺動する。
【0026】
この腕部22の長さ方向略中央部には、スプリング50が当接しており、前記腕部22が矢印A方向に揺動すると、前記スプリング50が固定部48側に押圧されて圧縮される。従って、腕部22には、スプリング50の反力による負荷が与えられ、作業者は、M5用締め付けトルクを実感することができる。そして、腕部22の先鋭部38が、表示部52を構成するM5表示54aの矢印と一致することにより、作業者は、M5用ヘキサゴンレンチ56aを介してM5ソケットボルトに必要とされる所望の締め付けトルクが体感することができる。
【0027】
さらに、作業者は、上記のように、M5用ヘキサゴンレンチ56aを用いて第1ボルト部材32を矢印A方向に回転させ、M5ソケットボルトを締め付ける際の締め付けトルクを繰り返し体感することにより、このM5ソケットボルトの締め付けトルクを正確且つ確実に体得することが可能になる。
【0028】
これにより、実際にM5ソケットボルトを締め付ける際には、トルクレンチを用いる必要がなく、簡単且つ経済的な構成で、このM5ソケットボルトに所望の締め付けトルクを確実に付与することができる。従って、例えば、M5ソケットボルトの破損や緩み等による不具合の発生を良好に阻止し、安定且つ効率的なボルト締め付け作業が遂行可能になるという効果が得られる。
【0029】
一方、M6ソケットボルトに対応する第2ボルト部材34を用いて締め付けトルクを体得する際には、M6用ヘキサゴンレンチ56bを前記第2ボルト部材34に嵌合させる。そして、上記の第1ボルト部材32と同様に、M6用ヘキサゴンレンチ56bを矢印A方向に回転させ、腕部22の先鋭部38が表示部52のM6表示54bに一致する位置まで締め付け操作を行う。このため、作業者は、M6用ヘキサゴンレンチ56bを介してスプリング50の負荷、すなわち、M6用ソケットボルトの締め付けトルクを実感することができる。
【0030】
さらにまた、作業者がM8ソケットボルトの締め付けトルクを体得する際には、M8用ヘキサゴンレンチ56cを第3ボルト部材36に嵌合し、この第3ボルト部材36と軸部18とを一体に矢印A方向に回転させる。従って、腕部22にスプリング50による負荷が付与され、この腕部22の先鋭部38が表示部52のM8表示54cと一致する際に、作業者は、M8用ヘキサゴンレンチ56cを介してM8ソケットボルトに必要な所望の締め付けトルクを実感する。
【0031】
これにより、治具10では、M5ソケットボルト、M6ソケットボルト及びM8ソケットボルトに対応した締め付けトルクを確実且つ容易に体得することができ、極めて経済的であるという利点がある。
【0032】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る締め付けトルク体得用治具60の概略斜視説明図である。なお、第1の実施形態に係る治具10と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3及び第4の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0033】
治具60を構成する軸部18には、例えば、M10六角ボルトに対応する第1ボルト部材62、M8六角ボルトに対応する第2ボルト部材64、及びM6六角ボルトに対応する第3ボルト部材66が同軸的に固着される。腕部22の先鋭部38が指し示す表示部52は、M6表示68a、M8表示68b及びM10表示68cが、それぞれの締め付けトルクとスプリング50の負荷との相関によって予め設定される。
【0034】
このように構成される治具60では、図6に示すように、例えば、M10六角ボルトの締め付けトルクを体感するために、M10用レンチ70aを第1ボルト部材62に係合させる。さらに、作業者がM10用レンチ70aを矢印A方向に回転させると、軸部18と一体に腕部22が矢印A方向に揺動する。さらに、腕部22の先鋭部38が、表示部52のM10表示68cを指し示す位置において、M10用レンチ70aの回転操作を停止させる。
【0035】
このため、作業者は、M10用レンチ70aを介してスプリング50の負荷によるM10六角ボルトに必要な締め付けトルクを実感することができる。従って、作業者は、実際にM10六角ボルトを締め付ける際に必要な所望の締め付けトルクを、確実に体得することが可能になる。
【0036】
同様に、M8六角ボルトの締め付けトルクを体得する際には、M8用レンチ70bを第2ボルト部材64に係合させる。一方、M6六角ボルトの締め付けトルクを体得する際には、M6用レンチ70cを第3ボルト部材66に係合させる。そして、M8用レンチ70bやM6用レンチ70cを矢印A方向に回転させて、それぞれ腕部22の先鋭部38がM8表示80bやM6表示68aを指し示す位置に配置させる。これにより、M8六角ボルトやM6六角ボルトの締め付けトルクを容易且つ確実に体得することができる。
【0037】
図7は、本発明の第3の実施形態に係る締め付けトルク体得用治具80の概略斜視説明図であり、図8は、前記治具80による締め付け操作の説明図である。
【0038】
治具80を構成する軸部18は、大径部20の外周部に腕部82が一体に設けられるとともに、前記腕部82には、第1及び第2の実施形態の孔部が設けられていない。
【0039】
基台12に固着される固定部48には、短尺な支持ロッド84が設けられる。この支持ロッド84にスプリング50が外装されるとともに、前記スプリング50が腕部82の一方の側面82aに当接し、前記腕部82を、図8中、矢印方向に押圧する。基台12には、腕部82の他方の側面82bに当接自在なストッパピン(ストッパ部)86が固着され、前記腕部82を所定の位置に保持する。
【0040】
図9は、本発明の第4の実施形態に係る締め付けトルク体得用治具90の概略斜視説明図であり、図10は、前記治具90による締め付け操作の説明図である。なお、第3の実施形態に係る治具80と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0041】
治具90では、基台12に固着される固定部48には、短尺な支持円筒部92が設けられる。この支持円筒部92には、スプリング50の一端側が収容されるとともに、前記スプリング50の他端が腕部82の一方の側面82aに当接する。腕部82の他方の側面82bは、ストッパピン86に当接支持可能である。
【0042】
このように構成される第3及び第4の実施形態では、第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られるとともに、構成が一層簡素化されるという利点がある。
【0043】
なお、第1〜第4の実施形態では、ソケットボルト及び六角ボルトに対応する締め付けトルクの体得作業について説明したが、例えば、ナットを締め付ける際の締め付けトルクの体得作業にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る締め付けトルク体得用治具の概略斜視説明図である。
【図2】前記治具の一部断面側面図である。
【図3】前記治具を構成する軸部とボルト部材との分解斜視説明図である。
【図4】前記治具による締め付け操作の説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る締め付けトルク体得用治具の概略斜視説明図である。
【図6】前記治具による締め付け操作の説明図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る締め付けトルク体得用治具の概略斜視説明図である。
【図8】前記治具による締め付け操作の説明図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る締め付けトルク体得用治具の概略斜視説明図である。
【図10】前記治具による締め付け操作の説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10、60、80、90…治具
12…基台
14…取り付け孔部 18…軸部
22、82…腕部 24、26、28、34a、36a、40…孔部
32、34、36、62、64、66…ボルト部材
38…先鋭部 44…ロッド部
46…ストッパ部 50…スプリング
52…表示部 56a〜56c…ヘキサゴンレンチ
70a〜70c…レンチ 84…支持ロッド
86…ストッパピン 92…支持円筒部
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成18年11月10日(2006.11.10)
【代理人】 【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏

【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸

【識別番号】100142066
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿島 直樹

【識別番号】100126468
【弁理士】
【氏名又は名称】田久保 泰夫


【公開番号】 特開2008−30184(P2008−30184A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−305356(P2006−305356)