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【発明の名称】 切削・研削工具
【発明者】 【氏名】仙波 卓弥

【氏名】藤田 幸三

【氏名】中野 太郎

【要約】 【課題】切削・研削工具としてより優れた研削性能を有する切削・研削工具を提供すること。

【構成】表面に凸形状の切れ刃20を多数備える切削・研削工具10であって、前記切れ刃20は、頂点21を備える凸形状である切削・研削工具10である。切れ刃20をこのような形状にすると、研削時の研削性能が向上する。頂点21を備える凸形状の切れ刃20は、切れ刃20の先端に平面部分を有していない形状であるので、高密度で切削・研削工具表面に形成できる切れ刃形状であるという点で極めて優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に凸形状の切れ刃を多数備える切削・研削工具であって、前記切れ刃は、頂上とふもとの間である腹部の表面の高さ方向の断面形状が凹形状になるように形成されている切削・研削工具。
【請求項2】
前記切れ刃は、その頂上に、峰形状の頂点または平坦面を備える凸形状である請求項1に記載の切削・研削工具。
【請求項3】
前記切れ刃は、当該切れ刃が形成されている切削・研削工具表面に沿って延在する配列線に沿って、多数の切れ刃の頂上位置が位置するように整列配置されている請求項1または請求項2に記載の切削・研削工具。
【請求項4】
前記各切れ刃の頂点は、延在方向が異なる複数の前記配列線の交点に位置している請求項3に記載の切削・研削工具。
【請求項5】
前記切れ刃は、多結晶ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素からなるものである請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の切削・研削工具。
【請求項6】
前記多数の切れ刃が形成されている切削・研削工具の表面形状は回転面である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の切削・研削工具。
【請求項7】
前記回転面の回転軸の位置に回転可能に支持される際に用いられる回転軸支部を備えており、前記配列線のうちの少なくとも1つは、回転面である表面の回転方向に対して傾斜している請求項6に記載の切削・研削工具。
【請求項8】
切削・研削工具素材の表面に、少なくとも先端部分の断面形状が円弧形状である溝を複数形成して、溝どうしの境界位置に稜線または峰を有する凸形状の多数の切れ刃を形成する切れ刃形成工程を有することを特徴とする切削・研削工具の製造方法。
【請求項9】
切削・研削工具素材の表面に、少なくとも先端部分が半球形状の凹部を多数形成して、凹部どうしの境界位置に稜線または頂点を有する凸形状の多数の切れ刃を形成する切れ刃形成工程を有することを特徴とする切削・研削工具の製造方法。
【請求項10】
切削・研削工具素材を保持する保持具と、前記切削・研削工具素材の表面に向けてレーザ光を照射する光源と、レーザ光の前記切削・研削工具素材表面への照射位置を当該切削・研削工具素材に対して相対移動させる駆動手段とを備えており、
前記切削・研削工具素材表面にレーザ光を照射させつつ、照射位置を当該切削・研削工具素材に対して相対移動させて、少なくとも底部に円弧形状の断面を有する溝または凹部を複数形成し、溝どうしの境界位置に稜線または峰を有する凸形状の多数の切れ刃を形成することを特徴とする切削・研削工具製造装置。








【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、切削・研削工具に関するものであり、特に、切れ刃が形成された切削・研削工具表面の形状に関するものである。
【背景技術】
【0002】
切削・研削工具の一種としてダイヤモンド砥石と称されるものがある。そして、ダイヤモンド砥石としては、先端の作業面が平坦面である角柱形状の切れ刃を多数有しており、各切れ刃の周囲に溝が形成されたダイヤモンド砥石がある(特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平11−156728号公報
【特許文献2】特開2001−88041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のダイヤモンド砥石は、シェアモード研削用の砥石であるが、研削性能は必ずしも十分とはいえない。また、回転工具としての利用については、明記されていない。
【0004】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、より優れた研削性能を有する切削・研削工具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する手段を有する本発明は、表面に凸形状の切れ刃を多数備える切削・研削工具であって、前記切れ刃は、頂上とふもとの間である腹部の表面の高さ方向の断面形状が凹形状になるように形成されている切削・研削工具である。
【0006】
前記切れ刃は、その頂上に、峰形状の頂点または平坦面を備える凸形状であってもよい。
【0007】
そして、前記切れ刃は、当該切れ刃が形成されている切削・研削工具表面に沿って延在する配列線に沿って、多数の切れ刃の頂上位置が位置するように整列配置されているものでもよい。
【0008】
前記各切れ刃の頂点は、延在方向が異なる複数の前記配列線の交点に位置しているものでもよい。
【0009】
前記切れ刃は、多結晶ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素からなるものでもよい。
【0010】
前記多数の切れ刃が形成されている切削・研削工具の表面形状は回転面であるものでもよい。
【0011】
前記回転面の回転軸の位置に回転可能に支持される際に用いられる回転軸支部を備えており、前記配列線のうちの少なくとも1つは、回転面である表面の回転方向に対して傾斜しているものでもよい。
【0012】
また、上記課題を解決する手段を有する別の発明は、切削・研削工具素材の表面に、少なくとも先端部分の断面形状が円弧形状である溝を複数形成して、溝どうしの境界位置に稜線または峰を有する凸形状の多数の切れ刃を形成する切れ刃形成工程を有することを特徴とする切削・研削工具の製造方法である。
【0013】
また、切削・研削工具素材の表面に、少なくとも先端部分が半球形状の凹部を多数形成して、凹部どうしの境界位置に稜線または頂点を有する凸形状の多数の切れ刃を形成する切れ刃形成工程を有することを特徴とする切削・研削工具の製造方法である。
【0014】
また、上記課題を解決する手段を有するさらに別の発明は、切削・研削工具素材を保持する保持具と、前記切削・研削工具素材の表面に向けてレーザ光を照射する光源と、レーザ光の前記切削・研削工具素材表面への照射位置を当該切削・研削工具素材に対して相対移動させる駆動手段とを備えており、前記切削・研削工具素材表面にレーザ光を照射させつつ、照射位置を当該切削・研削工具素材に対して相対移動させて、少なくとも底部に円弧形状の断面を有する溝または凹部を複数形成し、溝どうしの境界位置に稜線または峰を有する凸形状の多数の切れ刃を形成することを特徴とする切削・研削工具製造装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、切れ刃を、頂上とふもとの間である腹部の表面の高さ方向の断面形状が凹形状になるように形成している。このようにすると、切れ刃と切れ刃の間の空間が広くなる。切れ刃と切れ刃の間の空間は、研削により研削対象物から分離された排出物を排出するための溝として機能する。したがって、切れ刃と切れ刃の間の空間が広くなれば、溝の断面積がより大きくなることとなり、排出物の排出機能が向上する。
【0016】
切れ刃は、その頂上に、峰形状の頂点または平坦面を備える凸形状であってもよい。頂上が峰形状である切れ刃は、頂上に平面部を有していないので、切削・研削工具表面に切れ刃を高密度で分布させる場合に好適な形状であるという点で極めて優れている。切削・研削工具表面の単位面積当たりの刃数を多くすることができれば、表面粗さが小さいより平滑な仕上げ面を提供できるようになる。他方、頂上に平坦面を備える切れ刃は、平坦面の全周に形成されるエッジを切れ刃として機能させることができるという利点がある。
【0017】
そして、前記切れ刃は、当該切れ刃が形成されている切削・研削工具表面に沿って延在する配列線に沿って、多数の切れ刃の頂上位置が位置するように整列配置されているものでもよい。このようにすると、切れ刃がより密に配置されると共に、被研削加工物表面の面粗さが良好になる。
【0018】
各切れ刃の頂点が、延在方向が異なる複数の配列線の交点に位置するように、各切れ刃を形成してもよい。本発明に係る切削・研削工具では、排出物を排出するための溝は、配列線に沿った方向に延在する状態で形成されるところ、延在方向が異なる複数の配列線が生ずるように切れ刃を配置すると、延在方向が異なる複数の溝が交差する状態で配置されることとなり、排出物の排出性能がより向上する。
【0019】
前記切れ刃として、多結晶ダイヤモンドまたは立方晶窒化ホウ素からなるものを用いると、切削・研削工具の耐久性が向上する。
【0020】
表面形状が球面や円筒形側面などのように回転面である切削・研削工具の表面に、上述したような形状の多数の切れ刃を形成すると、回転させた状態で用いられる研削がシェアモード研削で用いられる回転切削・研削工具になる。
【0021】
回転面の回転軸の位置に回転可能に支持される際に用いられる回転軸支部を備えている切削・研削工具において、配列線のうちの少なくとも1つが回転面である表面の回転方向に対して傾斜するように切れ刃を配列させてもよい。切れ刃の配列線の方向と回転方向が一致している場合、研削対象物に対する回転切削・研削工具の位置が一定であれば、配列線上に配置された全ての切れ刃が研削対象物の同じ位置に当接することになる。したがって、回転切削・研削工具を研削対象物に対して移動させつつ使用する必要が生ずる場合がある。この点、切れ刃の配列線が切削・研削工具の回転方向に対して傾斜していれば、配列線上に配置された切れ刃が研削対象物の同じ位置に当接するようなことがない。したがって、回転切削・研削工具を固定させた状態で用いても、研削ムラの発生が確実に防止される。
【0022】
また、切削・研削工具素材の表面に、少なくとも先端部分の断面形状が円弧形状である溝を複数形成して、溝どうしの境界位置に稜線または頂点を有する凸形状の多数の切れ刃を形成する切れ刃形成工程を有することを特徴とする切削・研削工具の製造方法を用いてもよい。この製造方法によれば、複数の溝を相互に近接する位置に形成することで、溝どうしの境界位置に、研削性能に優れる稜線または頂点を有する凸形状の切れ刃が確実に形成される。同時に、断面形状が円弧形状である溝を形成することで、断面形状が凹形状の腹部を有する凸形状の切れ刃が形成され、切れ刃の周囲に、研削により生ずる排出物の排出性能に優れる大きな断面積の溝が形成される。
【0023】
また、切削・研削工具素材の表面に、少なくとも先端部分が半球形状の凹部を多数形成して、凹部どうしの境界位置に稜線または頂点を有する凸形状の多数の切れ刃を形成する切れ刃形成工程を用いて切削・研削工具を製造してもよい。この製造方法によっても、凹部どうしの境界位置に、研削性能に優れる稜線または頂点を有する凸形状の切れ刃が確実に形成される。
【0024】
また、切削・研削工具素材を保持する保持具と、前記切削・研削工具素材の表面に向けてレーザ光を照射する光源と、レーザ光の前記切削・研削工具素材表面への照射位置を当該切削・研削工具素材に対して相対移動させる駆動手段とを備えており、前記切削・研削工具素材表面にレーザ光を照射させつつ、照射位置を当該切削・研削工具素材に対して相対移動させて、少なくとも底部に円弧形状の断面を有する溝または凹部を複数形成し、溝どうしの境界位置に稜線または峰を有する凸形状の多数の切れ刃を形成することを特徴とする切削・研削工具製造装置を用いてもよい。この装置によれば、切削・研削工具の表面に、断面形状が円弧形状である溝が確実に形成される。したがって、複数の溝を相互に近接する位置に形成することで、溝どうしの境界位置に、シェアモード研削性能に優れる稜線または頂点を有する凸形状の切れ刃が確実に形成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明に係る切削・研削工具の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。まず、第1実施形態について説明するが、その後に説明する実施形態において、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付すこととし、その詳細な説明を省略する。
<第1実施形態>
本発明の切削・研削作用面に形成される特徴的な切れ刃について、図1を用いて説明する。図1(a)は、切削・研削工具10を示すものであり、図1(b)は、切削・研削工具10の部分拡大部を示すものである。第1実施形態の切削・研削工具10は、ダイヤモンド素材からなるものである。なお、超硬合金などの素材表面にダイヤモンド層を形成したものでもよい。
【0026】
図1(b)に示されるように、切削・研削工具10の表面には、多数の切れ刃20が形成されている。各切れ刃20は、凸形状に形成されており、その先端部に先鋭形状部分を備えている。より具体的には、切れ刃20は、その先端が峰(頂点)21のように尖っており、先端が頂点21になっている。また、切れ刃20は、その頂上(頂点)とふもととの間である腹部22に、ふもとから頂上に達する稜線23を備えている。
【0027】
なお、本実施形態の切削・研削工具10の切れ刃20は、先鋭形状として峰形状である頂点21を有するものであるが、頂上が峰形状になっていないものでもよい。たとえば、頂上部分に、円弧形状などの凸形状の稜線が形成されている切れ刃であってもよい。また、峰形状や稜線形状の頂上部に、ダイヤモンド切削・研削工具などを利用して、研磨などの加工によって形成される平面となる加工面を持つ切れ刃として利用してもよい。特に、峰形状や稜線形状の頂上部分を形成した後に行なわれる研磨などの加工によって形成される加工面を有する切れ刃とすると、加工面(切れ刃)の高さが、切削・研削の作用面で同一となり、同一面が形成される。このように切れ刃の高さが同一であると、被切削・研削物の表面の仕上げ面粗さを良好にすることができ、この点で望ましいといえる。
【0028】
そして、切れ刃20は、その腹部22の表面の高さ方向断面の断面形状が凹形状になるように形成されている。ここで、切れ刃20の腹部22とは、その頂上とふもとの間の部分のことである。なお、腹部22の表面形状が凹形状であることは、切れ刃20のふもとから頂上に延びる稜線23の形状が凹形状であることから明らかである。
【0029】
また、切削・研削工具10に形成された多数の切れ刃の頂点21は、必ずしも同一平面上に位置するように形成されていなくてもよいが、同一平面(たとえば、切削・研削工具の表面形状に一致する形状の仮想面)上に位置するように形成するとよい。多数の切れ刃20の頂点が同一平面上に形成されていると、多数の切れ刃20の頂上21が研削対象物の表面に均等に接触することとなり、研削面粗さがより小さい研削面を得ることができる。同一面に形成する方法として、上記のように後加工によって形成しても良いし、工具素材の初期の表面を基準に切れ刃を形成することも可能である。
【0030】
図1(c)に示されるように、多数の切れ刃20は予め切削・研削工具表面に形成される頂点21の位置を設定して規則的に配置するように整列配置されている。本実施形態の切削・研削工具10では、切削・研削工具10の一方の側面10aに平行に延びる縦配列線31上に頂点21が位置するように切れ刃20が形成されている。なお、配列線は、切れ刃20の頂点21の延在方向を示す線である。この実施形態では、切れ刃20の頂点21が位置する面は平面であるので、縦配列線31および後述の横配列線32は直線である。縦配列線31は複数形成されており、複数の縦配列線31は等間隔をおいて配置されている。
【0031】
また、本実施形態の切削・研削工具10では、切削・研削工具10の他方の側面10bに平行に延びる横配列線32上に頂点21が位置するように切れ刃20が形成されている。横配列線32は複数形成されており、複数の横配列線32は等間隔をおいて配置されている。つまり、各切れ刃20は、延在方向が異なる縦配列線31と横配列線32の交点の位置に形成されている。
【0032】
したがって、ある切れ刃20の頂点21に着目したときに、当該切れ刃20の頂点21とこれに隣接するいずれかの切れ刃20の頂点21とを通る配列線31,32上に、さらに別の切れ刃20の頂点21が位置するように、複数の切れ刃20は整列配置されているということができる。
【0033】
また、隣接する縦配列線31の間に縦方向に延びる溝25が配置されており、隣接する横配列線32の間に横方向に延びる溝25が配置されている。したがって、縦方向に延びる溝25と横方向に延びる溝25は交差している。
【0034】
このような切削・研削工具10を使用するときは、多数の切れ刃20が形成された切削・研削工具10の表面(上面)を研削対象面に当接させ、その状態で切削・研削工具10または研削対象面を有する物体を移動・回転させて研削を行う。そして、必要に応じて潤滑剤を供給しながら研削を行う。
【0035】
研削により生じた排出物は、切削・研削工具表面に形成された多数の溝25を経由して切削・研削工具10の外へと排出される。上述したように、多数の溝25が交差する形状であれば、多様な排出経路を提供できるので、一部で排出物の詰まりが生じたとしても、他の排出経路によって排出物はスムーズに排出される。
【0036】
なお、切れ刃が形成されるダイヤモンド素材の厚さは約0.5mm程度であるが、切れ刃20を形成することができれば、これよりも厚さが薄くても良いし、厚くてもよい。そして、切れ刃20の間に形成された溝25の底部から切れ刃20の頂点21までの高さ寸法は、1〜30μm程度であるが、当該高さ寸法は、これより低くてもよいし、高くてもよい。また、縦配列線31および横配列線32の間隔距離も、1〜30μm程度であるが、当該間隔寸法は、これより短くてもよいし、長くてもよい。これらの高さ、間隔は、工具大きさ、最終被加工物の仕上げ面粗さをどのように設定するかによって、適宜設定すれば良い。さらに、上記実施形態では、切れ刃20が形成される切削・研削工具表面の硬質材層は、多結晶ダイヤモンド(PCD)からなる層であるが、立方晶窒化ホウ素(cBN)からなる層でもよい。特に、PCDは、異方性を有さず、抗折強度が非常に高いので、工具径が小さいものに特に、有効に利用できる。なお、異方性の特徴については、例えば、回転工具においても研削方向によって、強度の差がなく、良好な研削が行える。これらの点については、後述する各実施形態の切削・研削工具についても同様である。
【0037】
<第2実施形態>
図2(a)に示されるように、本実施形態の切削・研削工具40は、円筒形状の切削・研削工具40を説明する。特に、工具素材としては、超硬合金上にダイヤモンド(PCD)層が形成されたものが好適に利用でき、以下その切削・研削工具として、ダイヤモンド層の部分について、説明する。即ち、長手方向に連設されている超硬合金のシャフトは、図示していなく、円筒形状のダイヤモンド層のみが図示されている。なお、本実施形態の切削・研削工具40の長さは、約0.5mm以下の小径工具である。
【0038】
図2(b)に示されるように、切削・研削工具40表面には、多数の切れ刃20が形成されている。各切れ刃20の形状は、基本的には、上記第1実施形態の切削・研削工具10の切れ刃と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0039】
本実施形態の切削・研削工具40の側面(研削用面)40aは円筒形状の面である。なお、円筒形状の側面に形成された各切れ刃20は、その頂点21が同一の円筒形状の面上に位置するように形成されていなくてもよいが、同一面上に形成されていると、上述したように、被研削物の研削面粗さがより小さい研削面を得ることができる。
【0040】
図2(b)に示されるように、多数の切れ刃20は予め切削・研削工具表面に形成される頂点21の位置を設定して規則的に配置するように整列配置されている。本実施形態の切削・研削工具40では、円筒形状の切削・研削工具40の延在方向(線対称形状である円筒形状の対称軸の延在方向)A(図2(a)参照)に平行に延びる縦配列線31上に頂点21が位置するように切れ刃20が形成されている。
【0041】
本実施形態の切削・研削工具40では、対称軸方向Aと直交する円周方向Bに延びる横配列線32上に頂点が位置するように複数の切れ刃20が形成されている。縦配列線31および横配列線32は、上記実施形態の切削・研削工具10と同様、複数形成されており、縦配列線31および横配列線32は、それぞれ、等間隔をおいて配置されている。つまり、各切れ刃20は、第1実施形態の切削・研削工具10の切れ刃20と同様、延在方向が異なる縦配列線31と横配列線32の交点の位置に形成されている。
【0042】
そして、隣接する縦配列線31の間に縦方向に延びる溝25が配置されており、隣接する横配列線32の間に横方向に延びる溝25が配置されている。したがって、縦方向に延びる溝25と横方向に延びる溝25は交差している。
【0043】
また、この切削・研削工具40は、図示されていない切削・研削工具40の他端側に、当該切削・研削工具を研削装置に装着するときに用いられる切削・研削工具軸支部を備えている。軸支部は、回転切削・研削工具を装着するための構造として知られているものであるので、ここではその説明を省略する。
【0044】
このような切削・研削工具40を使用するときは、上記第1実施形態の切削・研削工具10と同様、多数の切れ刃20が形成された切削・研削工具40の円筒形状の側面40aを研削対象面に当接させ、その状態で切削・研削工具40または研削対象面を有する物体を移動させて研削を行う。また、切削・研削工具40が備えている回転軸支部を用いて、当該切削・研削工具40を回転体に装着している場合は、切削・研削工具40を回転させた状態で研削対象物に当接させつつ研削を行うことができる。研削により生じた排出物は、第1実施形態の切削・研削工具10と同様、切れ刃20の周囲に形成された溝25を経由して切削・研削工具40の外へと排出される。
【0045】
また、図3(a)に示されるような形状の切削・研削工具50でもよい。
【0046】
この切削・研削工具50は、図2に示される切削・研削工具40と異なり、先端部に半球形状部分51を備えている。そして、この切削・研削工具50は、その円筒形状である側面50aと、半球面形状の先端面50bとを備えており、これらの表面に切れ刃20が形成されている。
【0047】
なお、側面50a部分については、第2実施形態の切削・研削工具40と同様であるので、その説明を省略する。また、図3(b)に示されるように、先端部51の半球面50bに形成された各切れ刃20の形状は、上記実施形態の切削・研削工具10,40と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0048】
本実施形態の切削・研削工具50の先端部分の表面(研削用面)は半球面形状である。なお、当該面に形成された各切れ刃20は、その頂点21が同一の面上に位置するように形成されていなくてもよいが、同一面上に形成されていると、上述したように、研削面粗さがより小さい研削面を得ることができる。
【0049】
図3(b)に示されるように、切削・研削工具先端の半球面に形成されている多数の切れ刃20は整列配置されている。具体的には、半球形状の先端部51の頂点52から円筒形状の側面50a側に延びる複数の縦配列線31上に頂点が位置するように、複数の切れ刃20が形成されている。また、縦配列線31と直交する円周方向に延びる横配列線32上に頂点21が位置するように複数の切れ刃20が形成されている。縦配列線31および横配列線32は、上記実施形態の切削・研削工具10,40と同様、複数形成されている。そして、縦配列線31は、隣接する縦配列線31とのなす角度が等角になるように配置されており、横配列線32は、それぞれ、等間隔をおいて配置されている。つまり、各切れ刃20は、延在方向が異なる縦配列線31と横配列線32の交点の位置に形成されている。
【0050】
そして、円筒形状の側面50aの部分と同様、縦配列線31の間に縦方向に延びる溝25が配置されており、横配列線32の間に横方向に延びる溝25が配置されている。したがって、縦方向に延びる溝25と横方向に延びる溝25は交差している。
【0051】
このような切削・研削工具50を使用するときは、多数の切れ刃20が形成された切削・研削工具50の円筒形状の側面50aまたは半円形の先端面50bを研削対象面に当接させ、その状態で切削・研削工具50または研削対象面を有する物体を移動させて研削を行う。また、切削・研削工具が備えている回転軸支部を用いて、当該切削・研削工具50を回転体に装着している場合は、切削・研削工具50を回転させた状態で研削対象物に当接させつつ研削を行うことができる。研削により生じた排出物は、第1実施形態の切削・研削工具同様、切れ刃20の周囲に形成された溝25を経由して切削・研削工具50の外へと排出される。
<切削・研削工具の製造装置>
次に、実施形態に係る切削・研削工具の製造装置および製造方法について説明する。
【0052】
図4に示される切削・研削工具製造装置60は、第2実施形態で説明した半球形状の先端部を有する円筒形の回転切削・研削工具(図3参照)50を製造するための装置である。
【0053】
図4に示されるように、当該切削・研削工具製造装置60は、加工対象である切削・研削工具素材Mを保持するためのホルダ部(保持具)61と、当該ホルダ部61を支持する支持部(駆動手段)70とを備えている。そして、支持部70は、切削・研削工具製造装置60の本体部60aに固定されている。また、切削・研削工具製造装置60は、切削・研削工具素材Mに切れ刃を形成するときに用いられるレーザ光を照射するためのレーザ照射部63を備えている。このレーザ照射部63も、図示しない駆動手段に固定されている。なお、符号「64」は、切削・研削工具素材Mの一部である超硬合金製台金を示すものである。
【0054】
支持部70は、装置の本体部60aに対して水平回転軸D回りに回転可能に設置された揺動ステージ71と、揺動ステージ71に対して水平回転軸直交方向に移動可能に設置された位置調整機構72と、位置調整機構72に取り付けられた回転アーム73とを備えており、回転アーム73の先端側にモータ65が固定されており、そのモータ65の回転軸にホルダ部61が設けられている。
【0055】
揺動ステージ71は、図示しないモータによって回転可能になっており、このモータを作動させると、揺動ステージ71が回転し、位置調整機構72、回転アーム73、モータ65及びホルダ部61が回転する。また、位置調整機構72は、水平回転軸Dと直交する垂直面に沿って移動可能になっており、位置調整機構72を当該垂直面に沿って移動させると、ホルダ部61に保持された切削・研削工具素材Mを水平回転軸Dに直交する方向に移動させることができる。これによって揺動ステージ71の揺動回転軸(水平回転軸)D上に、切削・研削工具素材Mの半球中心点が位置するように調整する。回転アーム73は、位置調整機構72に固定された固定側アーム73aと、固定側アーム73aから水平軸D方向に延びる支持アーム部73bからなる側面視L字形の部材であり、支持アーム部73bにモータ65が固定され、その回転軸にホルダ部61が取り付けられている。
【0056】
レーザ照射部63は、上下方向および水平方向に移動可能な状態で設置されており、工具素材が直立した状態で半球頂点Pにレーザスポットが合うように調整されている。水平回転アーム73の回転軸方向Dとモータ64の回転軸方向Cの交点位置が既に素材先端の半球中心となっているので、揺動した際にレーザスポットが常に切削・研削工具素材M表面に合致している。また、レーザ照射部63は、レーザ光を連続的に照射できるようになっていると共に間欠的に照射することもできるようになっている。つまり、パルスレーザ光を照射することができるようになっている。なお、レーザ照射部63から照射するレーザ光としては、種々のレーザ光を採用できるが、本実施形態の切削・研削工具の製造装置で用いるレーザ光としては、ファイバレーザが好適に利用できる。
<切削・研削工具の製造方法の第1実施例>
このような切削・研削工具製造装置60を用いて切削・研削工具50(図3参照)を製造する場合を、図4を参照しつつ説明する。
【0057】
まず、図4(a)に示されるように、切削・研削工具素材Mをホルダ部61に保持させる。この切削・研削工具素材Mは、あらかじめ精度良く、所定の形状に加工されたものである。ここでは、半球形状の先端部を有する円筒形状の切削・研削工具素材Mを用いている。
【0058】
切削・研削工具素材Mをホルダ部61に保持させると、揺動ステージ71や位置調整機構72を作動させて、水平回転軸Dと直交回転軸Cとが交差する交点位置と切削・研削工具素材Mの半球中心点が位置するように調整し、揺動した際にレーザスポットが常に切削・研削工具素材M表面に合致するようにする。(図4(a)参照、初期位置設定工程)。
【0059】
この状態から、図4(b)に示されるように、回転アーム73を4分の1回転させつつパルスレーザ光Lを照射する(第1レーザ加工工程)。
【0060】
すると、先端の半球形状部の頂点から円筒形状の側面との境界位置まで一定間隔で縦方向に並ぶ凹部27の列が一列形成される(図3参照)。一定間隔で並ぶ凹部27は、隣接する凹部27と連なる状態で形成され、連なった凹部27からなる溝25が形成される。
【0061】
なお、レーザ光の照射条件であるが、凹部27が隣接する凹部27と連なる状態で形成されるように、レーザ光のパルスレーザ周期(間欠照射周期)と切削・研削工具素材Mの揺動の角速度、回転角度の値を調整する。また、切削・研削工具素材Mが4分の1回転する間にパルスレーザによって形成される凹部(ディンプル)27の個数が所定の数になるようにレーザ光のパルスレーザ周期と切削・研削工具素材Mの揺動の角速度の比率を設定することが好ましい。
【0062】
第1レーザ加工工程が終了すると、円筒形状の切削・研削工具素材Mの長手方向が水平に向いた状態になる(図4(b)参照)。この状態なると、回転アーム73の回転動作を終了させると共に、レーザ照射部63を、パルスレーザ光を照射する状態を継続させつつ、水平軸方向Dであって矢印Eで示される向きに移動させる(第2レーザ加工工程)。
【0063】
したがって、第2レーザ加工工程では、切削・研削工具素材Mの円筒形状の側面に、一定間隔で長手方向(縦方向)に並ぶ凹部27の列が一列形成される。前述したように、一定間隔で並ぶ凹部27は、隣接する凹部27と連なる状態で形成され、連なった凹部27からなる溝25が形成される。
【0064】
第2レーザ加工工程が終了すると、揺動ステージ71を回転作動させて、切削・研削工具素材Mを直交軸C回りに所定角度回動させる(凹部位置設定工程)。
【0065】
ここで、切削・研削工具素材Mを回動させる所定角度を次のように設定する。つまり、図4(c)に示されるように、次に行われるレーザ加工工程(たとえば2回目)で形成される凹部27bが、先に行われたレーザ加工工程(たとえば1回目)で形成された凹部27aに隣接して形成されるようにすると共に、両凹部27a,27bの一部が相互に重なって両者の凹部空間が連なる状態になるように、切削・研削工具素材Mの回動角度を設定する。このような設定にすると、次に行われるレーザ加工工程で形成された凹部27bは、同じ工程で形成された凹部27b(レーザ加工方向に隣接する凹部27b)と連なる状態になるだけでなく、先に行われたレーザ加工工程や次に行われるレーザ加工工程で形成される凹部27a,27c(レーザ加工方向に直交する横方向に隣接する凹部27a,27c)とも連なる状態になる。そして、横方向に連なる凹部27からなる溝25が形成される(図3参照)。設定回動角度は、どのような切削・研削工具を製造するかによって変わるので、一定ではないが、たとえば、溝幅すなわち隣接する切れ刃相互間の間隔が1μm〜30μm程度になるように設定して切削・研削工具を製造することができる。
【0066】
そして、切削・研削工具素材Mを所定角度回転させて溝形成位置を設定すると、再び最初の工程に戻る。(初期位置設定工程)。
【0067】
このような上記工程を繰り返すことによって、切削・研削工具素材Mの表面に全周に亘って凹部27を形成する。すると、切削・研削工具素材Mの半球形状の先端部の表面および円筒形状の側面に、多数の凹部27が形成されると共に凹部27どうしの間に凸形状の切れ刃20が形成される(図3参照)。また、長手方向に連なる凹部27からなる長手方向の溝25と、回転方向に連なる凹部27からなる回転方向の溝が形成される。このようにして図3に示されるような切削・研削工具が製造される。
【0068】
なお、ここでは、レーザ光によって切削・研削工具素材Mの表面に、凹部27を長手方向に並べるように形成していったが、図5(c)に示されるように、長手方向Fと直交する回転方向に並べるように形成していってもよい。
【0069】
さらに、図5(a)に示されるように、回転方向に対して傾斜した螺旋方向に並べるように凹部27を形成してもよい。凹部27を螺旋状に並べると、凹部27どうしの間に形成される切れ刃も螺旋状に延びる配列線上に配置される。切れ刃をこのように配置すると、切れ刃の配列線の方向が切削・研削工具を使用する際の回転方向Bに対して傾斜することになる。切れ刃の配列線の方向が切削・研削工具の回転方向Bに対して傾斜していれば、配列線上に配置された切れ刃が研削対象物の同じ位置に当接することが防止され、研削ムラの発生が防止できなど、研削特性が向上する。
【0070】
凹部27を螺旋状に配置するときは、パルスレーザ周期を設定して凹部27の間隔を設定するだけでなく、切削・研削工具素材Mが一回転したときの、矢印E方向の切削・研削工具素材Mを移動距離を設定する。この移動距離としては、たとえば、螺旋方向に並ぶ凹部27の間隔距離と等しい距離が好ましい。凹部27の間隔距離としては、たとえば、円筒形状の側面の外周長さの整数分の1の距離と等しい距離が好ましい。
【0071】
次に、切削・研削工具素材Mの半球状部に螺旋状の凹部を形成する場合について、説明する。
【0072】
図4の装置において、初期位置設定工程は、上記した製造方法の第一実施例に示すものと同様である。
【0073】
次に、レーザ照射部63、揺動ステージ71及びモータを同時に起動させて、揺動ステージ71を軸Dの回転方向に、形成される凹部がオーバーラップする一定角速度にて、90度まで揺動させることによって形成できる。その際、パルスレーザ周期と切削・研削工具素材M回転速度との比率を所定の凹部間隔または切れ刃間隔になるように設定する。なお、凹部の間隔は切削・研削工具素材M外周長さの整数分の1となるように設定することによって1個目の凹部と1周目以降に形成される凹部のそれぞれが隣り合うように設定できる。また、切削・研削工具素材Mが1回転した時に、凹部間隔の長さ分、揺動するように揺動角速度を設定することによって、凹部を均等にオーバーラップすることができる。
【0074】
ここでは、レーザ光を間欠的に照射することによって凹部27を形成し、これにより、凸形状の切れ刃20および溝25を形成する方法について説明したが、レーザ光を連続的に照射して切れ刃20および溝25を形成することにより、切削・研削工具を製造してもよい。
<切削・研削工具の製造方法の第2実施例>
まず、切削・研削工具素材Mの半球形状の先端部の頂点位置が、水平回転軸Dと直交回転軸Cとが交差する加工位置に位置するように、切削・研削工具素材Mを移動させる(図4(a)参照、初期位置設定工程)。
【0075】
そして、第1レーザ加工工程において、図4(b)に示されるように、回転アーム73を4分の1回転させつつレーザ光Lを連続照射する。このようにすると、先端の半球形状部の頂点から円筒形状の側面との境界位置まで縦方向に延在する溝が形成される。
【0076】
第1レーザ照射工程が終了すると、円筒形状の切削・研削工具素材Mの長手方向が水平に向いた状態になる(図4(b)参照)。この状態なると、回転アーム73の回転動作を終了させると共に、レーザ照射部63を、パルスレーザ光を照射する状態を継続させつつ、水平軸方向Dであって矢印Eで示される向きに移動させる(第2レーザ加工工程)。
【0077】
したがって、第2レーザ加工工程では、切削・研削工具素材Mの円筒形状の側面に長手方向に延在する溝が形成される。
【0078】
第2レーザ加工工程が終了すると、第2位置調整機構74内に設置された図示しないモータを作動させて、切削・研削工具素材Mを直交軸C回りに所定角度回動させる(縦方向の溝位置設定工程)。
【0079】
そして、切削・研削工具素材Mを所定角度回転させると、再び最初の工程に戻る。つまり、揺動ステージ71や位置調整機構72を作動させて、切削・研削工具素材Mの半球形状の先端部の頂点位置が、水平回転軸Dと直交回転軸Cとが交差する加工位置に位置するように、切削・研削工具素材Mを移動させると共に、レーザ光の照射位置が加工位置になるように、レーザ照射部63を移動させる(図4(a)参照、初期位置設定工程)。
【0080】
そして、上記工程を繰り返すことによって、切削・研削工具素材Mの表面全体に、長手方向に延びる溝を形成する。
【0081】
切削・研削工具素材Mの表面全体に長手方向に延びる溝を形成すると、再び、初期位置設定工程を行い、切削・研削工具素材Mの半球形状の先端部の頂点位置が、水平回転軸Dと直交回転軸Cとが交差する加工位置に位置するように、切削・研削工具素材Mを移動させる(図5(a)参照、初期位置設定工程)。
【0082】
そして、回転アーム73を所定角度回動させ、その状態で、ホルダ部61を回転させつつレーザ光を連続照射する(第3レーザ加工工程)。すると、半球形状の先端部の頂点を中心とする環状の溝が半球形状の先端部の表面に形成される。
【0083】
第3レーザ加工工程が終了すると、揺動ステージ71を回転作動させて、切削・研削工具素材Mを水平軸D回りに所定角度回動させる(環状の溝位置設定工程)。
【0084】
そして、第3レーザ加工工程と環状の溝位置設定工程を繰り返す。これにより、切削・研削工具素材Mの半球形状の先端部表面に環状の溝が形成される。そして、半球形状の先端部表面への環状の溝の形成が終了すると、環状の溝位置設定工程において、揺動ステージ71を回転作動させる替わりに、レーザ勝者部を矢印Eで示される向きに所定距離移動させるようにして、上記第3レーザ加工工程と環状の溝位置設定工程を繰り返す。これにより、円筒形状の側面に環状の溝が形成される。ただし、切削・研削工具素材Mの表面には、既に、長手方向に延在する溝が形成されているので、実際には、長手方向に延在する溝と、形成した環状の溝が交差する交差状の溝形状が形成される。そして、交差状の溝形状が形成されると同時に、溝どうしの境界部分に先端が峰状に尖った頂点を備える凸形状の切れ刃が形成される。
【0085】
ここでは、レーザ光によって切削・研削工具素材Mの表面に、長手方向に延びる溝と環状の溝を形成して切れ刃を形成しているが、環状の溝を形成する工程(図6(d)参照)を行うかわりに、回転方向に対して傾斜した螺旋方向に延びる溝を形成する工程(図6(b)参照)を行ってもよい。螺旋状に延びる溝を形成すると、切れ刃も螺旋状に延びる配列線上に配置される。切れ刃をこのように配置すると、切れ刃の配列線の方向が切削・研削工具を使用する際の回転方向Bに対して傾斜することになる。切れ刃の配列線が切削・研削工具の回転方向Bに対して傾斜していれば、配列線上に配置された切れ刃が研削対象物の同じ位置に当接することが防止され、研削ムラの発生を防止できるといった効果が得られる。
【0086】
なお、図2に示される切削・研削工具40を製造する方法は、切削・研削工具50の円筒形状の側面に切れ刃20を形成する方法と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0087】
また、切削・研削工具素材にレーザ光を連続照射して形成した図1(a)のような切れ刃20を形成するのではなく、連続照射によって形成された溝の溝幅とパルスレーザ光を照射して形成されるディンプル径を同じにすることができる。この場合の、パルスレーザ光の長所について説明する。図6(a)は、図1(a)の切れ刃20高さを一緒にした場合の切れ刃の形成状態を示すものであり、連続照射の場合に比べ、切れ刃の間隔が密(1/√2)になっており、被加工物の加工後の面粗さがよくなっている。次に、図6(b)は、図1(a)の切れ刃20の間隔を一緒にした場合の切れ刃の形成状態を示すものであり、連続照射の場合に比べ、切れ刃20高さがより深くなっており、チップポケットとして機能がより向上している。
【0088】
以上の説明から解るように、本実施形態の切削・研削工具10,40,50は、切れ刃20として、頂点を備える凸形状の切れ刃20を備えるものであるが、頂上が峰形状になっていないものでもよい。たとえば、頂上部に研磨などの加工によって形成される加工面を有する切れ刃でもよい。したがって、たとえば、レーザ光によるレーザ加工終了後、必要に応じて、半球形状の先端部表面など、切れ刃が形成された切削・研削工具素材の表面に対して、切れ刃の頂点が同一面上(ここでは、半球形状の面上)に位置するようにするために、仕上げ加工工程を行ってもよい。切り刃が形成された円筒形状の先端部の表面に、同様の仕上げ加工工程を行ってもよい。このような工程を行って得られた切削・研削工具を用いると、研削面粗さがより小さい研削面を得ることができる。
【0089】
次に、素材表面に凹部を形成する際に、上述した実施形態のように隣接して形成される凹部の一部をオーバーラップさせることによる長所について説明する。
【0090】
まず、図7(a)(b)に示されるように、オーバーラップさせない場合について、説明する。切れ刃120の先端面に平面120aを形成するには、溝125を形成する間隔を溝幅W2よりも広くする必要がある。そして、切れ刃120を形成する間隔W1は、溝幅W2と切れ刃の幅W3の合計距離になる。したがって、切れ刃120を形成する間隔を密にしようとしても限界がある。特に、レーザ光によって溝125を形成する場合は、図7(b)に示されるように、溝125の底部よりも上端の開口部の方が幅広になるので、切れ刃120の間隔を密にすることがより難しい。
【0091】
この点、図7(c)に示されるように、本実施形態の切削・研削工具10,40,50の切れ刃20は、隣接して形成される凹部の一部をオーバーラップして形成される先端に平面を有するものではなく、稜線または頂点21を備える凸形状の切れ刃20であるため、。間隔W1を密にすることができる。また、稜線または頂点21Aを備える凸形状の切れ刃20は、先端に平面を有する切れ刃120と比べて、研削対象物との接触面積が小さく、より鋭利な切れ刃である。また、切れ刃を形成する密度を密にしても、切れ刃20の周囲に十分な大きさの溝25が確保される。また、刃物のアドレスを規定できるので、研削面粗さを予測し、結果としての被加工物の面粗さを良好に設計できる。
【0092】
また、切削・研削工具の製造装置は、上記構造のものに限られるものではなく、種々の構造の装置が考えられる。
【0093】
たとえば、図8に示されるような装置でもよい。この装置は、レーザ照射部63と、レーザが照射される切削・研削工具素材Mとの間に、回転支持部81によって回転可能に支持された回転板82を備えている点で、図4に示される装置と構成が異なる。この点以外は、同様の構造であるので、同一の符号を付すこととし、その説明を省略する。
【0094】
この回転板82は、回転支持部81に着脱自在に取り付け可能である。また、回転板82は、レーザ照射部63から照射されたレーザ光を遮蔽することができる位置に配置されている。そして、図8(b)に示されるように、回転板82は、レーザ光を通過させるための通過孔83を備えている。なお、パルス周期を縮める場合には、透過孔83をより多く設けるか、回転板82の回転を早くすれば良い。したがって、レーザ光を連続照射する状態であっても、回転板82を回転させることで、間欠的にレーザ光を照射することができ、パルスレーザ光を照射したのと同様の効果を得ることができる。
【0095】
また、パルスレーザ光を照射する場合であっても、この回転板82を用いることができれば、パルスレーザ光をさらに間引くことができるという効果が得られる。たとえば、円筒形状の側面に凹部(ディンプル)を形成する場合であって、同じ間隔で凹部を形成する場合、円筒形状の切削・研削工具素材の直径が小さくなるほど、切削・研削工具素材の回転数を高回転にするか、パルスレーザ光の照射周期を伸ばす必要がある。ところが、装置におけるこれらの設定範囲には限界があり、所望の設定にできないことがある。この点、回転板82を用いることができれば、パルスレーザ光を間引いて実質的にパルスレーザ光の照射周期を長間隔にすることができる。したがって、切削・研削工具素材の直径が小さくなっても、切削・研削工具素材の回転数を維持したまま、あるいはパルスレーザ光の照射周期を維持したまま、所望の間隔で凹部を形成することができる。つまり、パルスレーザ光の照射周期の設定の自由度が大幅に拡大される。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】(a)は、本発明に係る第1実施形態の切削・研削工具を示す側面図であり、(b)は、(a)に示される一点鎖線部分を示す拡大図であり、(c)は、切れ刃の入れツン状態を示す説明図である。
【図2】(a)は、本発明に係る第2実施形態の切削・研削工具を示す側面図であり、(b)は、(a)に示される一点鎖線部分を示す拡大図である。
【図3】(a)は、第2実施形態の別の切削・研削工具を示す側面図であり、(b)は、(a)に示される一点鎖線部分を示す拡大図である。
【図4】(a)は、本発明に係る切削・研削工具製造装置の構成を示す側面図であり、(b)は、その正面図であり、(c)は、切削・研削工具素材にパルスレーザ光を照射した状態を模式的に示す平面図である。
【図5】(a)から(d)は、レーザ光の照射方法の種類を説明するための説明図である。
【図6】(a)(b)は、パルスレーザ光を照射することによって形成された切れ刃の形成を模式的に示す切削・研削工具表面の拡大斜視図である。
【図7】(a)(b)は、従来の切削・研削工具の切れ刃の形状を示す断面図であり、(c)は、本発明に係る切削・研削工具の切れ刃を示す断面図である。
【図8】(a)は、本発明に係る別態様の切削・研削工具製造装置の構成を示す側面図であり、(b)は、その装置で用いられる回転板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0097】
10,40,50 切削・研削工具
11 ダイヤモンド層
12 基台部分
20 刃
21 峰(頂点)
22 腹部
23 稜線
25 溝
31 縦配列線
32 横配列線
60 切削・研削工具製造装置
61 ホルダ部(保持具)
63 レーザ照射部
70 支持部(駆動手段)
73 回転アーム
74 第2位置調整機構
82 回転板
83 通過孔
【出願人】 【識別番号】500372717
【氏名又は名称】学校法人福岡工業大学
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎


【公開番号】 特開2008−49428(P2008−49428A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−227235(P2006−227235)