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【発明の名称】 傾斜溝入り砥石及びその製造方法
【発明者】 【氏名】相馬 伸司

【氏名】森田 宏司

【氏名】稲垣 朋宏

【氏名】竹原 寛

【要約】 【課題】砥石の研削面に機械加工によって刻設された傾斜溝を接着剤によって補強することにより、超砥粒の脱落を防止して砥石寿命を長くする。

【解決手段】超砥粒を含む砥粒層12を有する複数の砥石チップがコアに貼付された砥石において、砥石周方向に対して傾斜する複数の傾斜溝20の各々が、研削面に機械加工によって刻設され、傾斜溝20が刻設された砥粒層12は、各傾斜溝20の砥石回転方向後方の側壁24が接着剤25によって補強されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削盤の砥石台に軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層を有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石において、
前記軸線に対して傾斜する複数の傾斜溝の各々が前記研削面に機械加工によって刻設され、該傾斜溝が刻設された砥粒層は、前記各傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁が接着剤によって補強されていることを特徴とする傾斜溝入り砥石。
【請求項2】
請求項1において、前記砥粒層は、前記軸線と直角な両側面の中の前記傾斜溝が前記砥石回転方向前方で終端する方の側面が接着剤によって補強されていることを特徴とする傾斜溝入り砥石。
【請求項3】
請求項1において、前記砥粒層は、前記傾斜溝の砥石回転方向前方の側壁が接着剤によって補強されていることを特徴とする傾斜溝入り砥石。
【請求項4】
請求項2において、前記砥粒層は、前記傾斜溝の砥石回転方向前方の側壁、及び前記軸線と直角な両側面の中の前記傾斜溝が前記砥石回転方向後方で終端する方の側面が接着剤によって補強されていることを特徴とする傾斜溝入り砥石。
【請求項5】
研削盤の砥石台に軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層を有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石の製造方法において、
前記軸線に対して傾斜する複数の傾斜溝の各々を、前記研削面に機械加工によって刻設し、
前記傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁を接着剤によって補強することを特徴とする傾斜溝入り砥石の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、コアに貼付されたセグメントタイプの砥石チップに傾斜溝を形成した傾斜溝入り砥石及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸線回りに回転駆動される円盤状のコアの外周面に、ダイヤモンド又は立方晶窒化硼素等の超砥粒を含む砥粒層が形成され、該砥粒層外周の研削面に所定の幅、深さを有する傾斜溝がコアの軸線に対して25度乃至45度程度傾斜して刻設された溝付砥石が特許文献1に記載されている。このような溝付砥石によれば、研削液を傾斜溝に沿って研削点に効果的に導入することができ、傾斜溝のない砥石に比して研削による除去量を約1.5倍に増大させて研削効率を高めることができる。
【特許文献1】特開2000−354969(段落〔0007〕、〔0026〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数の傾斜溝の各々を機械加工によって砥石の研削面に刻設すると、製作が容易であるが、かかる傾斜溝の側壁部では研削面に露出する超砥粒の保持力が機械加工によって低下するとともに、傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁部では、研削面に露出する超砥粒の間隔が傾斜溝の幅だけ広くなるので、超砥粒に作用する研削負荷が増大し脱落しやすくなる。
【0004】
本発明は、砥石の研削面に機械加工によって刻設された傾斜溝を接着剤によって補強することにより、超砥粒の脱落を防止して砥石寿命を長くすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、研削盤の砥石台に軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層を有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石において、前記軸線に対して傾斜する複数の傾斜溝の各々が前記研削面に機械加工によって刻設され、該傾斜溝が刻設された砥粒層は、前記各傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁が接着剤によって補強されていることである。
【0006】
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記砥粒層は、前記軸線と直角な両側面の中の前記傾斜溝が前記砥石回転方向前方で終端する方の側面が接着剤によって補強されていることである。
【0007】
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記砥粒層は、前記傾斜溝の砥石回転方向前方の側壁が接着剤によって補強されていることである。
【0008】
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項2において、前記砥粒層は、前記傾斜溝の砥石回転方向前方の側壁、及び前記軸線と直角な両側面の中の前記傾斜溝が前記砥石回転方向後方で終端する方の側面が接着剤によって補強されていることである。
【0009】
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、研削盤の砥石台に軸線回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸に装着されるコアに、超砥粒を含む砥粒層を有する複数の砥石チップが貼付され、前記砥粒層に形成された研削面が前記研削盤の工作物支持装置に回転駆動可能に支承された工作物を研削点で当接して研削加工する砥石の製造方法において、前記軸線に対して傾斜する複数の傾斜溝の各々を、前記研削面に機械加工によって刻設し、前記傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁を接着剤によって補強することである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、超砥粒を含む砥粒層を有する複数の砥石チップがコアに貼付された砥石において、砥石周方向に対して傾斜する複数の傾斜溝の各々が、研削面に機械加工によって刻設され、該傾斜溝が刻設された砥粒層は、各傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁が接着剤によって補強されているので、複数の傾斜溝を超砥粒を含む砥粒層に容易に刻設することができるとともに、機械加工によって低下した超砥粒の保持力が接着剤によって補強され、超砥粒の脱落が防止されて砥石寿命が長くなる。特に、傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁部では、研削面に露出する超砥粒の間隔が傾斜溝の幅だけ広くなるので、超砥粒に作用する研削負荷が増大し脱落しやすくなるが、各傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁が接着剤によって補強されているので、砥粒保持力が高くなり、超砥粒の脱落、欠けを防止することができる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、砥粒層は、砥石周方向と平行な両側面の中の傾斜溝が砥石回転方向前方で終端する方の側面が接着剤によって補強されているので、傾斜溝と側面とに挟まれた砥粒層の鋭角部分が研削負荷によって破損することを防止することができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、砥粒層は、傾斜溝の両側壁が接着剤によって補強されているので、傾斜溝の両側壁部で研削面に露出する超砥粒の保持力が高くなり、超砥粒の脱落、欠けを防止することができる。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、砥粒層は、傾斜溝の両側壁、及び砥石周方向と平行な両側面が接着剤によって補強されているので、両側面部と傾斜溝の両側壁部とで研削面に露出する超砥粒の保持力が高くなり、超砥粒の脱落、欠けを防止することができる。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、超砥粒を含む砥粒層を有する複数の砥石チップがコアに貼付された砥石の製造方法において、砥石周方向に対して傾斜する複数の傾斜溝の各々を、研削面に機械加工によって刻設し、各傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁を接着剤によって補強するので、複数の傾斜溝を砥粒層に容易に刻設することができるとともに、機械加工によって低下した超砥粒の保持力を接着剤によって補強し、超砥粒の脱落が防止されて砥石寿命の長い傾斜溝入り砥石を容易に製造することができる。特に、傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁部では、研削面に露出する超砥粒の保持力が機械加工によって低下するとともに、研削面に露出する超砥粒の間隔が傾斜溝の幅だけ広くなるので、超砥粒に作用する研削負荷が増大し脱落しやすくなるが、各傾斜溝の砥石回転方向後方の側壁を接着剤によって補強するので、砥粒保持力が高く、超砥粒の脱落、欠けを防止可能な溝入り砥石を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、セグメントタイプの砥石チップ11を含む砥石10を示し、この砥石10の砥石チップ11は、超砥粒をビトリファイドボンドで結合した砥粒層12が外周側に形成され、超砥粒を含まない下地層13が砥粒層12の内側に重ねて一体的に形成されている。砥石10は、砥粒層12と下地層13からなる複数の円弧状の砥石チップ11が、鉄またはアルミニウム等の金属、或いは樹脂等で成形された円盤状のコア14の外周面に並べられ、下地層13の底面で接着剤によりコア14に貼付されて構成されている。砥石10は、図2に示す研削盤30の砥石台31に軸線O回りに回転駆動可能に軸承された砥石軸32にコア14で装着される。研削盤30の工作物支持装置33には工作物Wが回転駆動可能に支承され、砥石台31の前進により砥石10の砥粒層12に形成された研削面15が工作物Wに研削点Pで当接して工作物Wの外周面を研削加工するようになっている。
【0016】
図3は、円弧状の砥石チップ11を示すもので、砥粒層12は、CBN、ダイヤモンド等の超砥粒16をビトリファイドボンド17で3〜5mmの厚さに結合したものであり、集中度調整用に超砥粒の代わりに酸化アルミニウム(Al2O3)等の粒子が骨材として混入されている場合もある。また、前記下地層13は、下地粒子19をビトリファイドボンド17で1〜3mmの厚さに結合したものである。ビトリファイドボンド17を採用すると、有気孔の特性から、切り屑の排出性に優れ、切れ味が良好となるため、砥石摩耗量を少なくして良好な表面あらさに研削加工することができる。しかしながら、結合剤としては、ビトリファイドボンド17の他に、レジンボンドまたはメタルボンド等を使用することもできる。
【0017】
図4に示すように、砥石10の研削面15には、砥石周方向に対して傾斜する幅bの傾斜溝20が複数本、砥石10の回転位相に拘らず少なくとも1本の傾斜溝20が研削点Pを上下に通過するように刻設されている。このように少なくとも1本の傾斜溝20が常に研削点Pを通過することにより、研削点Pに供給された研削液により研削面15と工作物Wとの間に発生する動圧が研削点の上方および下方の両方から開放され、工作物Wが砥石10から離間する方向に変位されて工作物寸法が大きくなることがなくなり、研削精度、特に真円度が向上する。少なくとも1本の傾斜溝20が常に研削点Pを通過していないと、研削点Pに対して傾斜溝20が上方にしか開口していないと研削点Pの下方では動圧が開放されず、同様に傾斜溝20が下方にしか開口していないと研削点Pの上方では研削液の動圧は開放されない。傾斜溝20は、砥石周方向と平行な砥粒層12の両側面21,22をつき抜けて研削面15に刻設されている。図5に示すように、複数の傾斜溝20の各々は、砥粒層12に研削面15から下地層13に至るまでの深さhに切削工具で機械加工されて刻設されている。
【0018】
研削点Pに供給された研削液により動圧が発生することを効果的に防止するとともに、高い研削精度、長い砥石寿命を確保することができる傾斜溝20を容易に作成するための条件は、以下に述べる通りである。傾斜溝20は、砥石10の回転位相に拘わらず工作物Wの幅、即ち研削点Pの軸線方向の長さ内で少なくとも1本、好ましくは2本以上研削点Pを上下に通過させるのが良い。傾斜溝20の砥石円周方向の幅である溝円周幅cは、研削面15に露出する超砥粒16の間隔が溝円周幅cだけ広くなるので短い方が良い。加工工数を低減するためには、溝本数は少ない方が良い。傾斜溝20の砥石円周方向のピッチは、傾斜溝20の間隔が狭いと加工しにくく、且つ砥石チップ11の強度が低下するので長い方が良い。傾斜溝20の総面積は、これを大きくすると研削に関与する超砥粒16の数が減少して砥石磨耗量が増加するのであまり大きくしない方が良い。
【0019】
これらの条件を勘案して、例えば外径350mmの砥石10によって幅15mmの工作物Wをプランジカット研削する場合に適切な傾斜溝20の本数n、傾斜角度αを決定する方法を以下に説明する。傾斜角度αは、傾斜溝20と砥粒層12の側面21、即ち砥石周方向とのなす角度であり、研削点Pの軸線方向の長さは工作物Wの幅と同じ15mmとなる。
【0020】
傾斜溝20の溝法線方向の幅bは、溝加工用砥石の強度を考慮し、且つ傾斜溝20の砥石円周方向の長さである溝円周幅cを短くするためにも1mm程度とするのが良い。溝円周幅cと傾斜溝20の傾斜角度αとの関係は図6に示すようになり、傾斜角度αを15度程度より大きくすると溝円周幅cは小さくなり、傾斜溝20による超砥粒16の間隔の広がりを小さく抑えることができる。
【0021】
図7に示すように、例えば砥石10の外周研削面15(外径350mm)が工作物W(幅15mm)と接する範囲dにおいて、例えば2本の傾斜溝20が、砥石10の回転位相に拘わらず、工作物Wの幅と同じ軸線方向の長さを有する研削点Pを上下に通過するようにした場合、傾斜溝20の傾斜角度αと本数nとの関係は図8、傾斜角度αと傾斜溝20の砥石円周方向のピッチpとの関係は図9、傾斜角度αと傾斜溝20による研削面15の面積の削減率との間係は図10のようになる。図9から明らかなように、傾斜角度αを15度程度より小さくすると、傾斜溝20の砥石円周方向のピッチpが十分大きくなり、傾斜溝20の加工に支障をきたさない。また、図10のように、傾斜角度αを15度程度より小さくすると、傾斜溝20による研削面15の面積の削減率を小さく抑えることができる。また、図8に示されるように、傾斜角度αを15度程度にすると、傾斜溝20の本数nを少なくすることができる。これらのことを勘案すると、傾斜角度αは15度近傍の値にすることが好ましい。
【0022】
このようにして外径350mmの砥石10で幅15mmの工作物Wをプランジカット研削する場合に、砥石10の回転位相に拘わらず工作物Wの幅、即ち研削点Pの軸線方向の長さ内で2本の傾斜溝20が研削点Pを上下に通過するように決定した傾斜溝20の緒元の一例は、溝幅bが1mm、溝深さhが7mm、傾斜角度αが15度、本数nが39本である。
【0023】
砥石10の研削面15に傾斜溝20を溝加工用砥石で機械加工によって刻設すると、傾斜溝20の側壁23,24部分では研削面15に露出する超砥粒16の保持力が機械加工によって低下するとともに、傾斜溝20の砥石回転方向後方の側壁部24では、研削面15に露出する超砥粒16の間隔が傾斜溝20の溝円周幅cだけ広くなるので、超砥粒に作用する研削負荷が増大し脱落、欠けやすくなる。このような超砥粒16の脱落、欠けを防止するために、砥粒層12は、各傾斜溝20の砥石回転方向後方の側壁24が接着剤25によって補強されている。側壁24の接着剤25による補強は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂等の接着剤を側壁24に含浸又は刷毛等で塗布することによって行われる(図4参照)。
【0024】
砥石周方向と平行な両側面21,22の中の傾斜溝20が砥石回転方向前方で終端する方の側面21と傾斜溝20の砥石回転方向後方の側壁24とによって形成される砥粒層12の鋭角部26は破損しやすいので、砥粒層12は、各傾斜溝20の砥石回転方向後方の側壁24及び傾斜溝20が砥石回転方向前方で終端する方の側面21が接着剤25によって補強されるようにしてもよい。
【0025】
また、傾斜溝20の側壁23,24部分では研削面15に露出する超砥粒16の保持力が機械加工によって低下するが、傾斜溝20の砥石回転方向前方の側壁23部分で研削面15に露出する超砥粒16も研削加工に関与するので、かかる超砥粒16の脱落、欠けを防止するために、砥粒層12は、各傾斜溝20の砥石回転方向後方の側壁24とともに前方の側壁23も接着剤によって補強されるようにしてもよい。
【0026】
さらに、砥粒層12は、傾斜溝20の両側壁23,24、及び両側面21,22が接着剤25によって補強されるようにしてもよい。このようにすると、両側面21,22部分と傾斜溝20の両側壁23,24部分とで研削面15に露出する超砥粒16の保持力が一層高くなり、超砥粒16の脱落、欠けを防止することができる。
【0027】
次に、傾斜溝入り砥石を製造する方法を図11に基づいて説明する。周知の方法で砥石チップ11を作成し、コア14に貼付して砥石10を作成する(工程41)。前述のように砥石10の外径、工作物Wの幅、砥石10の回転位相に拘わらず研削点Pの軸線方向の長さ内で常に研削点Pを上下に通過する傾斜溝20の本数等に基づいて傾斜溝20の緒元を決定する(工程42)。決定した傾斜溝20の緒元通りに傾斜溝20を砥石10の外周研削面15に溝加工用砥石で機械加工する(工程43)。
【0028】
この機械加工は、図12に示す公知の溝加工装置50を用いて行うことができる。溝加工装置50は、例えば、溝加工用砥石51が装着された砥石軸52を水平面内でZ軸と平行な軸線回りに回転駆動可能に軸承する砥石台53がコラム54に上下のY軸方向に移動可能に装架され、該コラム54がベッド55上にZ軸方向に移動可能に載置され、ワークテーブル56がベッド上にコラム54と対向して水平面内でZ軸と直角なX軸方向に移動可能に載置されている。該ワークテーブル56上に回転テーブル57が垂直軸線回りに割出し回転可能に支承され、冶具58が設けられた主軸59を水平面内で回転位置決め可能に軸承する主軸台60が回転テーブル57上に固定されている。
【0029】
傾斜溝20の加工は、砥石10が冶具58を介して主軸59に同軸線上に固定され、最初に加工される傾斜溝20が加工開始位置に位置するように主軸59が回転位置決めされる。溝加工用砥石51の側面の方向が傾斜溝20の方向と一致するように、主軸59の軸線がZ軸に対して傾斜溝20の傾斜角度αだけ傾斜するように回転テーブル57が割出し回転される。溝加工用砥石51が最初に加工する傾斜溝20と整列するようにコラム54がZ軸方向に位置決めされ、溝加工用砥石51の下端面が傾斜溝20の底面と一致するように、砥石台53がY軸方向に下降されて位置決めされる。その後、砥石台53及びワークテーブル56がY軸及びX軸方向に同時2軸制御して移動されることにより、砥石周方向に対して傾斜する傾斜溝20が研削面15から下地層13に至るまで機械加工によって深さhを保って曲線状に刻設される(図5参照)。続いて、傾斜溝20の本数をnとすると、主軸59が360/nずつ回転位置決めされ、上述の作動が繰り返されてn本の傾斜溝20が刻設される。砥石10の外周研削面15に傾斜溝20が刻設されると、傾斜溝20の砥石回転方向後方の側壁24に接着剤を刷毛によって塗布、或いは含浸させて補強する(工程44)。
【0030】
次に、本実施形態の傾斜溝入り砥石10の作動について説明する。砥石10は図2に示す研削盤30の砥石台31に軸承された砥石軸32にコア14で装着されて回転駆動され、工作物Wは主軸台及び心押台からなる工作物支持装置33に支承されて回転駆動される。砥石カバー34に取り付けられたクーラントノズル35から砥石10と工作物Wとの間の研削点Pにクーラントが供給され、砥石台31が工作物Wに向かって研削送りされ、砥石10により工作物Wが研削加工される。この場合、砥石周方向に対して傾斜する複数の傾斜溝20が、砥石10の回転位相に拘らず少なくとも1本研削点Pを上下に通過するので、研削面15と工作物Wの表面との接触部で発生する研削液の動圧は研削点Pの上方および下方から開放される。これにより、工作物Wが砥石10から離間する方向に変位されて工作物Wの寸法が大きくなることがなくなり、研削精度、特に真円度を高めることができる。
【0031】
研削加工の一例として、粒径が♯120のCBN砥粒が集中度150でビトリファイドボンド17によって結合されて砥粒層12が形成され、該砥粒層12の内側に超砥粒を含まない下地層13が重ねて一体的に形成された砥石チップ11がスチール製コア14に貼付された外径350mmの砥石により、幅15mmの焼入れ鋼製カム(工作物W)を研削加工した場合の法線方向の研削抵抗、プロフィル精度を夫々100とすると、同砥石の外周研削面15に溝幅bが1mm、溝深さhが7mm、傾斜角度αが15度の傾斜溝20を39本刻設した傾斜溝入り砥石10により、同一カムを研削加工した場合、法線方向の研削抵抗が77に減少し、プロフィル精度が20に向上した(図13参照)。
【0032】
上記実施の形態では、工作物Wの幅が砥石10の幅より小さい場合であり、研削点Pの軸線方向の長さが工作物Wの幅と等しいとして傾斜溝20の諸元を求めているが、工作物Wの幅が砥石10の幅より大きい場合は、研削点Pの軸線方向の長さが砥石の幅と等しいとして傾斜溝20の諸元を求める。
【0033】
また、上記実施の形態では、傾斜溝20は、砥粒層12の両側面21,22をつき抜けて研削面15に刻設されているが、両側面21,22の手前近傍で終端させるようにしてもよい。このようにすると砥粒層12の強度を向上させることができる。
【0034】
上記実施の形態では、砥石チップを砥粒層と下地層から構成しているが、砥粒層のみで形成してもよい。
【0035】
上記実施の形態では、焼成された砥石チップをコアに貼付した後に傾斜溝20を研削面15に機械加工によって刻設しているが、傾斜溝20を研削面に刻設する方法は、これに限られるものではなく、焼成前の砥石チップに傾斜溝を刻設し、焼成後にコアに貼付するようにしてもよい。
【0036】
さらに、複数の傾斜溝は、上記実施の形態のように、研削液に生じる動圧を開放するためのものに限定されるものではなく、研削液を傾斜溝に沿って研削点に効果的に導入するためのものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態を示すセグメントタイプの砥石チップからなる砥石の全体図。
【図2】傾斜溝入り砥石を装着した研削盤で工作物を研削する状態を示す図。
【図3】砥石チップを示す図。
【図4】砥石の研削面に複数の傾斜溝を、少なくとも1本の傾斜溝が研削点を上下に通過するように刻設した状態を示す図。
【図5】砥粒層に傾斜溝が刻設された状態を示す図。
【図6】傾斜溝の溝円周幅と傾斜角度との関係を示す図。
【図7】2本の傾斜溝が常に工作物の幅と同じ軸線方向の長さを有する研削点を上下に通過するように刻設する状態を示す図。
【図8】傾斜溝の傾斜角度と本数との関係を示すグラフ。
【図9】傾斜溝の傾斜角度と砥石円周方向のピッチとの関係を示す図。
【図10】傾斜溝の傾斜角度と研削面の面積の削減率との間係を示す図。
【図11】傾斜溝入り砥石を製造する工程を示す図。
【図12】溝加工装置を示す図。
【図13】傾斜溝入り砥石により法線方向の研削抵抗、プロフィル精度が向上する割合を示す図。
【符号の説明】
【0038】
10・・・砥石、11・・・砥石チップ、12・・・砥粒層、13・・・下地層、14・・・コア、15・・・研削面、16・・・超砥粒、17・・・ビトリファイドボンド、20・・・傾斜溝、21,22・・・側面、23,24・・・側壁、25・・・接着剤、26・・・鋭角部、30・・・研削盤、31・・・砥石台、32・・・砥石軸、33・・・工作物支持装置、35・・・クーラントノズル、50・・・溝加工装置、51・・・溝加工用砥石(工具)、58・・・冶具、59・・・主軸、P・・・研削点、W・・・工作物、α・・・傾斜角度。
【出願人】 【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
【識別番号】591043721
【氏名又は名称】豊田バンモップス株式会社
【出願日】 平成18年10月17日(2006.10.17)
【代理人】 【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩

【識別番号】100130096
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一総


【公開番号】 特開2008−100293(P2008−100293A)
【公開日】 平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願番号】 特願2006−282789(P2006−282789)