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【発明の名称】 スムージング工具及びスムージング方法
【発明者】 【氏名】橋本 和則

【氏名】上原 正志

【氏名】森井 高広

【氏名】横山 真司

【要約】 【課題】被加工物の凹状部に対しても固定砥粒フイルムを当接でき、安定したスムージング加工が行えるようにする。

【解決手段】スムージング工具10は、砥粒を工具作用面に固定状態で保持して被加工物11の表面を加工するものであり、軸方向の一端が加工機に取り付けられ、他端に略球面の凸状部12bが形成された回転軸12と、凸状部12bの工具作用面側に固定された弾性部材14と、弾性部材14に固定された固定砥粒フイルム15とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒を工具作用面に固定状態で保持して被加工物の表面を加工するスムージング工具において、
軸方向の一端が加工機に取り付けられ、他端に略球面の凸状部が形成された回転軸と、
前記凸状部の工具作用面側に固定された弾性部材と、
該弾性部材に固定された固定砥粒フイルムと、
を備えていることを特徴とするスムージング工具。
【請求項2】
前記弾性部材は、厚さが0.5〜5.0mmでC硬度(ロックウェル硬さ)が2〜50を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のスムージング工具。
【請求項3】
前記固定砥粒フイルムは、厚さが5μm〜50μmの基材に、粒度が0.5μm〜10μmの砥粒が固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載のスムージング工具。
【請求項4】
前記弾性部材と前記固定砥粒フイルムは円板形状に形成され、直径が前記凸状部と略同じか又はそれよりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載のスムージング工具。
【請求項5】
被加工物の表面をスムージング加工するスムージング方法において、
回転軸の一端に固定された弾性部材と該弾性部材に固定された固定砥粒フイルムとを備えたスムージング工具と、前記被加工物の表面との間に加工液を介在させる工程と、
前記スムージング工具の固定砥粒フイルムと前記被加工物の表面とを当接させ、前記弾性部材を変形させる工程と、
前記スムージング工具と前記被加工物とを回転させて該被加工物の表面をスムージングする工程と、
を備えていることを特徴とするスムージング方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、研削加工又は切削加工された光学素子又は光学素子成形用の金型の表面を加工して、これらの表面粗さや加工痕を低減させるためのスムージング工具及びスムージング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリズム、ミラー等の光学素子は、研削、砂かけ、研磨等の工程を経て鏡面に仕上げられるが、研磨工程では、研削工程で発生した加工痕(挽き目)やクラック層を除去する必要がある。従来、例えば非球面の光学素子の研削加工痕やクラック層の除去方法として、特許文献1の非球面用加工工具や、特許文献2のスムージング加工技術が開示されている。
【0003】
図4には、特許文献1に記載されたスムージング工具100が示されている。このスムージング工具100は、光学レンズである被加工物104に対して摺動運動を行うことにより、その表面を加工するものである。すなわち、回転軸X1の先端に支持体101が取り付けられ、被加工物104は回転軸X2を中心として回転する。
【0004】
また、支持体101の下部面は、被加工物104の表面形状に対応した形状とされ、支持体101の全体が被加工物104の表面に沿って移動する。支持体101の下部には、弾性部材102が取り付けられ、この弾性部材102の表面に対し両面テープにより固定砥粒103が接着されている。
【0005】
そして、支持体101及び被加工物104を回転させながら、弾性部材102を被加工物104に押し付ける。この状態で、支持体101を被加工物104の表面形状に倣った摺動運動を行わせ、砥粒105が被加工物104の表面を研磨加工する。この場合、被加工物104には、砂あるいはダイヤモンドパウダ等の砥粒105を水に溶いたスラリーが塗布されている。
【0006】
図5には、特許文献2に記載されたスムージング工具110が示されている。このスムージング工具110も、レンズ等の光学素子やレンズ成形用の金型の被加工物に対して摺動運動を行うことで、その表面を加工するものである。このスムージング工具110は、回転軸111の先端部に弾性部材112が固定され、該弾性部材112の加工面側に固定砥粒フイルム113が固定されている。回転軸111の先端部は平面であり、弾性部材112と固定砥粒フイルム113の直径は、回転軸111の先端部よりも大きくなっている。
【0007】
これにより、回転軸111を回転RAさせながら、被加工物115に回転軸111とは逆の回転RBを与え、被加工物115の加工面116に固定砥粒フイルム113を一定加重Fzで当接させ、摺動運動によりスムージング加工を行う。加工中においては、固定砥粒フイルム113と加工面116の間に砥粒が含まれない加工液を用いている。
【特許文献1】特開平9−285952号公報
【特許文献2】特開2005−96029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、最近の非球面加工では、加工対象となる光学素子や成形用金型の小型化の他、極端な変曲点を持った形状を有する場合が多くなっている。このため、特許文献1のように、加工物104の表面形状に対応した形状の支持体101を有する工具では、加工が困難な場合も見受けられる。
【0009】
また、特許文献2では、図6に示すような不具合を生じる。すなわち、図に示すような被加工物115の場合、回転軸111の一端に固定された弾性部材112と固定砥粒フイルム113を有するスムージング工具110により、被加工物115の谷となる部分115aのスムージング加工をする必要がある。
【0010】
しかしながら、スムージング工具110の先端が平面なため、固定砥粒フイルム113が谷となる部分115aに接触できず、クラック層や挽き目を除去することができない。また、固定砥粒フイルム113の周辺部が被加工物115に強く接触するため、固定砥粒フイルム113の脱落が起こり、工具としての寿命が短くなる。
【0011】
一方、固定砥粒フイルム113と被加工物115との界面には、水溶性加工液117が介在する。水溶性加工液117は、潤滑及び冷却効果を与えるために用いられ、この液体に砥粒は含まれない。この状態で、スムージング工具110と被加工物115は、回転軸111に沿って回転させられ、スムージング工具110の固定砥粒フイルム113が被加工物115の表面を摺動する。
【0012】
しかし、スムージング工具110の外周が強く当接している部分115bに比べ、谷となる部分115aが当接しないことから、加工量がばらつき、研磨時間も大幅にかかり、研磨効率を悪化させてしまう。
【0013】
本発明は斯かる課題を解決するためになされたもので、被加工物の凹状部に対しても固定砥粒フイルムを当接でき、安定したスムージング加工が行えるようなスムージング工具及びスムージング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、請求項1に係るスムージング工具の発明は、
砥粒を工具作用面に固定状態で保持して被加工物の表面を加工するスムージング工具において、
軸方向の一端が加工機に取り付けられ、他端に略球面の凸状部が形成された回転軸と、
前記凸状部の工具作用面側に固定された弾性部材と、
該弾性部材に固定された固定砥粒フイルムとを備えていることを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のスムージング工具において、
前記弾性部材は、厚さが0.5〜5.0mmでC硬度(ロックウェル硬さ)が2〜50を有することを特徴とする。
【0016】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載のスムージング工具において、
前記固定砥粒フイルムは、厚さが5μm〜50μmの基材に、粒度が0.5μm〜10μmの砥粒が固定されていることを特徴とする。
【0017】
請求項4に係る発明は、請求項1に記載のスムージング工具において、
前記弾性部材と前記固定砥粒フイルムは円板形状に形成され、直径が前記凸状部と略同じか又はそれよりも大きいことを特徴とする。
【0018】
請求項5に係るスムージング方法の発明は、
被加工物の表面をスムージング加工するスムージング方法において、
回転軸の一端に固定された弾性部材と該弾性部材に固定された固定砥粒フイルムとを備えたスムージング工具と、前記被加工物の表面との間に加工液を介在させる工程と、
前記スムージング工具の固定砥粒フイルムと前記被加工物の表面とを当接させ、前記弾性部材を変形させる工程と、
前記スムージング工具と前記被加工物とを回転させて該被加工物の表面をスムージングする工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、被加工物が非球面の光学素子で、変曲点をもつ面形状が存在する場合であっても、変曲点の曲率に合わせて回転軸端に凸形状を作ることにより、安定してスムージング加工を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態におけるスムージング工具10の断面図であり、図2は、スムージング工具10を用いて被加工物11を加工する例を示す図、図3はその部分の拡大図である。
【0021】
図2及び図3において、スムージング工具10は、先端側に凸状部12bを有する回転軸12と、この凸状部12bの工具作用面側に接着固定されたスポンジ等の弾性部材14と、この弾性部材14の下面に接着固定された固定砥粒フイルム15と、を備えている。これら弾性部材14と固定砥粒フイルム15は、いずれも円板状に形成されている。また、凸状部12bは、弾性部材14側に突出する球面に形成され、その球面は曲率半径R=1.5mmに形成されている。
【0022】
固定砥粒フイルム15は、ポリエステルフィルムの工具作用面に、粒径1μmのダイヤモンド砥粒が高分子系接着剤によりコーティングされている。すなわち、ダイヤモンド砥粒が工具作用面に固定状態で保持されている。
【0023】
回転軸12は、ステンレス製からなり、長手方向の中間に円柱状の大径の本体部12aと、先端側の凸状部12bとの間に小径の軸部12cと、回転軸12の基端側に、不図示の加工機に保持するための小径の保持部12dと、を有している。
【0024】
本実施形態において、被加工物11として光学素子用金型が用いられ、その加工面は研削の仕上げ加工面である。この加工面は、凸面部18と平面部20、及びそのつなぎ部分としての凹面部22を有している。凸面部18はRl0.0の球面に形成され、凹面部22はR2.0の球面に形成されている。
【0025】
被加工物11は、不図示の加工機のモーターからの動力伝達により、スムージング工具10の回転(RB方向)とは反対方向の回転(RA方向)を行いながら、上下方向(O−O軸方向)、左右方向(O−O軸と略直交方向)、上下軸及び左右軸に垂直な軸回りに揺動する旋回方向に進退自在の駆動機構(不図示)を有している。
【0026】
本実施形態では、回転軸12は、本体部12aの軸径がφ3.0であり、先端側の凸状部12bの曲率は、前述のようにRl.5である。凸状部12bと弾性部材14、及び弾性部材14と固定砥粒フイルム15とは、強固に接着する必要があるため、接着剤として、クロロプレンゴム系が使用されている。
【0027】
弾性部材14と固定砥粒フイルム15の径は共にφ4.0である。弾性部材14は、厚さが0.5〜5μmでC硬度(ロックウェル硬さ)が2〜50を有しているものが望ましい。硬度がこの範囲内では、弾性部材14が加工面の曲面形状に倣って変形するためである。また、固定砥粒フイルム15の厚さは5〜50μm程度が好ましい。
【0028】
固定砥粒フイルム15は、厚さがこれより薄いと破れ易く、また、これより厚いと、しょう性が劣り、加工面の曲面形状に倣わないことがある。砥粒の粒度は0.5〜10μm程度のものを用いる。これにより、研削加工時から粗さが向上する。回転軸12の保持部12dは、不図示の加工機に取り付けられており、モーターによって被加工物11の回転(RA方向)とは逆の回転(RB方向)をする。
【0029】
また、スムージング工具10には、加工機により下方への加重Fzが与えられる。弾性部材14と固定砥粒フイルム15をφ4で使用することで、これらが加重Fzにより弾性変形して固定砥粒フイルム15の全面が被加工物11の加工面に均一に当接するようになる。この際、固定砥粒フイルム15と加工面との界面には、該固定砥粒フイルム15に接着されたダイヤモンド砥粒とは別の砥粒を含む研磨剤24が介在する。加工中のスムージング工具10は、加工面の中心を通る母線上を摺動しながら走査する。
【0030】
次に、図2及び図3に基づき、本実施形態のスムージング方法を作用とともに説明する。
スムージング工具10の一端には、弾性部材14と固定砥粒フイルム15とが固定されている。加工時には、予めこのスムージング工具10と被加工物11の表面との間に、加工液26と研磨剤24を供給しておく。なお、スムージング工具10の加工面への作用位置は、機械的に制御されており、加重Fzも一定となる様に調整されている。
【0031】
次に、スムージング工具10を回転(RB方向)させ、また、被加工物11を回転(RA方向)させる。このとき、回転方向のRB方向とRA方向はそれぞれ逆になっている。次いで、スムージング工具10を被加工物11の加工面に当接させる。これにより、スムージング工具10の先端の弾性部材14は、加重Fzにより加工面に倣って変形し、固定砥粒フイルム15の固定砥粒が作用してスムージング加工が行われる。
【0032】
この状態を詳しく見ると、回転軸12の先端側の凸状部12bの曲率半径はR=l.5であり、被加工物11のつなぎ部である凹面部22の曲率半径のR=2.0よりも小さい。このため、凹面部22のように、加工面に谷が存在する場合でも、ここに固定砥粒フイルム15が入り込み、確実にスムージング加工することができる。
【0033】
すなわち、非球面の光学素子では変曲点をもつ面形状となることが往々にしてあり、この変曲点の曲率に合わせて回転軸12の先端に凸状部12bを設けることにより、これらの形状の加工に対応することができる。
【0034】
本実施形態によれば、回転軸先端の凸状部12bに弾性部材14を介して固定砥粒フィルム15を固定したことで、被加工物11の谷部である凹面部22へのスムージング工具10の当接が可能となる。こうして、被加工物11の凹面部22に対しても広い面積で固定砥粒フイルム15を当接でき、安定してスムージング加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施形態におけるスムージング工具の断面図である。
【図2】スムージング工具を用いて凹状部を有する被加工物を加工する例を示す図である。
【図3】同上の部分拡大図である。
【図4】被加工物を加工する際の従来例を示す図である。
【図5】被加工物を加工する際の従来例を示す図である。
【図6】被加工物を加工する際の不具合の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 スムージング工具
11 被加工物
12 回転軸
12b 凸状部
14 弾性部材
15 固定砥粒フィルム
18 凸面部
20 平面部
22 凹面部
24 研磨剤
26 加工液
【出願人】 【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
【出願日】 平成18年10月11日(2006.10.11)
【代理人】 【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之


【公開番号】 特開2008−93779(P2008−93779A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−277831(P2006−277831)