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【発明の名称】 傾斜溝入り砥石及び製造方法
【発明者】 【氏名】井▲土▼ 雅裕

【氏名】稲垣 朋宏

【氏名】今池 浩史

【要約】 【課題】研削点に供給された研削液の圧力上昇を防止して研削精度を向上させるとともに、砥粒層の割れや欠けが生じるのを容易に防止することができるという傾斜溝入り砥石とその製造方法を提供する。

【解決手段】研削盤の砥石台に軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層を有しかつ砥石周方向に平行な側端面を両側に有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石において、前記砥石チップには、前記砥石周方向に対して傾斜する傾斜溝が、該傾斜溝の端部が前記砥石チップの前記各側端面手前まで刻設されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削盤の砥石台に軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層を有しかつ砥石周方向と平行な側端面を両側に有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石において、
前記砥石チップには、前記砥石周方向に対して傾斜する傾斜溝が、該傾斜溝の端部が前記砥石チップの前記各側端面手前まで刻設されていることを特徴とする傾斜溝入り砥石。
【請求項2】
請求項1において、前記砥石チップには、
前記傾斜溝の主部分を占める傾斜溝本体部と、
該砥石チップに砥石の回転方向前方で隣接する砥石チップに形成された傾斜溝本体部に連続し、前記両側の側端面のうちの一方側端面の手前まで刻設された後端部と、
該砥石チップに砥石の回転方向後方で隣接する砥石チップに形成された傾斜溝本体部に連続し、前記両側の側端面のうちの他方側端面の手前まで刻設された前端部と、
が形成されていることを特徴とする傾斜溝入り砥石。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記砥石チップには、
隣接する傾斜溝の間であって、砥石軸線方向と平行な前端面及び後端面の少なくとも一方の中央部に、夫々砥石周方向に延在する溝が、刻設されていることを特徴とする傾斜溝入り砥石。
【請求項4】
研削盤の砥石台に回転軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層と超砥粒を含まない下地層とからなり、かつ砥石周方向に対して平行する側端面を両側に有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石の製造方法において、
超砥粒と結合剤と混合した砥粒層の内側に、下地粒子と結合剤とを混合した下地層を重ねて一体的に円弧状にプレス成型して焼成前砥石チップを形成し、
該焼成前砥石チップの前記砥粒層に、該砥石の周方向に対して傾斜する傾斜溝が、該傾斜溝の端部が前記砥石チップの前記各側端面手前となるよう、前記研削面から前記下地層に至るまで機械加工もしくはプレス成形によって刻設し、
該傾斜溝が刻設された焼成前砥石チップを焼成し、該焼成された砥石チップを複数個、前記コアに貼付することを特徴とする傾斜溝入り砥石の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、コアに貼付されたセグメントタイプの砥石チップに傾斜溝を形成した傾斜溝入り砥石とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸線回りに回転駆動される円盤状のコアの外周面に、ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素等の超砥粒を含む砥粒層が形成され、該砥粒層外周の研削面に所定の幅、深さを有する傾斜溝がコアの軸線に対して25度乃至45度程度傾斜して刻設された溝付砥石が特許文献1に記載されている。このような溝付砥石によれば、研削液を傾斜溝に沿って研削点に効果的に導入することができ、傾斜溝の無い砥石に比して研削による除去量を約1.5倍に増大させて研削効率をたかめることができる。
【特許文献1】特開2000−354969号公報(段落〔0007〕、〔0026〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した溝付き砥石によれば、回転軸線に直角な砥粒層の両端面まで傾斜溝が刻設され、各該端面と傾斜溝の側壁面とが鋭角を形成するので、砥粒層の強度がその鋭角部分において不足し、研削抵抗によって砥粒層の割れや欠けを引き起こしやすいという不具合があった。
【0004】
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、砥石周方向に傾斜して形成される傾斜溝によって、砥粒層の割れや欠けが生じるのを、容易に防止することができるというものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、研削盤の砥石台に軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層を有しかつ砥石周方向と平行な側端面を両側に有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石において、前記砥石チップには、前記砥石周方向に対して傾斜する傾斜溝が、該傾斜溝の端部が前記砥石チップの前記各側端面手前まで刻設されていることである。
【0006】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、 請求項1において、前記砥石チップには、前記傾斜溝の主部分を占める傾斜溝本体部と、該砥石チップに砥石の回転方向前方で隣接する砥石チップに形成された傾斜溝本体部に連続し、前記両側の側端面のうちの一方側端面の手前まで刻設された後端部と、該砥石チップに砥石の回転方向後方で隣接する砥石チップに形成された傾斜溝本体部に連続し、前記両側の側端面のうちの他方側端面の手前まで刻設された前端部と、が形成されていることである。
【0007】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1又は2において、前記砥石チップには、隣接する傾斜溝の間であって、砥石軸線方向と平行な前端面及び後端面の少なくとも一方の中央部に、夫々砥石周方向に延在する溝が、刻設されていることである。
【0008】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、研削盤の砥石台に回転軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層と超砥粒を含まない下地層とからなり、かつ砥石周方向に対して平行する側端面を両側に有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石の製造方法において、超砥粒と結合剤と混合した砥粒層の内側に、下地粒子と結合剤とを混合した下地層を重ねて一体的に円弧状にプレス成型して焼成前砥石チップを形成し、該焼成前砥石チップの前記砥粒層に、該砥石の周方向に対して傾斜する傾斜溝が、該傾斜溝の端部が前記砥石チップの前記各側端面手前となるよう、前記研削面から前記下地層に至るまで機械加工もしくはプレス成形によって刻設し、該傾斜溝が刻設された焼成前砥石チップを焼成し、該焼成された砥石チップを複数個、前記コアに貼付することである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によると、超砥粒を含む砥粒層を有する複数の砥石チップがコアに貼付された砥石において、各砥石チップには、砥石周方向に対して傾斜する傾斜溝が刻設されている。この傾斜溝により、研削点に供給される研削液に発生する動圧を開放することができ、工作物が砥石から離間する方向に変位されて工作物寸法が大きくなることがなくなり、研削精度、特に真円度を高めることができる。そして、これらの傾斜溝の端部の刻設は、砥石チップのいずれも砥石周方向に平行な各側端面手前までであるので、該側端面と傾斜溝の側壁面とが強度を低下させる鋭角を形成することなく、研削抵抗によって砥粒層の割れや欠けを引き起こすことを防止することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によると、前記砥石チップには、傾斜溝本体部と、前後に隣接する砥石チップに夫々形成された傾斜溝本体部に連続する後端部及び前端部と、が形成されている。これらの傾斜溝本体部と後端部及び前端部とは、コアに連続して貼付された場合に、隣接する傾斜溝同士が砥石周方向に重複する部分となるので、砥石の回転位相に拘らず研削点に対して必ず1本通過する傾斜溝を形成することができる。また、各前端部及び後端部が砥石チップの砥石周方向に平行な側端面手前までの刻設によるので、該側端面と傾斜溝の側壁面とが強度を低下させる鋭角を形成することなく、研削抵抗によって砥粒層の割れや欠けを引き起こすことを防止する傾斜溝を形成することができる。また、同形状のパターン化した砥石チップを砥石周方向にコアに貼付することにより砥石を形成できるので、製品品質を確保しやすくなり、かつ製造コストの削減、製造日程の短縮を図ることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によると、隣接する傾斜溝の砥石軸方向の離間距離より狭い幅の研削面を持つ工作物を研削する場合においても、砥石周方向に延在する溝により、供給される研削液に発生する動圧を開放することができる。
【0012】
請求項4に係る発明によると、砥粒層の内側に下地層を重ねて一体的に円弧状にプレス成型して焼成前砥石チップを形成し、該焼成前砥石チップの砥粒層に、砥石周方向に対して傾斜する傾斜溝を機械加工もしくはプレス成形によって刻設する。焼成後の砥石チップでは超砥粒を結合剤が強固に保持しているが、焼成前の砥石チップでは結合剤が超砥粒を保持する保持力が弱いので、溝加工用工具の磨耗も少なく傾斜溝を容易に低コストで加工することができる。また、砥石チップは傾斜溝の加工後に焼成されるので、機械加工により結合剤から露出した超砥粒が、焼成時に溶融した結合剤に被覆されて結合され、超砥粒の保持力が機械加工によって低下することがない。このように形成された複数の砥石チップが、コアに貼付される。各砥石チップは、形成された傾斜溝により研削点に供給される研削液の動圧を開放して研削精度を高めるとともに、前記傾斜溝の端部が砥石チップの砥石周方向に平行な側端面手間まで刻設されているので、前記側端面と傾斜溝の側壁面とが強度を低下させる鋭角を形成することなく、研削抵抗によって砥粒層の割れや欠けを引き起こすことを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る傾斜溝入り砥石の実施形態を図面に基づいて以下に説明する。図1は、セグメントタイプの砥石チップを含む砥石を示し、図2は該砥石が装着される研削盤を示す。
【0014】
この砥石10の砥石チップ11は、超砥粒をビトリファイドボンドで結合した砥粒層12が外周側に形成され、超砥粒層を含まない下地層13が砥粒層12の内側に重ねて一体的に形成されている。砥石10は、砥粒層12と下地層13からなる複数の円弧状の砥石チップ11が鉄又はアルミニウム等の金属、或いは樹脂等で成形された円盤状のコア14の外周面に並べられ、下地層13の底面で接着剤によりコア14に貼付されて構成されている。砥石10は、図2に示す研削盤30の砥石台31に軸線O回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸32にコア14で装着される。研削盤30の工作物支持装置33には工作物Wが回転駆動可能に支承され、砥石台31の前進により砥石10の砥粒層12に形成された研削面15が工作物Wに研削点Pで当接して工作物Wの外周面を研削加工するようになっている。
【0015】
図3は、円弧状の砥石チップ11を示すもので、砥粒層12は、CBN、ダイヤモンド等の超砥粒16をビトリファイドボンド17で3〜5mmの厚さに結合したものであり、集中度調整用に超砥粒の代わりに酸化アルミニュウム(Al2O3)等の粒子が骨材として混入されている場合もある。また、前記下地層13は下地粒子19をビトリファイドボンド17で1〜3mmの厚さに結合したものである。ビトリファイドボンド17を採用すると、有気孔の特性から、切り屑の排出性に優れ、切れ味が良好となるため、砥石磨耗量を少なくして良好な表面粗さに研削加工することができる。しかしながら、結合剤としては、ビトリファイドボンド17の他に、レジンボンドまたはメタルボンド等を使用することができる。また、後述する傾斜溝20が砥粒層12表面より下地層13まで達する深さhで形成されている。
【0016】
図4に示すように、砥石10の研削面15には、砥石周方向に対して傾斜する幅bの傾斜溝20が複数本、砥石10の回転位相に拘らず少なくとも1本の傾斜溝20が研削点Pを上下に通過するように刻設されている。
【0017】
また、図5に示すように、各砥石チップ11は、周方向に平行な側端面21,22を有し、傾斜溝20の主部分を占める傾斜溝本体部20aと、該砥石チップ11に砥石10の回転方向前方で隣接する砥石チップ11に形成された傾斜溝本体部20aに連続し、一方の側端面22手前まで刻設された後端部20bと、該砥石チップ11に砥石10の回転方向後方で隣接する砥石チップ11に形成された傾斜溝本体部20aに連続し、他方の側端面21手前まで刻設された前端部20cとが形成されている。これらの傾斜溝本体部20aと後端部20b及び前端部20cとは、コア14に連続して貼付された場合に、隣接する傾斜溝20同士が砥石周方向に重複する部分となるので、砥石10の回転位相に拘らず研削点Pに対して必ず1本上下に通過する傾斜溝20を形成することができる。このように傾斜溝20が常に研削点Pを通過することにより、研削点Pに供給された研削液に発生する動圧が開放され、工作物Wが砥石10から離間する方向に変位されて工作寸法が大きくなることがなくなり、研削精度、特に真円度が向上する。
【0018】
また、傾斜溝20の各前端部20c及び各後端部20bが、砥石チップ11の砥石周方向に平行な側端面21,22には至らずに、その手前まで刻設されているので、該側端面21,22と傾斜溝20の側壁面23,24とが強度を低下させる鋭角を形成することなく、研削抵抗によって砥粒層12の割れや欠けを引き起こすことを防止する傾斜溝20を形成することができる。また、傾斜溝本体部20a、後端部20b及び前端部20cが形成され、同形状でパターン化した砥石チップ11を、砥石周方向にコア14に貼付することにより砥石10が形成されるので、製品品質を確保しやすくなり、かつ製造コストの削減、製造日程の短縮を図ることができる。
【0019】
また、各砥石チップ11には、隣接する傾斜溝20の間であって、砥石軸線方向と平行な前端面26及び後端面27の中央部に、夫々砥石周方向に延在する溝25が刻設されている。これらの溝25は、砥石チップ11がコア14に並べられて貼付された場合に、隣接する砥石チップ11に形成された溝25と互いに連続して夫々1つの溝25を形成するように刻設されている。この溝25は、隣接する傾斜溝20の砥石軸方向の離間距離より狭い幅の研削面を持つ工作物Wを研削する場合において、研削液に発生する動圧を開放するのに有効であり、この溝25の長さは、傾斜溝のピッチp、傾斜角度α、研削される工作物Wの幅より必ず研削点を通過するように算出することができる。しかし、この溝25があまり長いと、工作物Wを研削する研削面15の範囲が減少するため、その点を考慮して形成される。
【0020】
ここで、研削点Pに供給された研削液に動圧が発生することを効果的に防止するとともに、高い研削精度、長い砥石寿命を確保することができる傾斜溝20を容易に作成するための条件は、以下に述べる通りである。傾斜溝20は、砥石10の回転位相に拘らず工作物Wの幅、即ち研削点Pの軸線方向の長さ内で少なくとも1本、好ましくは2本以上研削点Pを上下に通過させるのが良い。傾斜溝20の砥石円周方向の幅である溝円周幅cは、研削面15に露出する超砥粒16の間隔が溝円周幅cだけ広くなるので短い方が良い。加工工数を低減するためには、溝本数は少ない方が良い。傾斜溝20の砥石円周方向のピッチは、傾斜溝20の間隔が狭いと加工しにくく、且つ砥石チップ11の強度が低下するので長い方が良い。傾斜溝20の総面積は、これを大きくすると研削に関与する超砥粒16の数が減少して砥石磨耗量が増加するのであまり大きくしない方が良い。
【0021】
これらの条件を勘案して、例えば外径350mmの砥石10によって幅15mmの工作物Wをプランジカット研削する場合に適切な傾斜溝20の本数n、傾斜角度αを決定する方法を以下に説明する。傾斜角度αは、傾斜溝20と砥粒層12の端面21、即ち砥石周方向とのなす角度であり、研削点Pの軸線方向の長さは工作物Wの幅と同じ15mmとなる。
【0022】
傾斜溝20の溝法線方向の幅bは、溝加工用砥石の強度を考慮し、且つ傾斜溝20の砥石円周方向の長さである溝円周幅cを短くするためにも1mm程度とするのがよい。溝円周幅cと傾斜溝20の傾斜角度αとの関係は図6に示すようになり、傾斜角度αを15度程度大きくすると溝円周幅cは小さくなり、傾斜溝20による超砥粒16の間隔の広がりを小さく抑えることができる。
【0023】
図7に示すように、例えば砥石10の外周研削面15(外径350mm)が工作物W(幅15mm)と接する範囲dにおいて、例えば2本の傾斜溝20が、砥石10の回転位相に拘らず、工作物Wの幅と同じ軸線方向の長さを有する研削点Pを上下に通過するようにした場合、傾斜溝20の傾斜角度αと本数nとの関係は図8、傾斜角度αと傾斜溝20の砥石円周方向のピッチpとの関係は図9、傾斜角度αと傾斜溝20による研削面15の削減率との関係は図10のようになる。図9から明らかなように、傾斜角度αを15度程度より小さくすると、傾斜溝20の砥石円周方向のピッチpが十分大きくなり、傾斜溝20の加工に支障をきたさない。また、図10のように、傾斜角度αを15度程度より小さくすると、傾斜溝20による研削面15の面積の削減率を小さく抑えることができる。また、図8に示されるように、傾斜角度αを15度程度にすると、傾斜溝20の本数nを少なくすることができる。これらのことを勘案すると、傾斜角度αは15度近傍の値にすることが好ましい。
【0024】
このようにして外径350mmの砥石10で幅15mmの工作物Wをプランジカット研削する場合に、砥石10の回転位相に拘らず工作物Wの幅、即ち研削点Pの軸線方向の長さ内で2本の傾斜溝20が研削点Pを上下に通過するように決定した傾斜溝20の緒元の一例は、溝幅bが1mm、溝深さhが7mm、傾斜角度αが15度、本数nが39本である。
【0025】
次に、傾斜溝入り砥石を製造する方法を図11に基づいて説明する。図11(a)に示すように、長方形状の外型41の内側底部に下型42が嵌合され、砥石10の外径になる砥石チップ11の円弧面に相当する円弧状の凹型面42aが下型42の上面に形成されている。この下型42上に、砥粒層12を構成する超砥粒16及びビトリファイドボンド17等を混合した砥粒層用粉体44が充填され、砥粒層用粉体44の厚さが均一になるようにレベリングされる。この状態で図11(b)に示すように、第1上型45である押型が外型41の内面に沿って下降され、砥粒層用粉体44を仮プレスして砥粒層12を円弧状に仮成型する。
【0026】
続いて、図11(c)に示すように、下地粒子19を含む下地層用粉体46が、仮プレス成型された砥粒層12の上側に充填され、下地層用粉体46の厚さが均一になるようにレベリングされる。その状態で、図11(d)に示すように、第2上型47が外型41の内面に沿って下降され、下地層用粉体46と砥粒層用粉体44とを同時にプレスする。これにより、下地層13が砥粒層12の内側に重ねて一体的にプレス成型され、円弧状の砥石チップ11が形成される。その後、第2上型47が上昇され、砥石チップ11が外型41、下型42から離型される。
【0027】
この焼成前の砥石チップ11は下地層13の底面の半径と同半径の円弧状の治具に載置してクランプされ、砥石チップ11の砥粒層12に、前記諸元に基づき傾斜溝20が砥石10の外周研削面15に溝加工用砥石で機械加工、もしくはプレス成形によって刻設される。
【0028】
次に、本実施形態の傾斜溝入り砥石10の作動について説明する。砥石10は図2に示す研削盤30の砥石台31に軸承された砥石台32にコア14で装着されて回転駆動され、工作物Wは主軸台及び心押台からなる工作物支持装置33に支承されて回転駆動される。砥石カバー34に取り付けられたクーラントノズル35から砥石10と工作物Wとの間の研削点Pにクーラントが供給され、砥石台31が工作物Wに向かって研削送りされ、砥石10により工作物Wが研削加工される。この場合、砥石周方向に対して傾斜する複数の傾斜溝20が、砥石10の回転位回転位相に拘らず少なくとも1本研削点を上下に通過するので、研削点Pに供給された研削液(クーラント)は傾斜溝20を通って上方及び下方へ流れ出し、研削面15と工作物Wの表面との接触部で発生した動圧を接触部の上方及び下方から開放することができる。これにより、工作物Wが砥石10から離間する方向に変位されて工作物Wの寸法が大きくなることがなくなり、研削精度、特に真円度を高めることができる。また、傾斜溝20の端部の刻設は、砥石チップ11のいずれも砥石周方向に平行な側端面21,22手前までであるので、該側端面21,22と傾斜溝20の側壁面23,24とが強度を低下させる鋭角を形成することなく、研削抵抗によって砥粒層12の割れや欠けを引き起こすことを防止することができる。
【0029】
また、隣接する傾斜溝20の間であって、砥石軸線方向と平行な前端面26及び後端面27の中央部に形成された溝25によって、隣接する傾斜溝20の砥石軸方向の離間距離より狭い幅の研削面を持つ工作物Wを研削する場合においても、砥石周方向に延在する溝25により、研削点Pに供給される研削液の動圧を開放することができる。
【0030】
研削加工の一例として、粒径が#120のCBN砥粒が集中度150でビトリファイドボンド17によって結合されて砥粒層12が形成され、該砥粒層12内側に超砥粒を含まない下地層13が重ねて一体的に形成された砥石チップ11がスチール製コア14に貼付された外径350mmの砥石により、幅15mmの焼入れ鋼製カム(工作物W)を研削加工した場合の法線方向の研削抵抗、プロフィル精度を夫々100とすると、同砥石の外周研削面15に溝幅bが1mm、溝深さhが7mm、傾斜角度αが15度の傾斜溝20を39本刻設した傾斜溝入り砥石10により、同一カムを研削加工した場合、法線方向の研削抵抗が77に減少し、プロフィル精度が20に向上した(図12参照)。
【0031】
なお、上記実施形態では、砥石チップ11に傾斜溝本体20aと傾斜溝の後端部20aと傾斜溝の前端部20bとを形成するものとしたが、これに限定されず、例えば、図13及び図14に示すように、該砥石チップ61に砥石の回転方向前方で隣接する砥石チップ61に形成された傾斜溝20の前半部20dに連続する傾斜溝20の後半部20eと、該砥石チップ61に砥石の回転方向後方で隣接する砥石チップ61に形成された傾斜溝20の後半部20eに連続する傾斜溝20の前半部20dとが形成されていても良い。
【0032】
また、傾斜溝は研削点の上下に少なくとも1本通過するものとしたが、これに限定されず、砥石の研削面の一部において傾斜溝が通過しない部分があるものでもよい。
【0033】
また、溝25について、隣接する砥石チップで溝25の前半部と後半部とを夫々形成し、砥石チップが並べられてコアに貼付されると、溝25が連続して一つの溝25形成されるものとしたが、これに限定されず、図13及び図14に示すように、隣接する傾斜溝20の間であって、砥石チップ61の周方向に平行な両端面21,22の間の中央部に設けてもよい。また、図15に示すように、砥石軸線方向と平行な前端面26又は後端面27のいずれか一方に設けるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態を示すセグメントタイプの砥石チップからなる砥石の全体図。
【図2】傾斜溝入り砥石を装着した研削盤で工作物を研削する状態を示す図。
【図3】砥石チップを示す図。
【図4】砥石の研削面に複数の傾斜溝を、少なくとも1本の傾斜溝が研削点を上下に通過するように刻設した状態を示す図。
【図5】砥石チップを示す図。
【図6】傾斜溝の溝円周幅と傾斜角度との関係を示す図。
【図7】2本の傾斜溝が常に工作物の幅と同じ軸線方向の長さを有する研削点を上下に通過するように刻設する状態を示す図。
【図8】傾斜溝の傾斜角度と本数の関係を示すグラフ。
【図9】傾斜溝の傾斜角度と砥石円周方向のピッチとの関係を示す図。
【図10】傾斜溝の傾斜角度と研削面の面積の削減率との関係を示す図。
【図11】傾斜溝入り砥石を製造する工程を示す図。
【図12】傾斜溝入り砥石により法線方向の研削抵抗、プロフィル精度が向上する割合を示す図。
【図13】他の実施形態の傾斜溝入り砥石を示す図。
【図14】同砥石チップを示す図。
【図15】砥石チップの別例を示す図。
【符号の説明】
【0035】
10…砥石、11…砥石チップ、12…砥粒層、13…下地層、14…コア、15…研削面、16…超砥粒、20…傾斜溝、20a…傾斜溝本体部、20b…後端部、20c…前端部、20d…前半部、20e…後半部、21…側端面、22…側端面、23…側壁面、24…側壁面、25…溝、26…前端面、27…後端面、61…砥石チップ、P…研削点、W…工作物。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
【識別番号】591043721
【氏名又は名称】豊田バンモップス株式会社
【出願日】 平成18年11月6日(2006.11.6)
【代理人】 【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩

【識別番号】100130096
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一総


【公開番号】 特開2008−114337(P2008−114337A)
【公開日】 平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願番号】 特願2006−300365(P2006−300365)