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【発明の名称】 cBNろう付け研削ホイール
【発明者】 【氏名】岩隈 隆

【氏名】峠 直樹

【氏名】谷井 俊亮

【要約】 【課題】砥粒の突き出し量を十分に確保し、砥粒の分散状態を良好に保って切れ味を良好に維持しつつ、砥粒保持力に優れたcBNろう付け研削ホイールを提供する。

【解決手段】cBN砥粒2は、その周囲に電気陰性度の高い元素、例えば塩素5が付着されている。この塩素5が付着されたcBN砥粒2は、ろう材3によって台金に固着されている。ろう材3にはチタン6が0.5質量%以上5質量%以下の範囲で含有されている。この状態で焼結すると、cBN砥粒2とろう材層7との境界部にTiNからなる反応層8が形成される。cBN砥粒2には電気陰性度の高い元素が付着されているため、ろう材3中に陽イオンとして存在するチタンイオンは、表面がマイナスに帯電したcBN砥粒2に引きつけられ、cBN砥粒2とろう材層7との境界付近でのチタンイオンの濃度が高まり、TiNからなる反応層8が形成されやすくなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
cBN砥粒を台金にろう付けして形成されたcBNろう付け研削ホイールにおいて、電気陰性度の高い元素を付着したcBN砥粒が、Tiを含むろう材によって固着され、cBN砥粒とろう材層との境界部にTiNからなる反応層が形成されていることを特徴とするcBNろう付け研削ホイール。
【請求項2】
前記反応層の厚みが2μm以上20μm以下であることを特徴とする請求項1記載のcBNろう付け研削ホイール。
【請求項3】
前記電気陰性度の高い元素は、Cl、Br、F、Iのいずれかであることを特徴とする請求項1または2記載のcBNろう付け研削ホイール。
【請求項4】
前記ろう材は、Tiを0.5質量%以上5質量%以下含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のcBNろう付け研削ホイール。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、cBN砥粒をろう付けにより台金に固着したcBNろう付け研削ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品等の加工において、ダイヤモンド砥粒やcBN砥粒を用いた研削ホイールが使用されている。ダイヤモンド砥粒は研削用の砥粒として広く用いられているが、鉄系材料やその複合材料を研削する際には、ダイヤモンド砥粒よりもcBN砥粒のほうが適合している。
【0003】
また、砥粒を固着する方法として、メタルボンドやろう付けなどがあり、用途に応じて固着方法が選択されている。メタルボンドホイールでは、砥粒の突き出しを大きくすることや砥粒を均一に分散させることが難しく、ろう付けによる研削ホイールはこの点でメタルボンドホイールより優れている。
【0004】
以上の点から、鉄系材料やその複合材料を切れ味良く研削するためには、cBN砥粒をろう付けして形成された研削ホイールを用いることが好ましい。しかし、ダイヤモンド砥粒をろう付けする場合と異なり、cBN砥粒をろう付けする場合には、砥粒とろう材とが化学反応することなく、単に物理固着となるため、砥粒保持力が十分に得られない。
ろう付けまたはメタルボンドによる砥石について、砥粒保持力を高めることを目的としてなされた技術の一例が特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5に記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3411233号公報
【特許文献2】特開平10−264034号公報
【特許文献3】特開2004−82276号公報
【特許文献4】特開平01−301070号公報
【特許文献5】特開2006−130613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、表面凹部または貫通孔を単独にまたは組み合わせて形成した砥粒を台金上に1層または複数層配設し、砥粒の前記凹部または貫通孔にろう材を充填させることによって、ろう材の成分を操作することなく砥粒の固着力を上げることが記載されている。
【0007】
特許文献2には、砥粒の周囲に活性粉末成分を含む結合材をコーティングすることにより砥粒保持力を高めることが記載されている。
【0008】
特許文献3には、台金と、台金上にCu系合金を主成分とするボンド部材によって接着された砥粒とを具備し、ボンド部材はZr及びTiの合金相、混合相又は金属間化合物を含むことによって、砥粒保持力を高めたメタルボンド研削工具が記載されている。
【0009】
特許文献4には、炭化物形成金属で被覆したダイヤモンド粒子をろう付けしたダイヤモンド切断研磨工具が記載されている。
【0010】
特許文献5には、台金と、台金上に設けられた砥粒と、台金に前記砥粒を保持するろう材とを備え、ろう材は、銅及びチタンを含有する合金と、バナジウムとを含有することによって、砥粒頭頂部へのろう材のかぶりを抑制するようにした研削工具が記載されている。
【0011】
これらの特許文献のうち、特許文献1に記載されたものは、ろう材の充填によって砥粒保持力は高まるが、これをcBN砥粒をろう付けする場合に適用しても、砥粒とろう材とが化学反応することがないため、物理固着となってしまう。
【0012】
特許文献2に記載されたものは、砥粒に物理的ダメージが伴うため、cBN砥粒の硬度、破砕値が低下するという問題点を生じる。また、特許文献3に記載されたものは、単純にボンド中にTiが含有されているだけである。この構造によると、cBN砥粒とボンドとの濡れ性という点では固着力は向上するが、濡れ性が向上しすぎるためにボンドが砥粒全体を覆ってしまい、研削初期の切れ味が低下する。
【0013】
特許文献4に記載されたものは、特許文献3と同様に濡れ性が向上しすぎるためにボンドが砥粒全体を覆うという問題点を生じる。また、特許文献5に記載されたものは、ボンドによる砥粒への覆いを抑制する方法の一つであり、ろう材に添加物を入れることで、その流動性を変えて砥材へのかぶりを抑制している。しかしこの方法では、ろう材の中に異物が入るために、本来持つTiとの反応を阻害し固着力が低下してしまう。
【0014】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、砥粒の突き出し量を十分に確保し、砥粒の分散状態を良好に保ちつつ、砥粒保持力に優れたcBNろう付け研削ホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題を解決するために、本発明のcBNろう付け研削ホイールは、cBN砥粒を台金にろう付けして形成されたcBNろう付け研削ホイールにおいて、電気陰性度の高い元素を付着したcBN砥粒が、Tiを含むろう材によって固着され、cBN砥粒とろう材層との境界部にTiNからなる反応層が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、電気陰性度の高い元素をcBN砥粒に付着させているため、単にcBN砥粒を、Tiを含むろう材を用いて固着する場合と比べて、cBN砥粒とろう材層との境界部にTiNからなる反応層が形成されやすい。また、cBN砥粒をあらかじめTiで被覆し、この被覆砥粒をろう付けしたものと比べて、cBN砥粒の頭頂部にろう材がかぶることがない。そのため、ろう付けによる利点である、砥粒の突き出し量を十分に確保し、砥粒の分散状態を良好に保って切れ味を良好に維持しつつ、砥粒保持力を高めることができる。
【0017】
本願発明においては、前記反応層の厚みが2μm以上20μm以下であることを特徴とする。
【0018】
電気陰性度の高い元素を付着したcBN砥粒をろう付けするため、単にcBN砥粒をろう付けする場合と比べてろう材中のTiがcBN砥粒に引き寄せられやすくなる。そのため、cBN砥粒とろう材層との境界付近でのチタンイオンの濃度が高まり、TiNからなる反応層が厚く形成され、その結果反応層の厚みが2μm以上20μm以下となる。
【0019】
反応層の厚みが2μm未満であると、砥粒保持力が十分に得られない一方、反応層の厚みが20μmを超えると、Tiの拡散が広くなりすぎて、化学結合の力が分散してしまい固着力が弱まるため好ましくない。
ここで使用される電気陰性度の高い元素として、Cl、Br、F、Iのいずれかを用いることができる。
【0020】
本願発明においては、前記ろう材は、Tiを0.5質量%以上5質量%以下含むことを特徴とする。
【0021】
Tiの含有量が0.5質量%未満であると、反応層の形成が十分に行われず、厚みが2μm以上となる反応層を形成することができず、砥粒保持力を十分に得ることができない。その一方、Tiの含有量が5質量%を超えると、ろう材の濡れ性が悪くなり、濡れ性を良くするためには焼成温度を高くすることが必要となる。その結果、ダイヤモンドの強度劣化を起こさない焼結温度範囲で焼成できなくなってしまうため好ましくない。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、砥粒の突き出し量を十分に確保し、砥粒の分散状態を良好に保って切れ味を良好に維持しつつ、砥粒保持力に優れたcBNろう付け研削ホイールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明のcBNろう付け研削ホイールをその実施形態に基づいて説明する。
図1は本発明の実施形態に係るcBNろう付け研削ホイールの外観を示し、図2は砥粒の固着状態を示すものである。
図1において、cBNろう付け研削ホイール1は、cBN砥粒2がろう材3によって、カップ型形状の台金4に固着されて形成されている。
【0024】
cBN砥粒2には、図2(a)に示すように、その周囲に電気陰性度の高い元素、例えば塩素5が付着されている。この塩素5が付着されたcBN砥粒2は、図2(b)に示すように、ろう材3によって固着されている。ろう材3にはチタン6が0.5質量%以上5質量%以下の範囲で含有されている。cBN砥粒2に付着させる電気陰性度の高い元素として、塩素の他に、Br、F、I等を用いることができる。
【0025】
この状態で焼結すると、図2(c)に示すように、cBN砥粒2とろう材層7との境界部にTiNからなる反応層8が形成される。cBN砥粒2には電気陰性度の高い元素が付着されているため、ろう材3中に陽イオンとして存在するチタンイオンは、表面がマイナスに帯電したcBN砥粒2に引きつけられる。そのため、cBN砥粒2とろう材層7との境界付近でのチタンイオンの濃度が高まり、TiNからなる反応層8が形成されやすくなる。その結果、厚みが2μm以上20μm以下という比較的厚い反応層8が形成される。
【0026】
cBN砥粒2とろう材層7との境界部にTiNからなる反応層8を形成することは、cBN砥粒2をあらかじめTiで被覆し、この被覆砥粒をろう付けすることによっても可能であるが、本発明とは以下の点で相違する。これを、図3に基づいて説明する。
【0027】
図3(a)は、Ti被覆砥粒をろう付けしたものを示しており、ろう材3と被覆されたTiとの濡れ性が良いために、ろう付けによってろう材3がTi被覆10を介してcBN砥粒2の表面を覆うようになり、本来ならばろう材3から突出すべき部分も、ろう材3で覆われる構造となってしまう。その結果、cBN砥粒2の表面のエッジの鋭さが機能しなくなり、切れ味の低下を招く。これに対し、図3(b)に示す本発明の構成では、cBN砥粒2は被覆されていないため、ろう材3から突出すべき部分がろう材3によって覆われる構造とはならない。そのため、切れ味が良好に維持される。
【0028】
上述した構造のcBNろう付け研削ホイールは、以下のような方法で製造することができる。
電解メッキに使用される硫酸ニッケルメッキ液には塩化ニッケルが含まれ、その中にニッケルイオンが多く存在する。この溶液中に、固着させるcBN砥粒2を3時間以上浸漬する。こうして浸漬したcBN砥粒2を軽く水で洗浄した後、バインダーでうすめたろう材3でcBN砥粒2を台金4に固着させ、減圧雰囲気下で600〜1000℃の温度で焼結する。
【0029】
以下に、試験例を示す。
図1に示す形状の、φ200D×50T×φ50Hのカップ型のホイールを作製して、研削試験を行った。このカップ型のホイールの砥粒層における反応層の厚みが異なるようにして、砥粒の脱落状態を試験した結果を図4に示す。被削材は、アルミと鋼鉄の複合材を用いた。
【0030】
反応層の厚みが2μm以下のときには、砥粒脱落率が大きいのに対して、反応層の厚みが10μmのときは砥粒の脱落が見られなかった。また、反応層の厚みが20μm以上となるように形成することは困難であった。以上の試験結果から、反応層の厚みは2μm以上20μm以下とすることが好ましい。
【0031】
次に、ろう材中のTiの含有量を変化させたときの試験結果を図5に示す。
この試験は、#40/60の粒度の砥粒を使用した、φ200D×50w×50.8Hのストレートホイールを用いて、鋳鉄を被削材として、100×100口、切り込み量0.4mmの研削試験を行ったものである。図5に示すように、ろう材中のTiの含有量が0.2質量%のときは、砥粒脱落率が大きいのに対して、ろう材中のTiの含有量が3質量%のときは、砥粒の脱落率が著しく低下している。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、鉄系材料やその複合材料を研削する研削ホイールであって、砥粒の突き出し量を十分に確保し、砥粒の分散状態を良好に保って切れ味を良好に維持しつつ、砥粒保持力に優れたcBNろう付け研削ホイールとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るcBNろう付け研削ホイールの外観を示す図である。
【図2】砥粒の固着状態を示す図である。
【図3】Ti被覆砥粒をろう付けしたものとの比較を説明するための図である。
【図4】反応層の厚みが異なるようにして、砥粒の脱落状態を試験した結果を示す図である。
【図5】ろう材中のTiの含有量を変化させたときの試験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 cBNろう付け研削ホイール
2 cBN砥粒
3 ろう材
4 台金
5 塩素
6 チタン
7 ろう材層
8 反応層
10 Ti被覆
【出願人】 【識別番号】000111410
【氏名又は名称】株式会社ノリタケスーパーアブレーシブ
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
【出願日】 平成18年9月19日(2006.9.19)
【代理人】 【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久

【識別番号】100116296
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幹生


【公開番号】 特開2008−73784(P2008−73784A)
【公開日】 平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願番号】 特願2006−253202(P2006−253202)