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【発明の名称】 衝撃トルク発生装置
【発明者】 【氏名】山田 穣

【要約】 【課題】より騒音や振動を小さくすることが可能な衝撃トルク発生装置を得る。

【構成】モータ4と、モータ4によって回転駆動される主動側部分と回転負荷が作用する従動側部分との間の摩擦によって当該主動側部分から従動側部分に回転を伝達する回転伝達機構6と、を備え、回転伝達機構6は、出力軸7に回転方向に固定されて主動側部分と従動側部分との相対回転に応じて軸方向に往復動するカム12を有し、当該カム12の往復動に伴って主動側部分と従動側部分との間の摩擦抵抗が変化するように構成され、上記主動側部分と従動側部分とが摩擦する部分(端面12c,底面9e)で、その摩擦抵抗によって回転負荷の作用した従動側部分に対する主動側部分の回転を規制することで、衝撃トルクを発生させるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのモータと、
前記モータによって回転駆動される主動側部分と回転負荷が作用する従動側部分との間の摩擦によって当該主動側部分から従動側部分に回転を伝達する回転伝達機構と、
を備え、
前記回転伝達機構は、主動側部分および従動側部分のうち一方に対して少なくとも回転方向に固定されて主動側部分と従動側部分との相対回転に応じて軸方向に往復動するカムを有し、当該カムの往復動に伴って主動側部分と従動側部分との間の摩擦抵抗が変化するように構成され、
前記主動側部分と従動側部分とが摩擦する部分で、その摩擦抵抗により回転負荷が作用した従動側部分に対する主動側部分の回転を規制するとともに、モータによって主動側部分に作用したトルクによって滑りを生じさせた後、再度当該摩擦抵抗により回転負荷が作用した従動側部分に対する主動側部分の回転を規制することで、衝撃トルクを発生させるようにしたことを特徴とする衝撃トルク発生装置。
【請求項2】
前記カムがその往復動区間の軸方向一方側の端部にあるときに、当該カムの軸方向一方側の端面が、当該カムに対して軸方向一方側に配置される別の部材の端面と当接して、それら相互に当接する端面同士が、主動側部分と従動側部分との間で摩擦して回転を伝達する部分となるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項3】
前記相互に当接する端面に相互に係合する凹凸形状を設けたことを特徴とする請求項2に記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項4】
前記カム、および前記別の部材のうち一方を、前記相互に当接する端面同士の圧接力を増大させる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項2または3に記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項5】
前記付勢手段は前記別の部材をカム側に付勢することを特徴とする請求項4に記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項6】
前記カムが前記別の部材側に移動するほど前記付勢手段による付勢力が増大するようにしたことを特徴とする請求項4または5に記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項7】
前記付勢手段による付勢力のカムの軸方向変位に対する変化率が、前記相互に当接する端面同士が離間する側より近接する側で高くなるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項8】
前記付勢手段はコイルばねであることを特徴とする請求項4〜7のうちいずれか一つに記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項9】
前記付勢手段は非線形コイルばねであることを特徴とする請求項6または7に記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項10】
前記付勢手段として前記カムの軸方向変位における作用開始点が異なる複数のコイルばねを有することを特徴とする請求項6または7に記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項11】
前記付勢手段はエラストマであることを特徴とする請求項4〜6のうちいずれか一つに記載の衝撃トルク発生装置。
【請求項12】
前記回転伝達機構は、軸方向に移動する前記カムによって押されて弾性的に拡開する環状部材を有し、当該環状部材の外周面が、当該環状部材に対して外周側に配置される部材の内周面と当接して、それら相互に当接する周面同士が、前記主動側部分と従動側部分との間で摩擦する部分となるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の衝撃トルク発生装置。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具等に用いられる衝撃トルク発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インパクトレンチやインパクトドライバのように、主動側のハンマとこれと係合する従動側のアンビルとを有する衝撃トルク発生装置を内蔵し、ハンマによってアンビルを回転方向に打撃することで、出力軸の先端に取り付けた工具を衝撃的に回転させる電動工具が知られている。
【0003】
すなわち、この種の電動工具では、駆動軸の外周に形成されたV字状のカム溝と当該カム溝内を回動する鋼球とを有するカム機構を備え、回転負荷が高くなると当該カム機構の作用によってアンビルからハンマを軸方向に離間させることでハンマとアンビルとの係合を解除し、再度ハンマがアンビルと係合するときの衝撃力を利用して、出力軸を衝撃的に回転させるようになっている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−117870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の電動工具に内蔵される衝撃トルク発生装置は、ハンマとアンビルとを衝撃的に係合するため、騒音や振動が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、より騒音や振動を小さくすることが可能な衝撃トルク発生装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にあっては、駆動源としてのモータと、上記モータによって回転駆動される主動側部分と回転負荷が作用する従動側部分との間の摩擦によって当該主動側部分から従動側部分に回転を伝達する回転伝達機構と、を備え、上記回転伝達機構は、主動側部分および従動側部分のうち一方に対して少なくとも回転方向に固定されて主動側部分と従動側部分との相対回転に応じて軸方向に往復動するカムを有し、当該カムの往復動に伴って主動側部分と従動側部分との間の摩擦抵抗が変化するように構成され、上記主動側部分と従動側部分とが摩擦する部分で、その摩擦抵抗により回転負荷が作用した従動側部分に対する主動側部分の回転を規制するとともに、モータによって主動側部分に作用したトルクによって滑りを生じさせた後、再度当該摩擦抵抗により回転負荷が作用した従動側部分に対する主動側部分の回転を規制することで、衝撃トルクを発生させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明にあっては、上記カムがその往復動区間の軸方向一方側の端部にあるときに、当該カムの軸方向一方側の端面が、当該カムに対して軸方向一方側に配置される別の部材の端面と当接して、それら相互に当接する端面同士が、主動側部分と従動側部分との間で摩擦して回転を伝達する部分となるように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明にあっては、上記相互に当接する端面に相互に係合する凹凸形状を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明にあっては、上記カム、および上記別の部材のうち一方を、上記相互に当接する端面同士の圧接力を増大させる方向に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明にあっては、上記付勢手段は上記別の部材をカム側に付勢することを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明にあっては、上記カムが上記別の部材側に移動するほど上記付勢手段による付勢力が増大するようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明にあっては、上記付勢手段による付勢力のカムの軸方向変位に対する変化率が、上記相互に当接する端面同士が離間する側より近接する側で高くなるようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明にあっては、上記付勢手段はコイルばねであることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明にあっては、上記付勢手段は非線形コイルばねであることを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明にあっては、上記付勢手段として上記カムの軸方向変位における作用開始点が異なる複数のコイルばねを有することを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明にあっては、上記付勢手段はエラストマであることを特徴とする。
【0017】
請求項12の発明にあっては、上記回転伝達機構は、軸方向に移動する上記カムによって押されて弾性的に拡開する環状部材を有し、当該環状部材の外周面が、当該環状部材に対して外周側に配置される部材の内周面と当接して、それら相互に当接する周面同士が、上記主動側部分と従動側部分との間で摩擦する部分となるように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、主動側部分と従動側部分との摩擦によって回転を伝達する回転伝達機構を設けたため、主動側部分と従動側部分とを衝撃的に係合させる方式に比べて衝撃力を小さくして、騒音や振動を小さくすることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、上記軸方向に往復動するカムの軸方向端面を利用して、上記摩擦によって回転を伝達する回転伝達機構を比較的簡素な構成として得ることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、凹凸形状を設けたことで上記端面同士の摩擦力を増大させることができる分、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0021】
請求項4の発明によれば、上記付勢手段によって上記端面同士の摩擦力を増大させることができる分、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0022】
請求項5の発明によれば、上記付勢手段を、上記別の部材に対してカムと反対側に、圧縮反力を生じさせる付勢手段として設けることができ、引張反力を生じさせる付勢手段を設ける場合に比べて構成を簡素化することができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、上記端面同士の摩擦力をより一層増大させることができる分、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0024】
請求項7の発明によれば、上記端面同士が相互に当接した状態でより急峻に摩擦抵抗を増大させることができる分、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0025】
請求項8の発明によれば、上記付勢手段をコイルばねとすることで、構成を簡素化することができる。
【0026】
請求項9の発明によれば、上記端面同士が相互に当接した状態でより急峻に摩擦抵抗を増大させることができる構成を、非線形コイルばねによって、比較的簡素な構成として得ることができる。
【0027】
請求項10の発明によれば、上記端面同士が相互に当接した状態でより急峻に摩擦抵抗を増大させることができる構成を、前記カムの軸方向変位における作用開始点が異なる複数のコイルばねによって、比較的簡素な構成として得ることができる。
【0028】
請求項11の発明によれば、上記付勢手段をエラストマとして容易に配設することができる。
【0029】
請求項12の発明によれば、カムの軸方向への移動に応じて弾性的に拡開する上記環状部材と上記その外周側に配置される部材とを利用して、摩擦によって回転を伝達する回転伝達機構を比較的簡素な構成として得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では、衝撃トルク発生装置を電動工具として実施した場合について例示する。
【0031】
(第1実施形態)図1は、本実施形態にかかる電動工具の側面図(一部内部を示す図)、図2は、電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とシリンダの軸方向他方側の端面とが離間した状態を示す図、図3は、回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とシリンダの軸方向他方側の端面とが当接した状態を示す図、図4は、回転伝達機構の分解斜視図である。
【0032】
電動工具1は、駆動源としてのモータ4や、減速部5、回転伝達機構6、出力軸7等が縦列配置された状態で内包される本体部2と、スイッチ部(図示せず)等が内包されるグリップ部3とが、略T字状あるいは略L字状(本実施形態では略T字状)に接続されて構成されており、当該グリップ部3の先端部には着脱可能な電池パック8を装着できるようになっている。
【0033】
また、グリップ部3の基端側には突没可能なハンドル3aが設けられており、このハンドル3aを押し込むと、スイッチ部によってモータ4が制御され、出力軸7の先端に取り付けられた先端工具(図示せず)が回転するようになっている。
【0034】
ここで、図2〜図4を参照して、回転伝達機構6の構成および動作について説明する。
【0035】
モータ4の出力軸4aの回転は、減速部5によって減速されて、回転伝達機構6の主動側部分に伝達される。
【0036】
減速部5は、本実施形態では、サンギヤ5a、プラネタリギヤ5b、およびリングギヤ5cを含む遊星歯車機構として構成されており、プラネタリギヤ5bのシャフト5dのサンギヤ5a中心軸回りの回転がシリンダ9に伝達される。
【0037】
主動側部分は、本実施形態では、シリンダ9、シリンダカバー10、およびこれらを締結する袋ナット11によって構成されており、シリンダ9とシリンダカバー10とで略円筒状の内部空間を形成し、この内部空間内に略円柱状のカム12が軸方向摺動可能に収容されている。
【0038】
すなわち、袋ナット11の軸方向一端側で径方向内側に突出するフランジ部11bとシリンダ9の外周面から径方向外側に突出するフランジ部9aとを係合し、袋ナット11の内周面の軸方向他端側に形成したねじ部11aとシリンダカバー10の外周面に形成したねじ部10bとを螺結することで、シリンダ9とシリンダカバー10とが一体化されている。
【0039】
また、シリンダカバー10にはモータ側(図2,3では右側)に向けて開口する略有底円筒状の凹部10aが形成されており、当該凹部10a内にシリンダ9が内嵌されている。そして、シリンダ9には出力軸7側(図2,3では左側)に向けて開口する略有底円筒状の凹部9bが形成されており、当該凹部9b内にカム12が摺動(往復動および回転)可能に緩挿されている。
【0040】
このシリンダカバー10の底壁10cには、円形の貫通孔10dが形成されており、この貫通孔10dを円柱状の出力軸7が貫通している。
【0041】
そして、カム12の外周面12aには、軸方向に変位しながら周回する二つの溝12bが形成される一方、シリンダ9の側壁部9cに形成された貫通孔9dには案内子13が嵌め込まれており、この案内子13が側壁部9cの筒内に進出して溝12bに挿入され、当該溝12b内で移動可能に案内されている。
【0042】
ここで、溝12bの軸方向位置は、溝の周方向位置に対して正弦的に変化している。図2中左側の溝12bについては、同図中上側の位置で軸方向一端側(同図中最も左側)に位置しているのに対し、当該位置と周方向に180°異なる同図中下側の位置では軸方向他端側(同図中最も右側)に位置している。また、図2中右側の溝12bについては、同図中上側の位置で軸方向他端側(同図中最も右側)に位置しているのに対し、当該位置と周方向に180°異なる同図中下側の位置で軸方向一端側(同図中最も左側)に位置している。さらに、これら二つの溝12b,12bによってそれぞれ案内される案内子13,13は、周方向に180°異なる位置に配置されている。よって、これら一対の案内子13および溝12bの係合により、シリンダ9とカム12との相対回転に応じて、カム12がシリンダ9に対して軸方向に相対的に往復動することになる。なお、本実施形態ではカム12は出力軸7に対して回転方向には固定(係止)されているものの、軸方向に対しては固定されず、相対移動可能となっている。
【0043】
そして、図3に示すように、カム12がシリンダ9の凹部9bの底面9e側に移動した状態では、この底面9eとカム12の端面12cとが相互に当接するようになっている。
【0044】
以上の構成を備える回転伝達機構6では、従動側部分の一部としての出力軸7に作用する回転負荷が比較的小さい状態では、図3に示すように、カム12の端面12cとシリンダ9の底面9eとが相互に当接した状態となり、これら端面12cと底面9eとの摩擦抵抗によって、主動側部分の一部としてのシリンダ9から従動側部分の一部としてのカム12および出力軸7へ回転を伝達することができる。端面12cと底面9eとの摩擦抵抗によるトルクが、出力軸7に作用する負荷トルクを超える範囲では、図3の状態のまま回転することになる。
【0045】
一方、出力軸7に作用する負荷トルクが端面12cと底面9eとの摩擦抵抗によるトルクより大きい場合には、従動側部分の一部としてのカム12によって主動側部分の一部としてのシリンダ9の回転が規制され、シリンダ9が減速(停止)することになる。
【0046】
その後、モータ4(図1)の駆動トルクによって端面12cと底面9eとの間に滑りが生じ、シリンダ9が再び回転し始める。すると、カム12とシリンダ9とが相対回転することになるため、一対の案内子13および溝12bの係合によってカム12が軸方向に移動して、端面12cと底面9eとが離間し、主動側部分が、図3の状態から相対的に180°回転した図2の状態を経て、さらにほぼ一回転して図3の状態に戻る。このとき、主動側部分の回転負荷が一時的に軽減されたことによる増速分と、主動側部分の慣性モーメントの分とで、シリンダ9の底面9eからカム12の端面12cに衝撃的にトルクを印加することができ、以て、カム12側、すなわち従動側部分を回動させることができる。そして、このような現象が反復的に生じて、出力軸7およびその先端に取り付けた先端工具(図示せず)を衝撃的かつ断続的に回転させることが可能となる。
【0047】
以上の本実施形態によれば、回転伝達機構6は、従動側部分としての出力軸7に固定されて主動側部分と従動側部分との相対回転に応じて軸方向に往復動するカム12を有し、当該カム12の往復動に伴って主動側部分と従動側部分との間の摩擦抵抗、すなわちカム12の端面12cとシリンダ9の凹部9bの底面9eとの摩擦抵抗が変化するように構成され、当該端面12cと底面9eとが摩擦する部分で、その摩擦抵抗により回転負荷が作用した従動側部分に対する主動側部分の回転を規制するとともに、モータ4によって主動側部分に作用したトルクによって端面12cと底面9eとの間に滑りを生じさせた後、再度端面12cと底面9eとの摩擦抵抗により回転負荷が作用した従動側部分に対する主動側部分の回転を規制することで、衝撃トルクを発生させるようにしたので、主動側部分と従動側部分とを衝撃的に係合させる方式に比べて衝撃力を小さくして、騒音や振動を小さくすることができる。
【0048】
また、本実施形態によれば、カム12がその往復動区間の軸方向一方側(図2および図3で右側)の端部にあるときに(図3の状態)、当該カム12の軸方向一方側の端面12cが、当該カム12に対して軸方向一方側に配置される別の部材としてのシリンダ9の軸方向他方側(図2および図3で左側)の端面としての凹部9bの底面9eと当接して、それら相互に当接する端面12cおよび底面9eが、主動側部分と従動側部分との間で摩擦して回転を伝達する部分となるように構成したため、軸方向に往復動するカム12の軸方向端面12cを利用して、上記摩擦によって回転を伝達する回転伝達機構6を比較的簡素な構成として得ることができる。
【0049】
(第2実施形態)図5は、本実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構のカムの底面の平面図、図6は、回転伝達機構の側面図(側断面図)である。なお、本実施形態にかかる電動工具は、上記第1実施形態にかかる電動工具と同様の構成要素を備えている。よって、それら対応する構成要素については共通の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0050】
本実施形態にかかる回転伝達機構6Aは、上記第1実施形態にかかる電動工具1が備える回転伝達機構6に替えて装備することができるものであり、カム12Aの端面12cおよびシリンダ9Aの凹部9bの底面9eに、凹凸形状を形成して、これら凹凸形状同士の係合によって端面12cと底面9eとの摩擦抵抗を増大させた点以外は、上記第1実施形態にかかる回転伝達機構6と全く同様の構成を備えている。
【0051】
具体的には、カム12Aの端面12cには、上に凸の半円形断面を有して中心部から放射状に伸びる突条12dを形成する一方、シリンダ9Aの凹部9bの底面9eには、この突条12dに対応する凹溝9fを形成し、カム12Aがシリンダ9Aの底面側に位置して端面12cと底面9eとが当接する状態で、これら突条12dと凹溝9fとが相互に係合するように構成されている。
【0052】
以上の本実施形態によれば、相互に当接する端面12cおよび底面9eに、相互に係合する凹凸形状(突条12dおよび凹溝9f)を設け、端面12cおよび底面9eの摩擦力を増大させることができる分、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0053】
(第3実施形態)図7は、本実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とリングプレートの軸方向他方側の端面とが離間した状態を示す図、図8は、回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とリングプレートの軸方向他方側の端面とが当接した状態を示す図、図9は、回転伝達機構の分解斜視図である。なお、本実施形態にかかる電動工具は、上記第1実施形態にかかる電動工具と同様の構成要素を備えている。よって、それら対応する構成要素については共通の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、カム12とシリンダ9Bの凹部9bの底面9eとの間に、リングプレート14と付勢手段としてのコイルばね15とを介在させ、コイルばね15によってリングプレート14をカム12側に付勢し、カム12の端面12cとリングプレート14のカム12側の端面14aとを当接させるように構成した点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を備えている。なお、シリンダ9Bの凹部9bの側壁に形成された貫通孔9gに嵌挿したピン16を当該凹部9b内に突出させ、図7の状態では、ピン16(図9)によって係止されたリングプレート14(の端面14a)からカム12(の端面12c)が離間するようにしてある。
【0055】
かかる構成を備える回転伝達機構6Bでは、従動側部分の一部としての出力軸7に作用する回転負荷が比較的小さい状態では、図8に示すように、カム12の端面12cとリングプレート14の端面14aとが相互に当接した状態となり、これら端面12cと端面14aとの摩擦抵抗によって、主動側部分の一部としてのシリンダ9Bから従動側部分の一部としてのカム12および出力軸7へ回転を伝達することができる。端面12cと端面14aとの摩擦抵抗によるトルクが、出力軸7に作用する負荷トルクを超える範囲では、図8の状態のまま回転することになる。本実施形態では、付勢手段としてのコイルばね15による付勢力の調整により、摩擦抵抗によるトルク(すなわち、衝撃的な回転が開始される限界トルク値)を容易に設定できるという利点がある。
【0056】
一方、出力軸7に作用する負荷トルクが端面12cと端面14aとの摩擦抵抗によるトルクより大きい場合には、従動側部分の一部としてのカム12によって主動側部分の一部としてのシリンダ9Bの回転が規制され、シリンダ9Bが減速(停止)することになる。
【0057】
その後、モータ4(図1)の駆動トルクによって端面12cと端面14aとの間に滑りが生じ、シリンダ9Bが再び回転し始める。すると、カム12とシリンダ9Bとが相対回転することになるため、カム12が軸方向に移動して、端面12cと端面14aとが離間し、主動側部分が、図8の状態から相対的に180°回転した図7の状態を経て、さらにほぼ一回転して図8の状態に戻る。このとき、主動側部分の回転負荷が一時的に軽減されたことによる増速分と、主動側部分の慣性モーメントの分とで、リングプレート14の端面14aからカム12の端面12cに衝撃的にトルクを印加することができ、以て、カム12側、すなわち従動側部分を回動させることができる。そして、このような現象が反復的に生じて、出力軸7およびその先端に取り付けた工具(図示せず)を衝撃的かつ断続的に回転させることが可能となる。
【0058】
以上の本実施形態によれば、付勢手段としてのコイルばね15によって上記端面12c,14a同士の摩擦力を増大させて、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0059】
また、本実施形態によれば、付勢手段としてのコイルばね15を、リングプレート14に対してカム12と反対側で圧縮反力を生じさせる所謂圧縮ばねとして設けることができ、引張ばねを設けてフック等が必要となる場合に比べて構成を簡素化することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、カム12が軸方向一方側(図7,8では右側)に移動するほどコイルばね15による付勢力が増大するため、端面12c,14a同士の摩擦力をより一層増大させて、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0061】
また、本実施形態の変形例として、圧縮させる方向の変位(カム12の軸方向変位)に対して線形的に反力が増大する線形のコイルばね15に替えて、図10に示すように、圧縮させる方向の変位に対して非線形的に反力が増大する(圧縮量が増大するほど反力上昇率が増大する;図11中の非線形ばね)非線形のコイルばね15Cを用いることができる。コイルばね15Cは軸方向に沿って巻径を徐々に変化させている。
【0062】
かかる非線形のコイルばね15Cを用いることで、端面12c,14a同士が離間する側より近接する側で付勢力の上昇率を高めることができ、端面12c,14a同士が相互に当接した状態でより急峻に摩擦抵抗を増大させることができる分、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0063】
(第4実施形態)図12は、本実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の分解斜視図、図13は、回転伝達機構に含まれる付勢手段としての二重コイルばねの変位に対する反力の特性を上記第3実施形態で用いられるコイルばね(線形コイルばね)の特性と比較して示す図である。なお、本実施形態にかかる電動工具は、上記第1実施形態にかかる電動工具と同様の構成要素を備えている。よって、それら対応する構成要素については共通の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0064】
本実施形態にかかる回転伝達機構6Dは、シリンダ9Dの凹部9b内の線形のコイルばね15の内側に、別のコイルばね17を設けるとともに、これら二つのコイルばね15,17についてカム12の軸方向変位における作用開始点を相異ならせることで、図13に示すように、図11の非線形のコイルばね15Cを用いた場合と同様の反力特性が得られるようにした点以外は、上記第3実施形態と全く同様の構成を備えている。
【0065】
具体的には、カム12が軸方向一方側(シリンダ9の凹部奥側)に変位してリングプレート14に当接した時点ではコイルばね15のみが圧縮反力(リングプレート14をカム12側に押し付ける付勢力)を生じさせ、さらにカム12が軸方向一方側に変位したときにリングプレート14がコイルばね17にも当接してコイルばね17も圧縮反力(リングプレート14をカム12側に押し付ける付勢力)を生じさせる構造となっている。
【0066】
かかる構成によっても、端面12c,14a同士が離間する側より近接する側で付勢力の上昇率を高めることができ、端面12c,14a同士が相互に当接した状態でより急峻に摩擦抵抗を増大させて、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0067】
(第5実施形態)図14は、本実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とリングプレートの軸方向他方側の端面とが離間した状態を示す図、図15は、回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とリングプレートの軸方向他方側の端面とが当接した状態を示す図である。
【0068】
本実施形態にかかる回転伝達機構6Eでは、カム12とシリンダ9Eの凹部9bの底面9eとの間に、コイルばね15に替えて、付勢手段としてのエラストマ(例えばリング状のゴム)15Eを介在させ、当該エラストマ15Eによってリングプレート14をカム12側に付勢し、カム12の端面12cとリングプレート14のカム12側の端面14aとを相互に当接させるように構成した点を除き、上記第3実施形態と同様の構成を備えている。なお、本実施形態でも、上記第3実施形態と同様に、シリンダ9Eの凹部9bの側壁に形成された貫通孔(図示せず)に嵌挿したピン(図示せず)を当該凹部9b内に突出させ、図14の状態では、当該ピンによって係止されたリングプレート14(の端面14a)からカム12(の端面12c)が離間するようにしてある。
【0069】
かかる構成においても、付勢手段をエラストマ15Eとして比較的容易に装備することができる。また、付勢手段としてのエラストマ15Eによって上記端面12c,14a同士の摩擦力を増大させて、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0070】
また、本実施形態によれば、カム12が軸方向一方側(図14,15では右側)に移動するほどエラストマ15Eによる付勢力が増大するため、端面12c,14a同士の摩擦力をより一層増大させて、より大きな衝撃トルクを得ることができるようになる。
【0071】
また、本実施形態によれば、エラストマ15Eが緩衝部材となって、音や振動を緩和することができるという利点もある。
【0072】
(第6実施形態)図16は、本実施形態にかかる回転伝達機構の分解斜視図、図17は、本実施形態にかかる回転伝達機構のカムおよびリングの側面図である。なお、本実施形態にかかる電動工具は、上記第1実施形態にかかる電動工具と同様の構成要素を備えている。よって、それら対応する構成要素については共通の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0073】
本実施形態にかかる回転伝達機構6Fは、軸方向に移動するカム12Fによって押されて弾性的に拡開する環状部材としてのリング18を有し、当該リング18の外周面18aが、当該リング18に対して外周側に配置される部材(本実施形態ではシリンダカバー10)の内周面と当接して、それら相互に当接する周面同士が、主動側部分と従動側部分との間で摩擦して回転を伝達する部分となるように構成した点を除き、上記第1実施形態と同様の構成を備えている。
【0074】
具体的には、図17に示すように、カム12Fの軸方向先端工具側の外周縁にはテーパ面12eが形成され、このテーパ面12e上に載置される状態でリング18が装備される。また、このリング18は、テーパ面12eの反対側(軸方向)への移動が規制されている。
【0075】
したがって、カム12Fの溝12bと案内子13との係合により、カム12Fのシリンダ9に対する相対回転に応じてカム12Fが図17の上方向へ移動すると、リング18はテーパ面12eによって押し広げられて拡径し、リング18の外周面18aとシリンダカバー10の内周面とが相互に当接して摺動する状態となる。
【0076】
よって、出力軸7に作用する負荷トルクがリング18の外周面18aとシリンダカバー10の内周面との摩擦抵抗によるトルクより小さい状態では当該出力軸7はスムーズに回転し、出力軸7に作用する負荷トルクが大きくなってリング18の外周面18aとシリンダカバー10の内周面との摩擦抵抗によるトルクを上回ると、当該出力軸7は上記各実施形態と同様の原理によって断続的に回転するようになり、以て、出力軸7およびその先端に取り付けた工具(図示せず)を衝撃的かつ断続的に回転させることができるようになる。
【0077】
以上の本実施形態によれば、カム12Fの軸方向への移動に応じて弾性的に拡開するリング18とその外周側に配置されるシリンダカバー10とを利用して、摩擦によって回転を伝達する回転伝達機構を比較的簡素な構成として得ることができる。
【0078】
図18および図19は、第6実施形態の変形例を示している。この変形例にかかる回転伝達機構6Gでは、リングワッシャ19によってリング18の軸方向移動が阻止されるとともに、カム12Fのテーパ面12eによって押し広げられたリング18の外周面18aとシリンダ9Gの内周面9hとが相互に当接して摺動するように構成されている。また、図20に示すように、外周面18aが円筒面として形成されたリング18Hを用いてもよい。かかる構成によれば、リング18Hの外周面18aの摺動面積が大きくなる分、面圧を低減させて摩耗を減らすことができる。
【0079】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0080】
例えば、上記第1〜5実施形態にかかる回転伝達機構は、いずれも、カムが軸方向モータ側(先端工具の反対側)に位置した状態で主動側部分と従動側部分との間の摺動摩擦抵抗が増大するように構成されているが、これを、カムが軸方向先端工具側(モータの反対側)に位置した状態で主動側部分と従動側部分との間の摺動摩擦抵抗が増大するように構成してもよい。また、逆に、上記第6実施形態にかかる回転伝達機構は、カムが軸方向先端工具側(モータの反対側)に位置した状態で主動側部分と従動側部分との間の摺動摩擦抵抗が増大するように構成されているが、これを、カムが軸方向モータ側(先端工具の反対側)に位置した状態で主動側部分と従動側部分との間の摺動摩擦抵抗が増大するように構成してもよい。また、付勢手段の設置位置や構成も適宜に変更可能である。
【0081】
また、同様の回転伝達機構は、電動工具以外の装置にも適用して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施形態にかかる電動工具の側面図(一部内部を示す図)。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とシリンダの軸方向他方側の端面とが離間した状態を示す図。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とシリンダの軸方向他方側の端面とが当接した状態を示す図。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の分解斜視図。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構のカムの底面の平面図。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)。
【図7】本発明の第3実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とリングプレートの軸方向他方側の端面とが離間した状態を示す図。
【図8】本発明の第3実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とリングプレートの軸方向他方側の端面とが当接した状態を示す図。
【図9】本発明の第3実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の分解斜視図。
【図10】本発明の第3実施形態の変形例にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の非線形コイルばねの一例を示す斜視図。
【図11】本発明の第3実施形態の変形例にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構に含まれる付勢手段としての非線形コイルばねの変位に対する反力の特性を第3実施形態で用いられるコイルばね(線形コイルばね)の特性と比較して示す図。
【図12】本発明の第4実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の分解斜視図。
【図13】本発明の第4実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構に含まれる付勢手段としての二重コイルばねの変位に対する反力の特性を第3実施形態で用いられるコイルばね(線形コイルばね)の特性と比較して示す図。
【図14】本発明の第5実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とリングプレートの軸方向他方側の端面とが離間した状態を示す図。
【図15】本発明の第5実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、カムの軸方向一方側の端面とリングプレートの軸方向他方側の端面とが当接した状態を示す図。
【図16】本発明の第6実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の分解斜視図。
【図17】本発明の第6実施形態にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構のカムおよびリングの側面図。
【図18】本発明の第6実施形態の変形例にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、リングの外周面とシリンダの内周面とが離間した状態を示す図。
【図19】本発明の第6実施形態の変形例にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構の側面図(側断面図)であって、リングの外周面とシリンダの内周面とが当接した状態を示す図。
【図20】本発明の第6実施形態の別の変形例にかかる電動工具に含まれる回転伝達機構のリングの斜視図。
【符号の説明】
【0083】
1 電動工具(衝撃トルク発生装置)
4 モータ
6,6A,6B,6E,6G 回転伝達機構
9f 凹溝(凹凸形状)
9h 内周面
12,12A,12F カム
12a 外周面
12c 端面
12d 突条(凹凸形状)
14a 端面
15,15C コイルばね(付勢手段)
15E エラストマ(付勢手段)
17 コイルばね(付勢手段)
18,18H リング(環状部材)

【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年7月26日(2006.7.26)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100108707
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 友之

【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和


【公開番号】 特開2008−30128(P2008−30128A)
【公開日】 平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願番号】 特願2006−203331(P2006−203331)