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【発明の名称】 ワークバイスの口金構造
【発明者】 【氏名】安田 嘉和

【要約】 【課題】ワークバイスの口金部分の構造に関するもので、特に、ワークの被把持面の傾斜に従って口金を傾動させる構造の改良に関し、磨耗等により生じた遊隙に起因して、ワークの把持位置に誤差が生じたり、把持したワークを加工するときにワークが振動する問題を防止する。

【構成】ワーク側に位置する前面部材1の背面の凸円弧面12と、背面部材2の前面の凹円弧面22との滑り移動自在な当接により前面部材を傾動自在に支持し、前面部材1と背面部材2との間に設けた円弧溝21と円弧畝11との嵌合により前面部材1の上下位置を規定している口金構造において、前記凹凸の円弧面22、12を、前面部材1から背面部材2に作用する把持反力により、前面部材1を下方(バイスの基台側)に押し動かす方向の分力を生ずる方向の傾斜円弧面(円錐面)とする
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク側に位置する前面部材とその背面を支持する背面部材とを備え、前面部材は、背面部材の前面に設けられた円弧溝及びこの円弧溝の上下に位置する同心の円弧面に案内されて、ワークの被把持面の傾斜に従ってバイスの幅方向に従動傾動するワークバイスの口金構造において、
ワークを把持したときに前記前面部材から把持反力を受ける前記円弧面が、当該把持反力により前記前面部材をバイスの基台側に付勢する分力を生じさせる方向に傾斜した傾斜円弧面とされていることを特徴とする、ワークバイスの口金構造。
【請求項2】
前記前面部材(1)が背面部材(2)から脱落するのを防止する係止構造を備えている口金構造において、当該係止構造が、前記円弧面(11,12)と同心の円弧状の係止溝(13)とばね(26)でこの係止溝に押圧されているボール(25)とを備え、当該ボールが前記ばねの付勢力により前面部材(1)を下方かつ背面側へと付勢していることを特徴とする、請求項1記載の口金構造。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、作業台や工作機械のテーブルにワークを固定するのに使用するワークバイスの口金部分の構造に関し、特に、ワークを把持する口金やこれを取り付ける取付座を円弧面に沿って滑り移動可能に支持することにより、バイスで把持しようとするワークの被把持面の傾斜に従って口金を傾動させる構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワークバイスは、作業台や工作機械のテーブルに固定される基台と、この基台に固定した固定顎と、当該基台に移動自在に案内されてシリンダや送りねじにより固定顎に向けて進退する移動顎とを備え、固定顎と移動顎の間にワークを把持して固定する道具である。通常、固定顎と可動顎には口金が取り付けられ、この口金がワークに当接した状態でワークを把持している。汎用のバイスでは、固定口金と可動口金のワーク把持面は互いに平行な平面であるが、このような口金で鋳造品や鍛造品などの形状精度の低いワークを把持すると、ワークの被把持面と口金とが片当りして、ワークの把持が不安定になる。そこでこのような場合、口金の把持面をワークの被把持面の傾斜に従って傾動可能にした構造の口金ないし口金取付構造が採用される。
【0003】
特許文献1には、ワークバイスの可動顎に円弧面に沿って傾動可能な前面部材を備えた取付座を固定し、この前面部材の幅方向両端に球面に沿う二次元方向に傾動可能な口金を取り付けることにより、傾斜や凹凸のある被把持面を備えたワークを把持する構造が示されている。
【0004】
この構造は、図4及び図5に示すように、バイスの可動顎5に固定した背面部材2と、この背面部材の前面に設けた円弧溝21及び凹円弧面22に案内されて従動傾動する前面部材1とを備えている。背面部材2は、その前面にバイスの幅方向(バイスの基台を下にしたときの左右方向)に伸びる断面角形の円弧溝21を備えており、その上下の壁体23の頂面(前面)22が同方向の凹円弧面に加工されて、前面部材1の傾動を案内する滑り移動面となっている。一方、前面部材1の背面には、前記円弧溝21に摺動可能に嵌り込む円弧畝11が形成され、この円弧畝の上下に背面部材の凹円弧面22に摺接する凸円弧面12が形成されている。また、円弧畝11の上下面にはに円弧状の係止溝15が形成され、先端をこの係止溝に挿入した係止ピン29が背面部材の壁体23の一箇所に植立されている。
【0005】
前面部材1は、その背面の円弧畝11を背面部材の円弧溝21に嵌挿し、その後、係止ピン29を取り付けることにより、背面部材2の前面に幅方向に傾動可能かつ脱落を防止した状態で保持される。図示の構造では、前面部材1の前面に幅方向に伸びるT溝16が設けられており、このT溝の両端に挿入したナット6に螺合したスタッド7を介して二次元傾動口金8が固定されている。なお、図の符号9は、背面部材2を可動顎5に固定している固定具である。
【0006】
また、本願の出願人は、ワークバイスでワークを把持したときに、その把持力に伴う可動顎の変位によって、ワークが浮き上がるのを防止するために、ワークを把持する前面部材とその背後に位置する背面部材との間に、ワークから前面部材に作用する把持反力によって前面部材を下方(ワークバイスの基台側に押し付ける方向)に付勢する鋸歯構造を設けた口金を提案しており、その構造の一つとして、鋸歯面を円錐面とすることによって、前面部材がワークの被把持面の傾斜に従って傾動できるようにした構造を提案している。
【特許文献1】特開2006−062060号公報
【特許文献2】特開平9−29571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された口金構造においては、取付座の前面部材1は、その背面の円弧面12が背面部材2の前面の円弧面22に摺動自在に当接することにより、背面部材1が前面部材1からのワークの把持反力を受けると共に、前面部材1がワークの被把持面の傾斜に従って傾動する構造となっている。そして、この前面部材1は、その背面に設けた円弧畝11を背面部材2の前面に設けた円弧溝21に嵌挿することにより、上下方向に位置決めされている。
【0008】
前面部材1が円弧面22に沿って円滑に傾動するためには、円弧畝11と円弧溝の上下の壁体23との間に遊隙が必要である。バイスの繰り返し使用に伴う磨耗によってこの遊隙が大きくなると、前面部材1の上下方向の位置決めが正確に行われなくなり、この前面部材ないしはこれに装着した口金で把持されたワークがバイスの基台から浮き上がったり、把持したワークを加工するときにワークにびびり振動が発生するなどということが起る。
【0009】
この発明は、円弧面に沿う滑り移動によって口金がワークの傾斜した被把持面に倣うことができるようにしたワークバイスの口金構造において、磨耗等により生じた遊隙に起因して、ワークの把持位置に誤差が生じたり、把持したワークを加工するときにワークが振動するなどの問題が発生するのを防止する技術手段を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、ワーク側に位置する前面部材1の背面の凸円弧面12と、背面部材2の前面の凹円弧面22との滑り移動自在な当接により、傾動自在な前面部材1に作用するワークの把持反力を背面部材2で受けるようにし、かつ前面部材1の上下位置を前面部材1と背面部材2との間に設けた円弧溝21と円弧畝11との嵌合により規定している口金構造において、前記凹凸の円弧面22、12を、前面部材1から背面部材2に作用する把持反力により、前面部材1を下方(バイスの基台側)に押し動かす方向の分力を生ずる方向の傾斜円弧面(円錐面)とすることにより、上記課題を解決したものである。
【0011】
傾斜させた円弧面の傾斜角は、垂直面に対して5〜10度(円錐の頂角10〜20度)程度とするのが好ましい。上記の口金構造を備えたバイスでワークを把持すると、たとえ磨耗等により円弧溝21と円弧畝11との間に遊隙が生じていたとしても、把持反力により前面部材1が下方に押し付けられて、円弧溝21と円弧畝11とが常に密着した状態となるから、当該遊隙により把持位置に誤差が生じたり、加工中にバイスで把持されたワークが振動するのを防止することができる。
【0012】
上記の口金構造には、前面部材1が背面部材2から脱落するのを防止する係止構造を設けることが必要である。この発明の口金構造には、円弧面11、12と同心の円弧状の係止溝13とばね26でこの係止溝に押圧されているボール25とを備え、このボール25がばね26の付勢力により前面部材1を下方かつ背面側へと付勢している構造とするのが好ましい。この係止構造は、後述するV断面の係止溝13の溝中心とボール25の中心とを偏倚させる構造の他、ばね26を前面部材1を背面部材2側に押圧する方向に斜めに設ける構造を採用することもできる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、互いに当接する円弧状の滑動面を設けることによって口金が把持しようとするワークの被把持面の傾斜に従って傾動する口金構造において、この傾動を可能にするために設けられたガイド部分の遊隙によってワーク把持時にワーク位置に誤差が生じたり、把持したワークが加工中に振動する問題を避けることができ、従って精度の高いワークの加工が可能になるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態を説明する。図1はこの発明の口金構造の上面図、図2はカバー板を外した状態で示す上面図、図3は中央部の断面側面図である。図中、前述した図4、5の従来構造に対応する部材には、同一の符号を付してある。
【0015】
図において、1は前面部材、2は背面部材である。背面部材2は特許文献1に記載された前述の構造又はその他の適宜な手段により、バイスの可動顎又は固定顎に取り付けられる。背面部材2の前面には、幅方向に伸びる円弧溝21とその上下に位置する凹円弧面22が形成されている。前面部材1は、それ自体を口金とするか、又は口金となる部材を取り付けてワークを把持する部材で、その背面には、円弧溝21に摺動自在に嵌合する円弧畝11と、その上下に位置して背面部材の凹円弧面22に滑り移動自在に当接する凸円弧面12が形成されている。
【0016】
凹円弧面22及び凸円弧面12は、図3に示すように、垂直線Vに対して下方が広がる方向に角度θだけ傾斜した円錐面となっている。好ましいθの角度は、5〜10度である。上下の円弧面22、12は、同一円錐面上にある必要はなく、段違いになっていてもよい。
【0017】
円弧畝11の上面には、凸円弧面12と同一の中心軸を有する円弧状のV溝13が形成されている。一方、背面部材の円弧溝21の上方の壁体23には、その幅方向の中心に上下方向の貫通孔24が設けられ、V溝13に嵌り込むボール25とこのボールをV溝13に向けて付勢する圧縮コイルばね26とが挿入されている。
【0018】
貫通孔24の中心は、V溝13の溝中心より若干背面側にずれた位置にあり、ボール25は、V溝13の背面側の斜面に当接している。V溝13は、頂角略90度のV形断面の溝で、ばね26で付勢されたボール25がその背面側の斜面に当接することにより、前面部材1を下方(バイスの基台側)かつ背面側へと付勢している。従って、前面部材1は、ワークから把持反力が作用していない状態においても、背面部材2に対して下方かつ背面側へ付勢された状態となっている。
【0019】
背面部材2の上下面には、前面部材1との間の滑動面にごみなどが進入するのを避けるためのカバー板3がねじ4で固定されている。ばね26は、このカバー板3で上端を押さえられて常時圧縮された状態(ボール25を下方へ付勢する状態)となっている。
【0020】
上記構造を備えた口金でワークを把持すると、ワークの被把持面の傾斜に従って前面部材1が傾動すると共に、傾斜した円弧面22、12の作用により、ワークから把持反力Rが作用したときに前面部材1を下方へ押動する分力Cが生じ、把持反力Rとこの分力Cとにより、前面部材1は背面部材前面の凹円弧面22及び円弧溝21の下面に押接された状態で位置決めされる。従って円弧溝21と円弧畝11との間に磨耗等に基づく遊隙が存在しても、その遊隙の大きさに係わりなく、前面部材1が常に定位置に押接された状態で位置決めされる。そしてこの位置決めされる位置は、ワークを把持する前のばね26の付勢力により規定される高さと同一の高さであるので、把持したワークに高さ方向の位置誤差を生ずることがなく、また把持したワークを加工するときにワークにびびり振動が生ずることもない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の口金構造の一例を示す上面図
【図2】図1の口金構造をカバー板を外した状態で示す上面図
【図3】図2の中央部の断面側面図
【図4】従来の口金構造の上面図
【図5】図4の口金構造の中央部の断面側面図
【符号の説明】
【0022】
1 前面部材
2 背面部材
11,12 円弧面
13 係止溝
25 ボール
26 ばね
【出願人】 【識別番号】393028117
【氏名又は名称】株式会社テック・ヤスダ
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100078673
【弁理士】
【氏名又は名称】西 孝雄


【公開番号】 特開2008−6541(P2008−6541A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180002(P2006−180002)