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【発明の名称】 超砥粒工具およびその製造方法
【発明者】 【氏名】風早 克夫

【氏名】中松 貞晃

【氏名】松本 寧

【氏名】福島 健二

【氏名】福西 利夫

【要約】 【課題】高精度で、且つ砥粒の脱落が起こらない長寿命の超砥粒工具を提供することである。

【構成】超砥粒工具の結合材は、表面層がニッケルめっきからなり、超砥粒平均粒径の7%〜50%の厚みを有する第1結合材と、その内側に存在する溶射金属からなり、超砥粒平均粒径の70%〜1000%の厚みを有する第2結合材とから構成する。溶射金属の気孔率は40%以下であることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超砥粒が結合材により、一層に固着された超砥粒層を有する超砥粒工具であって、
前記結合材は、
表面層がニッケルめっきからなり、前記超砥粒の平均粒径の7%〜50%の厚みを有する第1結合材と、
前記第1結合材の内側に存在する溶射金属からなり、前記超砥粒の平均粒径の70%〜1000%の厚みを有する第2結合材とから構成されることを特徴とする、超砥粒工具。
【請求項2】
前記溶射金属の気孔率は40%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の超砥粒工具。
【請求項3】
前記超砥粒工具は、ロータリードレッサであることを特徴とする、請求項1または2に記載の超砥粒工具。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超砥粒工具の製造方法であって、
反転型の内面に超砥粒をニッケルめっきにより付着させる第1の工程と、
超砥粒を付着させた部分に溶射被膜により超砥粒を完全に埋め込む第2の工程と、
芯金と超砥粒層を低融点合金で接合する第3の工程と、
反転型にあらかじめ設けた基準面により芯出しを行い、軸穴、端面を仕上げた後、外側の反転型を取り除く第4の工程とを経ることを特徴とする、超砥粒工具の製造方法。
【請求項5】
前記溶射皮膜は、プラズマ溶射または高速フレーム溶射によって形成することを特徴とする、請求項4に記載の超砥粒工具の製造方法。
【請求項6】
前記プラズマ溶射を減圧雰囲気下で行うことを特徴とする、請求項5に記載の超砥粒工具の製造方法。
【請求項7】
前記溶射皮膜は、粒径が50μm以下の溶融金属によって形成されたものであることを特徴とする、請求項4から6のいずれか1項に記載の超砥粒工具の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は超砥粒工具に関するものであり、特に、反転型を用いて製造されるロータリードレッサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリードレッサとはロールの外周面に、所定の形状になる様にダイヤモンドを埋め込み固定したドレッサのことである。これを回転させながら被加工物である在来砥石や超砥粒砥石に押し当て、ドレッサの形状を転写する。このようなことからロータリードレッサは複雑な形状をしたものが多く、非常に厳しい寸法精度が求められる。
【0003】
ロータリードレッサの製法の一つに反転法(「反転めっき法」または「電鋳法」とも呼ばれる)が知られている。一般的に、反転法は下記(1)〜(4)の工程により構成されている。
(1)型の内面に所定の形状を形成した反転型を製作し、めっき法を利用してこの内面に砥粒を付着させる工程。
(2)さらに肉盛りめっきを行い、砥粒がめっき金属により埋め込まれる様にする工程。
(3)前記反転型の中心に芯金をセットし、砥粒層と芯金との間に低融点合金等の充填物を流し込む工程。
(4)前記反転型にあらかじめ設けた基準面により芯出しを行い、軸穴、端面を仕上げた後、外側の前記反転型を取り除く工程。
ここで注目しなければならないことは、(2)の工程において、砥粒がめっき金属により埋め込まれる様、めっき厚が厚くなければならないことである。このようにしなければ砥粒の保持力とめっき層の剛性が維持されないばかりか、超砥粒工具の使用時に砥粒の脱落やめっき層の変形が起こる為である。従来、(2)の工程ではめっき液が入った槽に電極と被めっき物である反転型を浸漬し、それぞれに正負の電場をかけて、めっきによる砥粒の埋め込みを行っていた。
(例えば、特許文献1、2参照)
【0004】
さらに、プラズマ溶射を利用したロータリードレッサの製造方法が知られている。
この方法は、反転型にダイヤモンドを接着剤、ニッケルめっきなどにより付着させ、その表面にプラズマスプレーガンによって溶射金属を肉盛りするというものである。溶射金属としてはコバルトベースのステライト合金、ステライト合金、ハイネス合金、ハステロイ合金、ニッケルベースの合金が好ましいとされている。この方法によれば反転型の温度上昇を低く抑えながら溶射金属を吹き付けダイヤモンドの埋め込みができるため、付着させたダイヤモンドの保持力を高めることができる。また、溶射を使用した場合、ダイヤモンドの埋め込み速度はめっきなどと比較して格段に速く、短い期間で製品を製作することができる。
(例えば、特許文献3参照)
【0005】
そして、溶射金属皮膜の強度について以下のことが知られている。
溶射金属被膜は、全面的荷重や線状の荷重においては良好な耐負荷性能を示すが、点状の荷重には弱い。つまり溶射金属膜は局部的な荷重になればなるほど弱い事が分かる。ロータリードレッサは、ロールの外周面に、所定の粒度を持つダイヤモンドやCBNなどの砥粒を埋め込み、固定したドレッサであり、在来砥石及び超砥粒ホイールの成形に使用するものである。その使用時において、砥粒がめっき被膜から飛び出たその境界付近には局部的な荷重がかかると考えられる。
(例えば、非特許文献1参照)
【特許文献1】特開平2−256464号公報
【特許文献2】特開2001−38630号公報
【特許文献3】特開昭62−84976号公報
【非特許文献1】平石正廣著、「溶接技術」、産報出版、2003年5月、p.107
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記方法で必要なめっき厚みを得るためには、長時間にわたるめっきが必要となる。一方、めっき時間を短縮するために、電流密度を上げ、めっき速度を上げることが考えられる。しかしながら、ロータリードレッサは非常に複雑な形状をしているので、電流密度を上げた場合、めっき厚みの均一性が極端に悪化し、砥粒保持の面から十分なめっき厚みを得ることができない部位が発生する問題があった。その結果、ロータリードレッサの使用時に砥粒の脱落がおこる問題があった。さらに、気孔の多い溶射金属被膜の場合は、工具の使用により発生した局部的な荷重の影響が溶射金属被膜に伝わり、亀裂等の損壊が起こりやすく、その結果、砥粒の脱落を起こす問題があった。
本発明は、これらの問題点を解決するためになされたものである。すなわち、高精度で、且つ、砥粒の脱落が起こらない長寿命で高精度のロータリードレッサを短期間で製作するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超砥粒が結合材により、一層に固着された超砥粒層を有する超砥粒工具であって、結合材は表面層がニッケルめっきからなり、超砥粒の平均粒径の7%〜50%の厚みを有する第1結合材と、第1結合材の内側に存在する溶射金属からなり、超砥粒の平均粒径の70%〜1000%の厚みを有する第2結合材とから構成されることを特徴とする超砥粒工具である。
ここで結合材は、表面層がニッケルめっきで、その内部が溶射金属からなる2層が積層された構造を有するものである。すなわち、結合材は第1結合材と第2結合材からなる2層が積層された構造を有するものである。
ニッケルめっきの厚みを超砥粒の平均粒径の7%〜50%と限定した理由は、7%未満では超砥粒を付着させることが出来ず、50%を超えるとめっきに長時間を要するためである。ニッケルめっきの厚みは超砥粒の平均粒径の7%〜40%が好ましく、7%〜35%であることが最も好ましい。
溶射金属の厚みを超砥粒の平均粒径の70%〜1000%と限定した理由は、70%未満では強度不足となるためであり、1000%を超えると溶射に長時間を要するためである。溶射金属の厚みは、100〜900%であることが好ましく、100〜800%であることが最も好ましい。
【0008】
そして、溶射金属の気孔率は40%以下であることが好ましい。
気孔率を40%以下と限定した理由は、40%を超えると溶射金属の強度低下が著しくなるためである。気孔率は30%以下であることがより好ましく、25%以下であることが最も好ましい。
【0009】
本発明の超砥粒工具は、特に、ロータリードレッサであることが好ましい。
ロータリードレッサに適用すると、高精度で高品質なものを短期間で製作できるので好ましい。もちろん、ロータリードレッサに限定されるものではなく、各種の超砥粒ホイールにも適用が可能である。
【0010】
本発明の超砥粒工具の製造方法は、反転型の内面に超砥粒をニッケルめっきにより付着させる第1の工程と、超砥粒を付着させた部分に溶射被膜により超砥粒を完全に埋め込む第2の工程と、芯金と超砥粒層を低融点合金で接合する第3の工程と、反転型にあらかじめ設けた基準面により芯出しを行い、軸穴、端面を仕上げた後、外側の反転型を取り除く第4の工程とを経ることを特徴とする。
本発明の超砥粒工具の製造方法は、特に、ロータリードレッサに適用することが好ましい。ロータリードレッサに適用すると、高精度で高品質なものを短期間で製作できるので好ましい。もちろん、ロータリードレッサに限定されるものではなく、各種の超砥粒ホイールにも適用が可能である。
【0011】
本発明の製造方法において、溶射皮膜は、プラズマ溶射または高速フレーム溶射によって形成することが好ましい。
このようにすることによって、気孔が少なくなり、溶射被膜自体の構造的な強度を高くすることが出来る。さらに、溶射被膜の密着強度も高くすることができ、超砥粒工具の使用時における局部的荷重に伴う、溶射被膜の損壊を減少させることが出来る。
これらの溶射方法では溶射時における反転型の温度を200℃以下に抑えることができるので、熱歪みはほとんどなく、超砥粒工具に必要な厳しい寸法精度を容易に満たすことができる。特に、高速フレーム溶射は高速度で溶射粒子が基材表面に噴射されるため、プラズマ溶射の場合と比較して、気孔は少なく、いっそう被膜の密着力を高くすることができるので好ましい。
【0012】
本発明の製造方法において、プラズマ溶射は減圧雰囲気下で行うことが好ましい。
このようにすることによって、酸化等の欠陥が少ない被膜を形成することができる。さらに、減圧雰囲気下では、プラズマジェットの高温領域が長く、溶射粒子速度が高速になるため緻密で、しかも密着性の優れた膜となる。
【0013】
本発明の製造方法において、溶射皮膜は、粒径が50μm以下の溶融金属によって形成されたものであることが好ましい。
このようにすることで、さらに気孔が少なく、密着力が高い砥粒の埋め込みができる。粒径は40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることが最も好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の超砥粒工具は、高精度で、且つ砥粒の脱落が起こらないだけでなく、短期間で製作できる。このためユーザーの短納期要求を満たすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明を実施するための最良の形態については、以下の実施例で詳しく説明する。なお、以下の実施例では、同一または相当する部分については、同一の参照符号を付し、その説明については繰り返さないこととする。
【実施例1】
【0016】
図2に従って、本発明の実施例1の製造工程を説明する。
まず、工程(a)では、鋼製の反転型6を用意し、その内面に平均粒径500μmのダイヤモンド1をめっき槽を用いたニッケルめっき2で仮固定した。ニッケルめっきの厚みは40μm(ダイヤモンドの平均粒径の8%)とした。
さらに工程(b)では、平均粒径が12μmである98%の純度を持つNi粉末を使用して、反転型にプラズマ溶射による溶射金属3によるダイヤモンドの埋め込みを行った。溶射金属の厚みは1000μmとした。溶射金属の気孔率は10%であった。
次に工程(c)では、台金5を挿入し、低融点合金4でダイヤモンド層と台金を結合した。
次に工程(d)では、反転型6を除去した。次に、側面、穴等を機械加工で仕上げて、さらにニッケルめっきを少し除去し、ダイヤモンド先端部を突出させ、ダイヤモンドロータリードレッサを完成した。寸法は、外径160mm、幅40mmである。
次に実施例1の性能評価のため、ドレッシングテストを実施した。ドレッシングテストは在来砥石をプランジ方式でドレッシングして行った。ドレッシングテスト条件は、砥石仕様はWA60K、寸法はΦ220−5W、ダイヤモンドロータリードレッサの周速度(Vr)と在来砥石の周速度(Vs)の周速度比(Vr/Vs)は0.16、ドレッシング方向はダウンドレッシング、在来砥石1回転当たりのダイヤモンドロータリードレッサの切り込み速度は0.54μm/revとした。
テストの結果、ダイヤモンドロータリードレッサのダイヤモンドの脱落はまったく無く、高能率、高精度なドレッシングが可能であった。
【実施例2】
【0017】
工程(b)における溶射金属の気孔率を35%とした以外は実施例1とまったく同じ方法でダイヤモンドロータリードレッサを完成した。
テストの結果、ダイヤモンドロータリードレッサのダイヤモンドの脱落はほとんど確認出来なかった。
【比較例1】
【0018】
工程(a)におけるニッケルめっきの厚みを25μm(ダイヤモンドの平均粒径の5%)とした以外は実施例1とまったく同じ方法でダイヤモンドロータリードレッサを完成した。
テストの結果、ダイヤモンドロータリードレッサのダイヤモンドの脱落が確認された。
【比較例2】
【0019】
工程(b)における溶射金属の厚みを300μmとした以外は実施例1とまったく同じ方法でダイヤモンドロータリードレッサを完成した。
テストの結果、ダイヤモンドロータリードレッサのダイヤモンドの脱落が確認された。
【比較例3】
【0020】
工程(b)においてニッケルめっきで1000μmとした以外は実施例1とまったく同じ方法でダイヤモンドロータリードレッサを完成した。
テストの結果、ダイヤモンドロータリードレッサのダイヤモンドの脱落は確認できなかった。しかしながら、製作するのに実施例1の2倍の期間が必要であった。
【0021】
【表1】


【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の超砥粒工具の断面図を示す。
【図2】本発明の超砥粒工具の製造工程の一部を示す。
【符号の説明】
【0023】
1:ダイヤモンド
2:仮固定のためのニッケルめっき層
3:埋め込みのための溶射層
4:低融点合金
5:台金
6:反転型
【出願人】 【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−12645(P2008−12645A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188846(P2006−188846)