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【発明の名称】 回転砥石
【発明者】 【氏名】西村 直樹

【要約】 【課題】本発明の目的は、生産性を低下させることなく、板ガラスの端部を面取り加工しても、欠損や破損を防止できる回転砥石、及び板ガラスの端面加工方法を提供することである。

【解決手段】この回転砥石10は、アルミニウム製で、中心に孔部10a′を有する円盤状台金10a(外径120mm、内径80mm、厚み40mm)と、この円盤状台金10aの外周面に接合された円環状の例えばフェノール樹脂製の衝撃吸収層10b(厚み10mm)と、この衝撃吸収層10bの外周面に接合された円環状の砥粒層10c(厚み5mm)から構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状台金の外周面に、弾性材料からなる衝撃吸収層が設けられ、該衝撃吸収層の表面に砥粒層が設けられた構造を有することを特徴とする回転砥石。
【請求項2】
衝撃吸収層が、熱硬化性樹脂から形成されてなることを特徴とする請求項1記載の回転砥石。
【請求項3】
熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂のいずれか一つであることを特徴とする請求項2記載の回転砥石。
【請求項4】
砥粒層が、多数の砥粒と、熱硬化性樹脂を主成分とする結合剤とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転砥石。
【請求項5】
板ガラスの端面を回転砥石に沿って相対移動させることによって加工する板ガラスの端面加工方法であって、前記回転砥石が、円盤状台金の外周面に、弾性材料からなる衝撃吸収層が設けられ、該衝撃吸収層の表面に砥粒層が設けられた構造を有することを特徴とする板ガラスの端面加工方法。
【請求項6】
板ガラスの厚みが3.0mm以下であることを特徴とする請求項5記載の板ガラスの端面加工方法。
【請求項7】
板ガラスの厚みが0.7mm以下であることを特徴とする請求項5記載の板ガラスの端面加工方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス、セラミック等の脆性材料からなる板状物を研削するのに適した回転砥石に関し、特に液晶ディスプレイ用板ガラス(厚み0.1〜0.7mm)やプラズマディスプレイ用板ガラス(厚み1.0〜3.0mm)等のディスプレイ用板ガラスを面取り加工するのに好適な回転砥石に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは、テレビ、パソコン、携帯電話等の多方面の用途に使用されている。またプラズマディスプレイは、大画面テレビに多く使用されている。
【0003】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のディスプレイに用いられる板ガラスは、その主要面に内部欠陥(気泡、異物混入等)や外部欠陥(凹凸、傷、異物付着、汚染等)が存在すると、像の歪みやボケ、濁り、輝点等が発生し、表示を不鮮明にするといった致命傷となるため、製造工程から仕上げ工程まで、高い精度と精密性を維持すべく厳密な管理の下で製造されている。
【0004】
またディスプレイ用板ガラスは、ガラスメーカーにおいて成形した後、所定の寸法に切断してから出荷されるが、その切断面は、粗面であるため、後工程で欠損や破損が発生しやすく、それを防止するために面取り加工が施される。
【0005】
従来、ディスプレイ用板ガラスの面取り加工は、板ガラスの厚みよりも僅かに広い溝幅の環状溝を有する粗研削用回転砥石を、板ガラスの端面に押し当てることによって粗研削を行い、続いて、同様な形状の環状溝を有する仕上げ研削用の回転砥石を、板ガラスの端面に押し当てることによって仕上げ研削を行うのが一般的であった。
【0006】
通常、粗研削用回転砥石としては、中心に孔部を有する円盤状(ドーナツ状)の台金の外周面に、メタルボンドで保持されたダイヤモンド砥粒層を取り付けてなるホイール(メタルボンドダイヤモンドホイール)が使用され、また仕上げ研削用回転砥石としては、台金の外周面に、炭化珪素等の細かい砥粒をポリウレタン樹脂等で結合したホイール(レジンボンドホイール)が使用されている。
【0007】
上記方法は、各回転砥石に形成された環状溝を、移動する板ガラスの端面に圧接することによって面取り加工を行うものであるが、仕上げ研削用回転砥石で板ガラスを研削する際、板ガラスが欠損したり、破損することがあった。この理由は、仕上げ研削用回転砥石は、外周面が砥粒を樹脂で結合することによって作製されており、粗研削用回転砥石に比べて強度が低く、研削力に劣るため、ガラス板に対する負荷が大きくなり、ガラス板に衝撃が加わりやすいからであると考えられる。
【0008】
また板ガラスの移動速度を大きくしたり、仕上げ研削用回転砥石の回転速度を大きくするほど、板ガラスに加わる衝撃力が大きくなり、板ガラスの欠損や破損がより一層発生しやすくなるため、生産性の向上を図ることは困難であった。
【0009】
このような事情から、従来より、板ガラスの端部を面取り加工する際に発生するカケや破損を防止する方法が各種提案されている。(例えば特許文献1)
【特許文献1】特開平9−235145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1には、板ガラスの端部に、予め液状樹脂の層を被覆、硬化させてから、砥石により面取り加工する方法が開示されている。この方法によると、予め板ガラス端部の表面に凝固性樹脂をコーティングしておき、この樹脂と共に板ガラスの端部を面取り加工することにより、欠損等の欠点が出ないようにすることが可能である。
【0011】
しかしながら、この方法では、板ガラスの面取り加工すべき端部の表面全体に亘って、液状樹脂をコーティングする工程が必要であり、さらに面取り加工した後に板ガラスの表面に残存した樹脂を除去する工程も必要となるため、生産効率が大幅に低下するという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、生産効率を低下させることなく、板ガラスの端部を面取り加工しても、欠損や破損を防止できる回転砥石、及び板ガラスの端面加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々の実験を繰り返した結果、板ガラスの端部を回転砥石で面取り加工する際に、板ガラスに加わる衝撃力を低下させることのできる回転砥石を使用することによって、板ガラスの欠損や破損を抑えることができることを見いだし、本発明を提案するに至った。
【0014】
すなわち本発明の回転砥石は、円盤状台金の外周面に、弾性材料からなる衝撃吸収層が設けられ、該衝撃吸収層の表面に砥粒層が設けられた構造を有することを特徴とする。
【0015】
また本発明の回転砥石は、衝撃吸収層が、熱硬化性樹脂から形成されてなることを特徴とする。
【0016】
また本発明の回転砥石は、熱硬化性樹脂が、フェノール樹脂、シリコ−ン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂の群から選ばれた1種であることを特徴とする。
【0017】
また本発明の回転砥石は、砥粒層が、多数の砥粒と、熱硬化性樹脂を主成分とする結合剤とからなることを特徴とする。
【0018】
また本発明の板ガラスの端面加工方法は、板ガラスの端面を回転砥石に沿って相対移動させることによって加工する板ガラスの端面加工方法であって、前記回転砥石が、円盤状台金の外周面に、弾性材料からなる衝撃吸収層が設けられ、該衝撃吸収層の表面に砥粒層が接合した構造を有することを特徴とする。
【0019】
また本発明の板ガラスの端面加工方法は、板ガラスが、厚み3.0mm以下であることを特徴とする。
【0020】
また本発明の板ガラスの端面加工方法は、板ガラスが、厚み0.7mm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回転砥石は、円盤状台金と砥粒層との間に、弾性材料からなる衝撃吸収層が介在しているため、回転砥石に被加工物が接触した時、被加工物に加わる衝撃を、衝撃吸収層の弾性変形を利用することによって緩和することになる。そのため、この回転砥石を使用して板ガラスの端部を面取り加工した場合、回転砥石から板ガラスに加わる衝撃力を緩和して微細加工することが可能となるため、欠損や破損を防止することができ、ムラがなく、均一に研磨された円弧状(R状)の面取り加工面が得られる。また一般に回転砥石のガラス板に対する負荷が大きくなると、ガラス板の端面に焼け不良、つまり研削による摩擦熱によってガラス表面が軟化変形する現象が発生するが、本発明の回転砥石は、ガラス板に対する負荷が小さいため、焼け不良を防止することもできる。
【0022】
また本発明の回転砥石は、高速回転させても、板ガラスに加わる衝撃力が小さいため、欠損や破損を発生させることなく、面取り加工の時間を短縮でき、生産性の大幅な向上を図ることも可能となる。
【0023】
また本発明の回転砥石は、ガラス板の端面を均一に微細加工することができるため、環状溝に詰まるガラス粉等の異物を極小に抑えることができ、これらの異物に起因する発塵が少なく、清浄な表面を有するガラス板を製造することが可能である。
【0024】
また本発明の板ガラスの端面加工方法によると、欠損や破損のない清浄な板ガラスを効率良く生産することが可能である。そのため寸法精度や表面品位に対する要求レベルの高いディスプレイ用板ガラスの面取り加工に適しており、特に厚みが0.7mm以下で、僅かな衝撃でも割れやすい液晶ディスプレイ用板ガラスの面取り加工に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の回転砥石は、円盤状台金の外周面に、弾性材料からなる衝撃吸収層が設けられ、該衝撃吸収層の表面に砥粒層が設けられた構造を有することを特徴とするものであり、その中心部を構成する円盤状台金の材質は、アルミニウム、鋼、超硬合金、モリブデン、モリブデン合金、サーメット、チタンまたはセラミック等が使用できる。尚、鋼材料としては、例えば炭素工具鋼、合金工具鋼、高速度鋼等が使用可能である。
【0026】
また最外層部を構成する砥粒層は、結合材と多数の砥粒との混合物を焼成することによって作製される。結合材としては、熱硬化性樹脂を主成分とするレジンボンド等が使用でき、また砥粒としては、ダイヤモンド粒子、酸化アルミニウム粒子、炭化珪素粒子、立方晶窒化硼素粒子、金属酸化物粒子、金属炭化物粒子、金属窒化物粒子等が使用できる。砥粒層を構成する結合材と砥粒との割合は、結合材が30〜97体積%、砥粒が3〜70体積%が適当であり、砥粒層の外表面から砥粒の一部が露出するように作製する。また砥粒の粒径は、その研削量や仕上げ表面粗さの要求レベルに応じて選択すれば良く、例えば、#100〜3000、好ましくは#600〜1000の範囲で適宜決定すれば良い。
【0027】
また円盤状台金と砥粒層との間に介在する衝撃吸収層の材質としては、被加工物が回転砥石に接触した際、被加工物に加わる衝撃力を低下させるような高い弾性を備え、且つ、高温下に長時間曝しても変形しない材料が適している。具体的には、フェノール樹脂、ABS樹脂、シリコ−ン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等の熱硬化性樹脂が適している。特にフェノール樹脂は、変形し難く、安価であるため最適である。また衝撃吸収層の厚みが小さいと、十分な衝撃吸収性能が得られず、一方、厚みが大きいと、回転砥石が変形しやすくなるため、5〜30mm、好ましくは10〜20mmの範囲に規制すべきである。
【0028】
また本発明の回転砥石の回転周速度は、回転砥石及び被加工物の材質や形状、被加工物の移動速度、研削量等によって適宜調整するが、例えば、液晶ディスプレイ用板ガラスの仕上げ研削加工を行う場合には、1000〜3000m/分、好ましくは1800〜2000m/分の回転周速度に調整すれば良い。
【0029】
本発明の回転砥石を作製するには、まず円盤状の台金を準備する。次に、円盤状台金の外周面に、弾性材料からなる衝撃吸収層を接着剤で接合する。この衝撃吸収層の形状は、円環状で、その内周面が、円盤状台金の外周面に当接するように作製する。次に、衝撃吸収層の外周面に、砥粒層を接着剤で接合する。この砥粒層の形状も円環状で、その内周面が、衝撃吸収層の外周面に当接するように作製する。その後、砥粒層にツルーリング、ドレッシングを施し、その外周面に単数本または複数本の環状溝を形成することによって、回転砥石が完成する。
【0030】
本発明の板ガラスの端面加工方法は、板ガラスの端面を回転砥石に沿って相対移動させることによって加工する板ガラスの端面加工方法であって、前記回転砥石が、円盤状台金の外周面に、弾性材料からなる衝撃吸収層が設けられ、該衝撃吸収層の表面に砥粒層が接合した構造を有することを特徴とするものであり、使用する板ガラスとしては、厚み3.0mm以下、さらには0.7mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の回転砥石10を示す斜視図である。この回転砥石10は、アルミニウム製で、中心に孔部10a′を有する円盤状台金10a(外径120mm、内径80mm、厚み40mm)と、この円盤状台金10aの外周面に接合された円環状の例えばフェノール樹脂製の衝撃吸収層10b(厚み10mm)と、この衝撃吸収層10bの外周面に接合された円環状の砥粒層10c(厚み5mm)から構成されている。
【0033】
上記円盤状台金10aと衝撃吸収層10bとは、耐熱性接着剤によって接合され、衝撃吸収層10bと砥粒層10cも、耐熱性接着剤によって接合されている。また砥粒層10cは、多数のダイヤモンド砥粒(例えば粒径が#600〜1000)と、メタルボンド(結合材)との混合物を円環状に焼成することによって作製している。また、この砥粒層10cには、ツルーリング、ドレッシングが施され、その外表面には、複数本(例えば10〜30本)の環状溝10d(溝幅1.0mm)が形成されている。
【0034】
図2は、上記回転砥石10と駆動源との連結構造を示す説明図である。回転砥石10は、その中心に形成された孔部を介して、回転軸11に同軸に連結され、この回転軸11が、ベルト車12に取り付けたベルト13を介してモーター14に連結されており、モーター14が作動し、回転軸11が回転駆動することによって回転砥石10が周回転するようになっている。
【0035】
次に、上記回転砥石10を使用して板ガラスの面取り加工を行う方法について説明する。
【0036】
図3は、本発明の板ガラスGの面取り加工方法の実施形態概念を示す要部概略斜視図である。図3に示すように、板ガラスGは、ベルトコンベヤ等の搬送機構(図示省略)によって、端面に沿う方向(図中の矢印方向)に一定の速度で移動し、搬送路の途中両側に設置した回転砥石15、16に圧接係合される。搬送方向の上流側に位置する粗研削用回転砥石15としては、一般に使用されるメタルボンドダイヤモンドホイールを使用し、また下流側に位置する仕上げ研削用の回転砥石16としては、上記した本発明の回転砥石10を使用する。
【0037】
これらの回転砥石15、16の回転方向は、板ガラスGの移動速度に逆らう方向としている。また各回転砥石15、16の回転軸線の傾動は、0〜45°の範囲内で行うことが可能であり、通常では、0〜30°程度の範囲で使用するのが適当である。
【0038】
本発明は、特に薄肉の液晶ディスプレイ用板ガラスの面取り加工に適用するのが好ましい。例えば、1100×1250×0.7mmの寸法を有する液晶ディスプレイ用板ガラスの端面の仕上げ研削を行うに当たり、板ガラスGを4m/分の速度で搬送しながら、まず粗研削回転砥石15に送り込むことによって、板ガラスGの両端面を粗研削し、次いで板ガラスGを仕上げ研削用回転砥石16に送り込むことによって、板ガラスGの両端面を仕上げ研削した。尚、粗研削用回転砥石15は、直径150mm、高さ(軸線方向幅)10〜40mm、砥石粒度♯300〜600であり、回転周速度を1500〜3500m/分の条件に設定し、また仕上げ研削用回転砥石16は、直径150mm、高さ(軸線方向幅)30〜100mm、砥石粒度♯600〜1000であり、回転周速度を1800〜2000m/分の条件に設定した。また研削箇所には、水を吹き付けて砥石面の目詰まりを防止するようにした。その結果、欠損や破損がなく、しかもムラがなく均一に研磨された円弧状の面取り加工面を有する板ガラスGが得られた。また上記と同様の液晶ディスプレイ用板ガラス10000枚を連続で面取り加工したが、欠損や破損が発生することはなかった。
【0039】
このように本発明の回転砥石は、衝撃吸収層を備えるため、板ガラスを研削する際、板ガラスに対する衝撃力を緩和するので、板ガラスの欠損や破損を防止することができ、しかもガラス粉等による汚染を抑えることができる。よって本発明の回転砥石は、寸法精度や表面品位に対する要求レベルが極めて高いディスプレイ用板ガラスに適しており、特に液晶ディスプレイ用ガラス基板のように薄肉で破損しやすい板ガラスの仕上げ研削用回転砥石として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の回転砥石を示す斜視図である。
【図2】本発明の回転砥石と駆動源との連結構造を示す説明図である。
【図3】本発明の板ガラスの面取り加工方法を示す要部概略斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
10 回転砥石
10a 円盤状台金
10a′ 円盤状台金の孔部
10b 衝撃吸収層
10c 砥粒層
10d 環状溝
11 回転軸
12 ベルト車
13 ベルト
14 モーター
15 粗研削用回転砥石
16 仕上げ研削用回転砥石
G 板ガラス
【出願人】 【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
【出願日】 平成18年10月6日(2006.10.6)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−93744(P2008−93744A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−274862(P2006−274862)