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【発明の名称】 カッターとその製造方法及び切断機
【発明者】 【氏名】上村 淳一

【氏名】佐藤 五夫

【要約】 【課題】初期の切れ味を維持しつつ、長寿命化を図ることができるカッターとその製造方法を提供すること。

【解決手段】円板状の基板の外周部に、砥粒層4を有するチップ3を接合して成るカッターにおいて、前記砥粒層4を前記チップ3の径方向及び厚さ方向に連続して配置する。又、砥粒層4をチップ3の周方向に複数配置する。更に、砥粒層4をチップ3の両側面に露出させる。そして、斯かるカッターの製造方法として、有機材料から成るシートの表面に砥粒を接着する工程と、表面に砥粒が接着されたシートを成形型内に配置する工程と、シートが配置された成形型内に金属粉と結合剤を充填する工程と、砥粒と金属粉及び結合剤を成形型内で燒結する工程を経てチップ3を成形し、該チップ3を基板の外周に接合する方法を採用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板状の基板の外周部に、砥粒層を有するチップを接合して成るカッターにおいて、
前記砥粒層を前記チップの径方向及び厚さ方向に連続して配置したことを特徴とするカッター。
【請求項2】
前記砥粒層を前記チップの周方向に複数配置したことを特徴とする請求項1記載のカッター。
【請求項3】
前記砥粒層を前記チップの両側面に露出させたことを特徴とする請求項1又は2記載のカッター。
【請求項4】
円板状の基板の外周部に、砥粒層を有するチップを接合して成るカッターの製造方法であって、
有機材料から成るシートの表面に砥粒を接着する工程と、表面に砥粒が接着されたシートを成形型内に配置する工程と、シートが配置された成形型内に金属粉と結合剤を充填する工程と、砥粒と金属粉及び結合剤を成形型内で燒結する工程を経てチップを成形し、該チップを基板の外周に接合することを特徴とするカッターの製造方法。
【請求項5】
前記シートを燒結温度よりも低い融点を有する材料で構成し、燒結によって該シートを焼失させることを特徴とする請求項4記載のカッターの製造方法。
【請求項6】
駆動源と、請求項1〜3記載のカッター又は請求項4又は5記載の製造方法によって製造されたカッターを含んで構成されることを特徴とする切断機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、円板状の基板の外周部に複数のチップを接合して成るカッターとその製造方法及び該カッターを備えた切断機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切断機に使用されるカッターは、一般的に鋼板から成る円板状の基板の外周部に切刃であるチップを接合して構成されるが、鋳鋼、コンクリート、モルタル、陶磁器、石材等の硬質材を切断するカッターのチップは、ダイヤモンドや窒化物、炭化物等を砥粒とし、それらの砥粒をW、Cu、Co、Sn等の金属粉と結合剤で燒結によって一体化して構成されている。ここで、従来のカッターの製造工程を図10に示すが、従来は砂粒と金属粉及び結合剤を混合した後、これらを成形型に流し込んで充填し(チップ成形工程1)、これらを成形型内で焼結して一体化することによってチップを成形し(チップ成形工程2)、このチップを基板の外周に接合することによってカッターを製造していた。
【0003】
斯かるカッターの性能は、長寿命化と切り味に分類され、これらの性能は基板の外周に配されたチップの結合剤の材質と砥粒の量及び形状によってほぼ決定される。
【0004】
カッターの長寿命化を図るためには、結合剤として高強度で高耐摩耗性且つ砥粒の保持力が大きいものを使用し、同一のチップ面での砥粒による研削を可能な限り長く持続させることによって達成される。
【0005】
ところが、カッターの長寿命化を図るために砥粒の保持力を高めると、砥粒が脱落しにくくなり、同じ砥粒で研削が継続されるために該砥粒の切れ味が次第に悪くなり、研削性能が低下する傾向が見られる。
【0006】
他方、カッターの切れ味の向上を図るためには、結合剤による砥粒の保持力を意図的に低下させて砥粒を積極的に脱落させ、新しい砥粒で研削を促進させれば良いが、砥粒の脱落によってチップの摩耗が大きくなるためにカッターの寿命が低下する傾向となる。
【0007】
ところで、特許文献1には、回転基板の外周面上に、作用砥粒が金属結合材によって外周方向に所定間隔をおいて突出固着して成る切断砥石が提案されており、この切断砥石は、窯業系サイディングボード等の硬くて切粉の発生量の多い材料の切断を可能とするために、砥粒層を1個又は集合した複数個の超砥粒の1層とし、作用砥粒間の間隔を作用砥粒の粒径以上としたことを特徴としている。
【特許文献1】特開平10−118937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のようにカッターのチップは、ダイヤモンド等の砥粒を金属粉と結合剤に混合し、これらを成形型内で焼結して一体化することによって得られるが、粒径及び比重が異なる砥粒と金属粉を攪拌してもチップ内に砥粒を均一に分散させることは困難である。このため、同じカッターであっても、砥粒の多いチップと少ないチップが混在し、同じチップ内でも砥粒の密度の高い箇所と低い箇所が存在し、チップが早期に磨耗したり、砥粒が早期に脱落する等、所望の切断性能を得ることができないことが多いという問題があった。
【0009】
又、特許文献1において提案された切断砥石では、超砥粒の保持力を確保することが困難であるとともに、超砥粒が脱落すると切断砥石の磨耗が急激に進行してしまうという問題がある。更に、このような切断砥石の製造に際して超砥粒を等間隔に配置することは難しく、生産性が悪いという問題もある。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、初期の切れ味を維持しつつ、長寿命化を図ることができるカッターとその製造方法及び切断機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、円板状の基板の外周部に、砥粒層を有するチップを接合して成るカッターにおいて、前記砥粒層を前記チップの径方向及び厚さ方向に連続して配置したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記砥粒層を前記チップの周方向に複数配置したことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記砥粒層を前記チップの両側面に露出させたことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、円板状の基板の外周部に、砥粒層を有するチップを接合して成るカッターの製造方法として、有機材料から成るシートの表面に砥粒を接着する工程と、表面に砥粒が接着されたシートを成形型内に配置する工程と、シートが配置された成形型内に金属粉と結合剤を充填する工程と、砥粒と金属粉及び結合剤を成形型内で燒結する工程を経てチップを成形し、該チップを基板の外周に接合することを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記シートを燒結温度よりも低い融点を有する材料で構成し、燒結によって該シートを焼失させることを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、駆動源と、請求項1〜3記載のカッター又は請求項4又は5記載の製造方法によって製造されたカッターを含んで切断機を構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜3記載の発明によれば、砥粒層をチップの径方向及び厚さ方向に連続して配置したため、各チップには砥粒が所定の位置に整然と均一に分散し、又、切断作業によってチップの外周面及び両側面が磨耗しても、チップの外周面及び両側面には同じように配置された新しい砥粒が現れるため、カッターには初期の切れ味が維持される。又、各チップには砥粒が均一に分散するため、これらの砥粒の結合強度が高められて脱落が防がれ、これによってカッターの長寿命化が図られる。
【0018】
請求項4記載の発明によれば、シートの表面に予め砥粒を接着しておき、このシートを成形型内に配置するようにしたため、その配置の仕方によって砥粒をチップ内で或る程度自由に配置することができ、これによって砥粒層をチップの径方向及び厚さ方向に連続して配置することができる。
【0019】
請求項5記載の発明によれば、焼結時にシートが焼失することによって、該シートの表面に接着されていた砥粒が強固に結合され、その脱落が防がれてカッターの長寿命化が図られる。
【0020】
請求項6記載の発明によれば、切断機において、初期の切れ味を維持しつつ、カッターの長寿命化を図ることができ、切断作業を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本発明に係る切断機の正面図であり、図示の切断機10は、モータを駆動源とする電動式のものであって、そのハウジング11には駆動源である不図示のモータが内蔵されている。そして、モータの出力軸12の端部には、本発明に係るカッター1が取り付けられており、このカッター1の上半部はギヤカバー13によって覆われている。
【0023】
又、前記ハウジング11には、作業者が把持すべきハンドル部11aが設けられており、このハンドル部11aの基部には、前記モータへの通電をON/OFFして当該切断機10を起動/停止するためのスイッチ14が設けられている。
【0024】
更に、ハウジング11にはベース15が取り付けられており、このベース15の底面は、前記カッター1の回転方向に直交する方向(図1の左右方向)に延びている。
【0025】
而して、以上の構成を有する切断機10を用いて石材等の被切断材Wを切断するには、図示のようにベース15の底面を被切断材W上に載置し、スイッチ14をONしてモータを起動し、該モータによってカッター1を図示矢印a方向(時計方向)に回転させながら、ハウジング11のハンドル部11aを把持して切断機10を被切断材Wの表面に沿って図示矢印b方向(図1の左方)に移動させる。すると、被切断材Wは、回転するカッター1によって切断される。
【0026】
次に、本発明に係る前記カッター1の構成を図2及び図3に基づいて説明する。
【0027】
図2は本発明に係るカッターの正面図、図3は図2のA−A線断面図、図4(a)はチップの平面図、図4(b)は同チップの正面図である。
【0028】
本実施の形態に係るカッター1は、鋼板から成る円板状の基板2の外周部に複数(図示例では12)の扇形のチップ3を接合して構成されている。ここで、図3に示すように、各チップ3の厚みt1は、基板2の厚みt2よりも大きく設定されている(t1>t2)。これは、チップ3と被切断材Wとの接触が積極的に行われることによって基板2の被切断材Wとの接触抵抗を減らし、当該カッター1の発熱による変形や切断速度の低下を防ぐためである。
【0029】
又、基板2の外周部の隣接するチップ3の間には、切断時の切粉の排出効率を高めるための溝2aが形成されている。尚、基板2の中心部には、当該カッター1を図1に示す切断機10のモータ出力軸12に取り付けるための円孔状の取付孔2bが形成されている。
【0030】
而して、カッター1による被切断材Wの切断においては、各チップ3の角部3aが被切断材Wに断続的且つ衝撃的に接触することによって該被切断材Wの切断が行われるため、この角部3aには高い耐磨耗性と耐熱性及び耐衝撃性が要求される。又、切断に際しては各チップ3の外周面と両側面も被切断材Wと接触するため、これらに対しても高い耐磨耗性と耐熱性及び耐衝撃性が要求され、これらの要求を満足させるには各チップ3内に砥粒を均一に分散させる必要がある。
【0031】
そこで、本実施の形態では、図4に示すように、各チップ3において砥粒を含む砥粒層4を径方向及び厚さ方向に連続して配置した。具体的には、径方向に放射状に延びる円筒状の
5つの砥粒層4をチップ3の周方向に適当な間隔で配置するとともに、これらの砥粒層4をチップ3の両側面に露出させた。
【0032】
このように各チップ3に砥粒層4を径方向及び厚さ方向に連続して配置して成るカッター1の製造方法を図5及び図6を参照しながら以下に説明する。尚、図5(a)は外表面に砥粒を接着して成るシートの平面図、図5(b)は同シートの正面図、図6は本発明に係るカッターの製造方法を示す工程図である。
【0033】
カッター1の製造に際しては、図6に示すチップ成形工程1〜4を経て図4に示すチップ3が成形される。
【0034】
即ち、融点が焼結温度(850〜870℃)よりも低い150〜300℃のプラスチックのシート5を図5に示すように円筒状に丸め、その外表面に接着剤を塗布し、ダイヤモンド等の多数の砥粒6をシート5の外表面に接着する(チップ成形工程1)。
【0035】
次に、外表面に砥粒6が接着された複数のシート5を不図示の成形型内に放射状に且つ周方向に適当な間隔を設けて配置し(チップ成形工程2)、その成形型内にW、Cu、Co、Sn等の金属粉と結合剤(ボンド)を流し込んで充填する(チップ成形工程3)。そして、シート5に接着された砥粒6と金属粉及び結合剤を成形型内で850〜870℃の温度で加圧燒結することによってこれらを一体化し(チップ成形工程4)、図4に示すようなチップ3を成形する。この焼結においては、シート5の融点は150〜300℃と焼結温度850〜870℃よりも低いため、このシート5は焼結によって焼失し、このシート5の外表面に接着されていた砥粒6は金属粉と結合剤から成るボンドに強固に結合される。従って、チップ3においては、成形型内に当初シート5が配置されていた位置に砥粒層4が図4に示すように形成される。
【0036】
以上の工程を経て複数のチップ3が成形されると、これらのチップ3を基板2の外周に等角度ピッチ(本実施の形態では12のチップ3を30°ピッチ)で接合することによって、図2及び図3に示すようなカッター1が得られる。
【0037】
以上のように、本実施の形態に係るカッター1においては、砥粒層4をチップ3の径方向及び厚さ方向に連続して配置したため、各チップ3には砥粒6が所定の位置に整然と均一に分散し、又、切断作業によってチップ3の外周面及び両側面が磨耗しても、チップ3の外周面及び両側面には同じように配置された新しい砥粒6が現れるため、カッター1には初期の切れ味が維持される。具体的には、切削によって各チップ3の外周面が磨耗しても、この外周面には円筒状の砥粒層4が常に露出し(図4(a)参照)、又、チップ3の両側面が磨耗しても、これらの両側面には縞状の砥粒層4が常に露出するため、カッター1には初期の切れ味が維持される。尚、チップ3の両側面においては、初期状態では該チップ3の側面に対して曲率を有する砥粒層4が当接することによって5本の縞が現れるが(図4(b)参照)、側面の磨耗が進行すると、円筒状の各砥粒層4が2つに分断される結果、各側面には倍の10本の縞が現れる。この場合、チップ3の各側面における砥粒層4の面積比率は初期状態よりも増加するため、カッター1の切れ味と磨耗特性が低下することがない。
【0038】
又、各チップ3には砥粒6が均一に分散するため、これらの砥粒6の結合強度が高められて脱落が防がれ、これによってカッター1の長寿命化が図られる。
【0039】
更に、本発明に係る製造方法によれば、シート5の表面に予め砥粒6を接着しておき、このシート5を成形型内に配置するようにしたため、その配置の仕方によって砥粒6をチップ内で或る程度自由に配置することができ、これによって砥粒層4をチップ3の径方向及び厚さ方向に連続して配置することができる。例えば、図7に示すように、チップ3内に波形の1層の砥粒層4を周方向に配置し、或いは図8に示すように、チップ3内に波形の2層の砥粒層4を周方向に配置することも可能である。又、図9に示すように、図4に示した円筒状の砥粒層4を90°傾け、円筒状の砥粒層4がチップ3を幅方向に貫通するよう構成することもできる。尚、図7〜図9において、(a)はチップの平面図、(b)は同チップの正面図である。
【0040】
而して、以上の構成と作用を有するカッター1を備えた図1に示す切断機10によれば、初期の切れ味を維持しつつ、カッター1の長寿命化を図ることができ、切断作業を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る切断機の正面図である。
【図2】本発明に係るカッターの正面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】(a)は本発明に係るカッターのチップの平面図である。
【図5】(a)は外表面に砥粒を接着して成るシートの平面図、(b)は同シートの正面図である。
【図6】本発明に係るカッターの製造方法を示す工程図である。
【図7】(a)は別形態に係るチップの平面図、(b)は同チップの正面図である。
【図8】(a)は別形態に係るチップの平面図、(b)は同チップの正面図である。
【図9】(a)は別形態に係るチップの平面図、(b)は同チップの正面図である。
【図10】従来のカッターの製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0042】
1 カッター
2 基板
2a 基板の溝
2b 基板の取付孔
3 チップ
3a チップの角部
4 砥粒層
5 シート
6 砥粒
10 切断機
11 ハウジング
11a ハウジングのハンドル部
12 モータ出力軸
13 ギヤカバー
14 スイッチ
15 ベース
W 被切断材
【出願人】 【識別番号】000005094
【氏名又は名称】日立工機株式会社
【出願日】 平成18年10月31日(2006.10.31)
【代理人】 【識別番号】100092853
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 亮一


【公開番号】 特開2008−110433(P2008−110433A)
【公開日】 平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願番号】 特願2006−295038(P2006−295038)