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【発明の名称】 切断砥石
【発明者】 【氏名】西田圭三

【要約】 【課題】現在使用されているレジノイド、メタルボンド切断砥石等に比較して、切れ味のよいビトリファイド切断砥石に、通電機能を付与することにより、現実の切断加工工程の生産性や良品率の改善に寄与すること。

【構成】ガラス結合橋部5〜30vol%、気孔部15〜55部、砥粒部30〜60vol%で構成され、ガラス結合橋及び砥粒表面を無電解メッキ法による金属被覆することにより通電機能を付与した厚さ0.04〜5mmのビトリファイド切断砥石。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスで橋架け結合された砥粒と気孔により構成され、かつガラス結合橋及び砥粒表面に無電解メッキ法による金属被覆を形成させることにより通電機能を付与した切断砥石。
【請求項2】
砥粒としてダイヤモンド砥粒、ダイヤモンド砥粒と炭化珪素砥粒との混合砥粒、あるいはダイヤモンド砥粒とアルミナ砥粒との混合砥粒を使用した請求項1の切断砥石。
【請求項3】
砥粒としてCBN砥粒、CBN砥粒と炭化珪素砥粒との混合砥粒、あるいはCBN砥粒とアルミナ砥粒との混合砥粒を使用した請求項1の切断砥石。






























【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、砥粒、ガラス結合橋及び気孔により構成され、かつ無電解メッキ法により通電機能を付与された切断砥石に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、液晶テレビやノートパソコンなどの情報家電製品は、小型化、薄型化、軽さ等を追求されていることから、これら商品に使用されているいずれの電子半導体素子についても、より高性能で、小型化が要求されている。このため一個、一個製造することが不可能であり、複数個をまとめて製造した後に切断加工等により小型化が達成されている。さらに、高性能化、高機能化のために難加工材料の採用や、異種材料の組み合わせ等の対策が施されているが、これらが切断加工をより困難なものにしている。
【0003】
この様な切断加工工具として、外径に対して薄肉の切断砥石が使用されているが、現在使用されている工具としては、レジノイド切断砥石、メタルボンド切断砥石および電鋳製切断砥石がある。レジノイド切断砥石は、現在使用されている切断工具の中では最も切れ味に優れ、使用中に目立て作業を必要としないことから、切断加工工程における生産性に優れた工具ではあるが、主としてフェノール樹脂を結合材として使用していることに起因した剛性不足から、高速加工が不可能であることや砥石摩耗量が多いことなどが大きな課題となっている。
【0004】
一方、メタルボンド切断砥石や電鋳製切断砥石の場合、剛性の点ではレジノイド切断砥石に比べて優れてはいるが、硬質材料である砥粒が摩滅する毎に目立て作業を必要とし、また切れ味に劣るという課題が加工コストを高くしている原因となっている。以上述べた三種類の切断砥石はいずれも無気孔型の砥石であるが、特許文献1に開示されているような有気孔型のビトリファイド砥石がある。ビトリファイド砥石は、硬質材料である砥粒をガラス橋で結合し、砥粒間に気孔を有する微構造である。結合材がガラスであることから剛性に優れ、切れ刃である砥粒が摩滅した後は、ガラスの結合橋が破壊され、新しい切れ刃砥粒が出現するという、目立て作業を必要としない砥石である。さらに、気孔が切り屑排出を助けるなど、他の結合材による砥石と比較して、極めて高性能な砥石として知られている。
【0005】
しかし、ビトリファイド砥石を切断砥石として製造した例は、これまでの調査結果では見あたらない。これは、有気孔であることの強度不足や、脆性材料であることが砥石中に残存する大気孔などの欠陥が強度信頼性を低めること等から、高速回転を要求される切断砥石としては不向きであると考えられた所以である。さらに、切断砥石には、使用される加工機の関係で通電機能を要求されることが一般的である。すなわち使用する切断機械によっては、加工物の切断位置決定を制御するために、切断砥石は通電機能を要求される。
レジノイド切断砥石はフェノール樹脂の充填材として炭素粉末を使用することにより、通電性能を保持している。また、メタルボンド切断砥石や電鋳製切断砥石は、結合材が電気を通す性質を本質的に有している。しかし、結合材がガラスであるビトリファイド切断砥石は、不導体であることから、これまで通電機能を要求される切断砥石として使用され得なかった。
【特許文献1】特開2002−224963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ガラス結合橋部、気孔部および砥粒部で構成され、ガラス結合橋及び砥粒表面を無電解メッキ法による金属皮膜を形成させることにより通電機能を付与した切断砥石を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)ないし(3)の切断砥石を要旨としている。
(1)ガラスで橋架け結合された砥粒と気孔により構成され、かつガラス結合橋及び砥粒表面に無電解メッキ法による金属被覆を形成させることにより通電機能を付与した切断砥石。
(2)砥粒としてダイヤモンド砥粒、ダイヤモンド砥粒と炭化珪素砥粒との混合砥粒、あるいはダイヤモンド砥粒とアルミナ砥粒との混合砥粒を使用した(1)の切断砥石。
(3)砥粒としてCBN砥粒、CBN砥粒と炭化珪素砥粒との混合砥粒、あるいはCBN砥粒とアルミナ砥粒との混合砥粒を使用した(1)の切断砥石。
【発明の効果】
【0008】
ガラス粉末と硬質材料であるダイヤモンド砥粒や炭化珪素砥粒等との混合粉末を、厚さ0.5〜6mmのドーナツ円板状に成形し、700〜1050℃で焼成した後、所望の寸法に機械加工し、かつ無電解メッキ法により、砥粒とガラス結合橋の表面を金属被覆させた、通電機能を有するビトリファイド切断砥石を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
原料として使用する硬質材料である砥粒について説明する。
本発明における切断砥石を製造する上で使用する主原料である砥粒は、従来の切断砥石と同様に、ダイヤモンドやCBN砥粒等の超砥粒を使用するが、超砥粒の砥粒率によっては補助砥粒として炭化珪素あるいはアルミナ砥粒を使用する。一般的には、ダイヤモンド砥粒の補助砥粒としては炭化珪素砥粒が、CBN砥粒の補助砥粒としてはアルミナ砥粒が使用される場合が多いが、この限りではない。
【0010】
本発明において使用するガラス粉末は、切断砥石を構成する砥粒粒径よりも小さい粒径のものが望ましい。砥粒をガラスで橋架け結合する上で、ガラス粉末の粒径が砥粒粒径よりも大きいと、橋架け結合されない砥粒が生じ、結果として切断砥石として必要な硬さや強度が得られない場合が生じる。したがって、ガラス粉末の粒子径は、砥粒粒径の1/3以下であることが望ましい。
【0011】
本発明における切断砥石は、砥粒とガラス粉末との混合比率により砥石硬さを変化させることが可能であり、混合比率は様々である。まず、砥粒とガラス粉末を乾式または半乾式混合し、これにデキストリン、あるいはワックス、あるいはポリビニルアルコール等の、いずれかの有機バインダーを添加した後、一軸プレス成形により厚さ0.5〜6mmのドーナツ状の円板に成形する。ここで、成形圧力が高くなれば最終的に製造される切断砥石は硬くなり、一方で成形圧を低くすれば、製造される砥石の硬さは小さくなる。また、成形方法としては、特に粒子径の小さい砥粒やガラス粉末を使用する場合、均一分散・混合を図るために、水等の溶媒を使用した多孔質型への流し込み成形あるいはドクターブレード成形により、上記円板を成形することも可能である。
【0012】
つぎに、円板状成形体は700〜1050℃で焼成でき、使用する硬質材料であるダイヤモンドやCBN砥粒等の種類、使用するガラス粉末の添加量や融点により焼成温度は決定される。作製された円板状焼成体は、ダイヤモンド砥石等を使用して所望の内外径寸法に、またラップ盤等を使用して所望する厚みに仕上げられる。このままでも、切断砥石として使用することは可能であるが、使用する切断機械によっては、加工物の切断位置を決定するために、切断砥石に通電機能を要する場合がある。
【0013】
以上のようにして製造される本発明による切断砥石は、ダイヤモンド、CBN、アルミナあるいは炭化珪素等の砥粒とガラス結合橋および気孔により構成されており、従来のレジノイド切断砥石、メタルボンド切断砥石、電鋳製切断砥石と比較して本質的に切れ味に優れた砥石であるが、構成する物質は本質的に電気を通す材料ではない。一方、切断砥石を使用する切断機の多くは、加工物に対して必要とする切断位置の決定を制御するために、切断砥石に通電特性を要求する場合が一般的である。
【0014】
従来の切断砥石の中で、メタルボンド切断砥石や電鋳製切断砥石は結合材が金属材料であり、本質的に良導体である。一方、レジノイド切断砥石はフェノール等の樹脂が結合材であり、本発明品であるガラスを結合材とする切断砥石と同様に不導体であることから、カーボン等を混入することにより通電特性を付与している。本発明品について、金属粉末あるいは炭素粉末を原料の一部として用いて製造しても、電気炉を使用して焼成することから、金属粉末は酸化物となり、またカーボン粉末は消滅する。そこで、多孔質材料である本発明品の通電特性付与は、無電解メッキ法により、切断砥石の表面だけでなく、切断砥石を構成する砥粒とガラス結合橋表面に金属被膜を被覆することで達成される。
【0015】
無電解メッキ法により被覆可能な金属としては、銅、ニッケル、コバルトなどがあり、本発明品に使用する金属としてはいずれのものでもよい。一例として、本発明品にニッケル被覆する無電解メッキ法について述べる。先にも述べたように本発明品の材料は不導体で構成されていることから、仕上げ加工後の切断砥石を水洗し、メッキ前処理として、まず塩化スズの希塩酸溶液につけ、内部まで浸透させた後、乾燥する。次に、塩化パラジウムの希塩酸溶液につけ、内部まで浸透させた後、乾燥する。以上のように前処理を施した後、硫酸ニッケル、次亜リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどを使用した無電解ニッケルメッキ浴に5〜60分おき、取り出した直後に水洗することにより砥粒とガラス結合橋表面にニッケル皮膜が形成される。なお、メッキ浴の温度は40〜90℃の間の、いずれの温度でもよい。ただ、本発明品のメッキ被膜形成の目的は、通電特性の付与であり、被膜の厚みは薄くてもよい。従って、メッキ浴におく時間は短くてよく、またメッキ浴の温度も上記温度幅の中で、低温側でもよい。一方、ニッケル無電解メッキ以外に、銅やコバルトなどの他の金属無電解メッキによる通電特性の付与でも良い。
【0016】
このように、本発明による切断砥石は、ガラス粉末と砥粒砥の混合物を、厚さ0.5〜6mmのドーナツ円盤状に成形し、700〜1050℃で焼成した後、所望の寸法に機械加工し、次いで無電解メッキ法により砥粒とガラス結合橋の表面に金属被覆することにより通電機能を付与したものである。
【0017】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
粒径20〜30μmのダイヤモンド砥粒53.2mass%、#1000の炭化珪素(GC)砥粒27.8mass%、平均粒子径3.8μmのガラス粉末19.0mass%を混合し、これに外割りで3mass%のデキストリンを有機バインダーとして添加、混合した後、一軸プレス成形により、成形圧力30MPaで、外径60mm、内径39mm、厚さ1.2mmのドーナツ型円盤状に成形した。次に、成形体をムライト製棚板に置き、#60のアルミナ(WA)砥粒で上面に被覆し、750℃で焼成した。焼成条件は、昇温速度100℃/時間、750℃での保持時間1時間である。
【0019】
表1


【0020】
得られた焼成体について、アルキメデス法によりかさ比重を測定し、その結果から計算した砥粒率、ガラス結合材率および気孔率を表1に示す。作製した焼成体は35.2vol%と多くの気孔を含有しており、図には示さないが、走査型電子顕微鏡観察により、観察した結果、ダイヤモンド砥粒や補助砥粒として用いた炭化珪素砥粒がガラス結合橋により結合され微構造であった。
【0021】
ドーナツ型円盤状焼成体の内径については内面円筒研削法により、外径については外面円筒研削法により、さらに、厚みについては両面ラップ盤を用いて、外径58mm、内径40mm、厚み0.3mmに仕上げ加工を行い、切断砥石とした。これを超音波洗浄機でよく水洗した後、日本カニゼン(株)製ピンクシューマー10%溶液中に5分置き、乾燥後、日本カニゼン(株)製レッドシューマ20%溶液中に5分置き、乾燥した。続いて、温度55℃±3℃に調整された日本カニゼン(株)製S-680 20%メッキ液に置き、無電解メッキによるニッケルメッキを施した。なお、メッキ時間は、5、10、15分とした。
【0022】
表2


【0023】
メッキ時間の異なる試作した三種類の切断砥石について、テスターを使用して測定した抵抗値を表2に示す。なお、比較例として、市販されているレジノイド、メタルボンドおよび電鋳製切断砥石についても同様の試験を実施した結果を併せ示す。表において、メタルボンドおよび電鋳製切断砥石の抵抗値は、結合材が良導体であることから、1Ω以下と極めて小さい値となっている。また、レジノイド切断砥石は、カーボン粉末を混入することにより通電特性を付与したものであるが、約1000Ωの抵抗値を示している。一方、本発明品については、メッキ時間が長くなるほど抵抗値は小さくなっているが、いずれも100Ω以下の値を示している。実用に供せられているレジノイド切断砥石に比較して極めて小さい値となっていることから、本発明品は、本質的には不導体である材質に無電解メッキ処理により、十分なる通電機能を有する切断砥石といえる。





【出願人】 【識別番号】306024702
【氏名又は名称】株式会社 NIC
【出願日】 平成18年7月11日(2006.7.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−18479(P2008−18479A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−190624(P2006−190624)